請求項1に記載の冷蔵庫は、食品載置部に載置された食品の表面温度を検知する非接触センサーが設置された貯蔵室と、前記貯蔵室を冷却する冷却手段と、前記貯蔵室の冷却を高冷却能力で行う急凍制御手段とを有し、前記食品載置部は蓄熱機能を有するとともに、前記非接触センサーが検知した温度が予め設定した開始温度よりも高ければ、高冷却能力で冷却を行う急凍制御手段によって急凍制御が自動的に開始され、予め設定した終了温度に到達した時点で前記急凍制御手段による急凍制御を停止するものである。
これによって、非接触に検知するセンサーによって食品温度を検知し自動で急凍制御を開始し、終了温度に到達した時点で速やかに通常の冷却動作に移行するため、庫内に投入された食品を速やかに自動で急速冷却の開始を行うとともに、食品載置部は蓄熱機能を有することによって、予め冷凍温度帯に冷却された蓄熱機能を有する食品載置部が食品に接していることで、熱伝導によって直接的に熱を奪い速やかに冷却を行うことができるので、急凍制御を行う場合でも圧縮機や冷気送風ファンの連続運転時間を大幅に短縮することができ、より省エネルギーを実現した急速冷却を行うことが可能となる。
また、食品保存の観点からしても、本発明では急凍制御を行う際の食品載置部が蓄熱機能を有することで、急凍制御を行う冷気の導入による熱伝達と、蓄熱機能を有した食品載置部からの熱伝導の両方を用いて速やかに冷却を行うことができるので、特に冷凍保存では鮮度に大きく影響する0℃〜−5℃の最大氷結晶生成帯の通過時間をより短くすることができ、最大氷結晶生成帯を短時間で通過することで、解凍時に食品からのドリップ量が抑制できるため、食品の鮮度や味を落とすことなく保存することができるので、食品の保存品質を高めることが可能となる。
上記のように、冷却能力の向上が自動で行われるので、冷蔵庫の冷却を必要に応じた冷却運転で行うことができる。特に、負荷投入の影響による庫内温度の上昇や、急速に凍結させたい負荷への冷却に対して、従来のように圧縮機を40Hz程度の中回転で運転し負荷をゆっくり冷却するよりも、高冷却能力による短時間での冷却とすることで、例えば冷蔵庫の運転する24時間中の中での運転時間を短縮することができるので、消費電力量の低減となり、現在の地球環境悪化の要因とされている温室効果ガスの排出量を低減することができる。
また、従来のように早く凍結したい食品に対して手動で急凍制御に入れていた動作を自動で行うこととなるので、食品投入後に急凍制御に入れるという煩わしい動作が不要となる。近年の冷蔵庫では、急凍制御を動作させるために、急凍制御を選択し、決定動作を行う必要のあるものもあり、急凍動作を行うこと自体が煩わしいと感じられていたが、自動で急凍制御に入り高能力な冷却運転で食品の冷却動作を行うため、急凍制御に入れ忘れることはない。
また、ユーザーが買い物から帰宅して肉などの生鮮食品を冷凍保存するために食品を冷蔵庫に収納しているときには、ドア開放の影響で庫内温度は上昇してしまう。その場合、従来では自動で急凍制御に入らないため、低冷却能力で時間をかけて食品を冷却することとなるが、本発明では非接触のセンサーで検知した温度によって、温度が高ければ自動で急凍制御に入ることとなるので高冷却能力で時間をかけずに速やかに冷却できる。この結果、冷却するための冷却時間を短縮することができることと、短時間での冷却であるので食品自身の温度上昇を抑えるので保鮮劣化を抑制できる。
また、食品凍結時には自動で急凍制御を解除するので、従来のように凍結後の不要な冷却運転による無駄なエネルギーの浪費をなくすことができる。また、従来では食品の潜熱変化から顕熱変化への移行を検知し凍結完了の判断を行っているものもあるが、食品の大きさによって潜熱変化と顕熱変化が同等の変化量を示すものには判断しにくい場合もあった。しかし、本発明では食品の温度自体の温度を検知するため、確実に凍結を判断できるとともに従来のように食品の変化率を算出するための複雑な微分計算制御仕様を構築することもない。
請求項2に記載の冷蔵庫は、請求項1に記載の発明に加えて、非接触センサーは赤外線センサーであり、食品載置部と対向する側の貯蔵室壁面に備えられているとともに前記貯蔵室は冷凍温度帯にのみ設定可能な冷凍室である。
これによって、一般的に赤外線センサーの検知精度は最も精度を高く設定したい温度帯から離れるとともに検知精度が悪化する特性があるが、赤外線センサーを設置する貯蔵室が冷凍室であることで、冷凍温度帯付近が最も高くなるように予め設定することができ、他の温度帯に設定されることがないので、常に精度よく食品の温度を検知することが可能となり、より速やかで正確な急凍制御開始と急凍制御終了を行うことが可能となり、より省エネルギーを実現した急凍制御を行うことが可能となる。
さらに、食品温度を直接に検知することで急速凍結させたい食品の温度をリアルタイムに検出できより速やかで正確な急凍制御開始と急凍制御終了を行うことが可能となり、より省エネルギーを実現した急凍制御を行うことが可能となる。
請求項3に記載の冷蔵庫は請求項2に記載の発明に加えて、急凍制御手段によって急凍制御が自動的に開始される温度帯は、赤外線センサーが検知する温度の内0℃〜−5℃の検知温度を含むものである。
これによって、食品の冷凍保存にとって非常に影響度の大きい、0℃〜−5℃の最大氷結晶生成帯を短時間で通過させることに着目した温度制御を行うことができ、食品の味の劣化や組織破壊の抑制によって品質劣化を抑えることができる。この結果、解凍時に食品からのドリップ量が抑制できるため、食品の鮮度や味を落とすことなく保存することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1による冷蔵庫の正面図である。図2は本発明の実施の形態1による冷蔵庫の側面断面図である。図3は本発明の実施の形態1による冷蔵庫の上段冷凍室の一部拡大側面断面図である。
図1から図3に示すように、冷蔵庫本体101は、前方に開口する金属製(例えば鉄板)の外箱124と硬質樹脂製(例えばABS)の内箱125と、外箱124と内箱125の間に発泡充填されたウレタン断熱材126からなる断熱箱体で、この本体の上部に設けられた冷蔵室102と、冷蔵室の下に設けられた上段冷凍室103と、冷蔵室102の下で上段冷凍室103に並列に設けられた製氷室104と、本体下部に設けられた野菜室106と、並列に設置された上段冷凍室103及び製氷室104と野菜室106の間に設けられた下段冷凍室105で構成されている。上段冷凍室103と製氷室104と下段冷凍室105と野菜室106の前面部は引き出し式の図示しない扉により開閉自由に閉塞されると共に、冷蔵室102の前面は、例えば観音開き式の図示しない扉により開閉自由に閉塞される。
冷蔵室102は冷蔵保存のために凍らない温度を下限に通常1〜5℃で設定されている。野菜室106は冷蔵室102と同等もしくは若干高い温度設定の2℃〜7℃とすることが多い。低温にすれば葉野菜の鮮度を長期間維持することが可能である。上段冷凍室103と下段冷凍室105は冷凍保存のために通常−22から−18℃で設定されているが、冷凍保存状態の向上のために、たとえば−30から−25℃の低温で設定されることもある。
冷蔵室102や野菜室106は庫内をプラス温度で設定されるので、冷蔵温度帯を呼ばれる。また、上段冷凍室103や下段冷凍室105や製氷室104は庫内をマイナス温度で設定されるので、冷凍温度帯を呼ばれる。
冷蔵庫本体101の天面部は、冷蔵庫本体101の背面方向に向かって階段状に凹みを設けて機械室119があり、第一の天面部と第二の天面部で構成されている。この階段状の凹部に配置された圧縮機117と、水分除去を行うドライヤ(図示せず)と、コンデンサ(図示せず)と、放熱用の放熱パイプ(図示せず)と、キャピラリーチューブ118と、冷却器107とを順次環状に接続してなる冷凍サイクルに冷媒を封入し、冷却運転を行う。前記冷媒には近年、環境保護のために可燃性冷媒を用いることが多い。なお、三方弁や切替弁を用いる冷凍サイクルの場合は、それらの機能部品を機械室内に配設することも出来る。
また、冷蔵室102と製氷室104および上段冷凍室103とは第一の断熱仕切り部110で区画されている。
また、製氷室104と上段冷凍室103とは第二の断熱仕切り部111で区画されている。
また、製氷室104および上段冷凍室103と、下段冷凍室105とは第三の断熱仕切り部112で区画されている。
第二の断熱仕切り部111および第三の断熱仕切り部112は、冷蔵庫本体101の発泡後組み立てられる部品であるため、通常断熱材として発泡ポリスチレン126が使われるが、断熱性能や剛性を向上させるために硬質発泡ウレタンを用いてもよく、更には高断熱性の真空断熱材を挿入して、仕切り構造のさらなる薄型化を図ってもよい。
また、ドアフレームの稼動部を確保して第二の断熱仕切り部111および第三の断熱仕切り部112の形状の薄型化や廃止を行うことで、冷却風路を確保でき冷却能力の向上を図ることもできる。また、第二の断熱仕切り部111および第三の断熱仕切り部112の中央部をくりぬき、風路とすることで材料の低減につながる。
また、下段冷凍室105と野菜室106とは第四の仕切り部113で区画されている。
冷蔵庫本体101の背面には冷却室カバー122で覆われた冷却室123が設けられ、冷却室123内には、代表的なものとしてフィンアンドチューブ式の冷気を生成する冷却器107が断熱仕切壁である第二および第三の仕切り部111、112の後方領域を含めて下段冷凍室105の背面に上下方向に縦長に配設されている。また、冷却器107の材質は、アルミや銅が用いられる。
冷却器107の近傍(例えば上部空間)には強制対流方式により冷蔵室102,製氷室104、上段冷凍室103、下段冷凍室105、野菜室106の各貯蔵室に冷却器107で生成した冷気を送風する冷気送風ファン116が配置され、冷却器107の下部空間には冷却時に冷却器107や冷気送風ファン116に付着する霜を除霜する除霜装置としてのガラス管製のラジアントヒータ136が設けられている。除霜装置は特に指定するものではなく、ラジアントヒータ136の他に、冷却器107に密着したパイプヒータを用いても良い。
冷却室カバー122内には、冷気送風ファン116からの冷気を各貯蔵室内へ送風するダクトを備えており、上段冷凍室103と下段冷凍室105へダクトを通じて冷却器107の冷気を直接送風している。
冷気送風ファン116は、内箱125に直接配設されることもあるが、発泡後に組み立てられる第二の仕切り部111に配設し、部品のブロック加工を行うことで製造コストの低減を図ることもできる。
次に赤外線センサー128を取り付けている上段冷凍室103の構成について説明する。
図3に示すように、上段冷凍室103の天井面である第一の断熱仕切り部110には、食品121の温度を検知する非接触センサーである赤外線センサー128が、検知する面である食品載置部の投影面上の隣接貯蔵室がある方向(本実施の形態の場合は下方向)に向かって設置してある。このように赤外線センサー128は、食品載置部と対向する側の貯蔵室壁面に備えられており、この食品載置部は蓄熱機能を有する蓄冷剤142が備えられていることで、食品載置部が蓄熱機能を有しているものである。また、上段冷凍室103の背面上部には冷却室カバー122から庫内へ冷気を吐出する第一の吐出口132と、上段冷凍室103内を循環した冷気が、再び冷却室123に戻るための戻り口(図示せず)が設けてある。なお、赤外線センサー128を断熱仕切り部内に設置することで、第一の吐出口132から吐出される冷気の風の影響を受けにくくできるため、検知精度の向上を図ることができる。さらに、赤外線センサー128先端部を断熱仕切り部の表面よりも内側とすることで貯蔵室内に食品121を大量に入れられた場合や、清掃時でも赤外線センサー128の検知部に異物が付着することが無いため検知の誤動作を招かない。さらに庫内への突出による清掃時の引っかかりがないため過剰な力の加重による部品の欠落や検知方向のズレ等を防止することができる。また庫内に突出していないので庫内容量が減少せず、容量の確保をすることができる利点がある。
なお、赤外線センサー128が検知する貯蔵室内のケース127の食品載置部に、その視野範囲内であることを示す目印137を設けておくと、お客様にとって食品121の置き場がわかりやすく、加えて目印137を赤外線センサー128が検知する視野範囲よりも小さい範囲で設けることで、食品121の収納時には確実に温度検知が行える。特に赤外線センサー128は検知する範囲の中心部が最も赤外線の検知強度が強く検知範囲の端に行くほど弱くなるので、検知精度を高めるためにも中心を基準として目印137をつけると良い。本実施の形態においては、食品載置部が蓄冷剤142で形成しているため、目印137は蓄冷剤142の上面側につけている。
次に、本実施の形態で使用した赤外線センサー128について説明する。
赤外線センサー128は、検知する面の範囲から発せられる赤外線量を先端のサーモパイル129で検出し、電気信号に変換している。サーモパイル129の周囲にはプローブ130があり、さらに基板部分に配置されている基準温度であるサーミスタ131の電圧と比較することによって検知した対象物の温度を算出することで温度検知を行っている。この赤外線センサー128は検知する範囲の円内部において、中心が最も赤外線検知強度が強く、端に行くほど検知強度が弱くなる。そのためサーモパイル129の視野角度をより絞ることで検知物の赤外線量の強度を上げることができ、対象物温度を確実に検出することができるが、視野角度の一部がプローブ130の先端部に重なるため先端部温度の影響を受け誤検知の要因となることにより、本実施の形態ではサーモパイルの視野角を50°としている。よって、前述の目印137はこの赤外線センサーが検知する範囲の円内部の中心に主につけておくとより検知精度を向上させることができる。
本実施の形態に用いた赤外線センサー128は、シリコン基板上に形成された多数の熱電対で構成されたサーモパイル129を用いた。さらにプローブ130部分の材質は熱伝導性に優れたアルミナ粉末を用いた成型物であるが、熱伝導性に優れた材質であれば、例えばマグネシア粉末や窒化アルミニウム粉末などのセラミック粉末を分散させた成型物でも良い。また、赤外線センサー128の検知応答性において樹脂タイプのプローブ130を用いると応答性に遅れが生じるものの、比重が低減できるため重量低減に効果がある。樹脂タイプのプローブ130において厚みを薄くすることで若干の応答性向上を図ることができ、体積低減も行えるため省材料で環境負荷の低減も行うことができる。薄肉化は、熱伝導性に優れた金属製の材質でも同様である。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用について説明する。
例えば冷蔵室102が外気からの熱侵入およびドア開閉などにより、庫内温度が上昇して冷蔵室センサ(図示せず)が圧縮機117の起動温度以上になった場合に、圧縮機117が起動し庫内の冷却が開始される。圧縮機117から吐出された高温高圧の冷媒は、最終的に機械室119に配置されたドライヤ(図示せず)まで到達する間、特にコンデンサー(図示せず)や外箱124に設置される放熱パイプ(図示せず)において、外箱124の外側の空気や庫内のウレタン断熱材126との熱交換により、冷却されて液化する。
次に液化した冷媒はキャピラリーチューブ118で減圧されて、冷却器107に流入し冷却器107周辺の庫内空気と熱交換する。熱交換された冷気は、近傍の冷気送風ファン116により庫内に冷気が送風され庫内を冷却する。この後、冷媒は加熱されガス化して圧縮器117に戻る。庫内が冷却されて冷凍室センサ(図示せず)の温度が停止温度以下になった場合に圧縮機117の運転が停止する。
また、このときはドアが閉しているので赤外線センサー128の検知は上段冷凍室103の天面に取り付けられているサーモパイル129から上段冷凍室内にあるケース127の温度もしくは食品121の温度を検知している。
上記のような運転サイクルを繰り返すことで冷蔵庫は冷却運転を行っている。
次に、食品等の負荷を入れた場合について説明する。
例えば、スーパーマーケット等で肉や魚などの生鮮食品を購入した場合や、家庭でハンバーグなどの食品121を作って冷凍保存する場合などに、上段冷凍室103に食品121を投入し急凍を行う場合には、従来では手動で急凍制御に入れることで、食品121の急凍を行っていた。しかしながら、食品121投入後に手動で急凍制御に入れる動作を行うことは、ユーザーの作業負担が増えてしまうという使い勝手が悪い点が挙げられる。
また、中には急凍制御を終了するまでの時間を食品121の設定温度によって決めることができるものもあるが、任意で決定するため例えば食品121の大きさや厚みによって凍結する早さが違うので設定温度を検知していても食品121が凍結しておらず、特に最大氷結晶生成帯を通過できていない可能性がある。また、設定した設定温度が低い場合には食品121が凍結しているのに冷却運転が終了せずに急凍時の圧縮機117が高回転で運転するという無駄なエネルギーを使用してしまうことがある。さらに、投入した食品121に対する急凍制御終了の温度設定をしている間も食品121の温度は周囲温度の影響によって冷却されており、厚みの薄い食品等では急凍制御を入れるころに最大氷結晶生成帯に突入していることもあり、細胞破壊の抑制が遅れて保鮮性に悪影響を起こす可能性があった。
また、従来技術の中には食品121の潜熱変化から顕熱変化への変化を検知することで凍結が完了して急凍制御を終了するものもあるが、例えば顕熱変化の変化率において、食品121の大きさや厚みによって潜熱変化と顕熱変化の割合が同等の場合がある。食品121の大きさが大きい場合には、顕熱変化での変化率は小さくなり、また、食品121の厚みが薄い場合には顕熱変化での変化率は大きくなる。すなわち食品121の顕熱変化の変化率は一定ではなく変化率によって凍結完了の判断するためには、食品121の大きさを大きいほうに合わせた変化率とせざるを得ない。よって、食品121の大きさが小さい場合には凍結していても冷却運転をすることとなり、余分な冷却エネルギーを使用してしまうこととなる。また冷気送風ファン116の運転状態や、ダンパ140の開閉によって冷蔵庫の冷却負荷状態が異なる場合でも潜熱変化と顕熱変化の変化率に差がない場合がある。例えば、本従来例の場合では、冷蔵室102及び野菜室106を冷却する場合の負荷量と、冷凍室108及び製氷室104と切替室109を冷却する場合の負荷量では異なる。冷蔵室102側の負荷量を冷却する場合では切替室109に投入された食品121の温度変化率は小さくなるし、冷凍室108側の負荷量を冷却する場合では逆に変化率が大きくなる。さらに両室側を冷却する場合には変化率が更に小さくなるので各々に合わせた変化率を導き出すには膨大なデータ量の抽出と複雑な制御仕様が必要となってしまい現実的ではない。
そこで本発明では、赤外線センサー128の検知する上段冷凍室内のケース127内に食品等の負荷から発せられる赤外線量を検知し、赤外線量から算出される温度が一定の温度以上(上限設定温度:T0)である場合に、自動で急凍制御に入り、また、急凍制御設定後に赤外線センサー128が検知する温度が一定の温度以下(下限設定温度:T1)である場合に急凍制御を終了するようにしたものである。
急凍制御の動作としては、食品121が入り赤外線センサー128の検知温度が開始温度であるT0以上を検知すると、冷蔵庫は圧縮機117の回転数を上昇させることで循環する冷媒量を上げ、冷却器107の温度を下げる。更に、冷気送風ファン116の回転数を上昇させることにより、冷却器107で生成された冷気を庫内に循環させる冷却量を増やすことで食品121を早く冷却させる。その後、食品121の温度を継続検知する中で、最大氷結晶生成帯である0℃〜−5℃の通過を確認後、終了温度である下限設定温度T1となると急凍制御を自動で終了し、通常の冷却運転とさせることで食品保存として鮮度に影響する最大氷結晶生成帯を早く通過させ、最大氷結晶生成帯を通過後には通常に冷却していても保鮮性の劣化にはほとんど影響はないので、通常運転としている。本実施の形態では、急凍制御の開始温度すなわち上限温度であるT0は−2.5℃とし、急凍制御の終了温度すなわち下限温度であるT1は−15℃としている。これは、食品の収納形態や食品自身の形態によって状態が異なるためである。
本実施の形態によって、自動で急凍制御に入り冷却能力の向上が自動で行われるので、冷蔵庫の冷却を必要に応じた冷却運転で行うことができる。特に、負荷投入によっての庫内温度の上昇や、急速に凍結させたい負荷への冷却に対して、従来のように圧縮機117を中回転で運転し負荷をゆっくり冷却するよりも、高能力で短時間の冷却とするほうが、実際の冷蔵庫の消費電力量としては運転時間を短縮することができるので、省エネとなる。本実施の形態では、急凍制御中は圧縮機117の回転数を一時的に80Hzとし、冷気送風ファン116の回転数も3000回転/分程度とすることで、第一及び第二の吐出口132、133の冷気は−40℃近くまで低下させることで急速凍結させているが、従来の急凍制御に対し、30分以上もの時間短縮を行っており、省エネ効果としては、1回当たり△23%の省エネ効果を得ることができる。
さらに、本実施の形態では、上段冷凍室103のケース内に蓄冷剤142を取り付けたことによって、冷却器107で生成された約−40℃の冷気による熱伝達での冷凍効果に加え、凍結している蓄冷剤142からの直接の伝熱すなわち熱伝導による冷凍効果も加わるため、最大氷結晶生成帯を通過する時間が更に早くなると共に食品解凍時における食品121からのドリップ量が減らせられるので更に食品保存の向上を図ることができる。
特に蓄冷剤142からの冷却によって食品321が冷却されると共に、ケース127内が蓄冷剤142がない場合よりも低温に保たれるため、食品121を短時間に冷却できるので冷蔵庫の冷却運転時間の低減を図れて省エネになると共に食品321の保鮮性向上を図ることができる。
また、蓄冷剤142を配置していることで、食品121が投入されていないときでもドア開閉時における外気の流入があった場合でも、外気流入の熱負荷を蓄冷剤142が吸熱するため庫内の温度上昇を抑えることができる。
すなわち、本実施の形態の効果を省エネルギーの観点と食品保存の観点とから見ると下記のようになる。
まず省エネルギーの観点から見ると、非接触に検知するセンサーによって食品温度を検知し自動で急凍制御を開始し、終了温度に到達した時点で速やかに通常の冷却動作に移行するため、庫内に投入された食品を速やかに自動で急速冷却の開始を行うとともに、食品載置部は蓄熱機能を有することによって、予め冷凍温度帯に冷却された蓄熱機能を有する食品載置部が食品に接していることで、熱伝導によって直接的に熱を奪い速やかに冷却を行うことができるので、急凍制御を行う場合でも圧縮機や冷気送風ファンの連続運転時間を大幅に短縮することができ、より省エネルギーを実現した急速冷却を行うことが可能となる。
また、食品保存の観点からしても、本発明では急凍制御を行う際の食品載置部が蓄熱機能を有することで、急凍制御を行う冷気の導入による熱伝達と、蓄熱機能を有した食品載置部からの熱伝導の両方を用いて速やかに冷却を行うことができるので、特に冷凍保存では鮮度に大きく影響する0℃〜−5℃の最大氷結晶生成帯の通過時間をより短くすることができ、最大氷結晶生成帯を短時間で通過することで、解凍時に食品からのドリップ量が抑制できるため、食品の鮮度や味を落とすことなく保存することができるので、食品の保存品質を高めることが可能となる。
上記のように、本実施の形態では自動で急凍制御に入り、食品凍結時には自動で急凍制御を解除するので、従来のように早く凍結したい食品121に対して手動で行うという煩わしい動作が不要となるとともに、凍結後の不要な冷却運転による無駄なエネルギーの浪費をなくすことができ、さらに食品載置部を蓄冷剤142で形成していることでさらなる省エネルギーを実現することが可能となる。
また、ユーザーが買い物から帰宅して肉などの生鮮食品を冷凍保存するために食品121を冷蔵庫に収納しているときには、長時間のドア開放の影響で庫内温度は上昇してしまう。その場合、従来では自動で急凍制御に入らないため、低冷却能力で時間をかけて食品121を冷却することとなるが、本発明では赤外線センサー128で検知した温度によって、温度が高ければ自動で急凍制御に入ることとなるので高冷却能力で時間をかけずに速やかに冷却できる。この結果、冷却するための冷却時間を短縮することができることと、短時間での冷却であるので食品自身の温度上昇を抑えるので保鮮劣化を抑制できる。
また、急凍制御中は圧縮機117を高回転で運転したり、冷却器107で生成した冷気を庫内へ送る風量を増加するため冷気送風ファン116の回転数もしくは電圧を上げることで冷却能力を上げているので、従来では一定時間は騒音レベルが上昇していることとなるが、本実施の形態では最大氷結晶生成帯である0℃〜−5℃を中心に急凍制御とするので、従来の急凍制御時間に対して30分以上も時間短縮を可能としている。
なお、本実施の形態では、急凍制御の設定温度として上限及び下限温度を設定しているが、設定温度経過後に一定時間(例えば3分間)の予備検知期間を設けて、食品121投入後の温度挙動を検知することで食品投入とドア開閉のみとの切り分けを行うことが可能である。特に、近年の世界的な材料費高騰や鉱物不足によりドアスイッチ等のドア開閉を検出する部品やハーネス等の部品は高価となっており、また、ドアスイッチの追加により制御の複雑化も懸念される。そのため予備検知期間を設けることで、ドアスイッチ機構を用いる必要が無いので省資源化にも繋がる。
なお、急凍制御中は、例えば前面のドア部分にユーザーに表示する急凍制御中のランプ等を点灯させることで、自動急凍制御による簡便性を明示することができる。
なお、急凍制御中は、最大氷結晶生成帯の温度検知期間を中心に一時的に圧縮機117の回転数を上昇させているが、外気温によって圧縮機117の回転数の上限を決定しておくことで圧縮機117の低圧側の圧力保護を行うことができる。本実施の形態では、例えば外気温が15℃の場合は圧縮機117の最高回転数は69Hzとするように中外気温や低外気温の場合では、従来の圧縮機117の回転数である80Hzよりも低減させている。
また、近年の冷凍サイクルの冷媒としては、地球環境保全の観点から地球温暖化係数が小さい可燃性冷媒であるイソブタンが使用されている。この、炭化水素であるイソブタンは空気と比較して常温、大気圧下で約2倍の比重である(2.04、300Kにおいて)。仮に、圧縮機117の停止時に冷凍システムから可燃性冷媒であるイソブタンが漏洩した場合には、空気よりも重いので、下方に漏洩することになる。特に、冷媒の滞留量が多い冷却器107から漏洩する場合には、漏洩量が多くなる可能性があるが、赤外線センサー128を配置した上段冷凍室103は、冷却器107より上方に設置されているため、漏洩しても上段冷凍室103には漏洩することがない。また、仮に上段冷凍室103に漏洩したとしても、冷媒は空気より重いため貯蔵室下部に滞留する。よって、赤外線センサー128が貯蔵室天面に設置されているため、赤外線センサー128付近が可燃濃度になることは極めて低い。
また、食品121の温度をさらに精度良く検知するために、食品投入されたあとに食品121の面積を検知し、食品121の面積に応じて赤外線センサー128の検知視野角度を調整することで精度の向上を図ることができる。特に食品121の投入後に、周囲と温度差が異なる部分を検知対象として視野角度の調整を行うことができれば、食品面積を検知するよりもコストパフォーマンスが高い検知精度の向上を行うことができる。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫の一部拡大側面断面図である。
なお、背景技術と同一構成については同一符号を示す。
図4において、赤外線センサー228が検知する面すなわち食品載置部の第三の断熱仕切り部212をなくすことで、食品載置部すなわち蓄冷剤242を上側と下側の両側から冷却を行うことができる。これによって、上段冷凍室203に投入した食品221を、下段冷凍室205を冷却する冷気で下段からも冷却することができるため第三の断熱仕切り部212がある場合に加えて格段に冷却スピードを向上することが可能となる。食品221は凍結時に0℃〜−5℃の最大氷結晶生成帯を短時間で通過すると細胞の破壊が少ないことが知られているため、第三の断熱仕切り部212をなくし食品221を上下から冷却することは食品保存にとって非常に効果的である。
さらに、本実施の形態では、上段冷凍室203のケース内に蓄冷剤242を取り付けたことによって、冷却器207で生成された約−40℃の冷気による熱伝達での冷凍効果に加え、凍結している蓄冷剤242からの直接の伝熱すなわち熱伝導による冷凍効果も加わるため、最大氷結晶生成帯を通過する時間が更に早くなると共に食品解凍時における食品221からのドリップ量が減らせられるので更に食品保存の向上を図ることができる。
特に蓄冷剤242からの冷却によって食品221が冷却されると共に、ケース227内が蓄冷剤242がない場合よりも低温に保たれるため、食品221を短時間に冷却できるので冷蔵庫の冷却運転時間の低減を図れて省エネになると共に食品221の保鮮性向上を図ることができる。
また、蓄冷剤242を配置していることで、食品221が投入されていないときでもドア開閉時における外気の流入があった場合でも、外気流入の熱負荷を蓄冷剤242が吸熱するため庫内の温度上昇を抑えることができる。
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3による冷蔵庫の側面断面図である。なお、背景技術と同一構成については同一符号を示す。
図5において、上段冷凍室403と下段冷凍室405を含む冷凍温度帯と、冷蔵室402と野菜室406を含む冷蔵温度帯を各々の蒸発温度の異なる冷凍用冷却器414と冷蔵用冷却器415で冷却したものである。これによって天面に赤外線センサー425を備えた上段冷凍室403の蓄冷剤426を底面に収めたケース427内に投入された食品421は、冷凍温度帯の冷凍用冷却器414の冷凍能力に対する冷却負荷量が低減できる為、冷凍用冷却器414発温度を低下させることができ、第一及び第二の吐出口432、433からの吐出冷気の温度も低下させることができるので食品421を凍結させる能力をあげることができる。これによって食品421の凍結時間も短縮できるので、消費電力量の低減を図ることができる。