JP6149482B2 - 水無し平版の製造方法、印刷物の製造方法、および水無し平版 - Google Patents
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Description
そこで、最近では、水あり平版に代替して湿し水のかわりにインクを反発するシリコーンゴム層等を有する水無し平版についての研究が進められている(例えば特許文献1〜3参照)。
例えば特許文献1には、支持体表面にコロナ放電処理を施し、支持体上にレーザー光を熱に変換する光熱変換剤を含有する光熱変換層とシリコーンゴム層とを順に積層した後、シリコーンゴム層にレーザーを照射してシリコーンゴム層の露光部の光熱変換層との密着性を低下させる露光工程と、密着性の低下したシリコーンゴム層を除去してインキ受容性の領域を形成する現像工程とを行う方法が提案されている。この現像工程では、現像液が用いられ、例えば現像液を含む現像液パッドで版面をこする、または現像液を版面に注いだ後に水中にて現像ブラシでこする等の方法が行われる。
本発明の水無し平版の製造方法は、紫外線を吸収する紫外線吸収層、および、紫外線を透過し、フッ素を含有し、上記紫外線吸収層よりも撥液性が高い撥液層を積層する積層工程と、上記撥液層側から上記紫外線吸収層に紫外線レーザーをパターン状に照射して、レーザーアブレーションにより上記撥液層をパターン状に除去し、上記紫外線吸収層を露出させる撥液層パターニング工程とを有することを特徴とするものである。
また、親液化処理がUV−オゾン処理や真空紫外線処理等の紫外線を利用する方法である場合には、撥液層が紫外線を透過するため、撥液層表面は親液化されず、露出した紫外線吸収層表面のみを親液化することができる。
本発明における積層工程は、紫外線を吸収する紫外線吸収層、および、紫外線を透過し、フッ素を含有し、上記紫外線吸収層よりも撥液性が高い撥液層を積層する工程である。
以下、紫外線吸収層および撥液層に分けて説明する。
本発明における紫外線吸収層は、紫外線を吸収するものである。紫外線はエネルギーが大きく、レーザーアブレーションに有利である。
なお、上記の透過率は、使用する紫外線の波長の透過率を指す。具体的に、紫外線の透過率は、波長190nm〜380nmの光を用い、Lambert-Beerの法則に基いて試料の透過分光スペクトルを測定し、算出する。
ここで、液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を、協和界面科学(株)製の接触角計 PCA−1を用いて、マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後に測定し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。また、この測定に際して、種々の表面張力を有する液体としては、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いた。
親液性材料としては、上記の紫外線吸収層表面の液体との接触角を満たすものであれば特に限定されるものではなく、公知の有機材料の中から適宜選択して用いることができる。親水性材料の例としては、ポリビニルアルコール類や尿素樹脂類が挙げられる。
また、親液化処理が可能な材料としては、親液化処理後において上記の紫外線吸収層表面の液体との接触角を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、セルローストリアセテート、ポリスチレン、オルガノポリシロキサン等の高分子材料を挙げることができる。
本発明における撥液層は、紫外線を透過し、フッ素を含有し、上記紫外線吸収層よりも撥液性が高いものである。
なお、紫外線の透過率の定義および紫外線の透過率の測定方法については、上記紫外線吸収層の項に記載したものと同様である。
プラズマの照射方法としては、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射し、撥液層表面に撥液性を付与することができる方法であれば特に限定されるものではなく、減圧下でプラズマ照射してもよく、大気圧下でプラズマ照射してもよい。大気圧プラズマはコストや製造効率等の面で有利である。
撥液層表面に撥液化処理を施す際には、撥液層表面の液体との接触角が所定の範囲内になるように撥液化処理を行うことが好ましい。
撥液層表面に導入されたフッ素の存在は、X線光電子分光分析装置による分析において、撥液層表面より検出される全元素中のフッ素元素の割合を測定することにより確認することができる。
撥液化処理が可能な材料としては、撥液化処理後において後述の撥液層表面の液体との接触角を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、オルガノポリシロキサン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の高分子材料が挙げられる。
撥液層表面の液体との接触角は、露出した紫外線吸収層表面の液体との接触角よりも大きければよいが、具体的には表面張力70mN/mの液体との接触角が90°以上であることが好ましく、中でも95°以上、特に100°以上であることが好ましい。撥液層表面の濡れ性が上記範囲であることにより、撥液層表面と露出した紫外線吸収層表面との濡れ性の相違を利用して高精細な印刷が可能になるからである。
なお、液体との接触角の測定方法については、上記紫外線吸収層の項に記載した方法と同様である。
本発明においては、基板上に紫外線吸収層および撥液層が形成されていてもよい。
基板は、紫外線吸収層および撥液層を支持することができるものであればよく、例えば、ガラス、樹脂フィルム、セラミック、金属からなるもの等を挙げることができる。また、本発明における基板は、弾性を有していてもよい。基板が弾性を有することにより、本発明により得られる水無し平版表面に被転写基板を密着させてインクを被転写基板に転写する際に、水無し平版表面に均一に圧力を加えることができ、また、水無し平版と被転写体との密着度を上げることができるため、インクの転写性を向上させ、高精細な印刷が可能になる。このような基板としては、例えばエラストマー、ゴム等の材料を用いることができる。
また、紫外線吸収層が基板を兼ねていてもよい。
本発明においては、紫外線吸収層と撥液層との間にプライマー層が形成されていることが好ましい。本発明において用いられるプライマー層は、紫外線吸収層と撥液層との間に形成され、上記紫外線吸収層と上記撥液層との密着性を向上させる機能を有するものである。紫外線吸収層と撥液層との間の密着性を向上させることにより、本発明により得られた水無し平版を被転写基板に密着させて機能性インクを転写する際に、紫外線吸収層からの撥液層の剥離を防止することができ、水無し平版の耐久性を向上させることができる。
本発明における撥液層パターニング工程は、撥液層側から紫外線吸収層に紫外線レーザーをパターン状に照射して、レーザーアブレーションにより撥液層をパターン状に除去し、紫外線吸収層を露出させる工程である。
また、撥液層のパターン寸法としては特に限定されるものではないが、本発明においてはインクを受容する親液部の微細化が可能である。具体的には、撥液層の開口部の幅が2μm程度であれば形成可能である。
本発明においては、上記撥液層パターニング工程後に、露出した紫外線吸収層表面に親液化処理を行う親液化処理工程をさらに有していてもよい。
UV−オゾン処理は、撥液層および紫外線吸収層の全面に施してもよく、マスクを介して露出した紫外線吸収層表面のみに施してもよいが、撥液層および紫外線吸収層の全面に施すことが好ましい。上述のように、撥液層が紫外線を透過するので、撥液層および紫外線吸収層の全面にUV−オゾン処理を施した場合でも、露出した紫外線吸収層表面のみを親液化することができる。
プラズマ処理は、撥液層および紫外線吸収層の全面に施してもよく、マスクを介して露出した紫外線吸収層表面のみに施してもよいが、マスクを介して露出した紫外線吸収層表面のみに施すことが好ましい。撥液層表面の撥液性を保持することができるからである。
本発明により得られる水無し平版の形状としては、本発明の水無し平版の製造方法により製造できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、図1(d)および図2(e)に示すように板状であってもよく、図3に示すようにロール状であってもよい。なお、図3において説明していない符号については図1と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
本発明の印刷物の製造方法は、紫外線を吸収する紫外線吸収層、および、紫外線を透過し、フッ素を含有し、上記紫外線吸収層よりも撥液性が高い撥液層を積層する積層工程、および上記撥液層側から上記紫外線吸収層に紫外線レーザーをパターン状に照射して、レーザーアブレーションにより上記撥液層をパターン状に除去し、上記紫外線吸収層を露出させる撥液層パターニング工程を有する水無し平版形成工程と、上記水無し平版の上記紫外線吸収層の露出面に機能性インクを付与し、上記機能性インクを被転写基板に転写する転写工程とを有することを特徴とするものである。
図4(a)〜(g)は、本発明の印刷物の製造方法の一例を示す工程図である。なお、図4(a)〜(d)は上記の図1(a)〜(d)と同様であるので省略する。次に、図4(e)に例示するように、水無し平版1上に図示しないがコーターヘッドを用いて機能性インク11を塗布する。撥液層4表面は紫外線吸収層3表面よりも撥液性が高いため、紫外線吸収層3表面のみに機能性インク11が付着される。次いで、図4(f)〜(g)に例示するように、機能性インク11が付着した水無し平版1表面に被転写基板12を密着させた後に、水無し平版1から被転写基板12を剥離して被転写基板12に機能性インク11を転写し所望のパターンを印刷する。このように、図4(a)〜(d)に例示する水無し平版形成工程後に、図4(e)〜(g)に例示する転写工程を行う。
本発明における水無し平版形成工程は、紫外線を吸収する紫外線吸収層、および、紫外線を透過し、フッ素を含有し、上記紫外線吸収層よりも撥液性が高い撥液層を積層する積層工程、および上記撥液層側から上記紫外線吸収層に紫外線レーザーをパターン状に照射して、レーザーアブレーションにより上記撥液層をパターン状に除去し、上記紫外線吸収層を露出させる撥液層パターニング工程を有するものである。
なお、水無し平版の形成工程については、上記「A.水無し平版の製造方法」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
本発明における転写工程は、上記水無し平版の上記紫外線吸収層の露出面に機能性インクを付着させ、上記機能性インクを被転写基板に転写する工程である。
本発明の水無し平版は、紫外線を吸収する紫外線吸収層と、上記紫外線吸収層上にパターン状に形成され、紫外線を透過し、フッ素を含有し、上記紫外線吸収層よりも撥液性が高い撥液層とを有し、上記撥液層の開口部では上記紫外線吸収層が表面に凹部を有することを特徴とするものである。
図1(d)は本発明の水無し平版の一例を示す概略断面図である。図1(d)に例示する水無し平版1は、基板2と、基板2上に形成され、紫外線を吸収し、表面にパターン状の凹部10を有する紫外線吸収層3と、紫外線吸収層3上にパターン状に形成され、紫外線を透過し、紫外線吸収層3よりも撥液性が高い撥液層4とを有している。撥液層4の開口部では、紫外線吸収層3が表面に凹部10を有している。
本発明における紫外線吸収層は、紫外線を吸収し、撥液層の開口部において表面に凹部を有するものである。
ここで、凹部の深さとは、撥液層が形成されている領域の紫外線吸収層表面から、撥液層が形成されていない領域の紫外線吸収層表面までの深さをいう。例えば図6に示すように、撥液層4が形成されている領域の紫外線吸収層3の表面から、撥液層4が形成されていない領域の紫外線吸収層3の表面までの深さdを、凹部10の深さとする。
本発明の水無し平版の用途としては、例えば、トランジスタやダイオード等の半導体素子における電極、半導体層、ゲート絶縁層および層間絶縁層の形成、TFT基板における画素電極の形成、太陽電池における背面電極の形成、有機EL素子における背面電極の形成、不揮発性メモリの電極およびポリマー層の形成、圧力センサーの電極およびポリマー層の形成、配線基板における配線の形成、カラーフィルタにおける着色層および遮光部の形成、バイオチップの作製等が挙げることができる。特に、本発明の水無し平版は、パターンの微細化が要求される電子デバイスの製造に好適に用いることができる。
(親液部および撥液部の形成)
まず、帝人社製のポリカーボネートフィルム上に、紫外線吸収層形成用塗工液として和光純薬製のスチレンポリマー 198−12805の5wt%トルエン溶液を、Mikasa製のスピンコーター MS−A200で塗布し、乾燥することで厚さ1μmの紫外線吸収層を形成した。この紫外線吸収層表面の純水の接触角を協和界面科学社製の接触角計 PCA−1で測定した結果は80°であった。また、紫外線吸収層の波長248nmの透過率は40%であった。
次いで、紫外線吸収層表面に、撥液層形成用塗工液として旭硝子社製 サイトップCTX−809APをスピンコーターで塗布し、乾燥することで厚さ20nmの撥液層を形成した。この撥液層表面の純水の接触角を協和界面科学社製の接触角計 PCA−1で測定した結果は110°であった。また、撥液層の波長190nm〜380nmの透過率はほぼ一定であり、95%であった。
(親液部および撥液部の形成)
実施例1で得られた親液部および撥液部において、TAKEDEN製のUV装置を用いて撥液層側からUV−オゾン処理を行った。UV−オゾン処理後の紫外線吸収層表面の純水の接触角を協和界面科学社製の接触角計 PCA−1で測定したところ20°となり、露出された紫外線吸収層のみで濡れ性が向上した。これにより、露出した紫外線吸収層表面と撥液層表面とで接触角の差が90°となる親液部および撥液部を形成した。
まず、実施例1と同様にして、帝人社製のポリカーボネートフィルム上に紫外線吸収層を形成した。
次に、紫外線吸収層表面にTamarack製の波長248nmのエキシマレーザーを120mW/cm2の出力で照射し、紫外線吸収層の最表層をアブレーションすることでパターニングした。これにより、紫外線吸収層表面に凹凸パターンを形成した。
このパターニングによる最小線幅は2μmであることが確認された。しかしながら、凹凸パターンの凹部および凸部の純水との接触角はいずれも80°であり、親液部および撥液部は得られなかった。比較例1から、紫外線吸収層上に撥液層を設ける効果を確認できた。
まず、厚さ0.7mmの日本電気硝子製のガラス基板 OA10の表面に、旭硝子社製のサイトップCTX−809APをスピンコーターで塗布し、乾燥することで厚さ20nmの撥液層を形成した。この撥液層表面の純水の接触角を協和界面科学社製の接触角計 PCA−1で測定した結果は110°であった。また、撥液層の波長190nm〜380nmの透過率はほぼ一定であり、95%であった。
次に、撥液層表面にTamarack製の波長248nmのエキシマレーザーを120mW/cm2の出力で照射したが、実施例1および比較例1のようなアブレーションは起こらなかった。撥液層は波長248nmの紫外線の吸収が10%未満と非常に弱く、またガラス基板のアブレーションには出力が不足するためである。比較例2より、撥液層の下地層としてアブレーションを起こしやすい層を導入する効果が確認された。
2 … 基板
3 … 紫外線吸収層
4 … 撥液層
10… 凹部
11… 機能性インク
12… 被転写基板
L … 紫外線レーザー
Claims (4)
- 紫外線を吸収する紫外線吸収層、および、紫外線を透過し、フッ素を含有し、前記紫外線吸収層よりも撥液性が高い撥液層を積層する積層工程と、
前記撥液層側から前記紫外線吸収層に紫外線レーザーをパターン状に照射して、レーザーアブレーションにより前記撥液層をパターン状に除去し、前記紫外線吸収層を露出させる撥液層パターニング工程と
を有することを特徴とする水無し平版の製造方法。 - 前記撥液層パターニング工程後に、露出した前記紫外線吸収層表面に親液化処理を行う親液化処理工程をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の水無し平版の製造方法。
- 紫外線を吸収する紫外線吸収層、および、紫外線を透過し、フッ素を含有し、前記紫外線吸収層よりも撥液性が高い撥液層を積層する積層工程、および前記撥液層側から前記紫外線吸収層に紫外線レーザーをパターン状に照射して、レーザーアブレーションにより前記撥液層をパターン状に除去し、前記紫外線吸収層を露出させる撥液層パターニング工程を有する水無し平版形成工程と、
前記水無し平版の前記紫外線吸収層の露出面に機能性インクを付与し、前記機能性インクを被転写基板に転写する転写工程と
を有することを特徴とする印刷物の製造方法。 - 紫外線を吸収する紫外線吸収層と、
前記紫外線吸収層上にパターン状に形成され、紫外線を透過し、フッ素を含有し、前記紫外線吸収層よりも撥液性が高い撥液層と
を有し、
前記撥液層の開口部では前記紫外線吸収層が表面に凹部を有し、
前記撥液層の厚みは、1nm〜300nmの範囲内であることを特徴とする水無し平版。
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