ところが、上記特許文献3の燃料電池では、ガス流入側ではリブの数が多くなっていることから、実際に発電をした場合にはガス流入側では発電量が多くなる。一方、ガス流出側ではリブの数が少ないことから、発電量が少なくなる。その結果、ガス流入側にて発電の集中が起こり、発電に伴う熱の発生がガス流入側で大きく、ガス流出側で小さくなることから、セル面内の発電量ばらつきが生じ、温度分布が大きくなるといった問題が発生する。つまり、特許文献3の燃料電池では、反応ガスが流れる発電面積(発電反応の均一化)を調整してはいるが、その調整を集電体(導電体)で実施していることから、負荷接続される場面でリブの数が多くなっているガス流入側にて多くの電子が流れようとする。そのため、実質的な(発電反応と電流を勘案した)実効発電面積が大きくなり、セル面内の部分的な電流密度上昇が起こる。その結果、(集電体などを含む)単セル面内の実効発電量分布(温度分布)が大きくなってしまう。また、集電体の形状変更が必要となるため、その加工コストが嵩んでしまう。
因みに、特許文献1の燃料電池では、空気極の表面において、導電性細条が均一に形成されている。このため、反応ガスの流れに起因してセル面内で発電量に差が生じて発電量が不均一になってしまうこと(即ち、発電量ばらつき)を回避することができない。また、特許文献2の燃料電池では、空気極の表面内において、導電性の密着層が格子状に規則正しく設けられており、これら密着層は同じ導電材料を用いて形成されている。このため、反応ガスの流れに起因するセル面内での発電量ばらつきを回避することができない。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電極における平面内での(発電反応と集電による)発電量ばらつきを解消し、発電を効率よく行うことができる燃料電池セルを提供することにある。また、別の目的は、上記燃料電池セルを用いて効率よく発電することができる燃料電池セルスタックを提供することにある。
そして上記課題を解決するための手段(手段1)としては、集電のための複数の突起を有する集電体に隣接して配置され、燃料極、空気極及び電解質層を有する平板状部材として構成され、前記燃料極及び前記空気極のうちの少なくとも一方の電極の表面上に、前記集電体の複数の突起が接触しうる集電体接触部位が散点状に設定された燃料電池セルであって、前記電極の表面上に設けられた導電層を備え、前記導電層は、複数の前記集電体接触部位の内部領域に各々設けられ、前記集電体の突起が当接する当接パッド部を有するとともに、隣接する前記集電体接触部位の前記当接パッド部間を繋げるように設けられる結線部及び前記当接パッド部から前記集電体接触部位の外側にはみ出るように設けられるパッド拡張部のうちの少なくとも一方を有し、前記結線部及び前記パッド拡張部のうちの少なくとも一方は、前記電極の表面内における単位面積当たりの面積割合が、前記電極の平面方向に沿って供給される反応ガスの流入側から流出側に向かって粗から密になるよう形成されていることを特徴とする燃料電池セルがある。
従って、手段1に記載の発明によると、集電体の複数の突起が接触しうる集電体接触部位が散点状に設定されている。また、電極の表面上において導電層が設けられており、その導電層を構成する結線部及びパッド拡張部のうちの少なくとも一方が、粗密を有するように形成されている。燃料電池において、発電は集電体から電極に電子が授受されることにより起こるため、このような粗密を有する導電層を電極表面に形成することにより、燃料電池セル内に集電抵抗の差が生じる。つまり、ガス流入側のように、セル面内の燃料ガス及び酸化ガス濃度が高い箇所においては、集電抵抗を増加させるように導電層を設定する。反対にガス流出側のように、セル面内の燃料ガス及び酸化ガス濃度が低い箇所においては、集電抵抗を低くするように導電層を設定する。なお、本発明における集電抵抗とは、集電体のみの電気抵抗ではなく、集電体と電極(燃料極及び空気極)とを通じて三相界面(反応ガスと電極と固体電解質層との界面)に至るまでの電気抵抗のことを言う。従って、上記のように燃料電池セル内に集電抵抗の差が生じることで、燃燃料電池セルの平面内における発電量ばらつきが解消され、発電時の温度分布の差が小さくなり、セル割れやセル特性の早期低下を回避することができる。なお、本発明において、発電量とは、発電反応によるものとその発電反応で得られた集電抵抗によるものとの両方を含む。また、本発明の燃料電池セルでは、集電体の突起が所定の間隔をあけて散点状に配置されており、従来技術のように反応ガスの流れに応じて集電体の配置間隔などの形状変更を行う必要がない。このため、燃料電池セルにおいて、各電極に供給される反応ガスの流量を十分に確保することができ、発電を効率よく行うことができる。さらに、集電体の形状変更に伴う加工コストが必要ないため、燃料電池セルの製造コストを抑えることができる。
導電層における結線部及びパッド拡張部のうちの少なくとも一方は、電極の表面内における単位面積当たりの面積割合が、電極の平面方向に沿って供給される反応ガスの流入側から流出側に向かって粗から密になるよう形成される。燃料電池セルにおいて、このように導電層を形成すると、燃料電池セル内に集電抵抗の差が生じる。つまり、ガス流入側のように、セル面内の燃料ガス及び酸化ガス濃度が高い箇所においては、集電抵抗を増加させるように導電層を設定する。反対にガス流出側のように、セル面内の燃料ガス及び酸化ガス濃度が低い箇所においては、集電抵抗を低くするように導電層を設定する。この結果、反応ガスの流入側と流出側とにおいて発電量に差が生じにくくなり、燃料電池セルの平面内における発電量ばらつきを解消することができ、セル割れやセル特性の早期低下を回避することができる。
導電層における結線部及びパッド拡張部のうちの少なくとも一方の個々の面積は、反応ガスの流入側よりも流出側のほうが大きくなっていてもよい。燃料電池セルにおいて、このように導電層を形成すると、反応ガスの流入側と流出側とで発電量に差が生じにくくなり、セル割れやセル特性の早期低下を回避することができる。
導電層における結線部及びパッド拡張部のうちの少なくとも一方の個々の幅(太さ)は、反応ガスの流入側よりも流出側のほうが広く(太く)なっていてもよい。このようにすると、反応ガスの流入側から流出側に向かって導電層の面積を増やすことができる。従って、燃料電池セルにおいて、燃料電池セル内に集電抵抗の差が生じる。つまり、ガス流入側のように、セル面内の燃料ガス及び酸化ガス濃度が高い箇所においては集電抵抗を増加させるように導電層を設定する。反対にガス流出側のように、セル面内の燃料ガス及び酸化ガス濃度が低い箇所においては、集電抵抗を低くするように導電層を設定する。この結果、反応ガスの流入側と流出側とで発電量に差が生じにくくなり、セル割れやセル特性の早期低下を回避することができる。
導電層における結線部の個々の幅は、反応ガスの流入側と流出側とで等しく、隣接する集電体接触部位の当接パッド部間に存在する結線部の本数は、流入側よりも流出側のほうが多くなっていてもよい。このようにしても、反応ガスの流入側から流出側に向かって導電層の面積を増やすことができる。従って、燃料電池セルにおいて、燃料電池セル内に集電抵抗の差が生じる。つまり、ガス流入側のように、セル面内の燃料ガス及び酸化ガス濃度が高い箇所においては、集電抵抗を増加させるように導電層を設定する。反対にガス流出側のように、セル面内の燃料ガス及び酸化ガス濃度が低い箇所においては、集電抵抗を低くするように導電層を設定する。この結果、反応ガスの流入側と流出側とで発電量に差が生じにくくなり、セル割れやセル特性の早期低下を回避することができる。
導電層において集電体接触部位の当接パッド部を除く部分の面積割合は、集電体接触部位の面積を除いた電極の表面積に対して、1%以上10%以下である。ここで、導電層において当接パッド部を除く部分の面積割合が1%未満である場合、隣接する集電体接触部位の当接パッド部間を接続する結線部やパッド拡張部の幅が狭くなるため、セル面内の集電抵抗差が少なくなる。そのため、面内のガス濃度差の傾向に見合うだけの十分な集電抵抗差を生むことができず、本願の課題であるセル面内の発電バラツキを抑えることができない。また、導電層において当接パッド部を除く部分の面積割合が10%を越える場合、結線部やパッド拡張部の面積が大きくなりすぎることで、電極におけるガス透過性が悪化し、セル特性が低下してしまう。従って、燃料電池セルにおいて、導電層において当接パッド部を除く部分の面積割合を1%以上10%以下とすることにより、セル特性の低下を回避しつつ、不均一な発電による電流集中(集電抵抗の上昇)を回避することができる。
導電層は、電極の形成材料よりも低い抵抗値を有する導電材料を用いて形成される。具体的には、導電層は、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、金(Au)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)の少なくとも1つを含む導電材料を用いて形成される。このような導電材料を用いて導電層を形成すると、導電層を介して電荷移動が容易となり、集電効率を高めることができる。
導電層は、反応ガスの流れに対して、垂直な結線部と平行な結線部とを含んでいてもよい。また、複数の集電体接触部位は、同一の形状及び面積を有し、電極の表面上において縦横に格子状に規則正しく設定されていてもよい。このようにすると、燃料電池セルにおいて集電体の突起と電極表面との間に反応ガスの流路を確保しつつ、集電体によって確実に集電することができる。
燃料電池セルは固体酸化物形燃料電池に用いられ、導電層が形成される電極が燃料極であっても空気極であってもよい。この場合、各電極及び集電体間での電子の授受が導電層を介して効率よく行われるため、発電効率を十分に高めることができる。
電極の表面内にて散点状に配置された複数の集電体接触部位のうちの一部について、隣接する集電体接触部位の当接パッド部間を繋ぐように結線部が形成されていてもよい。このように導電層(当接パッド部及び結線部)を形成すると、発電時の燃料電池セルの熱変形によって集電体接触部位の一部が集電体の突起から離間した場合でも、その離間した集電体接触部位の当接パッド部とそれに隣接する集電体接触部位の当接パッド部とが結線部によって電気的に接続されているため、十分な集電能力を確保することができる。この結果、燃料電池セルにおいて、電圧ロスがなく効率よく発電することができる。
燃料電池セルを構成する電解質層が固体酸化物層である場合、その形成材料としては、例えばZrO2系セラミック、LaGaO3系セラミックなどがある。
空気極は、酸化剤となる酸化剤ガス(反応ガス)と接触し、燃料電池セルにおける正電極として機能する。ここで、空気極の形成材料としては、例えば、金属材料、金属の酸化物、金属の複合酸化物などを挙げることができる。金属材料の好適例としては、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Rh等やそれらの合金などがある。金属の酸化物の好適例としては、例えば、La、Sr、Ce、Co、Mn、Feの酸化物(La2O3、SrO、CeO2、Co2O3、MnO2、FeO)などがある。金属の複合酸化物の好適例としては、例えば、La、Pr、Sm、Sr、Ba、Co、Fe、Mnを含有する複合酸化物(La1−xSrxCoO3系複合酸化物、La1−xSrxFeO3系複合酸化物、La1−xSrxCo1−yFeyO3系複合酸化物、La1−xSrxMnO3系複合酸化物、Pr1−xBaxCoO3系複合酸化物、Sm1−xSrxCoO3系複合酸化物)などがある。
酸化剤ガスとしては、例えば酸素と他の気体との混合ガスなどが挙げられる。この混合ガスは、窒素やアルゴン等の不活性ガスを含有していてもよい。なお、混合ガスは、安全で安価な空気であることが好ましい。
燃料極は、還元剤となる燃料ガス(反応ガス)と接触し、燃料電池セルにおける負電極として機能する。ここで、燃料極の形成材料としては、例えば、希土類元素(Sc、Yなど)により安定化されたZrO2系セラミック、及び、希土類元素(Sm、Gdなど)をドープしたCeO2系セラミック等のうち、少なくとも1つのセラミック材料と、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Rh、Ni、Fe等の金属材料及びそれら金属材料の合金のうちの少なくとも1つと、を混合した金属セラミック材料の混合物(サーメット)を使用することができる。
また、燃料ガスとしては、例えば水素ガス、炭化水素ガス、水素ガスと炭化水素ガスとの混合ガスなどが挙げられる。燃料ガスとして炭化水素ガスを選択した場合、炭化水素ガスの種類は特に限定されないが、例えば、天然ガス、ナフサ、石炭ガス化ガス等であることが好ましい。なお、水中にガス(水素ガス、炭化水素ガス、混合ガス)を通過させて加湿することによって得られる燃料ガスや、ガス(水素ガス、炭化水素ガス、混合ガス)に水蒸気を混合させることによって得られる燃料ガスを選択してもよい。また、1種類の燃料ガスのみを用いてもよいし、複数種類の燃料ガスを併用してもよい。さらに、燃料ガスは、窒素やアルゴン等の不活性ガスを含有していてもよい。また、液体の原料を気化したものを燃料ガスとして使用したり、水素ガス以外のガスを改質して生成した水素ガスを燃料ガスとして使用したりすることもできる。
また、上記課題を解決するための別の手段(手段2)としては、手段1に記載の燃料電池セルと、集電のための複数の突起を有し、前記複数の突起の先端面が前記電極の表面上に設定された前記集電体接触部位に接触するように配置される集電体とを備え、前記燃料電池セルと前記集電体とが複数個ずつ積層されていることを特徴とする燃料電池セルスタックがある。
手段2に記載の発明によると、手段1の燃料電池セルと集電体とが複数個ずつ積層されることで燃料電池セルスタックが構成されている。この燃料電池セルスタックでは、各燃料電池セルにおいて反応ガスの流入側と流出側とで発電量に差が生じにくくなり、セル割れやセル特性の早期低下を回避することができる。従って、燃料電池セルスタックにおいて効率よく発電することができる。
また、上記の燃料電池セルスタックを用いて構成される燃料電池としては、固体酸化物形燃料電池(SOFC)が挙げられる。本発明の燃料電池セルとしては、固体酸化物形電解セル(SOEC)などの固体酸化物形電気化学セルを含むものとする。
以下、本発明を燃料電池に具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
本実施の形態の燃料電池100は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。図1に示されるように、燃料電池100は、発電の最小単位である燃料電池セル111を複数積層してなる燃料電池セルスタック112を備えている。
燃料電池セルスタック112は、例えば縦180mm×横180mm×高さ80mmの略直方体形状をなしている。本実施の形態において、燃料電池セルスタック112を構成する燃料電池セル111の積層数は、20枚程度となっている。また、燃料電池セルスタック112には、燃料電池セル111の積層方向における両端部(図1では上端部と下端部)に、エンドプレート14,15が配置されている。さらに、セルスタック112の周縁部には、同スタック112を厚さ方向に貫通する複数の貫通穴が形成されている。そして、各貫通穴に締結ボルト18を挿通させ、セルスタック112の下面から突出するボルト18の下端部分にナット19が螺着されている。このように締結ボルト18及びナット19を用いて各エンドプレート14,15を各燃料電池セル111の積層方向に締め付けることで、複数の燃料電池セル111が固定されるようになっている。また、セルスタック112の両端部に配置されるエンドプレート14,15が、セルスタック112から出力される電流の出力端子となっている。
図2に示されるように、セルスタック112を構成する燃料電池セル111は、空気極21、燃料極22及び固体電解質層23を有する平板状部材として構成され、発電反応により電力を発生する。また、セルスタック112には、燃料電池セル111に加えて、コネクタプレート24、セパレータ25、空気極側集電体27及び燃料極側集電体28等が設けられ、それらが複数個ずつ積層されている。
より詳しくは、コネクタプレート24は、ステンレスなどの導電性材料によって形成されており、燃料電池セル111の厚み方向の両側に一対配置される。各コネクタプレート24により板厚方向での燃料電池セル111間の導通が確保される。隣り合う燃料電池セル111の間に配置されるコネクタプレート24は、インターコネクタとなり、隣り合う燃料電池セル111を区分する。
セパレータ25は、ステンレスなどの導電性材料によって形成されており、矩形状の開口部29を中央部に有する略矩形枠状をなしている。セパレータ25は、燃料電池セル111間の仕切り板として機能する。
固体電解質層23は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)などのセラミック材料(酸化物)によって矩形板状に形成されている。固体電解質層23は、セパレータ25の下面に固定されるとともに、セパレータ25の開口部29を塞ぐように配置されている。固体電解質層23は、酸素イオン伝導性固体電解質体として機能するようになっている。
また、固体電解質層23の上面には、セルスタック112に供給された酸化剤ガスに接する空気極21が貼付され、固体電解質層23の下面には、同じくセルスタック112に供給された燃料ガスに接する燃料極22が貼付されている。即ち、空気極21及び燃料極22は、固体電解質層23の両側に配置されている。また、空気極21は、セパレータ25の開口部29内に配置され、セパレータ25と接触しないようになっている。なお、本実施の形態の燃料電池セル111では、セパレータ25の下方に燃料室31が形成されるとともに、セパレータ25の上方に空気室32が形成されている。
本実施の形態の燃料電池セル111において、空気極21は、金属の複合酸化物であるLSCF(La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3)によって矩形板状に形成されている。また、燃料極22は、ニッケルとイットリア安定化ジルコニアとの混合物(Ni−YSZ)によって矩形板状に形成されている。燃料電池セル111において、空気極21はカソード層として機能し、燃料極22はアノード層として機能する。
空気極21は、空気極側集電体27によってコネクタプレート24に電気的に接続され、燃料極22は、燃料極側集電体28によってコネクタプレート24に電気的に接続されている。空気極側集電体27は、例えばLa、Mn、Ti、Si、C、Ni、Al、Zr等を微量添加したSUS430系フェライト合金等の緻密な金属板からなる。一方、燃料極側集電体28は、燃料ガスの通過が可能なように、例えばニッケル製の多孔体からなる。
図2〜図4に示されるように、空気極側集電体27は、集電のための複数の突起35を有しており、それら突起35の先端面が空気極21の表面上にて散点状に設定された集電体接触部位37に接触するよう燃料電池セル111に隣接して配置されている。本実施の形態において、複数の集電体接触部位37は、例えば四角形状の領域であり、同一の形状及び面積を有し、空気極21の表面上において縦横に格子状に規則正しく設定されている。空気極側集電体27における複数の突起35は、同一の形状及びサイズを有する四角形状の突起であり、縦横に格子状に規則正しく配置されている。
図4に示されるように、本実施の形態の燃料電池セル111は、空気極21の表面上において、導電層138が設けられている。導電層138は、集電体接触部位37の内側領域に各々設けられ、空気極側集電体27の突起35が当接する当接パッド部139と、隣接する集電体接触部位37の当接パッド部139間を繋ぐように形成された結線部140とを有する。空気極21は平面視で四角形状である。導電層138は、銀パラジウム合金(パラジウムの含有量が1〜10mol%の合金)からなり、その厚さは、例えば数十μm程度である。ここで、集電体接触部位37の内側領域とは、空気極側集電体27における四角形状の突起35が接触する領域であって、集電体接触部位37の中央部の領域、つまり四角形状の内側に位置する領域のことを言う。
また、燃料電池セル111において、空気極21の表面上にて散点状に設定された複数の集電体接触部位37の内部領域には、それら領域全体を覆うように当接パッド部139が形成されており、当接パッド部139を介して空気極21と空気極側集電体27とが接合されている(図2参照)。本実施の形態の燃料電池セル111では、導電層138において集電体接触部位37の当接パッド部139を除く部分(集電体接触部位37の内側領域からはみ出ている結線部140)の面積割合は、集電体接触部位37の面積を除いた空気極21の表面積に対して5%程度となっている。なお、本実施の形態では、導電層138の結線部140は、集電体接触部位37の内側領域(当接パッド部139)から外側領域に延展する展開パターンであり、隣り合う集電体接触部位37の間に形成されている。つまり、結線部140は、各集電体接触部位37の当接パッド部139間を繋ぐ導線として機能する部分である。
本実施の形態の燃料電池セルスタック112には、各燃料電池セル111の燃料室31に燃料ガスを供給する燃料供給経路(図示略)と、燃料室31から燃料ガスを排出する燃料排出経路(図示略)とが設けられている。また、セルスタック112には、各燃料電池セル111の空気室32に空気を供給する空気供給経路(図示略)と、空気室32から空気を排出する空気排出経路(図示略)とが設けられている。各供給経路及び各排出経路は、燃料電池セルスタック112の側面に設けられたジョイント部(図示略)を介して外部配管(図示略)に接続されている。
本実施の形態では、外部配管や各供給経路を通じて燃料電池セル111の端面部から反応ガス(燃料ガス及び酸化剤ガス)が供給される。具体的には、図4に示されるように、反応ガス(燃料ガスF1及び酸化剤ガスA1)の流れとしてクロスフロー(直交流)の方式が採用されている。燃料電池セル111において、酸化剤ガスA1は、空気極21の面方向に沿って図4の右側から左側に向けて供給される。一方、燃料ガスF1は、空気極21の裏面側にある燃料極22の面方向に沿って図4の上側から下側に向けて供給される。つまり、本実施の形態では、酸化剤ガスA1の流れと燃料ガスF1の流れとが直交している。
空気極21の表面上において、導電層138は、電極の平面方向に粗密を有するように、電極全体として不均一に形成されている。より詳しくは、導電層138は、空気極21の表面内における単位面積当たりの面積割合が、空気極21の平面方向に沿って供給される反応ガスF1,A1の流入側から流出側に向かって粗から密になるよう形成されている。具体的には、本実施の形態において、隣接する集電体接触部位37の当接パッド部139間に存在する結線部140について、個々の幅は反応ガスF1,A1の流入側(上側及び右側)よりも流出側(下側及び左側)のほうが広くなるよう形成されている。つまり、右上に位置する結線部140が最も狭く形成される一方、左下に位置する結線部140が最も広く形成されている。この結果、結線部140の個々の面積は、反応ガスF1,A1の流入側よりも流出側のほうが大きくなっている。
そして、燃料電池100の発電時には、上記のように形成した導電層138(当接パッド部139及び結線部140)を介して空気極21と空気極側集電体27との間で発電反応に伴う電子の授受が行われるようになっている。
次に、本実施の形態における燃料電池セルスタック112の製造方法について説明する。
まず、例えばSUS430からなる板材を打ち抜いて、コネクタプレート24やセパレータ25を製造する。また、燃料極22のグリーンシート上に、固体電解質層23の材料を印刷し、その上に空気極21の材料を印刷した後焼成する。この焼成によって、空気極21、燃料極22及び固体電解質層23を有する平板状の燃料電池セル111が製造される。
その後、燃料電池セル111とセパレータ25とをロウ付けにて固定する。さらに、空気極側集電体27と燃料極側集電体28とを、それぞれ隣接する上部のコネクタプレート24と下部のコネクタプレート24とにロウ付けによって固定する。
また、Ag−Pd粉末(Pd:1mol%)とエチルセルロースと有機溶剤とを三本ロール混合することで、Ag−Pd導電性ペーストを作製する。次に、空気極21の表面に、その導電性ペーストをスクリーン印刷し、その後乾燥する。ここでは、各集電体接触部位37に対応する当接パッド部139のパターンと各集電体接触部位37間を繋ぐ結線部140のパターンとを導電性ペーストによって形成する。
そして、上述したコネクタプレート24、セパレータ25をロウ付けした燃料電池セル111、空気極側集電体27、燃料極側集電体28などを一体に組み付けるとともに、燃料電池セル111を含むそれら部材を複数積層することで燃料電池セルスタック112を構成する。またこのとき、燃料電池セルスタック112において、貫通孔に締結ボルト18を嵌め込むとともにその先端にナット19を螺合させる。この結果、各燃料電池セル111をその積層方向に押圧した状態で一体化させることにより、燃料電池セルスタック112が組み付けられる。
上述した導電性ペーストは、燃料電池100の運転温度(例えば700℃)において、エチルセルロースなどが除去されることで導電層138(銀パラジウム合金)となる。また、燃料電池100の運転温度には、導電層138の銀パラジウム合金が軟化して空気極21と空気極側集電体27とが密着する。なお、運転停止時において、集電体接触部位37の当接パッド部139は、空気極21と空気極側集電体27とを接合して一体化している。
次に、本実施の形態の燃料電池100における燃料電池セル111の作用について説明する。
燃料電池100において、例えば、その燃料電池100を稼働温度に加熱した状態で、燃料供給経路から燃料室31に燃料ガスF1を供給するとともに、空気供給経路から空気室32に酸化剤ガスA1を供給する。本実施の形態では、セルスタック112の各燃料電池セル111において、燃料ガスF1及び酸化剤ガスA1の流れがクロスフロー(直交流)となるように、空気極21の平面方向に沿って酸化剤ガスA1が供給されるとともに燃料極22の平面方向に沿って燃料ガスF1が供給される。このとき、燃料ガスF1中の水素と酸化剤ガスA1中の酸素とが固体電解質層23を介して反応(発電反応)し、空気極21を正極、燃料極22を負極とする直流の電力が発生する。本実施の形態では、空気極21の表面上に形成されている導電層138(結線部140)は、電極の平面方向に沿って供給される反応ガスF1,A1の流入側から流出側に向かって粗から密になるよう形成されている。この場合、反応ガスF1,A1の濃度が高く発電反応量が多くなり易い流入側では、導電層138(結線部140)の面積が小さいため発電量が抑制される。一方、反応ガスF1,A1の濃度が低く発電反応量が少なくなり易い流出側では、導電層138(結線部140)の面積が大きいため、発電量が増える。この結果、空気極21及び燃料極22の電極平面において、反応ガスF1,A1の流入側と流出側とにおいて電流集中(集電抵抗の上昇)が起こることなく効率よく電力が発生する。
本実施の形態のセルスタック112は、燃料電池セル111を複数積層して直列に接続している。このため、燃料電池100では、空気極21に電気的に接続される上側エンドプレート14(正極)と、燃料極22に電気的に接続される下側エンドプレート15(負極)とから直流電力が出力される。
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施の形態の燃料電池セル111では、空気極21の表面において、導電層138が設けられており、その導電層138を構成する結線部140は、平面方向に沿って供給される反応ガスF1,A1の流入側から流出側に向かって粗から密になるよう形成されている。燃料電池100において、発電は空気極側集電体27から空気極21に電子が授受されることにより起こるため、このように粗密を有する導電層138を形成することにより、燃料電池セル111内に集電抵抗の差が生じる。つまり、ガス流入側のように、セル面内の燃料ガス及び酸化ガス濃度が高い箇所においては、集電抵抗を増加させるように導電層138(結線部140)を設定する。反対にガス流出側のように、セル面内の燃料ガス及び酸化ガス濃度が低い箇所においては、集電抵抗を低くするように導電層138(結線部140)を設定する。この結果、燃料電池セル111の平面内において、反応ガスF1,A1の流入側と流出側とで発電量に差が生じにくくなり、燃料電池セル111の平面内における発電量ばらつきが解消され、発電時の温度分布の差が小さくなる。従って、従来技術のようなセル割れやセル特性の早期低下を回避することができ、発電を効率よく行うことができる。
(2)本実施の形態の燃料電池セル111では、空気極側集電体27の突起35が所定の間隔をあけて散点状に配置されており、従来技術のように反応ガスF1,A1の流れに応じて集電体27の配置間隔などの形状変更を行う必要がない。このため、燃料電池セル111において、空気極21に供給される酸化剤ガスA1の流量を十分に確保することができる。さらに、本実施の形態の燃料電池セル111では、空気極側集電体27の形状変更に伴う加工コストが必要ないため、燃料電池セル111の製造コストを抑えることができる。
(3)本実施の形態の燃料電池セル111では、結線部140は、個々の幅が反応ガスF1,A1の流入側よりも流出側のほうが広くなっており、反応ガスF1,A1の流入側よりも流出側のほうが面積が大きくなっている。このように結線部140を形成すると、燃料電池セル111の平面内において集電抵抗の差が生じる。セル面内のガス濃度の増減と集電抵抗の増減とは逆となるので、反応ガスF1,A1の流入側と流出側とで発電量に差が生じにくくなる。その結果、発電量ばらつきが解消され、セル割れやセル特性の早期低下を確実に回避することができる。
(4)本実施の形態の燃料電池セル111では、導電層138の結線部140(集電体接触部位37の当接パッド部139を除く部分)の面積割合は、集電体接触部位37の面積を除いた空気極21の表面積に対して5%程度となっている。ここで、結線部140の面積割合が1%未満である場合、隣接する集電体接触部位37の当接パッド部139間を接続する結線部140の幅が狭くなるため、セル面内の集電抵抗差が少なくなる。そのため、面内のガス濃度差の傾向に見合うだけの十分な集電抵抗差を生むことができず、セル面内の発電バラツキを抑えることができない。また、結線部140の面積割合が10%を越える場合、結線部140の面積が大きくなりすぎることで、空気極21におけるガス透過性が悪化し、セル特性が低下してしまう。従って、本実施の形態の燃料電池セル111のように、結線部140の面積割合を5%とすることにより、セル特性の低下を回避しつつ、不均一な発電による電流集中(集電抵抗の上昇)を回避することができる。
(5)本実施の形態の燃料電池セル111において、空気極21の表面上にて散点状に設定された複数の集電体接触部位37の内部領域には、それら領域全体を覆うように当接パッド部139が形成されており、当接パッド部139を介して空気極21と空気極側集電体27とが接合されている。このように構成すると、空気極側集電体27の各突起35と空気極21との間の接触抵抗を低く抑えることができ、集電効率を十分に高めることができる。
(6)本実施の形態の燃料電池セル111において、複数の集電体接触部位37は、同一の形状及び面積を有し、空気極21の表面上において縦横に格子状に規則正しく設定されている。このようにすると、燃料電池セル111において空気極側集電体27の突起35と空気極21の表面との間に酸化剤ガスA1の流路を確保しつつ、空気極側集電体27によって確実に集電することができる。
(7)本実施の形態の燃料電池セル111において、導電層138は、空気極21の形成材料よりも低い抵抗値を有する導電材料(具体的には銀パラジウム合金)を用いて形成される。このような導電材料を用いて導電層138を形成すると、導電層138を介して電荷移動が容易となり、燃料電池セル111の集電効率をより高めることができる。
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、各結線部140は、個々の幅が反応ガスF1,A1の流入側よりも流出側のほうが広く形成されていたが、これに限定されるものではない。図5に示される導電層143のように、結線部145の個々の幅は、反応ガスF1,A1の流入側と流出側とで等しく、隣接する集電体接触部位37の当接パッド部144間に存在する結線部145の本数は、流入側にある集電体接触部位37よりも流出側にある集電体接触部位37ほど多くなるように形成してもよい。このようにしても、導電層143の結線部145は、空気極21の表面内における単位面積当たりの面積割合が、反応ガスF1,A1の流入側から流出側に向かって粗から密になるよう形成される。このため、燃料電池セル111において、反応ガスF1,A1の流入側と流出側とで発電量に差が生じにくくなる。従って、燃料電池100におけるセル割れやセル特性の早期低下を回避することができ、発電を効率よく行うことができる。
・上記実施の形態において、各導電層138,143の結線部140,145としては、反応ガスF1,A1の流れに対して、垂直な結線部140,145と平行な結線部140,145とを有するものであったが、これに限定されるものではない。図6に示される導電層146(当接パッド部147及び結線部148,149)のように、反応ガスF1,A1の流れの向きに対して、垂直な結線部148と平行な結線部148とに加えて、傾斜した結線部149を形成してもよい。また、上記実施の形態では、反応ガス(燃料ガスF1及び酸化剤ガスA1)の流れとしては、クロスフロー(直交流)のものに具体化したが、コフロー(並行流)、カウンタフロー(対向流)のものに具体化してもよい。図7及び図8には、コフローによって燃料ガスF1及び酸化剤ガスA1が各電極に供給される場合の具体例を示している。図7及び図8では、空気極21の平面方向に沿って酸化剤ガスA1が図中上側から下側に向けて流れる。また、図7及び図8では、空気極21の裏側にある燃料極22(図示略)の平面方向に沿って燃料ガスF1が図中上側から下側に向けて流れる。図7に示す導電層151では、空気極21の表面において、集電体接触部位37の当接パッド部152間に存在する結線部153は、反応ガスF1,A1の流入側(図7では上側)にあるパターンよりも流出側(図7では下側)にあるパターンほど幅が広く形成されている。また、図8示す導電層155では、空気極21の表面において、集電体接触部位37の当接パッド部156間に存在する結線部157,158の本数は、反応ガスF1,A1の流入側(図8では上側)にあるパターンよりも流出側(図8では下側)にあるパターンほど多く形成されている。図7及び図8のように導電層151,155を形成した場合でも、反応ガスF1,A1の流入側と流出側とで発電量に差が生じにくくなる。従って、燃料電池100におけるセル割れやセル特性の早期低下を回避することができ、発電を効率よく行うことができる。
・上記実施の形態では、導電層138,143,146,151,155は、各集電体接触部位37の内部領域に形成される当接パッド部139,144,147,152,156と、それら当接パッド部139,144,147,152,156間を繋ぐように形成された結線部140,145,148,149,153,157,158を有していたが、これに限定されるものではない。図9に示されるように、集電体接触部位37間を接続しない矩形島状の導電層161を形成してもよい。図9において、空気極21の表面に形成される導電層161は、集電体接触部位37の内部領域に各々設けられた当接パッド部162と、当接パッド部162から集電体接触部位37の外側にはみ出るように設けられるパッド拡張部163とを有する。そして、反応ガスF1,A1の流入側よりも流出側ほど集電体接触部位37から外側にはみ出ているパッド拡張部163の面積(幅)を大きくしている。つまり、矩形島状の導電層161(当接パッド部162及びパッド拡張部163)の各々の面積が流出側ほど大きくなっている。なお、図9では、集電体接触部位37の形状に合わせて、各導電層161も四角形状としているが、これに限定されるものではなく、円形状の導電層となるようにパッド拡張部を形成してもよい。つまり、燃料電池セル111において、流入側の集電体接触部位37に繋がるパッド拡張部163よりも流出側の集電体接触部位37に繋がるパッド拡張部163の面積が大きくなるよう導電層161を形成するものであればパッド拡張部163の形状は適宜変更してもよい。このように燃料電池セル111を構成しても、燃料電池セル111内に集電抵抗の差が生じる。つまり、セル面内のガス濃度の増減と集電抵抗の増減とは逆となるので、反応ガスF1,A1の流入側と流出側とで発電量に差が生じにくくなる。従って、燃料電池100におけるセル割れやセル特性の早期低下を回避することができ、発電を効率よく行うことができる。
また、図10に示される導電層165ように、空気極21の表面内にて散点状に配置された複数の集電体接触部位37のうちの一部(例えばコーナー部の集電体接触部位37のみ)について、隣接する集電体接触部位37の当接パッド部166間を繋ぐように結線部167を形成してもよい。集電体接触部位37の当接パッド部166間を繋ぐ結線部167は、発電時の燃料電池セル111の熱変形によって空気極側集電体27に対して離間する方向の反りが発生する部位に形成される。このようにすると、燃料電池セル111の熱変形によって集電体接触部位37の一部が空気極側集電体27の突起35から離間した場合でも、コーナー部に隣接する集電体接触部位37の当接パッド部166及び結線部167を介して(空気極側集電体27と剥離し電極表面上に残った)コーナー部の集電体接触部位37から(集電抵抗を上げることなく)集電することができる。従って、燃料電池セル111における発電効率の悪化を回避することができる。
さらに、図10の導電層165では、当接パッド部166から集電体接触部位37の外側にはみ出るようにパッド拡張部168が設けられている。導電層165において、反応ガスF1,A1の流入側よりも流出側ほど集電体接触部位37から外側にはみ出ているパッド拡張部168の面積を大きくしている。このように導電層165を形成しても、セル面内のガス濃度の増減と集電抵抗の増減とが逆となるので、反応ガスF1,A1の流入側と流出側とで発電量に差が生じにくくなる。従って、燃料電池100におけるセル割れやセル特性の早期低下を回避することができ、発電を効率よく行うことができる。
・上記実施の形態では、空気極21において、各集電体接触部位37の内部領域にはそれら領域全体を覆うように当接パッド部139,144,147,152,156,162,166が形成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、図11に示されるように、空気極21の表面において、各集電体接触部位37の内側領域と、それと隣接する集電体接触部位37の内側領域とを繋げるように、矩形状の導電層171(当接パッド部172及び結合部173)を形成してもよい。各導電層171は、各集電体接触部位37の内側領域の一部のみに重なるように形成されており、この内側領域に重なる部分が当接パッド部172となる。また、隣接する集電体接触部位37の当接パッド部172間を繋げる部分が結合部173となる。そして、これら矩形状の導電層171(結合部173)は、個々の太さが反応ガスF1,A1の流入側(上側及び右側)よりも流出側(下側及び左側)のほうが太くなるよう形成されている。つまり、右上に位置する導電層171(結合部173)が最も細く形成される一方、左下に位置する導電層171(結合部173)が最も太く形成されている。この結果、導電層171(結合部173)の個々の面積は、反応ガスF1,A1の流入側よりも流出側のほうが大きくなっている。このように燃料電池セル111を構成しても、燃料電池セル111内に集電抵抗の差が生じる。セル面内のガス濃度の増減と集電抵抗の増減とは逆となるので、反応ガスF1,A1の流入側と流出側とで発電量に差が生じにくくなる。従って、燃料電池100におけるセル割れやセル特性の早期低下を回避することができ、発電を効率よく行うことができる。
・上記実施の形態では、四角形状の空気極21(電極)に導電層138,143,146,151,155,161,165,171を形成するものであったが、電極形状は四角形状に限定されるものではなく、円形状や四角形以外の多角形状の空気極21に導電層を形成してもよい。図12には、円形状の空気極175の電極表面に導電層176(当接パッド部178及び結合部179,180,181)を形成した具体例を示している。図12の空気極175においても、空気極側集電体が接触する複数の集電体接触部位177が散点状に設けられている。この円形状の空気極175では、電極中央部175aに酸化剤ガスが供給され、電池反応後のガスが電極外縁部175b側から排出されるようになっている。また、空気極175において、直径の異なる2つの円周上となる位置に複数の集電体接触部位177がそれぞれ設定されている。そして、空気極175において、同一円周上に位置する各集電体接触部位177について隣接する集電体接触部位177の当接パッド部178間をそれぞれ繋げるように結合部179,180が設けられている。さらに、空気極175において、電極外縁部175b側における右端、左端、上端及び下端の4つの箇所にある集電体接触部位177とその集電体接触部位177に対して内側に隣接する集電体接触部位177とをそれぞれ繋げるように結合部181が形成されている。そして、電極中央部175a側の集電体接触部位177の当接パッド部178間に存在する結合部179よりも外周部側の集電体接触部位177の当接パッド部178間に存在する結合部180のほうが面積が大きく(幅が太く)なるように導電層176が形成されている。このように導電層176を形成した場合でも、反応ガスF1,A1の流入側と流出側とで発電量に差が生じにくくなる。従って、燃料電池100におけるセル割れやセル特性の早期低下を回避することができ、発電を効率よく行うことができる。
・上記実施の形態では、空気極21,175の表面に導電層138,143,146,151,155,161,165,171,176を形成するものであったが、燃料極22の表面に導電層を形成してもよい。なおこの場合でも、燃料極側集電体28は複数の突起を有し、燃料極22には燃料極側集電体28の突起が接触しうる集電体接触部位が散点状に設定される。そして、燃料極22の表面には、反応ガスF1,A1の流れに応じて粗密を有するように導電層を形成する。このように燃料電池セルを構成しても、反応ガスF1,A1の流入側と流出側とで発電量に差が生じにくくなる。その結果、燃料電池におけるセル割れやセル特性の早期低下を回避することができる。
・上記実施の形態では、集電体接触部位37,177(空気極側集電体27の各突起35)の形状は正四角形状であったが、長方形、円形や楕円形などの形状に変更してもよい。
・上記実施の形態では、固体酸化物形燃料電池100の運転温度によって、導電性ペーストを焼成して導電層138,143,146,151,155,161,165,171,176を形成していたが、導電層138,143,146,151,155,161,165,171,176を形成するための焼成工程を別途行うことで燃料電池セルスタック112を製造してもよい。また、燃料電池セル111における空気極21,175、燃料極22及び固体電解質層23の焼成工程と同時に導電層138,143,146,151,155,161,165,171,176を形成してもよい。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)手段1において、前記結線部の個々の幅は、前記反応ガスの流入側と流出側とで等しく、隣接する前記集電体接触部位の当接パッド部間に存在する前記結線部の本数は、前記流入側よりも前記流出側のほうが多いことを特徴とする燃料電池セル。
(2)手段1において、前記導電層は、前記電極の形成材料よりも低い抵抗値を有する導電材料を用いて形成されることを特徴とする燃料電池セル。
(3)手段1において、前記導電層は、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、金(Au)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)の少なくとも1つを含む導電材料を用いて形成されることを特徴とする燃料電池セル。
(4)手段1において、前記導電層は、前記反応ガスの流れに対して、垂直な前記結線部と平行な前記結線部とを含むことを特徴とする燃料電池セル。
(5)手段1において、前記複数の集電体接触部位は、同一の形状及び面積を有し、前記電極の表面上において縦横に格子状に規則正しく設定されていることを特徴とする燃料電池セル。
(6)手段1において、固体酸化物形燃料電池に用いられ、前記導電層が形成される前記電極が前記空気極であることを特徴とする燃料電池セル。
(7)手段1において、前記電極の表面内にて散点状に配置された複数の前記集電体接触部位のうちの一部について、隣接する前記集電体接触部位の前記当接パッド部間を繋ぐように前記結線部が形成されていることを特徴とする燃料電池セル。