JP6151877B2 - 生鮮食品の保存方法および生鮮食品用貯蔵システム - Google Patents
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Description
さらに、非特許文献2によれば、超氷温と氷温を繰り返して野菜(ネギ)をより長く鮮度保持し、かつ野菜の味覚をより向上させる試みが報告されている。
市場に流通する露地栽培の各種野菜は、土質、気温、湿度、雨量、日照時間等が異なる様々な生産地にて生産されており、栽培条件(農薬および肥料の種類および量等)、栽培開始から収穫までに要した時間、収穫から低温貯蔵までに要した時間等も異なっており、同一品種の野菜に関しても同様である。
このように、野菜は、同一品種であっても、生産条件が異なると品質にバラツキが生じて氷結点および破壊点が微妙に異なってしまう。
前記生鮮食品が植物性生鮮食品であり、
同一の収穫開始時刻から所定時間内に同一品種の複数の植物性生鮮食品を収穫する収穫工程と、この収穫工程にて収穫された前記複数の植物性生鮮食品のうち監視対象となる被監視用の生鮮食品を取り分けて常温から前記凝固点以上の品温で保存する別保存工程を含み、
前記所定の過冷却温度での冷却開始から所定時間経過した後に前記被監視用の生鮮食品を前記冷却庫内に収容して品温が前記所定の過冷却温度となるよう冷却し、前記被監視用の生鮮食品の状態変化が確認できた時点を基準として前記品質低下の開始時点を予測する生鮮食品の保存方法生鮮食品の保存方法が提供される。
前記生鮮食品が植物性生鮮食品であり、
同一の収穫開始時刻から所定時間内に同一品種の複数の植物性生鮮食品を収穫する収穫工程と、この収穫工程よりも前に収穫前の前記複数の植物性生鮮食品のうち監視対象となる被監視用の生鮮食品を予め収穫して常温から前記凝固点以上の品温で保存する別収穫保存工程を含み、
前記被監視用の生鮮食品を含む複数の植物性生鮮食品を前記冷却庫内に収容して品温が前記所定の過冷却温度となるよう冷却し、前記被監視用の生鮮食品の状態変化が確認できた時点を基準として前記品質低下の開始時点を予測する生鮮食品の保存方法が提供される。
また、生産条件の多少の違いがあっても品質(特に、凝固点と破壊点)のバラツキが少ない植物性の生鮮食品に対しても本発明の生鮮食品の保存方法は有効である。さらに、凝固点および破壊点が近似していれば品種が異なる複数の生鮮食品を同一の冷却庫内に保存して本発明の保存方法を適用することも可能である。
ここで、本発明の保存方法が対象とする生鮮食品は、野菜、果実を含む植物性生鮮食品である。
野菜としては、カブ、クワイ、ゴボウ、ダイコン、タケノコ、ニンジン、ビーツ、ヤーコンおよびレンコンを含む根菜類、エシャロット、サツマイモ、サトイモ、ジャガイモ、タマネギ、ニンニク、ヤマノイモ、ユリネおよびラッキョウを含む土物類、アシタバ、アスパラガス、アーティチョーク、オカヒジキ、カラシナ、カリフラワー、キャベツ、クウシンサイ、クレソン、コマツナ、コールラビ、シュンギク、セロリ、クアサイ、チコリー、チンゲンサイ、ツルムラサキ、トレビス、ナバナ、ニラ、ネギ、ハクサイ、パセリ、フキ、フダンソウ、ブロッコリー、ホウレンソウ、ミズナ、ミツバ、モヤシ、モロヘイヤ、ルッコラ、ルバーブおよびレタスを含む葉茎菜類、ウリ、オクラ、カボチャ、キュウリ、ゴーヤ、シシトウ、ズッキーニ、トウガン、トウモロコシ、トマト、ナスおよびピーマンを含む果菜類、エダマメ、グリーンピース、サヤインゲン、サヤエンドウおよびソラマメを含む豆科野菜類、エノキタケ、エリンギ、キクラゲ、シイタケ、シメジ、ナメコ、ヒラタケ、マイタケ、マッシュルームおよびマツタケを含む茸類、かいわれ大根、シソ、ショウガ、ショクヨウギク、トウガラシおよびミョウガを含む香辛つま物類、および、ワラビ、ゼンマイ、タラの芽およびウドを含む山菜類が挙げられる。
前記データに基づいて前記生鮮食品の品質低下の開始時点を予測してもよい。
このようにすれば、生鮮食品の細胞が凍結死しないよう自動制御によって適切なタイミングで品温を過冷却温度から凝固点以上に上昇させることが可能となる。なお、詳しくは後述の実施形態1において説明する。
同一の収穫開始時刻から所定時間内に同一品種の複数の植物性生鮮食品を収穫する収穫工程と、この収穫工程にて収穫された前記複数の植物性生鮮食品のうち監視対象となる被監視用の生鮮食品を取り分けて常温から前記凝固点以上の品温で保存する別保存工程を含み、
前記所定の過冷却温度での冷却開始から所定時間経過した後に前記被監視用の生鮮食品を前記冷却庫内に収容して品温が前記所定の過冷却温度となるよう冷却し、前記被監視用の生鮮食品の状態変化が確認できた時点を基準として前記品質低下の開始時点を予測するようにしてもよい。
同一の収穫開始時刻から所定時間内に同一品種の複数の植物性生鮮食品を収穫する収穫工程と、この収穫工程よりも前に収穫前の前記複数の植物性生鮮食品のうち監視対象となる被監視用の生鮮食品を予め収穫して常温から前記凝固点以上の品温で保存する別収穫保存工程を含み、
前記被監視用の生鮮食品を含む複数の植物性生鮮食品を前記冷却庫内に収容して品温が前記所定の過冷却温度となるよう冷却し、前記被監視用の生鮮食品の状態変化が確認できた時点を基準として前記品質低下の開始時点を予測するようにしてもよい。
このようにすれば、過冷却領域で貯蔵される生鮮食品の品温変化または/および色濃度変化を観察し細胞破壊を確認するため、品質低下の開始時点の予測が容易となり、かつ予測の精度を向上させ易くなる。
第1冷却工程から開始して第1冷却工程と第2冷却工程を繰り返し、最初の第1冷却工程中に得られた前記品質低下の開始時点の情報に基づいて2回目以降の第1冷却工程の期間を決定するようにしてもよい。
このようにすれば、より長期間の鮮度保持が可能となると共に、2回目以降の第1冷却工程と第2冷却工程の繰り返しのタイミング制御が容易となる。
植物工場で生産された野菜は品質が安定しているため、更なる味覚向上、長期大量保存および計画的な出荷を、年間を通して安定的に行うことができる。
図1は本発明の生鮮食品の保存方法の概念を説明する図であり、図2は本発明の生鮮食品の保存方法の実施形態1に用いられる貯蔵システムを示す構成図である。
図1は上下2段のグラフを有しており、図1中の上のグラフは植物性生鮮食を過冷却領域で貯蔵した場合の品温の変化を表している。
前記データに基づいて最初の第1冷却工程開始後の前記生鮮食品の品質低下の開始時点を予測し、予測した品質低下の開始時点よりも前に常温から前記凝固点以上の間に品温を上昇させて第2冷却工程に移行する。この予測方法は、図2に示す生鮮食品用貯蔵システムS1によって実現することができる。
0℃〜凝固点の間の領域で第2冷却工程を行う時間は特に限定されるものではないが、生鮮食品Fの品種によっては第2冷却工程開始から2回目の第1冷却工程へ短時間で移行すると細胞に与えるストレスが大きくなって品質に悪影響を与えるおそれがある。そのため、一例としては、第2冷却工程の時間的な長さは前記所定時間Tと同程度に設定される。
図3は本発明の生鮮食品の保存方法の実施形態2の概念を説明する図であり、図4は本発明の生鮮食品の保存方法の実施形態2に用いられる貯蔵システムを示す構成図である。なお、図4において、図2中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
最初の第1冷却工程開始から所定時間経過した後に前記被監視用の生鮮食品を前記冷却庫内に収容して品温が前記所定の過冷却温度となるよう冷却し、前記被監視用の生鮮食品の状態変化が確認できた時点を基準として前記品質低下の開始時点を予測する。
前記(II)については図5(A)〜(C)を参照しながら説明し、さらに詳しくは後述の実施例1において説明する。
この場合、温度センサ2からの温度信号に基づいて制御部4が冷却庫1内の生鮮食品Fの品温を制御する場合と、CCDカメラ3からの画像信号に基づいて制御部4が冷却庫1内の生鮮食品Fの品温を制御する場合と、これら両方を組み合わせた場合がある。
実施形態2の場合、図4に示すように、第1冷却工程の前に、前記のように収穫工程と、別保存工程が行われる。
収穫工程では、同一品種の複数の生鮮食品Fを、同一の収穫開始時刻から所定時間内に収穫する。例えば、1000個の生鮮食品Fを10分間のうちに収穫する。これにより、最初と最後に収穫された生鮮食品Fの収穫時刻の差は最大10分に収まり、これら1000個の生鮮食品Fの収穫時点を同一と見なす。なお、収穫時刻の差は短いほど好ましい。
この場合はCCDカメラ3を用いて被監視用生鮮食品Fの状態変化を監視すること以外は、前述した温度センサ2を用いた状態変化の監視と同様である。この場合、「状態変化」とは、被監視用生鮮食品Fの特定色の色濃度変化であり、被監視用生鮮食品FをCCDカメラ3にて撮影してその画像信号を制御部4へ送信する。なお、被監視用生鮮食品Fの品温は温度センサ2にて測定され、その温度信号が制御部4へ送信される。
図6は本発明の生鮮食品の保存方法の実施形態3の概念を説明する図である。
図6に示すように、実施形態3の生鮮食品の保存方法は、第1冷却工程に先立って、同一の収穫開始時刻から所定時間内に同一品種の複数の植物性生鮮食品を収穫する収穫工程と、この収穫工程よりも前に収穫前の前記複数の植物性生鮮食品のうち監視対象となる被監視用の生鮮食品を予め収穫して常温から前記凝固点以上の品温で保存する別収穫保存工程を含み、
前記被監視用の生鮮食品を含む複数の植物性生鮮食品を前記冷却庫内に収容して最初の第1冷却工程を開始し、前記被監視用の生鮮食品の状態変化が確認できた時点を基準として前記品質低下の開始時点を予測する。
実施形態2では、被監視用生鮮食品と流通用生鮮食品の収穫時点が同じであるが、第1冷却工程の開始時点は被監視用生鮮食品を流通用生鮮食品よりも遅くしており、これによって被監視用生鮮食品の細胞破壊を流通用生鮮食品よりも早く生じさせている。
図7は本発明の生鮮食品用貯蔵倉庫の一例を示すブロック図である。なお、図7において、上段は側方から視たブロック図、中段は上方から視たブロック図、下段は上方から視た説明図である。
実施形態1〜3で説明した生鮮食品の保存方法は、図7に示す生鮮食品用貯蔵倉庫でも行うことが可能である。
まず、生鮮食品用貯蔵倉庫S3の周囲近傍の作業場において、収穫された野菜を棚25に収納する。この際、各棚25において少なくとも1つの生鮮食品(例えばレタス)の品温を温度センサにて検知できるようにする。
その後、搬入室21の搬入口を開いて複数の棚25を内部に搬入し、搬入口を閉じる。このとき、搬入室21内に外気が流入して室温が0℃を越えて上昇するため、搬入室21の室温が再び0℃〜生鮮食品の凝固点以上の第1の所定温度まで低下するまで待機する。
第1貯蔵室22内の生鮮食品の品温は温度センサにて検知され、この検知信号に基づいて制御部が冷凍サイクル系を制御して第1貯蔵室22内の室温を0℃〜生鮮食品の凝固点以上の温度に維持する。
本発明によれば、貯蔵される生鮮食品の品温測定部を備えた冷蔵庫が提供される。
この冷蔵庫は、庫内を0℃以下に温度制御が可能な冷蔵庫であって、庫内の1箇所以上に生鮮食品の品温測定部が設置されている。したがって、庫内の下部および上部の周縁、下部および上部の中央等の複数箇所に品温測定部が設置されていてもよい。品温測定部としては、例えば、冷蔵庫内の1箇所以上に、品温が検知される被監視用生鮮食品を設置する台を設け、その台から棒状の温度センサが突出するように設置した構成とすることができる。この場合、作業者が温度センサに突き刺さるように被監視用生鮮食品を台上に設置してもよく、台上に設置した被監視用生鮮食品に温度センサが自動的に突き刺さるようにしてもよい。この品温測定部を備えた冷蔵庫によれば、生鮮食品の品温を簡便に測定することができる。
図8(A)〜(D)は品温を−2℃、−3℃、−4℃および−5℃に維持した過冷却貯蔵でのフリルレタスの品温変化を示すグラフである。
実施例1では、大阪府立大学植物工場研究センターにて生産されたフリルレタスを収穫し、収穫時点から過冷却貯蔵を開始するまでの時間差と品温と品質低下の開始時点との関係を調べたところ、図8(A)〜(D)に示す結果が得られた。この場合、収穫したフリルレタスを過冷却貯蔵する装置として、図4で説明した生鮮食品用貯蔵倉庫S2を小型化した株式会社氷温研究所製のインキュベーター(冷凍付)CDB-14Aを使用した。また、温度センサからの温度信号がPCに送信され、PCにて各フリルレタスの品温変化が記録されるようにした。
図8(B)に示すように、グラフ(1)は300分を超えても品質低下を示さず、グラフ(2)は約160分、グラフ(3)は約40分で品質低下の開始時点を示した。
図8(C)に示すように、グラフ(1)は約240分で品質低下の開始時点を示した。
図8(D)に示すように、グラフ(1)は約140分、グラフ(2)および(3)は約20分で品質低下の開始時点を示した。
・収穫時点から過冷却貯蔵を開始するまでの時間が短いほど品質低下の開始時点が遅延する傾向がある。
・過冷却貯蔵における品温は高いほど品質低下の開始時点が遅延する傾向がある。
・予め、過冷却貯蔵すべき植物性生鮮食品の品種に応じて過冷却領域での適切な品温を決定し、収穫から過冷却貯蔵開始までの適切な時間を決定し、適切な品温で過冷却貯蔵された生鮮食品の品質低下の開始時点を測定しておくことにより、前記実施形態1の保存方法で生鮮食品を長期鮮度保存することができる。
・生鮮食品の収穫から過冷却貯蔵開始までの時間差を利用し、かつ過冷却貯蔵での品温変化を監視することにより、前記実施形態2および3の保存方法で生鮮食品を長期鮮度保存することができる。
図9(A)〜(C)は品温を−3℃に維持した過冷却貯蔵でのフリルレタスの品質低下の開始時点および特定色の色濃度変化を示すグラフである。
実施例2では、大阪府立大学植物工場研究センターにて生産されたフリルレタスを収穫し、収穫から10.5時間後に実施例1で用いた過冷却貯蔵装置に収容して品温を−3℃で維持しながらフリルレタスの複数色の色濃度変化を監視した。また、温度センサからの温度信号およびCCDカメラからの画像信号は画像解析ソフトが組み込まれたPCに送信され、PCにてフリルレタスの品温変化および複数色の色濃度変化が記録されるようにした。
また、図9(B)はフリルレタスの複数色のうちから64色解析方法によって選択したr160g160b160色(グラフ(1))、r160g160b096色(グラフ(2))、r096g096b096色(グラフ(3))およびr096g160b096色(グラフ(4))の色濃度変化を示し、図9(C)はフリルレタスの複数色のうちから64色解析方法によって選択したr160g224b160色(グラフ(1))およびr224g224b160色(グラフ(2))の色濃度変化を示している。
・フリルレタスの品温が急上昇した品質低下の開始時点において、フリルレタスの複数色のうち、図9(B)中のグラフ(1)は色濃度の急激な増加を示し、一方、図9(C)中のグラフ(1)は色濃度の急激な減少を示していることがわかった。
・予め、過冷却貯蔵すべき植物性生鮮食品の品種に応じて過冷却領域での適切な品温を決定し、収穫から過冷却貯蔵開始までの適切な時間を決定し、適切な品温で過冷却貯蔵された生鮮食品の特定色の色濃度変化が所定量以上に変化する時点を測定しておくことにより、前記実施形態1の保存方法で生鮮食品を長期鮮度保存することができる。
・生鮮食品の収穫から過冷却貯蔵開始までの時間差を利用し、かつ過冷却貯蔵での生鮮食品の特定色の色濃度変化を監視することにより、前記実施形態2および3の保存方法で生鮮食品を長期鮮度保存することができる。
図10(A)〜(C)は冷却庫内の温度を−2℃、−3℃および−5℃に維持した過冷却貯蔵でのフリルレタスの色数の変化を示すグラフである。
実施例3では、大阪府立大学植物工場研究センターにて生産されたフリルレタスを収穫し、収穫から9時間後に実施例1で用いた過冷却貯蔵装置に収容し、冷却庫内の温度を−2℃、−3℃、−5℃で維持しながらフリルレタスの色数の変化を監視した。この場合、CCDカメラからの画像信号は画像解析ソフトが組み込まれたPCに送信され、PCにてフリルレタスの色数の変化が記録されるようにした。
なお、実施例3によれば、フリルレタスに適した過冷却貯蔵の温度設定を容易かつ短時間に見出すことができる。
図11(A)〜(C)は冷却庫内の温度を−2℃、−3℃および−5℃に維持した過冷却貯蔵でのフリルレタスの色変化率を示すグラフである。
実施例4では、大阪府立大学植物工場研究センターにて生産されたフリルレタスを収穫し、収穫から3時間後に実施例1で用いた過冷却貯蔵装置に収容し、冷却庫内の温度を−2℃、−3℃、−5℃で維持し、品温が急激に上昇する品質低下の開始時点を超えるまでフリルレタスの色変化率を測定した。この場合、CCDカメラからの画像信号は画像解析ソフトが組み込まれたPCに送信され、PCにてフリルレタスの各色の色濃度データが記録され、過冷却貯蔵の間の各色の色濃度の変化率を算出した。
なお、実施例4によっても、フリルレタスに適した過冷却貯蔵の温度設定を容易かつ短時間に見出すことができる。
図12は貯蔵方法とフリルレタスの重量減少率の関係を示すグラフであり、図13は貯蔵方法とフリルレタスの糖度変化の関係を示すグラフである。
フリルレタスを3週間、品温5℃で冷蔵(グラフ(1))、および、品温−2.8℃の過冷却貯蔵と品温−0.5℃の凝固点冷却貯蔵の繰り返し(グラフ(2))を行い、この間の1週間毎に重量および糖度を測定し、フリルレタスの重量減少率および糖度変化が貯蔵方法の違いによってどのように変化するのかを調べた。なお、「凝固点冷却貯蔵」とは、品温が0℃〜凝固点の間の所定温度となるように貯蔵することを意味する。
また、図13において、グラフ(2)は2週間目まで糖度は減少したが、それ以降は増加に転じていた。このことから、品温が過冷却領域まで低下すると、ある程度の期間を過ぎるとフリルレタス中のデンプンが糖に変化する量が多くなると考えられる。一方、グラフ(1)は糖度の減少と増加を繰り返し、3週間目ではグラフ(2)よりも減少した。
図14は貯蔵方法とフリルレタスの遊離アミノ酸含量の変化の関係を示すグラフである。
フリルレタスを3週間、品温0℃で冷蔵(グラフ(1))、および、品温−2.8℃の過冷却貯蔵と品温−0.5℃の凝固点冷却貯蔵の繰り返し(グラフ(2))を行い、この間の1週間毎に遊離アミノ酸含量を測定し、フリルレタス中の遊離アミノ酸含量が貯蔵方法の違いによってどのように変化するのかを調べた。
なお、品温−2.8℃の過冷却貯蔵と品温−0.5℃の凝固点冷却貯蔵の繰り返しの場合はGABA含量とグルタミン酸含量が3週間以降では増加することも確認した。
図15は実施例7で用いる実験装置を示す構成図である。図15において、符号1はパーソナル・コンピュータ(PC)、2はデーターローグ(Data-logger)、3はインキュベーター冷蔵庫(大和工業株式会社製 型式:CDB-14A)、4は段ボール箱(200X200X230mm、厚さ3mm)、5はサンプル、6、7、8および9は温度センサを示している。
図15の実験装置の段ボール箱4内にサンプル5として3個のフリルレタスを収納し、冷蔵庫3内の温度を−10℃に設定し、各レタスの中心温度(品温)の温度変化を温度センサ6〜8にて測定し、品温が−7℃に達した時点でレタス全体が凍結したと判断して実験を終了し、これを3回繰り返した。なお、フリルレタスは大阪府立大学の植物工場で生産され収穫日に得たものである。
過冷却貯蔵における冷却速度がレタスの品質にどのよう影響するか調べるために図15の実験装置を用いて次の実験2を行った。
実験2では、3種類の包装方法と冷蔵庫3の温度設定を組み合わせてレタスの冷却速度を測定した。冷蔵庫3の設定温度は−1℃から1℃ずつ下げて−6℃までの範囲とし、包装無しのレタスと、市販のポリプロピレン(PP)フィルムの一重包装のレタスと、市販のPEフィルムの二重包装のレタスの3種類を3個ずつ冷蔵庫3内に収容し、48時間の冷却を行った。この間、各レタスの品温変化を測定し、平均冷却速度を求めて表2に示した。なお、二重包装の場合、PPフィルムの一重包装の3個のレタスを大きなPE袋に収容し密封した。
レタスなどの農産物は収穫後も呼吸などの生命活動が続くため、水分蒸発や糖度の変化が生じている。過冷却貯蔵と冷蔵貯蔵とを比較するため、3週間の長期保存実験を行い、1週間毎に重量減少率と糖度変化の測定を行った。
(a)一般の冷蔵庫貯蔵(冷蔵):3個のレタスを3セット用意し、これらを設定温度5℃の冷蔵庫に貯蔵した。
(b)過冷却貯蔵:3個のレタスを3セット用意し、これらを設定温度-3℃の冷蔵庫に貯蔵した。
また、条件(a)および(b)のレタスについて、週1回の計測を行い、3週間目までの重量および糖度の変化をまとめたものが図18および図19である。
(1)植物工場で生産されたレタスの凝固点温度は-0.2℃程度、過冷却領域の温度は-1.0℃から-6.1℃程度であることを、過冷却実験により求めた。
(2)レタスの過冷却貯蔵を行う際の包装形態により冷却速度に変化が求められ、過冷却状態で凍結させずに保存することができることが示された。
(3)冷蔵および過冷却貯蔵を3週間行い、重量および糖度を測定し、過冷却貯蔵の有効性が示された。
実施例7の実験3と同様にして、イチゴの重量変化と糖度変化を1週間毎に4週間目まで測定し、その結果を図20および図21に示した。
1a 冷却庫本体
1a1 棚
1b 冷凍機
1c ダクト
1c1 冷気
2 温度センサ
3 CCDカメラ
4 制御部
C 収納ケース
F 生鮮食品
S1、S2 生鮮食品用貯蔵システム
S3 生鮮食品用貯蔵庫
Claims (7)
- 生鮮食品の品温がこの生鮮食品の凝固点よりも低い所定の過冷却温度となるよう冷却庫にて前記生鮮食品の冷却を継続し、前記生鮮食品の細胞が破壊されると予測した品質低下の開始時点よりも前に前記品温を前記凝固点以上に上昇させる生鮮食品の保存方法であって、
前記生鮮食品が植物性生鮮食品であり、
同一の収穫開始時刻から所定時間内に同一品種の複数の植物性生鮮食品を収穫する収穫工程と、この収穫工程にて収穫された前記複数の植物性生鮮食品のうち監視対象となる被監視用の生鮮食品を取り分けて常温から前記凝固点以上の品温で保存する別保存工程を含み、
前記所定の過冷却温度での冷却開始から所定時間経過した後に前記被監視用の生鮮食品を前記冷却庫内に収容して品温が前記所定の過冷却温度となるよう冷却し、前記被監視用の生鮮食品の状態変化が確認できた時点を基準として前記品質低下の開始時点を予測することを特徴とする生鮮食品の保存方法。 - 生鮮食品の品温がこの生鮮食品の凝固点よりも低い所定の過冷却温度となるよう冷却庫にて前記生鮮食品の冷却を継続し、前記生鮮食品の細胞が破壊されると予測した品質低下の開始時点よりも前に前記品温を前記凝固点以上に上昇させる生鮮食品の保存方法であって、
前記生鮮食品が植物性生鮮食品であり、
同一の収穫開始時刻から所定時間内に同一品種の複数の植物性生鮮食品を収穫する収穫工程と、この収穫工程よりも前に収穫前の前記複数の植物性生鮮食品のうち監視対象となる被監視用の生鮮食品を予め収穫して常温から前記凝固点以上の品温で保存する別収穫保存工程を含み、
前記被監視用の生鮮食品を含む複数の植物性生鮮食品を前記冷却庫内に収容して品温が前記所定の過冷却温度となるよう冷却し、前記被監視用の生鮮食品の状態変化が確認できた時点を基準として前記品質低下の開始時点を予測することを特徴とする生鮮食品の保存方法。 - 前記生鮮食品の状態変化が品温変化および色濃度変化のうちの少なくとも一方を含んでいる請求項1または2に記載の生鮮食品の保存方法。
- 前記品温が前記所定の過冷却温度となるよう生鮮食品を冷却する第1冷却工程と、前記品温が0℃〜凝固点以上となるように生鮮食品を冷却する第2冷却工程とを含み、
第1冷却工程から開始して第1冷却工程と第2冷却工程を繰り返し、最初の第1冷却工程中に得られた前記品質低下の開始時点の情報に基づいて2回目以降の第1冷却工程の期間を決定する請求項1〜3のいずれか1つに記載の生鮮食品の保存方法。 - 前記生鮮食品が、植物工場で生産された野菜である請求項1〜4のいずれか1つに記載の生鮮食品の保存方法。
- 請求項1または2に記載の生鮮食品の保存方法に用いられる生鮮食品用貯蔵システムであって、
生鮮食品を冷却する温度調整可能な冷却庫と、前記冷却庫内の前記被監視用の生鮮食品の品温を測定する温度センサと、前記温度センサからの信号に基づいて前記冷却庫内の温度を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、第1冷却工程における前記温度センサからの信号によって前記被監視用の生鮮食品の品温が所定の変化量以上で低下したと判定すると、前記複数の植物性生鮮食品の品温を0℃〜前記凝固点の間の温度まで上昇させるよう前記冷却庫内の温度を制御する第2冷却工程モードと、第2冷却工程開始から所定時間経過すると前記複数の植物性生鮮食品の品温が凝固点よりも低い所定の過冷却温度となるよう前記冷却庫内の温度を制御する第1冷却工程モードに切り替わるよう構成されている生鮮食品用貯蔵システム。 - 請求項1または2に記載の生鮮食品の保存方法に用いられる生鮮食品用貯蔵システムであって、
生鮮食品を冷却する温度調整可能な冷却庫と、前記冷却庫内の前記被監視用の生鮮食品の品温を測定する温度センサと、前記冷却庫内の前記被監視用の生鮮食品を撮影するCCDカメラと、前記温度センサからの温度信号および前記CCDカメラからの画像信号に基づいて前記冷却庫内の温度を制御可能な制御部とを備え、
前記制御部は、第1冷却工程における前記画像信号によって前記被監視用の生鮮食品の特定色の色変化が所定の変化量以上となったと判定すると、前記複数の生鮮食品の品温を0℃〜前記凝固点の間の温度まで上昇させるよう前記冷却庫内の温度を制御する第2冷却工程モードと、第2冷却工程開始から所定時間経過すると前記複数の生鮮食品の品温が凝固点よりも低い所定の過冷却温度となるよう前記冷却庫内の温度を制御する第1冷却工程モードに切り替わるよう構成されている生鮮食品用貯蔵システム。
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