JP6159776B2 - 勾配付弾性材を用いた防振まくらぎ - Google Patents

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本発明は勾配付弾性材を用いた防振まくらぎに関し、特に漏水や湧水などの影響から湿潤な環境下にさらされ、レール電食や塩害などを受けやすい地下区間やトンネル区間の軌道に適したまくらぎを提供するものである。
道床上にまくらぎを設置し、その上にレールを敷設して構成される軌道の保守作業においては、レールの交換や通り直しを行うレール作業、道床の突固めや交換などを行う道床作業、さらにまくらぎの交換などを行うまくらぎ作業が大半を占める。
このため、特に道床作業の困難な地下区間やトンネル区間の軌道には、まくらぎをコンクリート道床に埋設して固定する直結軌道が採用されている。しかし、直結軌道はバラスト軌道などと比べて騒音や振動が大きくなる傾向にあることから、最近では騒音や振動の低減を目的とした防振まくらぎ軌道が開発、導入されている。
防振まくらぎ軌道は、例えば、図3(a),(b)に図示するようにPCまくらぎ1の周囲に防振ゴム2を配置し、その外周をFRP製の防振箱3で取り囲み、コンクリート道床4に埋め込むことにより構成され、また、図3(c)に図示するように防振箱3を省略し、PCまくらぎ1の周りを防振ゴム2で取り囲み、コンクリート道床4に直接埋め込むことにより構成されることもある。
いずれのタイプも、道床の突固めや交換などの道床作業が不要であり、また、PCまくらぎ1を取り囲む防振ゴム2が伸縮性を有することから、PCまくらぎ1のみの部分交換によりまくらぎの交換作業を比較的容易に行うことができる等のメリットがある。
ところで、地下区間やトンネル区間に敷設された軌道は、河川や濠に近接している区間が多く、一般に漏水や湧水などの影響から湿潤な環境下にさらされており、そのため、近年、レール電食や塩害などによるまくらぎの爆裂等が大きな問題になっている。
まくらぎの爆裂の主な発生過程は、防振箱内に滞水した高濃度の塩素を含む水がまくらぎのコンクリート表面から浸透することや、まくらぎの端部にPC鋼棒定着用に設けられた切欠き穴の後埋めモルタル部が浸透経路となって、まくらぎ内部のPC鋼棒定着用金具などの鋼材の不導体被膜が破壊され、酸素と触れることによって酸化し鉄材が膨張すること等が考えられている。
従来、このまくらぎの爆裂を解消するには、止水および道床更新により、例えば、図4(a),(b)に図示するようなセパレート型防振軌道に構造変更することが滞水対策として有効なことが知られている。
図示するセパレート型防振軌道は、PCまくらぎ1の両端部の一定長に防振ゴム2を配置し、その外周をFRP製の防振箱3で取り囲みコンクリート道床4に埋め込み、さらに左右防振箱3,3間のコンクリート道床4に軌道方向に連続する排水溝5を設けることにより構成されている。そして、防振箱3,3内に流入した塩素を含む水は防振箱3内に滞留することなく、排水溝5に速やかに排水されることによりPCまくらぎ1の爆裂等を未然に防止することができる。
特許第3552030号公報 特公昭57−36363号公報
しかし、セパレート型防振軌道への構造変更は、コストや速効性の面で課題があり、また塩素を含む水が防振箱3内に流入しないように構成されているわけではないので、まくらぎ自体の塩害を抑制する効果は低い。
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、本来の騒音、振動の低減効果を有することはもとより、地下区間やトンネル区間などの漏水や湧水などの影響から湿潤な環境下にあっても、レール電食や塩害を受け難く爆裂等を未然に防止できるようにした勾配付弾性材を用いた防振まくらぎを提供することを目的とするものである。
本発明は、まくらぎと、当該まくらぎの周囲を取り囲むように配置された弾性材を備え、かつ前記弾性材に取り囲まれた部分コンクリート道床に埋設して設置される防振まくらぎの発明であり、前記弾性材は、前記まくらぎの長辺方向の両側部、前記まくらぎの長辺方向の両端部および前記まくらぎの底部に前記まくらぎの四周および底部の全面を取り囲むように連続一体的に配置され、かつ前記まくらぎの長辺方向の両側部および前記まくらぎの長辺方向の両端部に配置された弾性材の上端部に前記コンクリート道床の上面より前記まくらぎの表面に沿って立上がる立上がり部が設けられ、当該立上がり部の表側に前記コンクリート道床の上面より前記まくらぎの表面側に傾斜する勾配部(以下「テーパ部」)が設けられていることを特徴とするものである。
なお、防振ゴムにはウレタンゴム、防振箱にはFRP製の箱などを用いることができる。また、防振ゴムは伸縮性を有することにより、防振箱をコンクリート道床内に残し、まくらぎのみの部分交換によりまくらぎの交換作業をきわめて効率的にかつ容易に行うことができる。
また、図1(b)に図示するように、テーパ部の上端部にまくらぎ表面との隙間を密閉するシール材が取り付けられていることにより、シール材が損傷または剥がれだした時点でシール材のみを取り換えるだけで、テーパ部が致命的な損傷を受ける前にテーパ部の補修を簡単に行うことができる。
本発明によれば、特にまくらぎの長辺方向の両側部と両端部に配置された各防振ゴムの上端部に、コンクリート道床の上面よりまくらぎの表面に沿って立上がる立上がり部が設けられ、かつ当該立上がり部の外側にコンクリート道床の上面よりまくらぎの表面側に傾斜するテーパ部が設けられていることにより、まくらぎの各側面に配置された防振ゴムの上端部から防振ゴムの内側に塩素を含む水が直接浸入するのを防止することができる。また、テーパ部を設けたことで防振ゴムの上端部に埃や塵が溜まることがないので、この埃や塵に塩素を含む水が浸透して防振ゴムの内側に浸入することもない。
これにより、まくらぎと防振ゴムとの間に高濃度の塩素を含む水が滞水してまくらぎのコンクリート表面や、まくらぎの端部にPC鋼棒定着用に設けられた切欠き穴の後埋めモルタル部からまくらぎ内部に浸透するのを防止することができるため、塩素等を含む水の浸透によるまくらぎの爆裂等を未然に防止することができる。
また、テーパ部の上端部にまくらぎ表面との隙間を密閉するシール材が取り付けられていることにより、シール材が損傷または剥がれだした時点でシール材のみを取り換えるだけで、テーパ部が致命的な損傷を受ける前にテーパ部の補修を簡単に行うことができる。
本発明の勾配付弾性材を用いた防振まくらぎの一実施形態を示し、図1(a)は軸方向の断面図、図1(b),(c)は軸直角方向の断面図である。 本発明の勾配付弾性材を用いた防振まくらぎの他の実施形態を示し、図2(a)は軸方向の断面図、図2(b),(c)は軸直角方向の断面図である。 防振まくらぎの従来例を示し、図3(a)は軸方向の断面図、図3(b),(c)は軸直角方向の断面図である。 防振まくらぎの従来例を示し、図4(a)は軸方向の断面図、図4(b)は軸直角方向の断面図である。
図1(a),(b)は、本発明の勾配付弾性材を用いた防振まくらぎの一実施形態を図示したものであり、PCまくらぎ1の長辺方向の両側部と両端部および底部にウレタンゴム等からなる防振ゴム2がPCまくらぎ1の四周と底部を取り囲むように連続一体的に配置されている。各面の防振ゴム2はPCまくらぎ1の各側面部にボルト止め若しくは接着材などによってそれぞれ固着されている。
また、PCまくらぎ1の防振ゴム2に取り囲まれた部分は、PCまくらぎ1の長辺方向の両側部と両端部および底部を取り囲むように連続一体的に形成されたFRP製の防振箱3の中に防振ゴム2と共に設置されている。
さらに、PCまくらぎ1の防振ゴム2に取り囲まれた部分は、防振ゴム2および防振箱3と共にコンクリート道床4に埋設することにより固定されている。
防振箱3の各側面の上端部はコンクリート道床4の上面とほぼ面一に埋め込まれている。また、PCまくらぎ1の長辺方向の両側部と両端部にそれぞれ設置された各防振ゴム2の上端部には、コンクリート道床4の上面よりPCまくらぎ1の表面に沿って立上がる立上がり部6が設けられ、当該立上がり部6の外側にコンクリート道床4の上面よりPCまくらぎ1側に傾斜するテーパ部6aが形成されている。
なお、図2(a),(b)に図示するように、PCまくらぎ1の両端部の一定長に防振ゴム2を配置し、その外周をFRP製の防振箱3で取り囲みコンクリート道床4に埋め込み、さらに左右防振箱3,3間のコンクリート道床4に軌道方向に連続する排水溝5を設けることにより構成された一体型防振軌道の防振まくらぎにも適用することができる。
また、図2(c)に図示するように防振箱3を省略し、PCまくらぎ1の防振ゴム2に取り囲まれた部分を直接コンクリート道床4に埋設して設置される防振まくらぎにも適用することができる。
本発明は、漏水や湧水などの影響から湿潤な環境下にさらされ、レール電食や塩害などを受けやすい地下区間やトンネル区間の軌道に適した勾配付弾性材を用いた防振まくらぎを提供する。
1 PCまくらぎ(まくらぎ)
2 防振ゴム(勾配付弾性材)
3 防振箱
4 コンクリート道床
5 排水溝
6 立上がり部
6a テーパ部(勾配部)
7 シール材

Claims (3)

  1. まくらぎと、当該まくらぎの周囲を取り囲むように配置された弾性材を備え、かつ前記弾性材に取り囲まれた部分コンクリート道床に埋設して設置される防振まくらぎにおいて、前記弾性材は、前記まくらぎの長辺方向の両側部、前記まくらぎの長辺方向の両端部および前記まくらぎの底部に前記まくらぎの四周および底部の全面を取り囲むように連続一体的に配置され、かつ前記まくらぎの長辺方向の両側部および前記まくらぎの長辺方向の両端部に配置された弾性材の上端部に前記コンクリート道床の上面より前記まくらぎの表面に沿って立上がる立上がり部が設けられ、当該立上がり部の表側に前記コンクリート道床の上面より前記まくらぎの表面側に傾斜する勾配部が設けられていることを特徴とする勾配付弾性材を用いた防振まくらぎ。
  2. 請求項1記載の勾配付弾性材を用いた防振まくらぎにおいて、まくらぎの弾性材に取り囲まれた部分は、前記まくらぎの長辺方向の両側部と両端部および底部を取り囲むように形成された防振箱の中に設置されていることを特徴とする勾配付弾性材を用いた防振まくらぎ。
  3. 請求項1または2記載の勾配付弾性材を用いた防振まくらぎにおいて、立上がり部の上端部とまくらぎ表面間の隙間を密閉するためのシール材が取り付けられていることを特徴とする勾配付弾性材を用いた防振まくらぎ。
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