JP6154678B2 - 薬剤除去フィルター、薬剤除去システム、及び薬剤除去方法 - Google Patents

薬剤除去フィルター、薬剤除去システム、及び薬剤除去方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6154678B2
JP6154678B2 JP2013137131A JP2013137131A JP6154678B2 JP 6154678 B2 JP6154678 B2 JP 6154678B2 JP 2013137131 A JP2013137131 A JP 2013137131A JP 2013137131 A JP2013137131 A JP 2013137131A JP 6154678 B2 JP6154678 B2 JP 6154678B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
drug
blood product
drug removal
activated carbon
blood
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013137131A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015008932A (ja
Inventor
絹枝 柴田
絹枝 柴田
畑中 美博
美博 畑中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Kasei Medical Co Ltd
Original Assignee
Asahi Kasei Medical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Kasei Medical Co Ltd filed Critical Asahi Kasei Medical Co Ltd
Priority to JP2013137131A priority Critical patent/JP6154678B2/ja
Publication of JP2015008932A publication Critical patent/JP2015008932A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6154678B2 publication Critical patent/JP6154678B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、血液製剤から薬剤を除去する薬剤除去フィルター、薬剤除去システム、及び薬剤除去方法に関するものである。
近年、輸血分野においては、血液製剤中に含まれる病原体あるいは白血球の増殖能を輸血前に失活(不活化)させる技術が、欧州を中心に普及している。このような不活化技術は、大別して薬剤(不活化薬剤)投与、光照射、またはこれらの組み合わせによって達成される。
病原体とは、例えば、ウイルス、細菌、原虫、寄生虫などのDNAやRNAを有するものである。病原体の不活化によって、HBV、HCV、HIV、HAV、HEV、HTLV、WNV、CMVなどのウイルスによる感染症、細菌による感染症、バベシア症、シャーガス病、マラリアなどの原虫による感染症といった輸血に伴う感染症を防止することができる。仮に、血液製剤に未知の病原体種あるいは検出困難な希薄な濃度レベルの病原体が含まれていた場合でも、不活化によって、感染症のリスクを抑えることができる。また、白血球の不活化によって、白血球が原因で引き起こされる輸血による副作用を抑えることができる。白血球が原因となる輸血による副作用には、比較的軽微なものとして、頭痛、吐き気、悪寒、及び非溶血性発熱反応などがあり、重篤なものとしては、輸血後GVHD(Graft Versus Host Disease)などがある。
病原体に対する不活化技術としては、血漿製剤の場合、S/D法(Octapharma社)、UVC照射(Macopharma社)、メチレンブルーと可視光照射の組み合わせ(Macopharma社)、アモトサレンとUVA照射の組み合わせ(Cerus社)、リボフラビンとUVB照射の組み合わせ(Termo BCT社)によるものがある。
また、血小板製剤の場合は、アモトサレンとUVA照射の組み合わせ(Cerus社)によるものが欧州を中心に利用されている。更に、赤血球製剤の場合は、エチレンイミン多量体(Inactine,VITEX社)、アクリジン誘導体(CERUS社)、リボフラビンとUVB照射の組み合わせ(Termo BCT社)、ジメチルメチレンブルー(日本赤十字社)等によるものがある。このような病原体の不活化技術自体は開発が進んでいる。
これらの不活化技術において不活化用薬剤を使用する場合、使用した薬剤を除去することが望ましい。従来、例えば、特許文献1に示されるように、多孔質不織材料からなるフィルターで血液製剤中の薬剤をろ過して除去する技術が知られている。また、例えば、特許文献2、3に示されるように、容器内で血液製剤を繊維状樹脂に接触させて、容器を振とうさせながら、薬剤を繊維状樹脂に吸着させて除去する技術が知られている。
特表2003−512093号公報 特開2012−67126号公報 特開2010−31049号公報
しかし、特許文献1、2の技術は、血漿製剤にしか用いることができず、赤血球を含む血液製剤に用いた場合、溶血を起こすおそれがあった。また、特許文献2、3の技術は、薬剤除去に長時間を要し、また、容器を振とうする設備に費用がかかるなど、薬剤を効率的に除去できなかった。
そこで、本発明は、血液製剤を不活化する薬剤を、溶血を抑えながら効率よく除去することができる薬剤除去フィルター、薬剤除去システム、及び薬剤除去方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、薬剤を吸着除去可能な粒子状活性炭を所定の寸法で容器内に収めた筒状デバイスを設計することにより、不活化薬剤を高除去率で除去できる不活化薬剤除去フィルターを提供できるという知見を得た。さらに、赤血球が含まれる血液製剤に提供する場合、上記活性炭不活化薬剤除去フィルターは、湿潤状態であるか、または使用直前に水溶液で湿潤にすることにより溶血を抑えられる事が分かった。本発明者らは、以上の知見に基づいて本発明に想到するに至った。
つまり、本発明の薬剤除去フィルターは、血液製剤中に含まれる不活化対象物を不活化する薬剤を、血液製剤から除去する薬剤除去フィルターであって、血液製剤が導入される入口と、血液製剤が排出される出口とを有する筒状容器と、筒状容器内に収納され、湿潤状態で薬剤を吸着除去可能な粒子状活性炭と、を備え、粒子状活性炭は、筒状容器内に直径D、高さLで収容されており、L/D比が0.5以上、4.4以下であることを特徴とする。
この薬剤除去フィルターによれば、湿潤状態で薬剤を吸着除去可能な粒子状活性炭を備えているので、赤血球を含む血液製剤に用いた場合でも、溶血を抑制することができる。また、粒子状活性炭は、筒状容器内にL/D比が0.5以上、4.4以下で収容されているので、高い薬剤除去率を得ることができるとともに、溶血を抑制することができる。また、血液製剤を内部に流入させ、フロー式で粒子状活性炭に接触させるので、薬剤を効率よく除去することができる。
さらに、粒子状活性炭は、粒径の平均値が0.3mm以上、2.0mm以下であり、標準偏差が0.05以上、0.35以下であると好適である。これによれば、より高い薬剤除去率を得ることができるとともに、溶血を抑制することができる。
さらに、粒子状活性炭は、親水化材で被覆されていると好適である。これによれば、赤血球と粒子状活性炭との間の疎水的な付着力が抑制されるため、赤血球表面膜がろ過時に受ける物理的摩擦を減らし、より溶血を抑えることができる。
本発明の薬剤除去システムは、上記の薬剤除去フィルターと、血液製剤を貯留する血液製剤貯留手段と、血液製剤中の被処理液が供給される前に薬剤除去フィルターに供給される液体であり、且つ、被処理液よりも赤血球の含有量が少ない湿潤用液体を貯留する湿潤用液体貯留手段と、薬剤が薬剤除去フィルターによって除去された血液製剤を回収する回収手段と、を備えていることを特徴とする。
この薬剤除去システムによれば、血液製剤中の被処理液を供給する前に湿潤用液体を薬剤除去フィルターに供給することで薬剤除去フィルターの粒子状活性炭を湿潤状態とすることができる。つまり、湿潤状態の粒子状活性炭を備えた薬剤除去フィルターに対して血液製剤中の被処理液を供給することができ、その結果、溶血を抑えながら、被処理液中の薬剤を効果よく除去することができる。
本発明の薬剤除去システムは、上記の薬剤除去フィルターと、血液製剤を貯留する血液製剤貯留手段と、薬剤が薬剤除去フィルターによって除去された血液製剤を回収する回収手段と、を備え、薬剤除去フィルターの粒子状活性炭は、血液製剤中の被処理液よりも赤血球の含有量が少ない湿潤用液体によって湿潤されていることを特徴とする。
この薬剤除去システムによれば、予め液体を充填されて湿潤状態となった粒子状活性炭を備えた薬剤除去フィルターに対して血液製剤中の被処理液を供給することができ、その結果、溶血を抑えながら、被処理液中の薬剤を効果よく除去することができる。
本発明の薬剤除去方法は、血液製剤中に含まれる不活化対象物を不活化する薬剤を、血液製剤から除去する薬剤除去フィルターを用いた薬剤除去方法であって、薬剤除去フィルターは、血液製剤が導入される入口と、血液製剤が排出される出口とを有する筒状容器と、筒状容器内に収納され、湿潤状態で薬剤を吸着除去可能な粒子状活性炭と、を備え、粒子状活性炭は、筒状容器内に直径D、高さLで収容されており、L/D比が0.5以上、4.4以下であり、薬剤除去フィルターに、血液製剤中の被処理液よりも赤血球の含有量が少ない湿潤用液体を導入し、粒子状活性炭を湿潤状態とする湿潤工程と、湿潤工程後に血液製剤を薬剤除去フィルターの入口から導入するとともに出口から排出し、血液製剤の薬剤を除去する薬剤除去工程とを備えていることを特徴とする。
この薬剤除去方法によれば、薬剤除去工程の前に、血液製剤の被処理液よりも赤血球の含有量が少ない湿潤用液体によって粒子状活性炭を湿潤状態とする湿潤工程を備えるので、溶血を抑えながら、被処理液中の薬剤を効率よく除去することができる。
本発明の薬剤除去方法は、血液製剤中に含まれる不活化対象物を不活化する薬剤を、血液製剤から除去する薬剤除去フィルターを用いた薬剤除去方法であって、薬剤除去フィルターは、血液製剤が導入される入口と、血液製剤が排出される出口とを有する筒状容器と、筒状容器内に収納され、湿潤状態で薬剤を吸着除去可能な粒子状活性炭と、を備え、粒子状活性炭は、前記筒状容器内に直径D、高さLで収容されており、L/D比が0.5以上、4.4以下であり、且つ、血液製剤中の被処理液よりも赤血球の含有量が少ない湿潤用液体によって湿潤状態とされており、本方法では、この薬剤除去フィルターの入口から血液製剤を導入するとともに、出口から排出して血液製剤の薬剤を除去する薬剤除去工程とを備えていることを特徴とする。
この薬剤除去方法によれば、薬剤除去フィルターは予め血液製剤の被処理液よりも赤血球の含有量が少ない湿潤用液体によって粒子状活性炭を湿潤状態とされており、この薬剤除去フィルターに血液製剤を供給することで、溶血を抑えながら、血液製剤中の薬剤を効率よく除去することができる。
さらに、湿潤用液体は、血液製剤中の被処理液から分離された液体、生理食塩水溶液、または血液製剤保存用液、または抗凝固剤であると好適である。これによれば、より溶血を抑制することができる。
本発明によれば、血液製剤を不活化する薬剤を、溶血を抑えながら効率よく除去することができる薬剤除去フィルター、薬剤除去システム、及び薬剤除去方法を提供することができる。
本発明の実施形態に係る薬剤除去フィルターの断面図である。 本発明の第1実施形態に係る薬剤除去システムの構成を示す図である。 本発明の第2実施形態に係る薬剤除去システムの構成を示す図である。 本発明の第3実施形態に係る薬剤除去システムの構成を示す図である。
以下、図面を参照しつつ本発明に係る薬剤除去フィルターの好適な実施形態について詳細に説明する。
[第1実施形態]
(薬剤除去フィルター)
まず、図1を参照して、第1実施形態に係る薬剤除去フィルター1について説明する。薬剤除去フィルター1は、血液製剤B中(図2参照)の不活化対象物を不活化するための薬剤を吸着除去する薬剤吸着カラムである。血液製剤Bとは、全血製剤、濃厚赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤等の輸血に用いられる各種血液製剤Bである。また、血液製剤B中の不活化対象物とは、例えば病原体や白血球などであり、薬剤とは、例えば、病原体不活化薬剤である。
ここで、「病原体不活化」とは、ウイルス、細菌、原虫、寄生虫などの病原体に対し、それらが複製または増殖する能力を奪うことである。また、「病原体不活化薬剤」とは、血液製剤B中に混入している、ウイルス、細菌、原虫、寄生虫などの病原体を不活化する機能を持つ薬剤である。また、病原体不活化薬剤を用いて行う不活化のための処理(病原体不活化処理)とは、病原体不活化薬剤を血液製剤B中に添加し、必要に応じて一定時間光を照射する処理方法である。病原体不活化薬剤は、光増感作用により一重項酸素、ヒドロキシラジカル、過酸化水素等の反応性の高い化合物を発生させ、病原体DNAやRNAに障害を与えたり、病原体DNAやRNAの塩基間に共有結合を生成させ、病原体DNAの開裂、RNAによるウイルスタンパク発現や自己複製に関する挙動を妨げたりすることで病原体を不活化する。病原体不活化薬剤としては、アクリジン誘導体、チアジン誘導体、フェノチアジン誘導体、ピリジン誘導体、ポルフィリン誘導体、クマリン誘導体、ピリミジン誘導体、リボフラビン、ソラレン誘導体、エチレンイミン多量体等が挙げられる。
薬剤除去フィルター1は、入口2aと出口2bとを有する円筒形カラム(筒状容器)2と、円筒形カラム2内に収容された粒子状活性炭3とを備えている。円筒形カラム2の入口2aには、血液製剤Bを導入するための血液回路が接続される入口接続部4aが設けられている。同様に出口2bには、血液製剤Bを排出するための血液回路が接続される出口接続部4bが設けられている。
円筒形カラム2の入口2aと出口2bの粒子状活性炭3側には、粒子状活性炭3を円筒形カラム2内に固定するためのメッシュ5、及びメッシュ5を押圧するシリコン製のOリング6がそれぞれ設けられている。メッシュ5は、ポリエチレン製であり、赤血球が通る孔径を有する。
(円筒形カラム)
円筒形カラム2の材料は、生体適合性の良いポリ塩化ビニル、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、シリコンゴム、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリグリコレート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の材料から選択されることが好ましい。
なお、本実施形態では円筒形であるが、これに限られない。内部にて粒子状活性炭3を保持できる筒状の容器であれば、断面が楕円形状や多角形状のものであってもよい。
(粒子状活性炭)
粒子状活性炭3は、円筒形カラム2内に柱状に収納されている。粒子状活性炭3は、湿潤状態で薬剤を吸着除去可能であり、特に、湿潤によって赤血球の溶血を低減可能な材料であれば足り、例えば、石油ピッチ、石炭、ヤシ殻、及びフェノール樹脂などの活性炭原料を球状化し、不融化、賦活、及びふるい分けして形成される。更に、焼成、賦活、整粒、水洗、及び乾燥工程を経ることによって、より硬質になるとともに、マイクロポアが形成される。これによって、粒子状活性炭3は、比表面積が大きく、真球度がきわめて高く、粒径標準偏差が小さくなり、好ましい。粒子状活性炭3の比表面積は750m/g以上であることが望ましい。比表面積が750m/g未満の場合には、薬剤除去率が低下するおそれがある。
粒子状活性炭3は、円筒形カラム2内に、直径D、高さLで収容されており、L/D比が0.5以上、4.4以下であることが好ましい。なお、本実施形態では、円筒形カラム2の内部に粒子状活性炭3が満たされるように充填されているため、粒子状活性炭3が収容状態を規定する直径D、及び高さLは、実質的に円筒形カラム2の内径、及び内部空間における長手方向の寸法と一致している。しかしながら、円筒形カラム2の内部が、より広い場合、例えば、長手方向の寸法が長い場合において、粒子状活性炭3の収容領域を調整することにより、L/D比を0.5以上、4.4以下の範囲にすることも可能である。
ここで、L/D比は、収容された状態の粒子状活性炭3の細長さの指標である。L/D比が0.5以上、4.4以下の範囲では、80%以上の薬剤除去率を得ることができるとともに、溶血を抑えることができる。L/D比のより好ましい範囲は、1.6以上、3.5以下である。L/D比が1.6以上の範囲では、99.5%の薬剤除去率が得られる。また、L/D比が3.5以下の範囲では、血液製剤Bを導入した際、目詰まりが起こりにくく、ろ過時間が短く処理が済むため好ましい。L/D比が大きすぎると、赤血球と粒子状活性炭3との接触頻度が高くなるため、赤血球表面が障害されやすく溶血しやすくなる傾向がある。逆にL/D比が小さすぎると、しばしば円筒形カラム2内に導入された血液製剤Bの流れに偏りが生じる。これによって、粒子状活性炭3の血液濡れ部分が偏り、濡れない部分の粒子は薬剤除去に寄与できず、十分な薬剤除去率が得られなくなるおそれがある。
本実施形態の粒子状活性炭3は球形であるが、球形以外の形状であっても使用できる。例えば、特開2012−67126号公報、2010−31049号公報等に記載されているような、球形から外れた非対称な断面構造をもつものでもよい。ただし、生産効率の高さの観点から、円形の断面構造である方が好ましい。球形とすることで、吸着能力が均一な薬剤除去フィルター1を大量生産しやすくなる。なお、球状とは、任意の断面のうち、円形、楕円形、非対称な楕円形を少なくとも1つ以上含む形状をいう。任意の断面のすべてが円形、楕円形、非対称な楕円形となる形状であることが好ましい。球形から大きく外れた形状の場合、円筒形カラム2内に充填する際、密に充填できなかったり、意図せず大きな空隙が生じたりすることがある。密に充填できない場合、十分な活性炭表面積が得られず、薬剤除去率が低下するおそれがある。また、大きな空隙が生じた場合、片流れが生じ、粒子状活性炭3の表面の一部が薬剤除去に利用されなくなり、薬剤除去率が低下するおそれがある。
粒子状活性炭3は、粒径の平均値が0.3mm以上、2.0mm以下の粒子であることが好ましい。粒径の平均値が0.3mmより小さいと、空隙の大きさが十分でないため、空隙を血球が通過する際、活性炭と血球の接触による摩擦が大きくなり、溶血するおそれがある。また、粒径の平均値が2.0mmより大きいと、空隙の大きさが十分あるため溶血しにくいが、活性炭表面積が小さくなり、十分な薬剤除去率が得られないおそれがある。
粒子状活性炭3は、粒径の標準偏差が0.05以上、0.35以下であることが好ましい。粒径の標準偏差が0.05より小さいと、粒径が揃いすぎて細密パッキングが生じやすくなる。そのため、空隙の大きさが十分でない部分が多数生じ、そこを通る血球は摩擦を受けるため血球表面が障害され、溶血を引き起こすおそれがある。また、粒径の標準偏差0.35より大きいと、空隙の大きさが十分でない部分は少なくなるので、溶血しにくいが、密に充填できなかったり、意図せず大きな空隙が生じたりすることがある。密に充填できない場合、十分な活性炭表面積が得られず、薬剤除去率が低下するおそれがある。また、大きな空隙が生じた場合、片流れが生じ、粒子状活性炭3の表面の一部が薬剤除去に利用されなくなり、薬剤除去率が低下するおそれがある。
粒子状活性炭3は、ヒドロキシエチルメタクリレート系重合体をはじめとした生体親和性の高い親水化材で被覆されていることが好ましい。このような親水化材は、血液に対して影響がないものであれば、特に限定なくいかなるものでも使用できる。例えば、poly(2−hydroxyethyl methacrylate)(PHEMA)、poly(N−isopropyl acrylamide)(PNIPAAm)、poly(N,N−dimethyl acrylamide)(PDMAAm)、poly(vinyl alcohol)(PVA)、poly(N−vinyl−2−pyrrolidone)(PVP)等が挙げられる。この中でも特に汎用性が高く、生産コストが抑えらえるpoly(2−hydroxyethyl methacrylate)(PHEMA)、poly(N−vinyl−2−pyrrolidone)(PVP)等の合成高分子を素材とする親水化ポリマーが好ましい。
親水化ポリマー被覆により、赤血球と粒子状活性炭3との間の疎水的な付着力が抑制されるため、赤血球表面膜がろ過時に受ける物理的摩擦を減らし、溶血を抑えることができる。粒子状活性炭3は、親水化処理を行った後、更に湿熱滅菌または放射線滅菌を行うことが好ましい。これによって、粒子状活性炭3の表面に架橋が起こり、薬剤除去フィルター1の生産工程で、粒子状活性炭3の表面から粉塵が発生することが抑制される。これに伴い、薬剤除去フィルター1の使用時に、血液製剤Bに微粒子が混入することも抑制される。
(メッシュ)
メッシュ5は、円筒形カラム2の入口2a及び出口2bに設けられ、粒子状活性炭3を円筒形カラム2内に固定する固定部材として機能している。メッシュ5は、円筒形カラム2の内径と同じ径に打ち抜かれた円形形状をなしている。メッシュ5は、合成高分子材料からなり、血液に対して影響がなければ特に限定なくいかなるものでも使用できる。例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリトリフルオロクロルエチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、セルロールアセテート等が挙げられる。この中でも特に汎用性が高く、安価なポリエチレン、ポリプロピレン等のポリエステルが好ましい。メッシュ5の孔径は、20μm以上、300μm以下が望ましい。孔径が20μm未満の場合、赤血球などの細胞成分が目詰まりを起こし通り抜けられないため、血液製剤Bの回収自体が困難となる。逆に、孔径が300μmを超える場合は、活性炭がメッシュ5を通って漏出し、血液製剤B中に混入するリスクがある。より好ましいメッシュ5の孔径は、150μm以上、250μm以下である。
薬剤除去フィルター1のように血液製剤Bを流入させ、フロー式で粒子状活性炭3のようなフィルター材に接触させるデバイスは、インラインカラムという。インラインカラムを用いる方法は、長時間に渡り血液製剤Bとフィルター材とを接触させるバッチ式のような振とう装置が必要ない。また、落差により短時間で不活化薬剤除去が完成するため、経済的、かつ作業が効率的であるため好ましい。バッチ式では、活性炭と赤血球の接触時間増加による赤血球表面の損傷により、溶血が引き起こされる傾向があるため、赤血球を含む血液製剤Bには適さない。
薬剤除去フィルター1の容量は、血液製剤Bが500mlに対し、5〜20mlが望ましい。容量が5ml未満である場合には、薬剤除去に使用できる粒子状活性炭3の表面積が不足し、薬剤の除去効率が低下するおそれがある。容量が20mlを超える場合には、血液製剤Bが円筒形カラム2や血液回路内に残留することにより、血液製剤Bの回収率が90%を下回ってしまう。なお、薬剤除去フィルター1の容量とは、例えば、入口接続部4a、出口接続部4b及びOリング5の内側といった粒子状活性炭3が収容されていない部分も含めた容量である。
薬剤除去フィルター1は、粒子状活性炭3が湿潤状態で使用されるようになっている。湿潤状態とすることで、粒子状活性炭3の表面に被覆された親水化ポリマーが膨潤するため、赤血球との接触による摩擦が小さくなり、赤血球を含む血液製剤Bの溶血を抑制できる。また、片流れによる薬剤除去効率の低下をきたすことなく、良好な流量を維持しながら血液製剤Bをろ過することも可能である。
粒子状活性炭3を湿潤させるために用いられる液体、即ち、湿潤用液体の種類としては、血液製剤Bとは別の液体であっても良いし、血液製剤B中の被処理液である赤血球製剤bから分離された液体であっても良い。前者の場合、例えば、生理食塩水溶液Y(図3参照)、血液製剤保存用液Z(図4参照)、抗凝固剤などである。また、後者の場合、血液製剤Bに不活化用の薬剤を添加し不活化処理を行った後の血液製剤Bから比重にて分離された血漿製剤(PPPまたはPRP)b(図2参照)の一部または全部等が挙げられる。これらの湿潤用液体は、少なくとも薬剤除去処理の対象となる血液製剤Bの赤血球製剤(被処理液)よりも赤血球の含有量が少ないものとする。粒子状活性炭3は、使用の直前まで乾燥していることが更に好ましい。これによって、常温で滅菌状態を維持できる。
以上のような構成を有する本実施形態の薬剤除去フィルター1によれば、比較的高濃度の不活化用の薬剤を有する血液製剤Bであっても、薬剤を高い除去率で除去できる。更に、この薬剤除去フィルター1によれば、回収される血液製剤Bの溶血を効果的に防ぐことができる。
また、薬剤除去フィルター1は、使用時において実質的に問題となるような形状変形を起こし得ない材料から成っている。これによって、適切なL/D比を保持し、充分な除去性能を維持することができる。薬剤除去フィルター1は、いかなる血液製剤Bに用いても、溶血が生じず、安定した薬剤除去能を実現することが可能となる。本実施形態の薬剤除去フィルター1は、最適形状を持つ場合には薬剤除去率が99.5%以上に達するため、副作用が起こるレベルより低い濃度水準まで薬剤を除去することができる。
また、粒子状活性炭3の粒径の標準偏差が小さいため、均一で密な充填構造が得られる。これによって、安定した薬剤除去能を実現することができ、その上均質な製品の大量生産も可能となる。
上述の特許文献に記載されるような従来の技術の場合、赤血球を含む血液製剤Bに対する薬剤除去手段としては遠心分離による除去しか実施見込みがないが、本実施形態の薬剤除去フィルター1は、落差で血液製剤Bを処理するのみで良いため処理時間が大幅に減少できる利点がある。
(薬剤除去システム)
次に、第1実施形態に係る薬剤除去フィルター1を備えて構成される第1実施形態の薬剤除去システム10Aについて図2を参照して説明する。図2は、薬剤除去システム10Aの構成図である。なお、第1実施形態に係る薬剤除去システム10Aでは、湿潤用液体として、薬剤を含む血液製剤B中の赤血球製剤(被処理液)bから分離された血漿製剤bを用いている。
薬剤除去システム10Aは、薬剤除去フィルター1と、血液製剤Bを貯留する血液製剤Bバック(血液製剤貯留手段)11と、薬剤を供給する薬剤供給部12と、不活化用バック13と、薬剤除去後の血液製剤Bを回収する処理液回収バック(回収手段)14と、配管L1〜L5と、クランプC1〜C3と、を備える。
血液製剤Bは、例えば、全血、RCC(濃厚赤血球)等である。薬剤供給部12は、不活化用バック13に血液チューブなどの配管L1によって接続され、配管L1を通じて不活化用バック13に薬剤を供給する。血液製剤バック11は配管L2に接続され、配管L2は処理開始時に配管L1にSCD接続される。不活化用バック13は、血液製剤バック11及び薬剤供給部12から配管L1、L2を介して全血及び薬剤を受け入れ、不活化処理を行う。不活化用バック13内では、薬剤を含む血液製剤Bは、赤血球を多く含む被処理液bと、被処理液よりも比重の軽い血漿製剤bとに分離される。血漿製剤bは湿潤用液体として用いられる。つまり、本実施形態では、不活化用バック13は湿潤用液体貯留手段に相当する。
不活化用バック13と薬剤除去フィルター1の入口接続部4aとは、配管L3によって互いに接続され、処理液回収バック14と薬剤除去フィルター1の出口接続部4bとは、配管L4によって互いに接続されている。薬剤除去フィルター1には、配管L3を通じ、最初に少量の薬剤が混入する血漿製剤(湿潤用液体)bの一部、もしくは全部が供給され、続いて薬剤が混入する赤血球製剤(被処理液)bが供給される。血漿製剤bの供給によって湿潤状態となった粒子状活性炭3を備えた薬剤除去フィルター1では、赤血球製剤bの供給により、赤血球製剤b中に含まれる薬剤を吸着除去する。薬剤を吸着除去された血液製剤Bは、配管L4を通じて処理液回収バック14に回収される。
また、配管L3、L4は分岐して薬剤除去フィルター1をバイパスする配管L5からなるバイパス経路を形成している。配管L5は、処理液回収バック14の空気抜きに用いられる。クランプC1は、配管L1の不活化用バック13がSCD接続される場所よりも不活化用バック13側に備えられている。また、クランプC2、C3は、それぞれ配管L4、L5に備えられている。
(薬剤除去方法)
続いて、薬剤除去システム10Aを用いた薬剤除去方法について説明する。
(1)まず、クランプC1、C2、C3がすべて閉じていることを確認する。
(2)血液製剤バック11に接続する配管L2を配管L1にSCD接続する。
(3)クランプC1を開けて配管L1を開通させ、薬剤供給部12から配管L1を通じて薬剤を不活化用バック13に供給するとともに、血液製剤バック11から配管L2,L1を通じて血液製剤の全血を落差によって不活化用バック13に導入する。ここで、全血の代わりに、RCCとしてもよい。
(4)配管L1をクランプC1より不活化用バック13側でシールして切り、血液製剤バック11及び薬剤供給部12側の配管L1を捨てる。
(5)不活化用バック13中で薬剤及び全血を混和し、必要に応じて所定時間UV照射してからインキュベート(静置)する。インキュベート中に不活化が起こるとともに、比重差によって、比重の小さい薬剤及び血漿製剤(「plasma」ともいう)bが不活化用バック13の上側、比重の大きい薬剤及び赤血球製剤bが下側に分離する。ここで、全血の代わりに、RCCとした場合、plasmaではなく、血液製剤保存用液が上側に分離する。
(6)クランプC2を開けて、不活化用バック13から、上側の血漿製剤bの少なくとも一部を、配管L3を通じて薬剤除去フィルター1に送り出し、薬剤除去フィルター1を湿潤させる(湿潤工程)。薬剤除去フィルター1でろ過された血漿製剤bは、配管L4を通じて処理液回収バック14に回収される。
(7)続いて、不活化用バック13から、残りの血漿製剤b、次に赤血球製剤bを、配管L3を通じて薬剤除去フィルター1に送り出す。薬剤除去フィルター1でろ過された血漿製剤b、及び赤血球製剤bは、配管L4を通じて処理液回収バック14に回収される(薬剤除去工程)。
(8)クランプC3を開けて、配管L5を開通させる。
(9)処理液回収バック14の空気を、空になった不活化用バック13に配管L5を通して逃がす。
(10)クランプC2,C3を閉じる。
(11)シールして、処理液回収バック14を取り出す。
[第2実施形態]
続いて、図3を参照して、第2実施形態に係る薬剤除去システム10B及び薬剤除去方法について説明する。薬剤除去フィルター1は第1実施形態と同様である。なお、薬剤除去システム10Bにおいて、薬剤除去システム10Aと同一又は同等の構成要素については同一の符号を付すこととし、重複する説明を省略する。また、第2実施形態に係る薬剤除去システム10Bでは、湿潤用液体として、生理食塩水溶液Yを用いている。
(薬剤除去システム)
薬剤除去システム10Bは、薬剤除去フィルター1と、血液製剤バック(血液製剤貯留手段)11と、薬剤を供給する薬剤供給部12と、不活化用バック13Aと、複数の処理液回収バック(回収手段)14と、生理食塩水回収バック15と、生理食塩水貯留バック16と、配管L1〜L4、L6、L7と、クランプC1、C2と、C4〜C6とを備える。生理食塩水回収バック15は、当初、空である。
本実施形態の場合、血液製剤バック11に貯留される血液製剤Bは、例えば、全血、RCC(濃厚赤血球)、PC(濃厚血小板製剤)、plasma(血漿製剤)、PPP(血漿製剤)、PRP(血漿製剤)等である。また、生理食塩水貯留バック16(湿潤用液体貯留手段)には、湿潤用液体としての生理食塩水溶液Yが蓄えられている。本実施形態では、血液製剤B自体が被処理液であり、生理食塩水溶液Yは、血液製剤Bよりも赤血球の含有量が少ない液体に相当する。
配管L3は、分岐して配管L6によって生理食塩水回収バック15に接続している。また、配管L4は、分岐して配管L7によって生理食塩水貯留バック16に接続している。クランプC4は、配管L3の配管L6への分岐よりも不活化用バック13A側に備えられている。クランプC5、C6は、それぞれ配管L6、L7に備えられている。
(薬剤除去方法)
薬剤除去システム10Bを用いた薬剤除去方法について説明する。
(1)まず、クランプC1、C2、C4、C5、C6がすべて閉じていることを確認する。
(2)血液製剤バック11に接続する配管L2を配管L1にSCD接続する。
(3)クランプC1を開けて配管L1を開通させ、薬剤供給部12から配管L1を通じて薬剤を不活化用バック13Aに供給するとともに、血液製剤バック11から配管L2、L1を通じて全血を落差によって不活化用バック13Aに導入する。
(4)配管L1をクランプC1より不活化用バック13A側でシールして切り、血液製剤バック11及び薬剤供給部12側の配管L1を捨てる。
(5)不活化用バック13A中で薬剤及び全血を混和し、必要に応じて所定時間UV照射してからインキュベート(静置)する。インキュベート中に不活化が起こる。
(6)クランプC5及びクランプC6を開けて、生理食塩水貯留バック16の生理食塩水溶液Yを、配管L7を通じて薬剤除去フィルター1に送り出し、薬剤除去フィルター1を湿潤させる(湿潤工程)。薬剤除去フィルター1を湿潤させた生理食塩水溶液Yは、配管L6を通じて生理食塩水回収バック15に回収される。
(7)クランプC5及びクランプC6を閉じる。
(8)クランプC4を開け、不活化用バック13Aから、配管L3を通じ、薬剤及び血液製剤Bを薬剤除去フィルター1に送り出すとともに、クランプC2を順番に開け、薬剤除去フィルター1でろ過された血液製剤Bを、配管L4を通じて処理液回収バック14に順番に回収し、回収後順次、クランプC2を閉じる(薬剤除去工程)。
(9)クランプC4を閉じる。
(10)クランプC2、C4を開け、処理液回収バック14の空気を空になった不活化用バック13Aに逃がしてから、クランプC2、C4を閉じる。又は、クランプC2、C6を開け、処理液回収バック14の空気を空になった生理食塩水貯留バック16に逃がしてから、クランプC2、C6を閉じる。
(11)シールして、処理液回収バック14を取り出す。
本実施形態の薬剤除去システム10Bでは、配管L3の配管L6への分岐及び配管L4の配管L7への分岐を、それぞれ薬剤除去フィルター1の入口2a及び出口2bのなるべく近くに設けることが望ましい。これによって、不活化用バック13Aから薬剤除去フィルター1に導入される血液製剤Bの初流分が生理食塩水で希釈されるのを抑制することができ、品質のばらつきが少ない血液製剤Bが得られる。
[第3実施形態]
続いて、図4を参照して、第3実施形態に係る薬剤除去システム10C及び薬剤除去方法について説明する。薬剤除去フィルター1は第1実施形態と同様である。なお、薬剤除去システム10Cにおいて、薬剤除去システム10Aと同一又は同等の構成要素については同一の符号を付すこととし、重複する説明を省略する。また、第3実施形態に係る薬剤除去システム10Cでは、湿潤用液体として、血液製剤保存用液Zを用いている。
(薬剤除去システム)
薬剤除去システム10Cは、薬剤除去フィルター1と、血液製剤バック11と、薬剤を供給する薬剤供給部12と、不活化用バック13Aと、処理液回収バック14Aと、配管L1〜L5と、クランプC1〜C4と、を備える。血液製剤バック11に貯留される血液製剤Bは、例えば、全血、RCC(濃厚赤血球)、PC(濃厚血小板製剤)、plasma(血漿製剤)、PPP(血漿製剤)、PRP(血漿製剤)等である。処理液回収バック14Aには、湿潤用液体として予め血液製剤保存用液Zが蓄えられている。本実施形態では、血液製剤B自体が被処理液であり、血液製剤保存用液Zは、血液製剤Bよりも赤血球の含有量が少ない液体に相当する。また、本実施形態では、処理液回収バック14Aは、湿潤用液体貯留手段と回収手段とを兼ねている。
クランプC4は、配管L3の配管L5への分岐よりも不活化用バック13A側に備えられている。薬剤除去システム10Cでは、薬剤除去フィルター1及び処理液回収バック14Aが不活化用バック13Aの下方に配置され、落差で不活化用バック13Aから血液製剤Bを薬剤除去フィルター1及び処理液回収バック14Aに導入するようになっている。
(薬剤除去方法)
薬剤除去システム10Cを用いた薬剤除去方法について説明する。
(1)まず、クランプC1、C2、C3、C4がすべて閉じていることを確認する。
(2)血液製剤バック11に接続する配管L2を配管L1にSCD接続する。
(3)クランプC1を開けて配管L1を開通させ、薬剤供給部12から配管L1を通じて薬剤を不活化用バック13Aに供給するとともに、血液製剤バック11から配管L2、L1を通じて全血を落差によって不活化用バック13Aに導入する。
(4)配管L1をクランプC1より不活化用バック13A側でシールして切り、被処理液バック11及び薬剤供給部12側の配管L1を捨てる。
(5)不活化用バック13A中で薬剤及び全血を混和し、必要に応じて所定時間UV照射してからインキュベート(静置)する。インキュベート中に不活化が起こる。
(6)クランプC2を開けて、処理液回収バック14Aから、血液製剤保存用液Zを配管L4を通じて薬剤除去フィルター1に送り出し、薬剤除去フィルター1を湿潤させる(湿潤工程)。薬剤除去フィルター1を湿潤させた血液製剤保存用液Zは、再び配管L4を通じて処理液回収バック14Aに回収される。
(7)クランプC4を開け、不活化用バック13Aから、薬剤及び全血を配管L3を通じて薬剤除去フィルター1に送り出す。薬剤除去フィルター1でろ過された全血を配管L4を通じて処理液回収バック14Aに回収する(薬剤除去工程)。
(8)クランプC3を開けて、配管L5を開通させる。
(9)処理液回収バック14Aの空気を、空になった不活化用バック13Aに配管L5を通じて逃がす。
(10)クランプC2を閉じる。
(11)シールして、処理液回収バック14Aを取り出す。
上述の薬剤除去システム10A,10B,10Cは、すべて湿潤用液体貯留手段に対応する要素を備えていたが、湿潤用液体貯留手段を省略することもできる。例えば、湿潤用液体によって予め湿潤状態とされた粒子状活性炭3を有する薬剤除去フィルター1を備えた薬剤除去システムとすることもでき、このシステムを利用する場合、上述の湿潤工程を省略して薬剤除去工程を行う薬剤除去方法とすることも可能である。
以上、各実施形態を参照しつつ本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、つまり、これらのシステムは、いずれもシステムの構築例に過ぎず、バッグや回路の構築方法、配置、およびシステムの使用条件、方法、手順を限定するものではない。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
(薬剤除去率の評価)
粒子状活性炭3のL/D比、粒径の平均値、及び標準偏差を様々にした薬剤除去フィルター1を用いて、生理食塩水にメチレンブルーを溶解させたものをろ過し、薬剤除去率を評価した。粒子状活性炭3は、PHEMAによって親水化コートした石油ピッチ系原料由来の球状活性炭である。
粒子状活性炭3の粒径の測定は、以下のようにして行うことができる。まず、超深度形状測定顕微鏡、または焦点深度の深いマイクロスコープなどを用い、最初に標準となるゲージを撮影する。その後、活性炭100個の写真をいくつかの視野に分けて撮る。その後画像解析ソフトで解析を行うことにより、各粒子の粒径を測定することができる。ただし、粒子状活性炭3の形が真球から大幅にずれており、上記方法では正確に粒径を測定できない扁平な粒子が混入している場合には、画像上の実測最短辺と最長辺の径の算術平均値をこれら扁平形状の粒子の粒径として求める。
具体的には、粒子状活性炭3の粒径の測定は、以下のようにして行った。市販の粒子状の集合体から、無作為に100個をサンプリングし、粒子が重ならず、顕微鏡画像範囲に収まるよう1つのガラスシャーレに、10個ずつ、計10個のシャーレに並べた。そのうち1つのシャーレをデジタル顕微鏡(型式VHX−900、KEYENCE製)にセットし、シャーレ底面に対し鉛直上方から光を当て、10個の粒子が一視野に収まるよう、適切な拡大倍率に合わせた。その後、その拡大倍率にて標準ゲージを撮影し、正確なスケールを得た。次に、光量、焦点を合わせ、繰り返し10個のシャーレで撮影した後、顕微鏡に接続されたPCの画像解析ソフトを用いて、球の直径測定を行った。
粒子状活性炭3の粒径の標準偏差は、下記式(1)によって算出した。
Figure 0006154678
ここで、測定数Nは、100である。またmは、N個のデータx、x、・・・xの相加平均である。
薬剤除去フィルター1によるろ過は、ろ過条件を以下のように設定して行った。まず、流速は、市販の白血球除去フィルターを全血ろ過に用いる際の代表的な線速0.56(ml/分/cm)に合わせる形で選定し、シリンジポンプを用いて一定流速44.7(ml/hr)でろ過を実施した。また、ろ過液量は、市販の白血球除去フィルターを全血ろ過に用いる際の代表的な単位ろ材重量当たりの処理量比、つまり20.2(ml/g)に合わせる形で実施した。L/D比の変化に伴い、活性炭の充填重量が変動するため、この重量に従いろ過液量を決定した。
薬剤除去率の評価結果を表1に示す。
Figure 0006154678

(溶血の評価)
内径Dが9mmである円筒形カラム2を用いて、粒子状活性炭の充填高さを27mmに調節することによって、粒子状活性炭3がL/D比3.0で収容された薬剤除去フィルター1を作成した。薬剤除去フィルター1を生理食塩水で充填し、粒子状活性炭3を湿潤状態としたものを実施例8とし、乾燥状態のものを比較例3とした。
粒子状活性炭3は、平均粒径が0.5mm、標準偏差が0.007であり、PHEMAによって親水化コートした石油ピッチ系原料由来の球状活性炭である。
ヒト血は、健常人由来ヒト全血100mlに対し、抗凝固剤としてCPD14mlを添加する割合での採血を実施した結果得られた。ヒト血は、室温22℃で保管し、採取から4時間以内に使用した。
上記の薬剤除去率の評価と同様の流速およびろ過液量として、ヒト血ろ過試験を実施した。ヒト血ろ過試験では、薬剤を含まない健常人由来ヒト全血を、シリンジポンプを用いて落差相当の一定流速で流し、溶血を評価した。
溶血の評価は、以下のように行った。ろ過前後の血液を3000rpm、15分間遠心分離することにより、上清を回収した。その後、HemoCue社のPlasma/Low Hb System装置と、専用のキュベットStorage for HemoCue(登録商標)Plasma/Low Hb Microcuvettesを用いて上清Hbを測定した。
溶血の評価結果を表2に示す。
Figure 0006154678
表2に示されるように、粒子状活性炭3を湿潤状態とした実施例2では、溶血が生じなかった。一方、粒子状活性炭3を乾燥状態とした比較例2では、溶血が生じた。なお、「溶血が生じない」とは、上清Hb値が0.02g/dLを超えないことを意味する。
1…薬剤除去フィルター、2…円筒形カラム(円筒形容器)、3…粒子状活性炭、10A、10B、10C…薬剤除去システム、11…血液製剤バック(血液製剤貯留手段)、13…不活化用バック(湿潤用液体貯留手段)、14…処理液回収バック(回収手段)、14A…処理液回収バック(湿潤用液体貯留手段、回収手段)、15…生理食塩水溶液貯留バック(湿潤用液体貯留手段)、b…血漿製剤(湿潤用液体)、Y…生理食塩水溶液(湿潤用液体)、Z…血液製剤保存用液(湿潤用液体)。

Claims (7)

  1. 血液製剤中に含まれる不活化対象物を不活化する薬剤を、前記血液製剤から除去する薬剤除去フィルターであって、
    前記血液製剤が導入される入口と、前記血液製剤が排出される出口とを有する筒状容器と、
    前記筒状容器内に収納され、湿潤状態で前記薬剤を吸着除去可能な粒子状活性炭と、を備え、
    前記粒子状活性炭は、前記筒状容器内に直径D、高さLで収容されており、L/D比が0.5以上、4.4以下であり、
    前記粒子状活性炭は、粒径の平均値が0.3mm以上、2.0mm以下であり、標準偏差が0.05以上、0.35以下である、ことを特徴とする薬剤除去フィルター。
  2. 前記粒子状活性炭は、親水化材で被覆されている、ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤除去フィルター。
  3. 請求項1又は2記載の薬剤除去フィルターと、
    前記血液製剤を貯留する血液製剤貯留手段と、
    前記血液製剤中の被処理液が供給される前に前記薬剤除去フィルターに供給される液体であり、且つ、前記被処理液よりも赤血球の含有量が少ない湿潤用液体を貯留する湿潤用液体貯留手段と、
    前記薬剤が前記薬剤除去フィルターによって除去された前記血液製剤を回収する回収手段と、を備えていることを特徴とする、薬剤除去システム。
  4. 請求項1又は2記載の薬剤除去フィルターと、
    前記血液製剤を貯留する血液製剤貯留手段と、
    前記薬剤が前記薬剤除去フィルターによって除去された前記血液製剤を回収する回収手段と、を備え、
    前記薬剤除去フィルターの前記粒子状活性炭は、前記血液製剤中の被処理液よりも赤血球の含有量が少ない湿潤用液体によって湿潤されている、ことを特徴とする薬剤除去システム。
  5. 血液製剤中に含まれる不活化対象物を不活化する薬剤を、前記血液製剤から除去する薬剤除去フィルターを用いた薬剤除去方法であって、
    前記薬剤除去フィルターは、前記血液製剤が導入される入口と、前記血液製剤が排出される出口とを有する筒状容器と、前記筒状容器内に収納され、湿潤状態で前記薬剤を吸着除去可能な粒子状活性炭と、を備え、前記粒子状活性炭は、前記筒状容器内に直径D、高さLで収容されており、L/D比が0.5以上、4.4以下であり、前記粒子状活性炭は、粒径の平均値が0.3mm以上、2.0mm以下であり、標準偏差が0.05以上、0.35以下であり、
    前記薬剤除去フィルターに、前記血液製剤中の被処理液よりも赤血球の含有量が少ない湿潤用液体を導入し、前記粒子状活性炭を湿潤状態とする湿潤工程と、
    前記湿潤工程後に前記血液製剤を前記薬剤除去フィルターの前記入口から導入するとともに前記出口から排出し、前記血液製剤の薬剤を除去する薬剤除去工程とを備えていることを特徴とする薬剤除去方法。
  6. 血液製剤中に含まれる不活化対象物を不活化する薬剤を、前記血液製剤から除去する薬剤除去フィルターを用いた薬剤除去方法であって、
    前記薬剤除去フィルターは、前記血液製剤が導入される入口と、前記血液製剤が排出される出口とを有する筒状容器と、前記筒状容器内に収納され、湿潤状態で前記薬剤を吸着除去可能な粒子状活性炭と、を備え、前記粒子状活性炭は、前記筒状容器内に直径D、高さLで収容されており、L/D比が0.5以上、4.4以下であり、且つ、前記血液製剤中の被処理液よりも赤血球の含有量が少ない湿潤用液体によって湿潤状態とされており、前記粒子状活性炭は、粒径の平均値が0.3mm以上、2.0mm以下であり、標準偏差が0.05以上、0.35以下であり、
    前記薬剤除去フィルターの前記入口から前記血液製剤を導入するとともに前記出口から排出して前記血液製剤の薬剤を除去する薬剤除去工程を備えていることを特徴とする薬剤除去方法。
  7. 前記湿潤用液体は、前記血液製剤中の前記被処理液から分離された液体、生理食塩水溶液、または血液製剤保存用液、または抗凝固剤であることを特徴とする請求項5又は6に記載の薬剤除去方法。
JP2013137131A 2013-06-28 2013-06-28 薬剤除去フィルター、薬剤除去システム、及び薬剤除去方法 Active JP6154678B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013137131A JP6154678B2 (ja) 2013-06-28 2013-06-28 薬剤除去フィルター、薬剤除去システム、及び薬剤除去方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013137131A JP6154678B2 (ja) 2013-06-28 2013-06-28 薬剤除去フィルター、薬剤除去システム、及び薬剤除去方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015008932A JP2015008932A (ja) 2015-01-19
JP6154678B2 true JP6154678B2 (ja) 2017-06-28

Family

ID=52302675

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013137131A Active JP6154678B2 (ja) 2013-06-28 2013-06-28 薬剤除去フィルター、薬剤除去システム、及び薬剤除去方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6154678B2 (ja)

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4190542A (en) * 1973-07-26 1980-02-26 Smith & Nephew Research Ltd. Disposable column
JPS6034457A (ja) * 1983-08-04 1985-02-22 三菱化学株式会社 血液浄化装置
JPH01158969A (ja) * 1987-12-17 1989-06-22 Sumitomo Bakelite Co Ltd 吸着型体液浄化用カラム
JP3272099B2 (ja) * 1993-04-14 2002-04-08 旭メディカル株式会社 ブラジキニン吸着体
US6319662B1 (en) * 1993-12-17 2001-11-20 Baxter International Inc. Method and apparatus for removing viral contaminants from a body fluid
US5660731A (en) * 1994-11-08 1997-08-26 Pall Corporation Filter for separating photoactive agent
CA2318508C (en) * 1998-01-06 2004-04-20 Cerus Corporation Batch devices for the reduction of compounds from biological compositions containing cells and methods of use
JP2001252353A (ja) * 2000-03-08 2001-09-18 Terumo Corp 血液成分分離用装置および血液成分分離方法
JP2011224142A (ja) * 2010-04-20 2011-11-10 Nikkiso Co Ltd ビーズ状吸着材及びこれを用いた血液浄化器

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015008932A (ja) 2015-01-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5547576A (en) Pathogenic substance removing material and a blood filter containing the material
KR100743483B1 (ko) 바이러스 제거 백 및 그것을 이용한 바이러스 제거 방법
JP2021035511A (ja) 装着型血液潅流デバイス
JP4453248B2 (ja) 中空糸膜および中空糸膜モジュールの製造方法
JP4138488B2 (ja) 直接血液灌流が可能な体液処理器
JP6497318B2 (ja) 血小板浮遊液洗浄用の中空糸膜モジュール
CN102600521A (zh) 一种清除血液中病原体的装置和方法
ES2845176T3 (es) Elemento de filtro para filtro de tratamiento de sangre, filtro de tratamiento de sangre y método de retirada de leucocitos
JP2003527230A (ja) 生物学的組成物からの化合物の減少のためのフローデバイスおよびその使用方法
JP3741320B2 (ja) 白血球選択除去フィルター材
JP5696527B2 (ja) 血漿分離膜モジュールを用いた血漿の分離方法
JP6154678B2 (ja) 薬剤除去フィルター、薬剤除去システム、及び薬剤除去方法
JP5036026B2 (ja) 血液成分分離装置及びその使用方法
Sueoka Present status of apheresis technologies: Part 1. Membrane plasma separator
JPH11267199A (ja) 血液処理方法および装置
JP6228807B2 (ja) 薬剤除去フィルター、薬剤除去システム、及び薬剤除去方法
JP2011024811A (ja) 血液からウイルス及びサイトカインを除去するシステム
JPH03173824A (ja) 白血球分離器
JP6261282B2 (ja) 薬剤除去フィルター、薬剤除去システム、及び薬剤除去方法
JP4393218B2 (ja) ウイルス除去用血液処理装置およびウイルス除去方法
JP6240490B2 (ja) 白血球及び薬剤除去方法、白血球及び薬剤除去フィルター、及び白血球及び薬剤除去システム
JP3810664B2 (ja) 有孔中空糸の製造方法
KR101342883B1 (ko) 수혈 부작용 예방을 위한 백혈구 제거용 이단계 필터
JPH01254205A (ja) ウイルス除去ユニツト
JP4678063B2 (ja) 中空糸膜モジュール

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160613

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170315

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170328

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170501

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170516

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170602

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6154678

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350