JP6165708B2 - オレフィン系重合体配合有機無機複合体及びその形成用組成物 - Google Patents
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Description
本願は、2012年 3月2日に出願された日本国特許出願第2012−46143号に対し優先権を主張し、その内容をここに援用する。
他方、シクロオレフィン基材、PP基材、PE基材等のオレフィン基材は無機膜との密着性が悪く、そのため、良好な密着性を実現するためには、無機膜とオレフィン基材との間にアンカーコート(下地膜)を必要とする。現在、当該アンカーコートは1層では不十分であり、(A)オレフィン基材と密着性の良い層/(B)A及びCの両方と密着性が良い層/(C)無機膜との密着性が良い層の3層構造が必要である。しかしながら、層の数を増やすことにより、高度な積層技術が必要となり製造コストも高くなる。特にシクロオレフィン基材の長所である良好な光学特性を低下させる問題があった。そのため、1層でオレフィン基材と無機膜のアンカーコートとして使用可能なアンカーコート剤が検討されてきたが、上記特許文献5や6に記載の有機無機複合膜でも不十分であった。
(1)a)式(I)
RnSiX4−n・・・(I)
(式中、RはSiに炭素原子が直接結合する有機基を表し、Xは水酸基又は加水分解性基を表す。nは1を表し、各Xは同一でも異なっていてもよい。)で表される少なくとも1種であり、
Fedorsの推算法により求められたRnの溶解パラメータ(SP1)が、Fedorsの推算法により求められた共役ジエン系重合体の溶解パラメータ(SP2)よりも小さく、かつ、その差が1.6以上のもの(Si1)である有機ケイ素化合物を、350nm以下の波長の光の作用によって表面側の炭素成分を除去することができるチタンの「金属キレート化合物または有機酸金属化合物」を含むシラノール触媒を使用して縮合した縮合物、
b)光重合開始剤又は熱重合開始剤、
c)共役ジエン系重合体
を含有するアンカーコート用有機無機複合体形成用組成物。
(2)a)式(I)
RnSiX4−n・・・(I)
(式中、RはSiに炭素原子が直接結合する有機基を表し、Xは水酸基又は加水分解性基を表す。nは1を表し、各Xは同一でも異なっていてもよい。)で表される少なくとも1種であり、
Fedorsの推算法により求められたRnの溶解パラメータ(SP1)が、Fedorsの推算法により求められた共役ジエン系重合体の溶解パラメータ(SP2)よりも小さく、かつ、その差が1.6以上のもの(Si1)である有機ケイ素化合物を、350nm以下の波長の光の作用によって表面側の炭素成分を除去することができるチタンの「金属キレート化合物または有機酸金属化合物」を含むシラノール触媒を使用して縮合した縮合物、
b)光重合開始剤又は熱重合開始剤、
c)共役ジエン系重合体
の硬化物を含有する有機無機複合体からなるアンカーコート、及び
(3)(a)オレフィン基材、および、(b)上記(1)に記載の組成物から形成されたアンカーコート層を含む積層体に関する。
本発明のアンカーコート用有機無機複合体形成用組成物は、
a)式(I)
RnSiX4−n・・・(I)
(式中、RはSiに炭素原子が直接結合する有機基を表し、Xは水酸基又は加水分解性基を表す。nは1を表し、各Xは同一でも異なっていてもよい。)で表される少なくとも1種であり、
Fedorsの推算法により求められたRnの溶解パラメータ(SP1)が、Fedorsの推算法により求められた共役ジエン系重合体の溶解パラメータ(SP2)よりも小さく、かつ、その差が1.6以上のもの(Si1)である有機ケイ素化合物(以下、単に、有機ケイ素化合物ということがある。)を、350nm以下の波長の光の作用によって表面側の炭素成分を除去することができるチタンの「金属キレート化合物または有機酸金属化合物」を含むシラノール触媒を使用して縮合した縮合物、
b)光重合開始剤又は熱重合開始剤、
c)共役ジエン系重合体
を含有する。
本発明の有機無機複合体形成用組成物は、通常、上記成分以外に、水及び/又はその他の溶媒を含有する。
本発明の有機無機複合体形成用組成物中の固形分(有機ケイ素成分、オレフィン系重合体等)としては、1〜75質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましい。
本発明の有機ケイ素化合物の式(I)中、R及びXは各々次のとおりである。
Rは、Siに炭素原子が直接結合する有機基を表す。かかる有機基としては、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよい炭化水素のポリマーからなる基等を挙げることができる。具体的には、置換されていてもよい炭素数1〜30の炭化水素基が挙げられ、置換されていてもよい炭素数1〜30、好ましくは1〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換されていてもよい炭素数3〜8のシクロアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜10の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基又は置換されていてもよい炭素数3〜8のシクロアルケニル基が好ましく、また、芳香環を有する炭化水素基であってもよい。
「C6−10アリール基」としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
「C6−10アリールC1−8アルキル基」としては、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニル−n−プロピル基、4−フェニル−n−ブチル基、5−フェニル−n−ペンチル基、8−フェニル−n−オクチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
「C6−10アリールC2−6アルケニル基」としては、スチリル基、3−フェニル−プロパ−1−エン−1−イル基、3−フェニル−プロパ−2−エン−1−イル基、4−フェニル−ブタ−1−エン−1−イル基、4−フェニル−ブタ−3−エン−1−イル基、5−フェニル−ペンタ−1−エン−1−イル基、5−フェニル−ペンタ−4−エン−1−イル基、8−フェニル−オクタ−1−エン−1−イル基、8−フェニル−オクタ−7−エン−1−イル基、ナフチルエテニル基等が挙げられる。
「エポキシアルキル基」としては炭素数3〜10の直鎖又は分岐鎖のエポキシアルキル基が好ましく、例えば
グリシジル基、グリシジルメチル基、2−グリシジルエチル基、3−グリシジルプロピル基、4−グリシジルブチル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、5,6−エポキシヘキシル基等の直鎖状のエポキシ基を含むアルキル基;
β−メチルグリシジル基、β−エチルグリシジル基、β−プロピルグリシジル基、2−グリシジルプロピル基、2−グリシジルブチル基、3−グリシジルブチル基、2−メチル−3−グリシジルプロピル基、3−メチル−2−グリシジルプロピル基、3−メチル−3,4−エポキシブチル基、3−エチル−3,4−エポキシブチル基、4−メチル−4,5−エポキシペンチル基、5−メチル−5,6−エポキシヘキシル基等の枝分かれ状のエポキシ基を含むアルキル基等が挙げられる。
「グリシドキシアルキル基」としては、グリシドキシメチル基、グリシドキシプロピル基等が挙げられる。
本発明において使用される有機ケイ素化合物は、更に、SP1がSP2よりも小さく、かつその差が1.6未満のもの、又はSP1がSP2よりも大きいもの(Si2)を含んでいても良く、Si2が含まれる場合は、(Si1:Si2)が、5:5〜10:0であり、好ましくは、9:1〜10:0である。
Fedorsの式:SP値(δ)=(Ev/v)1/2=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2Ev:蒸発エネルギー
v:モル体積
Δei:各成分の原子又は原子団の蒸発エネルギー
Δvi:各原子又は原子団のモル体積
したがって、本発明において使用される有機ケイ素化合物は、本発明において使用されるオレフィン系重合体の種類に応じて異なる。有機ケイ素化合物のRn及びオレフィン系重合体の溶解パラメータ(SP値)はFedorsの推算法に基づき計算することができるから、あらかじめ計算されたSP値を基に、有機ケイ素化合物とオレフィン系重合体の組み合わせを決定することができる。
これらは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の有機ケイ素化合物の縮合物は、シラノール触媒を用いて、式(I)の有機ケイ素化合物を縮合反応させることにより得ることができる。
本発明の有機無機複合体形成用組成物には、上記有機ケイ素化合物の縮合反応に使用したシラノール触媒が含有されていてもよい。
シラノール縮合触媒としては、式(I)で表される化合物中の加水分解性基を加水分解し、シラノールを縮合してシロキサン結合とするものであれば特に制限されず、有機金属、有機酸金属塩、金属キレート化合物、それらの加水分解物及びそれらの縮合物、酸、塩基、からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。シラノール縮合触媒は1種単独、又は、2種以上の組合せで使用することができる。
有機金属としては、例えば、テトラメチルチタン、テトラプロピルジルコニウム等のアルキル金属化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコラート等が挙げられる。
有機酸金属塩としては例えば、カルボン酸金属塩、スルフォン酸金属塩、フェノール金属塩等が挙げられる。
金属キレート化合物としては、β−ケトカルボニル化合物、β−ケトエステル化合物、α−ヒドロキシエステル化合物等との金属キレート化合物が挙げられる。
酸としては、有機酸、鉱酸が挙げられ、具体的には例えば、有機酸としては酢酸、ギ酸、シュウ酸、炭酸、フタル酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等、鉱酸としては、塩酸、硝酸、ホウ酸、ホウフッ化水素酸等が挙げられる。
ここで、光照射によって酸を発生する光酸発生剤、具体的には、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等も酸に包含される。
塩基としては、テトラメチルグアニジン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン等の強塩基類;有機アミン類、有機アミンのカルボン酸中和塩、4級アンモニウム塩等が挙げられる。
光感応性化合物とは、そのメカニズムの如何によらず、表面側から照射される350nm以下の波長の光の作用によって、表面側の炭素成分を除去することができる化合物であり、好ましくは、表面から深さ方向2nmにおける表面部の炭素含有量が、炭素量が減少していない部分(膜の場合、例えば、膜裏面から深さ方向10nmにおける裏面部)の炭素含有量の80%以下、より好ましくは2〜60%、さらに好ましくは2〜40%とすることができる化合物であり、特に好ましくは、炭素成分を、その除去量が表面側から漸次減少するように所定深さまで除去することが可能な化合物、すなわち、表面から所定深さまで炭素含有量が漸次増加する層を形成することができる化合物をいう。具体的には、例えば、350nm以下の波長の光を吸収して励起する化合物を挙げることができる。
ここで、350nm以下の波長の光とは、350nm以下のいずれかの波長の光を成分とする光源を用いてなる光、好ましくは、350nm以下のいずれかの波長の光を主成分とする光源を用いてなる光、すなわち、最も成分量の多い波長が350nm以下の光源を用いてなる光を意味する。
尚、光感応性化合物の誘導体は、具体的には、金属キレート化合物、有機酸金属塩、または2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物の加水分解物またはそれらの縮合物の更なる加水分解物または縮合物等を例示することができる。
本発明のオレフィン系重合体は、炭素数2〜30のオレフィンの1種もしくは2種以上の重合体、及び他の共重合し得るモノマーとの共重合体を包含する。
また、重合体末端の一方又は両方がカルボキシル基、アクリル基、無水マレイン酸、ヒドロキシ基、エポキシ基等で変性されていてもよい。
本発明のオレフィン系重合体は、重合度が2以上のものであれば良く、数平均分子量Mnは50〜100,000が好ましく、50〜10,000がより好ましい。
1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン等の非共役ジエン;
1,3−ブタジエン、イソプレン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロオクタジエン、1,3−トリシクロデカジエン、ミルセン、クロロプレン等の共役ジエンが挙げられ、特に好ましいのは共役ジエンである。
(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸1−エチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(エチレングリコールの単位数は2〜100)(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等を例示することができ、これらは1種単独で、あるいは2種以上混合して、用いることができる。
ここで、重合体中のオレフィンモノマーとその他の共重合し得るモノマーとのモル比は、100:0〜50:50、好ましくは100:0〜70:30、より好ましくは100:0〜80:20である。
オレフィン重合体の重合開始剤としては、光重合開始剤と熱重合開始剤が挙げられる。
光重合開始剤:
本発明の光重合開始剤は、(a)光照射によりカチオン種を発生させる化合物及び(b)光照射により活性ラジカル種を発生させる化合物等を挙げることができる。
光照射によりカチオン種を発生させる化合物としては、例えば、下記式(II)に示す構造を有するオニウム塩を好適例として挙げることができる。
このオニウム塩は、光を受けることによりルイス酸を放出する化合物である。
[R1 aR2 bR3 cR4 dW]+e[MLe+f]−e (II)
(式(II)中、カチオンはオニウムイオンであり、Wは、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Cl、又はN≡N−であり、R1、R2、R3及びR4は同一又は異なる有機基であり、a、b、c、及びdは、それぞれ0〜3の整数であって、(a+b+c+d)はWの価数に等しい。Mは、ハロゲン化物錯体[MLe+f]の中心原子を構成する金属又はメタロイドであり、例えば、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Lは、例えば、F、Cl、Br等のハロゲン原子であり、eは、ハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷であり、fは、Mの原子価である。)
また、式〔MLf(OH)−〕に示す陰イオンを有するオニウム塩を用いることもできる。さらに、過塩素酸イオン(ClO4 −)、トリフルオロメタンスルフォン酸イオン(CF3SO3 −)、フルオロスルフォン酸イオン(FSO3 −)、トルエンスルフォン酸イオン、トリニトロベンゼンスルフォン酸陰イオン、トリニトロトルエンスルフォン酸陰イオン等の他の陰イオンを有するオニウム塩でもよい。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱重合開始剤は、加熱によりラジカルを発生する化合物のことを指し、例えば、有機過酸化物、過硫酸塩、アゾ化合物及びレドックス開始剤等が挙げられる。
上記有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド及びジクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルペルマレエートのようなパーオキシド;1,6ビス(t−ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサン等のパーオキシカーボネート;パーオキシケタール等が挙げられる。
上記過硫酸塩としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
1)金属化合物粒子
本発明においては、金属化合物粒子が配合されていてもよい。
金属化合物粒子の金属としては、ケイ素、タングステン、アンチモン、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、マグネシウム、鉄、錫、亜鉛、カドミウム、ニッケル、銅、ベリウム、ルテニウム、トリウム、イットリウム、水銀、セシウム、クロム、ランタンなどが挙げられ、金属化合物としては、シリカ、酸化タングステン、酸化アンチモン、ジルコニア、アルミナ、チタニア、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化イットリウム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ベリウム、酸化ルテニウム、酸化トリウム、酸化水銀、酸化セリウム、酸化クロム等の金属酸化物やフッ化マグネシウム等が挙げられる。
金属化合物粒子は、シリカと、ジルコニア、アルミナ、チタニアから選ばれる少なくとも1種が好ましく、シリカゾルとジルコニアゾルとの混合ゾルであることがより好ましい。
用いる金属化合物粒子は、2次粒子であっても1次粒子であっても特に制限はないが、1次粒子であるのが好ましい。
金属化合物の粒子径は、特に限定されないが、平均1次粒子径で1nm〜100nmの範囲が好ましく、さらに1nm〜50nmの範囲が好ましい。
また、金属化合物粒子の性状は、ゾルであっても粉体であっても良いが、通常はゾルを用いるのが好ましい。ゾルは、通常、コロイド状の分散液であるので、他の成分と単に混合することで均一な分散液が簡便にでき、また、沈降などにより不均一になる問題も少ない。
また、各金属化合物粒子の表面を、シランカップリング剤等により、表面修飾されたものを用いることができ、具体的には、炭化水素基等で疎水性処理を施されたシリカゾル等を例示することができる。
本発明の有機無機複合体形成用組成物の固形分中の金属化合物粒子の配合量は、有機ケイ素化合物の縮合物、オレフィン系重合体及び金属化合物粒子等の全質量に対して、0.1〜50質量%、好ましくは0.1〜25質量%である。
本発明に用いる溶媒としては、特に制限されるものではなく、例えば、水;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;メタノール、エタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール誘導体類;等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本発明の有機無機複合体形成用組成物には、得られる塗膜の着色、厚膜化、下地への紫外線透過防止、防蝕性の付与、耐熱性などの諸特性を発現させるために、別途、充填材を添加・分散させることも可能である。ただし、酸化物については、上記金属酸化物粒子と重複して記載されるものもある。
この充填材としては、例えば有機顔料、無機顔料などの非水溶性の顔料または顔料以外の粒子状、繊維状もしくは鱗片状の金属および合金ならびにこれらの酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、硫化物などが挙げられる。この充填材の具体例としては、粒子状、繊維状もしくは鱗片状の鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、亜鉛、フェライト、カーボンブラック、ステンレス鋼、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、合成ムライト、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、ケイソウ土、消石灰、石膏、タルク、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、雲母、亜鉛緑、クロム緑、コバルト緑、ビリジアン、ギネー緑、コバルトクロム緑、シェーレ緑、緑土、マンガン緑、ピグメントグリーン、群青、紺青、岩群青、コバルト青、セルリアンブルー、ホウ酸銅、モリブデン青、硫化銅、コバルト紫、マルス紫、マンガン紫、ピグメントバイオレット、亜酸化鉛、鉛酸カルシウム、ジンクエロー、硫化鉛、クロム黄、黄土、カドミウム黄、ストロンチウム黄、チタン黄、リサージ、ピグメントエロー、亜酸化銅、カドミウム赤、セレン赤、クロムバーミリオン、ベンガラ、亜鉛白、アンチモン白、塩基性硫酸鉛、チタン白、リトポン、ケイ酸鉛、酸化ジルコン、タングステン白、鉛亜鉛華、バンチソン白、フタル酸鉛、マンガン白、硫酸鉛、黒鉛、ボーンブラック、ダイヤモンドブラック、サーマトミック黒、植物性黒、チタン酸カリウムウィスカー、二硫化モリブデンなどを挙げることができる。
本発明の有機無機複合体形成用組成物の調製方法としては、有機ケイ素化合物及び/又はその縮合物、シラノール縮合触媒、オレフィン系重合体、重合開始剤、及び必要に応じて溶媒、その他の任意成分を混合する。
本発明の有機無機複合体からなるアンカーコートは、
a)式(I)
RnSiX4−n・・・(I)
(式中、RはSiに炭素原子が直接結合する有機基を表し、Xは水酸基又は加水分解性基を表す。nは1を表し、各Xは同一でも異なっていてもよい。)で表される少なくとも1種であり、
Fedorsの推算法により求められたRnの溶解パラメータ(SP1)が、Fedorsの推算法により求められた共役ジエン系重合体の溶解パラメータ(SP2)よりも小さく、かつ、その差が1.6以上のもの(Si1)である有機ケイ素化合物を、350nm以下の波長の光の作用によって表面側の炭素成分を除去することができるチタンの「金属キレート化合物または有機酸金属化合物」を含むシラノール触媒を使用して縮合した縮合物、
b)光重合開始剤または熱重合開始剤
c)共役ジエン系重合体
の硬化物を含有する。
本発明の有機無機複合体には、有機ケイ素化合物の縮合物にシラノール縮合触媒(触媒の構造が変化した誘導体も包含する)が非結合状態で分散されてなるものや、有機ケイ素化合物の縮合物にシラノール縮合触媒(触媒の構造が変化した誘導体も包含する)が結合してなるもの(例えば、Si−O−M結合を有するもの(Mはシラノール縮合触媒中の金属原子を表す。))や、その混合状態からなるものが包含される。
上記本発明の有機無機複合体としては、具体的に、例えば、鋳型に鋳込んで成形された成形体や、基体上に塗布して形成された薄膜が挙げられる。熱重合開始剤を使用する場合には、薄膜を形成する場合、基体上に塗布した後乾燥及び/又は加熱する方法であれば特に制限されるものではない。光重合開始剤を使用する場合には、乾燥後、開始剤に適した光を照射すればよい。350nm以下の波長を含む光を照射することが好ましく、これにより、より高硬度の薄膜(有機無機複合薄膜)を得ることができる。本発明において「350nm以下の波長を含む光」とは、350nm以下の波長のみならず、350nmよりも長い波長の紫外線も有するという意味である。
なお、350nm以下の波長の光の照射とは、350nm以下のいずれかの波長の光を成分とする光源を用いる照射、好ましくは、350nm以下のいずれかの波長の光を主成分とする光源を用いる照射、すなわち、最も成分量の多い波長が350nm以下の光源を用いる照射をいう。
ESCA分析によると、本発明の有機無機複合薄膜は、薄膜表面側に式(I)で表される有機ケイ素化合物の縮合物が濃縮した層を有する。
該濃縮層が形成されている部分の炭素原子の濃度は、基材側から10nmの膜の部分の炭素原子の濃度に比べて40%以上、好ましくは50%以上少ない。
ここで、「炭素原子の濃度」とは、(全金属原子+酸素原子+炭素原子)を100%とした時の炭素原子のモル濃度を意味する。他の元素の濃度も同様である。
また、「有機ケイ素化合物の縮合物が濃縮した層」をESCA分析による炭素原子の濃度で規定しているが、「有機ケイ素化合物の縮合物が濃縮した層」では、ケイ素濃度が高くなっている。
本発明においては、炭素濃度が低いほどケイ素濃度が高くなる関係にある。
なお、以下の実施例において、MIBKはメチルイソブチルケトンを意味する。
1)有機ケイ素化合物の縮合物の調製
140mLマヨネーズ瓶にメチルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社 KBM−13)を17.00g仕込んだ。メチルトリメトキシシランに対してTiO2換算で5mol%となるようにジイソプロポキシビスアセチルアセトナートチタン(日本曹達社株式会社、T−50、TiO2換算固形分量16.5wt%)を3.02g添加した。次いで、MIBK19.91gを仕込み、攪拌速度100rpmで15分間攪拌した。メチルトリメトキシシランに対し2倍molとなるように蒸留水4.50gを仕込み、攪拌速度100rpmで攪拌しながら2時間加水分解反応を行った。この時、液温は40℃まで上昇した。反応終了後、反応液の液温が25℃になるまで30分間放置し、有機ケイ素化合物の縮合物を調製した。
ポリブタジエン(日本曹達株式会社製、G−3000、SP値約8.5)/有機ケイ素化合物の縮合物が90wt%/10wt%となるように、ポリブタジエン17.37gと上記有機ケイ素化合物の縮合物9.65gを混合し、MIBK2.29gで希釈した。ついで、ポリブタジエンの固形分に対して4wt%となるように、ジクミルパーオキサイド(熱重合開始剤:日本油脂株式会社製、パークミルD)を0.69g添加し、固形分40wt%の有機無機複合体形成用組成物を調製した。
上記のとおり調製された有機無機複合体形成用組成物を、ステンレス板上に5μmとなるようにバーコート成膜し、温風循環型乾燥機にて150℃で30分間乾燥して有機無機複合薄膜を作製した。
ESCAにより膜厚方向における各元素の濃度を測定した(図1)。
1)有機ケイ素化合物の縮合物の調製
140mLマヨネーズ瓶にメチルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社KBM-13 )を17.00g仕込んだ。メチルトリメトキシシランに対してTiO2換算で5mol%となるようにジイソプロポキシビスアセチルアセトナートチタン(日本曹達株式会社、T-50、TiO2換算固形分量:16.5wt%)を3.02g添加した。MIBK 19.91gを仕込み、15分間攪拌(攪拌速度100rpm)した。
メチルトリメトキシシランに対して2倍molとなるように蒸留水 4.50gを仕込み、加水分解反応を行った(2時間、攪拌速度100rpm)。この時液温は40℃まで上昇した。反応終了後、反応液の液温が25℃になるまで30分間放置し、有機ケイ素化合物の縮合物を調製した。
2)有機無機複合体形成用組成物の調製
ポリブタジエン(日本曹達株式会社、EA-3000、SP値8.5)/有機ケイ素化合物の縮合物=90wt%/10wt%となるように、EA-3000 17.37gと有機ケイ素化合物の縮合物9.65gを混合した後、MIBK 22.29gで希釈した。Irgacure907(光重合開始剤:登録商標、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社 重合開始剤)を、EA-3000の固形分に対して4wt%となるように0.69g添加した。固形分40wt%の有機無機複合体形成用組成物を調製した。
3)有機無機複合薄膜の作製
日本ゼオン社製ゼオノアフィルム ZF-16(188μm)上に5μmとなるようにバーコート成膜し、温風循環型乾燥機にて80℃で3分間乾燥した。続いて、集光型高圧水銀灯(365nm、313nm、254nmの波長の光を主成分とするUV光、アイグラフィックス社製、120W/cm、ランプ高9.8cm、コンベア速度5m/分)により、積算照射量400mJ/cm2の紫外線を照射して薄膜を得た。
ESCAにより、薄膜の膜厚方向における各元素の濃度を測定した。結果を図2に示す。
1)有機ケイ素化合物の縮合物の調製
140mLマヨネーズ瓶にメチルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社KBM-13 )を17.00g仕込んだ。メチルトリメトキシシランに対してTiO2換算で5mol%となるようにジイソプロポキシビスアセチルアセトナートチタン(日本曹達株式会社、T-50、TiO2換算固形分量:16.5wt%)を3.02g添加。MIBK 19.91gを仕込み、15分間攪拌(攪拌速度100rpm)した。
メチルトリメトキシシランに対して2倍molとなるように蒸留水 4.50gを仕込み、加水分解反応を行った(2時間、攪拌速度100rpm)。この時液温は40℃まで上昇した。反応終了後、反応液の液温が25℃になるまで30分間放置しし、有機ケイ素化合物の縮合物を調製した。
2)有機無機複合体形成用組成物の調製
G-1000(日本曹達株式会社、ポリブタジエン、SP値約8.3)/有機ケイ素化合物の縮合物=90wt%/10wt%となるように、G-1000 17.37gとポリシロキサン 9.65gを混合した後、MIBK 22.29gで希釈した。ついで、ポリブタジエンの固形分に対して4wt%となるように、ジクミルパーオキサイド(熱重合開始剤:日本油脂株式会社製、パークミルD)を0.69.48g添加し、固形分40wt%の有機無機複合体形成用組成物を調製した。
3)有機無機複合薄膜形成
日本ゼオン社製 ゼオノアフィルム ZF-16(188μm)上に5μmとなるようにバーコート成膜し、温風循環型乾燥機にて130℃で1時間加熱して有機無機複合薄膜を作製した。
ESCAにより膜厚方向における各元素の濃度を測定した(図3)。
(ビニルトリメトキシシランは、EA-3000とのSP値の差が1.6未満)
1)有機ケイ素化合物の縮合物の調製
140mLマヨネーズ瓶にビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社KBM-1003 )を17.81g仕込んだ。ビニルトリメトキシシランに対してTiO2換算で5mol%となるようにジイソプロポキシビスアセチルアセトナートチタン(日本曹達株式会社、T-50、TiO2換算固形分量:16.5wt%)を2.91g添加。MIBK 26.03gを仕込み、15分間攪拌(攪拌速度100rpm)した。
ビニルトリメトキシシランに対して1.5倍molとなるように蒸留水 3.25gを仕込み、加水分解反応を行った(2時間、攪拌速度100rpm)。この時液温は40℃まで上昇した。反応終了後、反応液の液温が25℃になるまで30分間放置した。
2)有機無機複合体形成用組成物の調製
EA-3000(日本曹達株式会社、ポリブタジエン、SP値8.5)/有機ケイ素化合物の縮合物=90wt%/10wt%となるように、EA-3000 17.37gと有機ケイ素化合物の縮合物9.65gを混合した後、MIBK 22.29gで希釈した。
Irgacure907(登録商標、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社 重合開始剤)を、EA-3000の固形分に対して4wt%となるように0.69g添加した。固形分40wt%のコーティング剤を得た。
3)有機無機複合薄膜の作製
日本ゼオン社製 ゼオノアフィルム ZF-16(188μm)上に5μmとなるようにバーコート成膜し、温風循環型乾燥機にて80℃で3分間乾燥した。続いて、集光型高圧水銀灯(365nm、313nm、254nmの波長の光を主成分とするUV光、アイグラフィックス社製、120W/cm、ランプ高9.8cm、コンベア速度5m/分)により、積算照射量400mJ/cm2の紫外線を照射して薄膜を得た。
ESCAにより膜厚方向における各元素の濃度を測定した(図4)。
Claims (3)
- a)式(I)
RnSiX4−n・・・(I)
(式中、RはSiに炭素原子が直接結合する有機基を表し、Xは水酸基又は加水分解性基を表す。nは1を表し、各Xは同一でも異なっていてもよい。)で表される少なくとも1種であり、
Fedorsの推算法により求められたRnの溶解パラメータ(SP1)が、Fedorsの推算法により求められた共役ジエン系重合体の溶解パラメータ(SP2)よりも小さく、かつ、その差が1.6以上のもの(Si1)である有機ケイ素化合物を、350nm以下の波長の光の作用によって表面側の炭素成分を除去することができるチタンの「金属キレート化合物または有機酸金属化合物」を含むシラノール触媒を使用して縮合した縮合物、
b)光重合開始剤又は熱重合開始剤、
c)共役ジエン系重合体
を含有するアンカーコート用有機無機複合体形成用組成物。 - a)式(I)
RnSiX4−n・・・(I)
(式中、RはSiに炭素原子が直接結合する有機基を表し、Xは水酸基又は加水分解性基を表す。nは1を表し、各Xは同一でも異なっていてもよい。)で表される少なくとも1種であり、
Fedorsの推算法により求められたRnの溶解パラメータ(SP1)が、Fedorsの推算法により求められた共役ジエン系重合体の溶解パラメータ(SP2)よりも小さく、かつ、その差が1.6以上のもの(Si1)である有機ケイ素化合物を、350nm以下の波長の光の作用によって表面側の炭素成分を除去することができるチタンの「金属キレート化合物または有機酸金属化合物」を含むシラノール触媒を使用して縮合した縮合物、
b)光重合開始剤又は熱重合開始剤、
c)共役ジエン系重合体
の硬化物を含有する有機無機複合体からなるアンカーコート。 - (a)オレフィン基材、および、(b)請求項1に記載の組成物から形成されたアンカーコート層を含む積層体。
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