JP6148995B2 - 減圧高温浸炭処理用鍛造部品及びその製造方法 - Google Patents

減圧高温浸炭処理用鍛造部品及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば1050℃超え〜1100℃程度の浸炭温度で実施する減圧高温浸炭処理に好適な鍛造部品及びその製造する方法に関する。
例えば、自動車、建設車両、建設機器等には、様々な鍛造部品が使用されている。これらの鍛造部品には、耐摩耗性と高靱性を確保するために浸炭処理が施されることが多い。一方、従来の浸炭処理は、非常に長時間を要する処理である。そのため、処理コスト低減の観点から、短時間化できる技術について種々研究がなされてきた。その中でも、浸炭温度を従来よりも高温化する減圧高温浸炭処理が、処理時間短縮に効果的であることがわかっている。
しかしながら、従来よりも高い浸炭温度での浸炭処理は、処理時間の短縮には効果的であるが、品質的に問題が生じる場合がある。すなわち、減圧高温浸炭処理を施した鍛造部品においては、浸炭処理時にオーステナイト結晶粒が粗大化し、焼入れ後における強度低下や歪みによる形状悪化等が生じやすいという問題がある。これらの問題を解決しようとする技術として、種々の提案がなされている(例えば、特許文献1〜4)。
特開平10−121128号公報 特開2001−303174号公報 特開2003−27135号公報 特開2005−139523号公報
特許文献1の技術は、Nb量とN量を規制し、浸炭処理前の安定化処理によりNb炭窒化物を粗く大きく凝集させ、高温浸炭でも部分的にしか溶けない炭窒化物粒子を生成するというものである。特許文献2の技術は、鋼を1150℃以上の温度で加熱して熱間鍛造を行い、熱間鍛造の最終加工を900〜1100℃の温度範囲で行い、その後800〜500℃の温度範囲を1℃/秒以下の冷却速度で徐冷するというものである。
特許文献3の技術は、鋼を1150℃以上に加熱後、1000℃以上で熱間加工し、500℃までを25℃/分以上の速度で冷却した後、900〜1000℃の温度に再加熱し、30分以上加熱保持後500℃までを25℃/分以下の速度で冷却するというものである。特許文献4の技術は、鋼材を1200℃以上の温度にて30分以上加熱保持した後、1100℃以上の温度で仕上圧延し、圧延後500℃までの温度範囲を25℃/分以上の速度で冷却して鍛造用母材を製造し、その後特定の温度で鍛造すると共に特定の熱処理を行うというものである。
しかしながら、これらの従来技術は、実際には、1050℃以下の浸炭温度で高温浸炭する部材の製造にはある程度効果があるものの、例えば1050℃超え〜1100℃程度の1050℃を超える浸炭温度での減圧高温浸炭処理を施す場合には、十分な効果が得られない。特に、大気圧よりも減圧された雰囲気中で行う減圧浸炭処理は処理時間短縮効果が通常のガス浸炭に比べて大きいものの、異常粒成長はより起きやすいという問題がある。すなわち、上記従来技術で製造した部材は、1050℃を超える浸炭温度で処理時間短縮効果の大きい減圧浸炭処理を行った場合には、少なくとも、結晶粒粗大化を十分に抑制することが困難である。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、従来よりも大幅に浸炭処理時間を短縮可能とするため、1050℃を超える浸炭温度での減圧高温浸炭処理を施しても結晶粒粗大化を抑制することができる鍛造部品及びその製造方法を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、1050℃を超える浸炭温度で減圧高温浸炭処理される鍛造部品を製造する方法であって、
質量比にて、C:0.10〜0.30%、Si:0.03〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Mn:0.30〜1.50%、Cr:0.30〜3.00%、Al:0.030〜0.100%、N:0.0150〜0.0250%、Nb:0.08〜0.12%、Mo:0〜0.80%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鍛造用母材を準備し、
該鍛造用母材を1300℃以上に加熱した後冷却し、
その後、上記鍛造用母材を加熱し、1000〜1230℃の熱間鍛造温度で熱間鍛造して鍛造部品を作製し、
その後、上記鍛造部品を620〜1000℃の温度に30分以上保持して炭窒化物の析出を促す析出熱処理を行うことを特徴とする減圧高温浸炭処理用鍛造部品の製造方法にある。
本発明の他の態様は、1050℃を超える浸炭温度で減圧高温浸炭処理される鍛造部品であって、
質量比にて、C:0.10〜0.30%、Si:0.03〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Mn:0.30〜1.50%、Cr:0.30〜3.00%、Al:0.030〜0.100%、N:0.0150〜0.0250%、Nb:0.08〜0.12%、Mo:0〜0.80%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
金属組織中の円相当径20nm以上の炭窒化物の析出個数が20個/μm2以上であることを特徴とする減圧高温浸炭処理用鍛造部品にある。
上記製造方法においては、上記特定の化学成分を有する鍛造用母材を、熱間鍛造の前に、1300℃以上の高温に加熱する。この高温加熱によって、鋼中に存在していた炭窒化物、つまり、AlNおよびNb炭窒化物等を母相中に固溶させる作用効果が得られる。さらに、この加熱処理の後、上記鍛造用母材を例えば室温まで冷却する。これにより、鍛造用母材の金属組織中においてAlNおよびNb炭窒化物等の炭窒化物が固溶した状態を維持する。
一旦冷却した上記鍛造用母材は再加熱し、1000〜1230℃の熱間鍛造温度で熱間鍛造を施す。再加熱時に、固溶していたAl、Nbの一部が析出するが、再加熱温度を1000〜1230℃の温度に制限することにより、析出したAlNおよびNb炭窒化物等が過剰に成長することのない状態を保つことができる。
そして、その後、上記鍛造部品を620〜1000℃の温度に30分以上保持して炭窒化物の析出を促す析出熱処理を行う。この析出熱処理が上記条件の鍛造用母材加熱及び熱間鍛造の後に実施されることにより、適度な大きさのAlNおよびNb炭窒化物等の炭窒化物を比較的多量に析出させることができる。すなわち、数少ない炭窒化物が大きく成長するのを抑制する代わりに、適度な大きさの炭窒化物を従来よりも数多く析出させる。
金属組織中におけるAlNおよびNb炭窒化物は、適度な大きさのものの数が多ければ多いほど、結晶粒の粗大化を阻止するピン止め効果が高い。そのため、上記製造方法によって作製された鍛造部品は、金属組織中の適度な大きさのAlNおよびNb炭窒化物が多く存在することによって、1050℃を超える浸炭温度で減圧高温浸炭処理された場合においても、結晶粒の粗大化を抑制することが可能となる。
このように、上記製造方法によれば、1050℃を超える浸炭温度での減圧高温浸炭処理を施しても結晶粒粗大化を抑制することができる鍛造部品を製造することができる。
そして、特に、上記特定の化学成分を有し、かつ、金属組織中の円相当径20nm以上の炭窒化物の析出個数が20個/μm2以上である鍛造部品は、AlNおよびNb炭窒化物等の炭窒化物によるピン止め効果を、1050℃超え〜1100℃の温度範囲においても十分に保持した優れたものとなる。
実施例4における、1100℃の浸炭温度で減圧高温浸炭処理する場合の、円相当径20nm以上の炭窒化物の析出個数と浸炭処理後の平均結晶粒度番号との関係を示す説明図。
上記鋳塊及び鍛造部品の化学成分の限定理由につき以下に説明する。
C:0.10〜0.30%、
C(炭素)は、浸炭処理を行った部品に要求される強度、内部硬さを確保するために必要な元素であり、その効果を得るためには、0.10%以上含有させることが必要である。一方、Cを過剰に含有させると、内部の靱性劣化、被削性低下および冷間鍛造性悪化等を招くため、Cの含有量は0.30%を上限とする。
Si:0.03〜1.50%、
Si(珪素)は鋼の製造時において脱酸のために必要な元素であり、その効果を得るためには0.03%以上の含有が必要である。一方、Siを過剰に含有させると、靱性劣化、加工性劣化等を招くため、Si含有量の上限は1.50%とする。
P:0.035%以下、
P(リン)は、製造時に混入が避けられない不純物である。Pは、粒界の強度を低下させ、疲労特性を悪化させる原因となるため、P含有量の上限は0.035%とする。
S:0.035%以下、
S(硫黄)はPと同様に製造時に混入が避けられない不純物である。Sは、例えばMnS等のような硫化物系介在物となって存在し、疲労強度低下等の原因となるため、S含有量の上限は0.035%とする。
Mn:0.30〜1.50%、
Mn(マンガン)は、焼入性を向上させ内部まで強度を確保するのに必要な元素であり、その効果を得るためには、0.30%以上の含有が必要である。一方、Mnを多量に含有させると、残留オーステナイトが増加して、硬さ低下、内部靭性の劣化、被削性低下等を招く原因となるため、Mn含有量の上限は1.50%とする。
Cr:0.30〜3.00%、
Cr(クロム)は、焼入性を向上させ内部まで強度を確保するのに必要な元素であり、その効果を得るためには、0.30%以上の含有が必要である。一方、Crを多量に含有させると靭性劣化、被削性低下を招く原因となるため、Cr含有量の上限は3.00%とする。
Al:0.030〜0.100%、
Al(アルミニウム)は、Siと同様に脱酸に必要な元素であるとともに、AlNとして存在することによってピン止め効果を発揮し、浸炭処理後の異常粒成長防止に効果のある元素である。この効果を得るために必要なAlN量を確保するためには、0.030%以上のAlを含有させる必要がある。一方、Al含有量がある程度多くなると、それ以上増量してもピン止め効果が飽和して異常粒成長防止効果は向上せず、その一方でAl含有量増量に伴って鋼中に生成されるAl23介在物が増加して、強度や被削性への悪影響が生じるため、Al含有量の上限は0.100%とする。
N:0.0150〜0.0250%、
N(窒素)は、鍛造後に行われる後述の析出熱処理により、AlやNbと結合し、AlNやNb炭窒化物となって鋼中に析出し、浸炭処理後の異常粒成長を防止するために効果のある元素である。この効果を得るためには、0.0150%以上のNを含有させる必要がある。一方、Nが多過ぎても結晶粒粗大化効果が飽和し、かえって疲労強度低下を招くおそれがあるため、N含有量の上限は0.0250%とする。
Nb:0.08〜0.12%、
Nb(ニオブ)は、炭窒化物となって鋼中に存在することにより、Alに比べ高温度での浸炭処理における結晶粒異常成長を防止する効果のある元素である。Nb添加量が少ない場合、ピン止め効果に寄与するNb炭窒化物の量が不足して異常粒成長を抑制する作用が十分に得られなくなるので、Nb含有量の下限を0.08%とする。一方、Nb含有量が多すぎると、1300℃以上の加熱によっても鍛造用母材中のNb炭窒化物(Nb(C,N))を十分に固溶させることが難しくなるため、Nb含有量の上限は0.12%とする。
Mo:0〜0.80%、
Mo(モリブデン)は、任意元素であって必ずしも含有させる必要はない。一方、Moは、焼入性向上に有効であるため、鍛造部品の大きさに応じて必要な焼入れ性を確保するために含有させることができる。ただし、Mo含有量が多くなりすぎると靱性及び被削性低下を招くおそれがあるため、Moを含有させる場合の上限は0.80%とする。
次に、上記製造方法における製造条件について説明する。
上記製造方法においては、圧延等により部品製造に適した断面寸法とした鋼材を所定の寸法に切断して準備された鍛造用母材を1300℃以上に加熱する。この非常に高温での鍛造用母材の加熱によって、上述したごとく、上記特定の化学成分を有する鋼中に存在していたAlNおよびNb炭窒化物を母相中に十分に固溶させる作用効果が得られる。すなわち、上記鍛造用母材に用いる鋼材は、従来より高温で浸炭処理した場合の異常粒成長抑制効果を確実に得るために、従来多く用いられているNb添加の肌焼き鋼に比べて、Nb、Al、Nの含有率を高めとしているため、上記鍛造用母材加熱の加熱温度が1300℃未満の場合には、上記析出物を十分に固溶させることが難しくなる。
上記鍛造用母材の加熱後には、当該鍛造用母材を冷却する。この場合の冷却は、積極的に冷却を遅らせる処理を行わない限り問題はない。例えば、通常の空冷処理(放冷処理)を行えば十分であり、これにより、Nb、Alの固溶状態を十分に維持することができる。また、この冷却により到達させる鍛造用母材の温度は、例えば、少なくとも500℃以下になればよく、室温まで到達させてもよい。
その後の熱間鍛造は、1000〜1230℃の熱間鍛造温度に熱間鍛造用母材を再加熱して実施する。この加熱時に固溶していたNb、Alの一部がAlNやNb炭窒化物として析出するが、熱間鍛造温度を上記範囲とすることによって、析出したAlNおよびNb炭窒化物が過剰に成長することを抑制することが可能である。これに対し、熱間鍛造温度が1000℃未満の場合には、鍛造時の割れなどの鍛造性の低下を招くおそれがある。また、熱間鍛造温度が1230℃を超える場合には、再加熱時に析出したAlNおよびNb炭窒化物が過剰に成長し、その後の析出熱処理を施しても、理想的な状態でAlN及びNb炭窒化物が析出した状態とすることが困難となる。
上記析出熱処理は、上記鍛造部品を熱間鍛造後に一旦冷却してから再加熱して実施する方法(第1析出熱処理方法)と、熱間鍛造後の冷却過程において実施する方法(第2析出熱処理方法)をとることができる。また、これら2種類の熱処理方法を両方組み合わせることもできる。
上記第1析出熱処理方法の具体的な析出熱処理は、熱間鍛造後の上記鍛造部品を少なくとも500℃以下まで冷却した後に再加熱して850℃〜1000℃に30分以上保持した後、500℃までを25℃/分以下の冷却速度で冷却することにより行うことができる。なお、熱間鍛造後の鍛造部品の冷却は、例えば、少なくとも500℃以下までを、いわゆる空冷により得られる冷却速度以上とすることが好ましい。これにより、鍛造時におけるAlN、Nb炭窒化物の析出状態を維持することができる。
上記冷却の後、鍛造部品を再加熱して850℃〜1000℃に30分以上保持する。これにより、適度な大きさのAlN及びNb炭窒化物を数多く析出させることができる。この再加熱温度が850℃未満の場合及び保持時間が30分未満の場合には、金属組織のオーステナイト化が不十分となり、処理後の硬さ不良、ミクロ組織の不均一等を招き、加工性の低下や浸炭歪み悪化の原因となるおそれがある。また、再加熱温度が1000℃を超える場合には、AlN及びNb炭窒化物が過剰に成長する一方、これらの数が減少することによって、ピン止め効果が減少するおそれがある。
上記の再加熱の後には、上記鍛造部品を冷却するが、その場合の冷却速度を少なくとも500℃に達するまで25℃/分以下とする。これにより、焼入れ効果が最小限となり、加工性を維持することができる。一方、冷却速度が25℃/分を超える場合には、鍛造部品の硬度が高くなり、その後の加工性が低下するおそれがある。
上記第2析出熱処理方法の具体的な析出熱処理は、熱間鍛造後の上記鍛造部品の冷却途中において該鍛造部品を620〜700℃の温度に30分以上保持することにより行うことができる。この場合には、熱間鍛造後の鍛造部品を620℃以下に冷却させることなく、620℃〜700℃に保持することによって、適度な大きさのAlN及びNb炭窒化物を数多く析出させることができる。この保持温度が620℃未満あるいは保持時間が30分未満の場合には、AlN及びNb炭窒化物の析出が十分に進まないおそれがある。一方、保持温度が700℃を超える場合には、処理後にベイナイト組織が生成しやすく、また、被削性の劣化や減圧高温浸炭処理後の結晶粒粗大化が生じやすくなる。
そして、上記析出熱処理は、当該析出熱処理によって、上記鍛造部品中における円相当径20nm以上の炭窒化物の析出個数を20個/μm2以上とするように条件を設定することが好ましい。上記の具体的な2種類のいずれか一方又は両方の析出熱処理を採用すれば、この析出状態を容易に実現できる。なお、上記熱間鍛造後の鍛造部品を620〜1000℃の温度に30分以上保持すれば、上記2種類の析出熱処理以外の条件を採用しても同様の析出状態を得ることも可能であり、1050℃超における減圧浸炭処理時の結晶粒粗大化を抑制することが可能である。一方、結晶粒粗大化抑制以外の他の特性を満足する鍛造部品をより確実に製造するには、上記2種類の特定の析出熱処理を採用するのが好ましい。
鍛造部品の金属組織において、円相当径20nm未満の炭窒化物が多く存在してもあまりピン止め効果を発揮しない。また、円相当径20nm以上の炭窒化物の析出個数が20個/μm2未満の場合も十分なピン止め効果が得られない。
なお、上記炭窒化物は、実質的には、AlN及びNb炭窒化物からなるが、他の種類の炭窒化物、例えば、不純物として含有されるTiの炭窒化物が存在していればそれも含む。
(実施例1)
上記減圧高温浸炭処理用鍛造部品及びその製造方法にかかる実施例について説明する。本例では、表1に示すごとく、化学成分が異なる複数種類の鋼材(試料1〜10)を準備し、1種類の製造方法によって鍛造部品を作製し、減圧高温浸炭処理による結晶粒粗大化の有無を評価した。本例では、析出熱処理方法として、上述した第1析出熱処理方法を採用した。
Figure 0006148995
各試料は、次のようにして作製した。まず、表1に示された化学成分を有する鋼塊をそれぞれ作製した。具体的には、各試料の原料の溶解、精錬及び鋳込みをVIM(Vacuum Induction Melting:真空誘導溶解装置)を用いて行い、鋼塊を得た。この鋼塊から鍛伸等により、直径φ65mm×120mm長さの鍛造用母材を準備し、これを1330℃に加熱した後、空冷により室温まで冷却した。その後、鍛造用母材を再度加熱して1200℃の熱間鍛造温度で熱間鍛造して鍛造部品を作製した。なお、記載された温度は、全て表面温度である(以下、同様)。
熱間鍛造後の鍛造部品は、空冷により室温まで冷却した。その後、鍛造部品を再加熱して950℃に60分保持した後、500℃までをおよそ30℃/分の冷却速度で冷却した。得られた鍛造部品に対し、1060℃、1080℃及び1100℃の3種類の浸炭温度で減圧高温浸炭処理を行った。そして、浸炭処理前後の金属組織を観察してその品質を評価した。
減圧浸炭処理は、浸炭期の炉内圧力が150Paとなる減圧雰囲気下で、浸炭期と拡散期とを合わせて合計約5分間で処理を行った。雰囲気ガスとしては、アセチレンガスを使用し、浸炭処理はパルス浸炭法(例えば特開2004−300520参照)により行った。また、浸炭処理後は、窒素ガスを用いたガス冷却によって鍛造部品に焼入れ処理を施した。ここまで処理した鍛造部品を用いて後述する金属組織の観察を行った。
金属組織の観察は、鍛造部品の浸炭処理前における炭窒化物の個数(個/μm2)の測定と、浸炭処理後における結晶粒粗大化の有無を評価した。結晶粒粗大化の判定では、JIS G0551に記載の測定方法で平均6番以上となり、かつ3番以下の部分が全くない場合を良(○)、平均6番未満、あるいは、3番以下の部分が少なくとも一部に存在する場合を不良(△)、平均6番未満であり、かつ、3番以下の部分が少なくとも一部に存在する場合を不良(×)と判定した。評価結果を表2に示す。
炭窒化物(析出粒子)の個数の測定は、次のようにして行った。
観察用の試料の調整は、一般的に用いられているレプリカ法で行なった。具体的には、先ず、各試料の鋼材を鏡面研磨仕上げし、ナイタール(硝酸3%エタノール溶液)にて研磨面を約30秒エッチングした。次いで、真空蒸着装置でエッチング面に膜厚約200nmのカーボン膜(レプリカ膜)を蒸着させた。レプリカ膜を設けた試料をナイタールに約30分浸漬し、鋼材とレプリカ膜の界面を溶解することで、レプリカ膜を鋼材から外した。その後、レプリカ膜は蒸留水にて洗浄を3回行ない、乾燥したものを観察用サンプルとした。
このレプリカ膜を透過電子顕微鏡にセットし、20万倍の条件で1実施条件につき20枚のTEM像を撮影した。全てのTEM像の写真を2値化処理後画像解析し、円相当径および個数を算出し、単位面積当たりの個数と粒度分布を求めることにより、20nm以上の析出粒子数を定量化した。
Figure 0006148995
表2から知られるごとく、化学成分が適切な試料(試料1〜6)については、浸炭温度が1060℃〜1100℃のいずれの条件においても、結晶粒粗大化が生じることなく良好であった。一方、Al、N及びNbのうち少なくとも1つの成分が限定範囲の下限値を下回る試料(試料7〜10)は、少なくとも、浸炭温度が1100℃の際に、観察した金属組織におけるほぼ全面が粗大化していた。
(実施例2)
本例では、実施例1の表1に示した化学成分が異なる複数種類の鍛造用母材(試料1〜10)を準備し、実施例1とは異なる1種類の製造方法によって鍛造部品を作製し、減圧高温浸炭処理による結晶粒粗大化の有無を評価した。本例では、析出熱処理方法として、上述した第2析出熱処理方法を採用した。
本例では、各試料は次のようにして作製した。まず、表1に示された化学成分を有する鋼塊をそれぞれ作製した。具体的には、各試料の原料の溶解、精錬及び鋳込みをVIM(Vacuum Induction Melting:真空誘導溶解装置)を用いて行い、鋼塊を得た。この鋼塊から実施例1と同様に鍛造用母材を準備し、これを1330℃に加熱した後、室温まで鍛造用母材を空冷した。その後、鍛造用母材を再度加熱して1200℃の熱間鍛造温度で熱間鍛造して鍛造部品を作製した。ここまでは実施例1と同様である。
熱間鍛造後の鍛造部品は、その冷却途中において650℃雰囲気加熱炉に投入し、それ以下の温度に低下しない状態で60分保持し、その後、室温まで空冷した。得られた鍛造部品に対し、実施例1と同様の方法で、1060℃、1080℃及び1100℃の3種類の浸炭温度で減圧高温浸炭処理した。そして、浸炭処理前後の金属組織を観察してその品質を評価した。評価方法は実施例1と同様とした。評価結果を表3に示す。
Figure 0006148995
表3から知られるごとく、本例においても、化学成分が適切な試料(試料1〜6)については、浸炭温度が1060℃〜1100℃のいずれの条件においても、結晶粒粗大化が生じることなく良好であった。一方、Al、N及びNbのうち少なくとも1つの成分が限定範囲の下限値を下回る試料(試料7〜10)は、少なくとも、浸炭温度が1100℃の際に、観察した金属組織におけるほぼ全面が粗大化していた。
(実施例3)
本例では、実施例1の表1における1種類の試料(試料1)を複数準備し、製造条件が異なる複数の製造方法によって鍛造部品を作製し、減圧高温浸炭処理による結晶粒粗大化の有無を評価した。
製造条件は、表4に示すごとく、熱間鍛造工程よりも前の鍛造用母材の加熱温度(a)、鍛造用母材の冷却条件(b)、熱間鍛造を行う際の熱間鍛造温度(c)、熱間鍛造後の室温までの冷却条件(d)、再加熱を行う場合の再加熱温度(e)及びその保持温度(f)、さらに、再加熱を行った場合の再加熱後の冷却条件(g)を種々変更した。得られた鍛造部品に対し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表5に示す。
Figure 0006148995
Figure 0006148995
表5から知られるように、加熱温度(a)が1300℃以上であり、その後行う熱間鍛造の熱間鍛造温度(c)が適温であり、かつ、析出熱処理の条件((c)〜(g))が上述した第1析出熱処理方法又は第2析出熱処理方法のいずれかの条件を具備する場合(条件1〜12の場合)及び両方の条件を具備する場合(条件13の場合)には、浸炭温度が1060℃〜1100℃のいずれの条件においても、結晶粒粗大化が生じることなく良好であった。
一方、少なくとも、上記条件(a)、(c)〜(e)のいずれかが不適切な場合(条件14〜18)には、少なくとも、浸炭温度が1100℃の際に、観察した金属組織におけるほぼ全面が粗大化していた。
(実施例4)
上述した実施例1〜3において1100℃の浸炭温度で減圧高温浸炭処理した鍛造部品における、円相当径20nm以上の炭窒化物の析出個数と浸炭処理後の平均結晶粒度番号との関係を調べた。両者の関係を図1に示す。同図は、横軸に円相当径20nm以上の炭窒化物の析出個数(個/μm2)を、縦軸に平均結晶粒度番号を取ったものである。
同図から知られるごとく、1100℃という超高温の浸炭処理を実施する場合においては、少なくとも、円相当径20nm以上の炭窒化物の析出個数を20(個/μm2)以上とすることにより、平均結晶粒度番号を6以上とすることができる。このことから、少なくとも平均結晶粒度番号で判断した場合、円相当径20nm以上の炭窒化物の析出個数を20(個/μm2)以上とすることが、超高温の浸炭温度により減圧浸炭処理される鍛造部品における結晶粒粗大化防止に有効であることがわかる。

Claims (4)

  1. 1050℃を超える浸炭温度で減圧高温浸炭処理される鍛造部品を製造する方法であって、
    質量比にて、C:0.10〜0.30%、Si:0.03〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Mn:0.30〜1.50%、Cr:0.30〜3.00%、Al:0.030〜0.100%、N:0.0150〜0.0250%、Nb:0.08〜0.12%、Mo:0〜0.80%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鍛造用母材を準備し、
    該鍛造用母材を1300℃以上に加熱した後冷却し、
    その後、上記鍛造用母材を加熱し、1000〜1230℃の熱間鍛造温度で熱間鍛造して鍛造部品を作製し、
    その後、上記鍛造部品を620〜1000℃の温度に30分以上保持して炭窒化物の析出を促す析出熱処理を行うことを特徴とする減圧高温浸炭処理用鍛造部品の製造方法。
  2. 上記析出熱処理は、熱間鍛造後の上記鍛造部品を少なくとも500℃以下まで冷却した後に再加熱して850℃〜1000℃に30分以上保持した後、500℃までを25℃/分以下の冷却速度で冷却することにより行うことを特徴とする請求項1に記載の減圧高温浸炭処理用の鍛造部品の製造方法。
  3. 上記析出熱処理は、熱間鍛造後の上記鍛造部品の冷却途中において該鍛造部品を620〜700℃の温度に30分以上保持することにより行うことを特徴とする請求項1に記載の減圧高温浸炭処理用鍛造部品の製造方法。
  4. 上記析出熱処理によって、上記鍛造部品における円相当径20nm以上の炭窒化物の析出個数を20個/μm2以上とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の減圧高温浸炭処理用の鍛造部品の製造方法。
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