JP6159540B2 - 防振性に優れるブラジャー - Google Patents

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Description

本発明は着用動作時の胸の揺れを抑えるブラジャーに関する。より詳細には、本発明は、快適性と審美性とを損なわずに着用動作時の胸の揺れ抑制効果、すなわち防振性を備えたブラジャーに関する。
ブラジャーは胸の形をきれいに整えることを主な目的の一つとするが、運動時の胸の揺れを抑えることも大きな役割の一つである。しかし、ブラジャーを着用していても、歩いたり、走ったりすると、胸が大きく揺れる場合が多い。特に胸のサイズが大きい場合には、その揺れは非常に大きくなり、不快であるばかりか胸の下垂の原因にもなる。この揺れを軽減する方法としては強い着圧のブラジャーをつける方法が効果を奏するが、この方法では着用快適性は著しく悪化する。また、胸の揺れを軽減するブラジャーとしてスポーツブラが多数、開発されている(特許文献1及び2)。しかし、スポーツブラは運動時の胸の揺れを抑えるために、胸の谷間を覆うデザインが多く、審美性に欠け、日常での使用が好まれないことが多い。
胸の谷間を大きく開け、審美性を保った状態で、日常の軽い運動時に胸の揺れを軽減し、着圧も適正であるブラジャーの開発が望まれている。
特許文献3は一般用のブラジャーで胸の揺れを軽減しようとする技術を提案する。この技術では、カップ部上部及び斜め方向に補強部分を設けている。特許文献4ではサイドクロス上に複数のテープ体が配置されている。
特許文献5は、二重編目層構造の熱成形性の合成繊維の編物地からなる表層部と熱成形性の合成繊維を熱可塑性合成樹脂で接合した熱成形性の不織布からなる内層部から形成されたカップ状成形体からなることを特徴とする、形状復元機能を有するカップ状成形ブラジャーパッドを記載する。また、特許文献6は、第1のバルキー性と第2のバルキー性とが実質的に一致するように、ブレストパッドの部分が圧縮されるようにモールド成形されているブレストパッドを記載する。
特開2011−179144号公報 特開2006−104613号公報 特開平8−100308号公報 特開2007−162146号公報 特開2000−226704号公報 特開2006−528285号公報
しかし、特許文献3に記載される補強部分だけでは特にカップサイズの大きい着用者の胸の揺れを軽減する効果は不十分である。また、引用文献4に記載されるテープ体はサイドクロスを介してバストの脇側部に密着してバストを内側に寄せる働きをするが、揺れを抑制する働きに劣る。また特許文献5に記載されるブラジャーパッド及び特許文献6に記載されるブレストパッドは、バストの形状を保持することを目的とする一方、運動時の揺れ抑制効果は乏しい。このように、運動時の揺れ軽減効果と審美性及び快適性とを満足するブラジャーは現状では見出されていない。
本発明が解決しようとする課題は、運動時の胸の揺れ軽減効果、すなわち防振性に優れるブラジャーを提供することであり、好ましくは、防振性に加え、審美性及び快適性にも優れるブラジャーを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究し、実験を重ねた結果、ブラジャーに特定の防振部を設けることで、大きいカップサイズの場合でも、胸の谷間を覆うことなく胸の揺れを大きく改善でき、着圧が過度に高くならず、快適なブラジャーを形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、特定の補強をカップ部のパッドに対して行うことにより、胸の揺れを改善できることを見出した。すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 一対のカップ部、該カップ部の前中心側を互いに連結する連結部、ウイング部、及び端部が該一対のカップ部と該ウイング部とに連結された肩紐部を備えたブラジャーにおいて、
該カップ部が少なくともパッドを有し、
該パッドが、パッド上縁、若しくはパッド下縁、又はこれらの両者に沿って延びるパッド高応力部であって、パッドのバストトップ部の伸張応力S1に対するパッド高応力部の伸張応力S2の比S2/S1が2/1〜80/1であるパッド高応力部を有する、ブラジャー。
[2] 前記パッド高応力部において、前記パッドのバストトップ部の圧縮硬さC1に対する前記パッド高応力部の圧縮硬さC2の比C2/C1が2/1〜200/1である、上記[1]に記載のブラジャー。
[3] 前記パッド高応力部において、前記パッドのバストトップ部の圧縮硬さC1に対する前記パッド高応力部の圧縮硬さC2の比C2/C1が2/1〜80/1である、上記[1]に記載のブラジャー。
[4] 前記パッド高応力部が、パッド上縁に沿って最大幅5〜30mmで形成されており、若しくはパッド下縁に沿って最大幅5〜30mmで形成されており、又はこれらの両者であり、前記パッド高応力部の伸張応力及び圧縮硬さが前記パッド高応力部全体に亘って実質的に均一である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のブラジャー。
[5] 前記パッドの端部とバストトップ部とを結ぶ線分に沿ってパッドの圧縮硬さを測定したときに、少なくとも1つの線分上に、パッド端部からバストトップに向かって、圧縮硬さC2を有する高圧縮硬さ領域、該圧縮硬さC2から、圧縮硬さC2よりも小さい圧縮硬さC1まで圧縮硬さが連続的に変化する長さ5〜30mmの圧縮硬さ連続変化領域、及び圧縮硬さC1を有する低圧縮硬さ領域が存在する、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のブラジャー。
[6] 圧縮モードによる動的粘弾性測定から得られるパッドのバストトップ部のガラス転移点が−100〜10℃である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のブラジャー。
[7] パッド下縁の形状がカップ下縁の形状と略同一であり、パッド下縁の全長が実質的にカップ下縁に接合されていることを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれかに記載のブラジャー。
[8] 前記パッドの一部又は全部が発泡樹脂成形体である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載のブラジャー。
[9] 前記パッドがモールド成形物である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載のブラジャー。
[10] 前記パッドは、全体が同一の材料で形成されており、パッド高応力部がパッド高応力部以外の部分よりも小さい厚み及び大きい密度を有するようにモールド成形されている、上記[9]に記載のブラジャー。
[11] 前記ブラジャーが、該カップ部の一部から該ウイング部の一部に亘る領域において本体上に配置されたサブウイング部であって、該カップ部のバストトップから該ウイング部の背中心まで延ばした線分が最長となるようにブラジャーを配置し、かつ該線分と同一方向の法線を有する平面を規定した場合に、該線分上の該バストトップから該背中心に向かって5〜25%の位置の該平面上及び55〜90%の位置の該平面上に、該サブウイング部と該本体との接合部が存在し、かつ該サブウイング部は該本体と接合されていない領域を有するサブウイング部、及び平均の断面積が25〜120mm2である肩紐部、からなる群から選択される1つ以上の防振部を有する上記[1]〜[10]のいずれかに記載のブラジャー。
[12] 肩紐部のカップ部前中心側端点の間の距離が最大となるようにブラジャーを配置したときに、肩紐部のカップ部前中心側端点と該連結部の前中心下端点とを結んで形成される三角形の面積に対する、ブラジャー構成素材で覆われない部分の面積の割合が60%以上である、上記[1]〜[11]のいずれかに記載のブラジャー。
[13] トップバスト寸法とアンダーバスト寸法との差が17.5cm以上である、上記[1]〜[12]のいずれかに記載のブラジャー。
[14] 最大着圧が50HPa以下である、上記[1]〜[13]のいずれかに記載のブラジャー。
本発明のブラジャーは、パッドに防振部を設けることによって良好な揺れ抑制効果を発揮できる。本発明は、一般のブラジャーはもちろん、スポーツブラにも好適に適用できる。また、本発明においては、大きいカップサイズの場合の揺れ抑制効果が特に大きい。
本発明のブラジャーの構造の一例を示す模式図である。 本発明のブラジャーの構造の一例を示す模式図である。 本発明のブラジャーの前面側の構造の一例を示す模式図である。 本発明のブラジャーの背面側の構造の一例を示す模式図である。 本発明のブラジャーの前面における開口形状について説明する模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の一態様は、一対のカップ部、該カップ部の前中心側を互いに連結する連結部、ウイング部、及び端部が該一対のカップ部と該ウイング部とに連結された肩紐部を備えたブラジャーにおいて、
該カップ部が少なくともパッドを有し、
該パッドが、パッド上縁、若しくはパッド下縁、又はこれらの両者に沿って延びるパッド高応力部を有し、
パッドのバストトップ部の伸張応力S1に対するパッド高応力部の伸張応力S2の比S2/S1が2/1〜80/1である、ブラジャーを提供する。
図1〜図4を参照して、本発明のブラジャーの構造例を説明する。本発明に係るブラジャー1は、一対のカップ部101(図中では、一対のうち一方を点線で囲まれた領域として示している)と、該カップ部の前中心側を互いに連結する連結部102と、ウイング部103(これはカップ部101の脇側(すなわち着用者の脇側)に配置されている)を備える。連結部102は、例えば下辺テープとしてカップ部101の下縁に沿って延びてブラジャー下端を形成していてもよい。ウイング部103は着用者の背側に向かって延びる。ウイング部103は、基部103aと、下辺部103b(例えばテープ)とを有することができる。各部材は布帛で構成されている。ブラジャーは、端部がウイング部103と一対のカップ部101とに連結された肩紐部109を更に備える。カップ部101はパッドを有する。パッドは、カップ部を構成する部材としての布帛に積層されているか、又はカップ部を構成する部材自体であることができる。パッドは、カップ部101の少なくとも一部の領域に形成されていればよく、カップ部101全体に亘って存在してもよいし、カップ部101の一部(例えばカップ部101の下部部分(この場合カップのトップ部を含むことが好ましい))のみに存在してもよいし、カップ部101から他の部分(例えばウイング部103)まで延びて存在してもよい。また、カップ部がパッド以外の部材からも構成される場合には、パッドがパッド以外の部材と脱着可能である形態でもよいし、接合された形態でもよい。また一体として形成された形態でもよい。好ましい態様において、パッドは、カップ部101と同形状に形成される。図1ではこの態様を示している。パッド下縁の形状が、カップ下縁の形状と略同一であり、パッド下縁の全長が実質的にカップ下縁に接合されていることが、効果的に防振性能を改善し得るとともに、違和感を生じることが少なく着用快適性に優れる観点から好ましい。
パッドは、パッドの上縁に沿って延びる上縁高応力部(例えば図1における上縁高応力部104)、若しくはパッドの下縁に沿って延びる下縁高応力部(例えば図1における下縁高応力部105)、又はこれらの両者を、防振部として有する。
上縁高応力部はパッドの上縁の少なくとも一部に存在すればよく、下縁高応力部はパッドの下縁の少なくとも一部に存在すればよい。
パッドにおいて、バストトップ部Qの伸張応力S1に対するパッド高応力部(すなわち上縁高応力部104及び/又は下縁高応力部105)の伸張応力の比S2/S1は、2/1〜80/1である。本開示で、バストトップ部とは、カップのトップ部(すなわち着用者のバストのトップ部に対応する位置)を意味する。本開示において、特記がない場合、伸張応力とは、JIS L1096.8.12.1 A法のカットストリップ法引張り試験に準拠して布帛のタテ方向10%伸長時応力(N/2.5cm幅、以下単にNと記す)及びヨコ方向10%伸長時応力(N)を測定し、これらを平均した値(以下、タテヨコ平均伸張応力、又は単に伸張応力ともいう)をいう。なお本開示で、布帛のタテ方向とは、任意に設定した方向であり、ヨコ方向とは、これと垂直の方向である。
パッドがカップ部の構成部材と積層されている場合(例えばパッドとしてのウレタンパッドと、布帛との2層からなるカップ部が形成される場合)には、パッド単独で伸張応力を測定する。
上記比S2/S1が2/1以上であれば、高応力部による胸の揺れの抑制効果が大きい。一方上記比S2/S1が80/1以下であれば、該高応力部における伸張応力が高くなりすぎず、硬くフィットしにくいブラジャーとなることを回避できる。上記比S2/S1は、4/1〜50/1であることが好ましい。
なお特記がない限り、パッド高応力部が有する各種物性(例えば上記の伸長応力)は、高応力部内で部位によって異なっていてもよく、各部位の物性が本開示で規定される範囲であればよいことが意図される。
上縁高応力部は胸のX、Y、Z方向の揺れのうち、特にX及びYの方向の防振性に大きく寄与する。歩く、走る等の動作時には人体の上下動に対し、幾分かの遅れをもって、カップに納まっている胸が上下する。この場合の上方への胸の揺れは、上縁高応力部を設けることにより、効果的に抑制できる。さらに歩く、走る等の動作時には人体の上下動に加えて、体を回転させる左右動も同時に発生する。更に、上縁高応力部をパッド上縁に沿って延びるように設けると、通常、上縁高応力部を水平方向に対してやや斜めに取り付けることができる。これにより、左右動による胸の内側への揺れ、すなわちX方向の揺れを抑制することが可能となる。
下縁高応力部は胸のX、Y、Z方向の揺れのうち、特にY方向の防振性に大きく寄与する。歩く、走る等の動作時には人体の上下動に対し、幾分かの遅れをもって、カップに納まっている胸が上下する。この場合の下方にたたきつけるような胸の揺れが、下縁高応力部を設けることにより、効果的に抑制できる。
パッド高応力部の伸張応力は、5〜500Nであることが好ましく、より好ましくは10〜400N、更に好ましくは20〜350N、特に好ましくは30〜200Nである。上記伸張応力が5N以上である場合、補強効果が大きく、500N以下である場合、着用時の不快感を良好に回避できる。また、パッド中央部106(本開示で、パッド中央部とは、バストトップ部Qを含みこれと単一の伸長応力を有している領域を意味する)の伸張応力(すなわちパッドのバストトップ部の伸長応力)は0.5〜50Nであることが好ましく、より好ましくは1〜20N、更に好ましくは1.5〜15N、特に好ましくは2〜10Nである。上記伸張応力が0.5N以上である場合、着用時及び洗濯時に破れ等が起こりにくく、50N以下である場合、着用時の不快感を良好に回避できる。
パッド高応力部において、パッドのバストトップ部の圧縮硬さC1に対するパッド高応力部の圧縮硬さC2の比C2/C1は、好ましくは2/1〜200/1であり、より好ましくは2/1〜80/1であり、更に好ましくは10/1〜60/1である。上記比が2/1以上である場合、高応力部による胸の揺れの抑制効果が大きい。一方上記比が200/1以下である場合、高応力部における圧縮硬さが高くなりすぎず、硬くフィットしにくいブラジャーとなることを回避できる。本開示で、圧縮硬さとは、圧縮試験機(例えばハンディ圧縮試験機KES−G5(カトーテック社製))を用い、圧縮速度0.02mm/sec、圧縮子の面積1cm2の条件で荷重0.5gf/cm2での厚みT0(mm)と荷重5gf/cm2での厚みTM(mm)を測定し、圧縮硬さ=TM/(T0−TM)に従って算出される値である。
パッド高応力部は、パッド上縁に沿って最大幅5〜30mmで形成されており、若しくはパッド下縁に沿って最大幅5〜30mmで形成されており、又はこれらの両者であることが好ましい。上記最大幅は8〜20mmであることがさらに好ましい。また、上記幅は任意にデザインできる。例えば、上縁高応力部の幅は、カップ部の着用者身体の前中心側で細く、脇側で太くなるようにデザインできる。上記の幅とは、パッド端部と垂直の方向における高応力部の長さを意味し、最大幅とは、パッド内で最大となる幅を意味する。また、パッド高応力部の伸張応力及び圧縮硬さは、パッド高応力部全体に亘って実質的に均一であることが好ましい。ここで実質的に均一とは、パッド高応力部の伸長応力及び圧縮硬さをパッドの上縁又は下縁に沿って5点で測定したときの標準偏差を平均値で割った変動値が10%以下であることを意味する。
好ましい態様においては、パッドの端部とバストトップ部とを結ぶ線分に沿ってパッドの圧縮硬さを測定したときに、少なくとも1つの線分上に、パッド端部からバストトップに向かって、実質的に一定の圧縮硬さC2を有する高圧縮硬さ領域、該圧縮硬さC2から、圧縮硬さC2よりも小さい圧縮硬さC1まで圧縮硬さが連続的に変化する長さ5〜30mmの圧縮硬さ連続変化領域、及び圧縮硬さC1を有する低圧縮硬さ領域が存在する。上記線分とは、パッド表面(例えば着用者側と反対側の面)上でのパッドの端部とバストトップ部とを結ぶ線分を意味する。上記の要件を満たす線分はパッド内に少なくとも1つ存在すればよい。図1を参照し、例えばそのような線分が図1中の線分L0であり、パッドが下縁高応力部105を有する場合、パッド下端部からバストトップ部Qに向かって高圧縮硬さ領域、圧縮硬さ連続変化領域及び低圧縮硬さ領域が連続して存在できる。この場合、パッド高応力部と他の部分との境界は、圧縮硬さ連続変化領域と高圧縮硬さ領域との境界であってもよいし、圧縮硬さ連続変化領域内に存在してもよい。上記のような領域は、例えば、後述するモールド成形における金型間隔の調整等によって形成できる。圧縮硬さ連続変化領域における圧縮硬さの変化の態様としては、線形的な変化又は他の種々のプロファイルによる変化が可能であり、例えばモールド成形における金型間隔の設定等によって調整できる。
好ましい態様においては、圧縮モードによる動的粘弾性測定から得られるパッドのバストトップ部のガラス転移点が−100〜10℃である。上記ガラス転移点は、加工時の粘着性を適度にし、加工性を維持する観点から、好ましくは−100℃以上、より好ましくは−80℃以上、更に好ましくは−70℃以上であり、着用快適性の観点から、好ましくは0℃以下、より好ましくは−10℃以下、更に好ましくは−20℃以下である。ガラス転移点を上記範囲内とする方法としては、バストトップ部の構成部材としてガラス転移点が上記範囲内(特に好ましくは−60℃近傍)である発泡ウレタンを用いる方法を例示できる。ガラス転移点は、少なくともバストトップ部にて上記範囲内であることが好ましいことが意図されるが、特に、パッド全体が単一の材料で形成され、該パッドのガラス転移点が上記範囲内であることが好ましい。
パッドは、1層構造でも2層以上の構造でもよく、例えば発泡樹脂成形体、立体編物等であることができる。パッド内の最大厚みは、好ましくは2〜15mm、より好ましくは3〜12mm、更に好ましくは3〜10mmであることができる。発泡樹脂成形体は、製造が容易である点、柔軟で軽量である点等で好ましい。また立体織物は、通気性が良好である点で好ましい。好ましい態様において、パッドの一部又は全部が発泡樹脂成形体である。発泡樹脂成形体としては、発泡ウレタン、発泡ポリスチレン等が挙げられる。
パッドは、パッド全体が同一の材料で形成されていてもよいし、パッドの部位ごとに変えた複数種の材料で形成されていてもよい。製造容易性及び製造効率の観点から、パッド全体が同一の材料で形成されていることが好ましい。
好ましい態様においては、パッドがモールド成形によって賦形されている。モールド成形は製造容易性及び製造効率の点で好ましい。特に、モールド成形時の金型間隔を、パッド高応力部に対応する部分と他の部分とで変えることによって、パッド高応力部を形成することは製造容易性及び製造効率の観点から特に好ましい。例えば、カップ状のモールド金型で設定される、パッド高応力部に相当する部分の間隙を、パッドのその他の部分に相当する部分の間隙より狭くなるように設定することによって、パッド高応力部を形成できる。好ましい態様においては、パッド全体が同一の材料で形成されており、且つパッド高応力部がパッド高応力部以外の部分よりも小さい厚み及び大きい密度を有するようにモールド成形されている。
図2及び図3を特に参照し、特定の態様において、ブラジャーは、防振部として、サブウイング部を有する。特定の態様において、サブウイング部は、各々のカップ部のバストトップQと、対応するウイング部の背中心Cとを結ぶ線分Lが最長となるようにブラジャーを配置し、かつ該線分と同一方向の法線を有する平面Sを規定した場合に、該線分L上の該バストトップQから該背中心Cに向かって5〜25%の位置の該平面上及び50〜90%の位置の該平面上に、該サブウイング部と該本体との接合部が存在し、かつ該サブウイング部は該本体と接合されていない領域を有する。本開示で、背中心とは、着用者の背中心に対応する線上の、ウイング部布帛上下方向中央の点を意味する。例えばウイング部がホック部を有する場合には、ホック部を留めた状態で背中心が規定される。本開示で、「背中心」を用いて画定される形状又は寸法に関する規定について、複数のアンダーバストサイズに対応する複数のホック部が存在する場合には、いずれか1つのホック部を留めた状態で規定される背中心に関して上記規定が満たされればよいことに留意すべきである。
サブウイング部108bは、カップ部101の一部からウイング部103の一部に亘る領域において本体上に配置されている。サブウイング部は、典型的には、カップ部101の脇縁からウイング部103に亘って配置された1枚又は複数枚の布帛で構成できる。サブウイング部はカップ部及びウイング部において本体部108aと一体化されて構成されるのではなく、本体部とは別個の布帛で、該本体部に重ねて形成されている。
サブウイング部と本体とは、典型的には、以下の2つの接合部を有する。
第1の接合部は、前述のように規定される平面Sに関し、線分L上のバストトップQから背中心Cに向かって、5〜25%、好ましくは8〜25%、より好ましくは10〜23%の位置の該平面上に存在する。第1の接合部の位置がバストトップから背中心に向かって5%以上である場合はバストトップに引張り力が大きくかかりすぎず有利である。一方、該接合部の位置がバストトップから背中心に向かって25%以下である場合はバストを身体側に引き寄せる力が働きやすく有利である。
第2の接合部は、前述の平面Sに関し、線分L上のバストトップQから背中心Cに向かって、50〜90%、好ましくは50〜85%、より好ましくは55〜80%の位置の該平面上に存在する。第2の接合部の位置がバストトップから背中心に向かって50%以上である場合はバストトップに引張り力がかかりやすく有利である。一方、該接合部の位置がバストトップから背中心に向かって90%以下である場合はバストを身体側に引き寄せる力が働きやすく有利である。
サブウイング部と本体との接合部は、前述のように規定される平面Sに関し、線分L上のバストトップQから背中心Cに向かって5〜25%の位置の該平面上及び50〜90%の位置の該平面上に存在すればよく、上記平面上以外の部位に更に存在してもよい。しかし、サブウイング部による防振効果をより良好に得る観点から、上記平面Sに関し、上記線分L上のバストトップから背中心に向かって、例えば25%超から50%未満の位置、又は25〜55%の位置、又は23〜60%の位置の該平面上に接合部が存在しないことがより好ましい。
カップ部とウイング部との境界は、通常、線分L上のバストトップから背中心に向かって25〜35%の位置の該平面S上にある。従って、上記の5〜25%の位置及び50〜90%の位置の該平面上に接合部が存在する場合、カップ部及びウイング部のそれぞれの、防振に好ましい位置において、サブウイング部が本体に接合できるため、有利である。
サブウイング部と本体との接合部は、線状(典型的には所定の幅を有する帯状である)、点状等に形成できる。例えば、略上下方向に線状に延びる接合部を左右のカップ部及び左右のウイング部に形成できる。好ましい態様において、サブウイング部は、カップ部の一部の領域及びウイング部の一部の領域の両者で本体部と接合されているとともに、本体部と接合されていない領域を有する。好ましい態様において、サブウイング部108bは、カップ部の一部である領域107aとウイング部の一部である領域107bとに亘って連続する領域の本体部108aに重ねられている。サブウイング部108bにより、領域107a及び領域107bからなる脇補強部107を形成できる。すなわち、脇補強部107は、本体部108a及びサブウイング部108bからなる接合布帛108によって構成されている。
好ましい態様において、サブウイング部は、カップ部側とウイング部側とのサブウイング部両端を含む領域で本体部と接合されている。
好ましい態様において、サブウイング部は、本体部との間に空間を有するように接合されている。この態様において、サブウイング部は、少なくとも、本体部のカップ部の一部とウイング部の少なくとも一部とからなる領域を覆っていればよい。またサブウイング部は、該サブウイング部の周縁の少なくとも一部(例えばカップ部側及びウイング部側の両端)を含む領域で本体部と接合されていてもよいし、サブウイング部が周縁以外の部分のみで本体部と接合されていてもよい。サブウイング部は、サブウイング部と本体部との間に空間が存在するように、本体部と接合されている。ここで空間とは、接合部で挟まれた、又は接合部で囲まれた、サブウイング部と本体部とが接合されていない領域である。このような空間を形成するために、接合部は、2つ以上の点、2つ以上の線等の形状で形成することが好ましい。例えば、2つ以上の点の例は、カップ部の領域内の1つ以上の点と、ウイング部内の1つ以上の点との組合せである。また、例えば、2つ以上の線の例は、図2及び3に示すカップ部側接合部107aS及びウイング部側接合部107bSの組合せである。例えば、2つの点状の接合部が形成される場合、空間とは、サブウイング部の該2点を結ぶ領域と、本体部の該2点を結ぶ領域との間に広がる領域を意味する。なお、該空間において、サブウイング部と本体部とは接合されていない状態であればよく、これらが互いに接触していてもよい。上記のような構成によれば、サブウイング部の布帛と本体部の布帛との引張応力差により、着用時に接合部間に引張力を生じさせることができるため、防振効果が発揮される。
図2を参照し、特定の態様において、サブウイング部108bは、少なくともカップ部側とウイング部側との両端で、すなわちカップ部側とウイング部側との両端を含む領域で、本体部108aと接合されているとともに、本体部108aとは接合されていない領域を有する。好ましい態様では、図2に示すように、カップ部側接合部107aS及びウイング部側接合部107bSのみで、本体部108aとサブウイング部108bとが接合されており、サブウイング部108bはこれら以外の領域では本体部108aと接合されていない。サブウイング部の存在により、着用時にサブウイング部のカップ側端部からウイング側に向けて引っ張る力が働き、これにより、防振効果が発揮される。
サブウイング部の着用時に引張力を受ける領域の面積のうち、本体部と接合されていない領域の面積は、良好な防振効果を得る観点から、好ましくは30%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは80%以上であり、サブウイング部と本体部とがしっかりと接合されているという観点から、好ましくは99.5%以下、より好ましくは99%以下、更に好ましくは98%以下である。なお上記の着用時に引張力を受ける領域の面積とは、L1に垂直でかつ接合部を通る面とサブウイング部表面との交線に関し、最も前中心に近い交線と最も背中心に近い交線とで挟まれた領域に存在するサブウイング布帛の面積である。
図3を参照し、ブラジャー最下端に接するように引いた直線L1から、カップ上縁とカップ脇縁との境界点Paまでの最短距離を規定する線分L2を仮想する。線分L2を通りかつ線分L2と垂直をなす平面と、本体部の布帛表面(着用者からみて外側の表面)との交線のうち、領域107a内長さが最大となる交線を選び、該交線とカップ脇縁との交点をQ1とし、該交線とカップ側接合部107aSにおける脇補強部端部側の辺縁との交点をQ2とし、該交線上のQ1とQ2との間の線分を線分Laとする。該交線とウイング側接合部107bSの脇補強部端部側の辺縁との交点をQ3とする。該交線上のQ2とQ3との間の線分を線分Lbとし、線分Lbの長さを領域107bの長さWbとする。
ウイング部の長さとは、点Q1から、ウイング部の背中心(図4中の点C)までの布帛上での最短長さを意味する。
上記線分L2の長さは、5cm〜15cmが適当である。
サブウイング部長さm1は本体部との接合部の点Q2と点Q3とを結ぶ生地の中での最短長さとする。また、本体部における線分La及び線分Lbの合計長さを本体部の接合部間長さm2とする。通常、ブラジャーは15%〜25%程度伸張させた状態で着用する。サブウイング部長さm1、本体部における接合部間長さm2、並びに、サブウイング部及び本体部の生地の応力は、所望の伸び率で所望の防振効果を実現するように設計することが好ましい。
ここで着用時の本体伸び率、すなわち{(アンダーバストサイズ)/(ブラジャーの最下部の周長)×100}−100(%)をE2とし、一方、サブウイング部が設定の応力を与えるためのサブウイング部伸び率をE1とすると、下記式:
(1+E2/100)×m2=(1+E1/100)×m1
の関係となり、m1は、
m1={(1+E2/100)×m2}/(1+E1/100)
で表される。
具体的な態様において、着用時の本体部の生地の伸張応力が2〜4Nになるように着用時の本体伸び率を計算し、ブラジャーを設計するのが好ましい。15〜25%の範囲のいずれかの伸張率での伸張時に2〜4Nの伸張応力を与える布帛を用いるのが好ましい。着用時のサブウイング部の上記伸張応力は本体部の応力より大きく設定するのが好ましく、中でも、15〜25%の範囲のいずれかの伸張率での伸張時に3〜10Nを有することがより好ましい。上記サブウイング部の上記伸張応力が、3N以上であれば、所望の応力が良好に得られるため防振効果が良好であり、一方10N以下であればサブウイング部がきつすぎず、着用時に不快にならない。上記の伸張応力と伸び率との関係は、JIS L1096.8.12.1 A法のカットストリップ法に準拠し、22.1Nまでの伸びを計測し、目的の設定伸張応力に対応する伸びを求めることで設定できる。上記の伸張応力及び伸び率は、布帛のタテ方向とヨコ方向との平均である。タテ方向は任意に設定し、ヨコ方向は該タテ方向と垂直の方向とする。
サブウイング部の布帛は、必ずしも本体部の布帛より伸びにくい必要はなく、サブウイング部の伸びやすさに応じてm1とm2との長さを上述の式により調整することにより、ブラジャーの肌へのフィット効果を高め、かつ、着用時にサブウイング部のカップ側接合部に引張り力がかかり、防振効果を発揮させることができる。なお、所望の伸長応力を良好に発揮する観点から、m1及びm2の長さは、それぞれ、上記式で定められる設計の値から、±10%、又は±8%、又は±5%を超えて外れて外れないようにすることが好ましい。
サブウイング部の高さはサブウイング部のL1と垂直な線分(図示せず)の長さで表され、高さが大きいほど防振効果は大きい。従ってカップ部側の接合部はカップの上端と下端とに亘って延びていることが好ましく、ウイング側の接合部はウイングの上端と下端とに亘って延びていることが好ましい。さらに接合部以外の部分では、サブウイング部の高さが本体部の高さと同等以上であることが好ましい。
サブウイング部は胸のX、Y、Z方向の揺れのうち、特にX及びZの方向の防振性に大きく寄与する。すなわちサブウイング部は、カップと胸との密着性を高めてこれらを一体化させる効果に優れ、動作時の胸のはみ出しを防ぐ効果がある。カップと胸との密着性を高めてこれらを一体化させる効果は特にZ方向の防振性により有効に発揮され、胸のはみ出しを防ぐ効果は特に引っ張り力のかかっているX方向の防振性により有効に発揮される。
尚、ここでの伸びは下辺テープ等を含めた構成体としての伸びであり、水平方向、すなわちL1の方向に各部を引っ張った時の伸びをいう。伸びはJIS L1096.8.12.1 A法のカットストリップ法引張り試験に準拠して測定する。
サブウイング部は、綿織物、ポリエステル織編物、ポリアミド素材の織編物等の、本体部の布帛よりも伸びの小さい布帛、又はパワーネット組織の編地、ツーウエイ組織の編地等の、スパンデックス繊維を含み本体部の布帛よりも伸びの大きい布帛によって構成することができる。本体部布帛の表側とサブウイング布帛裏側との間の摩擦力は防振効果に影響する可能性がある。従ってこの摩擦力は、例えばカトーテック社製のKES−SE摩擦試験機又は同等の機器で両者間の摩擦力を評価した場合に0.10〜0.20であることが好ましく、0.12〜0.18であることがより好ましい。摩擦力が0.10以上であればサブウイング布帛が本体布帛を押し付ける効果を良好に発揮しやすく、0.20以下であれば摩擦が大きすぎない点でサブウイング布帛が本体布帛を押し付ける効果を発揮しやすい。上記摩擦力は、本体部の布帛とサブウイング部の布帛との組合せによって調整できる。
サブウイング部は、縫合、溶着又はその他の方法で本体部と接合できる。例えば、サブウイング部の本体部との接合部が、該サブウイング部のカップ部側とウイング部側との両端である場合、カップ部側及びウイング部側の両端で本体部用の布帛とサブウイング部用の布帛とを重ね、縫合、溶着又はその他の方法で固定することによりサブウイング部を形成できる。カップ部が2層以上の場合にはそのうちの1層と接合してもよいし、全層と接合してもよい。カップ本体部の表面の生地の伸張応力が小さい場合は表面の生地だけに接合しても生地が伸ばされてカップを引っ張る効果が小さいため、表面の生地だけが伸ばされないようカップ部本体に接合、縫合等することが好ましい。
防振部の別の例は肩紐部109である。肩紐部を防振部として形成する特定の態様において、肩紐部の平均断面積は、25〜120mm2である。この場合、防振性を良好に達成できる。該平均断面積は、より好ましくは30〜120mm2、更に好ましくは35〜100mm2である。断面積は肩紐の幅(mm)×肩紐の厚み(mm)を意味する。平均断面積は、肩紐部の両端部及びその間を10等分した各部で測定された断面積の数平均値である。平均断面積は、具体的には以下のように算出できる。
図3及び図4を参照し、肩紐部の平均断面積は、肩紐部のカップ部側(すなわち前側)の端部(すなわち付け根部)の幅W1×厚み(図示せず)で算出される断面積、ウイング部側(すなわち後側)の端部(すなわち付け根部)の幅W2×厚み(図示せず)で算出される断面積、及び、カップ部側の端部とウイング部側の端部との間を肩紐部の長さ方向に10等分する断面(すなわち9つの断面)について、各々の幅×厚み(例えば図3中の幅W3×厚み)で算出される断面積、の数平均値である。なお、幅W1及び幅W2は、それぞれ、肩紐部とカップ部及びウイング部のそれぞれとの脇側の連結点Pから、肩紐部の中心側までの最短距離を意味する。なお、肩紐の長さを調節するアジャスターを備える場合には、アジャスターの長さを最大にして計測する。
胸の重さは肩紐部分に大きくかかり、特にカップサイズの大きい場合にはその力は非常に大きくなる。そのため、スポーツブラ及びカップサイズの大きいブラジャーの場合には肩紐部の幅を大きくする工夫がされている。しかし、肩紐部の幅が広い場合には、セクシーさが失われ、審美性に劣る。肩紐部の幅が狭い場合であっても、肩紐部の断面積を大きくすることで、振動を吸収し、カップ部を安定して支えることができる。肩紐部の平均断面積が30mm2より小さい場合には振動を吸収する効果が小さい傾向がある。肩紐部の平均断面積が120mm2より大きい場合には振動は吸収するが、幅を大きくした場合には審美性が損なわれ、厚みを大きくした場合にはごわつき等の肌触り及びアウターへの響きが問題になる傾向がある。
肩紐部の背側連結中心は、ウイング部の背中心からカップ部側に向かってウイング部の長さの好ましくは25〜60%、より好ましくは30〜50%離れた位置に存在する。肩紐部の背側連結中心の、ウイング部の背中心からのずれが25%以上である場合、防振性に優れる利点があり、60%以下である場合、肩紐部がずり落ち難い利点がある。なおウイング部の長さは前述のように規定される。また肩紐部の背側連結中心とは、図4中、幅W2をなす線分の中点からウイング部の長さをなす線分に下ろした垂線と、該ウイング部の長さをなす線分との交点を意味する。
肩紐部のパワーは、長さ方向に0.5N/mm2の加重時の伸びで計測され、30〜80%であることが好ましく、40〜70%であることがさらに好ましい。伸びはJIS L1096.8.12.1 A法のカットストリップ法引張り試験に準拠して測定できるが、肩紐部全体をつかみ間隔とし、測定の荷重は平均断面積に0.5Nを乗じた荷重とする。肩紐部のパワーが30%以上であれば硬くなりすぎず、振動を良好に吸収できる。肩紐部のパワーが80%以下であれば伸びが大きくなりすぎず、振動を良好に吸収できる。
肩紐部109は、一部に、他の部分よりも小さい伸張応力を有する低応力部を有することが好ましい。このような低応力部を設けることにより着圧の集中を防ぎ、快適性を高めることができる。例えば、図3を参照し、肩部109aを含む領域に、他の部分よりも小さい伸張応力を有する低応力部109bを有することが望ましい。
肩紐部は胸のX、Y、Z方向の揺れのうち、特にY方向の防振性に大きく寄与する。歩く、走る等の動作時には人体の上下動が起こり、幾分かの遅れをもって、カップに納まっている胸の上下動が起こるが、一定以上の断面積をもつ肩紐部でカップを上から支えることにより、胸の上下動を押えることができる。さらに肩紐部を中央近くではなく脇側近くに取り付けることにより、胸のX、Y、Z方向の揺れのうち、X方向の防振性にも大きく寄与する。肩紐部を脇側近くに取り付けることにより、カップを斜め上側に引っ張る力が働くため、歩く、走る等の動作時の人体の回転の動きを効果的に抑制できる。肩紐部の取り付け位置は、前側はカップの脇側端部から概ねX方向に3cm以内の位置、後側は背中心と脇中心(すなわち前中心と背中心との中間)との中点から脇側に5cm以内の位置が好ましい。さらに肩紐部は体の後面側に向かって前面のカップを引っ張っているため、Z方向の防振性にも寄与する。
本発明のブラジャーは、特定のパッドを有するが、パッドと、他の防振部との組合せにより、特段の防振効果を発現できる。好ましい態様において、パッドと、サブウイング部及び/又は肩紐部とを組み合せる。特にそれぞれのX、Y又はZの方向への防振効果を組み合わせることにより、より一層防振性を高めることができる。パッドとサブウイング部との組合せは、X、Y及びZの各方向の揺れを軽減かつ分散することができ、非常に好ましい。またパッドと肩紐部との組合せは、特にY方向の揺れを軽減かつ過度な着圧が肩部に発生することを抑制できる観点から好ましい。
なお、カップ部のバストのトップ部付近には高応力部が存在しないことが好ましい。この場合、例えば特許文献3に記載されているようなカップ上部から下部に伸びる補強部分を有する場合と比べて、カップによる胸の保形性をより良好に実現できる。
本発明のブラジャーは防振性に極めて優れる。揺れの程度を客観的に評価するために、以下の方法を用いることができる。
人体モデルを用いた振動試験により防振性を評価できる。典型的な手順は以下の通りである。人体胸部モデルは (有)アットプランニング社製 、BUSTY AICHAN若しくは同等の物を用いる。BUSTY AICHANを用いる場合は男性Mサイズの胴部マネキンの胸部に胸上部を2枚のプラスチック製約35cm長さの定規で挟み、それを4個の万力で均一な間隔で挟み、マネキンに適宜穴を開けて針金等で固定する。更に、ひも等でカップ以外の部分をしっかり固定する。胸はシリコン製でシリコン部におけるトップバスト(バストのふくらみが始まる部分から他方のバストのふくらみが始まる部分までの長さ)44cm、アンダーバスト24cm、硬さは硬度計を用いてセロハン(登録商標)テープを貼付して計測した場合に0.5〜0.8であるもので、人体に取り付けた場合にはトップバスト104cm、アンダーバスト83cmとなるものを用いる。人体モデルを20cmの振幅で垂直方向に90rpmの速さで上下動する装置に取り付ける。装置の例としてはデマッチャー装置、カトーテック社製 脚部伸縮装置等が挙げられる。人体モデルが装置の内部に納まらない場合は滑車等を利用して20cmの振幅を確保する。バスト部に適宜ポイントを打って、ポイントの動きを動作解析することで揺れを計測する。
ブラジャーを着けない状態で20cmの振幅で垂直方向に90rpmの速さで上下動させた場合のバスト部の揺れ値の最大値は34.1cmとなる。この条件でブラジャーを装着したときに、揺れ値が22cm〜25cmになることが、優れた防振性の観点から好ましく、さらに好ましくは22cm〜24cmである。
なお防振性は、以下の方法でも評価できる。身長160cm±8cmで(トップバスト寸法−アンダーバスト寸法)の値が17.5cm以上である3名の被験者にブラジャーを着用させ、トレッドミルで速度6km/h、1分間に150歩のペースで、着地時に片足が地面から離れているように小走りさせる。この際、鎖骨部及びバストトップ部に直径1.8cmの反射球を取り付けておき、反射球を2台の高速カメラで20秒間撮影する。鎖骨部の揺れが5〜6cmとなるように小走りしたときの胸の揺れの指標として、(バストトップの揺れ)−(鎖骨の揺れ)(cm)の20秒間での(極大値の平均)−(極小値の平均)(cm)を、ヨコ(X)、タテ(Y)及び奥行き(Z)の3方向について算出する。ここでX方向は後述のL1の方向を意味し、Y方向及びZ方向はそれぞれX方向に対して垂直である。3方向の値のうち最も大きい値を着用時の揺れ(cm)とし、(トップバスト寸法−アンダーバスト寸法)の値で除して揺れ値とする。揺れ値が0.3以下であると揺れが小さく、有利である。揺れ値は0.25以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましい。揺れ値は小さい程好ましいが、過度な圧迫を回避し良好な着用感を容易に得る観点から、例えば、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上であることができる。
図1〜3及び図5を参照し、特定の態様においては、肩紐部のカップ部前中心側端点P1,P2の間の距離が最大となるようにブラジャーを配置したときに、肩紐部のカップ部前中心側端点P1,P2と、連結部の前中心下端点P3とを結んで形成される三角形Tの面積に対する、ブラジャー構成素材で覆われない部分110の面積の割合が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、最も好ましくは100%である。この三角形はいわゆる胸の谷間の部分を形成する。上記割合が60%以上である場合、谷間が隠れてしまうことを防止して良好な審美性を実現できる。本発明のブラジャーは、例えば特定の防振部を有することによって達成される、前述のような特定の揺れ値を有していることができるため、上記割合が60%以上である、いわゆる開放された状態であっても、防振性に優れる点で有利である。
本発明のブラジャーは、トップバスト寸法とアンダーバスト寸法との差(本開示で、トップバスト−アンダーバストともいう)が17.5cm以上であることが好ましく、更に好ましくはトップバスト−アンダーバストが20cm以上である。トップバスト−アンダーバストの上限は特に限定されないが、例えば35cm以下、又は30cm以下である。トップバスト−アンダーバストが17.5cm以上であるとは日本サイズではDカップ以上であって、アメリカサイズのD以上、及びイギリスサイズのC以上に対応する。トップバスト−アンダーバストが20cm以上であるとは、日本サイズのEカップ以上であって、アメリカサイズのE以上、及びイギリスサイズのD以上に対応する。本発明によれば、大きいカップサイズでも審美性を維持しながら胸の揺れを顕著に低減できる。トップバスト寸法は、胸の膨らみの最大部分の周径の値であり、アンダーバスト寸法とは、胸の膨らみの下端の周径の値である。
好ましい態様において、本発明のブラジャーの最大着圧は50HPa以下である。本開示で、最大着圧とは、ブラジャー着用時の、ブラジャーと着用者との間の着圧の最大値である。最大着圧は、具体的には以下の方法で測定できる。すなわち、(1)着用者の脇部下方に対応する部分、(2)着用者のバストの膨らみの下端付近に対応する部分、(3)肩紐部の肩中央部、(4)肩紐部の後側付け根部、(5)カップ部上方、(6)カップ部脇部、及び(7)カップ部下方、の7箇所の着圧を多点接触圧計で測定する。得られる値のうち最も高い値を最大着圧とする。上記(1)の部位は、例えば下辺テープを有する場合は、下辺テープ脇部である。上記(2)の部位は、例えば下辺テープを有する場合は、下辺テープカップ中央下部(すなわち図3中の直線L1と接する部位付近)である。また、上記(5)の部位は、図3において上縁高応力部104として示すような領域を意味し、上記(6)の部位は、図3において領域107aとして示すような領域を意味し、上記(7)の部位は、図3において下縁高応力部105として示すような領域を意味する。
本発明のブラジャーは、特定の防振部を配置することによって、前述のような特定の揺れ値を有していることができる。従って、胸の揺れを抑えながら、各部位の着圧を50HPa以下にすることができるために本開示の最大着圧を50HPa以下にすることができ、着用時の不快な締め付け感を回避できる。一般には、胸の揺れを抑制するためには締め付けを強くすることが多く、特に肩部の着圧が非常に高いブラジャーが散見される。しかし、ブラジャーの各部位の着圧が50HPaを超えると一般に不快である傾向がある。本発明においては、低い揺れ値により、X、Y、Zの各方向の胸の動きが抑制され、分散されているために、着圧の集中も防ぐことができる。特に上述の肩紐部の補強は着圧分散効果に優れる。最大着圧は、より好ましくは45HPa以下、更に好ましくは40HPa以下である。一方、最大着圧は着用時のずれを抑え、低い揺れ値を容易に得る観点から、例えば、好ましくは10HPa以上、より好ましくは13HPa以上、更に好ましくは15HPa以上であることができる。
本発明のブラジャーは、一対のカップ部と、該カップ部の前中心側を互いに連結する連結部と、ウイング部と、肩紐部とを備えるが、ブラジャーの各部(より具体的にはカップ部、連結部、ウイング部及び肩紐部)は、それぞれ別個の布帛で形成されていてもよいし、2つ以上の部分(例えばブラジャー全体)にわたり連続した布帛で形成され、形状のみで部材間の境界が画定されてもよい。後者の場合、特にカップ部の外縁は、カップの膨らみの縁が明確であれば縁の位置、不明確であれば膨らみ形状から想定される縁と見なされる位置として画定される。防振部は同一の材料により形成されていてもよく、異なる材料の組合せにより形成されていてもよく、防振部を構成する部材の境界とブラジャーの各部の境界とが一致する必要もない。
例えば、防振部を有するパッドは、カップ部を構成する布帛の裏側(すなわち着用者側)、若しくはカップ部を構成する布帛で挟まれた中間層として、布帛に貼付、縫合等によって固定することができる。この場合、外観を損なわずに補強が可能である。また、サブウイング部は、ブラジャーの表側(該裏側と反対側)に補強用の布帛を重ねることによって形成できる。肩紐部については、1枚の布帛においてデザインにより肩紐部のカップ部及びウイング部への取り付け部分の幅を大きくする方法、肩紐部の裏側(着用者側)又は表側(該裏側と反対側)に補強布を貼り付け、肩紐部の厚みを大きくする方法等が好適に使用される。
本発明のブラジャーの各部材の素材は特に限定されず、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維等の合成繊維、レーヨン、キュプラ、アセテート等のセルロース系繊維、及び綿、麻等の天然繊維が好適に用いられる。各部材を構成する布帛の構造も特に限定されず、編物、織物、不織布等が用いられる。また、捲縮された繊維を用いてもよい。本発明においては、各部材に適正な伸張特性を有する布帛を配置することが有効である。各部材においては、スパンデックスが交編された伸びを有する編地が好適に用いられる。また、カップ部及びウイング部の生地にはダブル丸編、トリコット編、ラッセル編等を使用でき、トリコットハーフ生地が好適に用いられる。使用する編機の編ゲージとしては約20〜約40GGが好ましい。また、高応力部には織物又はタテ挿入のタテ編み物等が好適に用いられ、若干伸びのあるレース等は意匠性にも優れ非常に好適に用いられる。
各部材は、モノフィラメント又はマルチフィラメントで構成できる。マルチフィラメント糸には、二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
本発明のブラジャーの各部材を構成する布帛素材の総繊度は、衣料等で一般的に使用されている範囲であることができる。中でも、強度及びソフトさの観点から、総繊度が約22〜約700dtexであることが好ましい。
各部材に用いる布帛の目付は特に限定されないが、約50〜約500g/m2が好ましい。また、各部材に用いる布帛には吸水加工を施すことが望ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。無論、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で得たパッド及びブラジャーは、以下の方法で評価した。
(1)パッドの伸張応力
JIS L1096.8.12.1 A法のカットストリップ法に準拠し、パッドの応力を計測した。10%伸張時応力特性についてはタテ方向伸長10%時応力とヨコ方向伸長10%時応力(幅2.5cmあたり)を測定し、これらの平均値を算出した。
試験片の幅:0.5cm
試験片のつかみ長さ:2.0cm
伸長速度:30cm/min
上記条件で測定を行ったが、試験片のつかみ長さが取れない場合には適宜長さを変更した。試験片の幅が取れない場合には、適宜幅を変更し、得られた応力値を2.5cm幅あたりの数値に換算した。また、厚さ、圧縮硬さが連続的に変化する箇所では、幅0.5cmで伸張試験を行って、平均的な値として、伸張応力を測定した。測定箇所は、1個のパッドから、高圧縮硬さ領域については、上縁又は下縁の近傍で2カ所、圧縮硬さの連続変化領域については、上縁側又は下縁側で2カ所、バストトップ近傍は1カ所とし、5個のパッドについて測定した。測定値を算術平均して、伸張応力とした。
(2)パッドの厚さ、圧縮硬さ
ハンディ圧縮試験機KES−G5(カトーテック社製)を用い、圧縮速度0.02mm/sec、圧縮子の面積1cm2の条件で荷重0.5gf/cm2での厚さT0(mm)と荷重5gf/cm2での厚さTM(mm)を測定した。パッドの厚さとしては、T0(mm)を用いた。また、圧縮硬さ=TM/(T0−TM)を算出した。厚さ、圧縮硬さが連続的に変化する箇所では、圧縮子で覆われる面積内の平均的な値として、厚さ、圧縮硬さを算出した。測定箇所は、1個のパッドから、高圧縮硬さ領域については、上縁又は下縁の近傍で2カ所、圧縮硬さの連続変化領域については、上縁側又は下縁側で2カ所、バストトップ近傍は1カ所とし、5個のパッドについて測定した。測定値を算術平均して、圧縮硬さとした。
(3)パッドのガラス転移点
セイコーインスツル社製EXSTAR DMS7100を用い、駆動周波数110Hz、圧縮変形モードで面積1cm2のパッドについて、液体窒素または乾燥窒素ガスを試料室に通じながら昇温速度2℃/minで−150℃からtanδのピークが消失する温度まで測定した。tanδのピーク値を示す温度をガラス転移点(℃)とした。
(4)ブラジャー着用時の揺れ値
身長160cm±8cmで(トップバスト−アンダーバスト)によるブラジャーサイズが38DD(イギリスサイズ)である3名の被験者にブラジャーを着用させ、トレッドミルで速度6km/h、1分間に150歩のペースで、着地時に片足が地面から離れているように小走りさせた。この際、鎖骨部及びバストトップ部に直径1.8cmの反射球を取り付けておき、反射球を2台の高速カメラ(200コマ/SEC)で20秒間撮影した。鎖骨部の揺れは5〜6cmとした。着用時の胸の揺れの指標として、(バストトップの揺れ)−(鎖骨の揺れ)(cm)の20秒間での(極大値の平均)−(極小値の平均)(cm)を算出し、ヨコ(X)、タテ(Y)及び奥行き(Z)の値のうち最も大きい方向の値を着用時の揺れ(cm)とし、(トップバスト−アンダーバスト)で除して揺れ値とした。3名の結果を平均して算出した。
(5)ブラジャー着用時の快適性
(4)の着用試験時に以下の基準で評価し、モニターの評価を平均した。
5: 圧迫感や違和感、揺れ感がほとんどなく非常に快適である
4: 圧迫感や違和感、揺れ感が小さく快適である
3: やや圧迫感や違和感、揺れ感があるが不快ではない。
2: 圧迫感や違和感、揺れ感があり不快である
1: 圧迫感や違和感、揺れ感が強く非常に不快である
[実施例1]
以下の方法で、図1〜3に示す形状である、イギリスサイズ38DDのブラジャー(日本サイズのE85に対応)(トップバスト寸法とアンダーバスト寸法との差は、20cm、バストトップから背中心までの線分Lが最長になるようにブラジャーを配置したときの線分Lの長さは30.5cm)を作製した。
パッドは、ガラス転移点が−63℃で厚み5mm、10%タテヨコ平均伸張応力が3.0Nの発泡ウレタン成形品と、ナイロン56dtexポリウレタン44dtexの28GGツーウエイトリコット編地(10%タテヨコ平均伸張応力が0.4Nである生地)とをボンディングし、モールド成形を施して作製した。パッドはカップ部101の形状と同形状である。モールド成形に用いる金型は、パッドの上縁及び下縁に相当する箇所から幅10mmまでの領域で間隙(高圧縮硬さ領域に対応)を1mmとし、バストトップに向かい、徐々に間隙を増加し(圧縮硬さ連続変化領域に対応)、パッドの上縁及び下縁に相当する箇所から幅約30mmの位置で間隙が5mm(低圧縮硬さ領域に対応)となるように作製しており、モールド成形により、上縁高応力部104及び下縁高応力部105を形成した。パッド高応力部は、上記間隔を1mmとして成形された領域に少なくとも形成されたが、圧縮硬さ連続変化領域のうちS2/S1が本発明所定の範囲である部位もまたパッド高応力部であることが意図される。なおパッドの上縁からバストトップまでの長さは110mm、パッドの下縁からバストトップまでの長さは100mmであった。このパッドを、カップを形成するツーウエイトリコット編地の下縁に沿うように接着剤によって固定した。ウイング部103にも同じツーウエイトリコット編地を用い、下辺テープにはラッセル1cm幅テープであってタテヨコ平均伸張応力が1.7Nのものを用いた。
ウイング部の背中心(アンダーバストが最小となるホックの位置で)からカップ部側に更に、カップ部の片側のバストトップ(これはバストトップ部Qである)とウイング部の背中心Cとを結ぶ線分の方向に対して法線方向が一致する平面Sを規定した場合に、バストトップからウイング部の背中心に向かって15%の位置(これはカップ部内にある)及び70%の位置(これはウイング部内にある)に本体との接合部が存在するように、サブウイング部107を、40番綿糸を使った平織物で形成した。なお本例のブラジャーにおいては、上記平面Sに関し、バストトップから背中心に向かって30%の位置の該平面上に、カップ部とウイング部との境界がある。また接合部は、図3中、カップ部側接合部107aS及びウイング部側接合部107bSとして示すような形状で、本体の上端から下端に亘って延びるように形成した。サブウイング部と本体とは重ね縫製により接合した。ウイング部の編地は着用時に伸び率20%で伸張応力が2.5Nかかる設計とし、平織物は着用時に伸び率6%で伸張応力が4.0Nかかる設計とした。ウイング部の22.1N時の伸びは92%であったため、サブウイング部の長さは脇補強部における本体部の長さm2(すなわちLa+Lb)の+13%とした。カップ部の下部には布を被覆したワイヤーを取り付けた。肩紐部は経糸に640dtexポリウレタンに70dtexのナイロン加工糸をダブルカバーリングした糸(ドラフト3.5)と155dtexのナイロン加工糸を1本交互で配し、緯糸に155dtexのナイロン加工糸を用いた織物を作製した。幅2.0cm、厚みは1.4mm(すなわち平均断面積は28mm2)とし、ウイング部の背中心(アンダーバストが最小となるホックの位置で)からカップ部側に向かって、ウイング部の長さの40%離れた位置に肩紐部の背側連結中心が存在するように取り付けた。肩紐部の長さ方向のパワーは肩中央部で62%であった。作製したブラジャーを着用したときの着用時の胸の揺れの防振効果は大きく、揺れ感が少ないにも関わらず、圧迫感や違和感等の不快感が少なく、快適性にも優れていた。更に肩紐部のカップ部前中心側端点P1,P2と連結部の前中心下端点P3とを結んで形成される三角形の面積の80%がブラジャー構成素材で覆われておらず、審美性にも優れていた。
[実施例2及び3]
パッドをモールド成形する際に用いる金型において、パッドの上縁及び下縁から幅10mmまでの領域で間隙を2mm(実施例2)及び4mm(実施例3)とした他は実施例1と同様のブラジャーを作製し、着用テストを実施し、その結果を表1に示した。
[実施例4]
パッドが厚み10mmの発泡ウレタン成形品をモールド成形して作製され、モールド成形に用いる金型がパッドの上縁及び下縁から幅10mmまでの領域で間隙を1mmとし、バストトップに向かい、徐々に間隙を増加し、パッドの上縁及び下縁から幅約30mmの位置で間隙が10mmとなるように作製した他は実施例1と同様のブラジャーを作製し、着用テストを実施した。
[実施例5]
パッドをモールド成形する際に用いる金型において、パッドの上縁及び下縁から幅3mmまでの領域の間隙を1mmとした他は実施例1と同様のブラジャーを作製し、着用テストを実施した。
[実施例6]
パッドをモールド成形する際に用いる金型において、パッドの上縁及び下縁から幅35mmまでの領域の間隙を1mmとした他は実施例1と同様のブラジャーを作製し、着用テストを実施した。
[実施例7]
モールド成形に用いる金型において、パッドの上縁及び下縁から幅10mmまでの領域の間隙を1mmとし、バストトップに向かい、徐々に間隙を増加し、パッドの上縁及び下縁から幅約13mmの位置で間隙が5mmとなるように作製した他は実施例1と同様のブラジャーを作製し、着用テストを実施した。
[実施例8]
モールド成形に用いる金型において、パッドの上縁及び下縁から幅10mmの間隙を1mmとし、バストトップに向かい、徐々に間隙を増加し、パッドの上縁及び下縁から幅約45mmの位置で間隙が5mmとなるように作製した他は実施例1と同様のブラジャーを作製し、着用テストを実施した。
[実施例9]
6枚筬を装備した18ゲージ、釜間12mmのダブルラッセル編機を用い、表面編地を形成する筬(L1、L2)及び裏面編地を形成する筬(L5、L6)から110dtex/48フィラメントのポリアミド66仮撚加工糸を、連結糸用の筬(L3、L4)から100dtexのナイロン6モノフィラメントを、L1、L3、L5の筬に1イン1アウトの配列で、L2、L4、L6の筬に1アウト1インの配列で供給し、立体編物を編成した。得られた生機を180℃×2分で幅出し乾熱ヒートセットを行い、ガラス転移点45°、厚さ10mmの立体編物を得た。発泡ウレタン成形品に代えて本立体編物を用いた他は実施例4と同様のブラジャーを作製し、着用テストを実施した。
[比較例1]
発泡ウレタン成形品を5mmの均一厚みにモールド成形してパッドを作製した他は実施例1と同様にしてブラジャーを作製した。着用時の胸の揺れは非常に大きく、防振性に劣り、不快であった。
[比較例2]
パッドをモールド成形する際に用いる金型において、パッドの上縁及び下縁から幅10mmまでの領域の間隙を0.2mmとした他は実施例1と同様のブラジャーを作製した。着用時に胸の揺れは抑制されていたが、高応力部に圧迫感、違和感があり、着用快適性に劣った。
実施例と比較例の結果から明らかなように、特定の特性、形状を有する高応力部を有するパッドを用いることで、審美性に優れ、圧迫感や違和感等の不快感が少なく、快適性にも優れているおり、更に着用時の胸の揺れの防振効果に優れ、揺れ感を感じることが少ないブラジャーを得ることができる。
Figure 0006159540
S2及びC2は、それぞれ、上縁高応力部と下縁高応力部とで同じ値であった。
本発明は、一般のブラジャーはもちろん、スポーツブラにも好適に適用できる。
1 ブラジャー
101 カップ部
102 連結部
103 ウイング部
103a 基部
103b 下辺部
104 上縁高応力部
105 下縁高応力部
106 中央部
107 脇補強部
107a,107b 領域
107aS カップ部側接合部
107bS ウイング部側接合部
108 接合布帛
108a 本体部
108b サブウイング部
109 肩紐部
109a 肩部
109b 低応力部
110 ブラジャー構成素材で覆われない部分

Claims (14)

  1. 一対のカップ部、該カップ部の前中心側を互いに連結する連結部、ウイング部、及び端部が該一対のカップ部と該ウイング部とに連結された肩紐部を備えたブラジャーにおいて、
    該カップ部が少なくともパッドを有し、
    該パッドが、パッド上縁、若しくはパッド下縁、又はこれらの両者に沿って延びるパッド高応力部であって、パッドのバストトップ部の伸張応力S1に対するパッド高応力部の伸張応力S2の比S2/S1が2/1〜80/1であるパッド高応力部を有し、
    該ブラジャーが、該カップ部の一部から該ウイング部の一部に亘る領域において本体上に配置されたサブウイング部であって、該カップ部のバストトップから該ウイング部の背中心まで延ばした線分が最長となるようにブラジャーを配置し、かつ該線分と同一方向の法線を有する平面を規定した場合に、該線分上の該バストトップから該背中心に向かって5〜25%の位置の該平面上及び55〜90%の位置の該平面上に、該サブウイング部と該本体との接合部が存在し、かつ該サブウイング部は該本体と接合されていない領域を有するサブウイング部を防振部として有する
    ブラジャー。
  2. 前記パッド高応力部において、前記パッドのバストトップ部の圧縮硬さC1に対する前記パッド高応力部の圧縮硬さC2の比C2/C1が2/1〜200/1である、請求項1に記載のブラジャー。
  3. 前記パッド高応力部において、前記パッドのバストトップ部の圧縮硬さC1に対する前記パッド高応力部の圧縮硬さC2の比C2/C1が2/1〜80/1である、請求項1に記載のブラジャー。
  4. 前記パッド高応力部が、パッド上縁に沿って最大幅5〜30mmで形成されており、若しくはパッド下縁に沿って最大幅5〜30mmで形成されており、又はこれらの両者であり、前記パッド高応力部の伸張応力及び圧縮硬さが前記パッド高応力部全体に亘って実質的に均一である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のブラジャー。
  5. 前記パッドの端部とバストトップ部とを結ぶ線分に沿ってパッドの圧縮硬さを測定したときに、少なくとも1つの線分上に、パッド端部からバストトップに向かって、圧縮硬さC2を有する高圧縮硬さ領域、該圧縮硬さC2から、圧縮硬さC2よりも小さい圧縮硬さC1まで圧縮硬さが連続的に変化する長さ5〜30mmの連続変化領域、及び圧縮硬さC1を有する低圧縮硬さ領域が存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のブラジャー。
  6. 圧縮モードによる動的粘弾性測定から得られるパッドのバストトップ部のガラス転移点が−100〜10℃である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のブラジャー。
  7. パッド下縁の形状がカップ下縁の形状と略同一であり、パッド下縁の全長が実質的にカップ下縁に接合されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のブラジャー。
  8. 前記パッドの一部又は全部が発泡樹脂成形体である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のブラジャー。
  9. 前記パッドがモールド成形物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のブラジャー。
  10. 前記パッドは、全体が同一の材料で形成されており、パッド高応力部がパッド高応力部以外の部分よりも小さい厚み及び大きい密度を有するようにモールド成形されている、請求項9に記載のブラジャー。
  11. 前記ブラジャーが平均の断面積が25〜120mm2である肩紐部防振部として有する請求項1〜10のいずれか1項に記載のブラジャー。
  12. 肩紐部のカップ部前中心側端点の間の距離が最大となるようにブラジャーを配置したときに、肩紐部のカップ部前中心側端点と該連結部の前中心下端点とを結んで形成される三角形の面積に対する、ブラジャー構成素材で覆われない部分の面積の割合が60%以上である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のブラジャー。
  13. トップバスト寸法とアンダーバスト寸法との差が17.5cm以上である、請求項1〜12のいずれか1項に記載のブラジャー。
  14. 最大着圧が50HPa以下である、請求項1〜13のいずれか1項に記載のブラジャー。
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