JP6154307B2 - ガスセンサ素子およびガスセンサ - Google Patents

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Description

本発明は、測定対象ガス中に含まれる特定ガスを検出するためのガスセンサ素子およびガスセンサ素子を備えたガスセンサに関する。
従来、測定対象ガス中(例えば排気ガス等)に含まれる特定ガス(例えば酸素等)を検出するためのガスセンサ素子、およびそのようなガスセンサ素子を備えるガスセンサが知られている。
ガスセンサ素子は、板型の固体電解質体および固体電解質体の外面に形成される一対の電極部を有するセルと、アルミナを主体に形成されると共にセルに積層されて外表面を構成する絶縁基体と、を有する素子本体部を含む。
そして、このようなガスセンサ素子は、製造工程において、未焼成のガスセンサ素子の表面に付着した脱粒屑などが絶縁基体の主成分(アルミナ)と反応して異常粒成長することにより、ガスセンサ素子の強度低下が生じるという問題があった。このような強度低下が生じると、例えば、ガスセンサ素子が挿通されてハウジングに固定される挿通部材にガスセンサ素子を組み付ける際、組み付け時の圧力等によって、ガスセンサ素子が破損する場合がある。
これに対して、挿通部材に対向する部位に、アルミナよりも高靱性な材料(例えば、ジルコニアなど)を主成分とする塗布層を設けることで、ガスセンサ素子の強度を高める技術が提案されている(特許文献1)。
このように塗布層を備えることで、脱粒屑などの影響によるガスセンサ素子の強度低下を抑制でき、ガスセンサ素子の破損を低減できる。
特開2012−108104号公報
しかし、上記のガスセンサ素子においては、塗布層が絶縁基体とは異なる材料を主体に構成されるため、製造工程における塗布層と絶縁基体とのそれぞれの焼成挙動が異なる場合には、ガスセンサ素子に反りやクラックなどが生じる虞がある。
そこで、本発明は、素子本体部を備えるガスセンサ素子において、アルミナよりも高靱性な材料を主成分とする塗布層を用いることなくガスセンサ素子の強度低下を抑制すること、およびそのようなガスセンサ素子を備えるガスセンサを提供することを目的とする。
(1)本発明の第1の局面におけるガスセンサ素子は、測定対象ガスに含まれる特定ガスを検出するものであり、セルおよび絶縁基体を有する素子本体部を含む。
セルは、板型の固体電解質体と、固体電解質体の外面に形成される一対の電極部と、を備える。絶縁基体は、アルミナを主体に形成されると共にセルに積層されて素子本体部の外表面を構成する。
そして、ガスセンサ素子は、素子本体部の絶縁基体のうち、少なくともガスセンサ素子を挿通するための挿通部材に対向する領域において、絶縁基体に積層される表面層を備える。この表面層は、アルミナを主体としつつ、未安定化ジルコニアを含有しており、未安定化ジルコニアの含有量が15〜35vol%である。
このようなガスセンサ素子に備えられる表面層は、主体となる複数のアルミナ粒子同士が結合すると共に、このアルミナ粒子の隙間に未安定化ジルコニア粒子が配置される構成となる。
このような構成の場合には、挿通部材にガスセンサ素子を組み付ける際、挿通部材からの圧力が表面層に加わり、圧力による引張応力が表面層に加わり、表面層におけるアルミナの隙間が拡大すると推測される。この場合には、その隙間に存在する未安定化ジルコニアの結晶構造がT相からM相に変化する相変態が発生し、この相変態に伴い未安定化ジルコニアの体積が拡大すると推測する。このような未安定化ジルコニアの相変態(T相からM相)により引張応力のエネルギーを消費しつつ、隙間を形成するアルミナ粒子に対して未安定化ジルコニア粒子が圧縮応力を発生できると推測する。その結果、表面層の強度が向上し、表面層の破損を抑制できる。
なお、表面層における未安定化ジルコニアの含有量が15vol%未満の場合、未安定化ジルコニアが不足してしまい、相変態(T相からM相)が生じがたくなり、相変態によるエネルギー消費量が不十分となったり、圧縮応力が発生しにくくなると推測する。これに対して、表面層における未安定化ジルコニアの含有量が15vol%以上であることで、未安定化ジルコニアの相変態(T相からM相)によるエネルギー消費量を確保できると共に、十分な圧縮応力が発生すると推測する。その結果、表面層としての強度を向上でき、表面層の破損を抑制する。
また、表面層における未安定化ジルコニアの含有量が35vol%よりも大きい場合、表面層の特性に関して、未安定化ジルコニアとしての特性が強くなり、アルミナとしての特性が弱くなるため、未安定化ジルコニアとしての特性に近づくことになる。つまり、未安定化ジルコニアは強度が低いため、表面層の強度が低下することになる。これに対して、表面層における未安定化ジルコニアの含有量が35vol%以下であることで、表面層の強度低下を抑制できる。
その上、表面層はアルミナを主体に構成しているため、素子本体部の外表面を構成する絶縁基体(アルミナが主体)との焼成挙動がほぼ同一となるため、ガスセンサ素子に反りやクラックなどが生じることを抑制できる。
よって、このガスセンサ素子によれば、表面層を備えることで素子本体部の強度を向上できるため、アルミナよりも高靱性な材料を主成分とする塗布層を用いることなくガスセンサ素子の強度低下を抑制することができる。
なお、「アルミナを主体とする表面層」とは、アルミナの含有量が50vol%以上の表面層を意味しており、「アルミナを主体とする絶縁基体」とは、アルミナの含有量が50vol%以上の絶縁基体を意味している。
また、「未安定化ジルコニア」とは、純度99.9%のジルコニアであるか、もしくは安定化剤を実質的に含まないジルコニアのことを指す。なお、安定化剤を実質的に含まないジルコニアとは、安定化剤(例えば、イットリア、イッテルビウムなど)をジルコニアに全く含まないものだけでなく、安定化剤が安定化(または部分安定化)に寄与しない程度に不可避不純物として含有するものも含む。
(2)本発明の他の局面のガスセンサ素子においては、素子本体部は、セルを有する素子部と、発熱体を有するヒータ部と、が積層して構成されており、絶縁基体は、素子本体部のうちヒータ部側の外表面を構成してなり、表面層は、ヒータ部側の外表面を構成する絶縁基体に積層される。
素子本体部のうちヒータ部の近傍は、温度変化に伴う応力が発生しやすい領域となるため、応力に起因した素子本体部の割れが発生しやすくなると考えられる。そこで、ヒータ部側の外表面を構成する絶縁基体上に表面層を積層することで、ヒータ部側の外表面を構成する絶縁基体を起点とした破損が生じがたくなる。
よって、このガスセンサ素子によれば、素子本体部の強度低下を抑制できると共に、ガスセンサ素子の強度低下を抑制することができる。
(3)本発明のさらに他の局面のガスセンサ素子においては、絶縁基体は、素子本体部の外表面のうちセルに対する積層方向の両端となる2つの積層方向外表面を構成してなり、表面層は、素子本体部の外表面のうち2つの積層方向外表面に設けた絶縁基体のそれぞれに積層される。
絶縁基体が素子本体部の外表面のうち2つの積層方向外表面を構成している場合、絶縁基体のうち挿通部材に対向する領域は、それぞれ挿通部材からの外力による破損が生じやすい領域である。
そのため、2つの積層方向外表面を構成する絶縁基体に対して表面層を積層することで、2つの積層方向外表面を構成する絶縁基体を起点とした破損が生じがたくなる。
よって、このガスセンサ素子によれば、素子本体部の強度低下を抑制できると共に、ガスセンサ素子の強度低下を抑制することができる。
(4)本発明のさらに他の局面のガスセンサ素子においては、表面層に含まれるアルミナの粒径は、素子本体部の絶縁基体に含まれるアルミナの粒径と比べて同一あるいは小さく、表面層に含まれる未安定化ジルコニアの粒径は、素子本体部の絶縁基体に含まれるアルミナの粒径と比べて同一あるいは小さい。さらに、表面層に含まれるアルミナおよび未安定化ジルコニアのうち、いずれか一方の粒径は、素子本体部の絶縁基体に含まれるアルミナの粒径よりも小さい。
このように、表面層におけるアルミナおよび未安定化ジルコニアのそれぞれの粒径を、絶縁基体におけるアルミナの粒径と比べて、同一あるいは小さくすることで、焼成時における表面層の収縮率は、絶縁基体の収縮率に比べて大きくなる。
これにより、素子本体部の外表面(絶縁基体)に対して、表面層による圧縮応力が印加されることになり、これに伴い、素子本体部の強度が向上する。
よって、このガスセンサ素子によれば、素子本体部の強度低下を抑制できると共に、ガスセンサ素子の強度低下を抑制することができる。
(5)本発明のさらに別の局面のガスセンサは、測定対象ガスに含まれる特定ガスを検出するガスセンサ素子と、ガスセンサ素子を挿通する挿通部材と、を備えるガスセンサであって、ガスセンサ素子として、上述のいずれかのガスセンサ素子を備える。
このように、上述のいずれかのガスセンサ素子を備えるガスセンサは、表面層を備えることで素子本体部の強度を向上できるため、アルミナよりも高靱性な材料を主成分とする塗布層を用いることなくガスセンサ素子の強度低下を抑制することができる。
本発明によれば、表面層を備えることで素子本体部の強度を向上できるため、アルミナよりも高靱性な材料を主成分とする塗布層を用いることなくガスセンサ素子の強度低下を抑制することができる。
実施形態の空燃比センサを軸方向に沿って破断した状態を示す断面図である。 ガスセンサ素子を示す斜視図である。 ガスセンサ素子を分解して示す斜視図である。 ガスセンサ素子の成形体の製造方法に関する説明図である。 ガスセンサ素子の製造途中段階を示す説明図である。
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
なお、以下に示す実施形態では、ガスセンサの一種である酸素センサのうち全領域空燃比センサ(以下単に、空燃比センサともいう)を例に挙げる。具体的には、自動車や各種内燃機関における空燃比フィードバック制御に使用するために、測定対象となる排ガス中の特定ガス(酸素)を検出するガスセンサ素子(検出素子)が組み付けられるとともに、内燃機関の排気管に装着される空燃比センサを例に挙げて説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.全体構成]
本実施形態のガスセンサ素子が使用される空燃比センサの全体の構成について、図1に基づいて説明する。図1は、空燃比センサの内部構成を表す断面図である。
図1に示す様に、本実施形態における空燃比センサ1は、排気管に固定するためのネジ部3が外表面に形成された筒状の主体金具5と、軸線方向(空燃比センサ1の長手方向:図1の上下方向)に延びる板状形状のガスセンサ素子7と、ガスセンサ素子7の径方向周囲を取り囲むように配置される筒状のセラミックスリーブ9と、軸線方向に貫通する挿通孔11の内壁面がガスセンサ素子7の後端部の周囲を取り囲む状態で配置される絶縁コンタクト部材13(セパレータ13)と、ガスセンサ素子7とセパレータ13との間に配置される5個(図1には2個のみ図示)の接続端子15と、を備えている。
ガスセンサ素子7は、後に詳述する様に、長手方向に伸びる直方体形状の素子本体部70と、素子本体部70の先端側を覆う多孔質の保護層17と、素子本体部70のうち第1主面21の一部に積層される第1表面層22と、素子本体部70のうち第2主面23の一部に積層される第2表面層24と、を備える。素子本体部70は、その先端側に、測定対象ガスに含まれる特定ガスを検出する検知部90を備える。また、ガスセンサ素子7は、後端側(図1の上方:長手方向後端部)の外表面のうち表裏の位置関係となる第1主面21および第2主面23に、電極パッド25,27,29,31,33(詳細は、図2,図3参照)が形成されている。
接続端子15は、ガスセンサ素子7の電極パッド25,27,29,31,33にそれぞれ電気的に接続されるとともに、外部からセンサの内部に配設されるリード線35にも電気的に接続されており、リード線35が接続される外部機器と電極パッド25,27,29,31,33との間に流れる電流の電流経路を形成する。
主体金具5は、軸線方向に貫通する貫通孔37を有し、貫通孔37の径方向内側に突出する棚部39を有する略筒状形状に構成されている。この主体金具5は、検知部90を貫通孔37の先端よりも先端側に配置し、電極パッド25,27,29,31,33を貫通孔37の後端よりも後端側に配置する状態で、貫通孔37に挿通されたガスセンサ素子7を保持するよう構成されている。
また、主体金具5の貫通孔37の内部には、ガスセンサ素子7の径方向周囲を取り囲む状態で、環状形状のセラミックホルダ41、滑石リング43、滑石リング45、及び上述のセラミックスリーブ9が、この順に先端側から後端側にかけて積層されている。
このセラミックスリーブ9と主体金具5の後端部47との間には、加締パッキン49が配置され、一方、セラミックホルダ41と主体金具5の棚部39との間には、滑石リング43やセラミックホルダ41を保持するための金属ホルダ51が配置されている。なお、主体金具5の後端部47は、加締パッキン49を介してセラミックスリーブ9を先端側に押し付けるように、加締められている。
更に、主体金具5の先端部53の外周には、ガスセンサ素子7の突出部分を覆う金属製(例えば、ステンレスなど)の二重構造とされたプロテクタ55が溶接等によって取り付けられている。
一方、主体金具5の後端側外周には、外筒57が固定されている。また、外筒57の後端側の開口部には、各電極パッド25,27,29,31,33とそれぞれ電気的に接続される5本のリード線35(図1では3本が図示)が挿通されるリード線挿通孔59が形成されたグロメット61が配置されている。
なお、セパレータ13の外周には、鍔部63が形成されており、鍔部63は、保持部材65を介して外筒57に固定されている。
[1−2.ガスセンサ素子の構成]
次に、本実施形態の要部であるガスセンサ素子7の構成について、図2〜図3に基づいて詳細に説明する。
図2は、ガスセンサ素子7の外観を表す斜視図である。
図2に示す様に、ガスセンサ素子7は、長手方向(Y軸方向)に延びる長尺の板材である。なお、図2において、長手方向がガスセンサの軸線方向に沿う形態となる。また図2のZ軸方向は、長手方向に垂直な積層方向であり、X軸方向は、長手方向及び積層方向に垂直な幅方向である。
ガスセンサ素子7は、長手方向に伸びる直方体形状の素子本体部70と、素子本体部70の先端側(図2における下側)を覆う多孔質の保護層17と、素子本体部70のうち第1主面21の一部に積層される第1表面層22と、素子本体部70のうち第2主面23の一部に積層される第2表面層24と、を備える。
素子本体部70は、長手方向に伸びる板状の素子部71と、同じく長手方向に延びる板状のヒータ73と、が積層されて構成されている(図3参照)。素子本体部70は、その先端側に、測定対象ガスに含まれる特定ガスを検出する検知部90を備える。保護層17は、少なくとも検知部90を覆うように、素子本体部70の先端面127及び側面(第1主面21,第2主面23,第1側面111、第2側面113)上に設けられる。
図3に、ガスセンサ素子7を分解した斜視図を示す。なお、図3では、保護層17、および後述する第1長辺面取り部121,第2長辺面取り部122,第3長辺面取り部123,第4長辺面取り部の図示を省略している。
ガスセンサ素子7の素子本体部70は、図3に分解して示す様に、積層方向の一方の側(図3の上側)に配置されて、長手方向に伸びる板状の素子部71と、素子部71の反対側(裏側)に配置されて、同じく長手方向に延びる板状のヒータ73と、を備える。
このうち、素子部71は、固体電解質体75の両側に多孔質電極77、79を形成した酸素濃淡電池セル81と、同じく固体電解質体83の両側に多孔質電極85、87を形成した酸素ポンプセル89と、これらの両セル81、89の間に積層され、中空のガス測定室91を形成するための絶縁スペーサ93と、を備えて構成される。なお、固体電解質体75,83は、イットリアを安定化剤として固溶させたジルコニアから形成され、多孔質電極77,79,85,87は、Ptを主体に形成される。
また、ガス測定室91を形成する絶縁スペーサ93は、アルミナを主体に構成されており、中空のガス測定室91の内側には、酸素濃淡電池セル81の一方の多孔質電極77と、酸素ポンプセル89の一方の多孔質電極87が露出するように配置されている。
素子部71の側面(絶縁スペーサ93の側面)には、排ガス(測定対象ガス)の取り込み口となる2つのガス導入部94が形成されており、ガス導入部94は、ガス測定室91に連通している。2つのガス導入部94からガス測定室91までの各経路には、拡散律速部95が形成されている。拡散律速部95は、例えば、アルミナ等からなる多孔質体で構成されており、測定対象ガスがガス測定室91へ流入する際の律速を行う。拡散律速部95は、その一部がガス導入部94から露出する状態で備えられている。
つまり、このガスセンサ素子7においては、ガス導入部94は、素子本体部70の最外面において異なる2方向に向けて形成されており、拡散律速部95は、異なる2方向に向けて露出している。
更に、素子部71の第1主面21側(図3上方)にはアルミナを主体とする絶縁基板97が積層されており、この絶縁基板97には、拡散律速部95と同様に、多孔質体で構成された通気部99が埋設されている。この通気部99は、酸素ポンプセル89の多孔質電極85を測定対象ガスに晒している。
なお、ガス測定室91は、素子本体部70(詳細には、素子部71)のうち先端側(図3における左側)に位置するように形成されている。素子部71の長手方向のうち、ガス測定室91の形成領域およびガス測定室91よりも先端側となる領域は、酸素を検知するための検知部90として備えられる。
一方、ヒータ73は、アルミナを主体とする絶縁基板101、103の間に、Ptを主体とする発熱抵抗体パターン105が挟み込まれて形成されている。
このようなガスセンサ素子7では、第1主面21の後端側(図3における右側)に3個の電極パッド25,27,29が形成され、第2主面23の後端側に2個の電極パッド31、33が形成されている。
このうち、第1主面21の1つの電極パッド29(図2の右側電極パッド)は、図3に示すように、絶縁基板97に設けられるスルーホール161、固体電解質体83に設けられるスルーホール165、絶縁スペーサ93に設けられるスルーホール171を介して、ガス測定室91の内側に露出する酸素濃淡電池セル81の一方の多孔質電極77に電気的に接続される。また、この電極パッド29は、絶縁基板97に設けられるスルーホール161、固体電解質体83に設けられるスルーホール165を介して、ガス測定室91の内側に露出する酸素ポンプセル89の一方の多孔質電極87にも電気的に接続される。よって、多孔質電極77と多孔質電極87とは、同電位で電気的に接続される。
また、他の電極パッド27(図2の中央電極パッド)は、図3に示すように、絶縁基板97に設けられるスルーホール162、固体電解質体83に設けられるスルーホール166、絶縁スペーサ93に設けられるスルーホール172、固体電解質体75に設けられるスルーホール176を介して、酸素濃淡電池セル81の他方の多孔質電極79と電気的に接続される。更に他の電極パッド25(図2の左側電極パッド)は、図3に示すように、絶縁基板97に設けられるスルーホール163を介して、酸素ポンプセル89の他方の多孔質電極85と電気的に接続されている。
また、電極パッド31、33は、図3に示すように、絶縁基板103に設けられたスルーホール181,182を介して、発熱抵抗体パターン105の両端に、各々電気的に接続されている。
図2に戻り、上述した構成のガスセンサ素子7は、長尺の略直方体形状の板材であるので、その径方向の外周側の角部には、その長手方向(図2のY方向)に沿って伸びる4つの辺(長手稜線)H1、H2、H3、H4を備えている。
詳しくは、ガスセンサ素子7は、ガスセンサ素子7の長手方向に沿って延びる4つの外周壁として、第1主面21および第2主面23と、第1主面21および第2主面23に連接された第1側面111および第2側面113と、を備えている。また、第1主面21と第1側面111との間の稜線である第1辺H1と、第1主面21と第2側面113との間の稜線である第2辺H2と、第2主面23と第2側面113との間の稜線である第3辺H3と、第2主面23と第1側面111との間の稜線である第4辺H4とを備えている。
第1辺H1,第2辺H2,第3辺H3,第4辺H4には、それぞれC面取り量0.2mmのC面取りが施されて形成された第1長辺面取り部121,第2長辺面取り部122,第3長辺面取り部123,第4長辺面取り部が設けられている。なお、図2では、第4長辺面取り部が現れないため、第4長辺面取り部についての符号による図示は省略している。
ガスセンサ素子7の後端側(図2の上方)は、その中央に(長手方向と垂直な)後端面129を残す様にして、後端面129の周囲の四方の稜線に対してC面取りを施すことで、後端側C面取り部131が形成されている。
保護層17は、多孔質状のアルミナで構成されており、素子本体部70のうち少なくとも検知部90を覆うように形成されている。
第1表面層22は、素子本体部70のうち第1主面21の一部に積層されており、アルミナを主体としつつ、未安定化ジルコニアを含有して形成されている。
第2表面層24は、素子本体部70のうち第2主面23の一部に積層されており、アルミナを主体としつつ、未安定化ジルコニアを含有して形成されている。
第1表面層22および第2表面層24については、次の項目で詳細に説明する。
[1−3.第1表面層および第2表面層]
第1表面層22は、上述のように、素子本体部70のうち第1主面21の一部に積層されている。具体的には、素子本体部70の第1主面21のうち、セラミックスリーブ9,セラミックホルダ41,滑石リング43,滑石リング45に対向する領域に、第1表面層22が積層されている。
また、第1表面層22は、上述のように、アルミナを主体としつつ、未安定化ジルコニアを含有して形成されている。なお、本実施形態では、第1表面層22におけるアルミナの含有量は82.6vol%(50vol%以上)であり、未安定化ジルコニアの含有量は17.4vol%(15vol%〜35vol%)である。
第2表面層24は、上述のように、素子本体部70のうち第2主面23の一部に積層されている。具体的には、素子本体部70の第2主面23のうち、セラミックスリーブ9,セラミックホルダ41,滑石リング43,滑石リング45に対向する領域に、第2表面層24が積層されている。
また、第2表面層24は、上述のように、アルミナを主体としつつ、未安定化ジルコニアを含有して形成されている。なお、第2表面層24におけるアルミナの含有量は82.6vol%(50vol%以上)であり、未安定化ジルコニアの含有量は17.4vol%(15vol%〜35vol%)である。
第1表面層22および第2表面層24は、それぞれ厚さ寸法が20[μm]である。
また、第1表面層22および第2表面層24に含有されるアルミナの粒径は0.2[μm]であり、第1表面層22および第2表面層24に含有される未安定ジルコニアの粒径は0.3[μm]である。
なお、素子部71の絶縁基板97に含有されるアルミナの粒径は0.5[μm]であり、ヒータ73の絶縁基板103に含有されるアルミナの粒径は0.5[μm]である。
第1表面層22は、アルミナの隙間に未安定化ジルコニアが配置される構成となる。第1表面層22に対して外力が印加されていない状態では、未安定化ジルコニアは、アルミナからの拘束力を受けて、結晶構造がT相の状態で存在する。
もし、セラミックスリーブ9などからの外力が第1表面層22に加わり、アルミナの隙間が拡大した場合には、その隙間に存在する未安定化ジルコニアの結晶構造がT相からM相に変化する相変態が発生し、この相変態に伴い未安定化ジルコニアの体積が拡大する。このような未安定化ジルコニアの相変態(T相からM相)によりエネルギーを消費することで、第1表面層22の破損を抑制できるため、第1表面層22としての靱性および強度が向上する。
第2表面層24についても、第1表面層22と同様に、外力が加わりアルミナの隙間が拡大した場合には、その隙間に存在する未安定化ジルコニアの結晶構造がT相からM相に変化する相変態が発生し、この相変態によりエネルギーを消費することで、第2表面層24の破損を抑制できるため、第2表面層24としての靱性および強度が向上する。
[1−4.ガスセンサの製造方法]
本実施形態の空燃比センサ1の製造方法について、図4〜図5に基づいて説明する。
図4は、ガスセンサ素子の成形体141の製造方法に関する説明図であり、図5は、ガスセンサ素子の製造途中段階を示す説明図である。
ガスセンサ素子7を製造する場合、まず、公知のガスセンサ素子7の材料となる各種積層材料、即ち、素子部71の固体電解質体75、83となる未焼成固体電解質シートや、ヒータ73などの絶縁基板97、101、103となる未焼成絶縁シートなどを積層状態とし、未圧着積層体を得る。なお、この未圧着積層体には、電極パッド25,27,29,31,33となる未焼成電極パッドなどが形成されている。
これらのうち、例えば、未焼成固体電解質シートを形成する場合、まず、ジルコニアを主体とするセラミック粉末に対して、アルミナ粉末やブチラール樹脂などを加えて、さらに混合溶媒(トルエン及びメチルエチルケトン)を混合して、スラリーを生成する。そして、このスラリーをドクターブレード法によりシート状とし、混合溶媒を揮発させることで未焼成固体電解質シートが作製される。
また、未焼成絶縁シートを形成する場合、まず、アルミナを主体とするセラミック粉末に対して、ブチラール樹脂とジブチルフタレートとを加えて、更に混合溶媒(トルエン及びメチルエチルケトン)を混合して、スラリーを生成する。そして、このスラリーをドクターブレード法によりシート状とし、混合溶媒を揮発させることで未焼成絶縁シートが作製される。
さらに、未焼成の拡散律速部を形成する場合、まず、アルミナ粉末100質量%及び可塑剤を湿式混合により分散したスラリーを生成する。可塑剤はブチラール樹脂及びDBPを有する。このスラリーを用い、焼成後に拡散律速部95や通気部99となる部位に、未焼成の拡散律速部を形成する。
そして、この未圧着積層体を1MPaで加圧することにより、図4に示す様な圧着された成形体141を得る。なお、加圧前の未圧着積層体を得るまでの製造方法については、公知のガスセンサ素子の製造方法と同様であるため詳細な説明は省略する。
そして、加圧により得られた成形体141を、所定の大きさで切断することにより、ガスセンサ素子7の素子部71およびヒータ73と大きさが略一致する複数(例えば10個)の未焼成積層体を得る。
次に、未焼成積層体に対して、第1表面層22,第2表面層24となる未焼成表面層を積層する。
未焼成表面層を形成する場合、まず、アルミナを主体とするセラミック粉末に対して、未安定化ジルコニアを加えて、更にブチラール樹脂、ブチルカルビトール、および混合溶媒(メチルエチルケトン)を混合して、スラリーを生成する。そして、このスラリーをスクリーン印刷により未焼成積層体に印刷することで、未焼成表面層が形成される。
その後、未焼成表面層が形成された未焼成積層体を樹脂抜きし、さらに焼成温度1500℃にて、1時間で本焼成して、図5に示す様な焼成積層体143を得る。
次に、この焼成積層体143の長手方向に伸びる4辺(第1辺H1,第2辺H2,第3辺H3,第4辺H4)に対して面取りを行い、第1長辺面取り部121,第2長辺面取り部122,第3長辺面取り部123,第4長辺面取り部を形成する(図2参照)。具体的には、焼成積層体143の長手方向に伸びる4辺(第1辺H1,第2辺H2,第3辺H3,第4辺H4)を回転砥石に当接して、周知のC面取りを行う。これにより、素子本体部70を得る。
このようにして第1表面層22,第2表面層24が積層された素子本体部70を得た後、この素子本体部70の先端側の周囲に、焼成後に保護層17(図2参照)となる未焼成保護層を形成する。
その後、未焼成保護層の熱処理を行う。具体的には、未焼成保護層が形成された素子本体部70を、熱処理温度1000℃、熱処理時間3時間で熱処理を行い、保護層17が形成されたガスセンサ素子7を得る。
このようにしてガスセンサ素子7を得た後、ガスセンサ素子7を主体金具5に組み付ける組付工程を行う。
即ち、この工程では、上記製造方法で作製されたガスセンサ素子7を金属ホルダ51に挿入し、さらにガスセンサ素子7をセラミックホルダ41、滑石リング43で固定し、組み立て体を作製する。その後、この組み立て体を主体金具5に固定し、ガスセンサ素子7の軸線方向後端部側を滑石リング45、セラミックスリーブ9に挿通させつつ、これらを主体金具5に挿入する。
そして、主体金具5の後端部47にてセラミックスリーブ9を加締め、下部組立体を作製する。なお、下部組立体には、あらかじめプロテクタ55が取付けられている。
一方、外筒57、セパレータ13、グロメット61などを組みつけ、上部組立体を作製する。そして、下部組立体と上部組立体とを接合し、空燃比センサ1を得る。
[1−5.比較試験]
本発明のガスセンサ素子における強度試験の試験結果について説明する。
本試験では、第1表面層22および第2表面層24におけるアルミナおよび未安定化ジルコニアの比率が異なる5種類のガスセンサ素子(実施例1,2、比較例1〜3)について、それぞれの強度を測定した。
また、比較例4として、表面層を有さないガスセンサ素子の強度を測定し、比較例5として、絶縁基板97および絶縁基板103と同一材料,同一組成比の表面層を積層したガスセンサ素子の強度を測定した。なお、比較例5のジルコニアは、未安定化ジルコニアではなく、イットリアを5.4mol%含有した部分安定化ジルコニアである。
なお、本試験では、「JIS R 1601」に基づいて、ガスセンサ素子における3点曲げ強度を測定した。
試験結果を[表1]に示す。
試験結果によれば、表面層を有さないガスセンサ素子である比較例4の強度に比べて、実施例1および実施例2はいずれも強度が大きくなった。他方、比較例1〜3,5は、いずれも比較例4の強度に比べて、強度が小さくなった。
これは、表面層における未安定化ジルコニアの含有量が15vol%未満の場合、未安定化ジルコニアが不足してしまい、相変態(T相からM相)が生じがたくなり、相変態によるエネルギー消費量が不十分となったり、圧縮応力が発生しにくくなると推測する。このため、比較例1は、表面層を有しない比較例4に比べて、強度が低下している。
これに対して、実施例1および実施例2のように、表面層における未安定化ジルコニアの含有量が15vol%以上である場合には、未安定化ジルコニアの相変態(T相からM相)によるエネルギー消費量を確保できると共に十分な圧縮応力が発生すると推測する。その結果、表面層としての強度を向上でき、表面層の破損を抑制する。このため、実施例1および実施例2は、表面層を有しない比較例4に比べて、強度が向上している。
また、表面層における未安定化ジルコニアの含有量が35vol%よりも大きい場合、表面層の特性に関して、未安定化ジルコニアとしての特性が強くなり、アルミナとしての特性が弱くなるため、表面層の特性が未安定化ジルコニアとしての特性に近づくことになる。つまり、未安定化ジルコニアは強度が低いため、表面層の強度が低下することになる。このため、比較例2および比較例3は、表面層を有しない比較例4に比べて、強度が低下している。
これに対して、実施例1および実施例2のように、表面層における未安定化ジルコニアの含有量が35vol%以下である場合には、表面層は、未安定化ジルコニアとしての特性が弱くなり、アルミナとしての特性が強くなるため、強度低下を抑制できる。このため、実施例1および実施例2は、表面層を有しない比較例4に比べて、強度が向上している。
また、比較例5は、絶縁基板97および絶縁基板103と同一材料,同一組成比の表面層を積層した構成であるが、絶縁基板97および絶縁基板103と同一材料,同一組成比の表面層を積層しても、ガスセンサ素子の強度が必ずしも向上しないことが判る。
これらのことから、第1表面層22および第2表面層24における未安定化ジルコニアの含有量を15〜35vol%の範囲内に設定することで、ガスセンサ素子の強度が向上することが判る。
[1−6.効果]
以上説明したように、本実施形態の空燃比センサ1におけるガスセンサ素子7は、素子本体部70(素子部71)の絶縁基板97のうちガスセンサ素子7を挿通するためのセラミックスリーブ9などに対向する領域において、絶縁基板97に積層される第1表面層22を備える。
また、ガスセンサ素子7は、素子本体部70(ヒータ73)の絶縁基板103のうちガスセンサ素子7を挿通するためのセラミックスリーブ9などに対向する領域において、絶縁基板103に積層される第2表面層24を備える。
第1表面層22および第2表面層24は、それぞれ、アルミナを主体としつつ、未安定化ジルコニアを含有しており、未安定化ジルコニアの含有量が17.4vol%(15vol%〜35vol%)である。
第1表面層22および第2表面層24は、それぞれ、主体となる複数のアルミナ粒子同士が結合すると共に、このアルミナ粒子の隙間に未安定化ジルコニア粒子が配置される構成となる。第1表面層22および第2表面層24は、それぞれ、セラミックスリーブ9などからの外力が印加されていない状態では、未安定化ジルコニアは、アルミナからの拘束力を受けて、結晶構造がT相の状態で存在する。
このような構成の場合には、セラミックスリーブ9などにガスセンサ素子7を組み付ける際、セラミックスリーブ9などからの圧力が第1表面層22に加わり、圧力による引張応力が第1表面層22に加わり、第1表面層22におけるアルミナの隙間が拡大すると推測される。この場合には、その隙間に存在する未安定化ジルコニアの結晶構造がT相からM相に変化する相変態が発生し、この相変態に伴い未安定化ジルコニアの体積が拡大すると推測する。このような未安定化ジルコニアの相変態(T相からM相)により引張応力のエネルギーを消費しつつ、隙間を形成するアルミナ粒子に対して未安定化ジルコニア粒子が圧縮応力を発生できると推測する。その結果、第1表面層22の強度が向上し、第1表面層22の破損を抑制できる。
第2表面層24についても、第1表面層22と同様に、外力が加わりアルミナの隙間が拡大した場合には、その隙間に存在する未安定化ジルコニアの結晶構造がT相からM相に変化する相変態が発生し、この相変態により引張応力のエネルギーを消費しつつ、隙間を形成するアルミナ粒子に対して未安定化ジルコニア粒子が圧縮応力を発生できると推測する。その結果、第2表面層24の強度が向上し、第2表面層24の破損を抑制できる。
なお、第1表面層22および第2表面層24は、未安定化ジルコニアの含有量が17.4vol%である。そして、上述の比較試験結果によれば、第1表面層22および第2表面層24における未安定化ジルコニアの含有量を15〜35vol%の範囲内に設定することで、ガスセンサ素子の強度が向上することが判っている。本実施形態の第1表面層22および第2表面層24における未安定化ジルコニアの含有量は、この数値範囲に含まれる。
つまり、第1表面層22および第2表面層24は、未安定化ジルコニアの含有量が15vol%以上であるため、未安定化ジルコニアの相変態(T相からM相)によるエネルギー消費量を確保できると共に、十分な圧縮応力が発生すると推測する。その結果、第1表面層22および第2表面層24としての強度を向上でき、第1表面層22および第2表面層24の破損を抑制できる。
また、上述の比較試験結果から判るように、第1表面層22および第2表面層24は、未安定化ジルコニアの含有量が35vol%以下であるため、未安定化ジルコニアとしての特性が弱くなり、アルミナとしての特性が強くなるため、強度低下を抑制できる。
その上、第1表面層22および第2表面層24はアルミナを主体に構成しているため、素子本体部70の外表面を構成する絶縁基板97および絶縁基板103(アルミナが主体)との焼成挙動がほぼ同一となるため、ガスセンサ素子7に反りやクラックなどが生じることを抑制できる。
よって、本実施形態のガスセンサ素子7によれば、第1表面層22および第2表面層24を備えることで素子本体部70の強度を向上できるため、アルミナよりも高靱性な材料を主成分とする塗布層を用いることなくガスセンサ素子7の強度低下を抑制することができる。
また、ガスセンサ素子7においては、第2表面層24が素子本体部70のうちヒータ73側の外表面を構成する絶縁基板103に積層されている。
素子本体部70のうちヒータ73の近傍は、温度変化に伴う応力が発生しやすい領域となるため、応力に起因した素子本体部の割れが発生しやすくなると考えられる。そこで、ヒータ73側の外表面を構成する絶縁基板103に第2表面層24を積層することで、ヒータ73側の外表面を構成する絶縁基板103を起点とした破損が生じがたくなる。
さらに、ガスセンサ素子7においては、ヒータ73の絶縁基板103に第2表面層24が積層されるとともに、素子部71の絶縁基板97に第1表面層22が積層されている。換言すれば、絶縁基板97および絶縁基板103は、素子本体部70の外表面のうちセル(酸素濃淡電池セル81、酸素ポンプセル89)に対する積層方向の両端となる2つの積層方向外表面(第1主面21および第2主面23)を構成している。また、第1表面層22および第2表面層24は、素子本体部70の外表面のうち2つの積層方向外表面に設けた絶縁基板97および絶縁基板103のそれぞれに積層される。
素子本体部70の外表面のうち、素子部71およびヒータ73の積層方向に垂直な外表面(第1主面21および第2主面23)は、空燃比センサ1への組み付け状況下において、セラミックスリーブ9などからの外力による破損が生じやすい領域である。そして、絶縁基板97および絶縁基板103は、素子部71およびヒータ73の積層方向に垂直な外表面(換言すれば、素子本体部70の外表面のうち2つの積層方向外表面(第1主面21および第2主面23))を構成している。このため、絶縁基板97および絶縁基板103のうちセラミックスリーブ9などに対向する領域は、それぞれセラミックスリーブ9などからの外力による破損が生じやすい領域である。
そのため、素子部71の第1主面21(絶縁基板97)に対して第1表面層22を積層し、ヒータ73の第2主面23(絶縁基板103)に対して第2表面層24を積層することで、素子部71の絶縁基板97またはヒータ73の絶縁基板103を起点とした破損が生じがたくなる。
次に、ガスセンサ素子7においては、第1表面層22および第2表面層24のそれぞれに含まれるアルミナの粒径(0.2[μm])は、素子本体部70の絶縁基板97および絶縁基板103のそれぞれに含まれるアルミナの粒径(0.5[μm])と比べて小さい。また、第1表面層22および第2表面層24に含まれる未安定化ジルコニアの粒径(0.3[μm])は、素子本体部70の絶縁基板97および絶縁基板103のそれぞれに含まれるアルミナの粒径(0.5[μm])と比べて小さい。
このように、第1表面層22および第2表面層24におけるアルミナおよび未安定化ジルコニアのそれぞれの粒径を、絶縁基板97および絶縁基板103におけるアルミナの粒径と比べて小さくすることで、焼成時における第1表面層22および第2表面層24のそれぞれの収縮率は、絶縁基板97および絶縁基板103の収縮率に比べて大きくなる。
これにより、素子本体部70の外表面(絶縁基板97)に対して、第1表面層22による圧縮応力が印加されることになり、これに伴い、素子本体部70の強度が向上する。同様に、素子本体部70の外表面(絶縁基板103)に対して、第2表面層24による圧縮応力が印加されることになり、これに伴い、素子本体部70の強度が向上する。
よって、ガスセンサ素子7によれば、素子本体部70の強度低下を抑制できると共に、ガスセンサ素子7としての強度低下を抑制することができる。
また、本実施形態の空燃比センサ1は、上記の第1表面層22および第2表面層24を有するガスセンサ素子7を備えることから、アルミナよりも高靱性な材料を主成分とする塗布層を用いることなくガスセンサ素子7の強度低下を抑制することができる。
[1−7.特許請求の範囲との対応関係]
ここで、特許請求の範囲と本実施形態とにおける文言の対応関係について説明する。
空燃比センサ1がガスセンサの一例に相当し、酸素濃淡電池セル81および酸素ポンプセル89がそれぞれセルの一例に相当し、多孔質電極77および多孔質電極79が一対の電極部の一例に相当し、多孔質電極85および多孔質電極87が一対の電極部の一例に相当し、絶縁基板97および絶縁基板103がそれぞれ絶縁基体の一例に相当する。また、セラミックホルダ41、滑石リング43、滑石リング45、セラミックスリーブ9が、挿通部材の一例に相当する。
さらに、第1表面層22および第2表面層24がそれぞれ表面層の一例に相当し、素子部71が素子部の一例に相当し、ヒータ73がヒータ部の一例に相当する。
[2.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
例えば、上記実施形態のガスセンサ素子7は、2つの表面層(第1表面層22および第2表面層24)を備える構成であるが、このような構成に限られることはない。つまり、第1表面層22のみを備える構成であってもよく、あるいは、第2表面層24のみを備える構成であってもよい。
また、上記実施形態のガスセンサ素子7では、表面層(第1表面層22および第2表面層24)の形成領域が、絶縁基板97(または絶縁基板103)の外表面(第1主面21または第2主面)のうちセラミックスリーブ9などに対向する領域であるが、このような構成に限られることはない。つまり、表面層(第1表面層22および第2表面層24)の形成領域は、絶縁基板97(または絶縁基板103)の外表面(第1主面21または第2主面)においてより広い範囲に拡大しても良い。
例えば、絶縁基板97の外表面(第1主面21)のうち、通気部99および電極パッド25,27,29を除く領域の全体に、表面層を形成し、絶縁基板103の外表面(第2主面23)のうち、電極パッド31,33を除く領域の全体に、表面層を形成しても良い。これにより、絶縁基板97および絶縁基板103のそれぞれについて、より広い範囲での破損を抑制できるため、より一層、素子本体部70の強度を向上でき、ガスセンサ素子7の強度低下を抑制することができる。
さらに、表面層における未安定化ジルコニアの含有量は、25vol%に限られることはなく、15〜35vol%の範囲内で任意に設定できる。
なお、第1表面層22および第2表面層24は、アルミナの含有量および未安定化ジルコニアの含有量が互いに同一となる形態に限られることはなく、アルミナの含有量および未安定化ジルコニアの含有量が互いに異なる形態であってもよい。
また、第1表面層22および第2表面層24に含有されるアルミナの粒径は0.2[μm]に限られることはなく、0.1〜0,4[μm]の範囲内で任意に設定できる。第1表面層22および第2表面層24に含有される未安定ジルコニアの粒径は0.3[μm]に限られることはなく、0.1〜1.0[μm]の範囲内で任意に設定できる。素子部71の絶縁基板97およびヒータ73の絶縁基板103に含有されるアルミナの粒径は0.5[μm]に限られることはなく、0.2〜1.3[μm]の範囲内で任意に設定できる。
ただし、上記の各粒径は、次の3つの条件を満たす範囲内で任意に設定できる。まず、第1条件は、第1表面層22および第2表面層24に含有されるアルミナの粒径は、素子本体部70の絶縁基板97および絶縁基板103に含まれるアルミナの粒径と比べて同一あるいは小さいこととする。次に、第2条件は、第1表面層22および第2表面層24に含有される未安定化ジルコニアの粒径は、素子本体部70の絶縁基板97および絶縁基板103に含まれるアルミナの粒径と比べて同一あるいは小さいこととする。そして、第3条件は、第1表面層22および第2表面層24に含有されるアルミナおよび未安定化ジルコニアのうち、いずれか一方の粒径は、素子本体部70の絶縁基板97および絶縁基板103に含まれるアルミナの粒径よりも小さいこととする。
これらの3つ条件を満たす範囲内で、上記の各粒径を上記範囲内で任意に設定することで、素子本体部70の外表面(絶縁基板97および絶縁基板103)に対して、表面層(第1表面層22および第2表面層24)による圧縮応力が印加されることになり、これに伴い、素子本体部70の強度が向上する。これにより、素子本体部70の強度低下を抑制できると共に、ガスセンサ素子の強度低下を抑制することができる。
なお、第1表面層22および第2表面層24は、アルミナの粒径および未安定化ジルコニアの粒径が互いに同一となる形態に限られることはなく、アルミナの粒径および未安定化ジルコニアの粒径が互いに異なる形態であってもよい。
次に、第1表面層22および第2表面層24は、それぞれ厚さ寸法が20[μm]であるが、厚さ寸法はこの数値に限られることはない。例えば、第1表面層22および第2表面層24のそれぞれの厚さ寸法は、10〜50[μm]の範囲内で、任意に設定することができる。
なお、第1表面層22および第2表面層24は、それぞれ異なる厚さ寸法となる形態であっても良い。
1…空燃比センサ、7…ガスセンサ素子、9…セラミックスリーブ、21…第1主面、22…第1表面層、23…第2主面、24…第2表面層、41…セラミックホルダ、43…滑石リング、45…滑石リング、70…素子本体部、71…素子部、73…ヒータ、75…固体電解質体、77…多孔質電極、79…多孔質電極、81…酸素濃淡電池セル、83…固体電解質体、85…多孔質電極、87…多孔質電極、89…酸素ポンプセル、97…絶縁基板、101…絶縁基板、103…絶縁基板。

Claims (5)

  1. 測定対象ガスに含まれる特定ガスを検出するガスセンサ素子であって、
    板型の固体電解質体および前記固体電解質体の外面に形成される一対の電極部を備えるセルと、アルミナを主体に形成されると共に前記セルに積層されて外表面を構成する絶縁基体と、を有する素子本体部と、
    前記素子本体部の前記絶縁基体のうち、少なくとも当該ガスセンサ素子を挿通するための挿通部材に対向する領域において、前記絶縁基体に積層される表面層と、
    を備えており、
    前記表面層は、アルミナを主体としつつ、未安定化ジルコニアを含有しており、前記未安定化ジルコニアの含有量が17.4vol%以上30.8vol%以下であること、
    を特徴とするガスセンサ素子。
  2. 前記素子本体部は、前記セルを有する素子部と、発熱体を有するヒータ部と、が積層して構成されており、
    前記絶縁基体は、前記素子本体部のうち前記ヒータ部側の外表面を構成してなり、
    前記表面層は、前記ヒータ部側の外表面を構成する前記絶縁基体に積層されること、
    を特徴とする請求項1に記載のガスセンサ素子。
  3. 前記絶縁基体は、前記素子本体部の外表面のうち前記セルに対する積層方向の両端となる2つの積層方向外表面を構成してなり、
    前記表面層は、前記素子本体部の外表面のうち前記2つの積層方向外表面に設けた前記絶縁基体のそれぞれに積層されること、
    を特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスセンサ素子。
  4. 前記表面層に含まれるアルミナの粒径は、前記素子本体部の前記絶縁基体に含まれるアルミナの粒径と比べて同一あるいは小さく、
    前記表面層に含まれる未安定化ジルコニアの粒径は、前記素子本体部の前記絶縁基体に含まれるアルミナの粒径と比べて同一あるいは小さく、
    さらに、前記表面層に含まれるアルミナおよび未安定化ジルコニアのうち、いずれか一方の粒径は、前記素子本体部の前記絶縁基体に含まれるアルミナの粒径よりも小さいこと、
    を特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のガスセンサ素子。
  5. 測定対象ガスに含まれる特定ガスを検出するガスセンサ素子と、前記ガスセンサ素子を挿通する挿通部材と、を備えるガスセンサであって、
    前記ガスセンサ素子として、請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載のガスセンサ素子を備えること、
    を特徴とするガスセンサ。
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