JP6163482B2 - シクロスポリンaの結晶形態、その調製方法、およびその使用のための方法 - Google Patents

シクロスポリンaの結晶形態、その調製方法、およびその使用のための方法 Download PDF

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Description

関連出願
本出願は、2011年5月27日に出願された米国仮特許出願第61/490,887号に対する優先権を主張し、その開示全体は本参照により本明細書に組み込まれる。
技術分野
本発明は、概して、シクロスポリンAの新たな結晶形態、具体的には、シクロスポリンAの新たに特定された形態の医薬的使用に関する。本発明はさらに、その調製のための方法およびある特定の眼障害を治療するための方法に関する。
正常な眼の曝露された部分は、薄い涙膜によって被覆されている。継続的な涙膜の存在は、角膜および結膜上皮の健康状態に重要であり、角膜に、光学的に高質の表面を提供する。加えて、涙膜の水性部分は、瞼のまばたきの間に、眼瞼に対する滑沢剤として作用する。さらに、涙液に含有されるある特定の酵素、例えば、免疫グロブリンA、リゾチーム、およびベータリジンは、静菌特性を有することが知られる。
健全な涙器系は、適切に構造化された継続的な涙膜を形成し、維持するように機能する。涙器は、分泌系(源)、分配系、および排出系(シンク)からなる。分泌系において、涙液は、主涙腺および副涙腺によって供給される。
涙膜の大部分は、かかる涙液から成り立つ。涙液の継続的な産生および排水は、角膜および結膜上皮を湿潤状態に維持すること、上皮呼吸のための栄養を提供すること、静菌剤を供給すること、および眼表面を涙の移動の水洗作用によって清浄することにおいて重要である。
ドライアイ状態の管理において、外科的手技が示唆されている。相当な結膜破壊が存在している場合、粘膜移植が推奨されている。耳下(唾液)腺管移植がドライアイの管理において有用であり得ることもまた示唆されている。しかしながら、ドライアイ病態に対処するための外科的修正は、劇的な療法に相当し、これらの修正からもたらされるいずれの便益には、疑問の余地がある。
眼の他の疾患には、水晶体アナフィラキシー性眼内炎、ブドウ膜炎、および乾性角結膜炎(KCS)が含まれる。これらの疾患は、眼全体にわたって、後眼房および前眼房の両方において、ならびに硝子体において位置する可能性がある。
ブドウ膜の炎症である、ブドウ膜炎は、米国における視覚障害の約10%を占める。水晶体アナフィラキシー性眼内炎は、ヒト自己免疫疾患である。
汎ブドウ膜炎は、眼のブドウ膜(vascular)層全体の炎症を指す。後眼房ブドウ膜炎は、概して、網脈絡膜炎(chorioentinitis)を指し、前眼房ブドウ膜炎は、虹彩毛様体炎を指す。これらの炎症の炎症産物(すなわち、細胞、フィブリン、過剰のタンパク質)は、眼、すなわち、前眼房、後眼房、および硝子空間、ならびに組織の浸透が、炎症応答に密接に関与する場合、流体空間において一般的に見出される。ブドウ膜炎は、眼の外科的または外傷的損傷後に;自己免疫障害、すなわち、関節リウマチ、ベーチェット病、強直性脊椎炎、サルコイドーシスの構成要素として;既知の病因に関連しない、独立した免疫介在性眼障害、すなわち、扁平部炎、虹彩毛様体炎等として;および抗体−抗原複合体がブドウ膜組織に堆積する原因となるある特定の全身性疾患後に、生じる場合がある。まとめて、これらの障害は、非感染性ブドウ膜炎を代表する。
水晶体アナフィラキシーは、レンズが原因となる抗原とされる、ブドウ膜炎の重症型である。レンズタンパク質は、通常、誕生前からレンズカプセルによって隔離されている。これらのタンパク質が、損傷によってもしくは外科手術によって、またはまれに白内障発症中に、眼中に放出されるとき、それらは、極めて抗原性となり、自己免疫応答を誘発する。応答が中程度である場合、それは慢性ブドウ膜炎と見なされる。その進行が非常に速い場合、眼は、全ての区分において重篤に炎症を起こすようになる。この後者の応答は、水晶体アナフィラキシーと命名される。
シクロスポリンは、既知の免疫抑制活性を有する、非極性環状オリゴペプチドの一群である。シクロスポリンAと共に、複数の他の副代謝産物、ならびにシクロスポリンB、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、O、P、Q、R、S、T、U、V、W、X、Y、およびZが、特定されている。上述の眼の病態を治療するための、シクロスポリンAおよびシクロスポリンA誘導体の使用は、種々の特許、例えば、Dingらの特許文献1、Garstの特許文献2、およびGarstの特許文献3の主題となっており、それらの各々の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。その固体化学に関して、シクロスポリンA(CsA)は、非晶質形態、液晶形態、正方晶結晶形態(形態1)、および斜方晶形態(形態3)で存在することが知られる。
米国特許第5474979号明細書 米国特許第6254860号明細書 米国特許第6350442号明細書
本発明は、製薬開発に好適な固有かつ新規の特性を有する、CsAの新たな結晶形態を提供する。
本発明の別の実施形態では、治療上有効量の新たな結晶形態のシクロスポリンAを、眼科的に許容される担体中に含む、医薬組成物が提供される。
別の実施形態では、眼における水分欠乏性ドライアイ状態、ブドウ膜炎、または水晶体アナフィラキシー性眼内炎を治療するための方法が提供される。かかる方法は、例えば、治療を必要とする対象に、眼科的に許容される担体中の結晶形態2のシクロスポリンAを投与することによって行うことができる。
新たな結晶形態(本明細書で形態2として指定される)、正方晶形態(本明細書で形態1として指定される)、および斜方晶形態(本明細書で形態3として指定される)のCsAの特徴的なX線粉末回折(XRPD)パターンを図示する。 CsA結晶形態2のXRPDディフラクトグラムを図示する。 CsA形態2の水分収着/脱着プロファイルを図示する。 1%PS80を含む0.04%製剤から回収されたCsA形態2のMDSC分析を図示する。 24ヶ月の保管後に、1w/v%ポリソルベート80および過剰のCsA形態2を含有する水性懸濁液から収集された試料についてのXRPDディフラクトグラムを図示する。 6ヶ月の保管後に、5w/v%ヒアルロン酸および過剰のCsA形態2を含有する水性懸濁液から収集された試料についてのXRPDディフラクトグラムを図示する。 シクロスポリンA形態のシミュレーションされたXRPDパターンを図示(depticts)する。
前述の概要および以下の詳述の両方ともに例示および説明のためのみであり、特許請求される本発明を限定しないことを理解されたい。本明細書で使用される単数形の使用は、別途具体的に提示されない限り、複数形を含む。本明細書で使用される「または」とは、別途提示されない限り、「および/または」を意味する。さらに、「含むこと」という用語、ならびに「含む」および「含まれる」等の他の形態の使用は限定的ではない。本明細書で使用される項目の見出しは、構成目的のためのみであり、記載される主題を限定すると解釈されるべきではない。
加えて、「結晶形態」および「擬似結晶形態」は、本明細書全体を通じて交換可能に使用され得ることを理解されたい。「結晶(Crytalline)形態1」または「結晶形態2」はまた、「擬似結晶1」または「擬似結晶2」とも称され得る。
特定の定義が提供されない限り、本明細書に記載の分析化学、合成有機、および無機化学に関連して利用される学名、ならびにそれらの実験方法および手技は、当該技術分野において既知のものである。標準の化学記号は、かかる記号で表される正式名と同義に使用される。したがって、例えば、「水素」および「H」という用語は、同一の意味を有することが理解される。標準の手技は、化学合成、化学分析、および製剤において使用され得る。
本発明は、シクロスポリンA形態2と指定される、CsAの新たな結晶形態を提供する。この新規形態2のXRPDパターンは、正方晶形態および斜方晶形態(図1)とはかなり異なる。CsA形態2についての主結晶ピークは、X線回折計によって、X線源を用いて、Cu Kα放射、λ=1.54Åとして、30kV/15mAで走査されるとき、次の(2θ)で現れる:7.5、8.8、10.2、11.3、12.7、13.8、14.5、15.6、および17.5(結晶格子における格子面間隔は、それぞれ約11.8、10.0、8.7、7.8、7.0、6.4、6.1、5.6、および5.1Å、図2)。これらの主ピークは、斜方晶または正方晶形態と比べて、形態2に固有であるものとして定義され、バックグラウンドの5倍を超える強度を有するピークも同様である。
一実施形態では、CsAの新たな結晶形態(形態2)は、シクロスポリンAの不定比の水和物である。
別の実施形態では、結晶形態2は、式

によって表され、式中、Xは、水の分子の数であり、0〜3で変動する。一実施形態では、上の式におけるXは、2である。
形態2は、水性懸濁液中で、CsAの動力学的に安定な形態であるように思われる。形態2を含有する懸濁液は、保管時に、他の既知の結晶多形または擬似結晶形態への変換を何ら示さない。形態1および非晶質形態は、水の存在下で、形態2に変換することが見出されている。
シクロスポリンAの新たに発見された水和物形態(形態2)の単結晶構造を決定したが、その結晶構造パラメータが表2に列挙される。これらの結果は、シクロスポリンAの他の既知の結晶形態と比較して、形態2が固有であることを示す。
このCsA形態2の非対称単位は、1個のシクロスポリンA分子および2個の水分子を有することが見出された。水に水素結合し得るいずれかの小分子が、空間充填体の役割を果たし得た可能性があり、それは斜方晶二水和物から変形した単斜晶二水和物にわたる、様々な可能性のある構造を提供するであろう。単結晶構造から算出されたXRPDパターンは、図7に示され、それは、図2に示される実験的パターンに合致する。これらの合致パターンは、形態2がシクロスポリンAの固有かつ純粋な結晶形態であることをさらに裏付ける。
理論に拘束されることを望むものではないが、KF滴定および蒸気収脱着分析(VSA)と組み合わせた熱重量測定分析は、CsA形態2がCsAの不定比の水和物であることを示唆する。シクロスポリン形態2の蒸気収着分析は、新たな結晶形態における含水率が、図3に示されるように相対的湿度により可逆的に変動することを示す。正方晶形態と同様に、新たなCsA形態は、変調示差熱量測定(MDSC)分析によって示されるように、124.4℃で、融解前に、液晶または非晶質形態への相転移を経る(図4)。
CsAの新たな物理的形態は、1%PS80を含有する眼用製剤ビヒクル中で、斜方晶形態(100μg/mL)よりも高い可溶性(130μg/mL)を有する。これは、溶液または懸濁液製剤を開発するために望ましい。新たな形態は、水溶液中で、正方晶よりも安定な形態であるように思われる。形態2は、眼内インプラント、錠剤、カプセルおよび半固体製剤、液体ゲルカプセル、懸濁液、ならびにマイクロエマルション等の代替的な製剤中で、正方晶および斜方晶形態を上回る幾つかの利点を提示する。
加えて、形態2は、形態1または3よりも容易に粉末化可能(millable)であることが発見されている。粉末化は、シクロスポリンA徐放懸濁液中で、大きい粒子(すなわち、≧40μm)が2%ヒアルロン酸(hydrogel)製剤で沈殿し、再懸濁させるのが困難であることが観察されていることから、非常に重要である。CsA形態2は、10μm以下に容易に粉末化される。これらの結晶の物理的に安定な懸濁液は、2.5%ヒアルロン酸中、最大10%の濃度で調製されている。
物理的安定性に加えて、より小さい粒径は、増加した表面積に基づいて、より多くの薬物を組織に送達するであろうことが予期される。この理由で粒径を低減することは、形態2が非晶質形態よりも低い溶解特性を有すると思われ、したがって組織へのより低い送達率を有する可能性が高いため、必要不可欠であり得るが、より小さい粒径はこの問題を軽減し得る。実際、ナノ粒子を作製することは、形態1または3よりも、形態2でより簡便であることが発見されている。したがって、組織への薬物送達を改善するため、および/または懸濁液の物理的安定性を改善するために、結晶をナノサイズ化することが必要とされる場合、形態2は、他の形態を上回る特有の利点を提供する。
医薬組成物は、活性成分としての、本発明による治療上有効量のCsA形態2、またはその医薬上許容される塩を、従来の眼科的に許容される医薬賦形剤と組み合わせることによって、および眼への局所使用に好適な単位剤形の調製によって、調製されてもよい。治療的に有効な量は、典型的には液剤の約0.0001〜約5%(w/v)、好ましくは約0.001〜約1.0%(w/v)である。
眼科的適用について、好ましくは、溶液は、主要なビヒクルとして生理食塩水を用いて調製される。かかる眼科的溶液のpHは、好ましくは、適切な緩衝系で4.5〜8.0に維持されるべきであり、中性pHが好ましいが、必須ではない。製剤はまた、従来の医薬上許容される防腐剤、安定剤、および界面活性剤も含有し得る。
本発明の医薬組成物中に使用され得る好ましい防腐剤には、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、および硝酸フェニル水銀が含まれるが、これらに限定されない。好ましい界面活性剤は、例えば、Tween80である。同様に、種々の好ましいビヒクルは、本発明の点眼薬中に使用され得る。これらのビヒクルには、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロキサマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、シクロデキストリン、および精製水が含まれるが、これらに限定されない。
等張化剤は、必要または都合に応じて添加され得る。それらには、塩、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、およびグリセリン、または任意の他の好適な眼科的に許容される等張化剤が含まれるが、これらに限定されない。
pHを調整するための種々の緩衝液および手段は、結果として生じる調製が眼科的に許容できる限りは使用され得る。したがって、緩衝液には、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、およびホウ酸緩衝液が含まれる。酸または塩基は、必要に応じて、これらの製剤のpHを調整するために使用され得る。
同様に、本発明で用いる眼科的に許容される酸化防止剤には、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソール、およびブチル化ヒドロキシトルエンが含まれるが、これらに限定されない。
点眼薬中に含まれ得る他の賦形剤成分は、キレート剤である。好ましいキレート剤は、エデト酸2ナトリウムであるが、他のキレート剤がその代わりに、またはそれと併せて使用され得る。
成分は、通常、以下の量で使用される:
活性成分の成分量(w/w%):約0.001〜5の防腐剤、0〜0.10のビヒクル、0〜40の等張化剤、0〜10の緩衝液、0.01〜10のpH調整剤適量、pH4.5〜7.5、必要に応じて酸化防止剤、必要に応じて界面活性剤、100%にするために必要に応じて精製水。
本発明の活性化合物の実際用量は、特定の化合物、および治療される病態に依存し、適切な用量の選択は、当業者が十分に理解できる範囲内である。
CsA形態2を含有する医薬組成物は、多様な眼障害を治療することにおいて有用である。故に、本発明の別の実施形態では、治療を必要とする対象に、眼科的に許容される担体中の結晶形態2のシクロスポリンAを投与することを含む、眼における水分欠乏性ドライアイ状態、ブドウ膜炎、水晶体アナフィラキシー性眼内炎、または乾性角結膜炎(KCS)を治療するための方法が提供される。
本発明の一態様は、例えば、免疫介在性乾性角結膜炎(KCS)もしくはドライアイ疾患または他の涙腺の自己免疫機能障害を有する患者におけるような、ドライアイ関連症状、ならびにコンタクトレンズ装着者のドライアイ症状を緩和するための、医薬組成物に関する。
ドライアイは、概して、任意の涙膜異常を指し、通常は上皮異常を伴う。涙膜の水性構成成分の特定の欠乏は、乾性角結膜炎(KCS)として知られ、それは世界中の約3000万人の人々を侵す。それは、通常、シェーグレン症候群の一部として含まれる。文字通り、その用語は、乾燥に続発する角膜および結膜の炎症を表す。
涙膜が、潤滑、酸素供給、および残屑の除去というその機能を行うことができないとき、異物感(ざらつき(grittiness)、かゆみ、砂っぽさ(sandiness))、疲労、および乾燥の症状がもたらされる。患者は、とりわけ糸状角膜症の存在下で、激しい痛みを経験する場合がある。涙膜の滑らかな屈折面の喪失は、霧視を引き起こし、それはまばたきからまばたきまで変動し得、1日全体を通じる可変の顕性屈折および可変の視力の病状の主な原因となる。表面乾燥は、反射性の流涙、および過剰の涙という誤解を招きやすい病状をもたらす場合がある。典型的に、涙欠乏の症状は、1日の後半に、長時間の眼の使用により(患者が読書をする、またはテレビを見るとき等)、および暑さ、風、および低湿度の条件下で(ビーチまたはスキー場で等)悪化する。朝に悪化する症状は、関連する慢性眼瞼炎、再発性角膜上皮びらん、または兎眼性角膜症を示唆する。さらに、症状は、点状表層びらん、角膜糸状物、粗い粘液プラーク(coarse mucus plaques)、および上皮欠損を含む。
これより上に注記されるように、これらの症状のほとんどは、環境的な試練に対応する眼表面の能力を低下させる、不安定な涙膜および異常な眼表面からもたらされる。ドライアイ症候群は、治療せずに放置すると、結膜および角膜上皮における進行的病理変化を引き起こす可能性がある。
ドライアイの病因は多様である。概して「ドライアイ」と称されるその疾患は、涙腺に対する全身性アンドロゲン支援における加齢に伴う減少、またはシェーグレン症候群等の全身性自己免疫疾患の結果であり得る。相次ぐ研究は、ドライアイが、基礎的なサイトカインおよび受容体介在性炎症プロセスの結果であることを示唆している。
涙置換、涙保存、および自律的涙刺激等の緩和剤は、症状の完全なまたは部分的な軽減を提供し得る。しかしながら、基礎的な炎症プロセスに向けられる療法的治療は、基礎障害を補正することにおいて有益であることが判明し得る。
正常な眼における涙膜は、角膜上皮にわたって横たわる粘液層ならびに粘液層および上皮を被覆する水層から構成される、薄い(厚さ約6〜45μm)膜からなり、それが今度は、脂質分子の極めて薄い(0.01〜0.22μm)層によって被覆される。
継続的な涙膜の存在は、角膜および結膜上皮の健康状態に重要であり、角膜に、光学的に高質の表面を提供する。加えて、涙膜の水性部分は、瞼のまばたきの間に、眼瞼に対する滑沢剤として作用する。さらに、涙液に含有されるある特定の酵素、例えば、免疫グロブリンA、リゾチーム、およびベータリジンは、静菌特性を有することが知られている。
脂質層は、眼からの水分の蒸発を遅らせると考えられている。涙膜の脂質層が、例えば、外傷、疾患、眼の刺激、またはコンタクトレンズ装着によって妨害される場合、眼からの水分の過度の蒸発が生じる場合があり、眼の表面を「乾燥」したまま放置する(例えば、Cedarstaff and Tomlinson,Am.J.Optometry&Physiol.Optics,60:167−174,1983[tear film disruption in patients with keratoconjunctivitis sicca,or“dry eye”]を参照されたい)。
正常な涙器系は、適切に構造化された継続的な涙膜を形成し、維持するように機能する。涙器系は、分泌系(源)、分配系、および排出系(シンク)からなる。分泌系において、涙液は、主涙腺および副涙腺によって供給される。
涙膜からの水分の過度の蒸発は、眼の不快感(人物によって乾燥もしくは疲れ目として頻繁に経験される、または他の低頻度で報告される不快症状)をもたらし、最終的に、眼の組織における、とりわけ角膜における、生理的変化および病理変化に至る場合がある。コンタクトレンズ装着者にとって、かかる不快感は、涙膜からの水分の喪失が涙膜とレンズとの界面で生じるため、特に激しい。さらに、レンズがヒドロゲル「ソフト」レンズである場合、涙膜からの水分の過度の蒸発はまた、レンズからの水分の過度の蒸発をもたらす可能性もある。
故に、この蒸発を考慮に入れると、涙液の継続的な産生および排水は、角膜および結膜上皮を湿潤状態に維持すること、上皮呼吸のための栄養を提供すること、静菌剤を供給すること、および眼表面を涙の移動の水洗作用によって清浄することにおいて重要である。
比較的軽度の症例において、KCSの主要な症状は、異物感または軽度の「かゆみ」である。これは、持続性の強烈な、ヒリヒリする刺激されるような感覚となるまで進行する可能性があり、それは患者を消耗させる可能性がある。KCSのより重度の形態は、角膜表面に付着した多数のストランドまたは糸状物の出現によって特徴付けられる、痛みを伴う病態である、糸状角膜炎の発症まで進行する。最近の証拠は、これらの糸状物が、正常な角膜上皮細胞の継続性の途切れを表すことを示唆する。瞼運動によって作り出されるせん断は、これらの糸状物を引っ張り、痛みを引き起こす。このKCSの病期の管理は、非常に困難である。
KCSの頻繁な合併症は、二次感染である。眼の正常な防御機構における複数の破壊は、恐らく、KCSを患う患者の涙液中における抗菌性リゾチームの減少に起因して、生じると思われる。
通常は、例えば、KCS等の、水分欠乏性ドライアイ状態は、人工涙置換剤での涙の補給によって治療される。しかしながら、軽減は、眼において投与された人工涙液の保持時間によって限定される。典型的に、眼に投与された人工涙液の効果は、約30分から45分以内に消散する。かかる製品の効果は、最初は鎮痛効果があるが、十分に長く持続しない。患者は、正常な涙を補給する必要に応じて、眼における人工涙液を反復投与する必要性によって不便を被る。
次の実施例は、本発明を例示することのみが意図され、決して本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
実施例1
1w/v%Tween80を含有する0.05重量%CsA水溶液を調製し、65℃で保管した。24時間の保管後、シクロスポリンの新たな結晶形態が沈殿によって形成された。
実施例2
シクロスポリンA(30.19g)を、室温で、水中、900mLの1w/v%Tween80の中に懸濁させた。懸濁液を65℃まで加熱し、52℃の0.2gのシクロスポリンA形態2を播種した。懸濁液を65〜61℃で22〜23時間撹拌した。沈殿した固体を真空濾過によって回収し、水で洗浄し、真空下で、最初に40℃で、次いで室温で乾燥させた。収量は30.3gであった。
実施例3
1w/v%ポリソルベート80(PS80)および過剰のCsA形態2を含有する水性懸濁液を調製し、25℃および40℃で保管した。固体残渣の試料を24ヶ月の期間にわたって収集し、X線粉末回折によって分析した。図5は、24ヵ月後に収集された試料についてのXRPDディフラクトグラムを示す。形態2の参照ディフラクトグラムと比較して、形態2が、試験された条件下で物理的に安定であることを示す変化は何ら存在しない。
実施例4
水中、5w/v%ヒアルロン酸ゲル中のシクロスポリン形態2の懸濁液を調製し、25℃で保管した。試料を6ヶ月の時間枠にわたって収集し、X線粉末回折によって分析した。図6は、6ヵ月後に収集された試料についてのXRPDディフラクトグラムを示す。形態2の参照ディフラクトグラムと比較して、形態2が、試験された条件下で物理的に安定であることを示す変化は何ら存在しない。
本発明は、これらの具体的な実施例に関して記載されたが、本発明の趣旨から逸脱することなく、他の修正および変形が可能であることが理解される。

Claims (7)

  1. 下記構造
    を有し、(2θ):7.5、8.8、10.2、11.3、12.7、13.8、14.5、15.6、および17.5の主ピークを有するX線粉末回折パターンを有する、結晶形態2の、シクロスポリンA。
  2. 図2に示されるX線回折パターンを有する、結晶形態のシクロスポリンA。
  3. 下記構造
    を有し、その変調示差走査熱量測定プロファイルにおいて、65℃〜110℃温度範囲での脱水吸熱と、122〜125℃での相転移と、を有する、請求項1記載の結晶形態2のシクロスポリンA。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の結晶形態のシクロスポリンAを含む、眼における水欠乏性ドライアイ状態、ブドウ膜炎、水晶体アナフィラキシー性眼内炎または乾性角結膜炎(KCS)の治療用医薬。
  5. 他の結晶形態を含まない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の結晶形態のシクロスポリンA。

  6. によって表され、式中、Xは0〜3である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の結晶形態のシクロスポリンA。
  7. 式中、Xは2である、請求項6に記載の結晶形態のシクロスポリンA。
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