JP6149951B2 - 鉄筋用鋼材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄筋コンクリート構造物に用いられる剪断補強筋等の素材として使用される鉄筋用鋼材およびその製造方法に関する。
鉄筋コンクリート構造物を補強してその崩壊を防ぐために、該構造物には剪断補強筋が使用されるのが一般的である。この剪断補強筋を使用した鉄筋コンクリート構造物では、鉄筋コンクリート構造物が剪断変形する際に、剪断補強筋が伸びて塑性変形することにより鉄筋コンクリート構造物の変形エネルギーが剪断補強筋に吸収され、鉄筋コンクリート構造物の崩壊が防がれる。しかし、従前の剪断補強筋は、延性および靱性の点からは必ずしも十分なものではない。剪断補強筋は、棒鋼に曲げ加工を施して円形や角形等に成形されて製造されるものであるため、素材として使用される鋼材が延性および靱性に優れていれば曲げ加工が容易となり、加工性の面で大きなメリットとなる。
また、近年は、剪断補強筋を溶接して施工することによって鉄筋コンクリート構造物を補強する、施工性のよい溶接閉鎖型剪断補強筋の需要が高まっている。この溶接閉鎖型剪断補強筋では、溶接によって鋼材の強度および延性が低下しないことが重要であり、また、溶接部の継手伸びも重要な特性となる。通常、剪断補強筋の溶接では、フラッシュバット溶接やアプセットバット溶接と呼ばれる高能力かつ高生産性の抵抗溶接が適用される。
ここで、フラッシュバット溶接とは、2本の棒鋼の間に大電圧を印加した状態で、該棒鋼の端面同士を繰り返し接触させ、その際に発生するアークを利用して棒鋼端部に溶融部を形成し、この溶融部を最終的にアプセット(据え込み変形)により排出し、2本の棒鋼の端部に接合部を形成する溶接法である。また、アプセットバット溶接とは、完全に突き合わせられた2本の棒鋼の端面間に大電圧を加えて、抵抗発熱により端部をアプセットし、2本の棒鋼の端部に接合部を形成する溶接法である。
このような剪断補強筋に用いる鉄筋用鋼材として、圧延後に焼入れや焼き戻し等の熱処理を施さなくとも強度と延性に優れ、溶接しても母材と同等レベルの引張強さや延性を有する非調質鉄筋用鋼材が知られている(例えば、特許文献1〜5)。
特許第3930064号公報 特許第2973909号公報 特許第4715166号公報 特許第5205815号公報 特許第5205820号公報
しかし、特許文献1に記載されている非調質鉄筋用鋼材は、Moの添加を必須とするため、コストが高いという問題がある。また、特許文献1、2に記載されている高強度鉄筋用非調質鋼材は、いずれもTiを含有している。Tiは、固溶窒素を固定して歪時効を低減する機能を有する元素であり、Tiの添加により溶接後の延性を向上させることができる。しかし、該Tiは、圧延後にはTiNを形成しており、TiNは鋭角で硬く、比較的大きい介在物となるため、鋼材の曲げ特性が低下する場合がある。
さらに、特許文献1、2に記載された鋼材においては、鋼材の靱性について考慮されておらず、曲げ加工時に破断するおそれもある。加えて、これらの鋼材では、熱間圧延後の線材冷却履歴等のばらつきに起因した特性のばらつきが大きく、優れた特性を安定的に得ることが困難である。
また、特許文献3〜5に記載された非調質鉄筋用鋼材は、Tiの添加量を0.04%未満に抑えており、靱性劣化の問題を解決できる優れた鋼材であるが、Ti添加量を少なくした場合、靭性は向上するものの、圧延時の熱履歴、特に圧延前の加熱時間によっては、固溶Bが不足して素材の強度が不足する可能性があった。
従って、本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、0.2%耐力(降伏応力):785MPa以上の高強度鉄筋用鋼材であって、高価な合金元素を含有せず、延性のばらつきが小さく、靱性に優れ、しかも、溶接後においても母材と同等レベルの引張強さや延性を有する鉄筋用鋼材を提供することを目的とする。また、本発明は、鉄筋用鋼材の製造方法を提供することを目的とする。
発明者らは、強度および延性に優れ、しかも溶接しても母材と同等レベルの引張強さや延性を有する鉄筋用鋼材を製造するために種々の実験・研究を行った。その際に、焼入れ焼戻しを行わない状態(圧延まま)において、0.2%耐力:785MPa以上、引張強さ:930MPa以上、母材伸び(El):8%以上、180°曲げ加工で亀裂発生無し、溶接後伸び:5%以上という特性を有する、強度並びに延性を兼ね備えた鉄筋用鋼材を製造することを目標とした。
本発明者らは、検討の結果、鉄筋用鋼材の特性に関して次の知見を得た。
(1)圧延後の曲げ加工性を確保するためには、鋼材の金属組織に占めるベイナイトの体積比率を85%以上とすることが重要である。
(2)伸び特性を確保するためには、残留オーステナイトを少量存在させ、延性を高めることが重要である。
(3)溶接後の延性低下を防止するためには、接合部付近の溶接熱影響部(HAZ)の軟化抑制が効果的である。
(4)前記HAZの軟化抑制には、一般的に用いられるTiやV炭窒化物等による析出強化に加えて、MnSによる微細ベイナイト組織の析出が有効である。
(5)Tiを適量添加すると圧延材および溶接後の強度・延性が、圧延前加熱条件の時間変動によらず、安定して得られるが、TiNにより靭性が低下し曲げ加工性が劣ることが考えられる。しかし、残留オーステナイトを少量存在させる事によって安定して高い靭性を確保し、曲げ性を改善できる。
(6)残留オーステナイトは圧延後の冷却時に析出するが、鋼にTiを適量含有させるとともに、製造条件を制御する事によって、所望の量の残留オーステナイトを安定して得ることができる。
以上の知見に基づき、上記の目標達成が可能であることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は、次のとおりである。
<1> 質量%で、
C :0.15〜0.30%、
Si:0.05〜1.00%、
Mn:0.20〜2.50%、
P :0.030%以下、
S :0.008〜0.035%、
sol.Al:0.010〜0.100%、
Nb:0.001〜0.300%、
Ti:0.004〜0.080%、
N :0.0080%以下、および
B :0.0005〜0.0100%
を含み、残部Feおよび不可避不純物からなり、かつ下記(1)および(2)式を満足する成分組成を有し、
体積比率で85%以上のベイナイト、2〜9%の残留オーステナイト、および残部のマルテンサイトからなる金属組織を有し、
0.2%耐力:785MPa以上、伸び:8%以上、絞り:30%以上、および溶接後伸び:5%以上の機械的特性を有する鉄筋用鋼材。

B(%)≧{N(%)/14−Ti(%)/48+S(%)/72}×11+0.0005 ・・・ (1)
S(%)≧(Ti(%)/2×3)×0.27+0.001 ・・・ (2)
<2> 前記成分組成が、質量%で、
Cr:2.0%以下、
Mo:1.0%以下、
V :1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
Cu:1.0%以下、および
Sb:0.0100%以下
の中から選ばれる1種又は2種以上をさらに含有する、前記<1>に記載の鉄筋用鋼材。
<3> 前記<1>または<2>に記載の鉄筋用鋼材の製造方法であって、
前記成分組成を有する鋼素材を、800℃以上1350℃以下の温度域に加熱した後に、終了温度が800℃以上の熱間加工を施し、その後500℃以上800℃以下の温度範囲における冷却速度が3℃/s以上10℃/s以下の条件で冷却を行い、さらに100℃以上450℃以下の温度域で10分以上保持する、鉄筋用鋼材の製造方法。
本発明によれば、0.2%耐力:785MPa以上の高強度鉄筋用鋼材であって、延性のばらつきが小さく、靱性に優れ、しかも、溶接後においても母材と同等レベルの引張強さや延性を有する鉄筋用鋼材を得ることができる。また、本発明の鉄筋用鋼材は性能面で優れるのみならず、高価な合金元素を含有しないため、製造コストの点でも有利である。
棒鋼の溶接要領と溶接後の断面硬さプロファイルを示す図である。
次に、本発明を実施する方法について具体的に説明する。
本発明においては、鉄筋用鋼材が体積比率で85%以上のベイナイト、2〜9%の残留オーステナイト、および残部のマルテンサイトからなる金属組織を有し、0.2%耐力:785MPa以上、伸び:8%以上、絞り:30%以上、および溶接後伸び:5%以上の機械的特性を有することが重要である。以下、本発明における鋼材の金属組織と、機械的特性の限定理由について説明する。なお、金属組織に関する「%」表示は、特に断らない限り体積分率を意味するものとする。
[金属組織]
・ ベイナイト:85%以上
本発明においては、鋼材の強度と延性のバランスを確保するために、金属組織に占めるベイナイトの体積分率を85%以上とする。85%以上のベイナイトを含有することにより、高い強度が得られるとともに、後述する30%以上の絞りを実現すること可能となる。ベイナイトの体積分率は、87%以上とすることが好ましく、89%以上とすることがより好ましく、91%以上とすることがさらに好ましい。一方、ベイナイトの体積分率の上限は特に限定されないが、後述するように2〜9%の残留オーステナイトが存在するため、98%未満となる。
・ 残留オーステナイト:2〜9%
本発明においては、鋼材の伸び特性を確保するために、金属組織に占める残留オーステナイトの体積分率を2〜9%とする。残留オーステナイトは、歪誘起変態すなわち材料が変形する場合に歪を受けた部分がマルテンサイト相に変態することで、変形部が硬質化し、歪の集中を防いで延性を向上させる機能を有する組織である。そのため、残留オーステナイトの体積分率を2%以上とすることにより、鉄筋用鋼材の延性を高め、伸び特性を確保することができる。一方、残留オーステナイト相はC濃度が高く硬質なため、過剰に存在するとかえって伸び特性が低下する。そのため、残留オーステナイトの体積分率は9%以下とする。残留オーステナイトの体積分率は、7%以下とすることが好ましい。
・ マルテンサイト
上記ベイナイトおよび残留オーステナイト以外の残部の組織はマルテンサイトとする。
残部が軟質なフェライト組織になると硬さのばらつきが大きくなってしまい、十分な強度が得られない。
[機械的特性]
本発明においては、鉄筋用鋼材が0.2%耐力:785MPa以上、伸び:8%以上、絞り:30%以上、および溶接後伸び:5%以上の機械的特性を有することが重要である。0.2%耐力、伸び、および絞りは、いずれも引張試験によって測定される特性値であり、0.2%耐力は鋼材の強度を、伸びと絞りは鋼材の延性を、それぞれ反映している。鉄筋コンクリート構造体の剪断補強筋として使用される鉄筋用鋼材には、該鉄筋コンクリート構造体の剪断変形を防止するために、初期変形を防ぐことのできる高い耐力(降伏応力)と、塑性変形して変形のエネルギーを吸収するための優れた伸びとを備えていることが求められる。また、施工時の曲げ加工による破断を防止するためには、絞り値に代表される優れた局部延性が必要となる。そのため、本発明においては鉄筋用鋼材の機械的特性を上記範囲内とする。なお、溶接伸びを測定するに先立って行う溶接は、アップセット溶接又はフラッシュバット溶接が用いられるが、これら溶接の際の溶接条件は特に規定しない。これらの溶接を行なうに際して突合せ部分が発熱して溶融様態になれば良く、接合部分が剥離するなどの溶接不具合が無ければ、溶接後の伸びは溶接条件に依存するものでなく、材料の特性に依存するからである。
[鋼材の成分組成]
本発明においては、さらに、鉄筋用鋼材が所定の成分組成を有することが重要である。そこで、次に、本発明において鋼材の成分組成を上記のように限定する理由を説明する。なお、成分組成に関する「%」表示は、特に断らない限り「質量%」を意味するものとする。
C:0.15〜0.30%
Cは、Tiなどの元素と析出物を形成することによって、鋼の強度を高める作用を有する元素である。本発明で所期する強度を確保するためは、C含有量を0.15%以上とする必要がある。しかし、0.30%を超えて添加すると溶接性や延性が劣化するため、本発明ではC含有量を0.30%以下とする。
Si:0.05〜1.00%
Siは、鋼の脱酸及び強化のために添加される元素である。前記効果を得るために、本発明ではSi含有量を0.05%以上とする。一方、Si含有量が1.00%を超えると継手曲げ性が低下するため、本発明ではSi含有量を1.00%以下とする。
Mn:0.20〜2.50%
Mnは、鋼の強度や焼入れ性を向上させる作用を有する元素である。所期の焼入れ性と強度を得るためには、Mn含有量を0.20%以上とする必要がある。一方、Mn含有量が2.50%を超えると延性や溶接性が低下するため、本発明ではMn含有量を2.50%以下とする。
P:0.030%以下
Pは、不可避不純物元素であり、鋼材を脆化し、延性および低温靭性を劣化させる性質を有している。そのため、本発明ではP含有量を0.030%以下とする。なお、下限については限定されないが、工業的には0%超である。また、過度の低P化は精錬時間の増加やコストの上昇を招くため、0.001%以上とすることが好ましい。
S:0.008〜0.035%
Sは、鋼中でMnと結合してMnSを晶出する。MnSは、溶接の際の加熱によって再溶融し、微細に分散析出する。この微細なMnSによりベイナイトが微細化されるため、溶接による延性の低下が抑制される。前記効果を得るために、本発明ではS含有量を0.008%以上とする。一方、Sが過剰に存在すると、粗大な硫化物を形成し、延性や低温靭性を低下させるが、S含有量が0.035%以下であれば、このような特性の低下は問題とならない。したがって、本発明ではS含有量を0.035%以下とする。
sol.Al:0.010〜0.100%
Alは、脱酸剤として添加される元素である。sol.Al(酸可溶性アルミニウム)が0.01%未満では十分な脱酸効果を得ることができないため、本発明ではsol.Alを0.010%以上とする。しかし、0.100%を超えて添加すると継手曲げ性が低下するため、sol.Alを0.100%以下とする。
Nb:0.001〜0.300%
Nbは、鋼中に微細な炭窒化物を形成し、母材の強度を上昇させるとともに、溶接熱影響部の軟化抑制に有効な元素である。析出するNbの炭窒化物はTiNよりもさらに微細であるため、靭性への悪影響も小さい。しかし、0.001%未満の添加では十分な効果が得られず、一方0.300%を超えると、Nb炭窒化物といえども溶接熱影響部の靭性劣化が著しくなる。したがって、Nb含有量は0.001〜0.300%とする。
Ti:0.004〜0.080%
Tiは、Nを固定して窒化物(TiN)を生成し、溶接時の炭窒化物析出により強度低下を抑制する作用を有している。また、圧延材の残留オーステナイト量をコントロールする作用もある。前記作用を得るには0.004%以上の添加が必要である。しかし、Tiが過剰に存在すると靭性劣化により曲げ折損が起こる。そのため、Tiの含有量は0.004〜0.080%とする。より好ましくは、0.004〜0.050%とする。
N:0.0080%以下
Nは、不可避的不純物であり、0.0080%以上含有された場合、溶接時にTiN、VN等の粗大な析出物が形成され、溶接継手の引張強さ及び曲げ性が低下する。そのため、N含有量は0.0080%以下とする。なお、下限については限定されないが、工業的には0%超である。また、過度の低N化は精錬時間の増加やコストの上昇を招くため、0.0005%以上とすることが好ましい。
B:0.0005〜0.0100%
Bは、焼入れ性を向上させる元素であり、添加することによって母材の強度を向上させることができる。前記効果を得るために、B含有量を0.0005%以上とする。一方、0.0100%を超えて添加しても焼入れ性の向上効果が飽和する一方で、溶接性が劣化するため、B含有量は0.0100%以下とする。
Bによる焼入れ性向上効果を得るためには、Bが鋼中に固溶している必要がある。鋼中に固溶Nが存在する場合には鋼中BはBNの形成に消費されて、BNとなった場合には、焼入れ性の向上に寄与しない。そのため、Bを添加する場合には、BNの形成に消費される以上の量を添加する必要があり、その必要B量と鋼中のN量との関係は、次式(1)で表すことができる。
B(%)≧{N(%)/14−Ti(%)/48+S(%)/72}×11+0.0005 ・・・ (1)
また、溶接後にSを微細MnSとして析出させ、溶接熱影響部のベイナイト組織を微細化するためには、Mnと結合できるSが一定量以上存在する必要がある。その必要S量と鋼中のTi量との関係は、次式(2)で表すことができる。
S(%)≧(Ti(%)/2×3)×0.27+0.001 ・・・ (2)
尚、上記(1)、(2)式の各元素記号は質量%での各元素の含有量を表す。
さらに、以下の成分は、鋼材の強度−延性のバランス向上に有効であることから、必要に応じて1種または2種以上を選択して添加することができる。
Cr:2.0%以下
Crは、焼入れ性を高める作用を有する元素である。十分な強度向上効果を得るためには、Cr添加量を0.1%以上とすることが好ましい。しかし、2.0%を超えて添加すると、焼入れ性が過大となり延性や溶接性が低下するため、Crの添加量は2.0%以下とする。
Mo:1.0%以下
Moは、焼入れ性を高めるとともに、組織を改善して延性を向上させる作用を有する元素である。前記効果を得るためには、Mo添加量を0.01%以上とすることが好ましい。しかし、1.0%を超えて添加するとコストが上昇し、また溶接性が劣化するため、Mo添加量は1.0%以下とする。
V:1.0%以下
Vは、鋼材の焼入れ性を向上させる作用を有する元素である。また、Vは、炭窒化物を形成することにより母材の強度を向上させるとともに、溶接熱影響部の軟化を抑制する作用も有している。前記効果を得るために、V添加量は0.01%以上とすることが好ましい。一方、添加量が1.0%を超えると溶接熱影響部の靭性が著しく低下するため、V添加量は1.0%以下とする。
Ni:1.0%以下
Niは、焼入れ性を向上させる元素である。強度の確保が必要な場合に添加することができるが、高価である上に過剰に添加すれば溶接性を劣化させるため、Ni添加量は1.0%以下とする。焼入れ性向上の観点から、添加する場合は0.01%以上添加する事が好ましい。
Cu:1.0%以下
Cuは、焼入れ性を高めることにより強度を向上させる元素である。強度を確保する必要のある場合に添加することができるが、添加量が0.01%以上では効果が発現するので0.01%以上とする事が好ましい。また、1.0%を超えると熱間加工性や溶接性が低下する。そのため、Cu添加量は1.0%以下とする。
Sb:0.0100%以下
Sbは、熱間圧延前の加熱時のγ粒径粗大化を抑制するとともに、加熱時の表層脱炭を抑制する作用を有しており、熱間圧延時の加熱温度を高くする場合に添加することができる。しかし、0.0100%を超えて添加すると効果が飽和するとともに熱間加工性および低温靭性の低下をもたらすため、Sb添加量は0.0100%以下とする。なお、上記の作用を有効に発現させるためには、Sbは0.0010%以上で添加する事が好ましい。
上記以外の残部は、Fe及び上記以外の不可避不純物からなる。
[製造方法]
次に、本発明の鉄筋用鋼材を製造する方法について説明する。
本発明の鉄筋用鋼材は、上記所定の成分組成を有する鋼素材を加熱して熱間加工した後、所定の条件で冷却および保持することによって得ることができる。その際には、熱間加工の前の加熱温度を800℃以上1350℃以下、熱間加工の終了温度を800℃以上、熱間加工後の冷却における500℃以上800℃以下の温度範囲における冷却速度を3℃/s以上10℃/s以下とするとともに、前記熱処理条件においては100℃以上450℃以下の温度域で10分以上保持する条件とすることが重要である。なお、前記熱間加工としては、熱間圧延を始めとする任意の熱間加工方法を使用することができる。
以下、上記製造条件の限定理由について説明する。
まず、鋼素材の加熱温度を800℃以上1350℃以下としたのは、加熱温度が800℃未満になると、加熱後に引き続いて行われる圧延において加工性が悪化することに加え、鋼のミクロ組織中に伸張したフェライトが残留して伸びが低下するからである。また、同様の理由により、熱間加工の終了温度を800℃以上とする。一方、1350℃を超える温度域で加熱すると、オーステナイト粒の粗大化にともなって、延性および靭性が低下し、また、燃料原単位の上昇にもつながる。そのため、加熱温度は1350℃以下とする。
熱間圧延後の冷却においては、500℃以上800℃以下の温度範囲における冷却速度を3℃/s以上10℃/s以下とする。前記温度範囲における冷却速度が3℃/s未満であると組織中にフェライトが増加し、一方、前記温度範囲における冷却速度が10℃/sを超えると、島状マルテンサイトの体積分率が増加し、いずれの場合も強度と伸びのバランスが悪化するからである。
その後、100℃以上450℃以下の温度域で10分以上保持する。この間に、鋼のベイナイト組織への変態が進行する。これにより、鋼中のミクロ組織レベルの硬さバラツキが低減し、絞り値の向上とともにバラツキの低減が可能となる。保持時間が10分未満であると、前述の変態が十分進行せず、目的とする特性、特に絞りのバラツキ低下を安定的に達成することが困難となる。よって、本発明では、100℃以上450℃以下の温度域で10分以上保持する。
上記以外の製造工程は特に限定されず、通常の鉄筋製造方法に従うことができる。
次に、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例は、本発明の好適な一例を示すものであり、本発明は、該実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示す成分組成の鋼(鋼No.1〜60)を溶製後に鋳造してビレットとし、熱間圧延を行って異形棒鋼を製造した。熱間圧延前の加熱温度、圧延終了温度、500〜800℃の温度範囲における冷却速度、および100〜450℃での保持時間は、それぞれ表2に示すとおりとした。また、異形棒鋼の寸法と形状は、JIS G3112に呼び名D13として定められたとおりとした。
製造した各異形棒鋼No.1〜60について、顕微鏡観察により金属組織を調べた。残留オーステナイト(γ)量についてはX線を用いて測定した。また、母材の機械的特性を調べるためにJIS2号試験片を用いて引張試験を行い、0.2%耐力、引張強さ(TS)、伸び(El)、および絞りを測定した。引張試験は、No.1〜60の条件それぞれについて20本の試験片を用意して行い、測定された値の平均を採用した。さらに、曲げ半径を有効直径(12.7mm)の1.5倍とする180°曲げ加工試験を各10本の試験片について行い、試験時の破断発生率を求めた。金属組織および機械的特性の測定結果は、表2に示したとおりである。また、絞りに関しては、20本の試験片における測定値のばらつき(3σ)を合わせて示した。
次に、図1に示すように、それぞれ節10a、20aを有する2本の異形棒鋼10および20をアプセットバット溶接して溶接継手1を作製し、これを引張試験に供して溶接後伸び(溶接部を含む棒鋼そのものを引張試験した際の伸びの値)を測定するとともに、破断位置を確認した。破断位置は、溶接部近傍について0.5mmピッチでビッカース硬さを測定し、図1に示したように、長さ方向の硬さプロファイルを求め、母材硬さより硬さが大きい部分を溶接部、母材硬さより硬さが小さい部分を軟化部として、母材、溶接部または軟化部のいずれにあるかを調査した。溶接後伸びおよび破断位置の測定結果は、表2に示したとおりであった。
鋼材の成分組成と製造条件の両者が本発明の条件を満たすNo.1〜34は、いずれも0.2%耐力:785MPa以上、伸び:8%以上、絞り:30%以上、および溶接後の伸び:5%以上という優れた特性を有しており、0.2%耐力と引張強さにも優れるとともに、180°曲げ加工試験における破断も発生しなかった。
それに対し、鋼材の成分組成が本発明の条件を満たさないNo.35〜60は、圧延条件は本発明の条件を満たしているものの、0.2%耐力、引張強さ、伸び、絞り、溶接後伸びのいずれか、あるいは複数が劣っているか、曲げ試験で破断が発生しており、機械的特性に劣っていた。
Figure 0006149951
Figure 0006149951
Figure 0006149951
Figure 0006149951
(実施例2)
素材として表1の鋼No.30を用い、表3に示すように製造条件を変えて異形棒鋼を製造した。その結果、加熱温度、圧延終了温度、500〜800℃における冷却速度、および100℃〜450℃間の保持時間のいずれかが本発明の条件を満たしていないA、B、C、D、G、H、I、J、K、Lにおいては、金属組織が本発明の条件を満たさないとともに、機械的特性が劣っていた。それに対し本発明範囲の製造条件を満たすE、Fは、金属組織が本発明の条件を満たすとともに、機械的特性が優れていた。
Figure 0006149951
(実施例3)
素材として、本発明の条件を満たす鋼No.31、34(表1−1)、および本発明の条件を満たさない比較鋼No.60(表1−2)を用い、実施例1と同様の手順で異形棒鋼を製造した。製造条件は表4に示す通り、いずれも本発明の条件を満たしているが、圧延前加熱温度での保持時間を1.5〜3時間の間で変化させた。
得られた異形棒鋼の組織や機械的特性等を実施例1と同様の方法で評価した。結果は表4に示した通りである。成分組成が本発明の条件を満たす鋼No.31、No.34を使用した発明例M〜Tにおいては、保持時間によらず良好な結果が得られている。一方、Ti含有量が本発明範囲よりも低い鋼No.60を用いた比較例U〜Xでは、保持時間が2時間までは良好な結果が得られているものの、3時間以上となった場合に金属組織が本発明範囲外となり、機械的性質のうち0.2%耐力が本発明範囲外となった。
Figure 0006149951
1 溶接継手
10、20 異形棒鋼
10a、20a 節

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C :0.15〜0.30%、
    Si:0.05〜1.00%、
    Mn:0.20〜2.50%、
    P :0.030%以下、
    S :0.008〜0.035%、
    sol.Al:0.010〜0.100%、
    Nb:0.001〜0.300%、
    Ti:0.004〜0.080%、
    N :0.0080%以下、および
    B :0.0005〜0.0100%
    を含み、残部Feおよび不可避不純物からなり、かつ下記(1)および(2)式を満足する成分組成を有し、
    体積比率で85%以上のベイナイト、2〜9%の残留オーステナイト、および残部のマルテンサイトからなる金属組織を有し、
    0.2%耐力:785MPa以上、伸び:8%以上、絞り:30%以上、および溶接後伸び:5%以上の機械的特性を有する鉄筋用鋼材。

    B(%)≧{N(%)/14−Ti(%)/48+S(%)/72}×11+0.0005 ・・・ (1)
    S(%)≧(Ti(%)/2×3)×0.27+0.001 ・・・ (2)
  2. 前記成分組成が、質量%で、
    Cr:2.0%以下、
    Mo:1.0%以下、
    V :1.0%以下、
    Ni:1.0%以下、
    Cu:1.0%以下、および
    Sb:0.0100%以下
    の中から選ばれる1種又は2種以上をさらに含有する、請求項1に記載の鉄筋用鋼材。
  3. 請求項1または2に記載の鉄筋用鋼材の製造方法であって、
    前記成分組成を有する鋼素材を、800℃以上1350℃以下の温度域に加熱した後に、終了温度が800℃以上の熱間加工を施し、その後500℃以上800℃以下の温度範囲における冷却速度が3℃/s以上10℃/s以下の条件で冷却を行い、さらに100℃以上450℃以下の温度域で10分以上保持する熱処理を施す、鉄筋用鋼材の製造方法。
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