以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または対応する構成要素には同一の参照符号を付与している。
[第1の実施形態]
図3は、本発明の実施形態に係るデータ処理装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。データ処理装置10は、外部から取得した複数の数値データを、後述する選別処理プログラムを実行することによって選別するものである。
図3に示すように、データ処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)100、記憶装置110、キーボード120、インターフェース130およびディスプレイ140を含むコンピュータによって構成されている。
キーボード120は、CPU100に対してプログラムの実行の開始や中断を指示したり、データ処理装置10による選別処理において必要な情報を入力するための入力装置である。なお、キーボード120に代えてまたはキーボード120とともに、マウス、タッチパネル、トラックボール等の他の入力装置を備えていてもよい。
インターフェース130は、データ処理装置10を測定装置等の外部機器と接続するためのインターフェースである。データ処理装置10は、インターフェース130を介して測定装置等の外部機器(図示せず)から数値データを取得する。インターフェース130の一例としてGPIB(General Purpose Interface Bus)を適用することができる。また、本実施形態に係るデータ処理装置10によって処理される数値データとしては、例えば、半導体装置の電気特性の測定値(特性値)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
記憶装置110は、CPU100が実行する命令やCPU100の処理の用に供されるデータ等を一時的に記憶しておくための揮発性の記憶領域を有する主記憶装置111と、インターフェース130を介して供給される数値データや後述する選別処理プログラム等を記憶しておくための不揮性の記憶領域を有する補助記憶装置112と、を含んで構成されている。
CPU100は、記憶装置110に格納された命令やデータを読み書きしながら後述する選別処理プログラムを実行する。CPU100は、選別処理プログラムにおける命令を解釈してコンピュータを統括的に制御する制御装置と、命令を実行する演算装置とを含んでいる。CPU100による演算結果は、記憶装置110に書き込まれる。
ディスプレイ140は、CPU100によって実行された数値データの選別結果等を表示するための出力装置である。例えば、ディスプレイ140には、選別対象となる数値データまたは選別対象物の識別番号とともに良品および不良品の選別結果が表示される。なお、データ処理装置10による選別結果を表示する必要がない場合には、ディスプレイ140を設けることを要しない。
図4は、データ処理装置10の機能的な構成を示す機能ブロック図である。データ処理装置10は、主な機能構成として、データ取得部11、規格値導出部12、選別部13、判定部14および出力部15を含んでいる。
データ取得部11は、測定装置等の外部機器(図示せず)によって測定された半導体装置の特性値等を示す数値データをデータ処理装置10の内部に取り込む処理を行う。データ取得部11は、インターフェース130を介して外部機器から供給される数値データの集合を記憶装置110に格納することにより実現される。
規格値導出部12は、データ取得部11によって取得された複数の数値データを含む集合を統計処理することによって当該複数の数値データを選別するための規格値を導出する処理を行う。具体的には、規格値導出部12は、データ取得部11によって取得された数値データの集合について平均値μおよび標準偏差σを導出する。そして、規格値導出部12は、標準偏差σに所定の係数a(但しaは正の整数または小数)を乗じた値aσを平均値μに加算した値(μ+aσ)を規格上限値として算出するとともに、aσを平均値μから減算した値(μ−aσ)を規格下限値として算出する。なお、係数aは、要求される品質等に応じて定められる数値であり、例えば、ユーザによってキーボード120を介して入力される。なお、係数aを決定するために必要な情報をキーボード120から入力してもよい。規格値導出部12は、CPU100が、記憶装置110から数値データの集合を読み出して、当該複数の数値データの平均値μおよび標準偏差σを導出し、規格上限値(μ+aσ)および規格下限値(μ−aσ)を導出し、導出した規格値を記憶装置110に格納することにより実現される。なお、平均値μに代えて中央値を用いてもよい。
選別部13は、データ取得部11によって取得された複数の数値データを、規格値導出部12によって導出された規格値に基づいて選別する処理を行う。すなわち、選別部13は、規格上限値よりも大きい数値データおよび規格下限値よりも小さい数値データを規格外の数値データとして特定するとともに、当該規格外の数値データを元の数値データの集合から除外する。選別部13は、CPU100が、記憶装置110から数値データの集合および規格値を読み出して、規格外の数値データを特定し、当該規格外の数値データに対応する識別番号を記憶装置110に格納するとともに、当該規格外の数値データを元の数値データの集合から除外することにより新たな集合を生成し、当該新たな集合を記憶装置110に格納することにより実現される。なお、本実施形態において選別部13は、規格範囲外の数値データを特定することとしているが、規格範囲内の数値データを特定するものであってもよいし、規格範囲内および規格範囲外の数値データを特定するものであってもよい。規格範囲内の数値データおよび規格範囲外の数値データのいずれか一方を特定することにより他方を特定することができるからである。
判定部14は、選択部13によって特定された規格外の数値データの個数が所定の判定基準を満足するか否かの判定する処理を行う。より具体的には、判定部14は、選別部13によって特定された規格外の数値データの個数が所定の判定基準値k以下であるか否かを判定する処理を行う。判定部14は、判定基準値kを、規格値導出部12において導出される規格値に基づいて導出する。具体的には、判定部14は、当該数値データの集合が正規分布に従うものとした場合における、規格上限値(μ+aσ)および規格下限値(μ−aσ)から外れる数値データの理論上の発生確率Pを算出し、発生確率Pに数値データの集合の母数Nを乗じることによって得られる値(P×N)を判定基準値kとして導出する。ここで、規格外れとなる数値データの理論上の発生確率Pは下記の(1)式によって表すことができる。
(1)式においてf(x)は正規分布における確率密度関数であり、確率密度関数f(x)は、下記の(2)式によって表すことができる。
このように、判定部14は、規格上限値(μ+aσ)および規格下限値(μ−aσ)から外れる数値データの理論上の発生個数を判定基準値kとして導出する。判定部14は、CPU10が、規格外の数値データの個数と、判定基準値kとを比較することにより実現される。
規格値導出部12、選別部13および判定部14は、判定部14によって規格範囲から外れる数値データの個数が判定基準値kよりも大きいと判定された場合には、当該規格外の数値データを元の数値データの集合から除外した新たな集合について同様の処理を繰り返し実行する。規格値導出部12、選別部13および判定部14は、規格範囲から外れる数値データの個数が判定基準値k以下であると判定部14において判定されるまで同様の処理を繰り返し実行し、分布外れの数値データを除外した主分布の数値データの集合を抽出する。
出力部15は、判定部14において規格範囲から外れる数値データの個数が判定基準値k以下であり判定基準を満足すると判定された場合、すなわち分布外れの数値データを除外した主分布の数値データの集合が抽出された場合に、選別部13においてそれまでに特定された規格範囲から外れる全ての数値データと、それ以外の数値データ(すなわち、主分布となる規格範囲内の数値データ)との選別結果を出力する処理を行う。出力部15は、CPU100が上記繰り返し処理の各サイクルにおいて記憶装置110に格納された数値データの選別結果をディスプレイ140に表示させることにより実現される。出力部15は、例えば、各数値データに対応する識別番号に、選別結果に応じた表示(例えばPassおよびFail)を付与することによって選別結果を表示してもよい。あるいは、選別対象がウェハ内に形成された複数の半導体装置である場合には、ウェハ内における半導体装置の配置と当該半導体装置の選別結果を対応付けた不良マップ画像を表示してもよい。なお、出力部15は、ディスプレイ140に選別結果を表示することに代えて、またはディスプレイ140に選別結果を表示するとともに、当該選別結果を利用する他の装置(例えばマーキング装置やチップマウンタ等)に選別結果を供給してもよい。
図5は、CPU100によって実行される選別処理プログラムにおける処理の流れを示すフローチャートである。選別処理プログラムは、記憶装置110の補助記憶装置112内に格納されている。CPU100は、例えば、キーボード120を介して実行が指示された場合に選別処理プログラムの実行を開始する。
ステップS21において、CPU100は、データ取得部11として機能し、インターフェース130を介して測定装置等の外部装置から複数の数値データを含む数値データの集合を取得し、取得した数値データの集合を記憶装置110に格納する。数値データとしては、例えば、半導体装置の電気特性の測定値等が挙げられる。
ステップS22において、CPU100は、規格値導出部12として機能し、ステップS21において取得した数値データの集合について平均値μを導出する。
ステップS23において、CPU100は、規格値導出部12として機能し、ステップS21において取得した数値データの集合について標準偏差σを導出する。
ステップS24において、CPU100は、規格値導出部12として機能し、標準偏差σに所定の係数a(但しaは正の整数または小数)を乗じた値aσを平均値μに加算した値(μ+aσ)を規格上限値として導出するとともに、aσを平均値μから減算した値(μ−aσ)を規格下限値として導出し、これらを記憶装置110に格納する。なお、係数aは、要求される品質等に応じて定められる数値であり、例えば、キーボード120を介して入力される。なお、平均値μに代えて中央値を用いてもよい。
ステップS25において、CPU100は、選別部13として機能し、ステップS24において導出された規格上限値および規格下限値によって定まる規格範囲から外れる数値データを特定し、当該規格外の数値データに対応する識別番号を記憶装置110に格納する。なお、本ステップにおいて、規格範囲内の数値データを特定することによって間接的に規格範囲から外れる数値データを特定してもよい。
ステップS26において、CPU100は、規格範囲から外れる数値データを元の数値データの集合から除外し、これによって新たな集合を生成し、当該新たな集合を記憶装置110に格納する。
ステップS27において、CPU100は、判定部14として機能し、ステップS25において特定された規格範囲から外れる数値データの個数を導出する。CPU100は、記憶装置110に格納された規格外の数値データに対応する識別番号を参照することによって規格外の数値データの個数を導出する。
ステップS28において、CPU100は、判定部14として機能し、ステップS27において導出した規格外の数値データの個数が判定基準値k以下であるか否かを判定する処理を行う。
ここで、図6は、ステップS28において、CPU100が判定基準値kを導出する際に実行する判定基準値導出処理プログラムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS31において、CPU100は、ステップS21において取得した数値データの集合が正規分布に従う場合における、規格上限値(μ+aσ)および規格下限値(μ−aσ)から外れる数値データの理論上の発生確率Pを上記の(1)式および(2)式に従って導出する。
ステップS32において、CPU100は、ステップS31において導出した発生確率Pに、ステップS21において取得した数値データの集合の母数Nを乗じた値(P×N)を判定基準値kとして導出する。すなわち、CPU100は、選別対象となる数値データの集合において、規格上限値(μ+aσ)および規格下限値(μ−aσ)から外れる数値データの理論上の発生個数を判定基準値kとして導出する。
CPU100は、ステップS28において規格範囲から外れる数値データの個数が判定基準値k以下ではなく判定基準を満足しないと判定した場合、すなわち分布外れの数値データの全てが除外されていないと判定した場合には、処理をステップS22に戻す。すなわちCPU100は、ステップS25において特定した規格範囲から外れる数値データを元の数値データの集合から除外した新たな集合についてステップS22からステップS28までの処理を繰り返し実行する。CPU100は、ステップS28において規格外の数値データの個数が判定基準値k以下であると判定されまで(規格外と判定される数値データの個数が理論値以下となるまで)、規格外の数値データを元の集合から除外した新たな集合についてステップS22からステップS28までの処理を繰り返し実行する。
一方、CPU100は、ステップS28において規格外の数値データの個数が判定基準値k以下であり判定基準を満足すると判定した場合、すなわち分布外れの数値データの全てが除外されたと判定した場合には、処理をステップS29に移行する。ステップS29においてCPU100は出力部15として機能し、それまでに特定された全ての規格外の数値データと、それ以外の数値データとの選別結果を出力する処理を行う。CPU100は、例えば、各数値データに対応する識別番号に、選別結果に応じた表示(例えばPassおよびFail)を付与することによって選別結果を表示してもよい。あるいは、選別対象がウェハ内に形成された複数の半導体装置である場合には、ウェハ内における半導体装置の配置と当該半導体装置の選別結果を対応付けた不良マップ画像を表示してもよい。ステップS29における出力処理が完了すると選別処理プログラムが終了する。
次に、本実施形態に係るデータ処理装置10における作用・効果について図2(a)〜図2(c)を参照しつつ説明する。
図2(a)〜図2(c)は、半導体装置のある特性値を示す特性データのヒストグラムの一例を示す図である。図2(a)〜図2(c)において横軸は特性値であり、縦軸は頻度であり対数表示としている。
図2(a)に示す特性データの集合(N=1092)について、本実施形態に係るデータ処理装置10が選別処理を行う場合について以下に説明する。
データ処理装置10は、選別処理プログラム(図5参照)のステップS22〜ステップS24を実行することによって、図2(a)に示す特性データの集合について規格上限値(μ+aσ)として、0.645を導出する。ここで、係数aは5とした。すなわち、規格上限値はμ+5σである。なお、図2(a)に示す特性データの集合における平均値μは0.058であり、標準偏差σは、0.117である。また、規格下限値(μ−5σ)は負値となるため考慮しないこととする。
データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS25を実行することによって、規格上限値0.645よりも大きい値を有する(すなわち規格外である)4個の特性データを特定する。データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS26を実行することによって規格外と判定された4個の特性データを図2(a)に示す特性データの集合から除外し、これによって新たな集合を生成する。図2(b)は、規格外と判定された4個の特性データを図2(a)に示す特性データの集合から除外することによって生成された新たな集合(N=1088)を示すヒストグラムである。
データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS27を実行することによって規格外の特性データの個数として「4」を導出する。データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS28を実行することによって規格外の特性データの個数「4」が判定基準値k以下であるか否かを判断する。規格上限値(μ+5σ)よりも大となる特性データの理論上の発生確率Pは、0.00003%(0.3ppm)であり、特性データの集合の母数Nは、1092であるので、データ処理装置10は、判定基準値k(=P×N)として「0」を導出する。規格外と判定された特性データの個数「4」は、判定基準値k(=0)以下ではないので、データ処理装置10は、図2(b)に示す規格外の特性データが除外された新たな集合(N=1088)について、ステップS22からステップS28までの処理を繰り返し実行する。
なお、規格上限値(μ+5σ)以上の特性値を有する半導体装置の理論上の発生確率Pは、上記の(1)式および(2)式に従って算出することができる。(1)式では、規格上限値および規格下限値の双方が設定される場合を示しているが、本例では、規格下限値(μ−5σ)は負値となり考慮しないので片側規格となる。片側規格の場合、(1)式における積分範囲は、−∞からμ+5σとなり、その結果、P=0.00003%(0.3ppm)となる。
データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS22〜ステップS24(2回目)を実行することによって、図2(b)に示す特性データの集合について規格上限値(μ+5σ)として、0.234を導出する。なお、図2(b)に示す特性データの集合における平均値μは0.058であり、標準偏差σは、0.035である。また、規格下限値(μ−5σ)は負値となるため考慮しないこととする。
データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS25(2回目)を実行することによって、規格上限値0.234よりも大きい値を有する(すなわち規格外である)5個の特性データを特定する。データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS26(2回目)を実行することによって、規格外と判定された5個の特性データを図2(b)に示す特性データの集合から除外し、これによって新たな集合を生成する。図2(c)は、規格外と判定された5個の特性データを図2(b)に示す特性データの集合から除外することによって生成された新たな集合(N=1083)を示すヒストグラムである。
データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS27(2回目)を実行することによって規格外と判定された特性データの個数として「5」を導出する。データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS28(2回目)を実行することによって規格外の特性データの個数「5」が判定基準値k以下であるか否かを判断する。データ処理装置10は、1サイクル目と同様、判定基準値k(=P×N)として「0」を導出する。規格外と判定された特性データの個数「5」は、判定基準値k(=0)以下ではないので、データ処理装置10は、図2(c)に示す規格外の特性データが除外された新たな集合(N=1083)について、ステップS22からステップS28までの処理を更に繰り返し実行する。
データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS22〜ステップS28(3回目)を実行することによって、図2(c)に示す特性データの集合について規格上限値(μ+5σ)として、0.173を導出する。なお、図2(c)に示す特性データの集合における平均値μは0.058であり、標準偏差σは、0.023である。また、規格下限値(μ−5σ)は負値となるため考慮しないこととする。
データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS25(3回目)を実行することによって、規格上限値0.173よりも大きい値を有する(すなわち規格外である)特性データを特定する。図2(c)に示す特性データの集合においては、規格外となる特性データは存在しない。従って、データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS27(3回目)を実行することによって規格外の特性データの個数として「0」を導出する。データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS28(3回目)を実行することによって規格外の特性データの個数「0」が判定基準値k以下であるか否かを判断する。規格外の特性データの個数「0」は、判定基準値k(=0)以下であるので、データ処理装置10は、これまでに規格外であると判定された9個の特性データについては不良判定を行い、それ以外の1083個の特性データについては良判定を行う。データ処理装置10は、かかる選別結果をディスプレイ140上に表示させる。
以上のように、本発明の実施形態に係るデータ処理装置10は、複数の数値データを含む数値データの集合を統計処理することによって動的に規格値を導出し、当該規格値を用いて規格外の数値データを特定するとともに、分布外れの数値データである規格外の数値データを元の数値データの集合から除外する処理を行う。データ処理装置10は、規格外と判定された数値データの個数が、正規分布に基づく理論上の発生個数よりも多い場合には、規格外と判定される数値データの個数が理論上の発生個数以下となるまで、規格外の数値データを元の集合から除外した新たな集合について上記の処理を繰り返し実行する。このように、データ処理装置10は、ダイナミックPAT手法による選別を再帰的に実行する。これにより、数値データの集合に含まれる発生頻度の低い分布外れの数値データが順次除外され、主分布のみを抽出して規格値を設定することが可能となる。すなわち、分布外れ品の影響を受けることなく規格範囲を定めることが可能となる。本実施形態に係るデータ処理装置によれば、分布外れの特性データを多数含む図2(a)に示す特性データの集合および分布外れの特性データを含まないものと考えられる図2(c)に示す特性データの集合について最終的には、同一の規格値を導出することができる。
このように、本発明の実施形態に係るデータ処理装置によれば、主分布から外れる分布外れの数値データの有無に関わらず、常に適切な規格値を導出して数値データの選別を行うことができる。従って、本実施形態に係るデータ処理装置を半導体装置等の選別に利用した場合に、正規分布から外れる分布外れ品の選別を従来よりも高い精度で行うことが可能となる。
なお、上記の実施形態においては、規格上限値(μ+aσ)および規格下限値(μ−aσ)から外れる数値データの理論上の発生個数を判定基準値kとして導出する場合を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、規格上限値(μ+aσ)および規格下限値(μ−aσ)から外れる数値データの理論上の発生個数を、経験等に基づいて調整することによって得た値を判定基準値kとして導出してもよい。例えば、1000個の数値データにおいて、規格範囲から外れる数値データの理論上の発生個数が0.1個である場合に、判定基準値kを0に設定してもよいし、1〜3程度の値に設定してもよい。また、規格範囲から外れる数値データの理論上の発生個数が予測できる場合には、演算によらず予め定めた判定基準値kを用いてもよい。
また、上記の実施形態においては、規格外の数値データを元の集合から除外する処理(図5のステップS26)を規格外の数値データの個数が判定基準を満足するか否かを判定する処理(図5のステップS28)よりも前に実施しているが、これに限定されるものではない。規格外の数値データを元の集合から除外する処理を、規格外の数値データの個数が判定基準を満足するか否かを判定する処理よりも後に実施してもよい。
また、以上の説明では、データ処理装置10の処理対象となる数値データの一例として半導体装置の電気特性の測定値を示す特性データを例示したが、これに限定されるものではない。本実施形態に係るデータ処理装置10は、半導体装置以外の対象物について取得された寸法データ、膜厚データおよび物性値データ等の正規分布に従うあらゆる数値データについて処理することが可能である。
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係るデータ処理装置において、判定部14は、選別部13によって特定された規格外の数値データの発生率が、所定の判定基準値m以下であるか否かを判定する処理を行う点で、第1の実施形態に係るデータ処理装置と異なる。判定部14は、判定基準値mを、規格値導出部12において導出された規格値に基づいて導出する。具体的には、判定部14は、数値データの集合が正規分布に従うものとした場合における、規格上限値(μ+aσ)および規格下限値(μ−aσ)から外れる数値データの理論上の発生確率Pを判定基準値mとして導出する。ここで、規格外れとなる数値データの理論上の発生確率Pは上記(1)式および(2)式に従って導出することができる。
図7は、CPU100によって実行される本発明の第2の実施形態に係る選別処理プログラムにおける処理の流れを示すフローチャートである。選別処理プログラムは、記憶装置110の補助記憶装置112内に格納されている。CPU100は、例えば、キーボード120を介して実行が指示された場合に選別処理プログラムの実行を開始する。
ステップS41において、CPU100は、データ取得部11として機能し、インターフェース130を介して測定装置等の外部装置から複数の数値データを含む数値データの集合を取得し、取得した数値データの集合を記憶装置110に格納する。
ステップS42において、CPU100は、規格値導出部12として機能し、ステップS41において取得した数値データの集合について平均値μを導出する。
ステップS43において、CPU100は、規格値導出部12として機能し、ステップS41において取得した数値データの集合について標準偏差σを導出する。
ステップS44において、CPU100は、規格値導出部12として機能し、標準偏差σに所定の係数a(但しaは正の整数または小数)を乗じた値aσを平均値μに加算した値(μ+aσ)を規格上限値として導出するとともに、aσを平均値μから減算した値(μ−aσ)を規格下限値として導出し、これらを記憶装置110に格納する。なお、係数aは、要求される品質等に応じて定められる数値であり、例えば、キーボード120を介して入力される。
ステップS45において、CPU100は、選別部13として機能し、ステップS44において導出された規格上限値および規格下限値によって定まる規格範囲から外れる数値データを特定し、当該規格外の数値データに対応する識別番号を記憶装置110に格納する。なお、本ステップにおいて、規格範囲内の数値データを特定することによって間接的に規格範囲から外れる数値データを特定してもよい。
ステップS46において、CPU100は、規格外と判定された数値データを元の数値データの集合から除外し、これによって新たな集合を生成し、当該新たな集合を記憶装置110に格納する。
ステップS47において、CPU100は、判定部14として機能し、ステップS45において規格外と判定された数値データの発生率を導出する。CPU100は、規格外の数値データの個数を集合の母数Nで除算することによって規格外の数値データの発生率を導出する。
ステップS48において、CPU100は、判定部14として機能し、ステップS47において導出した規格外の数値データの発生率が判定基準値m以下であるか否かを判定する処理を行う。
ここで、図8は、ステップS48において、CPU100が判定基準値mを導出する際に実行する判定基準値導出処理プログラムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS51において、CPU100は、ステップS41において取得した数値データの集合が正規分布に従う場合における、規格上限値(μ+aσ)および規格下限値(μ−aσ)から外れる数値データの理論上の発生確率Pを上記の(1)式および(2)式に従って導出する。そして、CPU100は、導出した発生確率Pを判定基準値mとして導出する。すなわち、CPU100は、選別対象となる数値データの集合において、規格上限値(μ+aσ)および規格下限値(μ−aσ)から外れる数値データの理論上の発生確率Pを判定基準値mとして導出する。
CPU100は、ステップS48において規格外の数値データの発生率が判定基準値m以下ではなく判定基準を満足しないと判定した場合、すなわち分布外れの数値データの全てが除外されていないと判定した場合には、処理をステップS42に戻す。すなわちCPU100は、ステップS45において特定した規格範囲から外れる数値データを元の数値データの集合から除外した新たな集合についてステップS42からステップS48までの処理を繰り返し実行する。CPU100は、ステップS48において規格外の数値データの発生率が判定基準値m以下であり判定基準を満足すると判定されまで(規格外と判定される数値データの発生率が理論値以下となるまで)、規格範囲から外れる数値データを元の数値データの集合から除外した新たな集合についてステップS42からステップS48までの処理を繰り返し実行する。
一方、CPU100は、ステップS48において規格外の数値データの発生率が判定基準値m以下であり判定基準を満足すると判定した場合、すなわち分布外れの数値データの全てが除外されたと判定した場合には、処理をステップS49に移行する。ステップS49においてCPU100は出力部15として機能し、それまでに特定された全ての規格外の数値データと、それ以外の数値データとの選別結果を出力する処理を行う。CPU100は、例えば、各数値データに対応する識別番号に、選別結果に応じた表示(例えばPassおよびFail)を付与することによって選別結果を表示してもよい。あるいは、選別対象がウェハ内に形成された半導体装置である場合には、ウェハ内における半導体装置の配置と当該半導体装置の選別結果を対応付けた不良マップ画像を表示してもよい。ステップS49における出力処理が完了すると選別処理プログラムが終了する。
次に、第2の実施形態に係るデータ処理装置10における作用・効果について図9(a)〜図9(c)を参照しつつ説明する。
図9(a)〜図9(c)は、半導体装置のある特性値を示す特性データのヒストグラムの一例を示す図である。図9(a)〜図9(c)において横軸は特性値であり、縦軸は頻度であり対数表示としている。
図9(a)に示す特性データの集合(N=1092)について、第2の実施形態に係るデータ処理装置10が選別処理を行う場合について以下に説明する。
データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS42〜ステップS44を実行することによって、図9(a)に示す特性データの集合について規格上限値(μ+aσ)として、0.410を導出する。ここで、係数aは3とした。すなわち、規格上限値は、μ+3σである。なお、図9(a)に示す特性データの集合における平均値μは0.058であり、標準偏差σは、0.117である。また、規格下限値(μ−3σ)は負値となるため考慮しないこととする。
データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS45を実行することによって、規格上限値0.410よりも大きい値を有する(すなわち規格外である)7個の特性データを特定する。データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS46を実行することによって規格外と判定された7個の特性データを図9(a)に示す特性データの集合から除外し、これによって新たな集合を生成する。図9(b)は、規格外と判定された7個の特性データを図9(a)に示す特性データの集合から除外することによって生成された新たな集合(N=1085)を示すヒストグラムである。
データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS47を実行することによって規格外の特性データの発生率として「0.641%」(≒7/1092)を導出する。データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS48を実行することによって規格外の特性データの発生率「0.641%」が判定基準値m以下であるか否かを判定する。ここで、規格上限値(μ+3σ)以上の特性値を有する半導体装置の理論上の発生確率Pは、上記の(1)式および(2)式に従って算出することができる。(1)式では、規格上限値および規格下限値の双方が設定される場合を示しているが、本例では、規格下限値(μ−3σ)は負値となり考慮しないので片側規格となる。片側規格の場合、(1)式における積分範囲は、−∞からμ+3σとなり、その結果、P=0.13%(1300ppm)となる。本例では規格上限値(μ+3σ)以上の特性値を有する半導体装置の理論上の発生確率P(=0.13%)を調整した値である0.200%が判定基準値mとして設定されているものとする。規格外と判定された特性データの発生率「0.641%」は、判定基準値m(=0.200%)以下ではないので、データ処理装置10は、図9(b)に示す規格外の特性データが除外された新たな集合(N=1085)について、ステップS42からステップS48までの処理を繰り返し実行する。
データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS42〜ステップS44(2回目)を実行することによって、図9(b)に示す特性データの集合について規格上限値(μ+3σ)として0.139を導出する。なお、図9(b)に示す特性データの集合における平均値μは0.058であり、標準偏差σは、0.027である。また、規格下限値(μ−3σ)は負値となるため考慮しないこととする。
データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS45(2回目)を実行することによって、規格上限値0.139よりも大きい値を有する(すなわち規格外である)3個の特性データを特定する。データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS46(2回目)を実行することによって、規格外と判定された3個の特性データを図9(b)に示す特性データの集合から除外し、これによって新たな集合を生成する。図9(c)は、規格外と判定された3個の特性データを図9(b)に示す特性データの集合から除外することによって生成された新たな集合(N=1082)を示すヒストグラムである。
データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS47(2回目)を実行することによって規格外と判定された特性データの発生率として「0.276%」(≒3/1085)を導出する。データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS48(2回目)を実行することによって規格外の特性データの発生率「0.276%」が判定基準値m(=0.200%)以下であるか否かを判断する。規格外と判定された特性データの発生率「0.276%」は、判定基準値m(=0.200%)以下ではないので、データ処理装置10は、図9(c)に示す規格外の特性データが除外された新たな集合(N=1082)について、ステップS42からステップS48までの処理を更に繰り返し実行する。
データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS42〜ステップS48(3回目)を実行することによって、図9(c)に示す特性データの集合について規格上限値(μ+3σ)として、0.127を導出する。なお、図9(c)に示す特性データの集合における平均値μは0.058であり、標準偏差σは、0.023である。また、規格下限値(μ−3σ)は負値となるため考慮しないこととする。
データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS45(3回目)を実行することによって、規格上限値0.127よりも大きい値を有する(すなわち規格外である)特性データを特定する。図9(c)に示す特性データの集合においては、規格外となる特性データは存在しない。従って、データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS47(3回目)を実行することによって規格外の特性データの発生率として「0%」を導出する。データ処理装置10は、選別処理プログラムのステップS48(3回目)を実行することによって規格外の特性データの発生率「0%」が判定基準値m以下であるか否かを判断する。規格外の特性データの発生率「0%」は、判定基準値m(=0.200%)以下であるので、データ処理装置10は、これまでに規格外であると判定された10個の特性データについては不良判定を行い、それ以外の1082個の特性データについては良判定を行う。データ処理装置10は、かかる選別結果をディスプレイ140上に表示させる。
以上のように、本発明の第2の実施形態に係るデータ処理装置10は、複数の数値データを含む数値データの集合を統計処理することによって動的に規格値を導出し、当該規格値を用いて規格外の数値データを特定するとともに、分布外れの数値データである規格外の数値データを元の数値データの集合から除外する処理を行う。データ処理装置10は、規格外の数値データの発生率が、正規分布に基づく理論上の発生確率Pよりも大きい場合には、規格外と判定される数値データの発生率が理論上の発生確率P以下となるまで、規格外の数値データを元の集合から除外した新たな集合について上記の処理を繰り返し実行する。このように、データ処理装置10は、ダイナミックPAT手法による選別を再帰的に実行する。これにより、数値データの集合に含まれる発生頻度の低い分布外れの数値データが順次除外され、主分布のみを抽出して規格値を設定することが可能となる。すなわち、分布外れ品の影響を受けることなく規格範囲を定めることが可能となる。本実施形態に係るデータ処理装置によれば、分布外れの特性データを多数含む図9(a)に示す特性データの集合および分布外れの特性データを含まないものと考えられる図9(c)に示す特性データの集合について最終的には、同一の規格値を導出することができる。
このように、本発明の第2の実施形態に係るデータ処理装置によれば、第1の実施形態と同様、主分布から外れる分布外れの数値データの有無に関わらず、常に適切な規格値を導出して数値データの選別を行うことができる。従って、本実施形態に係るデータ処理装置を、半導体装置等の選別に利用した場合に、正規分布から外れる分布外れ品の選別を従来よりも高い精度で行うことが可能となる。また、第2の実施形態に係るデータ処理装置によれば、規格外の数値データの理論上の発生確率Pを判定基準値mとしてダイナミックPAT手法による再度の選別の要否を判定するので、規格外の数値データの理論上の発生個数を判定基準値kとする第1の実施形態と比較して、より適切な規格値を設定して選別することが可能となる。
なお、上記の実施形態においては、規格上限値(μ+aσ)および規格下限値(μ−aσ)から外れる数値データの理論上の発生確率Pを判定基準値mとして導出する場合を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、図9(a)〜図9(c)を参照して説明した実例のように、規格上限値(μ+aσ)および規格下限値(μ−aσ)から外れる数値データの理論上の発生確率Pを、経験等に基づいて調整することによって得た値を判定基準値mとして導出してもよい。例えば、規格範囲から外れる数値データの理論上の発生率Pが0.1%である場合に、判定基準値mを0.5%程度に設定してもよい。また、規格範囲から外れる数値データの理論上の発生率が予測できる場合には、演算によらず予め定めた判定基準値mを用いてもよい。
また、上記の実施形態においては、規格外の数値データを元の集合から除外する処理(図7のステップS46)を規格外の数値データの発生率が判定基準を満足するか否かを判定する処理(図7のステップS48)よりも前に実施しているが、これに限定されるものではない。規格外の数値データを元の集合から除外する処理を、規格外の数値データの発生率が判定基準を満足するか否かを判定する処理よりも後に実施してもよい。
また、以上の説明では、データ処理装置10の処理対象となる数値データの一例として半導体装置の電気特性の測定値を示す特性データを例示したが、これに限定されるものではない。本実施形態に係るデータ処理装置10は、半導体装置以外の対象物について取得された寸法データ、膜厚データおよび物性値データ等の正規分布に従うあらゆる数値データの集合を処理対象とすることができる。
図10は、上記した第1の実施形態または第2の実施形態に係るデータ処理装置10を組み込んだ測定装置の一例であるウェハメジャー装置200の外観図である。ウェハメジャー装置200は、半導体ウェハに含まれる複数の半導体装置の電気特性を測定する測定部210と、データ処理装置10を構成するディスプレイ221を含むコンピュータ220と、を含んでいる。なお、コンピュータ220は、測定部210における測定を制御する機能をも有する。
測定部210は、ウェハ上の半導体装置の電極パッドに当接し得るプローブ(図示せず)を有している。コンピュータ220は、所定の測定プログラムを実行することにより、プローブの位置決めを行い、測定部210に半導体装置の電気特性を測定させる。
測定部210において測定された特性値は、特性データとしてコンピュータ220の記憶装置に記憶される。コンピュータ220は、上記第1の実施形態または第2の実施形態に係る選別処理プログラムを実行することにより、測定部210において取得された特性データの集合について選別処理を行い、選別結果をディスプレイ221上に表示させる。このように、測定装置に本発明の実施形態に係るデータ処理装置を組み込むことにより、半導体装置について測定値の取得から選別までを一貫して行うとともに、分布外れ品を従来よりも高い精度で特定することが可能となる。
また、上記した第1の実施形態または第2の実施形態に係るデータ処理装置10を、マーキング装置に組み込んでもよい。マーキング装置は、例えば、半導体ウェハ上の不良判定となった半導体装置にマーキングを行う装置である。マーキング装置は、上記第1の実施形態または第2の実施形態に係る選別処理プログラムを実行することによりウェハ上の半導体装置の選別を行い、当該選別結果に応じて半導体装置にマーキングを行う。このように、マーキング装置に本発明の実施形態に係るデータ処理装置を組み込むことにより、選別対象物に対して高精度な選別結果を反映したマーキングを行うことが可能となる。なお、マーキング装置は、上記したウェハメジャー装置200に組み込み、測定からマーキングまでの一連の処理を実施可能に構成してもよい。
また、上記した第1の実施形態または第2の実施形態に係るデータ処理装置10を、チップマウンタに組み込んでもよい。チップマウンタは、半導体ウェハ上の良判定がなされた半導体装置のみを選択的にピックアップしてフレームや実装基板等にマウントする装置である。チップマウンタは、上記第1の実施形態または第2の実施形態に係る選別処理プログラムを実行することによりウェハ上の半導体装置の選別を行い、当該選別によって良判定となった半導体装置のみをフレームや実装基板等にマウントする。このように、チップマウンタに本発明の実施形態に係るデータ処理装置を組み込むことにより、適確に選別された良品チップのみをフレームや実装基板等にマウントすることが可能となる。なお、上記したマーキング装置およびチップマウンタは、本発明の選別装置の一例である。