JP6152550B2 - 大腸癌細胞選択的膜透過性ペプチドおよびその利用 - Google Patents

大腸癌細胞選択的膜透過性ペプチドおよびその利用 Download PDF

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Description

本発明は、特定のアミノ酸配列をもつ癌細胞選択的膜透過性ペプチド、癌細胞選択的膜透過性ペプチドと抗腫瘍性因子とが結合してなる抗腫瘍性物質を有効成分として含有する抗腫瘍剤、癌細胞選択的膜透過性ペプチドと標識物質が結合してなるイメージング剤に関する。
細胞膜透過性ペプチドとしては、例えば、アンテナペディア由来のペネトラチン(penetratin)(非特許文献1)、及び、Tatペプチド(非特許文献2)などが知られており、タンパク質、ペプチド、核酸などを細胞中へ輸送するために使用されている。
また、ポリアルギニン残基を含むペプチドを膜透過性キャリアとして用いることも報告されている(特許文献1)。
しかしながら、癌を治療したり検出したりする場合には、抗癌剤やイメージング剤を特定の癌細胞に選択的に送達する必要があるところ、これらのペプチドは特定の癌細胞への選択的な膜透過性を示すものではないため、このような目的には不十分であった。
さらに、特許文献2〜4では様々な配列を有する細胞膜透過性ペプチドが開示されているが、これらのペプチドが癌細胞選択的な膜透過性を有するかどうかについては調べられていない。
特開2009−023945号公報 特開2001−199997号公報 特開2006−219435号公報 国際公開2007/049731号
Derossi et al., , J. Biol. Chem., 269, 10444-10450, 1994 Vives et al., J. Biol. Chem., 272, 16010-16017, 1997
本発明は、癌細胞選択的な膜透過性を有するペプチド、該ペプチドを用いた抗腫瘍性物質やイメージング剤などの提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、遺伝子型と表現型の対応付け分子を用いて選択/同定されたある種の細胞膜透過性ペプチド(cell-penetrating peptide;以下これを「CPP」と称することがある。)が、癌細胞選択的な膜透過機能を有することを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
すなわち、本発明の要旨は、次の[1]〜[16]に存する。
[1]配列番号1ないし10に示す何れかのアミノ酸配列を含み、癌細胞に対する選択的な膜透過機能を有することを特徴とする癌細胞選択的膜透過性ペプチド。
[2][1]に記載のペプチドに目的物質を結合させ、該目的物質を特定癌細胞へ透過させる、目的物質の特定癌細胞への透過方法(ただし、ヒトを治療する方法は除く)。
[3]癌細胞に対する選択的な膜透過機能を有するペプチドと抗腫瘍性因子とが結合してなる抗腫瘍性物質を有効成分として含有することを特徴とする抗腫瘍剤。
[4]癌細胞が、子宮癌細胞、大腸癌細胞、肺癌細胞、乳癌細胞、胃癌細胞、肝癌細胞、
前立腺癌細胞、腎癌細胞、膵臓癌細胞、脳腫瘍細胞、肉腫細胞、悪性中皮腫細胞、リンパ腫細胞および白血病細胞よりなる群から選ばれる何れかの細胞である、[3]に記載の抗腫瘍剤。
[5]結合が、リンカーを介する共有結合である、[3]または[4]に記載の抗腫瘍剤。
[6]膜透過機能を有するペプチドが、
(1)2〜100アミノ酸残基からなる候補ペプチドを少なくとも含むタンパク質部と該候補ペプチドをコードする塩基配列を少なくとも含む核酸部とを含み、該タンパク質部のC末端と該核酸部の3’末端とが共有結合をしている遺伝子型と表現型の対応付け分子の群と、標的細胞とを接触させる工程;
(2)標的細胞内に導入された上記対応付け分子の核酸部分に含まれる核酸を増幅する工程;及び
(3)増幅された核酸の塩基配列を解析し、該塩基配列がコードするペプチドを、膜透過機能を有するペプチドとして同定する工程;
を含む方法より得られたものである、[3]ないし[5]の何れかに記載の抗腫瘍剤。
[7]工程(1)の対応付け分子が、下記の(a):
(a)2〜100アミノ酸残基からなる候補ペプチドと該ペプチドにより標的細胞内へ輸送される目的タンパク質との融合タンパク質を含むタンパク質部と、該候補ペプチドをコードする塩基配列及び該目的タンパク質をコードする塩基配列を含む核酸部とを含み、該核酸部の3’末端にスペーサーを介して核酸誘導体が結合し、該核酸誘導体と該タンパク質部のC末端とが共有結合をしている分子、
または下記の(b):
(b)2〜100アミノ酸残基からなる候補ペプチドを含むタンパク質部と、該候補ペプチドをコードする塩基配列を含む核酸部とを含み、該核酸部の3’末端にスペーサーを介して核酸誘導体が結合し、該核酸誘導体と該タンパク質部のC末端とが共有結合をしており、かつ、該スペーサーに該ペプチドにより標的細胞内へ輸送される非タンパク性目的物質が結合している分子、
である、[6]に記載の抗腫瘍剤。
[8]前記方法は、工程(1)と(2)の間に、さらに、(4)標的細胞表面から細胞内部に導入されていない該分子を除く工程を含む、[6]または[7]に記載の抗腫瘍剤。[9]標的細胞が、癌細胞である、[6]〜[8]のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
[10]癌細胞が、子宮癌細胞、大腸癌細胞、肺癌細胞、乳癌細胞、胃癌細胞、肝癌細胞、前立腺癌細胞、腎癌細胞、膵臓癌細胞、脳腫瘍、肉腫細胞、悪性中皮腫細胞、リンパ腫細胞および白血病細胞よりなる群から選ばれる何れかの細胞である、[9]に記載の抗腫瘍剤。
[11]膜透過機能を有するペプチドが、配列番号1ないし10に示す何れかのアミノ酸配列を含み、癌細胞に対する選択的な膜透過機能を有するものである、[3]ないし[8]の何れかに記載の抗腫瘍剤。
[12]抗腫瘍性因子が、抗腫瘍薬剤である、[3]ないし[11]の何れかに記載の抗腫瘍剤。
[13]抗腫瘍性因子が、癌細胞において発現喪失している癌抑制遺伝子の機能を代償的に回復させる機能を有するタンパク質またはその機能ドメインペプチドである、[3]ないし[11]の何れかに記載の抗腫瘍剤。
[14]機能ドメインペプチドが、配列番号13に示すアミノ酸配列を含み、癌抑制遺伝子p16の機能を代償性に回復可能なペプチドである、[13]に記載の抗腫瘍剤。
[15]癌細胞に対して選択的な膜透過機能を有するペプチドと標識物質とが結合してなり、腫瘍部選択的な集積能を有するイメージング物質を含有することを特徴とするイメージング剤。
[16]標識物質が、蛍光物質または陽電子放射性核種を有する物質である、[15]に記載のイメージング剤。
本発明の癌細胞選択的膜透過性ペプチドは、従来の汎用細胞膜透過性ペプチド(TAT、
ポリアルギニン)とは異なり、発生母地の異なるヒト癌細胞に対して、選択的な膜透過能を発揮する性質があり、またそれらは非選択的透過性ペプチドを上回る高透過能を発揮する。
本発明の抗腫瘍性物質は、癌細胞に対する選択的膜透過機能を有するペプチドに抗腫瘍性因子が結合してなるものであり、抗腫瘍性因子を確実に癌細胞へ送達させることができる。従って、本発明の抗腫瘍性物質は、腫瘍選択的標的薬剤として、抗腫瘍効果が優れ、副作用の少ない抗腫瘍剤となり得ることが期待される。
本発明のイメージング剤は、癌細胞に対する選択的な膜透過性を有しているので、癌転移を高感度に描出することができ、PET(positron emission tomography)などを用いた
トレーサー開発、術中癌イメージングなどへの利用が期待される。
実施例で用いた細胞膜透過性の検定方法を模式的に示した図である。 癌細胞選択的膜透過性ペプチドの悪性腫瘍細胞おける透過性を示す蛍光顕微鏡写真である。左端の数字はCPP番号を示す。 癌細胞選択的膜透過性ペプチドの血球系腫瘍細胞における透過性を示す蛍光顕微鏡写真である。左端の数字はCPP番号を示す。 癌細胞選択的膜透過性ペプチドの肝癌細胞における透過性を示す蛍光顕微鏡写真である。 癌細胞選択的膜透過性ペプチドの癌幹細胞における透過性を示す蛍光顕微鏡写真である。パネル中の数字はCPP番号を示す。 白血病細胞に取り込まれた癌細胞選択的膜透過性ペプチドが、細胞質に広汎かつ均一な分布することを示す蛍光顕微鏡写真である。パネル中の数字はCPP番号を示す。 癌細胞選択的膜透過性ペプチドおよび非選択的膜透過性ペプチドの癌患者由来プライマリー腫瘍細胞における透過性を示す蛍光顕微鏡写真である。 癌細胞選択的膜透過性ペプチドおよび非選択的膜透過性ペプチドの単一細胞における透過性を示す図である。 癌細胞選択的膜透過性ペプチドおよび非選択的膜透過性ペプチドの単一細胞における透過性を示す図である。 プライマリー大腸癌細胞および急性骨髄球性白血病細胞におけるRT-PCR(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction)法で調べた遺伝子発現の状態を示す写真である。 抗腫瘍性ペプチドの効果検討に用いたペプチドの構造式(左パネル)と、抗腫瘍性ペプチドの細胞膜透過性を示す写真(右パネル)である。 抗腫瘍性ペプチドの効果検討に用いた膜透過性ペプチドの白血病細胞における膜透過性を示す図である。 抗腫瘍性ペプチドの白血病細胞におけるアポトーシス誘導効果を示す図(上段パネル)と、蛍光顕微鏡写真(下段パネル)である。 抗腫瘍性ペプチドの癌抑制遺伝子RBのリン酸化阻害状態を示すイムノブロットの写真である。 抗腫瘍性ペプチドは非腫瘍細胞系に対する影響がほとんどないことを示す図である。 正常ヒト末梢血単核細胞におけるRT-PCR法で調べた遺伝子発現の状態を示す写真(左パネル)と、抗腫瘍性ペプチドは正常細胞系に対する影響がほとんどないことを示す図(右パネル)である。 抗腫瘍性ペプチドの大腸癌細胞におけるアポトーシス誘導効果を示す図である。 癌抑制遺伝子RBが欠損した細胞株における抗腫瘍ペプチドの遺伝子発現経路に対する影響を示すイムノブロットの写真(上段左パネル)、細胞膜透過性を示す蛍光顕微鏡写真(上段右パネル)、アポトーシス誘導作用を示す図(下段パネル)である。 抗腫瘍ペプチドの腫瘍病変への送達能を示す写真である。 抗腫瘍ペプチド(CPP44-RI-p16MIS)において、CPP44をTATに代えたペプチドは腫瘍病変への送達能がほとんどないことを示す写真である。 抗腫瘍性因子として使用しうるmicroRNAの一例の構造を示す図である。 ヒト急性白血病細胞AML1を腹腔内注射して腹膜播種を起こしたNOD-SCIDマウスの生存率に対する各種ペプチドの効果を示す図。
以下に、本発明を実施するための代表的な態様を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の態様に限定されるものではない。
1.癌細胞選択的膜透過性ペプチド
本発明の癌細胞選択的膜透過性ペプチド(cancer cell-specific cell-penetrating peptide;以下これを「CCS-CPP」と略称することがある)は、配列番号1ないし10に示す何れかのアミノ酸配列を含み、癌細胞に対する選択的な膜透過機能を有するものである。ここで、癌細胞に対する選択的な膜透過機能とは、特定の種類(すなわち病理学的組織型分類)の癌細胞に対する選択的な膜透過機能を意味する。目的とする特定の種類の癌細胞に対する膜透過機能が、該特定の癌細胞以外の癌細胞および正常細胞への膜透過機能に比べて高いことが好ましい。なお、特定の種類内での癌細胞は一種類でもよいし、二種類以上でもよい。
また、上記アミノ酸配列のN末および/またはC末に、通常1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸配列が、全体としてアルギニンおよびリジンの構成比率の和が35%を超えないように付加されたもので、上記機能を有するものも本発明の癌細胞選択的膜透過性ペプチド(CCS-CPP)に含まれる。
これらペプチドは、後述する遺伝子型(核酸)と表現型(タンパク質)の対応付け分子を用いる方法により選択/同定することができる。また、癌細胞膜透過性は、後述するとおり、適当な標識物質(例えば蛍光物質)でラベルしたペプチドと癌細胞を共培養し、癌細胞へ透過したペプチドを、蛍光を指標として蛍光顕微鏡やフローサイトメーター(Flowcytometer)などにより確認することができる。
2.抗腫瘍性物質
本発明で使用される抗腫瘍性物質は、癌細胞選択的膜透過性ペプチド(CCS-CPP)と抗
腫瘍性因子とが結合してなることに特徴をもつものである。ここで、CCS-CPPと抗腫瘍性
因子との結合は、抗腫瘍性因子が、CCS-CPPの膜透過性機能により、癌細胞内へ取り込ま
れ得る結合状態を保持できるものであれば如何なる結合様式であってもよい。結合様式としては、例えば、水素結合、ファンデルワールス結合、イオン結合、共有結合などが挙げられる。これらの中で、共有結合が好ましい。
CCS-CPPと抗腫瘍性因子との結合はリンカーを介する共有結合が好ましい。
リンカーとしては、CCS-CPPと抗腫瘍性因子の機能を保持し、CCS-CPPとともに細胞膜を透過し得るものであれば特に制限されない。具体的には、例えば、その長さが、通常1〜5残基、好ましくは1〜3残基程度のペプチド鎖や、同等の長さのポリエチレングリコール(PEG)鎖などが用い得るリンカーとして挙げられる。
ペプチドリンカーを構成するアミノ酸残基としては、電荷がなく、小分子のもの、例えばグリシン残基が好ましい。また、リンカー配列の端部、好ましくは両端部には、結合する両ドメイン(CCS-CPPと抗腫瘍性因子)に回転の自由度を与えるための配列を設けるこ
とが好ましい。具体的には、回転の自由度を与えるためにはグリシン(G)、リンカーとしてはプロリン(P)を含む配列が好ましく、さらに具体的には、グリシン残基とプロリン残基よりなるもの、例えば、グリシン(G)−プロリン(P)−グリシン(G)からなるものが特に好ましい。かかる構成とすることで、両ドメインの機能が発揮可能となる。
癌細胞選択的膜透過性ペプチド(CCS-CPP)としては、特定の癌細胞に対する選択的な
膜透過機能を有し、抗腫瘍因子を、癌細胞内に送達し得る能力を有するものであれば特に限定されない。かかるペプチド(CCS-CPP)は、例えばWO 98/16636、WO 2005/024018、特開2005-13073などに記載の方法に準じて、候補ペプチドの配列を含む遺伝子型(核酸)と表現型(タンパク質)の対応付け分子(以下これを、「In Vitro Virus分子」または「IVV分子」と称することがある。)の群を調製し、細胞膜透過性を指標として選択/同定す
ることにより取得することができる。
具体的には、次の工程(1)〜(3)含む方法を、膜透過機能を有するペプチドを選択/同定する好ましい方法として挙げることができる。
(1)標的細胞と、2〜100アミノ酸残基からなる候補ペプチドを少なくとも含むタンパク質部と該候補ペプチドをコードする塩基配列を少なくとも含む核酸部とを含み、該タンパク質部のC末端と該核酸部の3’末端とが共有結合をしている遺伝子型と表現型の対応付け分子の群とを接触させる工程;
(2)標的細胞内に導入された上記対応付け分子の核酸部分に含まれる核酸を増幅する工程;
(3)増幅された核酸の塩基配列を解析し、該塩基配列がコードするペプチドを、膜透過機能を有するペプチドとして同定する工程。
上記工程(1)で用いる対応付け分子(IVV分子)としては、さらに具体的には、下記
の分子(a)または分子(b)が挙げられる。
(a)2〜100アミノ酸残基からなる候補ペプチドと該ペプチドにより標的細胞内へ輸送される目的タンパク質との融合タンパク質を含むタンパク質部と、該候補ペプチドをコードする塩基配列および該目的タンパク質をコードする塩基配列を含む核酸部とを含み、該核酸部の3’末端にスペーサーを介して核酸誘導体が結合し、該核酸誘導体と該タンパク質部のC末端とが共有結合をしている分子。
(b)2〜100アミノ酸残基からなる候補ペプチドを含むタンパク質部と、該候補ペプチドをコードする塩基配列を含む核酸部とを含み、該核酸部の3’末端にスペーサーを介して核酸誘導体が結合し、該核酸誘導体と該タンパク質部のC末端とが共有結合をしており、かつ、該スペーサーに該ペプチドにより標的細胞内へ輸送される非タンパク性目的物質が結合している分子。
核酸誘導体はタンパク質部のC末端に共有結合するものであればよいが、具体的には、その3'末端がアミノアシルtRNAに化学構造骨格が類似しているものを選択すること
ができる。代表的な化合物として、アミド結合を有するピューロマイシン(Puromycin)、3'−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド(3'−N−Aminoacylpuromycin aminonucleoside、PANS−アミ
ノ酸)、例えば、アミノ酸部がグリシンのPANS−Gly、アミノ酸部がバリンのPANS−Val、アミノ酸部がアラニンのPANS−Ala、その他、アミノ酸部が全ての各アミノ酸に対応するPANS−アミノ酸化合物が挙げられる。
また、3'−アミノアデノシンのアミノ基とアミノ酸のカルボキシル基が脱水縮合して
形成されるアミド結合で連結した3'−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシド
(3'−Aminoacyladenosine aminonucleoside,AANS−アミノ酸)、たとえば、アミノ酸部がグリシンのAANS−Gly、アミノ酸部がバリンのAANS−Val、アミノ酸部がアラニンのAANS−Ala、その他、アミノ酸部が全アミノ酸の各アミノ酸に対応するAANS−アミノ酸化合物を使用できる。
また、ヌクレオシドあるいはヌクレオシドとアミノ酸のエステル結合したものなども使用できる。さらにまた、核酸あるいは核酸に類似した化学構造骨格及び塩基を有する物質と、アミノ酸に類似した化学構造骨格を有する物質とを化学的に結合した化合物、ペプチド核酸(PNA)は、すべて本方法において用いられる核酸誘導体に含まれる。
核酸誘導体としては、ピューロマイシン、PANS−アミノ酸もしくはAANS−アミノ酸がリン酸基を介してヌクレオシドと結合している化合物がより好ましい。これらの化合物の中でピューロマイシン、リボシチジルピューロマイシン、デオキシシチジルピューロマイシン、デオキシウリジルピューロマイシンなどのピューロマイシン誘導体が特に好ましい。
候補ペプチドは、通常2〜100アミノ酸残基程度、好ましくは2〜40残基程度のランダムなアミノ酸配列からなるものである。また、IVV分子としては、上記分子(a)、
分子(b)のとおり、タンパク質部が、候補ペプチドと目的タンパク質との融合タンパク質を含み、核酸部が、候補ペプチドおよび目的タンパク質をコードする塩基配列を含むもの[分子(a)]、または、核酸部に非タンパク性目的物質が結合したもの[分子(b)]が好ましい。
IVV分子を構成する目的タンパク質または非タンパク性目的物質としては、本発明で用
い得る膜透過性ペプチドを選択/同定し得るものであれば特に制限はない。
目的タンパク質としては、候補ペプチドを発現させるための支持体タンパク質となり得るものが好ましい。候補ペプチドが短鎖であると、これをタンパク質合成系、特に無細胞タンパク質合成系において発現させることが困難となる。この場合、候補ペプチドを支持体タンパク質と融合させることにより、タンパク質合成系で発現させることが可能となる。支持体タンパク質と候補ペプチドとの融合タンパク質は、いずれがN末側またはC末側でもよい。
支持体タンパク質としては、一般的には、(1)球状タンパク質であってフォールディングしやすく、(2)安定性があり、(3)ジスルフィド(S−S)結合を含まないものが好ましい。これらの条件を満たすタンパク質としては、例えば、Oct-1のPou-specific domain(73アミノ酸残基)(Dekker, N. et al.(1993) Nature 362, 852-854)などが
挙げられる。
非タンパク性目的物質としては、一般的に生物活性を有する核酸、糖などのような高分子物質や、医薬活性成分などの低分子物質、さらには量子ビーズ・光増感剤・原子などのナノ分子などが挙げられる。このような目的物質を付加する位置としては、スペーサー部分が挙げられる。
また、上記IVV分子には、これが細胞内に導入された(透過した)場合に、簡便に検出
できるよう、標識物質を含むことも好ましい。標識物質としては、細胞内IVV分子が透過
していることが検出可能なものであれば如何なるものであってもよい。具体的には、例えば、FITC(Fluoresceinisothiocyanate)、Roadamine、Cy3、Cy5などの蛍光物質;西洋ワサビペルオキシダーゼやβ−ガラクトシダーゼなどの呈色アッセイに用いられる酵素などが好ましく用いられる。これら標識物質は、IVV分子のいずれの場所に付加されていてもよ
い。また、GFPやDsRedなどの蛍光を発するタンパク質をIVV分子のタンパク質部に候補ペ
プチドとの融合タンパク質として付加することもできる。上記呈色アッセイに用いられる
酵素も、IVV分子のタンパク質部に候補ペプチドなどとの融合タンパク質として付加する
ことができる。
また、上記IVV分子は、これを精製する目的で、ある物質と特異的に結合する性質を有
する物質を含むこともできる。具体的には、例えば、FLAG、GST、HISx6などのタグペプチドやビオチンなどの親和性物質などが挙げられる。タグペプチド、親和性物質は、IVV分
子中のタンパク質部のいずれの場所にあってもよいが、タグペプチドはIVV分子のタンパ
ク質部のC末端あるいはN末端に付加することが好ましく、親和性物質は後述するスペーサー部分に付加することが好ましい。
スペーサーとしては、例えば、WO98/16636号公報に記載されているポリエチレンまたはポリエチレングリコールあるいはその誘導体などの高分子物質、オリゴヌクレオチドやペプチドあるいはその誘導体などの生体高分子物質などが用いられる。これらのうち、ポリエチレングリコールが好ましい。スペーサーには、上記したFITCなどの蛍光物質およびその誘導体、ビオチンなどの親和性物質およびその誘導体、デオキシリボヌクレオチドなどの核酸およびその誘導体、あるいは生化学または化学反応により切断される結合を持つ物質、例えば、5−置換−2−ニトロアセトフェノン誘導体などの光分解性物質などを含んでいてもよい。
上記対応付け分子(IVV分子)は、先ず、3’端にピューロマイシンを結合した候補ペ
プチドを含むタンパク質部をコードするmRNAを調製し、無細胞翻訳系を用いて翻訳することにより、タンパク質(表現型を反映するタンパク質部)とそれをコードするmRNA(遺伝子型を反映する核酸部)とがピューロマイシンを介して結合しているタンパク質−RNAキ
メラ型ランダムペプチドライブラリー(In Vtro Virus Library;以下これを「IVVL」と
称することがある。)として調製することができる。膜透過性ペプチドの選択/同定に好適なIVVLの調製は、例えば、特開2005-13073号公報に記載されている方法により行うことができる。
次に、標的細胞とIVVL(IVV分子の群)とを接触させ[上記工程(1)]、標的細胞内
または標的細胞内へ透過した上記分子の核酸部分に含まれる核酸を増幅し[上記工程(2)]、増幅された核酸の塩基配列を解析し、該塩基配列がコードするペプチドが、細胞膜透過機能をもつペプチドであると同定できる[上記工程(3)]。また、この操作は、必要に応じて繰り返すことができる。
得られた細胞膜透過性ペプチドについて、特定の癌細胞を標的細胞として、膜透過性を検討し、癌細胞に対する選択的透過性をもつペプチドを選択/同定することにより、本発明の抗腫瘍性物質で用い得る癌細胞選択的膜透過性ペプチド(CCS-CPP)を取得すること
ができる。
なお、IVVLと接触させる標的細胞に、特定の癌細胞を用いれば、上記したペプチドを取得後、特定の癌細胞を標的とする選択/同定を行うことなく、本発明で用い得るCCS-CPP
を取得することができる。
CCS-CPPの選択/同定に用いる標的細胞としては、ヒトまたは哺乳類動物細胞が好まし
く、それらの中で、癌細胞(悪性腫瘍細胞)が特に好ましい。
標的細胞として用い得る癌細胞は特に限定されず、例えば、子宮癌細胞、大腸癌細胞、肺癌細胞、乳癌細胞、胃癌細胞、肝癌細胞、前立腺癌細胞、腎癌細胞、膵臓癌細胞、脳腫瘍、肉腫細胞、悪性中皮腫細胞、リンパ腫細胞および白血病細胞よりなる群から選ばれる何れかの細胞が挙げられる。
上記標的細胞と、IVV分子とを接触させる方法としては、特に制限はないが、標的細胞
をIVV分子の存在下で適当な方法により培養する方法などが好ましい。培養方法、IVV分子の添加量、培養温度、培養時間などは、標的細胞やIVV分子の種類などにより適宜選択す
ることができる。具体的には、標的細胞として、例えばCHO細胞を用いた場合、96ウェ
ルプレートに105個となるようにウシ胎仔血清含有培地などにより培養し、該細胞をPBSなどの適当な緩衝液を用いて洗浄した後にIVV分子1〜100nMを含むPBSなどを添加し、
好ましくは氷冷〜37℃で置きながら、1〜数時間培養する方法などが挙げられる。標的細胞として癌細胞を用いる場合も同様にして標的癌細胞とIVV分子とを接触させることが
できるが、接触させるIVV分子の濃度は1〜1000nMとすることができる。
IVV分子と標的細胞を接触させた後、IVV分子が導入されている細胞内のIVV分子の核酸
部分を増幅する。IVV分子が導入された細胞は、これを検出して分離してもよいし、導入
されていない細胞とされている細胞が混合されたままでも核酸部分の増幅工程に用いることができる。
IVV分子の検出方法は、IVV分子が細胞外または細胞内に存在することが明らかになる方法であれば如何なる方法でもよい。具体的には、上記標識物質を検出する方法が好ましく用いられる。標識物質として、蛍光物質または蛍光タンパク質を用いた場合、検出手段は、フローサイトメーター、あるいは蛍光顕微鏡などを用いることができる。また、呈色アッセイを行うための酵素を用いた場合には、必要な基質などを添加した呈色アッセイにより検出することができる。さらに、細胞から抽出したDNAを鋳型としてPCR (Polymerase Chain Reaction)を行い、IVV分子の核酸部分が増幅できることを指標として検出すること
もできる。
いずれの方法においても、細胞内に導入されていないが、細胞表面に付着しているIVV
分子を洗浄してから、上記検出を行うことが好ましい。洗浄の方法は、細胞を洗浄する公知の方法から適宜選択して行うことができる。具体的には、例えば、酸やDNaseIなどヌクレアーゼによる処理などが好ましく用いられる。また、フローサイトメーターによる検出を行う場合、培養後の接着系の細胞はトリプシン処理などを行っておくことも好ましい。
細胞内にIVV分子が導入されていることの確認は、例えば、検出手段としてフローサイ
トメーターを用いた場合には、候補ペプチドを含むIVV分子と、候補ペプチドを含まないIVV分子で同様の標的細胞への接触工程を行い、候補ペプチドを含むIVV分子と接触させた
細胞の蛍光強度が、含まないIVV分子と接触させた細胞の蛍光強度に比べて強い場合に、
該細胞内にIVV分子が導入されていると判断すればよい。また、蛍光顕微鏡を用いた場合
には、細胞内に標識物質である蛍光物質から発せられる蛍光を観察すればよい。
さらに、細胞内にIVV分子が導入された細胞の分離方法として、上記のフローサイトメ
ーターにより蛍光が検出された細胞をセルソーターにより分離する方法や、蛍光顕微鏡により蛍光が検出された細胞を、レーザーキャプチャーを用いて分離する方法などが挙げられる。
かくして取得されたIVV分子が導入された細胞について、該細胞内に存在するIVV分子の核酸部をPCRによって増幅し、その塩基配列を解析することにより、細胞内への透過機能
を有するペプチド、すなわち細胞膜透過性ペプチド(CPP)を同定することができる。
上記したIVVLの調製、ペプチドの選択/同定などは、特開2005-13073号公報に詳述されており、それに準じて実施すればよい。
上記した細胞内にIVV分子が導入されていることの確認方法と同様の方法により、上記
で得られたCPPについて、特定の癌細胞に対する選択的な膜透過機能を有するものを選択
することができる。
かくして得られた癌細胞選択的膜透過性ペプチド(CCS-CPP)としては、例えば、配列番号1ないし10に示す何れかのアミノ酸配列を含むものが挙げられる。
上記のようなCCS-CPPに、一つ以上の抗腫瘍性因子を結合させた複合体(抗腫瘍性物質
)を調製して、標的癌細胞に接触させることによって、目的物質を癌細胞へ送達させることができる。
ここで、本発明の抗腫瘍性物質に用いる抗腫瘍性因子としては、CCS-CPPにより癌細胞
に送達可能なものであって、標的となる癌細胞の増殖や転移に何らかの機能を有し、癌の治療目的に適うものであれば如何なる因子であってもよい。具体的には、例えば、化学療法剤(抗腫瘍剤)、ペプチド(30残基程度までの連続アミノ酸残基配列)、タンパク質、DNA、PNA(Peptide Nucleic Acid)、LNA(Locked Nucleic Acid)、siRNA(small interfering RNA)、microRNAなどが挙げられる。
化学療法剤(抗腫瘍薬剤)としては、例えば、5-FU、paclitaxel、cisplatin、etoposide(vinblastine)、cyclophasphamide、Actinomycin D、イリノテカン、steroid(predonisolone)などが挙げられる。
これらの化学療法剤は、自身の反応性基(水酸基やアミノ基など)を通じてリンカーを導入し、該リンカーをペプチドのアミノ末端、カルボキシ末端または側鎖に反応させることにより、CCS-CPPに結合させることができる。
あるいは、これらの化学療法剤をリポソームに封入し、リポソームの表面にCCS-CPPを
結合させることによって、間接的に結合させることもできる。
ペプチドやタンパク質としては、例えば、癌細胞において発現喪失している癌抑制遺伝子の機能を代償的に回復させる機能を有するタンパク質またはその機能ドメインを含むペプチドが好ましい。かかるタンパク質やその機能ドメインを含むペプチドとしては、癌細胞に対してアポトーシスを誘導し得るものが好ましい。
ここで、癌細胞において発現喪失している癌抑制遺伝子としては、例えば、p16INK4a、p14ARF、p15、p18、p21CIP1、p27KIP1、p53、p57Kip2、p73、RB、BRCA1、BRCA2、PTEN、APC、WT1、NF1、NF2、SMAD4、PTC、MSH2、Maspin、SDHDなどが挙げられる。
これら癌抑制遺伝子はそれ自体既知のものであり、例えば、P16は、Fahraeus R, Lain S, Ball KL, Lane DP. Characterization of the cyclin-dependent kinase inhibitory domain of the INK4 family as a model for a synthetic tumour suppressor molecule.Oncogene 1998;16:587−96などに、p53は、Hupp TR, Sparks A, Lane DP (1995) Small peptides activate the latent sequence-specific DNA binding function of p53. Cell83: 237−245qなどに、機能ドメイン部分も含め、その詳細が記載されている。
癌抑制遺伝子の機能を代償的に回復させる機能を有するタンパク質とは、上記癌抑制遺伝子の発現産物(タンパク質)であり、その機能ドメインとは、該発現産物(タンパク質)の癌抑制機能をつかさどるアミノ酸配列を含むペプチドである。
これら癌抑制遺伝子の中で、p16INK4aは、例えば、肺癌(腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌、LCNEC)、咽頭・喉頭癌(扁平上皮癌)、消化器癌(食道癌、大腸癌、胃癌、胆道癌、
肝細胞癌、膵癌)、泌尿器癌(腎癌、膀胱癌、尿管癌)、生殖器癌[子宮癌(頸部扁平上皮癌、内膜腺癌)、卵巣癌、前立腺癌、精巣胚細胞腫瘍]、皮膚癌(悪性黒色腫、扁平上皮癌)などの固形癌;悪性骨軟部腫瘍(骨肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、MFH、など)、消化器間葉系腫瘍(GIST、平滑筋肉腫、MPNSTなど)などの肉腫;急性・慢性骨髄球性白血病、リンパ球性白血病、悪性リンパ腫などの血液腫瘍;グリオーマ、グ
リオブラスト―マ、神経芽細胞種などの脳腫瘍;悪性中皮腫などの諸種の癌細胞で欠損していることが知られている。従って、p16INK4aの機能を代償的に回復させる機能を有する機能性アミノ酸配列を癌細胞に送達することができれば、諸種の癌細胞に対する効果が期待できる。
かかるp16INK4aの機能を代償的に回復させる機能を有する機能性アミノ酸配列としては、例えば、配列番号12に示すアミノ酸配列(p16 minimal inhibitory sequence;p16 MIS)が挙げられる。
これらペプチドは、適当なアミノ酸配列、例えばリンカーやポリアルギニンなどを付加してもよい。リンカーとしては、上記したペプチドリンカーが挙げられる。ポリアルギニンとしては、通常2〜50残基、好ましくは5〜20残基程度のものが適当である。
また、機能に影響を及ぼさない限り、アミノ酸はD型でもL型でもよく、配列に順序は逆向きであってもよい。
抗腫瘍性因子としてのペプチドをCCS-CPPとの融合タンパク質として適当な宿主あるい
は無細胞翻訳系で発現させることにより抗腫瘍物質を得ることができる。融合タンパク質は化学合成してもよい。あるいは、抗腫瘍性因子としてのペプチドとCCS-CPPとを化学的
に結合させてもよい。
PNA(Peptide Nucleic Acid)としては、例えば、神経芽細胞腫(Neuroblastoma)を標的とする次の配列を有するもの(Mol Cancer Ther. 2005 May;4(5):779-86参照)が挙げ
られる。
PNAs-NLS;H-ATGCCGGGCATGATCT(配列番号18)-PKKKRKV(配列番号19)-NH2
LNA(Locked Nucleic Acid)としては、例えば、下記の文献に記載されたものが挙げら
れる。
Nucleic Acids Res. 2004; 32(19): 5757−5765.
Nucleic Acids Res. 2010 January; 38(1): e3
Curr Pharm Des. 2008;14(11):1138-42. Review.
siRNA(small interfering RNA)としては、例えば、下記(1)〜(5)が挙げられる。
(1)慢性骨髄性白血病(CML)のBCR-ABLを標的とする次の配列を有するもの(Blood 2003;102(6)2236-2239参照)。
SENSE;5'-CAGAGUUCAA-AAGCCCUUCAG-3'(配列番号20)
ANTISENSE;3'-UCGUCUCAAGUU-UUCGGGAAGUC-5'(配列番号21)
(2)乳癌(Brest Cancer)のHER2を標的とする次の配列を有するもの (Gene silencing
by cell-penetrating, sequence-selective and nucleic-acid hydrolyzing antibodies. Lee WR, Jang JY, Kim JS, Kwon MH, Kim YS. Nucleic Acids Res. [Epub ahead of print]参照)。
SENSE;5'- TTAAU UCC AGU GGC CAU CAA A-3'(配列番号22)
ANTISENSE;3'-UUAAGGUCTCCGGUAGUUUTT-5'(配列番号23)
(3)前立腺癌(Prostate Cancer)のAndrogen Receptorを標的とする次の配列を有するもの(PLoS One. 2007 Oct 10;2(10):e1006参照)。
SENSE;5'-UCCCCAAGCCCAUCGUAGA-TT-3'(配列番号24)
ANTISENSE;3'-TTAGGGGUUCGGGUAGCAUCU-5'(配列番号25)
(4)大腸癌(Colon Cancer)のVEGFを標的とする次の配列を有するもの(Molecular Therapy (2006) 14, 343−350参照)。
SENSE;5'-AUGUGAAUGCAGACCAAAGAATT-3'(配列番号26)
ANTISENSE;3'-TTCUAUCGUUACUGCUUACGCAU-5'(配列番号27)
(5)膵臓癌(Pancreatic Cancer)のRASを標的とする次の配列を有するもの(Cancer Sci. 2007 Jul;98(7):1128-36参照)。
krasGGT:
5'-GUUGGAGCUGGUGGCGUAGTT-3' (配列番号28)
5'-CUACGCCACCAGCUCCAACTT-3' (配列番号29)
krasGAT:
5'-GUUGGAGCUGAUGGCGUAGTT-3' (配列番号30)
5'-CUACGCCAUCAGCUCCAACTT-3' (配列番号31)
krsaGTT:
5'-GUUGGAGCUGUUGGCGUAGTT-3' (配列番号32)
5'-CUACGCCAACAGCUCCAACTT-3' (配列番号33)
microRNAとしては、例えば、図21に記載した構造をもつもの(Hepatocellular calcinoma J Biol Chem. 2009 Nov 13;284(46):32015-27. Epub 2009 Sep 2参照)が挙げられ
る。
これら抗腫瘍性因子は、必要に応じて、各抗腫瘍性因子の性質に応じた適当なリンカーを介して、それ自体既知の方法で癌細胞選択的膜透過性ペプチド(CCS-CPP)に結合させればよい。かくして本発明の抗腫瘍性物質を得ることができる。
核酸とCCS-CPPは、例えば、核酸の末端にリンカーを結合させ、リンカーの末端の反応
性基とCCS-CPPの末端アミノ基またはカルボキシル基を反応させることにより結合させる
ことができる。
かかる抗腫瘍性物質は、臨床へ応用するに際し、上記抗腫瘍性物質を単独で用いることも可能であるが、薬学的に許容され得る担体と配合して医薬品組成物(抗腫瘍剤)として用いることもできる。この時の有効成分(抗腫瘍性物質)の担体に対する割合は、1〜90重量%の間で変動され得る。また、かかる医薬品組成物(抗腫瘍剤)の投与形態としては、注射剤、点滴剤などによる非経口投与が好ましい。
非経口投与用の医薬品組成物(抗腫瘍剤)は、通常、本発明の抗腫瘍性物質を適当な担体(媒体)に溶解させて滅菌濾過し、次に適当なバイアルまたはアンプルに充填して密封することにより調製できる。また、安定性を高めるために組成物を凍結させた後にバイアル中に充填し、水を真空下で除去してもよい。また、有効成分が均一分布となるように必要に応じて界面活性剤、湿潤剤などを添加してもよい。
また、その投与量は、抗腫瘍性因子の薬理学的性状、患者の症状、年齢、体重などによって医師により適宜決定される。
3.イメージング剤
本発明のイメージング剤は、癌細胞選択的膜透過性ペプチドと標識物質とが結合してなり、腫瘍部選択的な集積能を有するイメージング物質を含有してなることに特徴をもつものである。
本発明において、癌細胞選択的膜透過性ペプチド(CCS-CPP)としては、上記と同様の
ものが用いられる。好ましいペプチドも上記のとおり、配列番号1〜10で示されるアミノ酸配列を含み、特定の癌細胞に対する選択的な膜透過機能を有するものが適当である。
標識物質としては、CCS-CPPの癌細胞への透過が追跡可能な物質であり、薬学的、生理
学的に許容されるものであれば特に限定されない。それらの中で、蛍光物質または陽電子
放射性核種を有する物質が特に好ましい。
蛍光物質としては、例えば上記したIVV分子に標識可能なものが挙げられるが、それら
の中で、FITCが好ましい。例えばFITC標識CCS-CPPの静脈注射により術中癌イメージング
が可能となる。また、標識物質として近赤外線プローブ、例えばICG(インドシアニング
リーン)、DIPCY(dipicolylcyanine)などを用いることにより、生体外イメージングも
可能となる。
これら標識物質とCCS-CPPとの結合は、各標識物質の性質に応じて、必要であれば適当
なリンカーを介して、それ自体既知の方法で行うことができる。
例えば、CCS-CPPとFITCとの結合は、NHS-Fluorescein(5/6-carboxyfluorescein succinimidyl ester、5/6-FAM SE;Thermo Fisher Scientific社製、品番:46410)を用いて、次のとおり行えばよい。
(1)合成後のペプチド(CCS-CPP)レジンの一部でカイザーテストを行い、陽性(濃青色
〜紫色)であることを確認する。
(2)ペプチドレジンが入ったポリプレップカラムに、合成スケールの3倍量のNHS-Fluorescein、DMF(dimethylformamide)・DIPEA(N,N-diisopropylethylamine)(DMFの1/10の量)を加える。
(3)ローテーターで室温、3時間反応させる。
(4)カイザーテストを行い、陰性(黄色〜うすい茶色)であることを確認する。
(5)2mLのDMFで5回洗浄する。
(6)2mLのMeOHで2回洗浄する。
(7)乾燥する。
陽電子放射性核種としては、11C、13N、15O、18Fなど挙げられる。これらの核種を有する物質により標識することにより、PET(positron emission tomography)による癌細胞
描出が可能となる。
CCS-CPPへのこれら物質による標識は、それ自体既知の方法で行えばよい。
例えば、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンなどの天然アミノ酸は、SPECT核種であるI-123やPET核種であるC-11、F-18などで標識されることが知られ
ているので、これらの標識アミノ酸をCCS-CPPに結合させるか、CCS-CPPを構成するアミノ酸にこれらの標識アミノ酸を用いることにより、CCS-CPPを標識することができる。
かかるイメージング物質は、臨床へ応用するに際し、単独で用いることも可能であるが、薬学的に許容され得る担体と配合してイメージング剤として用いることもできる。この時の有効成分(イメージング物質)の担体に対する割合は、1〜90重量%の間で変動され得る。また、イメージング剤の投与形態としては、注射剤、点滴剤などによる非経口投与が適当である。
また、上記イメージング剤は、有効成分を、適当な担体(媒体)に溶解又は分散させて滅菌濾過し、次に適当なバイアルまたはアンプルに充填して密封することにより調製することができる。また、安定性を高めるために組成物を凍結させた後にバイアル中に充填し、水を真空下で除去してもよい。また、有効成分が均一分布となるように必要に応じて界面活性剤、湿潤剤などを添加してもよい。また、その投与量は、医師により適宜決定される。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、下記の例は本発明の具体的な認識を得る一助と見なすべきものであり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
(1)実験材料および方法
用いた細胞膜透過性ペプチドは表1に示すとおりである。これらの中で、“CPP”が付
された10種のポリペプチドは、特開2005-13073号公報に記載されている方法に準じて、ピューロマイシン(puromycin)を介在して表現型としての15アミノ酸残基ペプチドとそ
れに対応する遺伝子型としてのmRNAコード配列を有するprotein-RNAキメラ型ランダムペ
プチドライブラリー(in vitro virus library; IVVL)から分離/同定した細胞膜透過性ペプチド(cell-penetrating peptide; CPP)である(以下これを「IVVL由来CPP」と称することがある)。細胞膜透過性の検定に用いたIVVL由来CPPは、FITC(Fluoresceinisothiocyanate)ラベルで合成し、塩酸塩処理を施したものである。また、TAT(HIV由来の配列)
およびr9(9残基連続D-アルギニン)は、現在汎用されている非選択的膜透過性ペプチドである。これらは、いずれもシグマアルドリッチジャパン(ジェノシス事業部)への委託合成により入手した。
Figure 0006152550
用いた細胞の細胞株(cell line)と由来(origin)は表2に示すとおりである。これ
らは、発明者が研究室において継代培養して維持しているものである。
Figure 0006152550
上記細胞株のうち、Widr、Lovo、MKN45、H28、ML-2、NHDF、ED-S、SALT-3、Ramos、SP-53、K562、HL-60、NALM-6は、(株)林原生物化学研究所基礎細胞研究部門より、正式の
供与同意書を得て提供を受けたものある。また、FL-18は医療法人医仁会武田総合病院大
野仁嗣博士より、U251は名古屋大学医学部附属病院遺伝子・再生医療センター夏目敦至博士から供与を受けたものである。
患者由来初代腫瘍細胞のうち、急性骨髄性白血病細胞3例はいずれも岡山大学医学部血液・腫瘍・呼吸器内科学講座において患者のインフォームドコンセントを得たうえで採取された診断用骨髄穿刺検体の余剰材料を同機関との共同研究の承認のもとに供与され、本研究に用いた。また患者由来大腸癌細胞も同様に岡山大学医学部消化器・腫瘍外科学講座にて患者のインフォームドコンセントを得て外科的摘出癌組織から分離され、同講座にて維持・管理されていた細胞を共同研究の承認のもとに供与されたものである。
上記以外の細胞の受入番号(accession number)、入手先などは次のとおりである。
HeLa(ATCC number:CCL2)、A549(ATCC number:CCL185)、MCF-7(ATCC number:HTB22)、HepG2(ATCC number:HB-8065)、LNCap(ATCC number:CRL-1740)、KPK (Naito S, Kanamori T, Hisano S, Tanaka K, Momose S, Kamata N. Human renal cell carcinoma: establishment
and characterization of two new cell lines. J Urol 1982; 128: 1117−21)、U2OS(ATCC number:HTB-96)、RC-13(ATCCから購入:CRL-2061TM)、RD-ES(ATCC number:HTB-166
)、293T(ATCC number:CRL11268)、Jurkat(ATCC number:TIB-152)、Sw620(ATCC number:CCL227)、Colo320r(JCRB0225)
また、実験に用いた3種類の癌幹細胞;肺癌のcancer stem cell phenotype細胞(Oct-4+, Teromerase+, SSEA3/4+, Alkalinephosphatase+)、大腸癌のcancer stem cell phenotype細胞(CD133+, Oct-4+, SSEA3/4+, Teromerase+, Nestin+, AP+, CEA125+)、骨髄球
性白血病のcancer stem cell phenotype細胞(CD44+, Oct-4+, Teromerase+, SSEA3/4+, AP+)は、CELPROGEN社より購入したものである。これらの癌幹細胞は、それぞれ、57歳白人患者の外科的摘出を受けた肺癌組織、37歳白人患者の外科的摘出を受けた大腸癌組織、27歳白人患者の末梢血より分離した腫瘍細胞である。
これら3種類の癌幹細胞の培養維持には、いずれもCELPROGEN社のHuman Leukemia Cancer stem cell complete growth mediaあるいはStemPro-34 SFM medium (GIBCO/Invitrogen)、Human Lung Cancer stem cell complete growth media、Human Colon Cancer stem cell complete growth mediaを用いた。
蛍光の測定、ペプチドの調製、アポトーシスの測定などは、文献Kondo, E., Seto, M.,et al.: Highly efficient delivery of p16 anti-tumor peptide into aggressive leukemia/lymphoma cells using a novel transporter system. Mol. Cancer Ther. 3: 1623-1630, 2004.およびKondo, E., Tanaka, T., et al. : Potent synergy of dual antitumor peptides for growth suppression of human glioblastoma cell lines. Mol. CancerTher. 7: 1461-1471, June 1, 2008.に記載の方法に準じて実施した。
(2)各種のヒト悪性腫瘍細胞における透過性
細胞膜透過性の検討方法の概要を図1に模式的に示す。
各種のヒト悪性腫瘍細胞、SV40largeT-transformed 腎線維芽細胞、正常ヒト皮膚線維
芽細胞の各1万個を96穴プレートに播いて24時間後、各番号のペプチドをこれら細胞の培養液に終濃度2μMになるように添加し、6時間後に倒立型蛍光顕微鏡で生細胞における各蛍光ペプチドの取り込みを視覚的に評価した。検鏡の前に蛍光ペプチド添加培養上清を除去し1xPBS(-)で3回洗浄後、トリプシン処理し接着細胞を剥離してただちに新しい96穴プレートに移入してfreshな培養液に再懸濁後に検鏡を行った。
その結果、CPP2はヒト大腸癌細胞株Lovoに非常に高い透過性を示し、CPP7は悪性中皮腫H28に、CPP28は骨肉腫細胞株U2OSに、CPP30は乳癌細胞株MCF-7に、CPP33は肺癌細胞株A54
9に、CPP44は肝細胞癌HepG2と急性白血病株ML-2、さらに正常ヒト皮膚線維芽細胞NHDFに
選択的高透過性を認めた。一方、CPP10とCPP45は多種類の癌細胞株と肉腫株、脳腫瘍(グリオーマ)細胞株などに広範囲の透過能を示した(図2)。
また、CPP47とCPP48はほとんどの固形悪性腫瘍株で有意な透過性を示さなかったが、リンパ腫(T-cell, B-cell lymphoma, ATLL, pro-B-cell lymphoma)や慢性骨髄球性白血病細胞株などの血球系腫瘍に高い透過性を示した(図2、図3)。CPP10は逆に血球系腫瘍
にほとんど透過しなかった(data not shown)。
さらに、CPP2がLovoに高透過性を示したことから、個別の細胞株でなく癌種としての大腸癌に高透過性であることを確認するため、他の3種のヒト大腸癌細胞株にて透過性を同様に検討した。その結果、Sw620, Colo320, Widrいずれの細胞においても同様に高い透過能が確認された(図4)。
一方、CPP44は肝細胞癌HepG2に高透過性であったが、正常肝細胞に対しての透過性はほとんどなく、逆にCPP48はHepG2に透過しないが、正常肝細胞には高透過性であるなど、同じ発生母地でありながら腫瘍細胞と非腫瘍細胞に対する透過性の違いが見られた(図4)。
(3)癌幹細胞における透過性
近年癌先進研究分野では“癌幹細胞”の存在が大きな注目を集めている。そこで、患者由来プライマリー癌細胞を既報告にある複数の癌幹細胞マーカーの組み合わせで分離・純化した腫瘍細胞において、上記(1)と同様の手技でIVVL由来CPPを用いたスクリーニン
グを実施した。
その結果、肺癌のいわゆるcancer stem cell phenotype細胞(Oct-4+, Teromerase+, SSEA3/4+, Alkalinephosphatase+)にはCPP16とCPP2, CPP44(図5上段左パネル)が、大
腸癌のcancer stem cell phenotype細胞(CD133+, Oct-4+, SSEA3/4+, Teromerase+, Nestin+, AP+, CEA125+)にはCPP2, CPP16, CPP47(図5上段右パネル)が良好な透過性を示した。また、骨髄球性白血病のcancer stem cell phenotype細胞(CD44+, Oct-4+, Teromerase+, SSEA3/4+, AP+)にはCPP44, CPP7, CPP48など(図5下段左パネル)が高い透過性を
示した。これらの解析対象の純化細胞はいずれもRT-PCR(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction)法でもOct-3/4+, Sox-2+であり、また白血病細胞に関しては健常
者末梢血における頻度を大きく上回り、CD34+細胞が高頻度(約20〜25%)で含まれ
ることをphycoerythrine(PE)標識抗CD34抗体染色にて蛍光顕微鏡による視覚的解析を用いて確認した(図5下段右パネル)。
この様に同じ種類の腫瘍細胞に透過するCPPは複数存在したが、膜透過後は細胞内での
分布にそれぞれ違いが見られる。例えば、白血病細胞に取り込まれた後、CPP44は細胞質
に広汎かつ均一な分布を示すが、CPP48はドット状のエンドソーマルなパターンである。
大腸癌細胞におけるCPP2とCPP47の場合も同様である(図6)。
(4)患者由来プライマリー腫瘍細胞における透過性
各種悪性腫瘍細胞株においてIVVL由来CPPに選択的膜透過性が認められたため、次段階
として実際の患者由来プライマリー腫瘍細胞においても選択的かつ高透過能を発揮するか否かを検討した。IVVL由来CPPの中からCPP2とCPP44を代表例として抽出し、これらと現在汎用されている非選択的透過性CPPであるTATおよびr9(9残基連続D体型ポリアルギニン
)の透過能を比較した。
その結果、蛍光標識したペプチドのプライマリー細胞への取り込みでは、TATが微弱に
細胞内への取り込みの認められる露光条件で、プライマリー骨髄球性白血病細胞ではr9とCPP44が高い取り込みを示し、同様にプライマリー大腸癌細胞ではr9とCPP2が、プライマ
リー肺癌細胞ではr9とCPP44が明瞭な取り込みを示した(図7)。
(5)単一細胞における透過性
Flowcytometer(FACScan)による単一細胞レベルの蛍光強度を測定し、単一細胞における透過性を検討した。
その結果、3症例の患者由来プライマリー白血病細胞では、CPP44はそれぞれTATの178
倍、134倍、86倍の蛍光強度を示し、r9に比較しても5倍、6.8倍、3.2倍の強度であった(図8上段パネル)。また、プライマリー大腸癌細胞においては、CPP2がTATの34倍の取り
込み強度を示したが、CPP44の取り込みはTATと大きな差異は認められなかった(図8中段左パネル)。プライマリー肺癌細胞においてもCPP44がTAT, r9に比較して高い蛍光強度を示した(図8中段右パネル)。また、これら腫瘍細胞では、ほぼ細胞株を用いたアッセイの結果に一致する腫瘍種類別の細胞膜透過性の違いを反映していた(肺癌細胞のみ細胞株とプライマリーでやや異なる)。
正常皮膚線維芽細胞(NHDF)においては、CPP44はr9と同程度の高い透過性を示し、一
方CPP2はTATと同様で取り込みはあるが低透過性であった。また、正常ヒト末梢血単核細
胞(PBMC)ではCPP2, CPP44ともにr9より低くTATと同レベルの取り込みで、有意な透過能を持たないことが明らかとなった(図8下段パネル)。
さらに、3例の健常者から採取した正常血球系細胞としてのPBMCにおいてTAT、4残基
連続L体型ポリアルギニン(R4)、9残基連続D体型ポリアルギニン(r9)、CPP2、CPP44、CPP47を比較したところでは、リンパ腫や白血病に高透過性を示したCPP47やCPP44は非腫瘍性リンパ球への取り込みは低く、最も高透過性を示したr9の場合の1/2〜1/3であった(図9)。
(6)抗腫瘍性ペプチドの作製とその効果
以上の結果に基づいて、腫瘍種別選択的高透過能を発揮する癌細胞選択的膜透過性ペプチド(CCS-CPP)を利用した抗腫瘍性ペプチドの作製とその効果の検証を行った。
生物学的高悪性度群に属するヒト悪性腫瘍では、癌抑制遺伝子p16INK4aの発現喪失が高頻度に認められることが多数の既報告により知られている。p16INK4aはその分子作用機序として、細胞内でcyclin-dependent kinase 4(CDK4)あるいは6(CDK6)とcyclin D1との複
合体に結合し、CDK4の活性化を阻害することによりCDK4の基質である癌抑制遺伝子RBのリン酸化を抑制し、最終的に細胞周期を停止させて細胞にアポトーシスを誘導する作用を持つ。
上記(4)で解析した患者由来の1例のプライマリー大腸癌細胞および3例の急性骨髄球性白血病細胞においての発現をRT-PCR法で調べたところ、これら細胞のいずれにてもHeLaやNHDFでは確認されるp16INK4aの発現が喪失していた(図10)。また、p16INK4aの作用経路に位置する他の分子群CDK4(あるいはCDK6)、Cyclin D1、RBはいずれもすべてこ
れらp16INK4a陰性細胞でその発現が確認された(図10)。
そこで、p16INK4aの機能を代償性に回復させることで知られている機能性アミノ酸配列p16 minimal inhibitory sequence(p16 MIS)をCPP44と融合させた抗腫瘍性ペプチドを作
製した。
CPP44-p16 MIS(配列番号13)は、CPP44(KRPTMRFRYTWNPMK;配列番号1)をスペーサー配列GPGを介してp16 MIS(LDTLVVLHR;配列番号12)と融合し、さらにGPスペーサー配列を挿入後のC末端側にペプチド全体の疎水性を改善するため4個のアルギニンを付加した
ものである。CPP44-RI-p16 MISは、CPP44-p16 MISの配列のうち、p16 MISの部分、即ちLDTLVVLHRをすべてD-アミノ酸に置換し、さらにretroinverso(鏡面配列)としたものである。コントロールは、このCPP44-RI-p16 MISのretroinverso配列部分を無作為(ランダム)配列に変換したもの(CPP44-RI-p16 scramble;配列番号14)である。これらペプチドの構造を図11左パネルに示す。なお、本検証に用いたペプチドはシグマアルドリッチジャパン社(ジェノシス事業部)へ委託し化学合成したものである。
疎水性改善のため各ペプチドのC末端側に付加した4個のアルギニンのみにp16 MISを融合したペプチド(p16 MIS-4R;配列番号15)では、CPP44-p16 MISとは異なりプライマリー白血病細胞への透過能がほとんど無いことを確認した(図11右パネル)。なお、p16 MIS-4RにはN末端にCPP44-p16 MISと同様に2個のPEGが付加してある。
また、CPP44のアミノ酸配列をretro-enantiomerに変換した場合(kmpnwtyrfrmtprk)は、白血病細胞へのCPPとしての本来の透過能自体が著しく損なわれることが確認された(図
12)。
この原因としてはCPP44配列内にある2か所のプロリンの配置がD体に置換したため変化し、CPP44全体の構造がL体でできたCPP44と鏡面対照に成らなかったことが推察される。
次に、これらの結果に基づいてCPP44のみ、CPP44-p16 MIS、CPP44-RI-p16 MIS、CPP44-RI-p16 scrambleの計4種類のペプチドを用いて、前述の3例の患者由来プライマリー急
性白血病細胞に導入し、28時間後での各ペプチド濃度でのアポトーシス誘導効果をAnnexin V(cy3ラベル)の陽性細胞数をFACSで測定することにより解析した。
その結果、CPP44-RI-p16 MIS が3例の白血病細胞いずれにても最も高いアポトーシス
誘導能を発揮した。AML症例1においては終濃度5μMのCPP44-RI-p16 MIS導入で約35%、10μMで約50%、20μMで60%強の細胞にAnnexin V陽性が認められ、導入ペ
プチド濃度依存的に顕著なアポトーシス誘導効果が得られた(図13上段パネル)。
同様にAML症例2ではCPP44-RI-p16 MIS終濃度10μMで約50%、AML症例3でもCPP44-RI-p16 MIS終濃度10μMで約43%、20μMでは60%弱の腫瘍細胞がアポトーシスに陥った(図13上段パネル)。このときのサンプル細胞へのペプチドの取り込みとAnnexin V陽性細胞は蛍光顕微鏡を用い視覚的にも再確認した(図13下段パネル)。
重要点として腫瘍細胞内に取り込まれた後のCPP44-RI-p16 MISペプチドがp16遺伝子経
路特異的に作用しているか否かという問題がある。この点を確認するためCDK4 inhibitorであるp16作用の出力としてのRBリン酸化の阻害状態を解析した。すなわち、終濃度10
μMのCPP44-RI-p16 MISペプチド導入処理時間別白血病細胞(AML1細胞, 4x105個分ずつ)
のライセートを調製し(導入後0時間、3時間、6時間、12時間、24時間)、これらをウサ
ギ抗セリン780番リン酸化型RB抗体(CST社製)を用いたイムノブロットで検証した。
その結果、導入後3時間から時間依存的にリン酸化型RBの発現が減弱していくことが確認された(図14)。
次に、プライマリー白血病細胞において著効を示したCPP44-RI-p16 MISが他の非腫瘍細胞系に及ぼす影響をNHDFにて調べた。その結果、終濃度5μM、10μM、20μMのCPP44-RI-p16 MISを導入したNHDFの28時間後のAnnexin V陽性率はいずれも細胞膜透過性
配列部分のみのCPP44ペプチドを入れた場合とほぼ同様の3%前後であった。即ち97%
の細胞はviability(生存)を保持しており、CPP44-RI-p16 MIS のNHDFに対する細胞傷害性はほとんど見られないことが判明した(図15)。
一方、RT-PCR法による正常PBMCの検索ではp16の発現は弱いながら認められ、さらにp16
の機能を補填することが知られているp15遺伝子の発現が良好に認められる(図16右パ
ネル)。そこで3例の健常者より得られたPBMCそれぞれに対する細胞傷害性の検定を実施した。その結果、CPP44-RI-p16 MISは白血病細胞で有意な抗腫瘍効果が認められた終濃度10μMの導入ではAnnexin V陽性細胞数は2.6%とアポトーシス誘導は極めて低率で
あり、20μMにおいては8%(92%の細胞が生存)、30μMにおいてもAnnexin V
陽性率は27%であった(図16)。
また、細胞膜透過性配列を大腸癌選択的高透過性配列であるCPP2(DSLKSYWYLQKFSWR;
配列番号2)に置換したデザインの大腸癌選択標的用CPP2-RI-p16 MIS抗腫瘍ペプチド(
配列番号16)を上記と同様の方法で作製し、プライマリー大腸癌細胞を対象に抗腫瘍効果を検定した。その結果、終濃度10μMでは26%、20μMでは導入した細胞全体の50%弱にアポトーシス誘導効果が認められた。これは同じ20μMの終濃度でCPP44-RI-p16 MISを導入した場合に比較し約4倍の抗腫瘍効果であった(図17)。
CPP44はp16INK4a遺伝子の発現を喪失している慢性骨髄球性白血病細胞株K562にもある
程度の透過能を発揮するため、K562に前述の急性白血病細胞と同様にCPP44-RI-p16 MISを導入したところ、非常に興味深いことに、いずれもアポトーシス誘導率は先述のAML細胞
群に比較して著しく低かった(10μMのペプチド導入でAnnexin V陽性細胞はわずか2
.2%である)。
この原因はイムノブロットで示すとおり、当K562細胞株がp16INK4aの下流に位置し細胞周期調節に関わるkey分子である癌抑制遺伝子RBの発現を重ねて喪失していることに起因
するものと考えられた。換言すれば、p16作用の出力分子であるRBの発現を欠損したK562
細胞での導入結果は、CPP44-RI-p16 MISが細胞内でp16-CDK4-RB遺伝子経路特異的に機能
し細胞死を誘導していることを証明した現象と考えられる(図18)。
(7)ヒト白血病異種移植モデルにおける抗腫瘍性ペプチドの腫瘍病変への送達
これらin vitroでの実験結果から、前出の患者由来ヒト急性白血病細胞AML1を腹腔内(i.p.)注射して腹膜播種を起こしたNOD-SCIDマウス(日本チャールズリバー社より購入した6週齢雌マウス)をヒト白血病異種移植モデル(human leukemia-xenograft model)として作製し、in vivoにおける抗腫瘍性ペプチドの腫瘍病変への送達を解析した。
まず500万個のAML1細胞をRPMI培養液に懸濁したのち、7週齢NOD-SCIDマウス(♀)の腹腔内に注射した。注射後10日目に60 g/g(体重1gあたり60 g)のFITC標識CPP44-RI-p16MISペプチドをi.p.にて投与し、投与後12時間で開腹して腫瘍病変とペプチドの分布
を蛍光実体顕微鏡下に観察した。
ヒト白血病細胞より成る微小播種性病巣は、マウス卵巣や腸管膜、腹壁腹膜上などに径0.5〜3mm前後の大きさで多数分布していた(図19A;両側卵巣皮膜上腫瘍結節)。同部の蛍光視野像では尿の貯留により自家蛍光を有する膀胱とは別に卵巣表面に微小蛍光集積部が認められた(図19B;UBは膀胱)。一方、腹膜上にも多数の径2〜3mm前後の結節状病変が形成されており(図19C)、蛍光視野像では同部に一致する結節状蛍光集積部が認められた(図19D)。これら以外の既存臓器や周囲組織に有意なペプチドの集積巣は目立たなかった。そこでこの蛍光ペプチド集積部の組織標本を作製し、これが腹膜表層から連続的に腹壁骨格筋浅部へ浸潤を示すヒト白血病細胞による播種性病変であることを病理組織学的に確認した(図19EおよびF)。
以上の結果より、CPP44-RI-p16MISペプチドは腹腔内環境下で微小ヒト白血病腫瘍結節
に特異的に透過・取り込みが行われることが証明された。
一方、TATをCPP44の代わりに用いたペプチド(配列番号17)のヒト白血病異種移植モ
デル(human leukemia-xenograft model)マウス導入例では、同用量(60 g/g 体重)に
て蛍光シグナルは非腫瘍部である胃および腸管に強く拡がり、有意なTATペプチドの播種
性白血病腫瘍部分への取り込みは、CPP44-RI-p16MISの実施例との比較において極めて低
率であった(図20)。
(8)ヒト白血病異種移植モデルにおける癌細胞選択的膜透過性ペプチドに結合したp16
投与の影響
(7)で腫瘍病変への送達能を確認した癌細胞選択的膜透過性ペプチドにp16RIMペプチドを結合したものを投与した前出の患者由来ヒト急性白血病細胞AML1を腹腔内注射して腹膜播種を起こしたNOD-SCIDマウスについて、その生存期間について検討した。詳細は以下のとおりである。
まず3.0×105個の上記AML1細胞をPBS(リン酸ナトリウム干渉液)に懸濁したのち、7
週齢NOD-SCIDマウス(♀)(日本チャールズリバー社)の腹腔内に注射した。FITC標識CPP44-RI-p16MISペプチドは、270mMのα−ラクトース一水和物を含むPBSに溶解したものを
、上記AML1細胞注射後10日目のマウス6匹に12.8mg/kgずつ、12時間おきに計4回、腹腔内
注射により投与し、その生存期間について測定した。
また、コントロールとして、p16の95番目のバリンをグルタミン酸に改変したp16V95Eをp16の代わりに結合したCPP44-RI-p16V95E(以下、「CPP44-RI-p16V95E」と称する)、及
びCPP44の代わりにTATを結合したTAT-RI-p16(以下、「TAT-RI-p16」と称する)、及びペプチド溶解に用いたPBS(リン酸ナトリウム干渉液)についても同様に、それぞれ上記AML1細胞注射後10日目のマウス6匹に12.8mg/kgずつ、12時間おきに計4回、腹腔内注射により投与し、その生存期間について観察及び測定を行った。
生存率の統計的解析は、パッケージソフトStatview(SAS institute製)を用いて計算
された。生存率カーブはKaplan-Meier法(富永祐民: 治療効果判定のための実用統計学、
蟹書房(1980)等)で導きP < 0.05を統計的に優位であると判定した。
なお、本実験の動物試験は岡山大学大学院医歯薬学総合研究科と愛知がんセンター研究所で承認されている。細胞の移植、ペプチド投与を含む全てのマウスの取り扱いと安楽死については、無痛もしくは麻酔下で行われ、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科および愛知がんセンター研究所における動物実験委員会の厳しいガイドラインに従って行われた。
上記結果を図22に示す。コントロールであるvehicleは、AML1細胞移植後14日目およ
び15日目でマウス全例が死亡した(平均生存期間:14.3日)。これらのマウスは、腹部に血性腹水が貯留する悪性の腫瘍により死亡に至ったものである。一方、CPP44-RI-p16MIS
では、平均生存期間:20.8日であり、vehicleに対するP値が0.0006、CPP44-RI-p16MISV95Eに対するp値が0.0006、さらにTAT-RIp16MISに対するp値は0.0008であり、各コントロールに対して有意な生存期間の延長が観察された。
p16MISペプチドの不活化ペプチドを連結したCPP44-RI-p16MISV95E投与群には、上記の
とおり、CPP44-RI-p16MISに比べて明らかに劣る生存率であり、溶媒投与群に比較し生存
期間延長効果は認められなかった(平均生存期間:15.8日)。また、CPP44ペプチドの代
わりにTATペプチドを連結したTAT-RIp16MIS投与群では、溶媒投与群に比較してp値は0.0022であり、有意な生存期間の延長が認められた(平均生存期間:17.0日)が、CPP44-RI-p16MISV95Eに対するp値は0.0434であり、その効果はCPP44-RI-p16MISより弱いことが示された。
以上の結果より、極めて悪性な性質を示すヒト白血病異種移植モデルに対し、CPP44-RI-p16MISペプチド投与を行うことにより有意な生存期間の延長が誘起され、CPP44-RI-p16MISを投与することの抗腫瘍効果が証明された。一方、CPP44ペプチドの代わりにTATを用い
たTAT-RIp16MISにも生存期間の延長が観察されたが、CPP44-RI-p16MISより有意に弱く、
癌細胞選択的膜透過ペプチドとしてのCPP44の優位性が示された。
これらの結果より、in vitroのプライマリーヒト白血病細胞を用いたアポトーシス誘導結果と同様に、in vivoにおいても、CPP44を代表例としたIVVL由来癌細胞選択的膜透過ペプチド(CCS-CPP)は、腫瘍特異的デリバリー機能に基づく抗腫瘍効果を発揮し、抗腫瘍剤
への応用の可能性を十分有すると考えられる。
本発明は、生物化学分野の研究、医薬の開発、抗腫瘍剤や癌選択的イメージング剤として、基礎分野、臨床分野に広く利用できる。

Claims (8)

  1. 配列番号2に示すアミノ酸配列を含み、大腸癌細胞に対する選択的な膜透過機能を有するペプチドからなる、大腸癌細胞選択的膜透過剤。
  2. 配列番号2に示すアミノ酸配列を含み、大腸癌細胞に対する選択的な膜透過機能を有するペプチドと、抗腫瘍性因子とが結合してなる抗腫瘍性物質を有効成分として含有することを特徴とする大腸癌に対する抗腫瘍剤。
  3. 前記結合が、リンカーを介する共有結合である、請求項2に記載の大腸癌に対する抗腫瘍剤。
  4. 前記抗腫瘍性因子が、抗腫瘍薬剤である、請求項2又は3に記載の大腸癌に対する抗腫瘍剤。
  5. 前記抗腫瘍性因子が、癌細胞において発現喪失している癌抑制遺伝子の機能を代償的に回復させる機能を有するタンパク質またはその機能ドメインペプチドである、請求項2〜4の何れか一項に記載の大腸癌に対する抗腫瘍剤。
  6. 前記機能ドメインペプチドが、配列番号12に示すアミノ酸配列の鏡面配列を含み、癌抑制遺伝子p16の機能を代償性に回復可能なペプチドである、請求項5に記載の大腸癌に
    対する抗腫瘍剤。
  7. 配列番号2に示すアミノ酸配列を含み、大腸癌細胞に対して選択的な膜透過機能を有するペプチドと、標識物質とが結合してなり、腫瘍部選択的な集積能を有するイメージング物質を含有することを特徴とする大腸癌検出用イメージング剤。
  8. 前記標識物質が、蛍光物質または陽電子放射性核種を有する物質である、請求項7に記載の大腸癌検出用イメージング剤。
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