JP6158672B2 - 積層ポリエステルフィルムおよび強磁性金属薄膜型磁気記録テープ - Google Patents

積層ポリエステルフィルムおよび強磁性金属薄膜型磁気記録テープ Download PDF

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Description

本発明は、強磁性金属薄膜型磁気記録テープのベースフィルムに用いる積層ポリエステルフィルムに関する。さらに詳しくは電磁変換特性、走行耐久性に優れた磁気記録テープ、特にデジタル信号を記録・再生する強磁性金属薄膜型磁気記録テープ(例えばデジタルビデオカセットテープ、データストレージテープなど)のベースフィルムとして有用な積層ポリエステルフィルムおよびそれを用いた磁気記録テープに関する。
ポリエステルフィルムは、比較的安価で、優れた機械的特性を有することから磁気記録テープのベースフィルムに用いられてきた。そして、磁気記録テープのベースフィルムに用いる場合、ポリエステルフィルムには粗大な突起や欠点がない平坦な表面を有することが求められる。一方、磁性層をポリエステルフィルムに塗布して形成する強磁性金属薄膜型磁気記録テープでは、ベースフィルムの巻取性や走行性が不安定であると、均一な磁性層を効率的に製造することができず、ポリエステルフィルムに粒子などの滑剤を含有させて、表面に突起などを形成することが求められる。この2つの要求は相反するものであり、これらの要求を満たすために、特許文献1では、積層フィルムとし、フィルム層に含有させる粒子の凝集を抑えることが提案されている。また、特許文献2では、触媒組成を改良することで粗大突起を抑制することなどが提案されている。
ところで、これらの公報に記載されたフィルムは、強磁性金属薄膜型磁気記録テープのベースフィルムに用いようとすると、磁性層との接着性を向上させたり、平坦な表面でも走行性を持たせようと、易接着易滑層と言われる粒子を含有した塗膜層が形成されていた。
しかしながら、近年の要求は、単に記憶容量を高めるだけでなく、生産性を向上させ、単位記憶容量当りの原価を低減することも求められている。
特開平9−201926号公報 特開2003−276141号公報
本発明の目的は、強磁性金属薄膜型磁気記録テープのベースフィルムに用いたときに、易接着易滑層と言われる粒子を含有した塗膜層が無くても、得られる磁気記録テープに高密度記録領域でも十分な電磁変換特性を具備させつつ、スリット性を向上させ、より高速での生産が可能な強磁性金属薄膜型磁気記録テープ用積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決しようと鋭意研究し、これまで磁気記録容量の拡大に伴って、ベースフィルムを平坦化してきたが、それと逆行する方向で、特に磁性層を形成しない側の表面に、平均粒子径の大きな粒子として特定の粒子径の粒子を極めて少量含有させつつ、磁性層を形成する側の表面と磁性層を形成しない側の表面に、同じ特定の粒子を特定の粒子量比で含有させることで、電磁変換特性を悪化させること無く、しかも易接着易滑層と言われる粒子を含有した塗膜層がなくても、スリット性を高度に向上できることを見出し、本発明に到達した。
かくして本発明によれば、共押し出しによって積層されたポリエステルA層とB層とからなり、A層のB層と接しない側の表面に塗膜層を有さない積層ポリエステルフィルムであって、A層は平均粒子径0.03−0.20μmの粒子Aを0.005−0.07重量%の範囲で含有し、B層は、平均粒子径0.40−0.90μmの粒子B1を0.001−0.020重量%と平均粒子径0.03−0.20μmの粒子B2を0.20−0.80重量%の範囲で含有し、粒子Aと粒子B2とが同じ粒子であり、かつその粒子量の比(CB2/CA)が5〜25であり、B層の厚さ(tB)と粒子B1の平均粒子径(dB1)との比(tB/dB1)が、5〜12の範囲である強磁性金属薄膜型磁気記録テープ用積層ポリエステルフィルムならびに前記強磁性金属薄膜型磁気記録テープ用積層ポリエステルフィルムとそのA層側の表面に蒸着によって形成された強磁性金属薄膜層とからなる強磁性金属薄膜型磁気記録テープが提供される。
また、本発明によれば、本発明の好ましい態様として、A層の厚さ(tA)と粒子B1の平均粒子径(dB1)との比(tA/dB1)が、2以上であること、A層の厚さ(tA)と粒子Aの平均粒子径(dA)との比(tA/dA)が、8〜30の範囲であること、厚みが2.8−8.5μmであること、粒子A、粒子B1および粒子B2が、それぞれ真球状シリカ粒子、架橋ポリスチレン粒子、シリコーン粒子、シリカーアクリル複合粒子のいずれかであること、ポリエステルがエチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とすることの少なくともいずれかひとつを具備する強磁性金属薄膜型磁気記録テープ用積層ポリエステルフィルムおよびそれを用いた強磁性金属薄膜型磁気記録テープも提供される。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、強磁性金属薄膜型磁気記録テープにしたときに必要な電磁変換特性を発現でき、しかも、耐ブロッキング性に優れ、スリット性にも優れることから、より高速で生産することができ、保管安定性にも優れることから、その工業的価値は極めて高い。
以下、本発明について、詳述する。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、強磁性金属薄膜型磁気記録テープのベースフィルムに用いるポリエステルフィルムであって、少なくともA層とB層の2層からなる。
そして、磁性層を形成する側のA層は、平均粒子径0.03−0.20μmの粒子Aを0.005−0.07重量%の範囲で含有することが必要である。粒子Aの平均粒子径が下限未満では、後述する粒子B1を含有させても、スリット性向上効果が乏しく、他方上限を超えると電磁変換特性が損なわれる。好ましい粒子Aの平均粒子径の下限は0.06μm、さらに0.08μm、他方上限は0.16μm、さらに0.15μmである。また、粒子AのA層の重量を基準としたときの含有量が下限未満では、後述する粒子B1を含有させても、スリット性向上効果が乏しく、他方上限を超えると電磁変換特性が損なわれる。好ましい粒子Aの含有量の下限は0.010重量%、さらに0.030重量%、他方上限は0.065重量%、さらに0.060重量%である。
次に、磁性層を形成しない側のB層は、平均粒子径0.40−0.90μmの粒子B1を0.001−0.020重量%と、平均粒子径0.03−0.20μmの粒子B2を0.20−0.80重量%の範囲で含有することが必要である。粒子B1の平均粒子径が下限未満では、スリット性向上効果が乏しく、他方上限を超えると電磁変換特性が損なわれる。好ましい粒子B1の平均粒子径の下限は0.45μm、さらに0.48μm、他方上限は0.8μm、さらに0.7μmである。また、粒子B1のB層の重量を基準としたときの含有量が下限未満では、スリット性向上効果が乏しく、他方上限を超えると電磁変換特性が損なわれる。好ましい粒子B1の含有量の下限は0.003重量%、さらに0.004重量%、他方上限は0.018重量%、さらに0.015重量%である。また、粒子B2の平均粒子径が下限未満では、前述の粒子B1を含有させても、スリット性向上効果が乏しく、他方上限を超えると電磁変換特性が損なわれる。好ましい粒子B2の平均粒子径の下限は0.04μm、さらに0.05μm、他方上限は0.19μm、さらに0.18μmである。また、粒子B2のB層の重量を基準としたときの含有量が下限未満では、前述の粒子B1を含有させても、スリット性向上効果が乏しく、他方上限を超えると電磁変換特性が損なわれる。好ましい粒子B2の含有量の下限は0.25重量%、さらに0.30重量%、他方上限は0.75重量%、さらに0.70重量%である。
ところで、本発明の積層ポリエステルフィルムは、粒子Aと粒子B2とが同じ粒子であり、かつ粒子B2の含有量(CB2)と粒子Aの含有量(CA)との比、すなわち粒子量の比(CB2/CA)が5〜25であることが必要である。粒子Aと粒子B2とが異なる粒子の場合、フィルムに製膜する際に製品とならなかった部分を回収して用いることが困難となり、また粒子量の比(CB2/CA)が上記範囲を外れると、電磁変換特性、耐ブロッキング性、スリット性、保管安定性を高度に具備させることが困難になる。そのような観点から、好ましい粒子量の比(CB2/CA)の下限は5.5、さらに6であり、他方上限は23.5、さらに18.0、特に13.0である。
さらに、本発明の積層ポリエステルフィルムの好ましい態様について説明する。
ところで、本発明の積層ポリエステルフィルムは、B層の厚さ(tB)と粒子B1の平均粒子径(dB1)との比(tB/dB1)が、5〜12の範囲であることが好ましい。tB/dB1が上記範囲にあることで、高速でスリットしたときに粒子の脱落などを抑制しつつ、電磁変換特性を高度に維持することができる。好ましいtB/dB1の下限は5.5、さらに6.0、他方上限は11.5、さらに11.0である。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、A層の厚さ(tA)と粒子B1の平均粒子径(dB1)との比(tA/dB1)が、2以上であることが、より電磁変換特性を高度に維持しやすいことから好ましい。好ましいtA/dB1の下限は、2.2さらに2.4、他方上限は特に制限されないが、磁気記録テープにしたときの巻き長を十分に確保する観点から薄いことが好ましく6.0さらに5.0である。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、A層の厚さ(tA)と粒子Aの平均粒子径(dA)との比(tA/dA)が、8〜30の範囲であることが好ましい。上記範囲にあることで、電磁変換特性をより高度に発現させることができる。好ましいtA/dAの下限は9、さらに10、他方上限は、29、さらに28である。
ところで、上記のような不活性粒子Aや不活性粒子B1と、A層およびB層の厚みとの関係を具備させつつ、磁気記録テープにしたときの巻き長を十分に確保する観点から、本発明の積層ポリエステルフィルムは、その厚みが2.8−8.5μmであることが好ましい。好ましい積層ポリエステルフィルムの厚みの下限は、3.0μm、さらに3.5μm、他方上限は、8.0μm、さらに7.0μmである。また、同様な観点から、A層の厚みの下限は、0.8μm、さらに1.0μm、他方上限は、3.0μm、さらに2.5μmであることが好ましく、B層の厚みの下限は、2.0μm、さらに2.5μm、他方上限は、5.5μm、さらに5.0μmであることが好ましい。
本発明において、含有させる粒子A、粒子B1および粒子B2としては、もともと粗大粒子を含まないか含有するとしても極めて少ない粒子が好ましい。そのため、粒径分布曲線がシャープなものにしやすく、一次粒子の状態で存在しやすい粒子が好ましく、シリコーン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレンなどの有機高分子粒子および球状シリカ、シリカと有機高分子の複合体、からなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子であることが好ましく、特にシリコーン樹脂、架橋ポリスチレンおよび球状シリカ、シリカ−アクリルの複合体粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子であることが好ましい。もちろん、これらの粒子を含有させる場合は、さらに粗大粒子をなくすため、フィルターでのろ過を行ったり、分散剤で粒子の表面を処理したり、押出機での混練を強化することが好ましい。
ところで、上記粒子A、粒子B1および粒子B2は、粒径分布曲線を見たときに、それぞれ単一のピークを有することが好ましい。ピークが単一かどうかは、横軸に粒子径、縦軸に粒子頻度の粒径分布曲線を作成し、横軸の粒子径の測定ピッチを0.01μmとしたとき、ピークが1つしかないか、ピークが複数あったとしても、ピークとピークとの間に低いピークの方の高さに対して50%以下となる凹みが存在しないことを意味する。また、同様な観点から、粒子の粒径分布曲線を見たときの全粒子の粒子径の相対標準偏差が0.19以下、さらに0.14以下であることが好ましい。
本発明におけるポリエステルは、フィルムへの製膜が可能なものであれば、それ自体公知のものを採用できる。例えば、ジオール成分と芳香族ジカルボン酸成分との重縮合によって得られる芳香族ポリエステルが好ましい。かかる芳香族ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸などの6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸が挙げられる。また、かかるジオール成分としては、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。
これらの中でも、高温での加工時の寸法安定性の点からは、エチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするものが好ましく、特にエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするものが好ましい。ここでいう主たるとは、好ましくは80モル%以上、さらに90モル%以上を意味する。
また、より環境変化に対する寸法安定性を向上させる観点から、国際公開2008/096612号パンフレットに記載された6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、6,6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分および6,6’−(ブチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分などの6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合したものも挙げられる。好ましい(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の共重合量は、全ジカルボン酸成分のモル数を基準として、5〜40モル%の範囲である。
本発明におけるポリエステルは、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を含有しない場合はο−クロロフェノール中、35℃において、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を含有する場合はP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒中、35℃において、測定したときの固有粘度が0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40〜1.0dl/gであることがさらに好ましい。固有粘度が0.4dl/g未満ではフィルム製膜時に切断が多発したり、成形加工後の製品の強度が不足することがある。一方固有粘度が1.0dl/gを超える場合は重合時の生産性が低下する。
本発明におけるポリエステルの融点は、200〜300℃であることが好ましく、更に好ましくは210〜290℃、特に好ましくは220〜280℃である。融点が下限に満たないと二軸配向フィルムの耐熱性が不十分な場合があり、融点が上限を超える場合は溶融混練する際の温度が非常に高温になり、熱劣化などを引き起こしやすくなる。
なお、本発明におけるポリエステルは、本発明の効果を損なわない範囲で、それ自体公知の他の共重合成分をさらに共重合、例えば繰り返し単位のモル数に対して10モル%以下、さらに5モル%以下の範囲で共重合していてもよいし、他の熱可塑性樹脂などを、例えば20重量%以下、さらに10重量%以下の範囲でブレンドしても良い。また、本発明におけるポリエステルは、本発明の効果を阻害しない範囲で、紫外線吸収剤等の安定剤、酸化防止剤、可塑剤、ワックスなどの滑剤、難燃剤、離型剤、核剤、を必要に応じて配合しても良い。なお、磁性層を形成する側の表面におけるうねり指数を低減する観点から、うねり指数を大きくしやすいポリエステルと非相溶な他の熱可塑性ポリマー、顔料、充填剤、ガラス繊維、炭素繊維、層状ケイ酸塩などは含有させないことが好ましい。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、例えば、ポリエステルA層用のポリマーと、対面を形成するポリエステルB層用のポリマーとを用意し、これらを溶融状態で積層してダイからシート状に共押出する工程、得られたシート状物を冷却固化することで、積層未延伸ポリエステルフィルムとする工程、そして得られた積層未延伸ポリエステルフィルムを製膜方向と幅方向に延伸することで製造できる。溶融状態で押し出す工程での温度は、未溶融物がなく、過度にポリエステルの熱劣化が進まない温度であれば特に制限されず、例えば、ポリエステルの融点(Tm:℃)ないし(Tm+70)℃の温度で行うことが好ましい。つぎに、冷却については、得られる積層未延伸ポリエステルフィルムの平坦性を維持しつつ、厚み斑も少なくするために、フィルム製膜方向に沿ってダイの下方に設置された回転する冷却ドラムを用い、それにシート状物を密着させて冷却するのが好ましい。つづいて、延伸については、積層未延伸ポリエステルフィルムを、一軸方向(縦方向または横方向)に(ポリエステルのガラス転移温度(Tg)−10)℃〜(Tg+100)℃の温度で3.5倍以上、好ましくは4倍以上の倍率で延伸し、次いで上記延伸方向と直交する方向にTg〜(Tg+100)℃の温度で3倍以上、好ましくは3.5倍以上の倍率で延伸するのが好ましい。
さらに必要に応じて縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。このように延伸したときの全延伸倍率は、面積延伸倍率(縦方向の延伸倍率×横方向の延伸倍率)として14倍以上が好ましく、17〜35倍がさらに好ましく、21〜30倍が特に好ましい。さらにまた、二軸配向フィルムは、(Tm−70)〜(Tm−10)℃の温度で熱固定することができ、例えば180〜250℃で熱固定するのが好ましい。熱固定時間は0.1〜60秒が好ましい。また、前述の延伸は逐次二軸延伸で説明したが、縦方向と横方向に同時に延伸する同時二軸延伸を用いても良い。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、高密度磁気記録媒体のベースフィルムとして用いた際に優れた寸法安定性を発現するために、長手方向のヤング率が3〜10GPa、さらに3.5〜9GPa、特に4〜8GPaであることが好ましい。一方、幅方向のヤング率は、ベースフィルムでの温度膨張係数を後述の範囲とさせやすい観点から、4〜15GPa、さらに5〜14GPa、特に6〜13GPa、もっとも好ましくは7〜11GPaの範囲であることが好ましい。幅方向のヤング率が下限未満では、磁気記録テープとしたときの温度膨張係数を小さくすることが困難となり、他方上限を超えると、磁気記録テープとしたときの温度膨張係数が過度に小さくなってしまう。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、強磁性金属薄膜型磁気記録テープに用いられ、高密度磁気記録テープ、特にデジタル記録型磁気記録テープのベースフィルムとして好ましく用いられる。そこで、本発明の積層ポリエステルフィルムを用いた強磁性金属薄膜型磁気記録テープについて、さらに説明する。
本発明の強磁性金属薄膜型磁気記録テープは、上述の積層ポリエステルフィルムに磁性層を形成することで製造できる。なお、本発明の積層ポリエステルフィルムの表面には、磁性層などとの接着性を向上させるために、本発明の効果を損なわない範囲で、それ自体公知の易接着機能を有する塗膜層などを形成しても良いが、ブロッキングや高速でスリットする際に易接着層が破壊されやすいことから、易接着層はないことが好ましい。
本発明の強磁性金属薄膜型磁気記録テープにおける磁性層は、磁性層、特に、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの方法により、鉄、コバルト、ニッケル、クロムまたはこれらを主成分とする合金もしくは酸化物よりなる強磁性金属薄膜層(磁性層)を形成したものである。金属薄膜層の厚さは100〜300nmであるものが好ましい。
また、強磁性金属薄膜層の表面に、目的、用途、必要に応じてダイアモンドライクカーボン(DLC)などの保護層、含フッ素カルボン酸系潤滑層を順次設け、さらに必要により、ポリエステル層Bの磁性層とは反対側の表面に、公知の方法でバックコート層を設けてもよい。本発明の強磁性金属薄膜型磁気記録テープは、特に短波長領域での出力、S/N、C/Nなどの電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用蒸着型磁気記録テープとしてすることができる。この蒸着型磁気記録テープは、アナログ信号記録用Hi8、デジタル信号記録用デジタルビデオカセットレコーダー(DVC)、データ8ミリ、DDSIV用磁気テープとして極めて有用であり、特にデジタルビデオテープ用途に使用すると優れた結果を得ることができ、好適である。またデータストレージテープ用途にしても優れた結果を得ることができ、好適である。
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明におけるポリエステル、積層ポリエステルフィルムおよび磁気記録テープの特性は、下記の方法で測定および評価した。
(1)固有粘度
得られたポリエステルの固有粘度は、前述のとおり、o−クロロフェノール、35℃で測定し、o−クロロフェノールでは均一に溶解するのが困難な場合は、p−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いて35℃で測定して求めた。
(2)フィルム中の粒子の粒径、平均粒子径および粒子径の相対標準偏差
フィルム表面層のポリエステルをプラズマ低温灰化処理法(例えばヤマト科学製、PR−503型)で除去し、粒子を露出させる。処理条件は、ポリエステルは灰化されるが粒子はダメージを受けない条件を選択する。これをSEM(走査型電子顕微鏡)にて1万倍程度の倍率で粒子を観察し、粒子の画像(粒子によってできる光の濃淡)をイメージアナライザー(例えば、ケンブリッジインストルメント製、QTM900)に結びつけ、観察箇所を変えて少なくとも5,000個の粒子の面積円相当径(Di)を求める。この結果から粒子の粒径分布曲線を作成した。なお、粒子種の同定はSEM−XMA、ICPによる金属元素の定量分析などを使用して行うことができる。また、添加する粒子の平均粒子径は、同様な測定を行って各粒子の粒径を求め、数平均を平均粒子径とした。
(3)粒子の含有量
(3−1)各層中の粒子の総含有量
積層二軸配向ポリエステルフィルムからポリエステルA層、ポリエステルB層を各々100g程度削り採ってサンプリングし、ポリエステルは溶解し粒子は溶解させない溶媒を選択して、サンプルを溶解した後、粒子をポリエステルから遠心分離し、サンプル重量に対する粒子の比率(重量%)をもって各層中の粒子総含有量とする。
(3−2)各層中の無機粒子の総含有量
積層ポリエステルフィルムの無機粒子が存在する場合は、ポリエステルA層、ポリエステルB層を各々削り採って100g程度サンプリングし、これを白金ルツボ中にて1,000℃程度の炉の中で3時間以上燃焼させ、次いでルツボ中の燃焼物をテレフタル酸(粉体)と混合し50グラムの錠型のプレートを作成する。このプレートを波長分散型蛍光X線を用いて各元素のカウント値をあらかじめ作成してある元素毎の検量線より換算し各層中の無機粒子の総含有量を決定する。蛍光X線を測定する際のX線管はCr管が好ましくRh管で測定してもよい。X線出力は4KWと設定し分光結晶は測定する元素毎に変更する。材質の異なる無機粒子が複数種類存在する場合は、この測定により各材質の無機粒子の含有量を決定する。
(3−3)各層中の各種粒子の含有量(無機粒子が存在しない場合)
層中に無機粒子が存在しない場合は、前記(2)により求めたピークを構成する各粒子の個数割合と平均粒子径と粒子の密度から各ピーク領域に存在する粒子の重量割合を算出、これと前記(3−1)で求めた各層中の粒子の総含有量とから、各ピーク領域に存在する粒子の含有量(重量%)を求める。
なお、代表的な微粒子の密度は下記のとおりである。
架橋シリコーン樹脂の密度 : 1.35g/cm
架橋ポリスチレン樹脂の密度: 1.05g/cm
架橋アクリル樹脂の密度 : 1.20g/cm
なお、樹脂の密度は(3−1)の方法でポリエステルから遠心分離した粒子をさらに分別し、例えば、ピクノメーターにより「微粒子ハンドブック:朝倉書店、1991年版、150頁」に記載の方法で測定することができる。
(3−4)各層中の各種粒子の含有量(無機粒子と有機粒子が併存する場合)
層中に無機粒子が存在する場合は、前記(3−1)で求めた各層中の粒子の総含有量と
前記(3−2)で求めた各層中の無機粒子の総含有量とから層中の有機粒子と無機粒子の
含有量をそれぞれ算出し、有機粒子の含有量は上記(3−3)の方法で、無機粒子の含有
量は上記(3−2)の方法で、それぞれ含有量(重量%)を求める。
(4)フィルムおよび各ポリエステル層の厚み
(4−1)フィルムの厚み
ゴミが入らないようにフィルムを10枚重ね、打点式電子マイクロメータにて厚みを測
定し、1枚当たりのフィルム厚みを計算する。
(4−2)各ポリエステル層の厚み
2次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、表層から深さ3,000nm迄の範囲のフィルム中の粒子の内もっとも高濃度の粒子に起因する元素とポリエステルの炭素元素の濃度比(M/C)を粒子濃度とし、表面から深さ3,000nmまで厚さ方向の分析を行う。表層では表面という界面のために粒子濃度は低く表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くなる。そして一旦極大値となった粒子濃度がまた減少し始める。この濃度分布曲線をもとに表層粒子濃度が極大値の1/2となる深さ(この深さは極大値となる深さよりも深い)を求め、これを表層厚さとする。そして、先ほどのフィルムの厚みと表層厚みとから、各層の厚みを算出する。
条件は次のとおりである。
(a)測定装置:2次イオン質量分析装置(SIMS)
(b)測定条件
1次イオン種 :O
1次イオン加速電圧:12KV
1次イオン電流:200nA
ラスター領域 :400μm□
分析領域 :ゲート30%
測定真空度 :0.8Pa(6.0×10−3Torr)
E−GUN :0.5KV−3.0A
なお、表層から深さ3000nm迄の範囲にもっとも多く含有する粒子が有機高分子粒
子の場合はSIMSでは測定が難しいので、表面からエッチングしながらXPS(X線光
電子分光法)、IR(赤外分光法)などで上記同様のデプスプロファイルを測定し、表層
厚さを求めてもよい。
(5)表面粗さ
磁性層を形成する側のA層は、Digital Instruments社製の原子間力顕微鏡(NanoScopeIII、AFM)を用いて、30μm×30μm(=0.0009mm)の条件にて測定した中心面平均粗さをRaとし、十点平均粗さをRzとした。なお、測定は測定箇所を変えて10回行い、それらの平均値を中心面平均粗さ(Ra)、十点平均粗さ(Rz)とした。また積層ポリエステルフィルムの磁性層を形成する側(A層側)の表面の粗さをRaAとRzAとした。
磁性層を形成しない側のB層は、非接触式三次元表面粗さ計(ZYGO社製:New View5022)を用いて測定倍率25倍、測定面積283μm×213μm(=0.0603mm)の条件にて測定し、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトMetro Proにより算出した中心面平均粗さをRaとし、十点平均粗さをRzとした。なお、測定は測定箇所を変えて10回行い、それらの平均値を中心面平均粗さ(Ra)、十点平均粗さ(Rz)とした。また積層ポリエステルフィルムの磁性層を形成しない側(B層側)の表面の粗さをRaBとRzBとした。
(6)スリット性
製膜した積層二軸配向ポリエステルフィルムの親ロールを、幅624mm、長さ1000mに、レザー刃方式のスリッターにて、搬送速度を変えてスリットし、巻取り時の皺や巻きずれ無く、巻取りできる最大速度をスリット速度とし、実施例1を100とした相対値を求め、以下の基準で評価した。
評価基準 ◎ : 80以上
○ : 60以上、80未満
× : 60未満
(7)削れ性
フィルムを幅12.7mm、長さ100mに裁断し、横浜システム製高速巻取り試験機にて、張力50g/12.7mm、巻取り速度、60m/分(低速)、および300m/分(高速)の条件で、外径5mmで表面粗さRa20nmのステンレス鋼SUS304製固定棒へ、抱き角90°で接触させて移動(摩擦)させたのちに、フィルムの摩擦させた面にアルミ蒸着を施し、光学顕微鏡で対物レンズ50倍(測定面積140μm×105μm×8枚=0.118mm)の条件にて粒子脱落痕の凹個数を計測したのち、以下の基準で評価した。
評価基準 ◎:粒子脱落痕が40個未満。
○:粒子脱落痕が40個以上、120個未満。
×:粒子脱落痕が120個以上。
(8)磁気テープの作成
平坦層(磁性層)側の表面に、連続真空蒸着装置を用いて、微量の酸素の存在下において、コバルト−酸素薄膜を150nmの膜厚で形成した。次にコバルト−酸素薄膜上にスパッタリング法により、ダイアモンド状カーボン保護膜を10nmの厚みとなるように常法で形成させ、フッ素含有脂肪酸エステル系潤滑剤を3nmの厚みで塗布した。続いて、他方の表面に、カーボンブラック、ポリウレタン、シリコーンからなるバックコート層を500nmの厚みで設け、スリッターにより幅6.35mmにスリットし、リールに巻き取って磁気記録テープを作成した。
(9)電磁変換特性
電磁変換特性測定には、ヘッドを固定した1/2インチリニアシステムを用いた。記録は、電磁誘導型ヘッド(トラック幅25μm、ギャップ0.1μm)を用い、再生はMRヘッド(8μm)を用いた。ヘッド/テープの相対速度は10m/秒とし、記録波長0.2μmの信号を記録し、再生信号をスペクトラムアナライザーで周波数分析し、キャリア信号(波長0.2μm)の出力Cと、スペクトル全域の積分ノイズNの比をC/N比とし、実施例1を0dBとした相対値を求め、以下の基準で、評価した。
◎ : 0dB以上
○ : −1dB以上、0dB未満
× : −1dB未満
[実施例1]
平坦層(磁性層)側に添加する粒子として、平均粒子径0.14μmの真球状シリカ粒子(粒子A)を0.035重量%含有した固有粘度が0.62のポリエステルA層用ポリエチレン−2,6−ナフタレートペレットと、平均粒子径0.5μmのシリコーン粒子(粒子B1)を0.011重量%と平均粒子径0.14μmの真球状シリカ粒子(粒子B2)を0.31重量%含有した、固有粘度が0.62のポリエステルB層用ポリエチレン−2,6−ナフタレートペレットを用意した。そして、それぞれペレットを170℃で6時間乾燥した後、2台の押出機ホッパーにそれぞれ供給し、溶融温度310℃で、A層:B層=3:7の厚み比率でダイから冷却ドラム上にシート状に共押出し、積層未延伸ポリエステルフィルムを得た。
このようにして得られた積層未延伸ポリエステルフィルムを、120℃に予熱し、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が140℃になるように加熱し、延伸倍率4.8倍で縦方向(製膜方向)の延伸を行った。続いて、155℃に加熱されたステンター内に供給し、横方向に5.1倍に延伸(第1段)後、更に180℃に加熱されたステンター内に供給して再度横方向に1.2倍に延伸した後、210℃の熱風で4秒間熱固定し、厚み6.4μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムのヤング率は縦方向6.3GPa、横方向8.9GPaであった。
得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
[実施例2〜12および比較例1〜6]
含有させる、粒子A、粒子B1および粒子B2ならびにA層およびB層の厚さを、表1に示すように変更した他は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
Figure 0006158672
表1中の、シリカは真球状シリカ粒子、シリコーンは真球状シリコーン粒子を意味する。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、磁気記録媒体としたときに、優れた電磁変換特性を具備しつつ、高速でのスリットが可能であることから、強磁性金属薄膜型磁気記録テープのベースフィルムとして好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. 共押し出しによって積層されたポリエステルA層とB層とからなり、A層のB層と接しない側の表面に塗膜層を有さない積層ポリエステルフィルムであって、A層は平均粒子径0.03−0.20μmの粒子Aを0.005−0.07重量%の範囲で含有し、他方B層は平均粒子径0.40−0.90μmの粒子B1を0.001−0.020重量%と平均粒子径0.03−0.20μmの粒子B2を0.20−0.80重量%の範囲で含有し、粒子Aと粒子B2とが同じ粒子であり、かつその粒子量の比(CB2/CA)が5〜25であり、B層の厚さ(tB)と粒子B1の平均粒子径(dB1)との比(tB/dB1)が、5〜12の範囲である強磁性金属薄膜型磁気記録テープ用積層ポリエステルフィルム。
  2. A層の厚さ(tA)と粒子B1の平均粒子径(dB1)との比(tA/dB1)が、2以上である請求項1記載の強磁性金属薄膜型磁気記録テープ用積層ポリエステルフィルム。
  3. A層の厚さ(tA)と粒子Aの平均粒子径(dA)との比(tA/dA)が、8〜30の範囲である請求項1記載の強磁性金属薄膜型磁気記録テープ用積層ポリエステルフィルム。
  4. 厚みが2.8−8.5μmである請求項1記載の強磁性金属薄膜型磁気記録テープ用積層ポリエステルフィルム。
  5. 粒子A、粒子B1および粒子B2が、それぞれ真球状シリカ粒子、架橋ポリスチレン粒子、シリコーン粒子、シリカーアクリル複合粒子のいずれかである請求項1記載の強磁性金属薄膜型磁気記録テープ用積層ポリエステルフィルム。
  6. ポリエステルがエチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とする請求項1記載の強磁性金属薄膜型磁気記録テープ用積層ポリエステルフィルム。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルムと、A層側の表面に蒸着によって形成された強磁性金属薄膜層とからなる強磁性金属薄膜型磁気記録テープ。
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