以下、図面を参照して本発明の実施の形態の例について詳細に説明する。なお、以下の説明では、図に示したX、Y、Z軸を基準として方向を説明する。X、Y軸は互いに直角な水平軸であり、Z軸はX、Y軸に直角な鉛直軸である。図のX軸方向は本発明に係るX方向であり、Y軸方向は本発明に係るY方向であり、Z軸方向は本発明に係るZ方向であるが、本発明はこれに限定されるものではない。各図において、一部の構成の図示を適宜省略して、図面を簡略化している。
まず、図1を用いて、溶接設備5の構成について説明する。図1は本発明の実施の形態に係る溶接設備5の構成を示すブロック図である。
図1に示される溶接設備5は、電子部品を製造するラインに設置され、真空雰囲気中でワーク10(図2Aなど参照)に対してシーム溶接する際に使用される。具体的に、溶接設備5は、仮付け装置6と、熱処理装置7と、溶接装置1と、を備えている。
仮付け装置6は、大気中において、パッケージの開口に蓋となるリッドを仮付けしてワーク10(図2Aなど参照)にする。ワーク10は、熱処理装置7に引き継がれる。
熱処理装置7は、自身の内部を真空雰囲気に保つ熱処理用真空チャンバ(図示省略)内において、ワーク10(図2Aなど参照)に熱処理を施す。熱処理装置7による熱処理は、ベーキングやアニールなどを兼ねる。熱処理後のワーク10は、溶接装置1に引き継がれる。
溶接装置1は、図2〜図4を用いて説明する。図2Aは本発明の実施の形態に係る溶接装置1の平面図であり、当該溶接装置1の下方を示す。図2Bは溶接装置1の平面図であり、当該溶接装置の上方を示す。図3は溶接装置1の背面図である。図4Aは溶接装置1の右側面図であり、上流側のX方向溶接ユニット200を示す。図4Bは溶接装置1の右側面図であり、下流側のY方向溶接ユニット300を示す。なお、図2〜図4、および以下で説明する他の図では、一部を断面にして、断面部分を斜線で示している。
ワーク10は、パッケージの開口に蓋となるリッドが仮付けされた状態で、ワークトレイ20上に配列されている。ワークトレイ20上には、ワーク10を収容する複数の窪みがX、Y軸方向のマトリクス状に形成されており、複数のワーク10はX、Y軸方向のマトリクス状に配列されている。
溶接装置1は、ワークトレイ20上に配列した複数のワーク10を全体としてX軸方向に搬送しながらまとめて溶接する。具体的に、溶接装置1は、内部を真空雰囲気に保つ真空チャンバ100と、この真空チャンバ100内の上流側においてX軸方向に沿って溶接するX方向溶接ユニット200と、真空チャンバ100内の下流側においてY軸方向に沿って溶接するY方向溶接ユニット300と、真空チャンバ100内の中流において溶接途中のワーク10を一旦待機させるバッファステーション400と、真空チャンバ100を外側から冷却する外部冷却ユニット500と、真空チャンバ100の上流側に並設された仕込室(ロードロック)600と、真空チャンバ100の下流側に並設された取出室(アンロードロック)700と、真空チャンバ100にワーク10を送り込む上流側搬送ユニット800と、真空チャンバ100からワーク10を送り出す下流側搬送ユニット900と、制御ユニット(図示省略)と、等を備えている。
これら溶接装置1の各部は、制御ユニットによって統括的に制御される。制御ユニットは、CPU、RAMおよびROM等から構成され、各種制御を実行する。CPUは、いわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されて各種機能(例えば、溶接回数をカウントする機能)を実現する。RAMは、CPUの作業領域として使用される。ROMは、CPUで実行されるプログラムを記憶する。
このような構成の制御ユニットは、後で詳述するように、X方向溶接ローラ240の交換時期を溶接回数により判断し、その交換時期に、X方向溶接ローラ240を交換用のX方向溶接ローラ292と交換するように制御する。同様に、制御ユニットは、Y方向溶接ローラ340の交換時期を溶接回数により判断し、その交換時期に、Y方向溶接ローラ340を交換用のY方向溶接ローラ392と交換するように制御する。
真空チャンバ100は、略六面体の箱形容器であるチャンバ本体110と、真空ポンプ120と、大気開放弁130と、を備えている。チャンバ本体110には、上流側の側壁に仕込室600と連通する第一開口112が形成されていると共に、下流側の側壁に取出室700と連通する第二開口114が形成されている。第一開口112は、後述する仕込室600の上流側仕切扉615によって開閉される。第二開口114は、後述する取出室700の下流側仕切扉715によって開閉される。第一開口112および第二開口114が閉じられた状態の真空チャンバ100は、真空ポンプ120の動作によって、チャンバ本体110内の空気圧を大気圧から真空雰囲気までの任意の圧力に制御する。大気開放弁130は、メンテナンス時等に利用される。なお、チャンバ本体110内には、後述するX方向溶接ヘッド移動機構260およびY方向溶接ヘッド移動機構360を配設するために、X軸方向に沿った梁116が形成されている。また、チャンバ本体110内には、後述する第一Z方向移動機構270および第二Z方向移動機構370を配設するために、梁116からY軸方向に延びた支持材118が形成されている。
X方向溶接ユニット200は、マトリクス状に配列された複数のワーク10をX軸方向の行毎にX軸方向に沿って溶接する。具体的に、X方向溶接ユニット200は、複数のワーク10がワークトレイ20と共に載置される第一Y方向位置決めキャリア205と、この第一Y方向位置決めキャリア205をY軸方向に移動させる第一Y方向位置決めキャリア移動機構210と、ワークトレイ20を第一Y方向位置決めキャリア205上に支持したりそれを解除したりする第一支持機構220と、一対のX方向溶接ローラ240および三本(二対)の第一搬送フィンガー250を有するX方向溶接ヘッド230と、このX方向溶接ヘッド230をX軸方向に移動させるX方向溶接ヘッド移動機構260と、X方向溶接ヘッド230を構成するX方向溶接ヘッド用ベース231に対してZ軸方向に移動可能に配設された一対の第一Z方向可動部材268と、この第一Z方向可動部材268に着脱可能に配設されてX方向溶接ローラ240を回転可能に支持する一対のX方向溶接ローラハウジング269と、X方向溶接ローラ240をZ軸方向等に移動させたり、第一搬送フィンガー250をZ軸方向に移動させたりする第一Z方向移動機構270と、交換用のX方向溶接ローラ292が載置されている第一交換キャリア290と、を備えている。
第一Y方向位置決めキャリア205は、後で詳述する第一搬送フィンガー250によってX軸方向に直列に搬送される複数のワーク10をY軸方向にオフセットする第一Y方向オフセット手段として機能する。X方向溶接ユニット200は、第一Y方向位置決めキャリア205によってY軸方向にオフセットされる複数のワーク10を溶接する。具体的に、第一Y方向位置決めキャリア205は、チャンバ本体110内の上流側底面に、Y軸方向に直線移動可能に配設されている。第一Y方向位置決めキャリア移動機構210は、第一Y方向位置決めキャリア205の動力源として、チャンバ本体110内の上流側底面に配設されている。具体的に、第一Y方向位置決めキャリア移動機構210は、Y軸方向に沿って互いに平行に配設された二本の第一Y方向位置決めキャリア用レール211と、これら二本の第一Y方向位置決めキャリア用レール211に沿ってY軸方向に直線移動する二対の第一Y方向位置決めキャリア用スライダ212と、外周面におねじが形成された第一Y方向位置決めキャリア駆動軸213と、この第一Y方向位置決めキャリア駆動軸213を回転可能に支持する一対の第一Y方向位置決めキャリア駆動軸用軸受214、215と、第一Y方向位置決めキャリア駆動軸213に螺合する第一Y方向位置決めキャリア用ナット216と、第一Y方向位置決めキャリア駆動軸213に接続された第一Y方向位置決めキャリア用位置制御モータ217と、を備えている。
第一Y方向位置決めキャリア用レール211は、第一Y方向位置決めキャリア移動機構210の基礎部分を構成すると共に、後で詳述する第一支持機構220の基礎部分を構成する。すなわち、第一Y方向位置決めキャリア205用のレール、および、後で詳述する第一突当たり部材221用のレールは、一体に構成されている。二対の第一Y方向位置決めキャリア用スライダ212は、第一Y方向位置決めキャリア205を搭載し、当該第一Y方向位置決めキャリア205について、二本の第一Y方向位置決めキャリア用レール211に沿ったY軸方向の直線移動を可能にする。第一Y方向位置決めキャリア駆動軸213は、二本の第一Y方向位置決めキャリア用レール211の間に平行に配設されている。この第一Y方向位置決めキャリア駆動軸213の一端は、チャンバ本体110の側壁を貫通して外部に露出し、第一Y方向位置決めキャリア用位置制御モータ217に接続されている。一方の第一Y方向位置決めキャリア駆動軸用軸受214は、チャンバ本体110内の底面に配設されている。他方の第一Y方向位置決めキャリア駆動軸用軸受215は、磁性流体シール等であり、チャンバ本体110の側壁における貫通部分に配設されて、当該貫通部分をシールする。この第一Y方向位置決めキャリア駆動軸用軸受215は、第一Y方向位置決めキャリア駆動軸213の回転中および停止中に、チャンバ本体110内を真空雰囲気に保つことを可能にする。第一Y方向位置決めキャリア用ナット216は、第一Y方向位置決めキャリア205の下面に固定されており、第一Y方向位置決めキャリア用位置制御モータ217に駆動される第一Y方向位置決めキャリア駆動軸213の回転に伴って、第一Y方向位置決めキャリア205をY軸方向に直線移動させる。なお、第一Y方向位置決めキャリア駆動軸213および第一Y方向位置決めキャリア用ナット216は、螺合部分にボールを備えたいわゆるボールねじを構成し、摺動による抵抗を低減している。
ここで、第一支持機構220の構造について詳細に説明する。図5Aは第一支持機構220の斜視図である。
この図に示される第一支持機構220は、チャンバ本体110内の上流側下方に配設されている。具体的に、第一支持機構220は、第一Y方向位置決めキャリア205と共にY軸方向に移動したワークトレイ20が突き当たってY軸方向に移動可能な第一突当たり部材221と、第一Y方向位置決めキャリア移動機構210と兼用する二本の第一Y方向位置決めキャリア用レール211と、これら二本の第一Y方向位置決めキャリア用レール211に沿ってY軸方向に直線移動する一対の第一突当たり部材用スライダ222と、第一Y方向位置決めキャリア205と共にY軸方向に移動してワークトレイ20を押す第一押し部材223と、第一突当たり部材221がY軸方向に移動した場合に、復元する方向に当該第一突当たり部材221を付勢する第一付勢部材224と、この第一付勢部材224に付勢された第一突当たり部材221の復元方向の移動範囲を規制する第一ストッパー225と、を備えている。
第一突当たり部材221は、第一押し部材223と対向するように、X軸方向に沿ってワークトレイ20の側方に配設されている。この第一突当たり部材221は、第一押し部材223がY軸方向に所定量移動した場合に、当該第一押し部材223と共にワークトレイ20を挟み込んで第一Y方向位置決めキャリア205上に支持する。一対の第一突当たり部材用スライダ222は、第一突当たり部材221を搭載し、当該第一突当たり部材221について、二本の第一Y方向位置決めキャリア用レール211に沿ったY軸方向の直線移動を可能にする。第一押し部材223は、第一突当たり部材221と対向するように、X軸方向に沿って第一Y方向位置決めキャリア205上に配設されている。この第一押し部材223は、Y軸方向に所定量移動した場合に、第一突当たり部材221と共にワークトレイ20を挟み込んで第一Y方向位置決めキャリア205上に支持する。
ここで、X方向溶接ヘッド230の構造について詳細に説明する。図6AはX方向溶接ヘッド230の拡大正面図である。図6BはX方向溶接ヘッド230の拡大側面図である。
X方向溶接ヘッド230は、基礎となるX方向溶接ヘッド用ベース231と、このX方向溶接ヘッド用ベース231の前面に対してY軸方向に沿って互いに平行に配設された一対のY方向レール232と、これら一対のY方向レール232に沿ってY軸方向に直線移動するリニアモータ式の二対のY方向スライダ233と、これら二対のY方向スライダ233に対してZ軸方向に沿って互いに平行に配設された一対の第一Z方向レール234と、これら一対の第一Z方向レール234に沿ってZ軸方向に直線移動するリニアモータ式の二対の第一Z方向スライダ235と、これら二対の第一Z方向スライダ235に取り付けられてZ軸方向に移動可能な一対の第一Z方向可動部材268と、これら一対の第一Z方向可動部材268の下端に配設された一対のX方向溶接ローラ保持部236と、これら一対のX方向溶接ローラ保持部236に着脱可能に配設された一対のX方向溶接ローラハウジング269と、これら一対のX方向溶接ローラハウジング269に対してX方向溶接ローラ用回転シャフト237が回転可能に支持される一対のX方向溶接ローラ240と、を備えている。
図2〜図4に戻って説明する。X方向溶接ヘッド230は、第一Y方向位置決めキャリア205の上方において、チャンバ本体110内の梁116に、X軸方向に直線移動可能に配設されている。X方向溶接ヘッド移動機構260は、X方向溶接ヘッド230の動力源として、第一Y方向位置決めキャリア205の上方に配設されている。具体的に、X方向溶接ヘッド移動機構260は、支持材118を貫通するように梁116の側面にX軸方向に沿って互いに平行に配設された二本の溶接ヘッド用レール261と、これら二本の溶接ヘッド用レール261に沿ってX軸方向に直線移動する二対のX方向溶接ヘッド用スライダ262と、外周面におねじが形成されたX方向溶接ヘッド駆動軸263と、このX方向溶接ヘッド駆動軸263を回転可能に支持する一対のX方向溶接ヘッド駆動軸用軸受264、265と、X方向溶接ヘッド駆動軸263に螺合するX方向溶接ヘッド用ナット266と、X方向溶接ヘッド駆動軸263に接続されたX方向溶接ヘッド用位置制御モータ267と、を備えている。
この溶接ヘッド用レール261は、X方向溶接ヘッド移動機構260の基礎部分を構成すると共に、後述するY方向溶接ヘッド移動機構360の基礎部分を構成する。すなわち、X方向溶接ヘッド230用のレール、および後述するY方向溶接ヘッド330用のレールは、一体に構成されている。二対のX方向溶接ヘッド用スライダ262は、X方向溶接ヘッド230を固定し、当該X方向溶接ヘッド230について、二本の溶接ヘッド用レール261に沿ったX軸方向の直線移動を可能にする。X方向溶接ヘッド駆動軸263は、チャンバ本体110内の上流側において、二本の溶接ヘッド用レール261の間に平行に配設されている。このX方向溶接ヘッド駆動軸263の一端は、チャンバ本体110の側壁を貫通して外部に露出し、X方向溶接ヘッド用位置制御モータ267に接続されている。一方のX方向溶接ヘッド駆動軸用軸受264は、チャンバ本体110内の支持材118の側面に配設されている。他方のX方向溶接ヘッド駆動軸用軸受265は、磁性流体シール等であり、チャンバ本体110の側壁における貫通部分に配設されて、当該貫通部分をシールする。このX方向溶接ヘッド駆動軸用軸受265は、X方向溶接ヘッド駆動軸263の回転中および停止中に、チャンバ本体110内を真空雰囲気に保つことを可能にする。X方向溶接ヘッド用ナット266は、X方向溶接ヘッド用ベース231の背面に固定されており、X方向溶接ヘッド用位置制御モータ267に駆動されるX方向溶接ヘッド駆動軸263の回転に伴って、X方向溶接ヘッド230をX軸方向に直線移動させる。なお、X方向溶接ヘッド駆動軸263およびX方向溶接ヘッド用ナット266は、螺合部分にボールを備えたいわゆるボールねじを構成し、摺動による抵抗を低減している。
第一Z方向可動部材268は、X方向溶接ヘッド用ベース231の前面に対し、Z軸方向に移動可能に配設されている。この第一Z方向可動部材268は、熱伝導性と、熱放射性と、絶縁性と、を有する材料からなり、シーム溶接により生じる熱の放熱性能を高めている。X方向溶接ヘッド230で発生する溶接熱は、X方向溶接ローラ保持部236を経て第一Z方向可動部材268に伝達すると同時に当該第一Z方向可動部材268の表面(ひょうめん)から外部に放熱される。また、X方向溶接ローラ保持部236とX方向溶接ヘッド用ベース231とは、第一Z方向可動部材268によって絶縁される。なお、第一Z方向可動部材268の前面の面積を可能な限り大きく設定し、放熱性能を高めることが好ましい。具体的にこの第一Z方向可動部材268は、所定の面積となる放熱面268Aを備えるようにし、この放熱面の面積を3cm2以上、好ましくは5cm2以上確保することが望ましい。
第一Z方向可動部材268の材料は、熱伝導率が170W/(m・K)以上であることが好ましい。そして、第一Z方向可動部材268の材料は、熱の放射率が0.8以上であること、すなわち、1に近いことが好ましい。また、第一Z方向可動部材268の材料は、絶縁抵抗が103Ω・cm以上であることが好ましい。さらに、第一Z方向可動部材268の材料は、防錆性、軽量性を有することが好ましい。第一Z方向可動部材268の材料には、セラミックスが適しており、その中では、炭化ケイ素または窒化アルミニウムが更に適している。採用するセラミックスの熱の放射率は0.8以上1.0以下であることが好ましく、0.93以上0.95以下であることがより好ましい。すなわち、セラミックスの熱の放射率は、アルミニウムの熱の放射率の0.02以上0.1以下や、鉄の熱の放射率の0.5以上0.9以下と比較すると高い。炭化ケイ素は、熱伝導率が170W/(m・K)であり、熱の放射率が0.8以上1.0以下であり、絶縁抵抗が103Ω・cm以上5×106Ω・cm以下である。窒化アルミニウムは、熱伝導率が170W/(m・K)以上230W/(m・K)以下であり、熱放射率が0.93であり、絶縁抵抗が1013Ω・cm以上である。なお、炭化ケイ素および窒化アルミニウムは、上記の好ましいとした条件を全て満たしている。
X方向溶接ローラ保持部236は、第一Z方向可動部材268の下端に配設されてX方向溶接ローラ240を回転可能に保持すると共に、当該X方向溶接ローラ240に電流を供給して、X方向溶接ローラ240による溶接を可能にする。
X方向溶接ローラハウジング269は、X方向溶接ローラ240との間に介在させる通電用の導電ペーストを内包している。このX方向溶接ローラハウジング269は、X方向溶接ローラ240と一体に構成されており、当該X方向溶接ローラ240と一体に交換可能となっている。
一対のX方向溶接ローラ240は、X方向溶接ヘッド用ベース231のY軸に沿った面に対し、Y軸回りに回転可能で、Z軸方向に移動可能で、かつ、着脱可能に配設され、当該X方向溶接ヘッド用ベース231と共にX軸方向に移動可能となっている。さらに、一対のX方向溶接ローラ240は、Y方向スライダ233によってY方向に移動して互いの間隔が調整可能となっている。具体的に、一対のX方向溶接ローラ240は、後で詳述する第一交換キャリア290の上方においてZ軸方向に移動することで、X方向溶接ローラハウジング269と一体に交換用のX方向溶接ローラ292と自動交換される。一対のX方向溶接ローラ240は、溶接電極を構成し、ワーク10に対してシーム溶接をする。すなわち、一対のX方向溶接ローラ240は、ワーク10に対してパルス状の電圧を印加しながら転動することによって、当該ワーク10に対するシーム溶接をする。このため、一対のX方向溶接ローラ240は、X方向溶接ヘッド用ベース231と絶縁をする必要があるが、その絶縁は、絶縁性を有する第一Z方向可動部材268によって実現されている。
第一Z方向移動機構270は、X方向溶接ヘッド230を貫通するようにX軸方向に沿って配設された第一Z方向移動用駆動軸271と、この第一Z方向移動用駆動軸271を回転可能に支持する一対の第一Z方向移動用駆動軸用軸受272、273と、第一Z方向移動用駆動軸271の所定の第一方向(例えば、第一Z方向移動用位置制御モータ274の側から視て左方向)への回転力を一対のX方向溶接ローラ240のZ軸方向への移動力に変換するX方向溶接ローラ用動力変換機構(図示省略)と、第一Z方向移動用駆動軸271の所定の第二方向(例えば、第一Z方向移動用位置制御モータ274の側から視て右方向)への回転力を三本の第一搬送フィンガー250のZ軸方向への移動力に変換する第一搬送フィンガー用動力変換機構(図示省略)と、第一Z方向移動用駆動軸271に接続された第一Z方向移動用位置制御モータ274と、一対のX方向溶接ローラ240の互いの間隔を変更するX方向溶接ローラ間隔変更機構(図示省略)と、このX方向溶接ローラ間隔変更機構に接続されたX方向溶接ローラ間隔変更用位置制御モータ(図示省略)と、を備えている。
第一Z方向移動用駆動軸271には、スプライン軸が採用されている。この第一Z方向移動用駆動軸271の一端は、チャンバ本体110の側壁を貫通して外部に露出し、第一Z方向移動用位置制御モータ274に接続されている。一方の第一Z方向移動用駆動軸用軸受272は、チャンバ本体110内の支持材118の側面に配設されている。他方の第一Z方向移動用駆動軸用軸受273は、磁性流体シール等であり、チャンバ本体110の側壁における貫通部分に配設されて、当該貫通部分をシールする。この第一Z方向移動用駆動軸用軸受273は、第一Z方向移動用駆動軸271の回転中および停止中に、チャンバ本体110内を真空雰囲気に保つことを可能にする。X方向溶接ローラ用動力変換機構は、X方向溶接ヘッド230に配設されており、第一Z方向移動用位置制御モータ274に駆動される第一Z方向移動用駆動軸271の所定の第一方向(例えば、第一Z方向移動用位置制御モータ274の側から視て左方向)への回転に伴って、X方向溶接ローラ240をZ軸方向に直線移動させる。X方向溶接ローラ間隔変更機構およびX方向溶接ローラ間隔変更用位置制御モータは、X方向溶接ヘッド230に配設されている。X方向溶接ローラ間隔変更機構は、X方向溶接ローラ間隔変更用位置制御モータに駆動されて、一対のX方向溶接ローラ240のY軸方向の互いの間隔を変更させる。
三本の第一搬送フィンガー250は、複数のワーク10をX軸方向に直列に搬送する搬送手段として機能する。これら三本の第一搬送フィンガー250は、X方向溶接ヘッド230に対し、X軸方向に沿って互いに間隔を空けて、かつ、Z軸方向に移動可能に配設され、当該X方向溶接ヘッド230と共にX軸方向に移動可能となっている。具体的に、三本の第一搬送フィンガー250は、第一Y方向位置決めキャリア205に所定の間隔まで近接する第一近接位置、および、当該第一Y方向位置決めキャリア205から所定の間隔まで離間する第一離間位置、の間でZ軸方向に移動する。また、三本の第一搬送フィンガー250は、第一近接位置に位置する場合に、そのうちの二本でワークトレイ20の前後を挟み込んで、X方向溶接ヘッド230と共にX軸方向に移動して当該ワークトレイ20を押し、当該ワークトレイ20と共に複数のワーク10をX軸方向に搬送する。一方、三本の第一搬送フィンガー250は、第一離間位置に位置する場合に、ワークトレイ20を押すことはない。これら一対の第一搬送フィンガー250は、X軸方向の互いの間隔を一定に保っている。
前述していた第一搬送フィンガー用動力変換機構は、X方向溶接ヘッド230に配設されており、第一Z方向移動用位置制御モータ274に駆動される第一Z方向移動用駆動軸271の所定の第二方向(例えば、第一Z方向移動用位置制御モータ274の側から視て右方向)への回転に伴って、第一搬送フィンガー250をZ軸方向に直線移動させる。
第一交換キャリア290は、第一Y方向位置決めキャリア205のY軸方向の一端に固定され、当該第一Y方向位置決めキャリア205と共にY軸方向に移動可能となっている。この第一交換キャリア290には、交換用のX方向溶接ローラ292を保持する複数のX方向溶接ローラ用保持台294がY軸方向に沿って載置されている。複数のX方向溶接ローラ用保持台294には、それぞれ、一対の交換用のX方向溶接ローラ292がY軸方向に沿って載置されている。
Y方向溶接ユニット300は、マトリクス状に配列された複数のワーク10をY軸方向の列毎にY軸方向に沿って溶接する。具体的に、Y方向溶接ユニット300は、複数のワーク10がワークトレイ20と共に載置される第二Y方向位置決めキャリア305と、この第二Y方向位置決めキャリア305をY軸方向に移動させる第二Y方向位置決めキャリア移動機構310と、ワークトレイ20を第二Y方向位置決めキャリア305上に支持したりそれを解除したりする第二支持機構320と、一対のY方向溶接ローラ340および一対の第二搬送フィンガー350を有するY方向溶接ヘッド330と、このY方向溶接ヘッド330をX軸方向に移動させるY方向溶接ヘッド移動機構360と、Y方向溶接ヘッド330に対してZ軸方向に移動可能に配設された第二Z方向可動部材368と、この第二Z方向可動部材368に着脱可能に配設されてY方向溶接ローラ340を回転可能に保持する一対のY方向溶接ローラハウジング369と、Y方向溶接ローラ340をZ軸方向等に移動させたり、第二搬送フィンガー350をZ軸方向に移動させたりする第二Z方向移動機構370と、交換用のY方向溶接ローラ392が載置されている第二交換キャリア390と、を備えている。
第二Y方向位置決めキャリア305は、後で詳述する第二搬送フィンガー350によってX軸方向に直列に搬送される複数のワーク10をY軸方向にオフセットする第二Y方向オフセット手段として機能する。Y方向溶接ユニット300は、第二Y方向位置決めキャリア305によってY軸方向にオフセットされる複数のワーク10を溶接する。具体的に、第二Y方向位置決めキャリア305は、チャンバ本体110内の下流側底面に、Y軸方向に直線移動可能に配設されている。第二Y方向位置決めキャリア移動機構310は、第二Y方向位置決めキャリア305の動力源として、チャンバ本体110内の下流側底面に配設されている。具体的に、第二Y方向位置決めキャリア移動機構310は、Y軸方向に沿って互いに平行に配設された二本の第二Y方向位置決めキャリア用レール311と、これら二本の第二Y方向位置決めキャリア用レール311に沿ってY軸方向に直線移動する二対の第二Y方向位置決めキャリア用スライダ312と、外周面におねじが形成された第二Y方向位置決めキャリア駆動軸313と、この第二Y方向位置決めキャリア駆動軸313を回転可能に支持する一対の第二Y方向位置決めキャリア駆動軸用軸受314、315と、第二Y方向位置決めキャリア駆動軸313に螺合する第二Y方向位置決めキャリア用ナット316と、第二Y方向位置決めキャリア駆動軸313に接続された第二Y方向位置決めキャリア用位置制御モータ317と、を備えている。
第二Y方向位置決めキャリア用レール311は、第二Y方向位置決めキャリア移動機構310の基礎部分を構成すると共に、後で詳述する第二支持機構320の基礎部分を構成する。すなわち、第二Y方向位置決めキャリア305用のレール、および、後で詳述する第二突当たり部材321用のレールは、一体に構成されている。二対の第二Y方向位置決めキャリア用スライダ312は、第二Y方向位置決めキャリア305を搭載し、当該第二Y方向位置決めキャリア305について、二本の第二Y方向位置決めキャリア用レール311に沿ったY軸方向の直線移動を可能にする。第二Y方向位置決めキャリア駆動軸313は、二本の第二Y方向位置決めキャリア用レール311の間に平行に配設されている。この第二Y方向位置決めキャリア駆動軸313の一端は、チャンバ本体110の側壁を貫通して外部に露出し、第二Y方向位置決めキャリア用位置制御モータ317に接続されている。一方の第二Y方向位置決めキャリア駆動軸用軸受314は、チャンバ本体110内の底面に配設されている。他方の第二Y方向位置決めキャリア駆動軸用軸受315は、磁性流体シール等であり、チャンバ本体110の側壁における貫通部分に配設されて、当該貫通部分をシールする。第二Y方向位置決めキャリア用ナット316は、第二Y方向位置決めキャリア305の下面に固定されており、第二Y方向位置決めキャリア用位置制御モータ317に駆動される第二Y方向位置決めキャリア駆動軸313の回転に伴って、第二Y方向位置決めキャリア305をY軸方向に直線移動させる。なお、第二Y方向位置決めキャリア駆動軸313および第二Y方向位置決めキャリア用ナット316は、螺合部分にボールを備えたいわゆるボールねじを構成し、摺動による抵抗を低減している。
ここで、第二支持機構320の構造について詳細に説明する。図5Bは第二支持機構320の斜視図である。
この図に示される第二支持機構320は、チャンバ本体110内の下流側下方に配設されている。具体的に、第二支持機構320は、第二Y方向位置決めキャリア305と共にY軸方向に移動したワークトレイ20が突き当たってY軸方向に移動可能な第二突当たり部材321と、第二Y方向位置決めキャリア移動機構310と兼用する二本の第二Y方向位置決めキャリア用レール311と、これら二本の第二Y方向位置決めキャリア用レール311に沿ってY軸方向に直線移動する一対の第二突当たり部材用スライダ322と、第二Y方向位置決めキャリア305と共にY軸方向に移動してワークトレイ20を押す第二押し部材323と、第二突当たり部材321がY軸方向に移動した場合に、復元する方向に当該第二突当たり部材321を付勢する第二付勢部材324と、この第二付勢部材324に付勢された第二突当たり部材321の復元方向の移動範囲を規制する第二ストッパー325と、を備えている。
第二突当たり部材321は、第二押し部材323と対向するように、X軸方向に沿ってワークトレイ20の側方に配設されている。この第二突当たり部材321は、第二押し部材323がY軸方向に所定量移動した場合に、当該第二押し部材323と共にワークトレイ20を挟み込んで第二Y方向位置決めキャリア305上に支持する。一対の第二突当たり部材用スライダ322は、第二突当たり部材321を搭載し、当該第二突当たり部材321について、二本の第二Y方向位置決めキャリア用レール311に沿ったY軸方向の直線移動を可能にする。第一押し部材323は、第二突当たり部材321と対向するように、X軸方向に沿って第二Y方向位置決めキャリア305上に配設されている。この第二押し部材323は、Y軸方向に所定量移動した場合に、第二突当たり部材321と共にワークトレイ20を挟み込んで第二Y方向位置決めキャリア305上に支持する。
ここで、Y方向溶接ヘッド330の構造について詳細に説明する。図6CはY方向溶接ヘッド330の拡大正面図である。図6DはY方向溶接ヘッド330の拡大側面図である。
Y方向溶接ヘッド330は、基礎となるY方向溶接ヘッド用ベース331と、このY方向溶接ヘッド用ベース331の前面に対してX軸方向に沿って互いに平行に配設された一対のX方向レール332と、これら一対のX方向レール332に沿ってX軸方向に直線移動するリニアモータ式の二対のX方向スライダ333と、これら二対のX方向スライダ333に対してZ軸方向に沿って互いに平行に配設された一対の第二Z方向レール334と、これら一対の第二Z方向レール334に沿ってZ軸方向に直線移動するリニアモータ式の二対の第二Z方向スライダ335と、これら二対の第二Z方向スライダ335に取り付けられてZ軸方向に移動可能な一対の第二Z方向可動部材368と、これら一対の第二Z方向可動部材368の下端に配設された一対のY方向溶接ローラ保持部336と、これら一対のY方向溶接ローラ保持部236に着脱可能に配設された一対のY方向溶接ローラハウジング369と、これら一対のY方向溶接ローラハウジング369に対してY方向溶接ローラ用回転シャフト337が回転可能に支持される一対のY方向溶接ローラ340と、を備えている。
図2〜図4に戻って説明する。Y方向溶接ヘッド330は、炭化ケイ素または窒化アルミニウム等の熱伝導率が高い材料からなり、高い放熱能力を有する。このY方向溶接ヘッド330は、第二Y方向位置決めキャリア305の上方において、チャンバ本体110内の梁116に、X軸方向に直線移動可能に配設されている。Y方向溶接ヘッド移動機構360は、Y方向溶接ヘッド330の動力源として、第二Y方向位置決めキャリア305の上方に配設されている。具体的に、Y方向溶接ヘッド移動機構360は、X方向溶接ヘッド移動機構260と兼用する二本の溶接ヘッド用レール261と、これら二本の溶接ヘッド用レール261に沿ってX軸方向に直線移動する二対のY方向溶接ヘッド用スライダ362と、外周面におねじが形成されたY方向溶接ヘッド駆動軸363と、このY方向溶接ヘッド駆動軸363を回転可能に支持する一対のY方向溶接ヘッド駆動軸用軸受け364、365と、Y方向溶接ヘッド駆動軸363に螺合するY方向溶接ヘッド用ナット366と、Y方向溶接ヘッド駆動軸363に接続されたY方向溶接ヘッド用位置制御モータ367と、を備えている。
二対のY方向溶接ヘッド用スライダ362は、Y方向溶接ヘッド330を固定し、当該Y方向溶接ヘッド330について、二本の溶接ヘッド用レール361に沿ったX軸方向の直線移動を可能にする。Y方向溶接ヘッド駆動軸363は、チャンバ本体110内の下流側において、二本の溶接ヘッド用レール261の間に平行に配設されている。このY方向溶接ヘッド駆動軸363の一端は、チャンバ本体110の側壁を貫通して外部に露出し、Y方向溶接ヘッド用位置制御モータ367に接続されている。一方のY方向溶接ヘッド駆動軸用軸受け364は、チャンバ本体110内の支持材118の側面に配設されている。他方のY方向溶接ヘッド駆動軸用軸受け365は、磁性流体シール等であり、チャンバ本体110の側壁における貫通部分に配設されて、当該貫通部分をシールする。このY方向溶接ヘッド駆動軸用軸受365は、Y方向溶接ヘッド駆動軸363の回転中および停止中に、チャンバ本体110内を真空雰囲気に保つことを可能にする。Y方向溶接ヘッド用ナット366は、Y方向溶接ヘッド用ベース331の背面に固定されており、Y方向溶接ヘッド用位置制御モータ367に駆動されるY方向溶接ヘッド駆動軸363の回転に伴って、Y方向溶接ヘッド330をX軸方向に直線移動させる。なお、Y方向溶接ヘッド駆動軸363およびY方向溶接ヘッド用ナット366は、螺合部分にボールを備えたいわゆるボールねじを構成し、摺動による抵抗を低減している。
第二Z方向可動部材268は、Y方向溶接ヘッド用ベース331の前面に対し、Z軸方向に移動可能に配設されている。この第二Z方向可動部材368は、熱伝導性と、熱放射性と、絶縁性と、を有する材料からなり、シーム溶接により生じる熱の放熱性能を高めている。Y方向溶接ヘッド330で発生する溶接熱は、Y方向溶接ローラ保持部336を経て第二Z方向可動部材368に伝達すると同時に当該第二Z方向可動部材368の表面(ひょうめん)から外部に放熱される。また、Y方向溶接ローラ保持部336とY方向溶接ヘッド用ベース331とは、第二Z方向可動部材368によって絶縁される。なお、第二Z方向可動部材368の前面の面積を可能な限り大きく設定し、放熱性能を高めることが好ましい。具体的にこの第二Z方向可動部材368は、所定の面積となる放熱面368Aを備えるようにし、この放熱面の面積を3cm2以上、好ましくは5cm2以上確保することが望ましい。第二Z方向可動部材368の材料は、第一Z方向可動部材268の材料と同様の物性値を有していることが好ましい。第二Z方向可動部材368の材料には、セラミックスが適しており、その中では、炭化ケイ素または窒化アルミニウムが更に適している。
Y方向溶接ローラ保持部336は、第二Z方向可動部材368の下端に配設されてY方向溶接ローラ340を回転可能に保持すると共に、当該Y方向溶接ローラ340に電流を供給して、Y方向溶接ローラ340による溶接を可能にする。
Y方向溶接ローラハウジング369は、Y方向溶接ローラ340との間に介在させる通電用の導電ペーストを内包している。このY方向溶接ローラハウジング369は、Y方向溶接ローラ340と一体に構成されており、当該Y方向溶接ローラ340と一体に交換可能となっている。
一対のY方向溶接ローラ340は、Y方向溶接ヘッド用ベース331のX軸に沿った面に対し、X軸回りに回転可能で、Z軸方向に移動可能で、かつ、着脱可能に配設され、当該Y方向溶接ヘッド用ベース331と共にX軸方向に移動可能となっている。さらに、一対のY方向溶接ローラ340は、X方向スライダ333によってX方向に移動して互いの間隔が調整可能となっている。具体的に、一対のY方向溶接ローラ340は、後で詳述する第二交換キャリア390の上方においてZ軸方向に移動することで、Y方向溶接ローラハウジング369と一体に交換用のY方向溶接ローラ392と自動交換される。一対のY方向溶接ローラ340は、溶接電極を構成し、ワーク10に対してシーム溶接をする。すなわち、一対のY方向溶接ローラ340は、ワーク10に対してパルス状の電圧を印加しながら転動することによって、当該ワーク10に対する溶接をする。このため、一対のY方向溶接ローラ340は、Y方向溶接ヘッド用ベース331と絶縁する必要があるが、その絶縁は、絶縁性を有する第二Z方向可動部材368によって実現されている。
第二Z方向移動機構370は、Y方向溶接ヘッド330を貫通するようにX軸方向に沿って配設された第二Z方向移動用駆動軸371と、この第二Z方向移動用駆動軸371を回転可能に支持する一対の第二Z方向移動用駆動軸用軸受372、373と、第二Z方向移動用駆動軸371の所定の第一方向(例えば、第二Z方向移動用位置制御モータ374の側から視て左方向)への回転力を一対のY方向溶接ローラ340のZ軸方向への移動力に変換するY方向溶接ローラ用動力変換機構(図示省略)と、第二Z方向移動用駆動軸371の所定の第二方向(例えば、第二Z方向移動用位置制御モータ374の側から視て右方向)への回転力を一対の第二搬送フィンガー350のZ軸方向への移動力に変換する第二搬送フィンガー用動力変換機構(図示省略)と、第二Z方向移動用駆動軸371に接続された第二Z方向移動用位置制御モータ374と、一対のY方向溶接ローラ340の互いの間隔を変更するY方向溶接ローラ間隔変更機構(図示省略)と、このY方向溶接ローラ間隔変更機構に接続されたY方向溶接ローラ間隔変更用位置制御モータ(図示省略)と、を備えている。
第二Z方向移動用駆動軸371には、スプライン軸が採用されている。この第二Z方向移動用駆動軸371の一端は、チャンバ本体110の側壁を貫通して外部に露出し、第二Z方向移動用位置制御モータ374に接続されている。一方の第二Z方向移動用駆動軸用軸受372は、チャンバ本体110内の支持材118の側面に配設されている。他方の第二Z方向移動用駆動軸用軸受373は、磁性流体シール等であり、チャンバ本体110の側壁における貫通部分に配設されて、当該貫通部分をシールする。この第二Z方向移動用駆動軸用軸受373は、第二Z方向移動用駆動軸371の回転中および停止中に、チャンバ本体110内を真空雰囲気に保つことを可能にする。Y方向溶接ローラ用動力変換機構は、Y方向溶接ヘッド330に配設されており、第二Z方向移動用位置制御モータ374に駆動される第二Z方向移動用駆動軸371の所定の第一方向(例えば、第二Z方向移動用位置制御モータ374の側から視て左方向)への回転に伴って、Y方向溶接ローラ340をZ軸方向に直線移動させる。Y方向溶接ローラ間隔変更機構およびY方向溶接ローラ間隔変更用位置制御モータは、Y方向溶接ヘッド330に配設されている。Y方向溶接ローラ間隔変更機構は、Y方向溶接ローラ間隔変更用位置制御モータに駆動されて、一対のY方向溶接ローラ340のX軸方向の互いの間隔を変更させる。
一対の第二搬送フィンガー350は、複数のワーク10をX方向に直列に搬送する搬送手段として機能する。これら一対の第二搬送フィンガー350は、Y方向溶接ヘッド330に対し、X軸方向に沿って互いに間隔を空けて、かつ、Z軸方向に移動可能に配設され、当該Y方向溶接ヘッド330と共にX軸方向に移動可能となっている。具体的に、一対の第二搬送フィンガー350は、第二Y方向位置決めキャリア305に所定の間隔まで近接する第二近接位置、および、当該第二Y方向位置決めキャリア305から所定の間隔まで離間する第二離間位置、の間でZ軸方向に移動する。また、一対の第二搬送フィンガー350は、第二近接位置に位置する場合に、ワークトレイ20の前後を挟み込んで、Y方向溶接ヘッド330と共にX軸方向に移動して当該ワークトレイ20を押し、当該ワークトレイ20と共に複数のワーク10をX軸方向に搬送する。一方、一対の第二搬送フィンガー350は、第二離間位置に位置する場合に、ワークトレイ20を押すことはない。これら一対の第二搬送フィンガー350は、X軸方向の互いの間隔を一定に保っている。
なお、溶接装置1は、複数のワーク10をX軸方向に直列に搬送する搬送手段として、第一溶接ユニット200に三本(二対)の第一搬送フィンガー250を備えていると共に、第二溶接ユニット300に一対の第二搬送フィンガー350を備えているが、これに限定されることはない。すなわち、溶接装置1は、当該搬送手段として、第一溶接ユニット200または第二溶接ユニット300の一方に、四本(三対)の搬送フィンガーを備えるようにしてもよい。
前述していた第二搬送フィンガー用動力変換機構は、Y方向溶接ヘッド330に配設されており、第二Z方向移動用位置制御モータ374に駆動される第二Z方向移動用駆動軸371の所定の第二方向(例えば、第二Z方向移動用位置制御モータ374の側から視て右方向)への回転に伴って、第二搬送フィンガー350をZ軸方向に直線移動させる。
第二交換キャリア390は、第二Y方向位置決めキャリア305のY軸方向の一端に固定され、当該第二Y方向位置決めキャリア305と共にY軸方向に移動可能となっている。この第二交換キャリア390には、交換用のY方向溶接ローラ392を保持する複数のY方向溶接ローラ用保持台394がX軸方向に沿って載置されている。複数のY方向溶接ローラ用保持台394には、それぞれ、一対の交換用のY方向溶接ローラ392がX軸方向に沿って載置されている。
バッファステーション400は、X方向溶接ユニット200自身または当該X方向溶接ユニット200に位置するワーク10と、Y方向溶接ユニット300自身または当該Y方向溶接ユニット300に位置するワーク10と、の干渉を回避するために配設されている。このバッファステーション400は、X方向溶接ユニット200で溶接された後で、かつ、Y方向溶接ユニット300で溶接される前の複数のワーク10をワークトレイ20と共に冷却する機能を有する。具体的に、バッファステーション400は、第一搬送フィンガー250および第二搬送フィンガー350が移動可能な範囲の下方にX軸方向に沿って配設された搬送面410と、搬送面410の側方にX軸方向に沿って配設された一対のサイドガイド420、430と、一対の内部冷却用配管440、450と、内部冷却用熱交換器460と、内部冷却用ポンプ470と、を備えている。
搬送面410は、第一搬送フィンガー250によって第一Y方向位置決めキャリア205上を搬送されるワークトレイ20を受け入れる。受け入れたワークトレイ20は、後で詳述するサイドガイド420内の水によって冷却され、その後、第二搬送フィンガー350によって第二Y方向位置決めキャリア305に送り出される。一対のサイドガイド420、430は、搬送面410上のワークトレイ20をX軸方向にガイドする。一方のサイドガイド420は、冷媒用のタンクを構成し、一対の内部冷却用配管440、450が接続されている。一対の内部冷却用配管440、450はそれぞれ、サイドガイド420と、チャンバ本体110外に配設された内部冷却用ポンプ470と、を接続する。一方の内部冷却用配管440は、内部冷却用ポンプ470からの冷媒をサイドガイド420に送り出す。他方の内部冷却用配管450は、サイドガイド420を循環した冷媒を、内部冷却用熱交換器460を経由して内部冷却用ポンプ470に回収する。内部冷却用熱交換器460および内部冷却用ポンプ470は、チャンバ本体110外に配設されている。内部冷却用熱交換器460は、冷却に使用されて熱を帯びた冷媒を冷却する。内部冷却用ポンプ470は、冷媒を循環させる。冷媒には水等を使用する。
ここで、外部冷却ユニット500の構造について詳細に説明する。図7は外部冷却ユニット500の外観斜視図である。
この図に示される外部冷却ユニット500は、チャンバ本体110の外表面に配設されている。この外部冷却ユニット500は、ワーク溶接により生じて輻射された熱を吸収し、ひいては、ワーク10等を冷却する。具体的に、外部冷却ユニット500は、冷媒用のタンクとなるジャケット510と、一対の外部冷却用配管520、530と、外部冷却用熱交換器540と、外部冷却用ポンプ550と、を備えている。
ジャケット510は、コの字形に形成され、数ミリ程度の厚さを有する。このジャケット510は、両端に一対の外部冷却用配管520、530が接続されている。一対の外部冷却用配管520、530はそれぞれ、ジャケット510と、外部冷却用ポンプ550と、を接続する。一方の外部冷却用配管520は、外部冷却用ポンプ550からの冷媒をジャケット510に送り出す。他方の外部冷却用配管530は、ジャケット510を循環した冷媒を、外部冷却用熱交換器540を経由して外部冷却用ポンプ550に回収する。外部冷却用熱交換器540は、冷却に使用されて熱を帯びた冷媒を冷却する。外部冷却用ポンプ550は、冷媒を循環させる。冷媒には水等を使用する。
仕込室600は、真空チャンバ100を真空雰囲気に保ちながら大気中から当該真空チャンバ100に複数のワーク10を送り込む機能を有する。具体的に、仕込室600は、略六面体の箱形容器である仕込室本体610と、仕込室本体用真空ポンプ620と、仕込室本体用大気開放弁630と、を備えている。仕込室本体610には、上流側の側壁に外部に連通する仕込室本体用外部開口612が形成されて、当該仕込室本体用外部開口612を開閉する仕込室本体用外部扉613を備えている。また、仕込室本体610には、真空チャンバ100側の側壁に第一開口112を介して真空チャンバ100と連通する仕込室本体用連通口614が形成されて、当該仕込室本体用連通口614を開閉する上流側仕切扉615を備えている。仕込室本体用外部開口612および仕込室本体用連通口614が閉じられた状態の仕込室600は、仕込室本体用真空ポンプ620の動作によって、仕込室本体610内の空気圧を大気圧から真空雰囲気までの任意の圧力に制御する。なお、仕込室600は、仕込室本体用真空ポンプ620として、真空ポンプ120を兼用するように構成することも可能であり、仕込室本体用真空ポンプ620を省略することも可能である。
取出室700は、真空チャンバ100を真空雰囲気に保ちながら当該真空チャンバ100から大気中に複数のワーク10を送り出す機能を有する。具体的に、取出室700は、略六面体の箱形容器である取出室本体710と、取出室本体用真空ポンプ720と、取出室本体用大気開放弁730と、を備えている。取出室本体710には、下流側の側壁に外部に連通する取出室本体用外部開口712が形成されて、当該取出室本体用外部開口712を開閉する取出室本体用外部扉713を備えている。また、取出室本体710には、真空チャンバ100側の側壁に第二開口114を介して真空チャンバ100と連通する取出室本体用連通口714が形成されて、当該取出室本体用連通口714を開閉する下流側仕切扉715を備えている。取出室本体用外部開口712および取出室本体用連通口714が閉じられた状態の取出室700は、取出室本体用真空ポンプ720の動作によって、取出室本体710内の空気圧を大気圧から真空雰囲気までの任意の圧力に制御する。なお、取出室700は、取出室本体用真空ポンプ720として、真空ポンプ120を兼用するように構成することも可能であり、取出室本体用真空ポンプ720を省略することも可能である。
上流側搬送ユニット800は、上流側第一搬送機構810と、上流側第二搬送機構820と、上流側第三搬送機構830と、を備え、これらが上流側から順に配設されている。上流側第一搬送機構810は、仕込室本体610の外側底面における仕込室本体用外部扉613の近傍に配設され、ワークトレイ20を仕込室本体610の外側から内側に向けて搬送する。具体的に、上流側第一搬送機構810は、X軸方向に連続して配設された複数の上流側第一搬送ローラ812を備えている。これら複数の上流側第一搬送ローラ812は、それぞれ、Y軸回りに回転可能に配設され、ワークトレイ20をX軸方向に搬送する。上流側第二搬送機構820は、仕込室本体610の内側底面に配設され、ワークトレイ20を仕込室本体610からチャンバ本体110に向けて搬送する。具体的に、上流側第二搬送機構820は、X軸方向に連続して配設された複数の上流側第二搬送ローラ822を備えている。これら複数の上流側第二搬送ローラ822は、それぞれ、Y軸回りに回転可能に配設され、ワークトレイ20をX軸方向に搬送する。上流側第三搬送機構830は、チャンバ本体110の内側底面における第一開口112の近傍に配設され、ワークトレイ20をチャンバ本体110内の上流から中流に向けて搬送する。具体的に、上流側第三搬送機構830は、X軸方向に連続して配設された複数の上流側第三搬送ローラ832を備えている。これら複数の上流側第三搬送ローラ832は、それぞれ、Y軸回りに回転可能に配設され、ワークトレイ20をX軸方向に搬送する。
下流側搬送ユニット900は、下流側第一搬送機構910と、下流側第二搬送機構920と、下流側第三搬送機構930と、を備え、これらが下流側へ順に配設されている。下流側第一搬送機構910は、取出室本体710の内側底面における第二開口114の近傍に配設され、ワークトレイ20をチャンバ本体110内の中流から下流に向けて搬送する。具体的に、下流側第一搬送機構910は、X軸方向に連続して配設された複数の下流側第一搬送ローラ912を備えている。これら複数の下流側第一搬送ローラ912は、それぞれ、Y軸回りに回転可能に配設され、ワークトレイ20をX軸方向に搬送する。下流側第二搬送機構920は、取出室本体710の内側底面に配設され、ワークトレイ20を取出室本体710の内側から外側に向けて搬送する。具体的に、下流側第二搬送機構920は、X軸方向に連続して配設された複数の下流側第二搬送ローラ922を備えている。これら複数の下流側第二搬送ローラ922は、それぞれ、Y軸回りに回転可能に配設され、ワークトレイ20をX軸方向に搬送する。下流側第三搬送機構930は、取出室本体710の外側底面における取出室本体用外部扉713の近傍に配設され、ワークトレイ20を取出室本体710の外側から遠退くように搬送する。具体的に、下流側第三搬送機構930は、X軸方向に連続して配設された複数の下流側第三搬送ローラ932を備えている。これら複数の下流側第三搬送ローラ932は、それぞれ、Y軸回りに回転可能に配設され、ワークトレイ20をX軸方向に搬送する。
この溶接装置1では、X方向溶接ユニット200において、第一Y方向位置決めキャリア205をY軸方向に移動させると共に、X方向溶接ヘッド230をX軸方向に移動させることで、ワークトレイ20上にマトリクス状に配列された任意のワーク10の上に一対のX方向溶接ローラ240を配置できる。また、Y方向溶接ユニット300において、第二Y方向位置決めキャリア305をY軸方向に移動させると共に、Y方向溶接ヘッド330をX軸方向に移動させることで、ワークトレイ20上にマトリクス状に配列された任意のワーク10の上に一対のY方向溶接ローラ340を配置できる。
次に、溶接装置1によるシーム溶接の手順について、図8を用いて説明する。図8は溶接装置1によるシーム溶接の手順を示すフローチャートである。
まず、ワークトレイ20に配列された複数のワーク10を真空チャンバ100内に送り込む(ステップS100)。チャンバ本体110内に送り込まれた複数のワーク10を、X方向溶接ユニット200において、X軸方向の行毎にX軸方向に沿って溶接する(ステップS200)。そして、X方向溶接ローラ240の交換時期か否かを判断し(ステップS210)、交換時期の場合(ステップS210でYESの場合)には交換する(ステップS220)。その後、X方向溶接ユニット200からY方向溶接ユニット300への搬送中に、バッファステーション400において複数のワーク10を冷却する(ステップS300)。Y方向溶接ユニット300では、複数のワーク10をY軸方向の列毎にY軸方向に沿って溶接する(ステップS400)。そして、Y方向溶接ローラ340の交換時期か否かを判断し(ステップS410)、交換時期の場合(ステップS310でYESの場合)には交換する(ステップS420)。その後、溶接後の複数のワーク10を真空チャンバ100内から大気中に送り出す(ステップS500)。
次に、ステップS100の詳細な手順、すなわち、ワークトレイ20に配列された複数のワーク10を真空チャンバ100内に送り込む手順について説明する。この手順においては、真空チャンバ100、仕込室600および上流側搬送ユニット800が動作する。
予め、上流側仕切扉615および下流側仕切扉715を閉じて、チャンバ本体110内を密閉した後に、真空ポンプ120を動作させてチャンバ本体110内を減圧し、真空雰囲気に保っておく。まず、仕込室本体用外部扉613を開くと共に、複数の搬送ローラ812、822を回転駆動する。これにより、搬送ローラ812、822上に載置された複数のワーク10がワークトレイ20と共にX軸方向に移動して、仕込室本体用外部開口612を介して仕込室本体610内に搬送される。そして、仕込室本体用外部扉613を閉じて、仕込室本体610内を密閉した後に、仕込室本体用真空ポンプ620を動作させて仕込室本体610内を減圧し、真空雰囲気に保つ。次に、上流側仕切扉615を開くと共に、複数の搬送ローラ822、832を回転駆動する。これにより、搬送ローラ822、832上に載置された複数のワーク10がワークトレイ20と共にX軸方向に移動して、仕込室本体用連通口614および第一開口112を介してチャンバ本体110内に搬送される。その後、上流側仕切扉615を閉じて、チャンバ本体110内を密閉する。
次に、ステップS200、ステップS210およびステップS220の詳細な手順、すなわち、X方向溶接ユニット200において、複数のワーク10をX軸方向の行毎にX軸方向に沿って溶接する手順等について、図9を用いて説明する。図9はX方向溶接ユニット200において複数のワーク10をX軸方向の行毎にX軸方向に沿って溶接する手順を説明する図である。
まず、第一搬送フィンガー250をZ軸方向上方に移動させて第一離間位置に位置させる。そして、X方向溶接ヘッド230をX軸方向上流側に移動させて第一搬送フィンガー250を上流側第三搬送ローラ832上方に移動させた後に、当該第一搬送フィンガー250をZ軸方向下方に移動させて第一近接位置に位置させる。次に、X方向溶接ヘッド230をX軸方向下流側に移動させて第一搬送フィンガー250をX軸方向下流側に移動させ、複数のワーク10をワークトレイ20と共に、第一Y方向位置決めキャリア205上に搬送する。さらに、第一搬送フィンガー250をZ軸方向上方に移動させて第一離間位置に位置させると共に、X方向溶接ローラ240をZ軸方向に移動させて溶接可能な所望の高さに移動させる。これにより、X方向溶接ユニット200における溶接の準備が完了する。
準備が完了すると、まず、X方向溶接ヘッド230をX軸方向に移動させてX方向溶接ローラ240をX軸方向に移動させ、複数のワーク10における一つ目の行についてX軸方向に沿って溶接する(図9(a)参照)。そして、第一Y方向位置決めキャリア205をY軸方向に一行分移動させた後に(図9(b)参照)、X方向溶接ヘッド230をX軸方向の折り返す方向に移動させてX方向溶接ローラ240をX軸方向の折り返す方向に移動させ、複数のワーク10における二つ目の行についてX軸方向に沿って溶接する(図9(c)参照)。以後同様に、第一Y方向位置決めキャリア205をY軸方向に一行分移動させた後に(図9(d)参照)、X方向溶接ヘッド230をX軸方向の折り返す方向に移動させてX方向溶接ローラ240をX軸方向の折り返す方向に移動させ、複数のワーク10をX軸方向の行毎にX軸方向に沿って溶接する(図9(e)参照)。このように、X方向溶接ユニット200は、X方向溶接ヘッド230を移動してX方向溶接ローラ240を移動しながら溶接すると共に、第一Y方向位置決めキャリア205を移動して、溶接する複数のワーク10の行を切り替える。また、X方向溶接ユニット200は、第一搬送フィンガー250が第一離間位置に位置する場合に、X方向溶接ヘッド230を移動してX方向溶接ローラ240を移動しながら溶接する。なお、本実施形態におけるX方向溶接ユニット200では、複数のワーク10に対してX方向溶接ヘッド230をつづら折り状に相対移動させることになるが、三の字状に相対移動させるようにしてもよい。
X方向溶接ユニット200における溶接の終了後、X軸方向の溶接回数を1加算する。加算後の溶接回数が、所定の回数(例えば、25,000回)に達しているか否かでX方向溶接ローラ240の交換時期であるかを判断する。所定の回数に達している場合、X方向溶接ローラ240を交換用のX方向溶接ローラ292に交換する。
第一Y方向位置決めキャリア205上方に位置する第一搬送フィンガー250をZ軸方向下方に移動させて第一近接位置に位置させる。そして、X方向溶接ヘッド230をX軸方向下流側に移動させて第一搬送フィンガー250をX軸方向下流側に移動させ、複数のワーク10をワークトレイ20と共に、搬送面410上に搬送する。これにより、複数のワーク10がバッファステーション400に引き継がれる。
次に、ステップS400、ステップS410およびステップS420の詳細な手順、すなわち、Y方向溶接ユニット300において、複数のワーク10をY軸方向の列毎にY軸方向に沿って溶接する手順等について、図10を用いて説明する。図10はY方向溶接ユニット300において複数のワーク10をY軸方向の列毎にY軸方向に沿って溶接する手順を説明する図である。
まず、第二搬送フィンガー350をZ軸方向上方に移動させて第二離間位置に位置させる。そして、Y方向溶接ヘッド330をX軸方向上流側に移動させて第二搬送フィンガー350を搬送面410上方に移動させた後に、当該第二搬送フィンガー350をZ軸方向下方に移動させて第二近接位置に位置させる。次に、Y方向溶接ヘッド330をX軸方向下流側に移動させて第二搬送フィンガー350をX軸方向下流側に移動させ、複数のワーク10をワークトレイ20と共に、第二Y方向位置決めキャリア305上に搬送する。さらに、第二搬送フィンガー350をZ軸方向上方に移動させて第二離間位置に位置させると共に、Y方向溶接ローラ340をZ軸方向に移動させて溶接可能な所望の高さに移動させる。これにより、Y方向溶接ユニット200における溶接の準備が完了する。
準備が完了すると、まず、第二Y方向位置決めキャリア305をY軸方向に移動させて複数のワーク10をY軸方向に移動させ、複数のワーク10における一つ目の列についてY軸方向に沿って溶接する(図10(a)参照)。そして、Y方向溶接ヘッド330をX軸方向に一列分移動させた後に(図10(b)参照)、第二Y方向位置決めキャリア305をY軸方向の折り返す方向に移動させて複数のワーク10をY軸方向の折り返す方向に移動させ、複数のワーク10における二つ目の列についてY軸方向に沿って溶接する(図10(c)参照)。以後同様に、Y方向溶接ヘッド330をX軸方向に一列分移動させた後に(図10(d)参照)、第二Y方向位置決めキャリア305をY軸方向の折り返す方向に移動させて複数のワーク10をY軸方向の折り返す方向に移動させ、複数のワーク10をY軸方向の列毎にY軸方向に沿って溶接する(図10(e)参照)。このように、Y方向溶接ユニット300は、第二Y方向位置決めキャリア305を移動して複数のワーク10を移動させながら溶接すると共に、Y方向溶接ヘッド330を移動して、溶接する複数のワーク10の列を切り替える。また、Y方向溶接ユニット300は、第二搬送フィンガー350が第二離間位置に位置する場合に、Y方向溶接ヘッド330を移動して、溶接する複数のワーク10の列を切り替える。なお、本実施形態におけるY方向溶接ユニット300では、複数のワーク10に対してY方向溶接ヘッド330をつづら折り状に相対移動させることになるが、川の字状に相対移動させるようにしてもよい。
Y方向溶接ユニット300における溶接の終了後、Y軸方向の溶接回数を1加算する。加算後の溶接回数が、所定の回数(例えば、25,000回)に達しているか否かでY方向溶接ローラ340の交換時期であるかを判断する。所定の回数に達している場合、Y方向溶接ローラ340を交換用のY方向溶接ローラ392に交換する。
第二Y方向位置決めキャリア305上方に位置する第二搬送フィンガー350をZ軸方向下方に移動させて第二近接位置に位置させる。そして、Y方向溶接ヘッド330をX軸方向下流側に移動させて第二搬送フィンガー350をX軸方向下流側に移動させ、複数のワーク10をワークトレイ20と共に、下流側第一搬送ローラ912上に搬送する。これにより、複数のワーク10が下流側搬送ユニット900に引き継がれる。
次に、ステップS500の詳細な手順、すなわち、溶接後の複数のワーク10を真空チャンバ100内から大気中に送り出す手順について説明する。この手順においては、真空チャンバ100、取出室700および下流側搬送ユニット900が動作する。
まず、取出室本体用外部扉713を閉じて、取出室本体710を密閉した後に、取出室本体用真空ポンプ720を動作させて取出室本体710内を減圧し、真空雰囲気に保つ。そして、下流側仕切扉715を開くと共に、複数の搬送ローラ912、914を回転駆動する。これにより、搬送ローラ912、914上に載置された複数のワーク10がワークトレイ20と共にX軸方向に移動して、第二開口114および取出室本体用連通口714を介して取出室本体710内に搬送される。次に、取出室本体用大気開放弁730を動作させて取出室本体710内を昇圧し、大気圧に保った後に、取出室本体用外部扉713を開くと共に、複数の搬送ローラ914、916を回転駆動する。これにより、搬送ローラ914、916上に載置された複数のワーク10がワークトレイ20と共にX軸方向に移動して、取出室本体用外部開口712を介して取出室本体710外に搬送される。その後、下流側仕切扉715を閉じて、取出室本体710を密閉する。
次に、シーム溶接により生じる熱の経路について、X方向溶接ユニット200を例に説明する。
シーム溶接によりワーク10やX方向溶接ローラ240に生じた熱は、X方向溶接ローラハウジング269に移動する。X方向溶接ローラハウジング269に移動した熱は、当該X方向ローラハウジング269から第一Z方向可動部材268に移動する。第一Z方向可動部材268に移動した熱は、当該第一Z方向可動部材268内を伝導して、当該第一Z方向可動部材268の前面に拡散する。第一Z方向可動部材268の前面に拡散した熱は、真空雰囲気中を放射して、真空チャンバ100の外部に放出される。
以上説明したように、本実施形態にかかる溶接設備5は、X軸方向に沿った溶接と、Y軸方向に沿った溶接と、を連続して施すので、加熱と冷却の熱サイクルが不必要に繰り返されることを防止できる。これにより、熱サイクルによる品質の劣化を防止できる。ひいては、電子部品の品質の向上を実現できる。
溶接装置1は、真空チャンバ100内に、複数のワーク10をX軸方向の行毎にX軸方向に沿って溶接するX方向溶接ユニット200と、複数のワーク10をY軸方向の列毎にY軸方向に沿って溶接するY方向溶接ユニット300と、を配設している。そして、X方向溶接ユニット200で複数のワーク10を溶接した後に、Y方向溶接ユニット300で当該複数のワーク10を溶接する。
このため、真空雰囲気に保った真空チャンバ100内でシーム溶接を完結でき、生産能力の向上を実現できる。また、窒素ガスを充填したチャンバ内でシーム溶接を行って窒素ガスを消耗する場合と比較して、ランニングコストを抑えられる。さらに、窒素ガスを充填したチャンバ内で不具合が発生した場合には、その不具合を解消した後に、窒素ガスの充填し直しを十分に行って露点を下げる必要がある。結果、長い時間が掛かり、電子部品の生産能力が低下する等の問題があったが、窒素ガスを必要としていないので、このような問題がない。
また、X方向溶接ユニット200は、複数のワーク10をY軸方向にオフセットする第一Y方向オフセット手段として、第一Y方向位置決めキャリア205を備え、当該第一Y方向位置決めキャリア205によってY方向にオフセットされる複数のワーク10を溶接する。Y方向溶接ユニット300は、複数のワーク10をY軸方向にオフセットする第二Y方向位置決めキャリア305を備え、当該第二Y方向位置決めキャリア305によってY方向にオフセットされる複数のワーク10を溶接する。このため、複数のワーク10は、X軸方向に直列に搬送される過程において、Y軸方向にオフセットされる移動だけで溶接される。すなわち、複数のワーク10の動きに無駄がない。結果、溶接に掛かる時間を短縮でき、生産能力の更なる向上を実現できると共に、省スペース化を実現できる。
そして、X方向溶接ユニット200およびY方向溶接ユニット300の双方に亘って、真空チャンバ100に対する搬入から搬出まで、複数のワーク10をX軸方向に直線的に搬送する搬送経路を備えている。このため、複数のワーク10の動きに無駄がない。結果、溶接に掛かる時間を短縮でき、生産能力の更なる向上を実現できると共に、省スペース化を実現できる。
さらに、X方向溶接ユニット200は、Y軸方向に移動可能な第一Y方向位置決めキャリア205と、この第一Y方向位置決めキャリア205の上方において、X軸方向に移動可能なX方向溶接ヘッド230と、このX方向溶接ヘッド230に対して、Y軸回りに回転可能に配設されたX方向溶接ローラ240と、を配設している。そして、X方向溶接ユニット200は、X方向溶接ヘッド230を移動してX方向溶接ローラ240を移動しながら溶接すると共に、第一Y方向位置決めキャリア205を移動して、溶接する複数のワーク10の行を切り替える。このため、X、Y軸方向のマトリクス状に配列された複数のワーク10を、X軸方向の行毎にX軸方向に沿って効率良くまとめて短時間に溶接できる。
次いで、Y方向溶接ユニット300は、Y軸方向に移動可能な第二Y方向位置決めキャリア305と、この第二Y方向位置決めキャリア305の上方において、X軸方向に移動可能なY方向溶接ヘッド330と、このY方向溶接ヘッド330に対して、X軸回りに回転可能に配設されたY方向溶接ローラ340と、を配設している。そして、Y方向溶接ユニット300は、第二Y方向位置決めキャリア305を移動して複数のワーク10を移動させながら溶接すると共に、Y方向溶接ヘッド330を移動して、溶接する複数のワーク10の列を切り替える。このため、X、Y軸方向のマトリクス状に配列された複数のワーク10を、Y軸方向の列毎にY軸方向に沿って効率良くまとめて短時間に溶接できる。
また、X方向溶接ヘッド230は、X方向溶接ヘッド用ベース231と、このX方向溶接ヘッド用ベース231に対して、Z軸方向に移動可能な第一Z方向可動部材268と、この第一Z方向可動部材268に配設されてX方向溶接ローラ240をY軸回りに回転可能に保持すると共に、当該X方向溶接ローラ240に電流を供給するX方向溶接ローラ保持部236と、を備えている。
そして、第一Z方向可動部材268は、絶縁性を有している。このため、X方向溶接ヘッド230をX方向溶接ローラ240から絶縁するために、X方向溶接ローラハウジング269と第一Z方向可動部材268との間に絶縁体を介在させる必要がない。このような絶縁体を介在させなければ、シーム溶接によってX方向溶接ローラ240から生じる熱のX方向溶接ローラハウジング269から第一Z方向可動部材268への移動を妨げることはない。また、第一Z方向可動部材268は、熱伝導性を有している。このため、X方向溶接ローラハウジング269から第一Z方向可動部材268に移動した熱を当該第一Z方向可動部材268の前面に拡散させることができる。さらに、第一Z方向可動部材268は、熱放射性を有している。このため、第一Z方向可動部材268の前面に拡散した熱を放射させることができ、ひいては、X方向溶接ローラ240およびX方向溶接ローラハウジング269に熱が蓄積することを防止できる。すなわち、放熱性能を向上させられる。結果、X方向溶接ローラ240およびX方向溶接ローラハウジング269の間に介在する導電ペーストが溶けて外部に流出することを防止でき、ひいては、X方向溶接ローラ240の通電に不具合を生じさせることを防止できる。結果、溶接装置1を長時間連続使用できる。
同様に、Y方向溶接ヘッド330は、Y方向溶接ヘッド用ベース331と、このY方向溶接ヘッド用ベース331に対して、Z軸方向に移動可能な第二Z方向可動部材368と、この第二Z方向可動部材368に配設されてY方向溶接ローラ340をX軸回りに回転可能に保持すると共に、当該Y方向溶接ローラ340に電流を供給するY方向溶接ローラ保持部336と、を備えている。そして、第二Z方向可動部材368は、熱伝導性と、熱放射性と、絶縁性と、を有している。このため、第一Z方向可動部材268と同様の効果が奏される。
また、X方向溶接ヘッド230は、X方向溶接ローラ240を備えているだけでなく、複数のワーク10をX軸方向に搬送する第一搬送フィンガー250を備えている。また、Y方向溶接ヘッド330は、Y方向溶接ローラ340を備えているだけでなく、複数のワーク10をX軸方向に搬送する第二搬送フィンガー350を備えている。このため、X方向溶接ローラ240およびY方向溶接ローラ340の動力を、ワーク10を搬送する動力に兼用でき、ひいては、ワーク10を搬送するための構造を簡略化できる。また、ワーク10をX軸方向のみに直線搬送するので、溶接装置1を含むライン全体のレイアウトを直線的に配置することが可能となり、効率的なレイアウトとすることができる。
さらに、X方向溶接ユニット200は、第一Y方向位置決めキャリア205に載置されたワークトレイ20を支持する第一支持機構220を備えている。また、Y方向溶接ユニット300は、第二Y方向位置決めキャリア305に載置されたワークトレイ20を支持する第二支持機構320を備えている。このため、溶接中にワークトレイ20やワーク10がズレることを防止でき、ひいては、精度良くシーム溶接を行うことができる。
次いで、第一支持機構220は、Y軸方向に移動可能に配設され、第一Y方向位置決めキャリア205と共にY軸方向に移動したワークトレイ20が突き当たる第一突当たり部材221と、第一Y方向位置決めキャリア205と共にY軸方向に移動してワークトレイ20を押す第一押し部材223と、第一突当たり部材221がY軸方向に移動した場合に、復元する方向に当該第一突当たり部材221を付勢する第一付勢部材224と、を備えている。このため、ワークトレイ20を載置している第一Y方向位置決めキャリア205のY軸方向の移動によって、自動的にワークトレイ20を挟み込んで支持できる。すなわち、簡単な構成でありながら、ワークトレイ20を確実に支持することが可能となる。
そして、X方向溶接ユニット200は、交換用のX方向溶接ローラ292が載置された第一交換キャリア290を備えている。この第一交換キャリア290は、第一Y方向位置決めキャリア205と共にY軸方向に移動可能となっている。また、Y方向溶接ユニット300は、交換用のY方向溶接ローラ392が載置された第二交換キャリア390を備えている。この第二交換キャリア390は、第二Y方向位置決めキャリア305と共にY軸方向に移動可能となっている。このため、第一Y方向位置決めキャリア205および第二Y方向位置決めキャリア305の動力を、交換用のX方向溶接ローラ292および交換用のY方向溶接ローラ392を移動させる動力に兼用でき、ひいては、交換用のX方向溶接ローラ292および交換用のY方向溶接ローラ392を移動させるための構造を簡略化できる。
また、真空チャンバ100内において、X方向溶接ユニット200で溶接された後、かつ、Y方向溶接ユニット300で溶接される前の複数のワーク10を冷却するバッファステーション400を備えている。このため、バッファステーション400において、溶接途中の複数のワーク10を一旦冷却でき、熱によって不良品が発生して歩留まりが低下することを防止できる。また、熱対策を講じない場合には、第一Y方向位置決めキャリア205や第二Y方向位置決めキャリア305の反りや延びが発生したり、チャンバ本体110などの各部材が変形したりするが、バッファステーション400における熱対策により、各部材の変形が防止できる。
さらに、溶接装置1は、チャンバ本体110の外表面に、真空チャンバ100を外側から冷却する外部冷却ユニット500を備えている。このため、熱によって不良品が発生して歩留まりが低下することを更に防止できる。また、第一Y方向位置決めキャリア205や第二Y方向位置決めキャリア305の反りや延びが発生したり、チャンバ本体110などの各部材が変形したりすることが更に防止できる。
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨および技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。また、上記実施形態の構成要件を、可能な範囲で他の実施形態に適用することも可能である。
すなわち、上記実施形態では、X方向溶接ユニット200でX軸方向に沿って溶接された後で、かつ、Y方向溶接ユニット300でY軸方向に沿って溶接される前の複数のワーク10を、バッファステーション400で冷却するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、Y軸方向に沿って溶接された後で、かつ、X軸方向に沿って溶接される前の複数のワーク10を、バッファステーション400で冷却するようにしてもよい。
また、上記実施形態において、第一、第二Z方向可動部材268,368は、その全体が、熱伝導性と、熱放射性と、絶縁性と、を有する材料からなるようにするだけでなく、その一部が、熱伝導性と、熱放射性と、絶縁性と、を有する材料からなるようにしてもよい。この場合、少なくともその一部は、ローラ保持部の接触箇所に介在して、絶縁を確保しながらローラ保持部の熱を回収することが重要である。また、少なくともその一部は、真空チャンバの内壁のいずれかに対向するような、ある程度の表面(ひょうめん)を確保することも好ましい。この表面を放熱面として、ローラ保持部から回収した熱を真空チャンバの内壁に対して放射できるからである。
次に、図11〜図13を用いて、別の実施の形態に係る溶接装置1001について説明する。ただし、溶接装置1001の特徴部分のみを説明し、溶接装置1と同様の構成、作用及び効果についての説明は省略する。
図11は本発明の実施の形態に係る溶接装置1001の平面図である。図12は溶接装置1の正面図である。図13Aは溶接ヘッド1230の拡大正面図である。図13Bは溶接ヘッド1230の拡大側面図である。
溶接装置1は、ワークトレイ20上に配列した複数のワーク10を全体としてX軸方向に搬送しながらまとめて溶接する。具体的に、溶接装置1001は、内部を真空雰囲気に保つ真空チャンバ1100と、この真空チャンバ1100内において複数のワーク10に対して溶接する溶接ユニット1200と、真空チャンバ1100の上流側に並設された仕込室(ロードロック)1300と、真空チャンバ1100の下流側に並設された取出室(アンロードロック)1400と、真空チャンバ1100にワーク10を送り込む上流側搬送ユニット1500と、真空チャンバ1100からワーク10を送り出す下流側搬送ユニット1600と、制御ユニット(図示省略)と、等を備えている。
真空チャンバ1100は、略六面体の箱形容器であるチャンバ本体1110と、真空ポンプ1120と、大気開放弁1130と、を備えている。チャンバ本体1110には、上流側の側壁に仕込室1300と連通する第一開口1112が形成されていると共に、下流側の側壁に取出室1400と連通する第二開口1114が形成されている。第一開口1112は、後述する仕込室1300の上流側仕切扉1315によって開閉される。第二開口1114は、後述する取出室1400の下流側仕切扉1415によって開閉される。第一開口1112および第二開口1114が閉じられた状態の真空チャンバ1100は、真空ポンプの動作によって、チャンバ本体1110内の空気圧を大気圧から真空雰囲気までの任意の圧力に制御する。大気開放弁1130は、メンテナンス時等に利用される。
溶接ユニット1200は、複数のワーク10がワークトレイ20と共に載置されるキャリア1210と、このキャリア1210をX軸方向に移動させるキャリア移動機構1220と、キャリア1210を水平面内に略90度回転させるキャリア回転機構1225と、一対の溶接ローラ1240を有する溶接ヘッド1230と、この溶接ヘッド1230をY軸方向に移動させる溶接ヘッド移動機構1250と、溶接ヘッド1230を構成する溶接ヘッド用ベース1231に対してZ軸方向に移動可能に配設されて溶接ローラ1240を回転可能に支持する一対のローラハウジング1270と、を備えている。
キャリア1210は、チャンバ本体1110内の下方に、X軸方向に直線移動可能に、かつ、水平面内に略90度回転可能に配設されている。キャリア移動機構1220およびキャリア回転機構1225は、キャリア1210の動力源として、チャンバ本体1110内の底面に配設されている。具体的に、キャリア移動機構1220は、X軸方向に沿って互いに平行に配設された一対のキャリア用レール1222と、これら一対のキャリア用レール1222に沿ってX軸方向に直線移動するリニアモータ式の二対のキャリア用スライダ1224と、を備えている。二対のキャリア用スライダ1224は、キャリア回転機構1225を介してキャリア1210を搭載し、当該キャリア1210について、一対のキャリア用レール1222に沿ったX軸方向の直線移動を可能にする。キャリア回転機構1225は、二対のキャリア用スライダ1224に固定された固定ベース1226と、このベース1226に回転可能に取り付けられた回転ベース1228と、回転ベース1228を回転させるモータ(図示省略)と、を備えている。回転ベース1228は、キャリア1210を搭載し、当該キャリア1210について、水平面内の回転を可能にする。
溶接ヘッド1230は、基礎となる溶接ヘッド用ベース1231と、この溶接ヘッド用ベース1231の前面に対してY軸方向に沿って互いに平行に配設された一対のY方向レール1232と、これら一対のY方向レール1232に沿ってY軸方向に直線移動するリニアモータ式の二対のY方向スライダ1233と、これら二対のY方向スライダ1233に対してZ軸方向に沿って互いに平行に配設された一対のZ方向レール1234と、これら一対のZ方向レール1234に沿ってZ軸方向に直線移動するリニアモータ式の二対のZ方向スライダ1235と、これら二対のZ方向スライダ1235に取り付けられてZ軸方向に移動可能な一対の鉛直方向可動部材1260と、これら一対の鉛直方向可動部材1260の下端に配設された一対のローラ保持部1236と、これら一対のローラ保持部1236に着脱可能に配設された一対のローラハウジング1270と、これら一対のローラハウジング1270に対して回転シャフト1237が回転可能に支持される一対の溶接ローラ1240と、を備えている。
溶接ヘッド用ベース1231は、キャリア1210の上方に、水平方向となるY軸方向に直線移動可能に配設されている。溶接ヘッド移動機構1250は、溶接ヘッド1230の動力源として、チャンバ本体1110内の天井に配設されている。具体的に、溶接ヘッド移動機構1250は、Y軸方向に沿って配設された溶接ヘッド用レール1252と、この溶接ヘッド用レール1252に沿ってY軸方向に直線移動するリニアモータ式の溶接ヘッド用スライダ1254と、を備えている。溶接ヘッド用スライダ1254は、溶接ヘッド用ベース1231を搭載し、溶接ヘッド1230について、溶接ヘッド用レール1252に沿ったY軸方向の直線移動を可能にする。
鉛直方向可動部材1260は、溶接ヘッド用ベース1231の前面に対し、Z軸方向に移動可能に配設されている。この鉛直方向可動部材1260は、熱伝導性と、熱放射性と、絶縁性と、を有する材料からなり、シーム溶接により生じる熱の放熱性能を高めている。また、この鉛直方向可動部材1260は、真空チャンバ1100の内壁と対向する所定の面積となる放熱面1260Aを備えている。この放熱面1260Aによって、途中に気体(媒介)が存在しない真空環境下であっても、真空チャンバ1100の内壁に熱を伝達する。即ち、溶接ローラ1240で発生する溶接熱は、ローラ保持部1236を経て鉛直方向可動部材1260に伝達すると同時に当該鉛直方向可動部材1260の表面(ひょうめん)から真空チャンバ1100の内壁まで放熱される。また、ローラ保持部1236と溶接ヘッド用ベース1231とは、鉛直方向可動部材1260によって絶縁される。なお、鉛直方向可動部材1260の前面を放熱面1260Aとする場合は、その面積を可能な限り大きく設定し、放熱性能を高めることが好ましい。また、この放熱面の面積は、3cm2以上、好ましくは5cm2以上を確保することが望ましい。
鉛直方向可動部材1260の材料は、熱伝導率が170W/(m・K)以上であることが好ましい。そして、鉛直方向可動部材1260の材料は、熱の放射率が0.8以上であること、すなわち、1に近いことが好ましい。また、鉛直方向可動部材1260の材料は、絶縁抵抗が103Ω・cm以上であることが好ましい。さらに、鉛直方向可動部材1260の材料は、防錆性、軽量性を有することが好ましい。鉛直方向可動部材1260の材料には、セラミックスが適しており、その中では、炭化ケイ素または窒化アルミニウムが更に適している。採用するセラミックスの熱の放射率は0.8以上1.0以下であることが好ましく、0.93以上0.95以下であることがより好ましい。すなわち、セラミックスの熱の放射率は、アルミニウムの熱の放射率の0.02以上0.1以下や、鉄の熱の放射率の0.5以上0.9以下と比較すると高い。炭化ケイ素は、熱伝導率が170W/(m・K)であり、熱の放射率が0.8以上1.0以下であり、絶縁抵抗が103Ω・cm以上5×106Ω・cm以下である。窒化アルミニウムは、熱伝導率が170W/(m・K)以上230W/(m・K)以下であり、熱放射率が0.93であり、絶縁抵抗が1013Ω・cm以上である。なお、炭化ケイ素および窒化アルミニウムは、上記の好ましいとした条件を全て満たしている。
ローラ保持部1236は、鉛直方向可動部材1260の下端に配設されて溶接ローラ1240を回転可能に保持すると共に、当該溶接ローラ1240に電流を供給して、溶接ローラ1240による溶接を可能にする。
ローラハウジング1270は、溶接ローラ1240との間に介在させる通電用の導電ペーストを内包している。このローラハウジング1270は、溶接ローラ1240と一体に構成されており、当該溶接ローラ1240と一体に交換可能となっている。
一対の溶接ローラ1240は、鉛直方向可動部材1260によってZ軸方向に移動可能で、かつ、溶接ヘッド用ベース1231と共にY軸方向に移動可能となっている。また、一対の溶接ローラ1240は、Y軸回りに回転可能となっている。さらに、一対の溶接ローラ1240は、Y方向スライダ1233によってY方向に移動して互いの間隔が調整可能となっている。これら一対の溶接ローラ1240は、溶接電極を構成し、ワーク10に対してシーム溶接をする。すなわち、一対の溶接ローラ1240は、ワーク10に対してパルス状の電圧を印加しながら転動することによって、当該ワーク10に対するシーム溶接をする。このため、一対の溶接ローラ1240は、溶接ヘッド用ベース1231と絶縁をする必要があるが、その絶縁は、絶縁性を有する鉛直方向可動部材1260によって実現されている。
この溶接装置1では、溶接ユニット1200において、キャリア1210をX軸方向に移動させると共に、溶接ヘッド1230をY軸方向に移動させることで、ワークトレイ20上にマトリクス状に配列された任意のワーク10の上に一対の溶接ローラ1240を配置できる。
仕込室1300は、真空チャンバ1100を真空雰囲気に保ちながら大気中から当該真空チャンバ1100に複数のワーク10を送り込む機能を有する。具体的に、仕込室1300は、略六面体の箱形容器である仕込室本体1310と、仕込室本体用真空ポンプ1320と、仕込室本体用大気開放弁1330と、を備えている。仕込室本体1310には、上流側の側壁に外部に連通する仕込室本体用外部開口1312が形成されて、当該仕込室本体用外部開口1312を開閉する仕込室本体用外部扉1313を備えている。また、仕込室本体1310には、真空チャンバ1100側の側壁に第一開口1112を介して真空チャンバ1100と連通する仕込室本体用連通口1314が形成されて、当該仕込室本体用連通口1314を開閉する上流側仕切扉1315を備えている。仕込室本体用外部開口1312および仕込室本体用連通口1314が閉じられた状態の仕込室1300は、仕込室本体用真空ポンプ1320の動作によって、仕込室本体1310内の空気圧を大気圧から真空雰囲気までの任意の圧力に制御する。なお、仕込室1300は、仕込室本体用真空ポンプ1320として、真空ポンプ1120を兼用するように構成することも可能であり、仕込室本体用真空ポンプ1320を省略することも可能である。
取出室1400は、真空チャンバ1100を真空雰囲気に保ちながら当該真空チャンバ1100から大気中に複数のワーク10を送り出す機能を有する。具体的に、取出室1400は、略六面体の箱形容器である取出室本体1410と、取出室本体用真空ポンプ1420と、取出室本体用大気開放弁1430と、を備えている。取出室本体1410には、下流側の側壁に外部に連通する取出室本体用外部開口1412が形成されて、当該取出室本体用外部開口1412を開閉する取出室本体用外部扉1413を備えている。また、取出室本体1410には、真空チャンバ1100側の側壁に第二開口1114を介して真空チャンバ1100と連通する取出室本体用連通口1414が形成されて、当該取出室本体用連通口1414を開閉する下流側仕切扉1415を備えている。取出室本体用外部開口1412および取出室本体用連通口1414が閉じられた状態の取出室1400は、取出室本体用真空ポンプ1420の動作によって、取出室本体1410内の空気圧を大気圧から真空雰囲気までの任意の圧力に制御する。なお、取出室1400は、取出室本体用真空ポンプ1420として、真空ポンプ1120を兼用するように構成することも可能であり、取出室本体用真空ポンプ1420を省略することも可能である。
上流側搬送ユニット1500は、上流側第一搬送機構1510と、上流側第二搬送機構1520と、を備え、これらが上流側から順に配設されている。上流側第一搬送機構1510は、仕込室本体1310の外側底面における仕込室本体用外部扉1313の近傍に配設され、ワークトレイ20を仕込室本体1310の外側から内側に向けて搬送する。具体的に、上流側第一搬送機構1510は、X軸方向に連続して配列された複数の上流側第一搬送ローラ1512を備えている。これら複数の上流側第一搬送ローラ1512は、それぞれ、Y軸回りに回転可能に配設され、ワークトレイ20をX軸方向に搬送する。上流側第二搬送機構1520は、仕込室本体1310の内側底面に配設され、ワークトレイ20を仕込室本体1310からチャンバ本体1110に向けて搬送する。具体的に、上流側第二搬送機構1520は、X軸方向に連続して配設された複数の上流側第二搬送ローラ1522を備えている。これら複数の上流側第二搬送ローラ1522は、それぞれ、Y軸回りに回転可能に配設され、ワークトレイ20をX軸方向に搬送する。
下流側搬送ユニット1600は、下流側第一搬送機構1610と、下流側第二搬送機構1620と、を備え、これらが下流側へ順に配設されている。下流側第一搬送機構1610は、取出室本体1410の内側底面に配設され、ワークトレイ20を取出室本体1410の内側から外側に向けて搬送する。具体的に、下流側第一搬送機構1610は、X軸方向に連続して配設された複数の下流側第一搬送ローラ1612を備えている。これら複数の下流側第一搬送ローラ1612は、それぞれ、Y軸回りに回転可能に配設され、ワークトレイ20をX軸方向に搬送する。下流側第二搬送機構1620は、取出室本体1410の外側底面における取出室本体用外部扉1413の近傍に配設され、ワークトレイ20を取出室本体1410の外側から遠退くように搬送する。具体的に、下流側第二搬送機構1620は、X軸方向に連続して配設された複数の下流側第二搬送ローラ1622を備えている。これら複数の下流側第二搬送ローラ1622は、それぞれ、Y軸回りに回転可能に配設され、ワークトレイ20をX軸方向に搬送する。
この溶接装置1では、溶接ユニット1200において、キャリア1210をX軸方向に移動させると共に、溶接ヘッド1230をY軸方向に移動させることで、ワークトレイ20上にマトリクス状に配列された任意のワーク10の上に一対の溶接ローラ1240を配置できる。そして、複数のワーク10に対して溶接ローラ1240をつづら折り状または川の字状に相対移動させることで、複数のワーク10をX軸方向の行毎にX軸方向に沿って溶接できる。その後、キャリア1210を90度回転させて複数のワーク10の姿勢を90度回転させてから、複数のワーク10に対して溶接ローラ1240を同様に移動させることで、複数のワーク10をX軸方向の行毎にX軸方向に沿って溶接できる。
次に、溶接装置1によるシーム溶接の手順について説明する。
まず、ワークトレイ20に配列された複数のワーク10を、仕込室1300を経由して真空チャンバ1100のチャンバ本体1110内に送り込む。仕込室1300を経由することで、チャンバ本体1110内を真空雰囲気に保ち続けた状態で送り込める。そして、チャンバ本体1110内に送り込まれた複数のワーク10を、溶接ユニット1200において溶接する。その後、溶接後のワーク10を、チャンバ本体1110内から取出室1400を経由して大気中に送り出す。取出室1400を経由することで、チャンバ本体1110内を真空雰囲気に保ち続けた状態で送り出せる。なお、仕込室1300を経由したワーク10の流れの詳細、あるいは、取出室1400を経由したワーク10の流れの詳細は、例えば特開2010−194544号公報を参照されたい。
次に、シーム溶接により生じる熱の経路について説明する。
シーム溶接によりワーク10や溶接ヘッド1240に生じた熱は、ローラハウジング1270に移動する。ローラハウジング1270に移動した熱は、当該ローラハウジング1270から鉛直方向可動部材1260に移動する。鉛直方向可動部材1260に移動した熱は、当該鉛直方向可動部材1260内を伝導して、当該鉛直方向可動部材1260の前面に拡散する。鉛直方向可動部材1260の前面に拡散した熱は、真空雰囲気中に放射して、真空チャンバ1100の外部に放出される。
なお、上記実施形態において、溶接装置1001は、キャリア1210を水平面内に略90度回転させて、溶接ローラ1240およびワーク10を略90度相対回転させるキャリア回転機構1225に代えて、溶接ヘッド1230を水平面内に略90度回転させて、溶接ローラ1240およびワーク10を略90度相対回転させる溶接ヘッド回転機構を備えるようにしてもよい。
あるいは、上記実施形態において、溶接装置1001は、真空チャンバ1100内において、ワーク10を冷却する内部冷却ユニットを備えるようにしてもよい。内部冷却ユニットは、冷媒用のタンクと、一対の内部冷却用配管と、内部冷却用熱交換器と、内部冷却用ポンプと、を備えている。
タンクは、キャリア1210に内蔵されている。このタンクは、一対の内部冷却用配管が接続されている。これら一対の内部冷却用配管はそれぞれ、キャリア1210の移動や回転に伴って移動できる長さを有する。また、これら一対の内部冷却用配管はそれぞれ、タンクと、内部冷却用ポンプと、を接続する。一方の内部冷却用配管は、内部冷却用ポンプからの水等の冷媒をタンクに送り出す。他方の内部冷却用配管は、タンクを循環した冷媒を、内部冷却用熱交換器を経由して内部冷却用ポンプに回収する。内部冷却用熱交換器は、冷却に使用されて熱を帯びた冷媒を冷却する。内部冷却用ポンプは、冷媒を循環させる。熱対策を講じない場合には、キャリア1210の反りや延びが発生したり、チャンバ本体1110などの各部材が変形したりするが、内部冷却ユニットによる熱対策により、各部材の変形が防止できる。
あるいは、上記実施形態において、溶接装置1は、真空チャンバ100を外部から冷却する外部冷却ユニット500(図7参照)を備えるようにしてもよい。
次に、図14〜図17を用いて、熱処理装置7の構成について説明する。図14は、熱処理装置7の構成を示す平面図である。図15は、真空チャンバ2100内の構成を示す左側面図である。図16は、真空チャンバ2100内の構成を示す背面図である。図17は、真空チャンバ2100内の構成を示す右側面図である。
図14〜図17に示される熱処理装置7は、自身の内部を真空雰囲気に保つ真空チャンバ2100と、この真空チャンバ2100内に設けられた複数の加熱ブロック2200と、真空チャンバ2100内に設けられた一又は複数の冷却ブロック2300と、真空チャンバ2100の上流側に並設された仕込室(ロードロック)2400と、真空チャンバ2100の下流側に並設された取出室(アンロードロック)2500と、真空チャンバ2100にワーク10を送り込む上流側搬送ユニット2600と、真空チャンバ2100内でワーク10を搬送するチャンバ内搬送ユニット2700と、真空チャンバ2100からワーク10を送り出す下流側搬送ユニット2800と、制御ユニット(図示省略)と、等を備えている。
ただし、これから説明する熱処理装置7を溶接装置1に接続する場合には、仕込室600及び上流側搬送ユニット800を無くし、その代わりに、溶接装置取出室2500及び下流側搬送ユニット2800を採用することになる。あるいは、熱処理装置7の真空チャンバ2100と、溶接装置1の真空チャンバ100と、を直接接続したり、これら真空チャンバ2100,100を一体に構成したりすることになる。
これら熱処理装置7の各部は、制御ユニットによって統括的に制御される。制御ユニットは、CPU、RAM及びROM等から構成され、各種制御を実行する。CPUは、いわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されて各種機能(例えば、溶接回数をカウントする機能)を実現する。RAMは、CPUの作業領域として使用される。ROMは、CPUで実行されるプログラムを記憶する。
真空チャンバ2100は、略六面体の箱形容器であるチャンバ本体2110と、真空ポンプ2120と、大気開放弁2130と、等を備えている。チャンバ本体2110には、上流側の側壁に仕込室2400と連通する第一開口2112が形成されていると共に、下流側の側壁に取出室2500と連通する第二開口2114が形成されている。第一開口2112は、後述する仕込室2400の上流側仕切扉2415によって開閉される。第二開口2114は、後述する取出室2500の下流側仕切扉2515によって開閉される。第一開口2112及び第二開口2114が閉じられた状態の真空チャンバ2100は、真空ポンプ2120の動作によって、チャンバ本体2110内の空気圧を大気圧から真空雰囲気までの任意の圧力に制御する。大気開放弁2130は、メンテナンス時等に利用される。
複数の加熱ブロック2200は、ワーク10の搬送方向に沿って、2200A、2200B、2200C、2200D、2200E、2200F、2200G、2200H、2200I、2200Jの順に配列されている。複数の加熱ブロック2200は、それぞれ、ワーク10を加熱するために、時間的に一定の温度(例えば、230℃〜250℃の範囲内で一定の温度)に保たれている。
一又は複数の冷却ブロック2300は、最も第二開口2114の側の加熱ブロック2200Jよりも第二開口2114の側に設けられている。具体的に、本実施形態において、複数の冷却ブロック2300は、ワーク10の搬送方向に沿って、2300A、2300Bの順に配列されている。複数の冷却ブロック2300は、それぞれ、例えば水冷によってワーク10を冷却する。
仕込室2400は、真空チャンバ2100を真空雰囲気に保ちながら大気中から当該真空チャンバ2100に複数のワーク10を送り込む機能を有する。具体的に、仕込室2400は、略六面体の箱形容器である仕込室本体2410と、仕込室本体用真空ポンプ2420と、仕込室本体用大気開放弁2430と、等を備えている。仕込室本体2410には、上流側の側壁に外部に連通する仕込室本体用外部開口2412が形成されて、当該仕込室本体用外部開口2412を開閉する仕込室本体用外部扉2413を備えている。また、仕込室本体2410には、真空チャンバ2100側の側壁に第一開口2112を介して真空チャンバ2100と連通する仕込室本体用連通口2414が形成されて、当該仕込室本体用連通口2414を開閉する上流側仕込扉2415を備えている。仕込室本体用外部開口612及び仕込室本体用連通口2414が閉じられた状態の仕込室2400は、仕込室本体用真空ポンプ2420の動作によって、仕込室本体2410内の空気圧を大気圧から真空雰囲気までの任意の圧力に制御する。なお、仕込室2400は、仕込室本体用真空ポンプ2420として、真空ポンプ2120を兼用するように構成することも可能であり、仕込室本体用真空ポンプ2420を省略することも可能である。
取出室2500は、真空チャンバ2100を真空雰囲気に保ちながら当該真空チャンバ2100から大気中に複数のワーク10を送り出す機能を有する。具体的に、取出室2500は、略六面体の箱形容器である取出室本体2510と、取出室本体用真空ポンプ2520と、取出室本体用大気開放弁2530と、バッファラック2540と、等を備えている。取出室本体2510には、下流側の側壁に外部に連通する取出室本体用外部開口2512が形成されて、当該取出室本体用外部開口2512を開閉する取出室本体用外部扉2513を備えている。また、取出室本体2510には、真空チャンバ2100側の側壁に第二開口2114を介して真空チャンバ2100と連通する取出室本体用連通口2514が形成されて、当該取出室本体用連通口2514を開閉する下流側仕切扉2515を備えている。取出室本体用外部開口2512及び取出室本体用連通口2514が閉じられた状態の取出室2500は、取出室本体用真空ポンプ2520の動作によって、取出室本体2510内の空気圧を大気圧から真空雰囲気までの任意の圧力に制御する。なお、取出室2500は、取出室本体用真空ポンプ2520として、真空ポンプ2120を兼用するように構成することも可能であり、取出室本体用真空ポンプ2520を省略することも可能である。
バッファラック2540は、後述する下流側第二搬送機構2820に隣接するように配置されている。具体的に、バッファラック2540は、上下に配置された複数の棚板(図示省略)と、これら複数の棚板を昇降させる昇降機構(図示省略)と、下流側第二搬送機構2820に位置するワークトレイ20を棚板に移動させると共に、棚板に位置するワークトレイ20を下流側第二搬送機構20に移動させるトレイ移動機構(図示省略)と、を備えている。このバッファラック2540は、真空チャンバ2100内で熱処理が施されたワーク10を、ワークトレイ20ごと一時的に待機させる。これにより、後工程の処理状況に応じて、ワーク10の流れを調整することができる。
上流側搬送ユニット2600は、上流側第一搬送機構2610と、上流側第二搬送機構2620と、上流側第三搬送機構2630と、を備え、これらが上流側から順に配設されている。上流側第一搬送機構2610は、仕込室本体2410の外側底面における仕込室本体用外部扉2413の近傍に配設され、ワークトレイ20を仕込室本体2410の外側から内側に向けて搬送する。具体的に、上流側第一搬送機構2610は、X軸方向に連続して配設された複数の上流側第一搬送ローラ2612を備えている。これら複数の上流側第一搬送ローラ2612は、それぞれ、Y軸回りに回転可能に配設され、ワークトレイ20をX軸方向に搬送する。上流側第二搬送機構2620は、仕込室本体2410の内側底面に配設され、ワークトレイ20を仕込室本体2410からチャンバ本体2110に向けて搬送する。具体的に、上流側第二搬送機構2620は、X軸方向に連続して配設された複数の上流側第二搬送ローラ2622を備えている。これら複数の上流側第二搬送ローラ2622は、それぞれ、Y軸回りに回転可能に配設され、ワークトレイ20をX軸方向に搬送する。上流側第三搬送機構2630は、チャンバ本体2110の内側底面における第一開口2112の近傍に配設され、ワークトレイ20をチャンバ本体2110内に受け入れる際に、当該チャンバ本体2110の上流で搬送する。具体的に、上流側第三搬送機構2630は、X軸方向に連続して配設された複数の上流側第三搬送ローラ2632を備えている。これら複数の上流側第三搬送ローラ2632は、それぞれ、Y軸回りに回転可能に配設され、ワークトレイ20をX軸方向に搬送する。
図15〜図17に示されるチャンバ内搬送ユニット2700は、チャンバ内第一搬送機構2710と、チャンバ内第二搬送機構2720と、チャンバ内第三搬送機構2730と、を備え、これらが上流側から順に配設されている。
図15(A)〜図15(D)に示されるチャンバ内第一搬送機構2710は、加熱ブロック2200A〜2200Fの上方に、Y軸方向に沿って配設された上下一対のチャンバ内第一搬送駆動軸2711と、このチャンバ内第一搬送駆動軸2711に等間隔に取り付けられた複数のチャンバ内第一搬送アーム2712と、これら複数のチャンバ内第一搬送アーム2712を昇降させるチャンバ内第一搬送アーム昇降機構2713と、一対のチャンバ内第一搬送駆動軸2711を進退させるチャンバ内第一搬送駆動機構2716と、を備えている。チャンバ内第一搬送駆動軸2711は、チャンバ内第一搬送駆動機構2716によって自身がY軸方向に進退することで、複数のチャンバ内第一搬送アーム2712をY軸方向に進退させる。複数のチャンバ内第一搬送アーム2712は、チャンバ内第一搬送駆動軸2711がY軸方向に進退することで、当該チャンバ内第一搬送駆動軸2711と共にY軸方向に全てが同時に進退する。そして、複数のチャンバ内第一搬送アーム2712は、チャンバ内第一搬送アーム昇降機構2713の動作に伴って全てが同時に昇降する。チャンバ内第一搬送アーム昇降機構2713は、加熱ブロック2200A〜2200Fの上方であって、かつ、チャンバ内第一搬送駆動軸2711の両脇下方に、Y軸方向に沿って配設された一対のチャンバ内第一昇降軸2714(図示は、一本のチャンバ内第一昇降軸2714)と、これら一対のチャンバ内第一昇降軸2714の各々に取り付けられたチャンバ内第一昇降カム2715と、を備えている。一対のチャンバ内第一昇降軸2714は、図示を省略する動力源によって自身がY軸回りに回転することで、チャンバ内第一昇降カム2715をY軸回りに回転させる。一対のチャンバ内第一昇降カム2715は、チャンバ内第一昇降軸2714がY軸回りに回転することで、当該チャンバ内第一昇降軸2714と共にY軸回りに回転して、全てのチャンバ内第一搬送アーム2712を同時に昇降させる。
チャンバ内第一搬送駆動機構2716は、一対のチャンバ内第一搬送駆動軸2711の一端に被さる一対の第一真空パイプと、これら一対の第一真空パイプと平行に配置された第一ねじ軸と、一対の第一真空パイプ及び第一ねじ軸に沿ってY軸方向に移動する第一スライダと、この第一スライダを第一ねじ軸に沿ってY軸方向に移動させる第一ピニオン及び第一モータと、第一スライダと一体となってチャンバ内第一搬送駆動軸2711をY軸方向に移動させる第一磁石と、などを備えている(いずれも符号省略又は図示省略)。一対の第一真空パイプは、チャンバ本体2110と一体となって真空雰囲気の空間を構成する。これら一対の第一真空パイプ内には、チャンバ内第一搬送駆動軸2711がスライド可能に設けられている。第一スライダには、第一モータが固定されている。この第一モータには、第一ねじ軸に噛み合う第一ピニオンが取り付けられている。第一モータの動力により第一ピニオンが回転することで、第一スライダがY軸方向に移動する。第一スライダ及びチャンバ内第一搬送駆動軸2711には、それぞれ、第一磁石が固定されており、互いに引き付ける磁力が生じている。この磁力により、第一スライダがY軸方向に移動することで、一体となってチャンバ内第一搬送駆動軸2711がY軸方向に移動する。
図15(A)に示されるように、初期位置のチャンバ内第一搬送機構2710は、複数のチャンバ内第一搬送アーム2712が下降した状態で、かつ、上流側(図面右側)に寄せられた状態となっている。そして、図15(A)から図15(B)に示されるように、チャンバ内第一搬送駆動軸2711及び複数のチャンバ内第一搬送アーム2712が下流(図面左)に向けて移動することで、複数のチャンバ内第一搬送アーム2712の各々が、ワークトレイ20を同時に押して、隣の加熱ブロック2200まで移動させる。また、図15(B)から図15(C)に示されるように、チャンバ内第一搬送アーム昇降機構2713が動作することで、複数のチャンバ内第一搬送アーム2712を同時に上昇させる。その後、図15(C)から図15(D)に示されるように、チャンバ内第一搬送駆動軸2711及び複数のチャンバ内第一搬送アーム2712は、上流(図面右)に向けて移動して、初期位置に戻る。
図16(A)及び図16(B)に示されるチャンバ内第二搬送機構2720は、加熱ブロック2200F,2200Gの上方に、X軸方向に沿って配設された上下一対のチャンバ内第二搬送駆動軸2721と、このチャンバ内第二搬送駆動軸2721に取り付けられたチャンバ内第二搬送アーム2722と、一対のチャンバ内第二搬送駆動軸2721を進退させるチャンバ内第二搬送駆動機構2723と、を備えている。チャンバ内第二搬送駆動軸2721は、チャンバ内第二搬送駆動機構2723によって自身がX軸方向に進退することで、チャンバ内第二搬送アーム2722をX軸方向に進退させる。チャンバ内第二搬送アーム2722は、チャンバ内第二搬送駆動軸2721がX軸方向に進退することで、当該チャンバ内第二搬送駆動軸2721と共にX軸方向に進退する。
チャンバ内第二搬送駆動機構2723は、一対のチャンバ内第二搬送駆動軸2721の一端に被さる一対の第二真空パイプと、これら一対の第二真空パイプと平行に配置された第二ねじ軸と、一対の第二真空パイプ及び第二ねじ軸に沿ってX軸方向に移動する第二スライダと、この第二スライダを第二ねじ軸に沿ってX軸方向に移動させる第二ピニオン及び第二モータと、第二スライダと一体となってチャンバ内第二搬送駆動軸2721をX軸方向に移動させる第二磁石と、などを備えている(いずれも符号省略又は図示省略)。一対の第二真空パイプは、チャンバ本体2110と一体となって真空雰囲気の空間を構成する。これら一対の第二真空パイプ内には、チャンバ内第二搬送駆動軸2721がスライド可能に設けられている。第二スライダには、第二モータが固定されている。この第二モータには、第二ねじ軸に噛み合う第二ピニオンが取り付けられている。第二モータの動力により第二ピニオンが回転することで、第二スライダがX軸方向に移動する。第二スライダ及びチャンバ内第二搬送駆動軸2721には、それぞれ、第二磁石が固定されており、互いに引き付ける磁力が生じている。この磁力により、第二スライダがX軸方向に移動することで、一体となってチャンバ内第二搬送駆動軸2721がX軸方向に移動する。
図16(A)に示されるように、初期位置のチャンバ内第二搬送機構2720は、チャンバ内第二搬送アーム2722が上流側(図面右側)に寄せられた状態となっている。そして、図16(A)から図16(B)に示されるように、チャンバ内第二搬送駆動軸2721及びチャンバ内第二搬送アーム2722が下流(図面左)に向けて移動することで、チャンバ内第二搬送アーム2722が、ワークトレイ20を押して、加熱ブロック2200Fから加熱ブロック2200Gに移動させる。
図17(A)〜図17(D)に示されるチャンバ内第三搬送機構2730は、加熱ブロック2200G〜2200J及び冷却ブロック2300A,2300Bの上方に、Y軸方向に沿って配設された上下一対のチャンバ内第三搬送駆動軸2731と、このチャンバ内第三搬送駆動軸2731に等間隔に取り付けられた複数のチャンバ内第三搬送アーム2732と、これら複数のチャンバ内第三搬送アーム2732を昇降させるチャンバ内第三搬送アーム昇降機構2733と、一対のチャンバ内第三搬送駆動軸2731を進退させるチャンバ内第三搬送駆動機構2736と、を備えている。チャンバ内第三搬送駆動軸2731は、チャンバ内第三搬送駆動機構2736によって自身がY軸方向に進退することで、複数のチャンバ内第三搬送アーム2732をY軸方向に進退させる。複数のチャンバ内第三搬送アーム2732は、チャンバ内第三搬送駆動軸2731がY軸方向に進退することで、当該チャンバ内第三搬送駆動軸2731と共にY軸方向に全てが同時に進退する。そして、複数のチャンバ内第三搬送アーム2732は、チャンバ内第三搬送アーム昇降機構2733の動作に伴って全てが同時に昇降する。チャンバ内第三搬送アーム昇降機構2733は、加熱ブロック2200G〜2200J及び冷却ブロック2300A,2300Bの上方であって、かつ、チャンバ内第三搬送駆動軸2731の両脇下方に、Y軸方向に沿って配設された一対のチャンバ内第三昇降軸2734(図示は、一本のチャンバ内第三昇降軸2734)と、これら一対のチャンバ内第三昇降軸2734の各々に取り付けられたチャンバ内第三昇降カム2735と、を備えている。一対のチャンバ内第三昇降軸2734は、図示を省略する動力源によって自身がY軸回りに回転することで、チャンバ内第三昇降カム2735をY軸回りに回転させる。一対のチャンバ内第三昇降カム2735は、チャンバ内第三昇降軸2734がY軸回りに回転することで、当該チャンバ内第三昇降軸2734と共にY軸回りに回転して、全てのチャンバ内第三搬送アーム2732を同時に昇降させる。
チャンバ内第三搬送駆動機構2736は、一対のチャンバ内第三搬送駆動軸2731の一端に被さる一対の第三真空パイプと、これら一対の第三真空パイプと平行に配置された第三ねじ軸と、一対の第三真空パイプ及び第三ねじ軸に沿ってY軸方向に移動する第三スライダと、この第三スライダを第三ねじ軸に沿ってY軸方向に移動させる第三ピニオン及び第三モータと、第三スライダと一体となってチャンバ内第三搬送駆動軸2731をY軸方向に移動させる第三磁石と、などを備えている(いずれも符号省略又は図示省略)。一対の第三真空パイプは、チャンバ本体2110と一体となって真空雰囲気の空間を構成する。これら一対の第三真空パイプ内には、チャンバ内第三搬送駆動軸2731がスライド可能に設けられている。第三スライダには、第三モータが固定されている。この第三モータには、第三ねじ軸が噛み合う第三ピニオンが取り付けられている。第三モータの動力により第三ピニオンが回転することで、第三スライダがY軸方向に移動する。第三スライダ及びチャンバ内第三搬送駆動軸2731には、それぞれ、第三磁石が固定されており、互いに引き付ける磁力が生じている。この磁力により、第三スライダがY軸方向に移動することで、一体となってチャンバ内第三搬送駆動軸2731がY軸方向に移動する。
図17(A)に示されるように、初期位置のチャンバ内第三搬送機構2730は、複数のチャンバ内第三搬送アーム2732が下降した状態で、かつ、上流側(図面右側)に寄せられた状態となっている。そして、図17(A)から図17(B)に示されるように、チャンバ内第三搬送駆動軸2731及び複数のチャンバ内第三搬送アーム2732が下流(図面左)に向けて移動することで、複数のチャンバ内第三搬送アーム2732の各々が、ワークトレイ20を同時に押して、隣の加熱ブロック2200又は冷却ブロック2300まで移動させる。また、図17(B)から図17(C)に示されるように、チャンバ内第三搬送アーム昇降機構2733が動作することで、複数のチャンバ内第三搬送アーム2732を同時に上昇させる。その後、図17(C)から図17(D)に示されるように、チャンバ内第三搬送駆動軸2731及び複数のチャンバ内第三搬送アーム2732は、上流(図面右)に向けて移動して、初期位置に戻る。
図14に戻って説明する。下流側搬送ユニット2800は、下流側第一搬送機構2810と、下流側第二搬送機構2820と、下流側第三搬送機構2830と、を備え、これらが下流側へ順に配設されている。下流側第一搬送機構2810は、チャンバ本体2110の内側底面における第二開口2114の近傍に配設され、ワークトレイ20をチャンバ本体2110から送り出す際に、当該チャンバ本体2110の下流で搬送する。具体的に、下流側第一搬送機構2810は、X軸方向に連続して配設された複数の下流側第一搬送ローラ2812を備えている。これら複数の下流側第一搬送ローラ2812は、それぞれ、Y軸回りに回転可能に配設され、ワークトレイ20をX軸方向に搬送する。下流側第二搬送機構2820は、取出室本体2510の内側底面に配設され、ワークトレイ20を取出室本体2510の内側から外側に向けて搬送する。具体的に、下流側第二搬送機構2820は、X軸方向に連続して配設された複数の下流側第二搬送ローラ2822を備えている。これら複数の下流側第二搬送ローラ2822は、それぞれ、Y軸回りに回転可能に配設され、ワークトレイ20をX軸方向に搬送する。下流側第三搬送機構2830は、取出室本体2510の外側底面における取出室本体用外部扉713の近傍に配設され、ワークトレイ20を取出室本体2510の外側から遠退くように搬送する。具体的に、下流側第三搬送機構2830は、X軸方向に連続して配設された複数の下流側第三搬送ローラ2832を備えている。これら複数の下流側第三搬送ローラ2832は、それぞれ、Y軸回りに回転可能に配設され、ワークトレイ20をX軸方向に搬送する。
次に、熱処理装置7による熱処理の手順について、図14を用いて説明する。
図14に示されるように、ワーク10は、ワークトレイ20に載せられた状態で、真空雰囲気に保たれた真空チャンバ2100内において、加熱ブロック2200A〜2200J及び冷却ブロック2300A,2300Bの上を順々に搬送される。
図14に示されるように、加熱ブロック2200A〜2200Jは、それぞれ、時間的に一定の温度(例えば、230℃〜250℃の範囲内で一定の温度)に保たれているが、真空雰囲気中であり空気の対流がないので、それらの上(近傍)を搬送されるワーク10は、徐々に温度が高められる。なお、ワーク10は、最終的に、例えば230℃から250℃程度まで加熱される。その後、ワーク10は、冷却ブロック2300A,2300Bによって、冷却される。
以上説明したように、本実施形態に係る熱処理装置7は、バッチ処理ではなくリアルタイム処理を行うことができるので、加熱ブロック2200A〜2200Jによってワーク10を順々に加熱することができる。そして、その後、冷却ブロック2300A,2300Bによってワーク10の温度を順々に下げることができる。
バッチ処理の場合、その都度、真空チャンバ2100内全体の温度が変化するので、エネルギーの無駄が生じるという問題があった。一方、本実施形態に係る熱処理装置7は、リアルタイム処理を実行するため、真空チャンバ2100内全体(各ブロック)の温度を時間的に一定に保つことができ、結果として省エネを実現することができる。