以下、本発明の実施の形態について、本発明の画像形成装置をプリンタに適用し、図面を参照して説明する。
まず、構成について説明する。
図1に示すように、本実施の形態の画像形成装置1は、電子写真方式を採用しており、図示下方から、給紙部10、露光部20、作像部30、中間転写部40、二次転写部50、定着部60、排紙部70、両面搬送部80、を記録材搬送プロセンス順に有している。なお、以下の説明においては、特に指定しない限り、記録材の搬送方向を基準として上流、下流と称する。
給紙部10は、画像形成装置1の内部下方に配置している。給紙部10は、引き出し式の給紙カセット11を複数段に配置している。給紙カセット11は、この例では上下二段に配置している。給紙カセット11は、記録紙等のシート状の記録材Pを収納可能としている。
そして、各給紙カセット11の下流端側の上部には、各給紙カセット11に収納した記録材Pを最上位のものから一枚ずつ繰り出して記録材搬送路12に給紙する給紙コロ13を設けている。給紙部10は、最上位の給紙コロ13と二次転写部50との間に、記録材Pの搬送タイミングを調整するレジスト部14を配置している。なお、レジスト部14の具体的な構成や作用は公知であるため、説明は省略する。また、記録材搬送路12に臨むレジスト部14、二次転写部50、定着部60、排紙部70及び各種搬送ローラ15〜18等は、記録材Pをニップして通紙する搬送部を構成している。
露光部20は、最上段の給紙カセット11の上部に配置している。露光部20は、例えば、図示を略すパーソナルコンピュータから送信された画像情報に基づきレーザー光Lを作像部30に照射する。露光部20の構成として、図1では光源から発したレーザー光Lをモータにより回転駆動されるポリゴンミラー21で偏向させながら複数のミラー22等を介して作像部30に照射するもので例示した。しかしこのようなポリゴン走査方式以外にLEDアレイ方式を用いることもできる。
作像部30は、イエロー・シアン・マゼンタ・ブラック(以下、Y・C・M・Kと記す)の各色用のトナー像を生成するための4つの画像形成ユニット31Y・31C・31M・31Kを四連タンデム式に並べて設けている。これらの画像形成ユニット31Y・31C・31M・31Kは互いに異なる色のYトナー・Cトナー・Mトナー・Kトナーを用いるが、それ以外の構成は4色共通である。以下の説明では、Yトナー用の画像形成ユニット31Yを例にとって説明する。また、以下の説明では、説明及び図示の便宜上、特に指定しない限り、各色用で共通の構成等には、Y・C・M・Kの符号を省略して説明及び図示する。
画像形成ユニット31は、図2に示すように、像担持体であるドラム状の感光体32の周囲に、作像プロセス順に、帯電装置33、露光部20(レーザ光L)、現像装置34、ドラムクリーニング装置35、除電装置36、を有する。なお、ドラムクリーニング装置35と除電装置36とは、公知の技術のものを用いているため、ここでは詳細な説明は省略する。
帯電装置33は、図示を略す駆動手段により図2の時計回り方向に回転している感光体32の表面を一様に帯電する(例えば−690V)。図2では感光体32に近接させた帯電ローラ33Aに帯電バイアスを印加することで感光体32の表面を帯電させる方式で図示したが、帯電ブラシ方式やスコロトロン方式を用いても良い。
現像装置34は、第一の搬送スクリュー34A、第二の搬送スクリュー34B、透磁率センサからなるトナー濃度センサ37、現像ローラ38、ドクターブレード39、を有している。
第一の搬送スクリュー34Aと第二の搬送スクリュー34Bとは、例えば、第一の搬送スクリュー34Aを紙面の奥側から手前側、第二の搬送スクリュー34Bを紙面の手前側から奥側へとトナーを撹拌しながら往復搬送する。搬送途中のトナーはトナー濃度センサ37でトナー濃度を検知する。
現像ローラ38は、第二の搬送スクリュー34Bと平行に配置されている。現像ローラ38は、図2において反時計回り方向に回転する非磁性の現像スリーブ38Aと、現像スリーブ38Aに内包された回転しないマグネットローラ38Bと、で構成される。
第二の搬送スクリュー34Bで撹拌搬送されるトナーの一部は、マグネットローラ38Bの磁力により現像スリーブ38Aの表面に汲み上げられる。現像スリーブ38Aには微小な隙間を保持してドクターブレード39が対向して設けられており、汲み上げられたトナーはドクターブレード39を通過する際にその層厚(汲み上げ量)を規制される。
感光体32はレーザー光Lで露光された領域のみ表面電位が低下し(例えば−50V)、静電潜像が形成される。静電潜像は感光体32が回転することで、現像装置34の現像ローラ38と対向する現像領域まで搬送される。
ドクターブレード39を通過したトナーは感光体32と対向する現像領域まで搬送される。現像スリーブ38Aに印加された現像電位(例えば−550V)と感光体32の露光部の表面電位(例えば−50V)との電位差により、現像領域に搬送されたトナー中のYトナーのみが感光体32の露光部のみに付着する。これにより感光体32上にトナー像が形成される。
感光体32に形成されたトナー像は、図1の中間転写部40に中間転写される。中間転写後に感光体32の表面に残留した廃トナーは、ドラムクリーニング装置35が除去する。廃トナーが除去された感光体32は除電装置36により除電され、次の画像形成を行うために帯電装置33へと向かう。
中間転写部40は、シート状の記録材Pに未定着画像を転写するための転写方式がトナー像を担持する中間転写体として中間転写ベルト41を用いた中間転写方式である。中間転写部40は、中間転写ベルト41、ベルトクリーニングユニット42、一次転写ローラ43Y・43C・43M・43K、二次転対向ローラ44、駆動ローラ45、残トナー検知部46、などで構成される。なお、中間転写ベルト41の上方には、各色対応の画像形成ユニット31Y・31C・31M・31Kに補給用トナーを供給する4つのトナーカートリッジ47Y・47C・47M・47Kが設けられている。トナーカートリッジ47内の各色トナーは図示を略す補給経路を経て、図示を略すトナー補給口から画像形成ユニット31Y・31C・31M・31Kに補給される。これらのトナーカートリッジ47は画像形成装置1に対して着脱可能、すなわち、交換可能である。
4つの一次転写ローラ43は、中間転写ベルト41を挟んで、各々対応する色の感光体32との間に一次転写ニップを形成している。一次転写ローラ43は中間転写ベルト41の内側に一次転写バイアスを印加する。一次転写ローラ43と感光体32との電位差により、感光体32上のトナー像が一次転写ニップ部で中間転写ベルト41に転写される。各色の一次転写ニップで、各色のトナー像が中間転写ベルト41に順次転写され、中間転写ベルト41には4色のトナー像を重ね合わせた4色トナー像が形成される。
二次転対向ローラ44は二次転写部50の二次転写ローラ51と対向する位置に設けられ、両者が中間転写ベルト41を挟み込むことで二次転写ニップを形成している。中間転写ベルト41に形成された4色トナー像のタイミングにあわせて、レジスト部14が記録紙Pを二次転写ニップに搬送する。二次転対向ローラ44と二次転写ローラ51との間には二次転写バイアスが印加されており、その力で中間転写ベルト41上の4色トナー像は転写紙Pへと二次転写される。二次転写ニップを通過後に中間転写ベルト41に残留した廃トナーはベルトクリーニングユニット42が除去する。
二次転写部50は、記録材搬送路12の経路上に二次転写ローラ51を配置しており、中間転写ベルト41に形成した一次転写画像であるトナー像を記録材Pに転写する。中間転写ベルト41は駆動ローラ45により図1の反時計回りに回転する。
定着部60は、外部加熱方式であり、図3及び図4に示すように、加圧部材としての加圧ローラ61と、加圧ローラ61との間で定着ニップ部SNを形成する定着部材としての定着ローラ62と、加熱部材としてのサーマルヒータ群63と、を有している。
加圧ローラ61は、外径が40mmで厚みが2mmの鉄製の芯金61aと、この芯金61aの表面に被覆された弾性層61bを有している。弾性層61bは、シリコンゴムで形成されており厚みは5mmである。弾性層61bの表面には、離型性を高めるために厚みが40μm程度のフッ素樹脂層を形成するのが望ましい。加圧ローラ61は図示を略す付勢手段により定着ローラ62に圧接されている。
定着ローラ62は、外径が40mmで厚みが1mmのアルミニウム製の芯金63Aと、この芯金63Aの表面に被覆された断熱層62bと、を有している。
断熱層62bは、シリコンゴムで形成されており厚みは3mmである。断熱層62bは、その断熱機能をより高めるために、熱の逃げが少ない発泡シリコンゴム等で形成してもよい。断熱層62bの表層には、ニッケルからなる良熱伝導層62cが形成されている。
良熱伝導層62cは、ニッケルに限らず、ステンレスなどの鉄系合金、アルミニウムや銅などの金属系、グラファイトシート等、熱伝導性が少なくとも断熱層62bに高ければよい。良熱伝導層62cは、サーマルヒータ群63の発熱むらによる定着ローラ62の表面温度の局部的な温度むらを低減する。また、良熱伝導層62cの機能によって、サーマルヒータ群63が加熱する領域よりもやや広い領域に温度が上昇するため、若干の画像とのずれを補償することができるという利点もある。
サーマルヒータ群63は、図示を略す付勢手段により定着ローラ62の表面に押し当てられている。サーマルヒータ群63は、電源64から電源供給されて加熱する。サーマルヒータ群63は、記録材Pの搬送方向と直行する幅方向に沿って配置された複数(例えば、7つ)のヒータ63A〜63Gから加熱領域が構成されており、各ヒータ63A〜63Gは独立して定着ローラ62を対応領域を加熱するようになっている。
サーマルヒータ群63は、良熱伝導層62cの機能によって、各ヒータ63A〜63Gの大きさや間隔等の設定において設計自由度が大きいという利点がある。また、定着ローラ62の耐久性を高め、離型性を確保するために、断熱層62bの表層にPFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5〜30μmの離型層64dが形成されている。
なお、サーマルヒータ群63は、定着ローラ62の表面に接触させて加熱する構成としたが、外部加熱部材をコイルとインバータとで構成し、IH方式による非接触加熱方式としてもよい。IH方式では、加熱用のコイルを多数配置する構成でも、もしくは、磁束をキャンセルする部材を多数は位置する事で加熱領域や加熱量を制御する構成にしても構わない。
定着部60は、定着ローラ62の回転方向を基準として、定着ローラ62のニップ部SNよりも下流でサーマルヒータ群63よりも上流に定着ローラ62の表面温度を検知する温度検知手段としてのサーミスタ65を有している。定着部60は、サーマルヒータ群63の温度を検知するサーマルヒータ群63の温度検知手段としてのサーミスタ66を有している。
サーミスタ65とサーミスタ66とで検知した温度情報のデータは加熱制御手段67に入力される。加熱制御手段67は、その温度情報データに基づいて電源64を制御する。
加熱制御手段67は、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェース等を包含するマイクロコンピュータを意味する。加熱制御手段67は、記録材Pに画像を形成する際のトナー像を形成するための露光データとなる画像情報に基づいて、サーマルヒータ群63の各ヒータ63A〜63Gの加熱割合を変化させる。また、加熱制御手段67は、残トナー検知部46による残トナー検知結果に基づいて、各ヒータ63A〜63Gの加熱割合を変化させる。
また、本実施の形態の定着部60は、上述した外部加熱方式に限らず、図5及び図6、或いは、図7に示すように、内部加熱方式の定着部60に適用することができる。なお、図5〜図7において、上記実施の形態と同一の構成又は機能的に同一の構成には、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
図5及び図6に示した定着部60では、ローラ方式の定着ローラ62に変えてベルト方式の定着ベルト162を用いている。サーマルヒータ群63は、図示を略す板状基体等に抵抗発熱体63A〜63Jを形成したサーマルヘッドやセラミックヒータ等が用いられている。サーマルヒータ群63は、定着ベルト162の内部に配置してその熱で定着ベルト162の温度を上昇させることで、ニップ部SNに搬送される未定着画像を加熱して定着させる。
サーマルヒータ群63は、記録材Pの搬送方向と直交する幅方向に複数分割された加熱領域を抵抗発熱体63A〜63Jで形成しており、各抵抗発熱体63A〜63Jは独立して加熱制御手段67によって加熱制御される。
定着ベルト162は、外径が40mmで厚みが40μmのSUS製の基体163Aと、基体163Aの表層に被覆された弾性層162bと、弾性層162bの表層に被覆された離型層162cと、を有している。
弾性層62bは、シリコンゴムで形成されており厚みは100μmである。離型層162cは、耐久性を高めるとともに離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂によって厚みが5〜50μmに形成されている。また、基体163Aはポリイミドとしてもよい。
定着ベルト162の内部には、ニップ部SNに対応して押圧部材68が配置され、定着ベルト162のニップ部SNにおける保形性を確保している。定着ベルト162の内部には、サーマルヒータ群63、サーミスタ66及び押圧部材68を避けるように、支持部材69Aが配置されている。支持部材69Aは、図示を略す外部部材と接続されて定着ベルト162を支持している。
図7に示した定着部60では、押圧部材68を廃止して、サーマルヒータ群63を押圧部材として兼用するように、ニップ部SNに対応して配置したものである。なお、この場合、支持部材69Bは、サーマルヒータ群63とサーミスタ66とを避けるように配置される。
排紙部70は、定着部60の下流で記録材搬送路12の経路終端に配置されている。排紙部70は、画像形成装置1に設けられた排紙口71から画像定着済みの記録材Pを集積トレイ部72に向けて排紙する一対のローラから構成している。
両面搬送部80は、記録材Pの両面に画像を形成する場合に用いられ、排紙部70で排紙方向に記録材Pを搬送した後、排紙部70を逆転させて記録材Pを反転させつつレジスト部14よりも上流側の記録材搬送路12に搬送するようになっている。両面搬送部80は、このための一対の搬送ローラ81,82,83を適宜配置している。両面搬送部80は、給紙カセット11とは別に、記録材(図示せず)を画像形成装置1に供給可能とするように収納する手差トレイ84を有する。
手差トレイ84に収納した記録材は、給紙コロ85と一対の搬送ローラ86とによって、最上位のものから一枚ずつ繰り出して記録材搬送路12に給紙する。なお、搬送ローラ86の駆動側のローラは、搬送ローラ83とで共有している。
次に、上述した加熱制御手段67によるサーマルヒータ群63の各ヒータ63A〜63Gの加熱割合の制御例を説明する。なお、以下の説明では、先にパーソナルコンピュータ等から出力された画像情報に基づく通常のサーマルヒータ群63の各ヒータ63A〜63Gの加熱割合の制御例を説明する。
図8(a)に示すように、画像形成処理後の記録材Pに、その搬送方向の下流端側から順に、画像領域a、非画像領域b、画像領域cが存在する画像形成パターンとなる画像情報が入力されたとする。
ここで、画像領域aと画像領域cとは、定着対象のトナー像が存在するので定着が必要となるが、非画像領域bでは定着対象のトナー像が存在しないので定着の必要はない。
加熱制御手段67は、このような画像形成パターンの画像情報が入力された場合、非画像領域bに対応する定着ローラ62の領域の温度が、画像領域a,cに対応する定着ローラ62の領域の温度よりも低くなるようにサーマルヒータ群63を制御する。この際、画像領域a,c又は非画像領域bに対応するとは、定着ローラ62が密着する位置という意味であり、以下、適宜密着とも表現する。
加熱制御手段67は、画像領域aに対応する領域では、サーマルヒータ群63の全域、すなわち、定着ローラ62の全域の加熱状態がトナー定着温度となるように、電源64に商用電源からの電力供給指令を出力する。
一方、加熱制御手段67は、非画像領域bに対応する領域では、サーマルヒータ群63の全域、すなわち、定着ローラ62の全域の加熱状態がトナー定着温度以下となるように、電源64に電力供給指令を出力する。
そして、加熱制御手段67は、画像領域cに対応する領域では、再び、サーマルヒータ群63の全域、すなわち、定着ローラ62の全域の加熱状態がトナー定着温度となるように、電源64に電力供給指令を出力する。
同様に、図8(b)に示すように、画像形成処理後の記録材Pに、その搬送方向の先端側から順に、画像領域a、非画像領域b'が存在する画像形成パターンとなる画像情報が入力されたとする。
ここで、画像領域aは、定着対象のトナー像が存在するので定着が必要となるが、非画像領域b'では定着対象のトナー像が存在しないので定着の必要はない。
加熱制御手段67は、このような画像形成パターンの画像情報が入力された場合、非画像領域b'に対応する定着ローラ62の領域の温度が、画像領域aに対応する定着ローラ62の領域の温度よりも低くなるようにサーマルヒータ群63を制御する。
すなわち、加熱制御手段67は、画像領域aに対応する領域では、サーマルヒータ群63の全域においてトナー定着温度が得られるように、電源64に電力供給指令を出力する。
一方、加熱制御手段67は、非画像領域b'に対応する領域では、サーマルヒータ群63の全域においてトナー定着温度以下となるように、電源64に電力供給指令を出力する。なお、このような場合、当該記録材Pに対する加熱は終了するため、次に定着処理する記録材Pが存在する場合には、その画像情報に基づいて同様の制御を実行する。また、次の定着処理する記録材Pが存在しない場合には、所定の後処理モード、例えば、待機モードに入るためのカウントの開始等、を図示しないメインの制御部等が実行する。
そして、電源64による実際の供給電力は、図8(a),(b)において斜線で示す加熱領域及びタイミング、すなわち、記録材Pの画像領域a,cが定着部60のニップ部SNに通紙されるタイミングに先んじて予備的に定着ローラ62を加熱するように投入する。なお、ここでの加熱領域とは、上述した記録材Pの搬送方向と直交する幅方向に沿う領域を示す。また、タイミングとは、記録材Pの搬送方向(図示矢印参照)に沿う長さ、すなわち、時間を意味する。
この予備加熱領域は、主にサーマルヒータ群63の発熱特性、例えば、記録材Pの幅方向に対応する発熱長さ、各ヒータ63A〜63Gの材質、大きさ等を考慮した必要な昇温時間に応じて設定する。なお、予備加熱領域は省エネの観点からはできるだけ小さいことが望ましい。
このため、図9に示すように、加熱制御手段67は、非画像領域bでは、画像領域a,a'に対応する第一の目標温度であるトナー定着温度よりも低いが、室温よりは所定温度以上の第二の目標温度に定着ローラ62の温度を保つように制御することが望ましい。
このように、非画像領域bに対応する領域でも給電は行われるが、供給電力は削減される。すなわち、図9の領域Tの供給電力よりも領域T'での供給電力が小さくなるため、省エネルギー化が可能となる。
また、図10(a)に示すように、画像形成処理後の記録材Pに、その搬送方向の略全域に画像領域dが存在するとともに、その画像が記録紙Pの幅方向において、画像領域eと非画像領域fとに分かれた画像形成パターンとなる画像情報が入力されたとする。なお、記録紙Pの幅方向の画像領域eと非画像領域fとは、例えば、記録材Pの余白は含まない画像形成領域を対象とする。
ここで、画像領域eは、定着対象のトナー像が存在するので定着が必要となるが、非画像領域fでは定着対象のトナー像が存在しないので定着の必要はない。
加熱制御手段67は、このような画像形成パターンの画像情報が入力された場合、非画像領域fに対応する定着ローラ62の領域の温度が、画像領域eに対応する定着ローラ62の領域の温度よりも低くなるようにサーマルヒータ群63を制御する。
例えば、図4に示したように、7つのヒータ63A〜63Gからサーマルヒータ群63が構成されていたとする。この場合、加熱制御手段67は、非画像領域fに一致するヒータ63E〜63Gの加熱温度が、画像領域eに一致するヒータ63A〜63Dの加熱温度よりも低くなるようにサーマルヒータ群63を制御する。
すなわち、加熱制御手段67は、画像領域eに一致するヒータ63A〜63Dに対して、そのヒータ63A〜63Dと対向する定着ローラ62の領域がトナー定着温度となるように、電源64に電力供給指令を出力する。
一方、加熱制御手段67は、非画像領域fに一致するヒータ63E〜63Gに対して、そのヒータ63E〜63Gと対向する定着ローラ62の領域がトナー定着温度以下となるように、電源64に電力供給指令を出力する。
同様に、図10(b)に示すように、画像形成処理後の記録材Pには、その搬送方向の先端側から順に、画像領域a,d'が存在する画像形成パターンとなる画像情報が入力されたとする。また、画像形成処理後の記録材Pには、画像領域aでは記録材Pの幅方向全域である画像領域e,fが存在し、画像領域d'では記録材Pの幅方向において画像領域eと非画像領域fとが存在する画像形成パターンとなる画像情報が入力されたとする。
ここで、画像領域aは、定着対象のトナー像が存在するので定着が必要となるが、非画像領域b'では定着対象のトナー像が存在しないので定着の必要はない。
加熱制御手段67は、このような画像形成パターンの画像情報が入力された場合、非画像領域b'に一致する定着ローラ62の領域の温度が、画像領域aに一致する定着ローラ62の領域の温度よりも低くなるようにサーマルヒータ群63を制御する。
すなわち、加熱制御手段67は、画像領域aに一致する領域では、サーマルヒータ群63に対して、その全領域と対向する定着ローラ62の全領域がトナー定着温度となるように、電源64に電力供給指令を出力する。
一方、加熱制御手段67は、画像領域d'においては、非画像領域fに対応する領域では、サーマルヒータ群63に対して、その全領域と対向する定着ローラ62の全領域がトナー定着温度以下となるように、電源64に電力供給指令を出力する。なお、このような場合、当該記録材Pに対する加熱は終了するため、次に定着処理する記録材Pが存在する場合には、その画像情報に基づいて同様の制御を実行する。また、次の定着処理する記録材Pが存在しない場合には、所定の後処理モード、例えば、待機モードに入るためのカウントの開始等、を図示しないメインの制御部等が実行する。
電源64からの供給電力は、図10において斜線で示す加熱領域及びタイミング、すなわち、記録材Pの画像領域dと画像領域aとが定着部60のニップ部SNに通紙されるタイミングに先んじて予備的に定着ローラ62を加熱するように投入する。なお、ここでの加熱領域とは、上述した記録材Pの搬送方向と直交する幅方向に沿う領域を示す。また、タイミングとは、記録材Pの搬送方向(図示矢印参照)に沿う長さ、すなわち、時間を意味する。
この予備加熱領域は、主にサーマルヒータ群63の発熱特性、例えば、記録材Pの幅方向に対応する発熱長さ、各ヒータ63A〜63Gの材質、大きさ等を考慮した必要な昇温時間に応じて設定する。なお、予備加熱領域は省エネの観点からはできるだけ小さいことが望ましい。
(実施例1)
次に、本実施の形態における残トナー検知部46の実施例1の具体的な構成を説明する。図11に示すように、残トナー検知部46は、中間転写ベルト41の回動移動方向、すなわち、記録材Pの搬送方向に対して直交する幅方向の全域にまたがるレール46Aと、レール46Aに沿って変位可能なセンサ本体46Bと、を備えている。
センサ本体46Bは、図12に示すように、発光素子46Cと受光素子46Dとを備えた走査型光学式センサである。
センサ本体46Bは、図13に示すように、中間転写ベルト41の表面に残トナーtによる縦黒スジが発生している場合は、縦黒スジの発生部分を横切った時間のセンサ出力Sがセンサ出力閾値S'以下に落ち込む。すなわち、中間転写ベルト41に残トナーtが付着している部分は、残トナーtに検出光が吸収されるために、受光素子46Dにおける出力値が低くなる。このとき、センサ本体46Bのセンサ出力閾値S'は、残トナーtの付着発生の誤検知を防ぐため、全トナーtが付着していない場合に中間転写ベルト41の地肌部を走査する場合のノイズ(ばらつき)と比較してやや小さいレベルに設定している。したがって、加熱制御手段67は、センサ出力閾値S'を下回った場合のみ、縦黒スジ発生と判定する。
次に、上述した加熱制御手段67による残トナー検知部46による残トナー検知結果に基づく各ヒータ63A〜63Gの加熱割合の変化制御例を説明する。なお、以下の説明においては、ドラムクリーニング装置35のクリーニングブレード35Aの磨滅等に起因する縦黒スジの検出を例に説明する。
このような黒縦スジは、感光体32の一次転写残トナーをクリーニングブレード35Aで除去する際、クリーニングブレード35Aの磨滅によって十分に一次転写残トナーを除去することができなかった場合などに発生する。
すなわち、感光体32と接触するクリーニングブレード35Aに磨滅等が発生していると、その部分のトナーがスジ状に感光体32の表面に残ってしまう。その除去しきれなかったスジ状の一次転写残トナーは、その後の作像プロセスによって帯電された場合には、中間転写ベルト41への一次転写後、記録材Pにそのまま二次転写され易い。
そこで、加熱制御手段67は、例えば、印刷動作を開始する前に残トナー検知を行う。この際、二次転写ローラ51は中間転写ベルト41から離間している状態で、特に紙間に対応する非印刷画像領域Wにおける縦黒スジ状の残トナーを検出するため、紙間検知パターンを中間転写ベルト41に転写する。
紙間検知パターンは、例えば、前回の画像情報に対する画像形成処理時において記録材P1及び次の記録材P2に対応した画像領域の紙間に相当する非画像領域Wに転写する。また、紙間検知パターンを出力する時の現像バイアス、帯電バイアスは、通常の印刷動作時と同等の値を印加させる。そして、紙間検知パターンをセンサ本体46Bを支持しているレール46Aの対向位置にまで移動させる。
センサ本体46Bは、残トナー検知を開始する前は、中間転写ベルト41の片側の端部に位置している。加熱制御手段67は、紙間検知パターンがセンサ本体46Bの検出位置に達すると、所定量のパワーで発光しながら主走査方向に走査させ、もう片側の端部にまで移動させる。
加熱制御手段67は、図14に示すように、印刷動作(ジョブ)が終了した時、又は印刷動作を開始する前において、紙間検知パターンを作像する(ステップS1)。次に、加熱制御手段67は、その紙間検知パターンがレール46Aの下方の対向する位置にまで中間転写ベルト41を回動移動させる(ステップS2)。この際、センサ本体46Bは、レール46Aの片側であって、紙間検知パターンと対向する位置側に移動しているのが好ましい。
次に、加熱制御手段67は、センサ本体46Bの発光素子46Cを発光させつつ(ステップS3)、センサ本体46Bを主走査方向に移動させる(ステップS4)。
そして、加熱制御手段67は、センサ本体46Bがレール46Aの他端に達すると発光素子46Cの発光を終了させ(ステップS5)た後、紙間検知パターンをベルトクリーニングユニット42によりクリーニングする(ステップS6)。
さらに、加熱制御手段67は、センサ本体46Bのセンサ出力値Sを、センサ出力閾値S'とで比較する(ステップS7)。加熱制御手段67は、その比較結果が、S<S'のとき(Yes)、残トナーtによる縦黒スジが発生していると判定し、例えば、画像形成装置1の図示しない操作パネル部等に縦黒スジが発生している旨を表示する(ステップS8)。また、加熱制御手段67は、その比較結果が、S<S'でないとき(No)、残トナーtによる縦黒スジが発生していない正常状態であると判定し、このルーチンを終了する。
さらに、加熱制御手段67は、ステップS7で黒スジ発生を検知した場合、ステップS8で黒スジ発生通知をしたうえで、二次転写ローラ51を中間転写ベルト41に圧接させ、実際の画像形成処理を実行する(ステップS9)。
ここで、加熱制御手段67は、画像情報に基づく一次転写等の通常の画像形成処理を実行するとともに、例えば、上述した非画像領域の有り無しにかかわらず、サーマルヒータ群63の主走査方向全域を加熱する(ステップS10)。
すなわち、サーマルヒータ群63の全域を加熱して記録材Pの全面を定着するように切り替えることで、残トナーに起因する記録材Pの非画像領域に付着した未定着トナーを定着させる(ステップS11)。
これにより、消費電力は増加してしまうものの、記録材Pに残トナーに起因する未定着のままのトナーを記録材Pに定着させれば、紛体を他の記録材Pや作業者等に付着させないようにすることができる。
(実施例2)
次に、本実施の形態における残トナー検知部46の実施例2の具体的な構成を説明する。図15に示すように、残トナー検知部46は、中間転写ベルト41の回動移動方向、すなわち、記録材Pの搬送方向に対して直交する幅方向の全域にまたがるCIS(Contact Image Sensor:密着イメージセンサ方式)等のラインセンサが用いられている。
残トナー検知部46であるラインセンサの出力は、実質的に図13に示したものと同じ結果である。ただし、この実施例2においては、実施例1のセンサ本体46Bのように走査のための移動は不要となり、残トナーtの検知時間を短くすることができ、例えば、印刷動作以外のお待たせ時間(ダウンタイム)を短くすることができる。
また、走査型光学センサであるセンサ本体46Bは、ある程度の長さで形成される縦黒スジのような異常画像等の残トナーtは検知できるが、時間的、空間的にランダムに発生する可能性のあるトナー落ちやベタチリ等の残トナーtは見逃してしまう虞がある。これに対し、残トナー検知部46にラインセンサを用いた場合、このような不具合を解消することができる。
この際、図16に示すように、点状に発生するトナー落ち等による残トナーが発生した場合、ラインセンサである残トナー検知部46を用いれば、走査型光学センサを用いた場合に比べて検出精度が高く、確実に検出することができる。
そして、図16に示すように、その残トナーを転写材Pに定着させる際、その残トナーの定着位置が非画像領域bに対応する領域であった場合には、上述した全域加熱ではなく、対応するヒータ63F,63Gのみを加熱して転写材Pに定着させることも可能となる。
ここで、中間転写ベルト41における残トナーの検出位置は、ラインセンサである残トナー検知部46の検出番地で特定することができるので、残トナー検知部46の各番地とヒータ63A〜63Jとを対応付けしておけば、容易に部分加熱を行うことができる。
このように、ラインセンサである残トナー検知部46では、印刷動作が終了した時又は印刷動作を開始する前だけでなく、印刷動作中においても紙間検知パターンを中間転写ベルト41に転写することなく残トナー検知を行うことができる。
また、ラインセンサである残トナー検知部46を用いて残トナーtの付着を検知して、画像領域内で画像情報と比較することで、ランダムに発生する可能性のある非画像領域でのトナー落ちやベタチリ等に起因する残トナーを確実に検知することができる。
具体的には、加熱制御手段67は、印刷動作中を含めて中間転写ベルト41が回動移動していることを要件として、ラインセンサである残トナー検知部46の作動を開始する(ステップS21)。
そして、加熱制御手段67は、制御周期(T)毎に、ラインセンサである残トナー検知部46が中間転写ベルト41から反射率を取得している場所が非印刷画像領域Wに対応する位置なのかどうかを判定する(ステップS22)。
次に、加熱制御手段67は、非印刷画像領域Wではなかった場合(No)、ラインセンサである残トナー検知部46が中間転写ベルト41から反射率を取得している場所が画像情報に基づいて印刷画像領域又は画像領域であるかを判定する(ステップS23)。
加熱制御手段67は、ステップS22による判定結果が非印刷画像領域Wである場合(Yes)、ステップS23による判定結果が画像領域ではない場合(No)、センサ出力値Sとセンサ出力閾値S'との比較を行う(ステップS24)。
加熱制御手段67は、その比較結果がS<S'のとき(Yes)、非印刷画像領域Wで残トナーtが発生したと判定する。ここで、加熱制御手段67は、ラインセンサである残トナー検知部46の主走査方向の位置毎、すなわち、番地毎に実施するため、中間転写ベルト41の幅方向(主走査方向)の残トナーtの位置を容易に特定することができる(ステップS25)。
したがって、加熱制御手段67は、その位置に該当するヒータ63A〜63Jを特定し(ステップS26)、次の制御時間以降は該当ヒータ63A〜63Jを常時加熱する制御に切り替える(ステップS27)。
一方、加熱制御手段67は、上記の動作を制御周期T毎に実施し、比較結果がS<S'でないとき(No)、印刷動作の終了とともに検知シーケンスを終了とする。
なお、加熱制御手段67は、印刷画像領域又は画像領域の場合には、残トナーtが発生していても、その残トナーtは記録材Pに定着されるため、ステップS24での判定を不要としているが、その対象は画像領域のみとしてもよい。
そして、加熱制御手段67は、印刷画像領域の非画像領域に残トナーtが発生していた場合には、サーマルヒータ群63の全面加熱に切り替え、次の制御周期時間以降はラインセンサである残トナー検知部46の検知動作を終了しても良い。
このように、サーマルヒータ群63は複数のヒータ63A〜63Jに分割され、画像領域と非画像領域とで、加熱温度や加熱領域を変化させることで、サーマルヒータ群63の加熱のためのエネルギー供給を削減するようにした構成である。加熱制御手段67は、中間転写ベルト41の非画像領域に残トナーtが付着していた場合、定着部60で記録材Pに定着されずに未定着トナーとして付着してしまう際の不具合を解消することができる。具体的には、未定着トナーの紛体によって、記録材搬送路12や記録材Pを汚したり、作業者の衣服等を汚してしまう虞れがあった。このような問題に対して、中間転写ベルト41の残トナーの付着の有無を残トナー検知部46で検知して、その検出結果に基づく情報を、定着部60の運転制御情報として用いることで、確実に未定着トナーのまま記録材Pに付着させないようにすることができる。これにより、従来の画像形成装置よりも大幅な低消費電力化を維持したまま、記録材搬送路12や作業者の衣服等を未定着トナーの紛体で汚すことのない良好な画像を出力することができる。
本実施の形態では、カラーのタンデム方式で各色毎の複数の感光体32を備えた画像形成装置1であっても、残トナーの検知を中間転写ベルト41に対して1つのセンサである残トナー検知部46で行うことにより、検出器の部品コストを削減することができる。また、分割したヒータ63A〜63Jによってエネルギーの省電化に貢献するものでありながら、残トナーの定着を必要最小限のエネルギー消費で行うことができる。
さらに、ラインセンサ方式の残トナー検知部46を用いれば、印刷動作中においても確実に中間転写ベルト41に付着した残トナーを検知することができるので、印刷動作スピードを落とすことなく、残トナーの検知を行うことができる。
また、加熱制御手段67は、非画像領域への残トナー付着の有無の検出結果を、電話回線やインターネット回線等の電気通信回線を用いて出力することも可能である。このようにすれば、その情報を活用して、サービスマンによる異常発生ユニットの交換やメンテナンス要求に要する時間を短縮することができる。また、メーカー市場の様々な画像形成装置の発生状況を取得して、市場問題対応等にも役立てることが可能である。
以上説明したように、本発明に係る画像形成装置は、加熱部材を分割して加熱のためのエネルギー供給量の低消費電力化に貢献したものでありながら、未定着トナーが記録材に付着したまま残らないようにすることができるという効果を有し、プリンタ装置だけでなく、中間転写ベルトを用いた画像形成装置全般に有用である。