本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に、液体収納容器が装着された記録装置を示す。図1に示す記録装置は、記録装置の液体収納容器装着部や液体吐出ヘッドの付近を拡大したものである。記録装置1には、液体収納容器9が備えられている。液体収納容器9には、記録装置1の供給管4が挿入されている。供給管4は、液体収納容器内の液体を導出する液体導出口2と、経路7から液体収納容器内に空気を取り入れる空気導入口3とを備えている。供給管4を経由して導出される液体は、経路6を通って液体吐出ヘッド5側に供給される。
液体収納容器内において、供給管4の空気導入口3は重力方向上向きに開口し、液体導出口2は重力方向下向きに開口していることが好ましい。供給管4の根元で空気導入口3と連通している経路7において、供給管4と反対側の端部は大気と連通している。これにより、液体収納容器内において、液体導出口2から液体が吸引された際、空気導入口3から空気が入り込む。入り込んだ空気は液体収納容器内の重力方向上方に抜ける。このようにして、液体収納容器内で気液交換が行われる。液体導出口2を液体収納容器内で重力方向下向きに開口させることで、液体収納容器内の液体を効率よく導出することができる。尚、図1に示す供給管4は、液体導出口2と空気導入口3の2流路を一体で備えているが、液体導出口2と空気導入口3は別の部材に設けられていてもよい。経路6の先にはダイアフラム8があり、その先にバルブと、液体を吐出する液体吐出ヘッド5がある。液体吐出ヘッド5は、エネルギー発生素子や吐出口を有し、エネルギー発生素子が発生したエネルギーによって吐出口から液体を吐出し、紙等の記録媒体に液体を着弾させることで記録を行う。
図2を用いて、液体収納容器の説明を行う。まず、図2(a)に、液体収納容器9の分解斜視図を示す。液体収納容器9は、液体を収納する液体収納部を有する筐体10と、液体収納容器の第一の面15に装着されるジョイント部材20とを有する。ジョイント部材20には開口21が開口している。開口21は、第一の面15の供給口17と対応した場所に位置しており、開口21も供給口の一部と見なすことができる。液体収納容器9において、記録装置に装着される際に記録装置側の面となる面(装着面)が、第一の面15である。そしてこの第一の面15と液体収納部を挟んで反対側の面が第二の面16である。第一の面15と第二の面16とは、下方の面である第三の面11と、上方の面である第四の面12と、側面である第五の面13及び第六の面14によってつながっている。
図2(a)のA−A´における液体収納容器の断面図を図2(b)に示す。上述のように、液体収納容器は、装着方向の前面となる第一の面15と、その反対側の第二の面16、さらに第三の面11と第四の面12とを有する。第一の面15には供給口17が開口している。供給口17は、記録装置に装着される際に、重力方向における第一の面15の中心線よりも重力方向下方の位置に開口している。供給口17は、供給管が挿入される方向に沿って延在している。液体収納容器9の筐体10の内部には液体収納部18がある。液体収納部18は、内部に液体を収納しており、液体収納容器を記録装置に装着した際に重力方向下方の面となる底面22を有する。底面22は、第一の面15側から第二の面16側に向かって重力方向下方に傾斜する第一の傾斜面23と、第一の面15側から第二の面16側に向かって重力方向上方に傾斜する第二の傾斜面24とを、第一の面15側からこの順に有する。即ち、底面22の中で、第一の傾斜面23は第二の傾斜面24よりも第一の面15に近い位置にある。第一の面15と第二の面16とは間隙をあけて配置されている。図2(b)では、第一の傾斜面23が第一の面15から底面に向かって傾斜している状態が示されているが、第一の傾斜面23は第二の傾斜面24よりも第一の面15側にあればよい。例えば、第一の面15から底面と平行方向な面が延びていて、その先に、即ち第一の面15とは離間して第一の傾斜面23が配置されていてもよい。また、第二の傾斜面24についても同様であり、図2(b)に示すように第二の面16から離間して形成されていてもよいし、第二の面16から底面に向かって傾斜する面であってもよい。図2(b)では、底面22のうち第二の傾斜面24よりも第二の面16に近い側に、第一の面15側から第二の面16側に向かって重力方向上方に傾斜する第三の傾斜面25がある。
第一の面15において、供給口17の部分にはジョイント部材20が溶着されている。ジョイント部材20には供給口ともなる開口21が開口している。開口21には、弾性部材26、バルブ27、及びシール部材28がこの順に組み込まれている。液体収納容器が記録装置に装着されていない状態では、バルブ27は弾性部材26によってシール部材28側に付勢されるよう配置されており、開口21の先端にはシール部材28を固定するためキャップ29が取り付けられる。シール部材28は柔軟性を有するものであり、例えばブチルゴム等のゴム材や、エラストマー等の熱可塑性樹脂材で形成する。シール部材28は中心が開口した環状の形状となっており、その開口はバルブ27が当接することでシールされる。さらに、シール部材28の外周をジョイント部材20の内壁に当接させることで、シール部材28とジョイント部材20の気密性が確保できる。シール部材28における筐体10内部側の開口周縁には、リップ状の突起30が有り、この突起30にバルブ27を当接させることで密着性を向上させる。このようにシール部材28の外周をジョイント部材20と密着させ、シール部材28の開口をバルブ27と密着させることで、液体収納容器内部からの液体漏れや液体の蒸発による液体の変性を抑制することができる。尚、ここでは、弾性部材26としてばねを用いた弁ばね方式で供給口を開閉する例を示したが、例えば供給口をゴム栓等で塞ぐ方式であっても、記録装置に装着していないときに供給口17をシールし、記録装置に装着した時に開放するものであればよい。
液体収納容器の液体収納部では、例えば長時間の放置によって液体中に色材等が沈殿する場合がある。特に色材が顔料であり、液体が顔料を含有している場合、液体内で沈殿が発生しやすい。図2(c)に、液体収納部の内部で色材が沈殿した様子を模式的に示す。ここでは模式的に液体が三段階の層に分離した様子を示す。底面に近い側の領域31では、色材が沈殿して溜まりやすくなっているので、色材濃度の高い領域となっている。その上方の領域32では色材は平均的な濃度であり、最も上面に近い側の領域33では、色材濃度の低い領域となっている。このような状態で液体収納容器から液体吐出ヘッドに液体を供給して記録を行うと、形成する画像や文字にムラが発生する。例えば、初期に形成した画像の色は濃い一方、後半に形成した画像の色は薄くなることがある。このようなことを抑制する為にも、液体収納部では液体の撹拌を行う必要がある。
図3に、液体収納容器の液体収納部を撹拌する様子を示す。記録装置1は、液体収納容器内の液体を吸引する、または液体収納容器内に液体を吹き込む為のダイアフラム8を有する。ダイアフラム8と液体吐出ヘッド5との間にはバルブが設けられ、撹拌時にはこのバルブが閉じられる。
まず、記録装置によってダイアフラム8を伸ばしたとき、図3(a)に示すように、供給口17から、液体収納部の内部の液体が経路6を介してダイアフラム8内に吸引される。このとき、供給口17が第一の面15の重力方向下方に開口していると、色材等が沈殿しやすい底面側の液体を吸引することができる。よって、供給口17は、第一の面15のうち重力方向で中心よりも下側に開口していることが好ましい。
続いて、記録装置によってダイアフラム8が縮められると、図3(b)に示すように、吸引された液体が経路6を介して液体収納部側に逆流し、供給口17より液体収納部の内部に吹き込まれる。この液体収納部内からの液体の吸引と、その逆の液体収納部内への液体の吹き込みによって、液体収納部の底面側に溜まった色材等を液体収納部内の全域にまき散らし、液体の撹拌を行う。即ち、液体収納部の液体は、記録装置の内部に一旦吸引され、その後で液体収納部に戻されることで、再び液体収納部に供給される。このようにして、液体の撹拌を行う。
次に、液体の撹拌と底面の傾斜面との関係を、図4を用いて説明する。液体は、供給管4の開口34から液体収納部内に吹き込まれる。供給管4の開口34は、重力方向下向きに開口していることが好ましい。液体収納部内に吹き込まれた液体は、第一の傾斜面23によって、重力方向下方に、かつ第一の面15から第二の面16に向かって勢いよく流れる。即ち、供給口17から供給管4を介して液体収納部に供給される液体は、まず、第一の傾斜面23に沿って流れる。この点から、液体収納部に挿入された供給管4の開口34は、第一の傾斜面23と対向するように、第一の傾斜面23の重力方向上方に開口していることが好ましい。言い換えれば、第一の傾斜面23は、記録装置が有する供給管4が供給口17に挿入された際に、供給管4の開口34と対向する位置にあることが好ましい。第二の面16に向かって流れた液体は、次に第二の傾斜面24によって、重力方向上方に、かつ第二の面16に向かって吹き上がる。即ち、第一の傾斜面23に沿って流れた液体は、そのまま第二の面16に向かって流れ、第二の傾斜面24に到達すると第二の傾斜面24に沿って重力方向上方に流れる。このとき、流れる液体は色材等が多く沈殿した領域31を通って吹き上がるので、領域31の液体を液体収納部の全体に拡散することができる。このように、本発明の液体収納部は、底面に第一の傾斜面23と第二の傾斜面24とを第一の面15側からこの順に有することで、内部の液体を良好に撹拌することができる。
図5を用い、第一の傾斜面23及び第二の傾斜面24についてさらに詳細に説明を行う。
第一の傾斜面23は、液体収納部に吹き込まれる液体を、重力方向下方に、かつ第一の面15から第二の面16に向かって勢いを付けて流す役割を果たす。液体収納部の内部において、第一の傾斜面23と水平面とがなす角度θ1が大きすぎると、液体収納部に吹き込まれた液体と第一の傾斜面23とが接触しづらくなり、上述の勢いが付きにくくなる。この点から、角度θ1は45°以下とすることが好ましい。一方で、角度θ1が小さすぎると、液体の第二の面16に向かう勢いが付きづらくなる。この点から、角度θ1は10°以上とすることが好ましい。尚、第一の面15には、供給口17が開口している。供給口17は、第一の面15を貫通するように延在している。この供給口17の延在方向は、水平面と平行である。即ち、角度θ1は、第一の傾斜面23と、供給口17の延在方向に平行な面とがなす角度ともいえる。
第二の傾斜面24は、第一の傾斜面23によって第二の面16側に向かって流れてくる液体を、重力方向上方に、かつ再度第二の面16に向かう方向に吹き上げる役割を果たす。この液体の流れにより、濃度の高い領域31の液体を、平均的な濃度の領域32、さらには低い濃度の領域33に侵入させ、撹拌を行うことができる。また、領域33に到達すると、吹き上げられた液体が図4に示すように第一の面15及び第二の面16の方向に分散する。この結果、液体収納部の全体で液体が撹拌される。液体収納部の内部において、第二の傾斜面24と鉛直面(水平面に垂直な方向な面、即ち重力方向に平行な面)とがなす角度θ2が小さすぎると、第一の傾斜面23から流れてくる液体に対して、第二の傾斜面24が垂直に近い方向に立つことになる。よって、液体の流れが第二の傾斜面24に衝突して失速、分散し、液体を重力方向上方に吹き上げたり、第二の面側に移動させたりすることが難しくなる。この点から、角度θ2は30°以上とすることが好ましい。一方で、角度θ2が大きすぎると、第二の面16側への流れは確保できるが、重力方向上方に吹き上げることが難しくなる。この点から、角度θ2は60°以下とすることが好ましい。尚、供給口17の延在方向に対して垂直な面は、鉛直面と平行である。即ち、角度θ2は、第二の傾斜面24と、供給口17の延在方向に対して垂直な面とがなす角度ともいえる。
尚、第一の傾斜面23や第二の傾斜面24は理想的には直線的に延在しており、上述の説明もこれを前提としているが、実際には湾曲していることも想定される。例えば筐体10がブロー成形で製造されている場合には、第二の傾斜面24は湾曲しやすい。この場合、第二の傾斜面24と鉛直面とがなす角度θ2は、第二の傾斜面24の重力方向の高さを「h」とし、第二の傾斜面の重力方向の高さの中間点、即ち「h/2」の点における第二の傾斜面24の接線が鉛直面となす角度である。第一の傾斜面23と水平面とがなす角度θ1も同様に考え、第一の傾斜面23が湾曲している場合、角度θ1は第一の傾斜面の重力方向の高さの中間点における第一の傾斜面の接線が水平面となす角度である。
上述のように、第二の傾斜面24は、第一の傾斜面23によって第二の面16に向かって流れてくる液体を、重力方向上方に、かつ第二の面16に向けて吹き上げる役割を果たすものである。吹き上がった液体は、第一の面15と第二の面16の方向に分散し、液体収納部の内部全体の撹拌を行う。ここで、図6に示すように、吹き上げられる液体は、第二の傾斜面24によって第二の面16方向の成分を有しており、吹き上げられた後は第一の面側よりも第二の面側に流れやすい性質を持つ。このことを考慮し、液体収納部の内部の全体を良好に撹拌する為に、液体が液面35に到達する位置36を、第一の面15と第二の面16の中間点か、もしくは中間点よりも第一の面15側の位置とすることが好ましい。即ち、第一の面15と第二の面16との水平方向の距離を「L」とすると、液体が液面に到達する位置36は、第一の面15から「L/2」の位置か、もしくは「L/2」の位置よりも第一の面15に近い位置であることが好ましい。図6では、位置36が「L/2」の位置、即ち中間点に位置している様子を示している。
ここで、図6に示すように、第一の面15から第二の傾斜面24の重力方向で最下方の点37までの水平方向の距離を「X」とし、点37から液面35までの重力方向の高さを「H」とする。このとき、「X」を「(L/2)/2−Htanθ2≦X≦L/2−Htanθ2」とすることで、上述のように、位置36を第一の面15から「L/2」の位置か、もしくは「L/2」の位置よりも第一の面15に近い位置とすることができる。
尚、吹き上げられた液体は、必ずしも液面35にまで到達する必要はない。液体が液面35にまで到達せず、例えば液面35の重力方向やや下方で留まる場合、液体が液面に到達する位置36とは、第二の傾斜面24から吹き上げられた液体がそのまま直線的に液面35に到達したと仮定した位置と考える。
図4に示す液体収納部において、図中「A」で示す方向から供給管4を見た図を図7に示す。図7(a)に示すように、供給管4の開口34からは液体が吹き込まれる。吹き込まれた液体は第一の傾斜面23にあたり、第二の傾斜面に向かって流れる。ここで、図7(b)に示すように、第一の傾斜面は側壁38を備えていることが好ましい。側壁38を備えていることで、液体の流れを規制し、第一の傾斜面から第二の傾斜面に向かう流れを高めることができ、撹拌の効率が高まる。
液体収納部を形成する筐体をブロー成形で形成すると、図8に示すように第一の傾斜面23と第二の傾斜面24との間や第二の傾斜面24付近が肉厚となる場合がある。即ち、図8の「t」で示す第三の面11と底面22との間の厚みが厚くなる。この結果、ジョイント部材20と底面22との間の距離「c」が短くなり、液体の流れが弱まる。そこで、図8(b)に示すように、筺体の、第一の傾斜面23と第二の傾斜面24との間の領域の重力方向下方の部分を、第一の面から第二の面に向かって重力方向下方に傾斜させる。これにより、ジョイント部材20と底面22との間の距離「c」を確保し、液体の流れによって良好な撹拌を行うことができる。
また、図2(b)に示すように、液体収納容器は、第一の面15側から第二の面16側に向かって重力方向上方に傾斜する第三の傾斜面25を有することが好ましい。このように傾斜する第三の傾斜面25があると、底面22に沈降する色材等は、第二の面16側から第一の面15側に移動しやすくなる。そうすることで、供給管4から吹き付けられる液体を、色材等が集まった部分になるべく直接当てることができ、結果として撹拌効果を高めることができる。また、第二の傾斜面24は、第三の傾斜面25よりも重力方向下方に位置させることが好ましい。このようにすることで、液体収納部内部のうち第一の面15側に液体を集め、第一の面15に開口する供給口17から液体を良好に使い切ることができる。また、液体の撹拌効率を高めることができる。