<実施例1>
本発明に関する冷蔵庫の実施例1について説明する。図1は第1の実施形態例に係わる冷蔵庫の正面図、図2は図1に示すA−A断面図である。図2中左側が前面(正面)側、右側が背面側である。冷蔵庫1は、貯蔵室として上方から順に、冷蔵室2、製氷室3と上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6を備えている。冷蔵室2及び野菜室6は冷蔵温度帯(0℃以上)の第一の貯蔵室である。冷凍室60は、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5の総称で、冷凍温度帯(0℃以下)の第二の貯蔵室である。本実施の形態例では、冷蔵室2は約4℃、野菜室6は約7℃、冷凍室60は約−20℃になるように制御している。
冷蔵庫1は、冷蔵室2の前面側に、左右に分割された観音開きの冷蔵室扉2a、2bを備えている。また製氷室3と、上段冷凍室4と、下段冷凍室5と、野菜室6の前面側には、それぞれ引き出し式の製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、野菜室扉6aを備えている。以下では、冷蔵室扉2a、2b、製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、野菜室扉6aを、単に扉2a、2b、3a、4a、5a、6aと呼ぶ。
冷蔵庫1の庫内と庫外は、例えばABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン)樹脂製の内箱1aと鋼板製の外箱1bの間に、例えば発泡ウレタンである発泡断熱材10aを充填することにより形成された断熱箱体10と、前述の扉2a、2b、3a、4a、5a、6aによって隔てられている。冷蔵庫1の断熱箱体10の内部には複数の真空断熱材26を実装している。
冷凍室60及び野菜室6には、それぞれ扉3a、4a、5a、6aと一体に引き出される製氷室容器(図示せず)、上段冷凍室容器4b、下段冷凍室容器5b、野菜室容器6bを備えている。また、冷蔵室2には、冷蔵室2内を複数に区画する棚39を設け、また扉2a、2bに複数のポケット32を設けている。
冷蔵庫1の上部には、扉2a、2bを回動可能にするために、冷蔵庫1に固定する扉ヒンジ(図示せず)が設けられており、扉ヒンジは扉ヒンジカバー38で覆われている。冷蔵室2と冷凍室60の間には仕切り壁28を設け、冷凍室60と野菜室6の間には仕切り壁29を設けている。また、製氷室3、上段冷凍室4、及び下段冷凍室5の各貯蔵室の前面側には、扉3a、4a、5aの隙間から冷凍室60内の空気が庫外へ漏れないように、仕切り壁30を設けている。
野菜室6の背面側には、圧縮機24を備える機械室20を設けている。また、冷凍室60の背面側には蒸発器室8を設けている。蒸発器室8の詳細は、図3、4で説明する。蒸発器室8には、冷媒と庫内の空気を熱交換させる蒸発器7と、蒸発器7により冷却された空気を、冷蔵室2、野菜室6、及び冷凍室60の各貯蔵室に送風する庫内ファン9を備えている。また、蒸発器7の下部に、後述する除霜運転時に蒸発器7に付着した霜を解かす加熱手段である除霜ヒータ27と、除霜ヒータ27の加熱により解けて生じた除霜水を受ける樋21を備えている。なお、樋21に流入した除霜水は、排水管22を介して機械室19に配された蒸発皿23に排出される。
冷蔵室2、冷凍室60、冷凍室6の庫内背面側には、それぞれ冷蔵室温度センサ33、冷凍室温度センサ34、野菜室温度センサ35を設け、蒸発器7の上部には蒸発器温度センサ36を設け、これらのセンサにより、冷蔵室2、野菜室6、及び冷凍室60及び蒸発器7の温度を検知している。また、冷蔵庫1には、扉ヒンジカバー38の内部に設けた庫外の温度を検知する外気温度センサ37や、扉2a、2b、3a、4a、5a、6aの開閉状態をそれぞれ検知する扉センサ(図示せず)も設けている。
冷蔵庫1の上部には、制御装置の一部であるCPU、ROMやRAM等のメモリ、インターフェース回路等を搭載した制御基板31を配置している。制御基板31は、冷蔵室温度センサ33、冷凍室温度センサ34、野菜室温度センサ35、蒸発器温度センサ36等と接続され、前述のCPUは、これらの出力値、及び温度設定器(図示せず)の設定と、前述のROMに予め記録されたプログラムを基に、圧縮機24や庫内ファン9、冷蔵室ダンパ50の制御等を行っている。
次に各貯蔵室2、6、60を冷却する際の制御と空気の流れ、及び風路構造を説明する。実施例1の冷蔵庫では、蒸発器7により冷却された空気を送風することで、冷蔵庫内の各貯蔵室である冷蔵室2、野菜室6、及び冷凍室60を冷却する。
蒸発器7により冷却された蒸発器室8の空気は、庫内ファン9によって昇圧され、風路12へと流れる。風路12は、仕切り部材101と仕切り部材102によって形成されている。風路12の空気は、仕切り部材102に形成された吐出口62から冷凍室60に吐出し、冷凍室60を冷却する。冷凍室60を冷却した空気は風路17から蒸発器室8に戻り、再び蒸発器7に冷却される。
また、冷蔵室2及び野菜室6を冷却する場合、冷蔵室ダンパ50を開ける。冷蔵室ダンパ50を開けることで、風路12の空気が、冷蔵室ダンパ50から風路11へと流れる。風路11は、内箱1aと冷蔵室風路構成部材80によって形成されている。風路11の空気は、吐出口61から冷蔵室2に吐出し、冷蔵室2を冷却する。冷蔵室2を冷却した空気は、冷蔵室-野菜室風路(図示せず)から野菜室6へと流れ、野菜室6を冷却する。野菜室6を冷却した空気は、野菜室戻り口64から風路14を介して蒸発器室8に戻り、再び蒸発器7に冷却される。この間、風路12の空気は、吐出口62から冷凍室60にも吐出され、冷凍室60の冷却も同時に行われる。
以上のように、本実施の形態例の冷蔵庫は、冷凍室60を単独で冷却する運転と、冷凍室60、冷蔵室2、及び野菜室6を同時に冷却する運転の、2つの冷却運転によって庫内を冷却する。
図3は、図2に示す蒸発器室8周辺の拡大図である。図4は、図3に示すB−B断面図である。蒸発器室8の背面側の壁面は、例えばアルミ製の防水シート202を表面に設けた、背面壁80により構成されている。また、蒸発器室8の下部の壁面を樋21によって構成し、蒸発器室8の左右(図4中上下)、前面、及び上部の壁面を仕切り部材101によって構成している。すなわち、蒸発器室8は、背面壁80、樋21、及び仕切り部材101により形成されている。背面壁80は、断熱箱体10の一部であり、蒸発器室8側から順に、低熱容量部材201、内箱1a、発泡断熱材10a、真空断熱材26、外箱1bにより構成されている。なお、本実施の形態例では、防水シート202の厚さはL202=0.0001m、低熱容量部材201の厚さはL201=0.01m、内箱1aの厚さはL1a=0.001m、発泡断熱材10aの厚さはL10a=0.018m、真空断熱材26の厚さはL26=0.012m、外箱1bの厚さはL1b=0.0005mとしている。また、本実施の形態例の冷蔵庫1では、背面壁80に低熱容量部材201を設けているが、背面壁80内に内箱1aも構成しているため、内箱1aと外箱1bの間への発泡断熱材10aの充填は従来同様に行うことができる。
蒸発器室8側の壁面を構成する低熱容量部材201は、例えば発泡部材であるポリスチレンフォーム(発泡スチロール)である。ポリスチレンフォームは、発泡時の成形性から5mm以上必要であり、加えて、冷蔵庫組込時の組立性、耐衝撃性を考慮し、本実施の形態例では、低熱容量部材201の厚さL201を10mmとしている。
冷蔵室2、冷凍室60、冷凍室6の庫内を形成する内箱1aは、前述したように、例えばABS樹脂製である。ABS樹脂は密度が約1000kg/m3、比熱が約1.5kJ/(kg・K)で、単位体積当たりの熱容量(比熱と密度の積)は約1500kJ/(m3・K)である。単位体積当たりの熱容量は、後述する、壁面の温度変化に影響を与える。一方、低熱容量部材201に用いたポリスチレンフォームは密度が約40kg/m3、比熱が約1.8kJ/(kg・K)で、単位体積当たりの熱容量は約70kJ/(m3・K)である。
このように、発泡成形したポリスチレンフォーム(低熱容量部材201)は、ABS樹脂(内箱1a)に比べて密度が小さく、単位体積当たりの熱容量が小さい。すなわち、背面壁80の蒸発器室8側の壁面を構成する低熱容量部材201は、内箱1aよりも単位体積あたりの熱容量が小さい低熱容量部となっている。単位体積当たりの熱容量が小さいと、少ない熱量で温度が変化する。
ここで、壁面を構成する部材の単位体積当たりの熱容量が異なる場合の、壁面の温度変化の違いについて示す。図5と図6は、周囲空気の温度変化に対する壁面温度の変化を示す図である。図5は壁面を構成する断熱部材の単位体積当たりの熱容量が小さい場合、図6は単位体積当たりの熱容量が大きい場合の例である。断熱部材の厚さ、熱伝導率、壁面表面の熱伝達率は図5、図6ともに同じとする。
図5(A)、図6(A)に示す各温度は、空気を長時間低温にし、壁面も十分に冷えた状態である。この空気温度Ta(A)、壁面温度Tw(A)が、何れも低温の状態を初期条件とする。図5(B)、図6(B)は、図5(A)、図6(A)から壁面周囲の空気温度を急激に高くした状態である。壁面温度Tw(B)は低温のTw(A)のままであるが、空気温度はTa(B)が高くなり、空気と壁面間に温度差ΔT(B)が生じる。ここまでは図5と図6で同じ状態である。
一方、図5(C)、図6(C)は、それぞれ図5(B)、図6(B)からΔt分後の状態で、定常状態になる前の状態である。図5(B)、図6(B)で示した温度差ΔT(B)により壁面は加熱されるので、Δt分後における図5(C)、図6(C)の壁面温度は、Tw(B)よりも高いTw(C)又はTw(C2)となる。ここで、図5では、断熱部材の単位体積当たりの熱容量が小さく、少ない熱量で温度が変化するので、Δt分間での温度上昇(Tw(C)−Tw(B))が大きい。従って、図5(C)における空気と壁面との温度差ΔT(C)は小さくなる。一方、図6の断熱部材は、単位体積当たりの熱容量が大きく、温度が変化し難い。従って、Δt分後の図6(C)における壁面と空気との温度差ΔT(C2)は、図5(C)のΔT(C)よりも大きい。
以上から、単位体積当たりの熱容量が小さい部材を用いると、壁面温度が上昇しやすいので、短い時間で壁面と空気との温度差が小さい状態になる。従って、蒸発器室8の背面壁80に低熱容量部材201を用いた本実施の形態例では、蒸発器室8内の空気温度が変化しても、蒸発器室8の背面側の壁面表面と空気との温度差を小さくすることができる。これにより得られる効果を以下で説明する。
図7は、図3に示す温度測定点X及びYの除霜運転中の温度タイムチャートの一例である。図3に示すように、温度測定点Xは蒸発器室8の背面側の壁面表面、温度測定点Yは蒸発器室8内の蒸発器7付近の空気中に設けている。図7において、実線で示すTYは温度測定点Yの空気温度、破線で示すTXは、蒸発器室8の背面壁に低熱容量部材201を設けた本実施の形態例における温度測定点Xの壁面温度を示している。また、点線で示すTX2は、蒸発器室8の背面側壁面の単位体積当たり熱容量が大きい場合の温度測定点Xである。例えば、低熱容量部材201を設けず、低熱容量部材201を設けるための内箱1aの凹部(図3参照)をなくし、ABS樹脂製の内箱1aによって蒸発器室8の背面側壁面を構成した場合、温度測定点Xの壁面温度は点線で示すTX2になる。
蒸発器7には、冷蔵室2、野菜室6、及び冷凍室60を冷却している間に霜が生じる。この霜によって、蒸発器7の通風抵抗の増加と熱抵抗の増加が生じ、それに伴い冷却性能が低下するので、定期的にこの霜を解かす除霜運転を行っている。
除霜運転は、圧縮機26をOFF、除霜ヒータ27をONにして行う。除霜運転中は、除霜ヒータ27の発熱により、蒸発器室8内の空気温度TYは上昇する。これにより高温になった空気で、蒸発器7及び蒸発器7に付着した霜を加熱し、除霜する。
この除霜運転における、本実施の形態例における壁面温度TXと、単位体積当たり熱容量が大きい場合の壁面温度TX2の温度変化について考える。まず、除霜運転前の冷却運転について述べる。除霜運転時以外は、蒸発器室8の空気温度TYは例えば−15〜−25℃であり、少ない温度変動で長時間低温に保たれているので、蒸発器室8の空気によって、背面壁80は冷却される。図5(A)と図6(A)を用いて説明したように、長時間低温の場合は、体積当たり熱容量の影響は少なく、壁面温度TX、TX2、何れも空気温度TYと同等の温度となる。
次に、除霜運転中について述べる。除霜ヒータ27の発熱によって、蒸発器室8内の空気温度TYは大きく上昇し、TY1(例えば約−25℃)から、例えば10分後に約0℃のTY2になる。高温になった空気温度TYと、冷却運転中に低温になった壁面温度TX又はTX2との温度差に起因して、蒸発器室8の空気から蒸発器室8の背面壁80に熱移動が生じる。この熱移動によって、壁面温度TX、TX2は上昇して空気温度TYに近づく。ここで、図5、5を用いて説明したように、単位体積当たりの熱容量が小さいと、少ない熱量で温度上昇する。本実施例では、蒸発器室8の壁面を、単位体積当たりの熱容量が小さい低熱容量部材201により構成しているため、壁面温度TXが上昇し易く、空気温度TYに近い温度に変化する。従って、単位体積当たりの熱容量が大きい場合の壁面温度TX2と空気温度TYとの温度差に比べ、壁面温度TXと空気温度TYとの温度差は小さくなる。
蒸発器室8の空気から蒸発器室8の背面壁80への単位時間当たりの熱移動量は、熱伝達率と伝熱面積の積に、空気温度TYと壁面温度TXの温度差を乗じた値となるため、本実施の形態例のように、壁面温度TXと空気温度TYの温度差が小さくなると、蒸発器室8から背面壁80への熱移動量が抑えられる。
なお、蒸発器7と背面壁80が部分的に当接している場合、蒸発器7と背面壁80との温度差に起因して、蒸発器7から直接背面壁80に熱が移動する。また、除霜ヒータ27からのふく射によっても背面壁80は加熱されるが、ふく射の場合も、除霜ヒータ27と背面壁80との温度差に起因して熱が移動する。一方、本実施の形態例では、単位体積当たりの熱容量が大きい場合の壁面温度TX2に比べ、壁面温度TXが高いため、蒸発器7及び除霜ヒータ27と、壁面温度TXとの温度差が小さくなる。すなわち、蒸発器7から背面壁80への熱移動量、及びふく射による除霜ヒータ27から背面壁80への熱移動量も抑制できる。
この背面壁80への熱移動量抑制により、以下の効果が得られる。背面壁80へ移動した熱は、その後の冷却運転で冷却する必要があるため、背面壁80へ移動する熱量を抑えることで、冷却運転で消費する電力量を低減することができる。また、除霜ヒータ27の加熱量をQ27、背面壁80へ移動する熱量をQ80、その他の損失をQotherとし、蒸発器7の加熱に用いる熱量をQ7とすると、Q7=Q27−Q80―Qotherとなる。この式から、蒸発器7の加熱に用いる熱量Q7とその他の損失Qotherを一定と考えると、背面壁80へ移動する熱量Q80を少なくすることで、除霜ヒータ27の加熱量Q27を少なくできることが分かる。従って、背面壁80へ移動する熱量を抑えることで、除霜運転で消費する電力量も低減することができる。すなわち、本実施の形態例のように、背面壁80への熱移動量を抑えることで、冷却運転で消費する電力量及び除霜運転で消費する電力量を低減させ、省エネルギー性能を向上させることができる。
以上、本実施の形態例のように、背面壁80の蒸発器室8側の壁面を、内箱1aよりも密度が小さく、単位体積当たりの熱容量の小さい低熱容量部材201にすることで、背面壁80の蒸発器室8側の壁面を内箱1aによって構成している従来に比べ、除霜運転における蒸発器室8の背面側壁面の加熱量を抑えられ、省エネルギー性能を向上させることができる。
なお、上記の効果は低熱容量部材201がポリスチレンフォームの場合に限られるものではなく、蒸発器室8の背面側であって内箱1aの前面を、内箱1aよりも単位体積当たりの熱容量が小さい低熱容量部とすればよい。低熱容量部材201には、ポリスチレンフォームと同様、発泡により成形された発泡ポリエチレンや発泡ウレタンなどの発泡部材、あるいはグラスウールなどを用いてもよい。これらは、内部に隙間(ガス空間等)が設けられているため、密度は100kg/m3以下と小さく、そのため単位体積当たりの熱容量も100kJ/(m3・K)以下と小さい。
また、真空断熱材の単位体積当たりの熱容量は400kJ/(m3・K)程度と内箱1aよりも小さく、低熱容量部材201に真空断熱材を用いてもよい。この場合、背面壁80の断熱性能を向上させる効果も期待できる(後述の図8の説明参照)。
一方、内箱1aは、内箱1aと外箱1bの間への発泡断熱材10aの充填時に応力がかかるため、その応力に耐える必要があり、樹脂や金属等を用いることが有効である。また、内箱1aは各貯蔵室2、6、60の内壁を構成する部材でもあるため、例えば扉2a、2b、3a、4a、5a、6aの何れかを開け、使用者が直接触れることができる部材であるため、触れても破損し難い樹脂や金属等を用いることが有効である。なお、ABSやポリスチレンなどの樹脂や、金属素材は密度が800kg/m3以上と高く、そのため単位体積当たりの熱容量も1000kJ/(m3・K)以上である。
なお、蒸発器室8の背面壁80の全体に低熱容量部201を設けることが難しい場合、例えば、仕切り部材101を背面壁80にねじ止めして固定する構成で、ねじ止めするために樹脂部、又は金属部が背面壁80に必要な場合、樹脂部、又は金属部は蒸発器7よりも上部に設けるとよい。すなわち、少なくとも、蒸発器7の略背面、及び蒸発器7よりも下部(除霜ヒータ27側)の背面壁80には、低熱容量部材201を設けておくとよい。図3中矢印で示すように、除霜ヒータ27によって加熱された蒸発器室8の空気は、自然対流で上昇し、蒸発器7へと流れる。低温の蒸発器7を通過する間、蒸発器室8の空気は蒸発器7と熱交換して冷却されるため、蒸発器室8の空気を温度が高い順に並べると、蒸発器7の通過前(蒸発器7の下部、除霜ヒータ27側)、通過中、通過後(蒸発器7の上部)となる。蒸発器室8の空気温度が高いほど、空気と背面壁80との温度差が大きく、背面壁80に熱が移動し易いことから、空気温度が低い箇所に比べ、空気温度が高い箇所の熱移動を抑える方が省エネルギー性能向上に効果的である。従って、蒸発器室8の背面壁80全体に対し低熱容量部201を設けられない場合、少なくとも、除霜中に周囲の空気温度が特に高くなる蒸発器7よりも下部、或いは蒸発器7の略背面には、低熱容量部材201を設けておくとよい。以上に加え、本実施の形態例の構成は、冷却運転中の背面壁80の断熱性能、特に外箱1b(背面壁80の外気側の壁面)の結露に対しても配慮している。図8は、冷却運転中の背面壁80の温度勾配である。背面壁80は、蒸発器室8と外気との区画するものであり、背面壁80は庫内を冷却するために低温となっている蒸発器室8により冷却されるため、外気温度Ta(out)に比べ背面壁80の外気側壁面(外箱1bの外表面)温度Tw(out)は低温になる。外気側壁面温度Tw(out)が露点温度を下回ると結露が生じることから、Ta(out)とTw(out)の温度差を抑えることが求められる。
ここで、外気側表面温度Tw(out)は以下により求める。低熱容量部材201、内箱1a、発泡断熱材10a、真空断熱材26、外箱1bのそれぞれの熱伝導率をλ201(=0.04W/(m・K))、λ1a(=0.2W/(m・K))、λ10a(=0.02W/(m・K))、λ26(=0.002W/(m・K))、λ1b(=100W/(m・K))とし、本実施の形態例では、λ201=0.04W/(m・K)、λ1a=0.2W/(m・K)、λ10a=0.02W/(m・K)、λ26=0.002W/(m・K)、λ1b=100W/(m・K)である。低熱容量部材201、内箱1a、発泡断熱材10a、真空断熱材26、外箱1bのそれぞれの厚さは、前述したように、L201、L1a、L10a、L26、L1bとし、本実施の形態例では、L201=0.01m、L1a=0.001m、L10a=0.018m、L26=0.012m、L1b=0.0005mである。また、背面壁80の熱抵抗Rを「R=(L201/λ201)+(L1a/λ1a)+(L10a/λ10a)+(L26/λ26)+(L1b/λ1b)」と定義すると、本実施の形態例では、R=7.2(m2・K)/Wとなる。
蒸発器室8側の熱伝達率をh(in)、外気側の熱伝達率をh(out)、蒸発器室8内の空気温度をTa(in)、外気の空気温度をTa(out)とすると、外気と蒸発器室8の間で生じる単位時間当たりの熱流束qは、「q=(1/[{1/h(in)}+R+{1/h(out)}])×(Ta(in)−Ta(out))」となる。この時、外気温度Ta(out)と外気側壁面温度Tw(out)の差は、「Ta(out)−Tw(out)=q/h(out)=(1/[{1/h(in)}+R+{1/h(out)}])×(Ta(in)−Ta(out))/h(out)」となる。すなわち、熱抵抗Rが大きくなると、熱流束qが小さくなり、Ta(out)−Tw(out)が小さくなるため、壁面温度Tw(out)が高くなり(外気と近い温度になり)、壁面の結露が抑えられる。
これに対し、本実施の形態例の冷蔵庫では、背面壁80に熱伝導率が低い真空断熱材(λ26(=0.002W/(m・K)))を設けて熱抵抗R(=7.2(m2・K)/W))を大きくしている。これにより、壁面温度Tw(out)が高くなり、壁面の結露を抑えることができる。
ここで、例えば、蒸発器室8の熱伝達率h(in)を10W/(m2・K)、外気の熱伝達率h(out)を4W/(m2・K)、蒸発器室8内の平均空気温度Ta(in)を−20℃とする。冷蔵庫が設置される家庭内の環境は、温度32℃以下、湿度85%以下と考え、その範囲で最も温度が高いTa(out)=32℃の場合で考えると、熱抵抗Rが4.3(m2・K)/W)以上であれば、Tw(out)が湿度85%時の露点温度29.2℃を上回る。従って、熱抵抗Rは4.3(m2・K)/W以上が望ましい。
また、IEC 62552−2:2015 Annex Dには、Class SN(Extended temperate)及びClass N(temperate)に属する冷蔵庫は、Ta(out)=25℃で、露点温度19±0.5℃でWater vaper Condention Testを行い、壁面の結露を評価することが記載されている。上記と同様、h(in)=10W/(m2・K)、h(out)=4W/(m2・K)、Ta(in)を−20℃とすると、熱抵抗R=1.7(m2・K)/W以上であれば、Ta(out)=25℃において、Tw(out)が露点温度の19.5℃よりも高い温度となる。すなわち、Class SN及びClass Nの冷蔵庫は、熱抵抗R=1.7(m2・K)/W以上とすることで、Water vaper Condention Test中の壁面の結露を抑えることができる。なお、日本国内の冷蔵庫はClass Nであり、JIS C9801−2:2015の附属書Dには、上記と同等の条件で結露試験を行うことが記載されている。すなわち、熱抵抗R=1.7(m2・K)/W以上とすることで、JIS C9801−2:2015記載の結露試験中の結露が抑えられる。
また、IEC 62552−2:2015 Annex Dには、Class ST(Subtropical)及びClass T(tropical)に属する冷蔵庫は、Ta(out)=32℃、露点温度27±0.5℃でWater vaper Condention Testを行い、壁面の結露を評価することが記載されている。この場合では、上記と同様、h(in)=10W/(m2・K)、h(out)=4W/(m2・K)、Ta(in)を−20℃とすると、熱抵抗R=2.6(m2・K)/W以上にすることで、Ta(out)=32℃において、Tw(out)が露点温度の27.5℃よりも高い温度とすることができ、結露試験中の結露を抑えることができる。
ここで、真空断熱材26を設けた場合は、図8の温度勾配から分かるように、熱抵抗Rにおいて真空断熱材26による熱抵抗(L26/λ26)が支配的になる。例えば、真空断熱材26の熱伝導率λ26を0.002W/(m・K)と考えると、厚みが4mm以上あれば、熱抵抗Rは2.0(m2・K)/W以上となる。従って、厚み4mm以上の真空断熱材26を設けて熱抵抗Rを大きくすることで、Class SN及びClass Nの冷蔵庫のWater vaper Condention Test、及びJIS C9801−2:2015記載の結露試験における、壁面の結露を抑制することができる。また、厚み6mm以上あれば、熱抵抗Rは3.0(m2・K)/W以上となり、Class ST及びClass Tの冷蔵庫も、Water vaper Condention Test中の壁面の結露を抑制することができる。また、厚みが10mm以上あれば、熱抵抗Rは5.0(m2・K)/W以上となるので、温度32℃、湿度85%の環境でも結露を抑えることができる。
なお、圧縮機24から吐出した高温の冷媒が流れる冷媒パイプ(図示せず)を、外箱1bの低熱容量部材201の略背面に配設し、冷媒の放熱により外箱1bを加熱して、外箱1bの温度を上げて結露を抑制してもよい。同様に、外箱1bの低熱容量部材201の略背面に電気ヒータ(図示せず)を設け、電気ヒータの加熱により外箱1bの温度を上げて結露を抑制してもよい。一方、真空断熱材26を設けて熱抵抗Rを高めた場合は、前述の結露の抑制効果に加え、外気から庫内に侵入する熱も抑えられるため、冷却運転時に消費する電力も抑えられ、省エネルギー性能の向上にも有効である。
以上に加え、図3に示したように、背面壁80(低熱容量部材201)の蒸発器室8側の表面には、防水シート202を貼付している。なお、本実施の形態例の防水シート202は、前述したように、厚さL202=0.0001m(=0.1mm)のアルミ製としている。例えば蒸発器の除霜時に除霜水が生じるが、低熱容量部材201内部に水が浸入すると単位体積当たりの熱容量が増加してしまうので、低熱容量部材201の前面に防水シート202を設けることで低熱容量部材201内部への水の浸入を抑えている。なお、厚さ0.5mm以下、本実施の形態例では厚さ0.1mmと薄いシートを用いることで、低熱容量部材201と蒸発器室8間での熱移動に対する防水シート202の影響を抑えている。
<実施例2>
以下、本発明の実施例2を説明する。本実施例の構成は、以下の点を除いて実施例1と同様にできる。実施例2は、冷凍室60への送風を制御する冷凍室ダンパ51を設け、冷蔵室2及び野菜室60と、冷凍室60を、それぞれ独立に冷却することができる冷蔵庫の例である。
図9は第2の実施形態例に係わる冷蔵庫の側面断面図である。図10は、図9に示す蒸発器室8周辺の拡大図である。何れの断面も図2、図3と同様である。実施例2の冷蔵庫1も、実施例1と同様に、断熱箱体10の一部である蒸発器室8の背面壁80に、低熱容量部である低熱容量部材201を設けている。具体的には、背面壁80は、蒸発器室8側から順に、低熱容量部材201、内箱1a、発泡断熱材10a、真空断熱材26、外箱1bにより構成されている。
ここで、実施例2における、冷蔵室2、野菜室6、及び冷凍室60を冷却する際の制御と空気の流れを説明する。実施例2の冷蔵庫では、冷凍室60を冷却する場合、冷凍室ダンパ51を開ける。庫内ファン9により昇圧された風路12の空気は、冷凍室ダンパ51から風路13へと流れ、仕切り部材102に形成された吐出口62から冷凍室60に吐出し、冷凍室60を冷却する。冷凍室60を冷却した空気は風路17から蒸発器室8に戻り、再び蒸発器7に冷却される。冷蔵室2及び野菜室6を冷却する場合の制御及び冷気の流れは実施例1と同様である。すなわち、冷蔵室ダンパ50を開け、蒸発器7により冷却された蒸発器室8の空気が、庫内ファン9により昇圧され、風路12、冷蔵室ダンパ50、風路11、吐出口61、冷蔵室2、冷蔵室-野菜室風路(図示せず)、野菜室6、野菜室戻り口64から風路14を介して蒸発器室8に戻る。一方、冷凍室ダンパ51があるため、冷蔵室2及び野菜室6を冷却する間、冷凍室ダンパ51を閉じ、冷凍室60の冷却を抑えることができる。
以上のように、実施例2の冷蔵庫は、冷蔵温度帯の貯蔵室である冷蔵室2及び野菜室6と、冷凍温度帯の貯蔵室である冷凍室60の何れの温度帯の貯蔵室も、蒸発器7で冷却された空気により冷却するが、冷蔵室2及び野菜室6と、冷凍室60とを、それぞれ独立して冷却することができる。また、蒸発器7を備える蒸発器室8は、冷蔵温度帯の空気と、冷凍温度帯の空気の何れも循環する。
図11は、第2の実施形態例の冷蔵庫の冷却運転におけるタイムチャートの一例である。冷蔵室2と野菜室6は風路が直列に配置されて連動して冷却されるため、野菜室6の制御は省略する。本冷蔵庫の冷却運転は、圧縮機24が駆動状態で冷蔵室2を冷却する冷蔵運転、冷凍室60を冷却する冷凍運転と、圧縮機24が停止状態で冷蔵室2を冷却する送風運転からなる運転パターンを基本とする。
圧縮機24が送風運転中に冷凍室温度TF1まで上昇すると、圧縮機24がONになり、冷蔵運転を実施する。冷蔵運転では、冷蔵室ダンパ50を開け、庫内ファン9を運転することで、低温の蒸発器7を通過した空気により冷蔵室2を冷却し、冷蔵室温度を温度TRまで低下させる。冷蔵室温度が温度TRに到達すると、次に冷蔵室ダンパ50を閉じて冷凍室ダンパ51を開ける冷凍運転を実施する。冷凍室温度がTF2に到達すると冷凍運転は終了し、圧縮機24を停止させる。送風運転中は、冷蔵運転と同様、冷蔵室ダンパ50を開け、庫内ファン9を運転することで、蒸発器7に成長した霜で冷却された空気を用いて冷蔵室2を冷却する。これらの運転により、冷蔵室2、冷凍室6を冷却して所定の温度に維持している。なお、本実施の形態例では送風運転と冷蔵運転を合せて冷蔵冷却運転と呼ぶ。
以上が、実施例2の構成、及び冷却運転の制御である。実施例1と同様、背面壁80の蒸発器室8側の壁面を低熱容量部材201により構成しているため、除霜運転中の背面壁80への熱移動量を抑えることができる。すなわち、実施例1と同様に、冷却運転で消費する電力量及び除霜運転で消費する電力量を低減させ、省エネルギー性能を向上させることができる。加えて、本実施の形態例の冷蔵庫のように、冷蔵室2及び野菜室60と、冷凍室60を、それぞれ独立に冷却することができる冷蔵庫の場合、背面壁80の蒸発器室8側壁面を低熱容量部材201にすることで、冷却運転の効率向上による省エネルギー性能向上効果も得られる。
図12は、図10に示す温度測定点X及びYの冷却運転中の温度タイムチャートの一例である。図10に示すように、温度測定点Xは蒸発器室8の背面側の壁面表面、温度測定点Yは蒸発器室8内の蒸発器7付近の空気中である。図7同様、図12において、実線で示すTYは温度測定点Yの空気温度、破線で示すTXは、本実施の形態例における温度測定点Xの壁面温度、点線で示すTX2は、蒸発器室8の背面側壁面の単位体積当たり熱容量が大きい場合の温度測定点Xの壁面温度である。
図11で示したように、本実施の形態例の冷蔵庫1は、冷蔵室ダンパ50と冷凍室ダンパ51を設けることで、冷凍室60の空気が循環する冷凍運転と、冷蔵室2の空気が循環する冷蔵冷却運転(送風運転と冷蔵運転)を備え、この2つの運転を適宜切り換えて冷蔵室2と冷凍室60とを個別に冷却する。それぞれの運転で異なる温度帯の空気が流れるので、蒸発器室8内の空気温度は大きく変化する。例えば、蒸発器室8の空気温度TYは、冷凍運転中に冷却され、冷凍運転終了時にTY1(例えば約−25℃)となる。一方、冷蔵冷却運転中は冷蔵温度帯の冷蔵室2の空気が流入するので、空気温度TYは上昇し、例えば送風運転にして5分後に、TY1より高温のTY2(例えば約−10℃)になる。この温度変動により、温度測定点Yに隣接する温度測定点Xの壁面温度TX及びTX2は、冷凍運転中には温度測定点Y周辺の低温の空気により冷却され、次の冷蔵冷却運転では温度測定点Y周辺の比較的高温の空気により加熱される。すなわち、冷蔵冷却運転中に、蒸発器室8の空気から背面壁80へ熱が移動する。
この背面壁80への熱移動によって、蒸発器室8の空気が持つ熱量が低下する、すなわち蒸発器室8の空気が冷却されるので、その移動した熱量分、冷蔵冷却運転中に蒸発器7で冷却される熱量は減る。一方、背面壁80に移動した熱量は次の冷凍運転で冷却される。従って、蒸発器7において冷凍運転と冷蔵冷却運転で冷却される熱量の合計は一定であるが、冷凍運転で冷却する熱量の割合は大きくなる。
一方、蒸発器7で冷却する熱量が同じであっても、冷凍運転で冷却する熱量の割合を小さくすることで高い省エネルギー性能が得られる。これは、図11に示すように、冷蔵運転の方が冷凍運転に比べ蒸発器7の温度が高く、冷却効率(消費電力量に対する冷却する熱量の割合)が高いためである。すなわち、効率の低い冷凍運転で冷却する熱量の割合を小さくし、効率の高い冷蔵運転で冷却する熱量の割合を大きくすることで、平均的な冷却効率を高めることができる。以上から、背面壁80への熱移動を抑制し、冷凍運転で冷却する熱量の増加を抑えることで、省エネルギー性能が向上することが分かる。
これに対し、本実施の形態例では、背面壁80の蒸発器室8側の壁面を構成する部材に、低熱容量部材201を用いている。図5、図6を用いて説明したように、単位体積当たりの熱容量が小さいと、少ない熱量で温度が変化する。従って、本実施の形態例では、背面壁80の壁面温度TXが変化し易く、壁面温度TXは、蒸発器室8の空気温度TYが大きく変化しても、常に空気温度TYに近い温度を維持する。すなわち、冷蔵冷却運転中において、単位体積当たりの熱容量が大きい場合の壁面温度TX2と空気温度TYとの温度差に比べ、本実施の形態例の壁面温度TXと空気温度TYとの温度差は小さくなる。蒸発器室8の空気と背面壁80間の熱移動は、蒸発器室8の空気と、背面壁80の蒸発器室8側壁面との温度差に起因することから、空気と壁面との温度差が小さい本実施の形態例では、冷却運転中の蒸発器室8から背面壁80への熱移動も小さくなる。
従って、低熱容量部材201を設け、背面壁80の蒸発器室8側の壁面を構成する部材を、密度が小さく、単位体積当たりの熱容量の小さい低熱容量部材201にすることで、蒸発器室8から背面壁80への熱移動を抑え、冷凍運転で冷却する熱量を抑えることができる。これにより、冷凍運転に比べて効率の高い冷蔵運転で冷却する熱量の割合が大きくなり、高い省エネルギー性能を得ることができる。
<実施例3>
以下、本発明の実施例3を説明する。本実施例の構成は、以下の点を除いて実施例1と同様にできる。実施例3は、発泡断熱材10aを用いて低熱容量部を構成した冷蔵庫の例である。
図13は第3の実施形態例に係わる冷蔵庫の蒸発器室8周辺の拡大図(側面断面図)である。断面は図2、図3と同様である。実施例3の冷蔵庫は、蒸発器室8の背面側であって発泡断熱材10aの前面には、内箱1aが位置せず、発泡断熱材10aによって蒸発器室8の背面壁80の壁面を構成している。本実施の形態例も、実施例1と同様、発泡断熱材10aは発泡ウレタンとしている。発泡ウレタンは、密度が約30kg/m3、比熱が約1.3kJ/(kg・K)で、単位体積当たりの熱容量は約40kJ/(m3・K)であり、実施例1の低熱容量部材201のポリスチレンフォームと同様、発泡部材で、内箱1aに比べ単位体積当たりの熱容量が小さい。従って、実施例1と同様、背面壁80の蒸発器室8側の壁面が単位体積当たりの熱容量の小さい低熱容量部となり、除霜運転中の背面壁80への熱移動量を抑えることができる。すなわち、実施例1と同様に、冷却運転で消費する電力量及び除霜運転で消費する電力量を低減させ、省エネルギー性能を向上させることができる。加えて、低熱容量部材201を新たに設けることなく、低熱容量部を構成し、上記の効果を得られるため、実施例1に比べ材料費を少なく抑えることができる。
以上に加え、図3で示した実施例1と同様、本実施の形態例も防水シート202を設けることで、発泡断熱材10a内部への水の浸入を抑え、発泡断熱材10a内部に水が浸入することによる単位体積当たりの熱容量の増加を抑えている。さらに、本実施の形態例のように、発泡断熱材10aが発泡ウレタンであっても、この発泡断熱材10aの前面に防水シート202を設け、発泡断熱材10a内部への水の浸入を抑えることで、発泡ウレタンの加水分解を抑えることができる。
なお、本構成は、例えば、図13中破線及びZで示す箇所にも内箱1aを設けた状態で、内箱1aと外箱1bの間に発泡断熱材10aを充填した後、図13中Zで示す箇所の内箱1aを除去することで形成することができる。また、例えば、内箱1aの代わりに、図13中破線及びZで示す箇所に取り外し可能な部材を予め取り付けておき、発泡断熱材10a充填後、前述の部材を取り外すことでも本構成を形成することもできる。
<実施例4>
以下、本発明の実施例4を説明する。本実施例の構成は、以下の点を除いて実施例1と同様にできる。実施例4は、実施例1の低熱容量部材201の代わりに、空気断熱層203によって低熱容量部を構成した冷蔵庫の例である。
図14は第4の実施形態例に係わる冷蔵庫の蒸発器室8周辺の拡大図(側面断面図)である。断面は図2、図3と同様である。実施例4の冷蔵庫は、防水シート202と内箱1aの間に空気断熱層203を低熱容量部として設け、この空気断熱層203により背面壁80の蒸発器室8側壁面を構成している。なお、本実施の形態例では、空気断熱層203の厚さは8mmとしている。
空気は密度が約1kg/m3、比熱が約1.0kJ/(kg・K)で、単位体積当たりの熱容量は約1kJ/(m3・K)であり、実施例1の低熱容量部材201のポリスチレンフォームや、実施例3の発泡ポリウレタン以上に単位体積当たりの熱容量が小さい。従って、実施例1、2、及び3と同等以上に、背面壁80の蒸発器室8側の壁面における単位体積当たりの熱容量を小さくする効果、すなわち省エネルギー性能の向上効果が得られる。
加えて、低熱容量部材201を新たに設けることなく、低熱容量部を構成し、上記の効果を得られるため、実施例1に比べ材料費を少なく抑えることができる。なお、空気断熱層203は厚さが増加すると、内部に対流が発生し、熱伝導率が増加することから、本実施の形態例では内部の対流を抑えるため、空気断熱層203の厚さは10mm以下がよく、本実施の形態例では8mmとしている。
以上が、本実施の形態例を示す実施例1から4である。なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
例えば、冷蔵温度帯の貯蔵室として、本実施の形態例では冷蔵室2と野菜室6を備えているが、冷蔵温度帯の貯蔵室は何れか1つでも構わない。また、冷蔵室2と野菜室6の風路を並列にして、何れか一方のみに送風できるように構成しても構わない。
また、本実施の形態例では、冷蔵室2及び野菜室6と、冷凍室60を何れも同じ蒸発器7により冷却する構成としたが、複数の蒸発器でそれぞれ別々に冷却する構成でもよい。すなわち、蒸発器室が複数あってもよく、各蒸発器室において、蒸発器室の温度が上昇される運転(除霜運転及び実施例2の冷蔵冷却運転等)があり、その蒸発器室の背面壁に低熱容量部を設ければ、同様の効果が得られる。