第1の実施の形態.
<電力変換装置>
図1に例示するように、電力変換装置10はスイッチング素子Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2を備えている。また図1では、電源線LHが正極端P1に接続され、電源線LLが負極端P2に接続されている。これらの正極端P1および負極端P2の間には、正極端P1の電位を高電位とする直流電圧が印加される。スイッチング素子Su1,Su2は、電源線LH,LLの間で互いに直列に接続される。またスイッチング素子Su1,Su2の間の点は交流線Puに接続される。スイッチング素子Sv1,Sv2とスイッチング素子Sw1,Sw2とについても同様であり、スイッチング素子Sv1,Sv2の間の点が交流線Pvに接続され、スイッチング素子Sw1,Sw2の間の点が交流線Pwに接続される。
以下、スイッチング素子Su1,Sv1,Sw1を総称してスイッチング素子Sx1とも呼び、スイッチング素子Su2,Sv2,Sw2を総称してスイッチング素子Sx2とも呼び、交流線Pu,Pv,Pwを総称して交流線Pxとも呼ぶ。またここでは、スイッチング素子Sx1はスイッチング素子Sx2よりも電源線LH側に配置されるので、以下では、スイッチング素子Sx1を上側のスイッチング素子Sx1とも呼び、スイッチング素子Sx2を下側のスイッチング素子Sx2とも呼ぶ。
スイッチング素子Sx1,Sx2の各々は、第1電極と、第2電極と、制御電極とを有しており、第1電極から第2電極へと向かう方向のオン/オフを切り替える。ここでは第1電極は、第2電極よりも電源線LH側の電極である。例えばスイッチング素子Sx1,Sx2の各々は、第2電極の電位を基準とする制御電極の制御電圧が、オン電圧を超えたときにオンし、オン電圧を下回るときにオフする。
ここでは、スイッチング素子Sx1,Sx2は非絶縁ゲート型のトランジスタであり、例えば接合型電界効果トランジスタ(JFET、Junction-Field-Effect-Transistor)である。かかるトランジスタは例えばワイドギャップ半導体で形成される。このスイッチング素子Sx1,Sx2の各々は、ドレイン電極(第1電極)の電位を基準としたドレイン電極とゲート電極(制御電極)との間の電圧が、所定値を超えるときに、ソース電極(第2電極)からドレイン電極に向って電流を流すことができる。また、このようなスイッチング素子Sx1,Sx2またスイッチング素子Sx1,Sx2のゲート電極からソース電極までの部分、および、ゲート電極からドレイン電極までの部分はダイオード特性を有している。よって、所定値以上の制御電圧(ソース電極とゲート電極との間の電圧)が印加されるときには、スイッチング素子Sx1のゲート電極からソース電極あるいはドレイン電極に電流が流れる。
なお、スイッチング素子Sx1,Sx2は必ずしも接合型電界効果トランジスタである必要はない。例えばスイッチング素子Sx1,Sx2は、静電誘導型トランジスタ(SIT、Static-Induction-Transistor)、ヘテロ電界効果トランジスタ(HFET、Hetero-Field-Effect-Transistor)又はMESFET(Metal-Semiconductor-Field-Effect-Transistor)などであってもよい。これらのスイッチング素子Sx1,Sx2は、比較的に小さいオン電圧でオンするので、例えば高速スイッチングに適している。
スイッチング素子Sx1,Sx2が制御部30によって適切に制御されることにより、電力変換装置10は、電源線LH,LLの間に印加される直流電圧を交流電圧に変換して、これを交流線Pu,Pv,Pwに出力する。なおここでは、直流電圧を三相交流電圧に変換する三相の電力変換装置10が例示されているものの、単相であってもよく、三相以上であってもよい。
交流線Pu,Pv,Pwには、負荷20が接続されている。負荷20は例えば誘導性負荷であって、例えばモータである。負荷20は、印加された交流電圧に応じて回転する。
<駆動装置>
図3に示すように、スイッチング素子Sx1,Sx2の制御電極には、それぞれ駆動装置1,2が接続されている。駆動装置1,2は、それぞれ制御部30からスイッチング信号を受け取り、これをスイッチング素子Sx1,Sx2の制御電極に与えることで、それぞれスイッチング素子Sx1,Sx2を駆動する。
駆動装置1は、駆動回路11と、コンデンサC1と、抵抗R1〜R3と、ダイオードD1,D2と、スイッチ素子SW1とを備えている。なお、ここでは駆動装置2は駆動装置1と同じ構成を有しており、各要素が駆動装置1,2のいずれに属しているのかを明記すべく、図3においては、駆動装置1に属する要素に対して、括弧書きで符号Aを追記している。以下の説明においても、駆動装置1,2を区別する場合には、駆動装置1に対しては各要素を符号A付きで説明し、また駆動装置2に対しては各要素を符号B付きで説明する。
駆動回路11は、第一端P11と、第二端P12とを有しており、第一端P11と第二端P12との間の電圧を変化させる。第二端P12はスイッチング素子Sx1の第2電極に接続されている。
ダイオードD2と抵抗R2とコンデンサC1とは、スイッチング素子Sx1の制御電極と、駆動回路11の第一端P11との間において、互いに直列に接続されている。ダイオードD2の順方向は、スイッチング素子Sx1の制御電極から第一端P11へと向かう方向である。また抵抗R2とダイオードD2との一組は、コンデンサC1と第一端P11との間に配置されている。
抵抗R1とダイオードD1とは互いに直列に接続されており、その一組は、抵抗R2とダイオードD2の一組と並列に接続されている。ダイオードD1の順方向は、第一端P11からスイッチング素子Sx1の制御電極へと向かう方向である。
ダイオードD1,D2の整流作用により、駆動回路11からコンデンサC1へと電流が流れるときには、当該電流は抵抗R2を避けて抵抗R1を経由して流れ、逆にコンデンサC1から駆動回路11へと電流が流れるときには、当該電流は抵抗R1を避けて抵抗R2を経由して流れる。よって、コンデンサC1を流れる電流の方向によって、経由する抵抗の抵抗値を異ならせることができる。これにより、後に詳述するように、スイッチング素子Sx1のターンオンに要する時間およびターンオフに要する時間を個別に調整することができる。
スイッチング素子Sx1の制御電極と、駆動回路11の第一端P11との間には抵抗R3も接続される。よって抵抗R3は、コンデンサC1と、抵抗R1,R2と、ダイオードD1,D2とがつくる構成に対して並列に接続されている。抵抗R3の抵抗値は、抵抗R1,R2の抵抗値よりも大きい。この抵抗値の大小関係の技術的な意義については後に詳述する。
スイッチ素子SW1は、例えばトランジスタ(例えばMOS電界効果トランジスタ)であり、コンデンサC1と抵抗R2との間の点(図1の例示では、ダイオードD2とコンデンサC1との間の点)と、スイッチング素子Sx1の第2電極との間に設けられている。このスイッチ素子SW1も制御部30によって制御される。
なお、図3の例示では、スイッチング素子Sx1の第2電極と交流線Pxとの間に、配線インダクタンスL11が示されている。またスイッチング素子Sx2の第2電極と電源線LLとの間にも、配線インダクタンスL21が示されている。ただし、第1の実施の形態では、簡単のために、配線インダクタンスL11,L21を無視して説明する。配線インダクタンスL11,L21については第3の実施の形態で述べる。
図3の例示では、スイッチ素子SW1にはダイオードD3が並列に接続されている。ダイオードD3の順方向は、スイッチング素子Sx1の第2電極からコンデンサC1へと向かう方向である。このダイオードD3は、スイッチ素子SW1に生じる逆方向の電圧を抑制する。なお、スイッチ素子SW1が逆方向に導通可能な構造を有していれば、ダイオードD3は不要である。
図3の例示では、駆動回路11は、例えばトーテムポール型の駆動回路であって、スイッチ素子S11,S12を備えている。スイッチ素子S11,S12は、直流電源E1の高電位端と低電位端との間で、互いに直列に接続されている。ここでは、スイッチ素子S11はスイッチ素子S12よりも高電位端側に設けられる。そして、スイッチ素子S11,S12の間の点が第一端P11として機能し、スイッチ素子S12の両端のうち、スイッチ素子S11とは反対側の端が第二端P12として機能する。
スイッチ素子S11,S12は互いに排他的に導通する。図3の例示では、スイッチ素子S11はPチャネルのMOSトランジスタであり、そのソース電極が直流電源E1の高電位端に接続される。スイッチ素子S12はNチャネルのMOSトランジスタであり、そのソース電極(第二端P12)が直流電源E1の低電位端に接続される。そして、スイッチ素子S11,S12のゲート電極が共通して接続される。このような駆動回路11は、いわゆるCMOS構造の論理反転回路により、実現することができる。
これらのスイッチ素子S11,S12のゲート電極に、低電圧のスイッチング信号が入力されると、スイッチ素子S11がオンし、スイッチ素子S12がオフする。このとき、直流電源E1からスイッチ素子S11、ダイオードD1、抵抗R1,R3およびコンデンサC1を介して、スイッチング素子Sx1の制御電極へと制御電圧Vgが印加される。抵抗R3の抵抗値は抵抗R1の抵抗値よりも大きいので、初期的には、主として抵抗R1、ダイオードD1およびコンデンサC1を経由して電流が流れる。このとき、コンデンサC1の静電容量は、スイッチング素子Sx1の制御電極と第2電極との間の寄生容量C22の静電容量よりも十分に大きい。よって、スイッチング素子Sx1の制御電圧の増大速度の時定数は主として抵抗R1と寄生容量C22とで決まる。したがって、抵抗R1の抵抗値を調整することで、スイッチング素子Sx1のターンオンに要する時間を調整することができる。
またスイッチング素子Sx1のオン期間においてその制御電極へと流れる電流は、抵抗値の高い抵抗R3によって制限されるので、スイッチング素子Sx1のオン期間における損失を低減することができる。またコンデンサC1には、抵抗R3の電圧降下の分、電圧が充電される。
一方で、スイッチ素子S11,S12のゲート電極に、高電圧のスイッチング信号が入力されると、スイッチ素子S11がオフし、スイッチ素子S12がオンする。このとき、コンデンサC1の高電位端が、ダイオードD2、抵抗R2およびスイッチ素子S12を介して、スイッチング素子Sx1の第2電極に接続される。これにより、スイッチング素子Sx1の制御電極には逆バイアス電圧が印加されることになる。したがって、スイッチング素子Sx1の制御電圧を、オン電圧よりも低減させることができる。
なお、抵抗R3の抵抗値は、コンデンサC1に蓄積される電荷量が、寄生容量C22に蓄積される電荷量よりも大きくなるように、設定される。これは、上述のようにスイッチング素子Sx1のターンオフの際に、制御電極に逆バイアス電圧を印加するためである。すなわち、スイッチ素子S12がオンすると、コンデンサC1および寄生容量C22は放電するところ、仮に、寄生容量C22の電荷量がコンデンサC1の電荷量よりも大きいと、寄生容量C22よりも先にコンデンサC1に蓄積される電荷が尽きてしまい、適切に逆バイアス電圧を印加できないからである。
なおこのとき、スイッチング素子Sx1の制御電圧は、抵抗R2と寄生容量C22とで決まる時定数に基づいて変化するので、抵抗R2の抵抗値を調整することで、スイッチング素子Sx1のターンオフに要する時間を調整することもできる。スイッチング素子Sx1のターンオフを速やかに行うには抵抗R2の抵抗値を小さく選定する。
なお図3の例示では、スイッチ素子S11,S12には、それぞれダイオードD11,D12が並列に接続されている。ダイオードD11,D12の順方向は、直流電源E1の低電位端から高電位端へと向かう方向である。これらのダイオードD11,D12は、それぞれスイッチ素子S11,S12に生じる逆電圧を抑制する。ただし、スイッチ素子S11,S12が逆方向導通可能な構造を有する場合には、このダイオードD11,D12は必要ではない。
また図3の例示では、駆動装置1はタイミング調整部12,13を有するものの、これについては後に詳述する。
駆動装置2の具体的な内部構成は、駆動装置1と同様であるので、繰り返しの説明を避ける。
<タイミングチャート>
次に、スイッチング素子Sx1,Sx2のスイッチング動作について説明する。スイッチング素子Sx1,Sx2は互いに排他的にオンする。換言すれば、スイッチング素子Sx1,Sx2が同時にオンしないように、スイッチング素子Sx1,Sx2へのスイッチング信号のタイミングが調整される。これは、スイッチング素子Sx1,Sx2が同時にオンすると、電源線LH,LLがスイッチング素子Sx1,Sx2を介して短絡することにより、スイッチング素子Sx1,Sx2に大電流が流れるからである。
また、スイッチング素子Sx1,Sx2の両方がオンする事態をより確実に回避すべく、一旦、スイッチング素子Sx1,Sx2の両方をオフしてから、スイッチング素子Sx1,Sx2のオン/オフを切り替えることが望ましい。このようにスイッチング素子Sx1,Sx2の両方がオフする期間は、デッドタイムとも呼ばれる。
図4は、スイッチング素子Sx1,Sx2のタイミングチャートの一例を模式的に示している。スイッチング素子スイッチング素子以下の説明では、まず、上側のスイッチング素子Sx1をオン状態からターンオフした上で、下側のスイッチング素子Sx2をターンオンする場合を説明し(時点t1〜t6)、次に、再び下側のスイッチング素子Sx2をターンオフした上で、上側のスイッチング素子Sx1をターンオンする場合について説明する(時点t7〜t10)。第1の実施の形態についての効果(スイッチング素子の誤動作の抑制)は、後者の場合について説明される。
時点t1においては、駆動回路11(A)に入力されるスイッチング信号SS(A)が低電圧であるので、スイッチ素子S11(A)がオンしている。また時点t1において、スイッチ素子SW1(A)はオフしている。よって、スイッチング素子Sx1の制御電圧Vg(A)は正の所定値(>オン電圧)であり、上側のスイッチング素子Sx1はオンしている。
また上側のスイッチング素子Sx1がオンしている期間では、コンデンサC1(A)は、直流電源E1(A)からの電流により、駆動回路11(A)側の電位を高電位として充電される。そして、コンデンサC1(A)が直流電源E1(A)の電圧に応じた電圧まで充電されると、コンデンサC1(A)への充電が終了する。時点t1においては、コンデンサC1(A)には、駆動回路11(A)側の電位を高電位とした電圧が充電されている。
一方で、時点t1においては、駆動回路11(B)に入力されるスイッチング信号SS(B)が高電圧であるので、スイッチ素子S12(B)がオンしており、このとき下側のスイッチング素子Sx2はオフしている。また、時点t1においてはスイッチ素子SW1(B)はオンしている。その理由は、後述する時点t10における説明によって明らかになる。
よって、時点t1においては、上側のスイッチング素子Sx1がオンし、下側のスイッチング素子Sx2がオフしている。またここでは、時点t1において、電源線LHから上側のスイッチング素子Sx1および交流線Pxを介して、誘導性負荷20へと電流が流れていると仮定する。
時点t2において、上側のスイッチング素子Sx1をオフすべく、スイッチング信号SS(A)を低電位から高電位へと遷移させる(立ち上げる)。これに伴って、スイッチ素子S12(A)がターンオンし、スイッチ素子S11(A)がターンオフする。よって、コンデンサC1(A)の高電位端が、抵抗R2(A)、ダイオードD2(A)およびスイッチ素子S12(A)を介して、スイッチング素子Sx1の第2電極に接続される。
これにより、スイッチング素子Sx1の制御電極には、第2電極を高電位とする逆バイアス電圧が印加されることになる。つまり制御電圧Vg(A)は負の所定値(<オン電圧)を採る。
制御電圧Vg(A)がスイッチング素子Sx1のオン電圧を下回るので、スイッチング素子Sx1はターンオフする。これにより、スイッチング素子Sx1,Sx2の両方がオフするデッドタイムが開始される。
またスイッチング素子Sx1がターンオフすると、誘導性負荷20の誘導性に起因して、下側のスイッチング素子Sx2には逆方向(電源線LLから交流線Pxへと向かう方向)に電流が流れ、交流線Pxから誘導性負荷20への電流が維持される。
さて時点t2においては、逆方向に電流が流れるスイッチング素子Sx2の制御電圧Vg(B)は、ほぼ零である。つまり、スイッチング素子Sx2の制御電極には逆バイアス電圧がほとんど印加されていない。これは、後に詳述するように、コンデンサC1(B)が放電する(時点t7〜t10も参照)からである。これにより、スイッチング素子Sx2に逆方向に電流が流れているときの損失を低減できる。すなわち、スイッチング素子Sx2の制御電極に逆バイアス電圧が印加された状態で、スイッチング素子Sx2に逆方向の電流が流れると、スイッチング素子Sx2の両端電圧が、逆バイアス電圧の分、大きくなるからである。これにより、損失が増大する。他方、第1の実施の形態では、このような損失の増大を抑制することができる。
制御電圧Vg(A)は時点t2から時間の経過と共に零へと近づく。これは、逆バイアス電圧を印加するコンデンサC1(A)が、次で説明するように放電するからである。即ち、図5に示すように、コンデンサC1(A)は、ダイオードD2(A)および抵抗R2(A),R3(A)を経由して放電する。これにより、コンデンサC1(A)の電圧は時間の経過と共に零に近づく。よって図4において、制御電圧Vg(A)も時間の経過と共に零に近づいているのである。ただし、抵抗R3(A)の抵抗値は比較的大きいので、時間に対する制御電圧Vg(A)の増大率(コンデンサC1(A)の放電速度)は比較的小さい。
次に時点t3において、スイッチ素子SW1(A)をターンオンする。これに伴って、コンデンサC1(A)は、図6に示すように、抵抗R2(A)を迂回した経路(スイッチ素子SW1(A)、ダイオードD12(A)および抵抗R3(A))も経由して、放電する。よって、コンデンサC1(A)の放電速度は増大する。しかるに、この経路であっても抵抗R3(A)が介在する。よって、小さい抵抗値を有する抵抗のみを介してコンデンサC1(A)が放電する場合(例えば後述する第1変形例)に比べれば、放電速度はそこまで高まらない。
次に時点t4において、スイッチ素子SW1(B)をターンオフする。これは、時点t5でのスイッチング素子Sx2のターンオンのための動作である。つまり、スイッチ素子SW1(B)がオンしていれば、スイッチング素子Sx2の制御電極と第2電極とがコンデンサC1(B)およびスイッチ素子SW1(B)を介して短絡し、これにより、スイッチング素子Sx2の制御電極へと、オン電圧を超える制御電圧を適切に印加することができないので、時点t5に先立つ時点t4において、スイッチ素子SW(B)をターンオフするのである。
次に時点t5において、下側のスイッチング素子Sx2をオンすべく、スイッチング信号SS(B)を高電圧から低電圧に遷移させる(立ち下げる)。これにより、スイッチ素子S11(B)がターンオンし、スイッチ素子S12(B)がターンオフする。
スイッチ素子S11(B)がオンし、スイッチ素子SW1(B)がオフすると、直流電源E1(B)から、抵抗R1(B),R3(B)、ダイオードD1(B)およびコンデンサC1(B)を介して、スイッチング素子Sx2の制御電極に高電圧(>オン電圧)が印加される。
なおここでは、時点t5以降においても、スイッチング素子Sx2は逆方向に電流が流れているものとする。
またスイッチ素子S12(B)のオンに伴って、コンデンサC1(B)には、駆動回路11(B)側の電位を高電位とする電圧が充電される。
次に、時点t6において、コンデンサC1(A)の電圧が零に至ることで、制御電圧Vg(A)が零に至る。つまり、スイッチング素子Sx1の制御電極に印加する逆バイアス電圧が解消される。
次に時点t7において、下側のスイッチング素子Sx2を再びオフすべく、スイッチング信号SS(B)を低電圧から高電圧へと遷移させる(立ち上げる)。これに伴って、スイッチ素子S11(B)がターンオフし、スイッチ素子S12(B)がターンオンする。これに伴って、制御電圧Vg(B)が負の所定値(<オン電圧)へと変化する。これは、コンデンサC1(B)の電圧によって、スイッチング素子Sx2の制御電極に逆バイアス電圧が印加されるからである。
なおここでは、時点t7においてもスイッチング素子Sx2が逆方向に導通しているものとする。
またスイッチ素子S12(B)のオンに伴って、コンデンサC1(B)が図5に示すように放電するので、図4に示すように、制御電圧Vg(B)は時間の経過とともに零に近づいている。ただし、コンデンサC1(B)の放電経路には大きい抵抗値を有する抵抗R3が介在するので、その放電速度はさほど速くない。よって制御電圧Vg(B)は緩やかに零に向かう。
次に時点t8において、スイッチ素子SW1(B)をターンオンする。これに伴って、コンデンサC1(B)は、抵抗R2(B)を迂回した経路(スイッチ素子SW1(B)、ダイオードD12(B)および抵抗R3(B))をも経由して、放電する(図6参照)。よって、コンデンサC1(B)の放電速度は増大する。しかるに、この経路であっても抵抗R3(B)が介在する。よって、小さい抵抗のみを介してコンデンサC1(B)が放電する場合に比べれば、放電速度はそこまで高まらない。
次に時点t9において、スイッチ素子SW1(A)をターンオフし、時点t10において、上側のスイッチング素子Sx1を再びオンすべく、スイッチング信号SS(A)を高電圧から低電圧へと遷移させる(立ち下げる)。これに伴って、スイッチング素子Sx1の制御電圧Vg(A)がオン電圧を超える。これにより、スイッチング素子Sx1がターンオンする。
スイッチング素子Sx1のターンオンに伴って、電源線LHからスイッチング素子Sx1および交流線Pxを介して誘導性負荷20へと電流が流れ始める。よって、スイッチング素子Sx1の両端電圧はほぼ零に変化する。一方で、電源線LH,LLには直流電圧が印加されているので、スイッチング素子Sx2の両端電圧は、その直流電圧とほぼ等しい値まで増大する。これに伴って、図7を参照して、スイッチング素子Sx2の第1電極と制御電極との間の寄生容量C21(B)を経由して、制御電極へと電流が流れる。この電流は、コンデンサC1(B)を経由した後に、主としてスイッチ素子SW1(B)を流れる。
この電流に伴って、図4に示すように、制御電圧Vg(B)はオン電圧へと近づく(増大する)。しかるに本駆動装置2によれば、次に説明する理由から、制御電圧Vg(B)がオン電圧を超えることを抑制できる。第1に、スイッチ素子SW1(B)の一端が、コンデンサC1(B)と抵抗R2(B)との間に設けられているので、当該電流は、抵抗R2をほとんど流れず、主としてスイッチ素子SW1を流れる。
第1の実施の形態とは異なって、スイッチ素子SW1(B)が設けられていない場合には、図8に示すように、当該電流はコンデンサC1(B)、ダイオードD2(B)および抵抗R2(B)を経由して流れる。このように抵抗R2(B)に大きな電流が流れると、その電圧降下の分、制御電圧Vg(B)の増大を招くことになる。一方で、本駆動装置2によれば、当該電流は抵抗R2(B)をほとんど流れないので、このような増大を抑制することできる。よって、制御電圧Vg(B)がオン電圧を超えることを抑制できる。
第2に、スイッチ素子SW1(B)の一端が、コンデンサC1(B)と抵抗R2(B)との間に設けられているので、上記電流にコンデンサC1(B)を経由させることができる。よって、スイッチ素子SW1(B)の一端が、コンデンサC1(B)とスイッチング素子Sx2の制御電極との間に接続される場合に比して、その構造上、負の値を初期値として制御電圧Vg(B)を増大させることができる。初期値(負の値)が小さいので、図7に示す電流が流れたとしても、制御電圧Vg(B)がオン電圧に到達するまでコンデンサC1(B)が充電されにくい。
しかも、コンデンサC1(B)が抵抗値の大きい抵抗R3を経由して放電するので、時点t10におけるコンデンサC1(B)の電圧を比較的大きくすることができる。換言すれば、時点t10における逆バイアス電圧を大きくすることができる。更に換言すれば、制御電圧Vg(B)をより小さく(負の値であり、その絶対値としては大きく)できる。これにより、制御電圧Vg(B)は、時点t10において、より小さい初期値から増大するので、オン電圧を超えることを抑制できる。
以上のように、上側のスイッチング素子Sx1がターンオンする時点t10において、下側のスイッチング素子Sx2が誤動作によりオンすることを防止でき、スイッチング素子Sx1,Sx2の両方がオンすることを防止できる。
なお、ここでは一例として、時点t10におけるスイッチング素子Sx2の誤動作を抑制する場合について述べた。しかるに、次に説明するように、スイッチング素子Sx2をターンオンさせる時点t5における、スイッチング素子Sx1の誤動作も抑制できる。ここで、時点t1〜t5において、上側のスイッチング素子Sx1が逆方向に電流が流れている場合について考慮する。このとき、時点t5において制御電圧Vg(B)がオン電圧を超えると、下側のスイッチング素子Sx2に電流が流れ始める。よって、下側のスイッチング素子Sx2の両端電圧がほぼ零に変化する。一方で、上側のスイッチング素子Sx1の両端電圧は、直流電圧とほぼ等しくなる。
このスイッチング素子Sx1の両端電圧の変化に伴って、図7に示すように、スイッチング素子Sx1の寄生容量C21(A)、コンデンサC1(A)およびスイッチ素子SW1(A)を介して電流が流れる。よって、制御電圧Vg(A)がオン電圧に近づくものの、当該電流はコンデンサC1(A)を経由し、かつ、抵抗R2(A)をほとんど流れないので、制御電圧Vg(A)がオン電圧を超えることを抑制できるのである。
また、第1の実施の形態では、ダイオードD1,D2の両方が設けられているものの、いずれか一方のみが設けられていても良い。これによっても、コンデンサC1を流れる電流の方向によって、コンデンサC1と直列に接続される抵抗の抵抗値を異ならせることができるからである。これにより、スイッチング素子Sx1(或いはSx2)のターンオンに要する時間とターンオフに要する時間とを個別に調整することができる。
また第1の実施の形態では、抵抗R1,R2およびダイオードD1,D2が設けられているものの、これら一組の替わりに一つの抵抗が設けられていても良い。これによっても、スイッチング素子Sx1(或いはSx2)のターンオンに要する時間およびターンオフに要する時間を、当該一つの抵抗の抵抗値に基づいて調整することができる。ただし、これらの時間を個別に調整することはできない。この場合であっても、スイッチ素子SW1の一端が、コンデンサC1と当該一つの抵抗との間に設けられていれば、上述と同様の理由により、制御電圧Vgがオン電圧を超えることを抑制できる。
また、駆動装置1,2のいずれもが上述の構成を有している必要はない。いずれか一方のみがこの構成を有していれば良い。駆動装置1,2の一方のみが上記構成を有している場合でも、その一方によって駆動されるスイッチング素子の誤動作を抑制できる。以下では、一例として、駆動装置1,2が互いに同じ構成を有するものとして説明する。
<タイミング調整部>
上述したように、スイッチ素子SW1は、制御部30の制御を受けて、スイッチング素子Sx1(或いはSx2)がターンオフした後、かつ、スイッチング素子Sx2(或いはSx1)がターンオンする前に、ターンオンする。またスイッチ素子SW1は、スイッチング素子Sx1(或いはSx2)をターンオンする前に、ターンオフする。
図3では、これを実現すべく、一例としてタイミング調整部12,13が設けられている。タイミング調整部12,13は、スイッチング素子Sx1(或いはSx2)がターンオフした後に、スイッチ素子SW1をターンオンさせ、スイッチング素子Sx1(或いはSx2)をターンオンする前に、スイッチ素子SW1をターンオフさせる。
より詳細には、タイミング調整部12,13は互いに協働して、スイッチング信号SSの立ち上がり、および、立ち下がりのタイミングと、スイッチ素子SW1へと与えるスイッチング信号の立ち上がり、および、立ち下がりのタイミングとを調整する。
図3の例示では、タイミング調整部12は、抵抗R12とコンデンサC12とを備えている。抵抗R12の一端は、スイッチ素子S11,S12のゲート電極に共通して接続されており、コンデンサC12は、抵抗R12と駆動回路11との間の点と、スイッチング素子Sx1の第2電極との間に設けられている。タイミング調整部12は、抵抗R12とコンデンサC12とで決まる時定数に基づいて、抵抗R12の他端に入力されたスイッチング信号の立ち上がりおよび立ち下がりを遅らせる。そして、調整後のスイッチング信号SSを駆動回路11へと与える。
タイミング調整部13は、抵抗R131,R132とダイオードD13とコンデンサC13とを設けている。抵抗R132とダイオードD13とは、抵抗R12の他端とスイッチ素子SW1の制御電極との間において、互いに直列に接続されている。ダイオードD13の順方向は、スイッチ素子SW1から抵抗R12の他端へと向かう方向である。抵抗R131は抵抗R132とダイオードD13との一組に並列に接続されている。コンデンサC13は、抵抗R131とスイッチ素子SW1の制御電極との間の点と、スイッチ素子SW1の低電位側の電極との間に設けられている。
タイミング調整部13は、抵抗R131とコンデンサC13とで決まる時定数に基づいて、入力されたスイッチング信号の立ち上がりを、スイッチング信号SSよりも遅らせて、遅らせた後のスイッチング信号をスイッチ素子SW1の制御電極に印加する。
しかも、抵抗R131とコンデンサC13とで決まる時定数は、抵抗R12とコンデンサC12とで決まる時定数よりも大きい。これにより、駆動回路11に入力されるスイッチング信号SSの立ち上がりよりも後に、スイッチ素子SW1の制御電極に印加されるスイッチング信号を立ち上げることができる。そしてこれらの時定数を適宜に設定することで、図4に示すように、スイッチング素子Sx1をターンオフした後に、スイッチ素子SW1をターンオンすることができる(時点t2,t3)。
ただし、スイッチング素子Sx2をターンオンさせる前に、スイッチ素子SW1がターンオンするように、抵抗R131とコンデンサC13とで決まる時定数を設定する(時点t3,t5)。なお、デッドタイムの長さ(時点t2,t5の間の期間の長さ)は例えば予め決められているので、上述の条件を満たすように時定数を設定することは可能である。
一方で、タイミング調整部13は、抵抗R131,R132とコンデンサC13とで決まる時定数に基づいて、入力されたスイッチング信号の立ち下がりを、スイッチング信号SSの立ち下がりよりも早め、早めた後のスイッチング信号を、スイッチ素子SW1の制御電極に印加する。抵抗R131,R132とコンデンサC13とで決まる時定数は、抵抗R12とコンデンサC12とで決まる時定数よりも小さい。これにより、駆動回路11に入力されるスイッチング信号SSの立ち下がりよりも前に、スイッチ素子SW1の制御電極に印加される信号を立ち下げることができる。よって、スイッチング素子Sx1のターンオンよりも前に、スイッチ素子SW1をターンオフさせることができる(時点t9)。
図3のダイオードD13とは反対の順方向を有するダイオードを、抵抗R131と直列に設け、その一組と、抵抗R132とダイオードD13との一組とを並列に接続させても良い。この場合、タイミング調整部13は、抵抗R132とコンデンサC13とで決まる時定数に基づいて、入力されたスイッチング信号を、スイッチング信号SSの立ち下がりよりも早く立ち上げる。よって、抵抗R132とコンデンサC13とで決まる時定数を、抵抗R12とコンデンサC12とで決まる時定数よりも小さくすればよい。
第2の実施の形態.
第1の実施の形態では、例えば時点t10において、コンデンサC1に、抵抗R2側の電位を低電位とする電圧(以下、逆方向電圧とも呼ぶ)が充電され得る。このとき、コンデンサC1は、抵抗R1とダイオードD1のみならず、抵抗R3をも介して放電するので、この逆方向電圧を速やかに低減できない。このような逆方向電圧は不要な電圧であり、制御電圧Vgを増大させ得るので、速やかな低減が望まれる。
図9は、第2の実施の形態にかかる駆動装置1の概念的な構成の一例を示す図である。第2の実施の形態にかかる駆動装置1は、第1の実施の形態で説明した駆動装置1に比して、ダイオードD5を更に有している。
ダイオードD5はコンデンサC1と並列に接続されており、その順方向はスイッチング素子Sx1の制御電極から駆動回路11へと向かう方向である。
このような駆動装置1において、コンデンサC1に逆方向電圧が充電されると、コンデンサC1はダイオードD5を介して放電することができる。これにより、逆方向電圧を速やかに低減することができる。
第3の実施の形態.
図10は、第3の実施の形態にかかる駆動装置1の概念的な構成の一例を示す図である。第3の実施の形態にかかる駆動装置1は、第1の実施の形態で説明した駆動装置1に比して、ダイオードD4を更に有している。
ダイオードD4は、コンデンサC1と抵抗R2との間の点(図10では、コンデンサC1とダイオードD2との間の点)と、スイッチング素子Sx2の第2電極との間で、スイッチ素子SW1と直列に接続されている。ダイオードD4の順方向は、コンデンサC1からスイッチング素子Sx2の第2電極へと向かう方向である。
ここではまず、ダイオードD4が設けられていない場合の配線インダクタンスL21の影響について説明する。例えば図4を参照して、時点t10の前には、下側のスイッチング素子Sx2に逆方向に電流が流れており、時点t10の後には、上側のスイッチング素子Sx1がターンオンして、これに電流が流れる。つまり、下側のスイッチング素子Sx2を逆方向に流れる電流は時点t10から低減してゆく。
このように下側のスイッチング素子Sx2を逆方向に流れる電流が低減すると、配線インダクタンスL21に誘導起電力が発生する。この誘導起電力は、スイッチング素子Sx2の第2電極側の電位を高電位とする電圧である。よって、図11に示すように、配線インダクタンスL21とコンデンサC1(B)と寄生容量C22(B)とスイッチ素子SW1(B)とを有する直列回路においても、電流が流れる。しかもこの直列回路においては、配線インダクタンスL21と、コンデンサC1(B)および寄生容量C22(B)とが直列に接続されるので、この直列回路を流れる電流は振動し得る。言い換えれば、当該電流はこの直列回路において図11の矢印とは逆方向にも流れ得る。この電流により、スイッチング素子Sx2の制御電圧Vg(B)(寄生容量C22(B)の電圧)が増大する。これは、スイッチング素子Sx2を誤作動してしまうという観点で望ましくない。
そこで、第3の実施の形態では、ダイオードD4を設けているのである。このダイオードD4の整流機能により、当該直列回路における電流の振動を回避することができる。つまり、当該電流が図11の矢印と逆方向に流れることを防止する。したがって、電流が逆方向に流れることに起因して制御電圧Vg(B)が増大することを防止することができ、ひいては制御電圧Vg(B)がオン電圧を超えることを抑制できるのである。
図12は、第3の実施の形態にかかる駆動装置1の概念的な構成の他の一例を示す図である。図12の駆動装置1は、図10の駆動装置1に比して、抵抗R4を更に有している。抵抗R4はダイオードD4と並列に接続されている。
上側のスイッチング素子Sx1がターンオンする際には、図13に示すように、上述の直列回路には抵抗R4(B)が設けられることになり、この抵抗R4(B)を介して逆方向に電流が流れ得る。ここでいう逆方向とは、制御電極の電位が高電位となるように、寄生容量C22(B)を充電するときの電流の方向である。しかるに、抵抗R4(B)が設けられていることで、その逆方向の電流を抑制することができる。これにより、制御電圧Vg(B)の増大を抑制できる。
しかも、ダイオードD4(B)が設けられているので、寄生容量C21(B)を経由して流れる電流は、主としてダイオードD4(B)を流れる。仮に、この電流が抵抗R4を流れると、制御電圧Vg(B)の増大を招く。なぜなら、この電流が寄生容量C22(B)側へと流れやすくなるからである。本駆動装置2によれば、当該電流はダイオードD4(B)を流れるので、このような制御電圧Vg(B)の増大をも抑制できるのである。
なお、第1から第3の実施の形態で述べた内容は、適宜に組み合わせることができる。
以下、参考のため、他の駆動装置の例を説明する。
第1参考例.
図14は、第1参考例にかかる駆動装置1の概念的な構成の一例を示している。第1参考例にかかる駆動装置1は、スイッチ素子SW1の位置という点で、第1の実施の形態の駆動装置1と相違する。第1参考例にかかる駆動装置1においては、スイッチ素子SW1は、コンデンサC1とスイッチング素子Sx1の制御電極との間の点と、スイッチング素子Sx1の第2電極との間に設けられている。またスイッチ素子SW1は、第1の実施の形態と同様に、スイッチング素子Sx1のターンオフの後、かつ、スイッチング素子Sx2がターンオンする前に、ターンオンし、スイッチング素子Sx1のターンオンの前にターンオフする。
図15は、スイッチング素子Sx1,Sx2の動作の一例を模式的に示すタイミングチャートである。第1参考例では、時点t2における制御電圧Vg(A)が比較的速やかに低減する。これは、コンデンサC1(A)が抵抗R2、ダイオードD2、スイッチ素子S12およびダイオードD3および抵抗R4をも介して放電するからである。
同様に、時点t7における制御電圧Vg(B)も比較的速やかに低減する。図15の例示では、制御電圧Vg(A)がオン電圧を超える時点t10において、制御電圧Vg(B)は零である。
時点t10においては、スイッチング素子Sx2の両端電圧が、電源線LH,LLの間の直流電圧とほぼ等しい値まで増大することに起因して、寄生容量C21(B)を経由して電流が流れる。この電流は、主として、順方向電圧の小さいダイオードD4と、スイッチ素子SW1とを経由して流れる。よって、制御電圧Vg(B)(寄生容量C22(B)の電圧)の増大を抑制することができる。
またスイッチング素子Sx2を流れる逆方向の電流が零に低減することに起因して、配線インダクタンスL21には誘導起電力が発生するものの、これに起因する制御電圧Vg(B)の増大は、ダイオードD4および抵抗R4によって抑制される。
したがって、スイッチング素子Sx2の誤作動によるターンオンを抑制することができる。
第2参考例.
図17は、第2参考例にかかる駆動装置1の概念的な構成の一例を示している。駆動装置1は、駆動回路11と、抵抗R1〜R3と、コンデンサC1と、ダイオードD1とを有している。
駆動回路11は、スイッチ素子S11と、スイッチ素子S12とを有している。スイッチ素子S11の一端は直流電源E1の高電位端に接続されており、スイッチ素子S12の一端は直流電源E1の低電位端と、スイッチング素子Sx1の第2電極とに共通して接続されている。スイッチ素子S11,S12の他端同士は直接に接続されていない。
スイッチ素子S11の他端と、スイッチング素子Sx1の制御電極との間には、抵抗R1、ダイオードD1およびコンデンサC1とが互いに直列に接続されている。ダイオードD1の順方向は例えば駆動回路11からスイッチング素子Sx1の制御電極へと向かう方向であり、ダイオードD1は、コンデンサC1と、駆動回路11との間に設けられている。
抵抗R3は、コンデンサC1とダイオードD1との一組に並列に接続されている。抵抗R3の抵抗値は抵抗R1,R2の抵抗値よりも大きい。なお抵抗R3はこれに限らず、抵抗R1とダイオードD1とコンデンサC1との一組に並列に接続されていても良い。
抵抗R2は、コンデンサC1とダイオードD1との間の点と、スイッチ素子S12の他端との間に設けられている。
このような駆動装置1によれば、スイッチ素子S11をオンし、スイッチ素子S12をオフすることで、直流電源E1からの直流電圧が、抵抗R1,R3、ダイオードD1およびコンデンサC1を介して、スイッチング素子Sx1の制御電極へと印加される。これにより、スイッチング素子Sx1がオンする。このとき、初期的には、主として抵抗R1とダイオードD1とコンデンサC1とを経由して電流が流れ、コンデンサC1の充電が終了すると、電流は抵抗R1,R3を経由して流れる。よって、第2参考例によっても、抵抗R1の抵抗値を調整することで、スイッチング素子Sx1のターンオンに要する時間を調整することができる。またコンデンサC1の充電が終了すれば、電流は抵抗値の大きい抵抗R3を経由して流れるので、スイッチング素子Sx1のオン期間におけるゲート損失を低減できる。
スイッチ素子S11をオフし、スイッチ素子S12をオンすることで、コンデンサC1の電圧が、抵抗R2およびスイッチ素子S12を介して、スイッチング素子Sx1の制御電極へと印加される。これにより、スイッチング素子Sx1の制御電極には逆バイアス電圧が印加されることとなる。また、スイッチング素子Sx1の制御電圧は、抵抗R2と寄生容量C22とで決まる時定数に基づいて変化するので、抵抗R2の抵抗値を調整することで、スイッチング素子Sx1のターンオフに要する時間を調整することもできる。
図18は、スイッチング素子Sx1,Sx2の動作の一例を模式的に示すタイミングチャートである。第2参考例によれば、スイッチング素子Sx2のオフ期間(時点t7〜t10)において、コンデンサC1(B)はほとんど放電しない。放電経路が形成されていないからである。したがって、スイッチング素子Sx2の制御電極には逆バイアス電圧が印加され続ける。これにより、たとえスイッチング素子Sx2の制御電圧Vg(B)が増大しても、その増大の初期値が低いので、制御電圧Vg(B)がオン電圧を超えることを抑制できる。