JP3810664B2 - 有孔中空糸の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、機能性分離膜、有孔中空糸、分離装置、人工血管及びこれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の分離技術には、蒸留、結晶化、沈殿、ゾーンメルティング、遠心分離等の物質属性を利用したものと、抽出、電解、電気泳動、吸着、イオン交換、クロマトグラフィ、膜分離等の分離材料を利用したものがある。
【0003】
産業界において、高分子分離膜が重要な役割を担っている。高分子材料を用いた分離膜は、イオン交換、分離、除去、濃縮、精製等の目的で、幅広い分野で利用されている。高分子分離膜における分離機構は、ふるい、吸着、溶解−拡散等であり、その駆動力は、圧力差、濃度勾配、静水圧差等によるものである。分離効率を高めるために、膜材が、しばしばフィブリル化、不織化、中空糸化、または多孔化されて利用される。
【0004】
高分子繊維またはガラス繊維の濾紙等が、エアフィルタとして粉塵の捕集、除去に利用されている。エアフィルタには、粗塵用のものから、HEPAフィルタやULPAフィルタ等の超高性能のものまである。これらのエアフィルタは、ビル、クリーンルーム、ハードディスクドライブ等の空気浄化、原子力施設やバイオハザード施設における発生微粒子の捕集等に利用されている。一般に、粗塵用フィルタは、数mm〜数十mmの厚さで、5μm以上の粒径の粉塵を捕集する。超高性能フィルタは、数百μmの厚さで、粒径1μm以下の粉塵をも捕集することができる。
【0005】
一方、医療分野において、高分子分離膜は、血液浄化用の透析膜として使用されている。血液浄化は、透析以外にも、膜を用いる血液濾過、同時的血液透析濾過、血漿分離や、吸着剤を用いる直接血液灌流等により行われる。これらの血液浄化法は、腎不全患者の生命維持にとどまらず、急性薬物中毒、肝不全、自己免疫疾患、精神分裂症等の治療にも応用されるようになり、新しい治療法として注目されている。
【0006】
その他に、逆浸透膜、限外濾過膜、精密濾過膜、気体透過膜等に、高分子分離膜が使用される。逆浸透膜は、透析液製造のための水の精製に用いられ、限外濾過膜は、AIDSウィルスの除去、血液濾過及び血漿成分分離に用いられ、精密濾過膜は、血漿分離や除菌に用いられ、気体透過膜は、人工肺や酸素富化等に用いられる。また、輸血時に血液の微小凝集塊を除去する目的でも高分子分離膜が使用される。
【0007】
様々な血液分離の過程で最も基本的なものが血漿分離である。成分輸血において、血漿製剤が最も不足している。このため、血漿だけを採血するドナープラズマフェレーシスの研究が盛んである。一方、血液体外循環法においても、血漿中の病因成分除去を目的とすることが多い。特に近年は、膜を用いた血漿分離法が注目されている。血漿分離法は、血液から血漿成分を分離除去し、正常血漿と交換することにより、血液中の病因タンパク質、抗原、抗体、免疫複合体等を取り除く療法である。この療法は、特に免疫異常により疾患、例えば全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、糸球体腎炎、重症筋無力症等の種々の難病治療に効果が認められている。
【0008】
血漿分離膜には、膜に設けられている多数の孔の径が大きく、孔の直径が揃っており(分散が小さく)、開口率が高いことが要求される。従来の血漿分離装置には、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチレン等の中空糸を用いる中空糸型、酢酸セルロースの膜を用いる積層型、ポリカーボネートの膜を用いる回転円筒型等がある。
【0009】
赤血球は、直径6〜9μmの円盤状の細胞である。血小板の大きさは2〜4μmである。白血球のうち顆粒球の直径は10〜15μm、リンパ球の直径は6〜12μm、単球の直径は13〜20μmである。血漿分離膜の孔の径は、通常0.2〜0.8μmである。なお、濾過膜の孔の径は0.001μmのオーダであり、血漿成分分離膜の孔の径は、0.01μmのオーダである。
【0010】
また、血液は、保存により血小板及び白血球がフィブリンとともに微小凝集塊を形成することが知られている。循環血液量に相当する大量の輸血や急速な輸血を行った後に、微小凝集塊による進行性の肺不全が引き起こされることが指摘されている。微小凝集塊のほとんどが150μm以下の大きさであるため、点滴筒に装備されている孔径170μm程度のフィルタを通過してしまう。このため、微小凝集塊を除去するために、専用のフィルタが用いられる。
【0011】
一方、成分輸血において不可欠の血球分離には、繊維吸着材が利用されている。遠心分離で調整された赤血球製剤及び血小板製剤中に混入する白血球は、体内で抗白血球体産生に基づく様々な副作用や、供血者のリンパ球が受血者の組織を攻撃する移植片対宿主病反応(GVHD)の原因になるため、除去することが望ましい。白血球の除去に、繊維吸着材が主に使用されている。また、特別な用途に用いられる顆粒球輸血とリンパ球輸血にも、繊維吸着材が使用される。
【0012】
近年、血液体外循環により免疫系を制御する研究が行われており、特殊な素材を用いた免疫系の賦活化による癌治療も試みられている。このような治療分野において、機能性分離膜や選択吸着膜に対する期待も大きい。
【0013】
また、高分子材料は、人工血管にも使用されている。人工血管のように、血液と接する部位に使用される材料には、第1に抗血栓性が求められる。血液に接する材料の表面に、ヘパリン、ウキロナーゼ、プラスミン、アルブミン、トロンボモジュリン等を付加あるいは固定化し、表面を血栓溶解型または血液凝固因子活性化抑制型に変えることにより、抗血栓性の付与が試みられている。
【0014】
材料表面に上述のような機能性を付与する手法の他に、下記の手法も試みられている。まず、不織布の利用、チューブの延伸、多孔化、不織化、フィブリル化等の手法により、表面状態、外部との接触面積、臨界表面張力等を制御する。材料表面に適度な血栓を形成することにより、血栓膜を形成する。その上に、内皮細胞の生着、増生により、偽内膜を形成する。このようにして、血液適合性が獲得される。
【0015】
人工血管表面を内皮細胞で覆い、抗血栓性を付与したものは、ハイブリッド型人工血管と呼ばれている。ハイブリッド型人工血管について、様々な研究開発が行われているが、求められるすべての条件を満足する人工血管は得られていない。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
高分子膜を用いて成分分離を行う際には、いずれの分離機構及び駆動力を用いる場合にも、高分子膜に形成されている空孔の大きさと、そのばらつき(分散)が、膜特性を直接的に支配する。高分子化合物は、統計的分布を持つ化合物であるため、その集合体である膜材の性質も統計的分布を持つ。統計的分布を持つ性質を利用して形成された空孔の大きさも、統計的分布に従う。
【0017】
分離膜の分離性能を決定する空孔は、大きさのばらついた多数の空孔のうち、きわめて僅かの部分でしかない。空孔の大きさのばらつきを統計的分布に委ねていたのでは、有効に分離機能を果たす空孔の比率を高めることが困難である。極めて厳しい条件下での利用、確実な分離または高効率の分離を行うためには、空孔の大きさを積極的に制御する必要がある。
【0018】
血液透析膜の素材として、セルロース系のものが主として使用されている。長年、血液透析治療を行っている患者が増えるに従って、セルロース膜を透過できない微量の代謝産物が患者の体内に蓄積され、患者に種々の病態が現れることが問題視されるようになってきた。また、海外では、セルロース膜透析器を使用していた患者の死亡事故も発生し、酢酸セルロース膜の使用そのものが問題となっている。
【0019】
このため、透析膜の主流が、酢酸セルロースの均質膜からポリスルホン多孔膜に移りつつある。透析膜として使用されるポリスルホン多孔膜には、親水性を付与するためにポリビニルピロリドン(PVPy)が添加されている。ポリビニルピロリドンの安全性は一般的に高いと考えられている。しかし、ポリビニルピロリドンが用いられた透析器を使用すると、一部に、透析中の血圧低下、気分不快、アナフィラキシ様ショック症状等が発現することが認められている。このため、血液中に溶出するポリビニルピロリドンの安全性が問われている。高分子材料自身の分解や、可塑剤、添加物または不純物の溶出は、医療用材料として好ましくない。より安全で信頼性の高い材料が求められている。
【0020】
医療用具及び医療製品を滅菌するために、エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌が用いられてきた。透析器に吸着したEOGによると考えられるアレルギ反応が起こり、重篤な場合には透析開始直後にショック症状を呈したり、喘息発作(透析喘息)を起こしたりする場合がある。特に、ショック症状の発症は、EOG残留量の多い中空糸型透析器の使用時に、比較的高い頻度で認められる。このため、EOGを使用しない高圧蒸気滅菌、放射線滅菌が採用されつつあり、これらの滅菌処理が可能な材料の開発が望まれている。
【0021】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるフッ素系樹脂は、化学的に安定で、溶出、吸収、及び変質をほとんど起こさず、生体親和性が高い。このため、フッ素系樹脂の、医療分野への応用が期待されている。ただし、PTFEは、放射線に対して弱い。このため、医療装置の一部にPTFEが使用されていると、放射線滅菌処理を行うことができない。
【0022】
ディスポーザブル医療用具は、通常、約25kGyの放射線照射により滅菌処理される。ところが、PTFEは、5kGy程度の放射線照射によっても、強度や伸び等の材料特性が初期の半分以下に低下してしまう。PTFEに25kGy程度の放射線照射を行うと、分子鎖の分解反応が起こり、材料特性が著しく低下し、製品としての信頼性も低下してしまう。このため、PTFEに代わる放射線滅菌可能な材料の出現が望まれている。
【0023】
本発明の目的は、耐放射線性に優れ、積極的に孔の大きさを制御することが可能な有孔中空糸の製造方法を提供することである。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明の一観点によると、架橋したフッ素系樹脂からなる中空の管を準備する工程と、前記管よりも太く、側壁に、軸方向に並んだ複数の孔が形成された管状マスク内に、前記管を挿入する工程と、前記管状マスクの孔を通過した放射光を、前記管の側壁に入射させて、該管の側壁に複数の孔を形成する工程と、前記孔の形成された管に、グラフト処理を施す工程とを有する有孔中空糸の製造方法は提供される。
【0027】
マスクの孔の大きさ及び間隔を調節することにより、架橋したフッ素系樹脂に形成する孔の大きさや分布密度を制御することができる。架橋したフッ素系樹脂は、耐放射線性に優れるため、放射線照射工程を含むグラフト処理を行うことが可能である。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明の参考例による機能性分離膜の製造方法について説明する。PTFE製の厚さ0.3mmの膜と厚さ0.05mmの膜(共に、ニチアス株式会社製のナフロンテープ)とを準備した。膜の大きさは、15cm×15cmである。この膜を、酸素不在下で340℃まで加熱し、100kGyの電子線照射を行った。この電子線照射により、PTFEが架橋される。架橋されたPTFEを、架橋PTFE(改質PTFE)と呼ぶ。なお、架橋PTFEを形成するためには、上記の電子線照射以外に、酸素分圧を1.3×104Pa(100Torr)以下、試料温度をPTFEの融点以上とし、電離性放射線を1kGy〜10MGyだけ照射してもよい。
【0034】
放射線照射により作製された架橋PTFE膜に、複数の孔が形成されたマスクの孔を通過した放射光を入射させて、架橋PTFEフィルムに複数の孔を形成する。
【0035】
図1及び図2を参照して、孔の形成方法について説明する。
【0036】
図1(A)は、シンクロトロン放射光(SR光)を用いた加工装置の概略図である。シンクロトロンに蓄積された電子の軌道1から光軸5に沿ってSR光2が放射される。光軸5に沿った光源から距離Lの位置に加工対象物(架橋PTFE膜)4が配置されている。加工対象物4の前方には、間隔Gだけ離れてマスク3が配置されている。電子軌道1、加工対象物4及びマスク3は同一の真空容器内に配置されている。
【0037】
マスク3には、SR光を実質的に透過させる領域と透過させない領域とが画定されている。なお、実質的に透過させる領域とは、加工対象物を加工するのに十分な強さのSR光を透過させる領域を意味し、実質的に透過させない領域とは、その領域をSR光が透過しないか、または透過したとしても透過光が加工対象物を加工しない程度の強さまで弱められるような領域を意味する。
【0038】
SR光2は、マスク3を介して加工対象物4の表面に照射される。加工対象物4の表面でSR光によるエッチングが生じ、SR光が照射された部分が剥離される。マスク3に微細なパターンを形成しておくことにより、加工対象物4の表面を微細に加工することができる。
【0039】
図1(B)は、加工部の断面図を示す。真空容器20内に試料保持台14が配置されている。試料保持台14の試料保持面に加工対象物4が保持されている。マスク3が、マスク保持手段17により加工対象物4の前面に配置されている。マスク3を加工対象物4の表面に密着させてもよいし、ある間隔を隔てて配置してもよい。加工時には、図の左方からマスク3を通して加工対象物4の表面にSR光2を照射する。
【0040】
試料保持台14は、例えばセラミックで形成され、内部にヒータ8が埋め込まれている。ヒータ8のリード線が、真空容器20の壁に取り付けられたコネクタ21の容器内側の端子に接続されている。コネクタ21の容器外側の端子が、電源7に接続されており、電源7からヒータ8に電流が供給される。ヒータ8に電流を流すことにより、加工対象物4を加熱することができる。
【0041】
試料保持台14の試料保持面に熱電対23が取り付けられている。熱電対23のリード線は、リード線取出口22を通して真空容器20の外部に導出され、温度制御装置9に接続されている。リード線取出口22は、例えばハンダ付けにより気密性が保たれている。温度制御装置9は、試料保持面の温度が所望の温度になるように、電源7を制御しヒータ8を流れる電流を調節する。
【0042】
図1(C)は、試料保持台の他の構成例を示す。試料保持台15の内部にガス流路16が形成されている。ガス流路16に所望の温度のガスを流してガスと加工対象物4との熱交換を行わせ、加工対象物を所望の温度に維持することができる。
【0043】
図2は、加工対象物4とマスク3のZ方向移動機構を示す。試料保持台14は、その試料保持面がSR光2の光軸(Y方向)に対してほぼ垂直になるように駆動機構10に取り付けられている。試料保持台14の試料保持面に加工対象物4が取り付けられており、加工対象物4の表面から間隔Gを隔ててマスク3が取り付けられている。
【0044】
駆動機構10には、ハンドル11、12及び13が取り付けられている。ハンドル11を回転すれば、試料保持台14が図の上下方向(Z方向)に移動する。ハンドル11をステッピングモータで回転することにより、ステージを所望の一定速度でZ方向に移動することができる。
【0045】
また、ハンドル12、13を回転すれば、試料保持台14はそれぞれ紙面に垂直な方向(X方向)及びY方向に移動する。ハンドル12、13により試料保持台14のX及びY方向の位置を微調整することができる。
【0046】
ハンドル12、13の操作により、加工対象物4をX方向及びY方向に移動させ、直径0.1μm程度の微小空孔を有する膜を作製することができる。なお、SR光の代わりに、架橋PTFEをエッチングするのに十分な波長及び光子密度を持つ他の放射光を用いてもよい。
【0047】
30μm×30μmの正方形の貫通孔が、10μm間隔(40μmピッチ)で行列状に配置されたマスクを用い、厚さ0.3mmの架橋PTFE膜の12cm×12cmの正方形の領域内に複数の微小貫通孔を形成した。さらに、4μm×4μmの正方形の貫通孔が、4μm間隔(8μmピッチ)で行列状に配置されたマスクを用い、厚さ0.05mmの架橋PTFE膜の12cm×12cmの正方形の領域内に複数の微小貫通孔を形成した。
【0048】
SR光は、平行度の高い光線束であるため、高アスペクト比の孔を形成することができる。このため、厚い膜に、微小な貫通孔を形成することができる。例えば、厚さ0.3mmの架橋PTFE膜に形成した貫通孔のアスペクト比は約10であり、厚さ0.05mmの架橋PTFE膜に形成した貫通孔のアスペクト比は約12.5である。
【0049】
貫通孔を形成した2枚の架橋PTFE膜の各々から、6cm×6cmの正方形の部分を切り出した。この架橋PTFE膜を、ブレーカブルシール付の容積40mlのガラスアンプル内に装填し、真空脱気した。室温で、コバルト60によるガンマ線を30kGy照射した。この照射により、グラフト反応の開始点となるラジカルが生成される。
【0050】
ガンマ線の照射後、十分に凍結脱気を行ったビニルピロリドンを、真空下のガラスアンプル内に、ブレーカブルシールを通して気相で導入し、60℃で2時間保持しグラフト反応させた。グラフト反応前後の架橋PTFE膜の重量変化からグラフト率を求めたところ、厚さ0.3mmの試料のグラフト率は4.7%であり、厚さ0.05mmの試料のグラフト率は5.4%であった。架橋PTFE膜に、ビニルピロリドンによるグラフト処理を施すことにより、膜表面を親水性に変化させることができる。
【0051】
グラフト処理を施した架橋PTFE膜と、ポリ塩化ビニル製フィルムを用いて、輸血用フィルタを模擬した分離装置を作製した。
【0052】
図3に、分離装置の概略断面図を示す。厚さ0.3mmの架橋PTFE膜30と、厚さ0.05mmの架橋PTFE膜31とが重ね合わされている。ポリ塩化ビニル製フィルム32及び33が、2枚の架橋PTFE膜30と31とを挟み込む。厚さ0.3mmの架橋PTFE膜30と、ポリ塩化ビニル製フィルム32との間の空間35に、流入口34が連続し、厚さ0.05mmの架橋PTFE膜31とポリ塩化ビニル製フィルム33との間の空間37に、流出口36が連続している。液体が、流入口34から空間35内に流入し、架橋PTFE膜30及び31の貫通孔を通過して、空間37内から流出口36を通って外部に流出する。
【0053】
図3に示した分離装置を用い、保存液を添加した雑種犬の血液の分離試験を行った。架橋PTFE膜30の表面に、大凝集塊、微小凝集塊、及び白血球の一部が集積し、架橋PTFE膜31の表面に、白血球が集積した。このように、白血球を除去することができた。
【0054】
架橋PTFEは、耐放射線性に優れているため、グラフト反応の開始点となるラジカルの生成のための放射線照射を行うことができる。グラフト反応においては、基材(参考例の場合の架橋PTFE)と反応物質(参考例の場合のビニルピロリドン)とが化学的に結合するため、反応物質の溶出を防止することができる。また、膜材として、架橋PTFEを使用することにより、高強度で、化学的安定性、耐熱性、耐摩耗性、耐放射線性に優れ、溶出、膨潤、経時劣化の少ない分離膜が得られる。
【0055】
上記参考例では、架橋PTFE膜に、マスクの貫通孔を通過したSR光を照射することによって、微細加工が行われる。このため、膜材の性質の統計的分布に影響を受けることなく、所望の大きさの貫通孔を、所望の密度で形成することができる。貫通孔の大きさのばらつきを少なくすることができるため、分離性能の高い機能性分離膜を得ることができる。貫通孔の分布密度を高めることにより、膜の単位面積あたりの分離能または吸着能を高めることができる。SR光の照射によって、直径0.1μmの円を内包する微小な貫通孔を容易に形成することができる。また、直径が200μmの円に内包される大きさの貫通孔を形成することにより、SR光による微細加工の特徴が生かされる。
【0056】
PTFEの架橋度を高めると、SR光による微細加工が容易になる。これにより、加工精度の向上、加工面の平滑化を図ることが可能になると共に、加工時間を短縮することができる。
【0057】
上記参考例では、血液中の白血球を分離する分離装置を作製したが、分離膜の貫通孔の大きさを変えることにより、血液中の他の成分の分離や、液体中の不純物除去等の目的に使用することができる。また、分離膜の吸着等の作用により、選択的に血液中の病原物質を除去することも可能であろう。
【0058】
上記参考例では、図2に示した試料保持台14をX方向及びZ方向に移動させることにより、大面積の膜を加工することができる。このため、上記参考例による方法は、工業的生産に適している。
【0059】
次に、本発明の実施例について説明する。上記参考例では、架橋PTFE膜に貫通孔を形成したが、実施例では、中空の管の側壁に貫通孔を形成し、人工血管を作製する。
【0060】
まず、PTFE製のチューブ(ニチアス株式会社製のナフロンチューブ)を準備する。チューブの外径は2.0mm、内径は1.0mm、肉厚は0.5mm、長さは10cmである。参考例の場合と同様に、このチューブに電子線を照射することによって架橋処理を施し、架橋PTFEチューブを作製する。
【0061】
図4(A)に示すように、架橋PTFEチューブ50にメタルワイヤ51を挿入し、図1(A)に示した加工装置の試料保持台14の位置に保持する。架橋PTFEチューブ50の前方に、マスク52を配置する。マスク52には、50μm間隔で一列に配列した直径100μmの貫通孔が20個形成されている。架橋PTFEチューブの長手方向を、マスク52の貫通孔の配列方向と一致させてSR光2を照射する。これにより、架橋PTFEチューブ50の側壁に、一列に配列した20個の貫通孔が形成される。
【0062】
架橋PTFEチューブ50を、15°回転させて、2回目のSR光2の照射を行う。架橋PTFEチューブ50の回転と、SR光2の照射とを繰り返すことにより、貫通孔の列が24列形成される。
【0063】
図4(B)に示すように、板状マスクの代わりに、側壁に複数の貫通孔が形成された管状マスク52Aを用いてもよい。管状マスク52A内に加工対象物である架橋PTFEチューブ50を挿入することにより、マスクと加工対象物との位置合わせを容易に行うことができる。
【0064】
側壁に貫通孔が形成された架橋PTFEチューブ50に内皮細胞を植え付けることにより、人工血管を作製する。なお、内皮細胞を植え付ける前に、架橋PTFEチューブ50にグラフト処理を施してもよい。以下、内皮細胞を植え付ける方法の一例を説明する。
【0065】
架橋PTFEチューブの表面に、血液を凝固させる。その後、培養内皮細胞を分散させた血液を架橋PTFEチューブ内に流し込んで、その表面に内皮細胞を植え付ける。植え付けられた内皮細胞を培養し、架橋PTFEチューブの表面を、ほぼ100%内皮細胞で被覆する。チューブの内側の表面に形成された内皮細胞と、外側の表面に形成された内皮細胞とが、側壁に形成されている貫通孔を介して連結する。このため、内皮細胞が剥離しにくくなる。このようにして、抗血栓性、生体親和性に優れたハイブリッド型人工血管が得られる。
【0066】
上記実施例による方法では、マスクに設けられた貫通孔の大きさやピッチを調節することにより、架橋PTFEチューブに形成する貫通孔の大きさや密度を制御することができる。このため、材料の性質の統計的分布の影響を受けることなく、所望の貫通孔を形成することができる。
【0067】
実施例による方法で側壁に貫通孔を形成した架橋PTFEチューブに、グラフト処理を施して、その表面を親水性に変えることも可能である。
【0068】
上記参考例及び実施例では、PTFEに放射線を照射して架橋させた架橋PTFEを用いている。架橋PTFEは、PTFEに比べて、耐放射線性に優れている。このため、架橋PTFEを用いた医療用具は、放射線滅菌処理を行うことができる。架橋PTFE(改質PTFE)のより詳細な製造方法が、特開平6−116423号公報及び特開平7−118423号公報に開示されている。
【0069】
上記参考例及び実施例では、膜材やチューブ材として架橋PTFEを用いたが、その他のフッ素系樹脂を架橋させた架橋フッ素系樹脂を用いることもできる。フッ素系樹脂として、例えばテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が挙げられる。これらのフッ素系樹脂の架橋(改質)については、特開平11−49867号公報に開示されている。
【0070】
上記参考例及び実施例では、架橋PTFEからなる膜やチューブを微細加工した医療用具について説明したが、これらの膜やチューブは、医療分野のみならず、工業分野で用いることも可能である。例えば、多数の微小貫通孔を形成した架橋PTFE膜は、エアフィルタ等として利用可能である。参考例及び実施例による方法では、高アスペクト比の貫通孔を形成することができるため、厚い膜を用いることが可能であるこのため、高圧力の厳しい条件下でも使用可能なフィルタが得られる。また、膜厚と貫通孔の大きさとの組み合わせを適当に選択することにより、分離対象と分離時間とを制御し、液体クロマトグラフィ用の膜として利用することも可能であろう。また、マイクロマシン用の部品、微小センサ用の部品等にも応用可能であろう。
【0071】
上記参考例及び実施例では、架橋PTFEにグラフト処理を施すことにより、親水性を付与したが、他の機能、例えばイオン交換性、選択吸着性、親油性等を付与することも可能である。これらの技術については、特開2001−48923号公報に開示されている。
【0072】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、孔の大きさや分布密度を積極的に制御した機能成分膜や有孔中空糸を得ることができる。この機能性分離膜を用いて、分離装置を作製することができる。また、有孔中空糸を用いて、人工血管を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で用いられる加工装置の概略図及び加工部の断面図である。
【図2】本発明の実施例で用いられる加工装置の駆動機構の正面図である。
【図3】本発明の実施例による分離装置の概略断面図である。
【図4】架橋PTFEチューブに貫通孔を形成するときの、架橋PTFEチューブとマスクとの配置を示す断面図である。
【符号の説明】
1 電子軌道
2 SR光
3 マスク
4 加工対象物
5 光軸
7 電源
8 ヒータ
9 温度制御装置
10 駆動機構
11、12、13 ハンドル
14、15 試料保持台
16 ガス流路
17 マスク保持手段
20 真空容器
21 コネクタ
22 リード線取出口
23 熱電対
30、31 架橋PTFE膜
32、33 ポリ塩化ビニル製フィルム
34 流入口
35、37 空間
36 流出口
50 架橋PTFEチューブ
51 ワイヤ
52、52A マスク
Claims (2)
- 架橋したフッ素系樹脂からなる中空の管を準備する工程と、
前記管よりも太く、側壁に、軸方向に並んだ複数の孔が形成された管状マスク内に、前記管を挿入する工程と、
前記管状マスクの孔を通過した放射光を、前記管の側壁に入射させて、該管の側壁に複数の孔を形成する工程と、
前記孔の形成された管に、グラフト処理を施す工程と
を有する有孔中空糸の製造方法。 - 前記管状マスクに形成された孔が、直径0.1μmの円を内包し、直径200μmの円に内包される大きさである請求項1に記載の有孔中空糸の製造方法。
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