以下、添付図面を参照して、超音波診断装置の実施形態を詳細に説明する。
(実施形態)
まず、本実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る超音波診断装置の構成を説明するための図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1と、モニタ2と、入力装置3と、装置本体10とを有する。また、装置本体10は、ネットワーク100を介して外部装置4と接続される。
超音波プローブ1は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体10が有する送受信部11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ1は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材などを有する。なお、超音波プローブ1は、装置本体10と着脱自在に接続される。
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
ここで、本実施形態に係る超音波プローブ1は、超音波により被検体Pを2次元で走査するとともに、被検体Pを3次元で走査することが可能な超音波プローブである。具体的には、本実施形態に係る超音波プローブ1は、被検体Pを2次元で走査する複数の超音波振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで、被検体Pを3次元で走査するメカニカルスキャンプローブである。
なお、本実施形態は、超音波プローブ1が、複数の超音波振動子がマトリックス状に配置されることで、被検体Pを3次元で超音波走査することが可能な2次元超音波プローブである場合であっても適用可能である。2次元超音波プローブは、超音波を集束して送信することで、被検体Pを2次元で走査することが可能である。
入力装置3は、後述するインターフェース部19を介して装置本体10と接続される。入力装置3は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボールなどを有し、超音波診断装置の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体10に対して受け付けた各種設定要求を転送する。
例えば、本実施形態に係る入力装置3は、比較読影を行なうための2つのボリュームデータの指定や、指定した2つのボリュームデータ間の位置合わせ処理に関する指示を操作者から受け付ける。なお、位置合わせを行なって比較読影する際に操作者が入力装置3を用いて入力する各種指示内容については、後に詳述する。
モニタ2は、超音波診断装置の操作者が入力装置3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像などを表示したりする。
例えば、本実施形態に係るモニタ2は、2つのボリュームデータ間の位置合わせを行なうために操作者が参照するGUIを表示する。なお、位置合わせを行なう際に、操作者により参照されるGUIについては、後に詳述する。
外部装置4は、後述するインターフェース部19を介して装置本体10と接続される装置である。例えば、外部装置4は、各種の医用画像のデータを管理するシステムであるPACS(Picture Archiving and Communication System)のデータベースや、医用画像が添付された電子カルテを管理する電子カルテシステムのデータベースなどである。あるいは、外部装置4は、例えば、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置など、本実施形態に係る超音波診断装置以外の各種医用画像診断装置である。
すなわち、本実施形態に係る装置本体10は、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)に則った画像フォーマットに統一された各種医用画像を、インターフェース部19を介して外部装置4から取得することができる。具体的には、本実施形態に係る装置本体10は、インターフェース部19を介して、自装置で生成されたボリュームデータ(3次元超音波画像)の比較対象となるボリュームデータを、インターフェース部19を介して外部装置4から取得することができる。
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波に基づいて超音波画像を生成する装置である。具体的には、本実施形態に係る装置本体10は、超音波プローブ1が受信した3次元の反射波データに基づいて3次元超音波画像(ボリュームデータ)を生成可能な装置である。装置本体10は、図1に示すように、送受信部11と、Bモード処理部12と、ドプラ処理部13と、画像生成部14と、画像メモリ15と、内部記憶部16と、ボリュームデータ処理部17と、制御部18と、インターフェース部19とを有する。
送受信部11は、トリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路などを有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、遅延回路は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルサ回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
なお、送受信部11は、後述する制御部18の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧などを瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、または、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
また、送受信部11は、アンプ回路、A/D変換器、加算器などを有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換し、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。加算器は、A/D変換器によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
このように、送受信部11は、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。ここで、本実施形態に係る送受信部11は、超音波プローブ1から被検体Pに対して3次元の超音波ビームを送信させ、超音波プローブ1が受信した3次元の反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
Bモード処理部12は、送受信部11から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理などを行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
ここで、Bモード処理部12は、検波周波数を変化させることで、映像化する周波数帯域を変えることができる。また、Bモード処理部12は、一つの反射波データに対して、二つの検波周波数による検波処理を並列して行うことができる。
このBモード処理部12の機能を用いることにより、コントラストハーモニックイメージング(CHI:Contrast Harmonic Imaging)において、造影剤が注入された被検体Pの反射波データから、造影剤(微小気泡、バブル)を反射源とする反射波データ(高調波データ又は分周波データ)と、被検体P内の組織を反射源とする反射波データ(基本波データ)とを分離することができる。すなわち、Bモード処理部12は、組織画像を生成するためのBモードデータとともに、造影画像を生成するためのBモードデータを生成することができる。
また、このBモード処理部12の機能を用いることにより、ティッシュハーモニックイメージング(THI:Tissue Harmonic Imaging)において、被検体Pの反射波データから、高調波データ又は分周波データを分離することで、ノイズ成分を除去した組織画像を生成するためのBモードデータを生成することができる。
ドプラ処理部13は、送受信部11から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
なお、本実施形態に係るBモード処理部12およびドプラ処理部13は、2次元の反射波データおよび3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、本実施形態に係るBモード処理部12は、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成することができる。具体的には、本実施形態に係るBモード処理部12は、通常のBモード撮影時や、コントラストハーモニックイメージング、ティッシュハーモニックイメージングにおいて、3次元のBモードデータを生成することができる。また、本実施形態に係るドプラ処理部13は、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成することができる。
画像生成部14は、Bモード処理部12及びドプラ処理部13が生成したデータから超音波画像を生成する。すなわち、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成したBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像を生成する。具体的には、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成した3次元のBモードデータから、3次元のBボード画像を生成する。
また、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成したドプラデータから移動体情報を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせ画像としてのカラードプラ画像を生成する。具体的には、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成した3次元のドプラデータから、3次元のカラードプラ画像を生成する。
なお、以下では、画像生成部14が生成した3次元のBモード画像及び3次元のカラードプラ画像をまとめて「超音波ボリュームデータ」と記載する。
また、画像生成部14は、生成した超音波ボリュームデータをモニタ2にて表示するための各種画像を生成することができる。具体的には、画像生成部14は、超音波ボリュームデータからMPR(Multi Planar Reconstructions)画像やレンダリング画像を生成することができる。図2は、本実施形態に係る画像生成部を説明するための図である。
すなわち、図2に示すように、超音波プローブ1により被検体Pの撮影部位に対して超音波の3次元走査が行なわれることで、送受信部11は、超音波ボリュームデータを生成する。そして、画像生成部14は、超音波ボリュームデータをモニタ2に表示するための画像として、例えば、操作者からの指示により、図2に示すように、直交3断面におけるMPR画像や、超音波プローブ1の被検体Pに対する接触面を視点とした場合のレンダリング画像や、任意の場所を視点とした場合のレンダリング画像を生成する。なお、本実施形態に係る画像生成部14は、自装置以外で生成されたボリュームデータについても、MPR画像及びレンダリング画像の生成処理を行なうことができる。
なお、画像生成部14は、超音波画像に、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマークなどを合成した合成画像を生成することもできる。
図1に戻って、画像メモリ15は、画像生成部14が生成した超音波画像記憶するメモリである。また、画像メモリ15は、Bモード処理部12やドプラ処理部13が生成したデータを記憶することも可能である。
内部記憶部16は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見など)や、診断プロトコルや各種ボディーマークなどの各種データを記憶する。また、内部記憶部16は、必要に応じて、画像メモリ15が記憶する画像の保管などにも使用される。
さらに、内部記憶部16は、外部装置4から転送された各種医用画像の保管にも使用される。具体的には、内部記憶部16は、外部装置4から転送されたボリュームデータを記憶する。例えば、内部記憶部16は、3次元のX線CT画像(以下、X線CTボリュームデータと記載する)や、3次元のMRI画像(以下、MRIボリュームデータと記載する)、他の超音波診断装置にて生成された超音波ボリュームデータを記憶する。また、内部記憶部16が記憶するデータは、後述するインターフェース部19を経由して、外部の周辺装置(外部装置4)へ転送することができる。
なお、本実施形態は、操作者が所望する画像データ(ボリュームデータ)がフレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVDなどの記憶媒体を介して、内部記憶部16に格納される場合であっても適用可能である。また、本実施形態は、操作者が所望する画像データ(ボリュームデータ)を記憶する記憶装置が、内部記憶部16以外に設置される場合であっても適用可能である。
ボリュームデータ処理部17は、画像メモリ15が記憶する2つの超音波ボリュームデータの位置合わせ処理や、画像メモリ15が記憶する超音波ボリュームデータと内部記憶部16が記憶する各種ボリュームデータとの位置合わせ処理を行なう。ここで、ボリュームデータ処理部17は、位置合わせ処理を行なうために、図1に示すように、対象断面受け付け部17aと、算出部17bと、抽出部17cと、設置部17dと、位置合わせ部17eとを有する。なお、ボリュームデータ処理部17が行なう処理については、後に詳述する。
制御部18は、超音波診断装置の処理全体を制御する。具体的には、制御部18は、入力装置3を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部16から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信部11、Bモード処理部12、ドプラ処理部13、画像生成部14及びボリュームデータ処理部17の処理を制御する。また、制御部18は、画像メモリ15が記憶する超音波画像や、内部記憶部16が記憶する各種画像、又は、ボリュームデータ処理部17による処理を行なうためのGUI、ボリュームデータ処理部17の処理結果などをモニタ2にて表示するように制御する。また、制御部18は、操作者から入力装置3を介して受け付けたボリュームデータが外部装置4からネットワーク100及びインターフェース部19を介して内部記憶部16に転送されるように、制御する。
インターフェース部19は、入力装置3、ネットワーク100及び外部装置4に対するインターフェースである。入力装置3が受け付けた操作者からの各種設定情報及び各種指示は、インターフェース部19により、制御部18に転送される。また、入力装置3が操作者から受け付けた画像データの転送要求は、インターフェース部19により、ネットワーク100を介して外部装置4に通知される。また、外部装置4が転送した画像データは、インターフェース部19により、内部記憶部16に格納される。
以上、本実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、本実施形態に係る超音波診断装置は、超音波ボリュームデータを生成し、生成した超音波ボリュームデータと他のボリュームデータとの位置合わせを行なう。
ここで、異なる時期に生成された2つのボリュームデータを比較読影する場合、ボリュームデータ間のずれが、単に、並進移動や回転移動により補正することができるのであれば、これら2つのボリュームデータの全領域を比較して位置合わせを行なうことは、容易である。
しかし、2つのボリュームデータの全領域を比較して位置合わせを行なうことは、以下の理由により、困難であり、かつ、非効率である。例えば、ラジオ波焼灼治療(RFA:Radio Frequency Ablation)や、切除などの外科手術が行なわれた場合、比較対象となる2つの超音波ボリュームデータ内に描出される観察対象部位の構造は、治療前後で変化する。また、例えば、Bモード撮影や、ティッシュハーモニックイメージング、コントラストイメージングなどのように超音波画像の撮影モードが異なる場合、比較対象となる2つの超音波ボリュームデータの輝度分布は、異なる。
また、臨床現場では、超音波ボリュームデータと、例えば、X線CT装置、MRI装置など他の医用画像診断装置により生成されたボリュームデータとを比較読影する場合が多くある。例えば、RFAを行なう際には、RFAによる焼灼部位を決定するために用いられたX線CTボリュームデータと、治療直前でRFAの焼灼部位を確認するために生成された超音波ボリュームデータとを比較する必要がある。かかる場合でも、比較対象となる2つのボリュームデータの輝度分布は、異なる。
また、被検体Pの呼吸や撮影時における体位によっては、観察対象となる臓器の変形や、観察対象となる臓器と周囲の臓器との相対位置の変化が生じる場合がある。特に、超音波画像の撮影においては、X線CT画像やMRI画像の撮影と比較して、被検体Pの体位の自由度が高く、観察対象となる臓器の変形や、観察対象となる臓器と周囲の臓器との相対位置の変化が生じることが多い。また、超音波画像の撮影においては、超音波プローブ1の設置位置や超音波プローブ1による圧迫の程度によっても、観察対象となる臓器の変形や、観察対象となる臓器と周囲の臓器との相対位置の変化が生じる場合がある。
このように、2つのボリュームデータの位置合わせを行なう場合、ボリュームデータ間には、輝度分布の変化や形状の変化、形状の歪みなどの差異が存在することが多い。このため、ボリュームデータ間の位置合わせを、各ボリュームデータの全領域に渡って行なうことは、困難、かつ、非効率的である。ここで、比較読影を行なう医師にとっては、少なくとも、観察対象となる部位が正確に位置合わせされていればよい。そこで、2つのボリュームデータの位置合わせを行なう際には、位置合わせを行なうための関心領域(ROI:Region Of Interest)を各ボリュームデータ内に設定し、設定したROIを用いて2つのボリュームデータの位置合わせを行なうことが行なわれる。
しかしながら、ROIの置き方によっては、正しい位置合わせが困難な場合がある。図3−1及び図3−2は、位置合わせにおけるROI設置の重要性を説明するための図である。
図3−1及び図3−2に示すグラフは、比較対象となる2つのボリュームデータの一方を3次元的に所定の角度ずつ回転させて算出した各ボリュームデータのROI間の相互情報量をプロットしたものである。なお、相互情報量については、後に詳述する。
ここで、図3−1の(A)及び(B)は、比較対象となる2つのボリュームデータに一つのROIを設置した場合のグラフを示している。図3−1の(A)に示す一例では、比較対象となる2つのボリュームデータ間に回転ずれのみがあることから、位置合わせが最適となる極大点が一つのみとなる場合のグラフを示している。すなわち、図3−1の(A)に示す一例では、グラフの形状が、頂点が一つの山型であり、位置合わせ処理をしたときに正しい結果に到達しやすいことを示している。一方、図3−1の(B)に示す一例では、比較対象となる2つのボリュームデータ間に回転ずれ以外にも、形状などの差異があることから、位置合わせが見かけ上最適となる擬似極大点が複数存在する場合のグラフを示している。すなわち、図3−1の(B)に示す一例では、グラフの形状が、頂点が複数存在する山型であり、ROIの置き方によっては、位置合わせ処理が正しい結果に到達しないことを意味している。
また、図3−2は、操作者の指定により、ROIを1個〜4個と順次増やして、相互情報量を計算したものである。すなわち、図3−2の(A)は、ROIを1個設置した場合のグラフであり、図3−2の(B)は、ROIを2個設置した場合のグラフであり、図3−2の(C)は、ROIを3個設置した場合のグラフであり、図3−2の(D)は、ROIを4個設置した場合のグラフである。図3−2に示す一例では、ROIを増やすことで、疑似極大点の数が低減されている。
しかし、ROIを用いたボリュームデータ間の位置合わせ処理は、各ROIの相互情報量が最大となる位置(最適解)を最適化処理により求めるものであり、図3−2に示す一例では、複数のROIが真の極大点に向かう方向に沿って設置されていることから、擬似極大点の数が低減して、真の位置合わせが行なわれる場合を示しているに過ぎない。
例えば、図3−2の(D)に示すグラフにおいて、平らな位置にROIが設置された場合は、最適解に到達することができず、局所解にしか到達できない場合がある。
そこで、図1に示すボリュームデータ処理部17は、以下に示す位置合わせ処理を行なう。まず、操作者により、比較読影を行なう2つのボリュームデータが指定される。
ここで、位置合わせ処理が行なわれるユースケースの具体例について説明する。例えば、肝癌の治療を行なう場合、治療方針を決定するための術前検査として、造影剤を用いたX線CT画像(X線CTボリュームデータ)の撮影が行なわれる。例えば、肝動脈造影下CT(CTA)や、経動脈的門脈造影下CT(CTAP)により、肝臓のX線CTボリュームデータが生成される。これにより、医師は、肝癌の位置や大きさを確認して、手術切除やRFA、又は、TAE(肝動脈塞栓療法)などの術式を決定する。例えば、医師は、RFAにより肝癌を焼灼すると決定する。
RFAを行う場合、医師は、ターゲットとなる病変をリアルタイムで超音波画像により確認しながら、穿刺針を病変部位まで刺し、その後、穿刺針からラジオ波を照射する。そこで、医師は、X線CTボリュームデータを用いてRFAを行なうと決定した肝癌の撮影を、超音波診断装置により行なう。例えば、超音波診断装置は、CHIやTHIにより超音波ボリュームデータを生成する。これにより、医師は、ラジオ波を照射する穿刺針のアタッチメントを有する超音波プローブ1のアプローチ位置、焼灼領域を確定する。かかる事前検討を行なう場合、術式決定時のX線CTボリュームデータと事前検討時の超音波ボリュームデータとの位置合わせを行なう必要がある(ユースケース1)。
そして、RFAの直前においても、超音波診断装置を用いた検査が行なわれる。すなわち、医師は、事前検討を再現して、超音波プローブ1の最終アプローチ位置を決定するために、超音波診断装置を用いたCHIやTHIにより超音波ボリュームデータを生成する。かかる事前検討の再現時においても、事前検討時の超音波ボリュームデータと事前検討の再現時の超音波ボリュームデータとの位置合わせを行なう必要がある(ユースケース2)。
そして、RFA実行時においても、予定の位置に穿刺針が到達した時点で、穿刺針の到達位置から予想される焼灼領域(予想焼灼領域)が、肝癌及び肝癌の境界領域を十分含むか否かを評価するために、例えば、THIにより超音波ボリュームデータが生成される。かかる予想焼灼領域の評価時においても、例えば、術式決定時のX線CTボリュームデータや事前検討の再現時の超音波ボリュームデータと、予想焼灼領域の評価時の超音波ボリュームデータとの位置合わせを行なう必要がある(ユースケース3)。
そして、RFA実行後においても、RFA焼灼領域の評価を行なうために、超音波ボリュームデータが生成され、さらに、例えば、焼灼終了5分後に、CHIによる超音波ボリュームデータの生成や、造影X線CTボリュームデータが生成される。かかるRFA焼灼領域の評価時においても、RFA実行直後に生成された超音波ボリュームデータと、焼灼終了5分後に生成された造影超音波ボリュームデータや、造影X線CTボリュームデータとの位置合わせを行なう必要がある(ユースケース4)。
そして、経過検査時においても、医師は、治療効果の判定を行なうために、例えば、造影X線CT検査や造影超音波検査を行なう。かかる経過検査時においても、経過検査時のボリュームデータと、例えば、予想焼灼領域の評価時の超音波ボリュームデータとの位置合わせを行なう必要がある(ユースケース5)。また、ユースケース5の場合、ユースケース1〜4で用いられたボリュームデータすべてが位置合わせの対象となりうる。
上述したユースケースにおいて、操作者は、比較読影を行なうための2つのボリュームデータを指定する。具体的には、操作者は、各ユースケースにより生成された最新の超音波ボリュームデータと、比較対象となるボリュームデータとを指定する。換言すれば、操作者は、少なくとも一方が超音波ボリュームデータである2つのボリュームデータを指定する。なお、以下では、本実施形態に係る超音波診断装置により生成された2つの超音波ボリュームデータが位置合わせの対象として指定される場合を一例として説明する。
例えば、ユースケース3において、操作者は、事前検討の再現時の超音波ボリュームデータと、予想焼灼領域の評価時の超音波ボリュームデータとを指定する。なお、本実施形態は、図1に示す超音波診断装置により生成された超音波ボリュームデータと、他の医用画像診断装置により生成されたボリュームデータ(例えば、術式決定時のX線CTボリュームデータ)とが指定される場合であっても適用可能である。かかる場合、術式決定時のX線CTボリュームデータは、外部装置4から内部記憶部16に転送される。
そして、図1に示すボリュームデータ処理部17が有する対象断面受け付け部17aと、算出部17bと、抽出部17cと、設置部17dと、位置合わせ部17eとは、以下の処理を行なう。
対象断面受け付け部17aは、少なくとも一方が超音波の反射波に基づいて生成された超音波ボリュームデータである2つのボリュームデータにおいて、共通する構造物を含む2つの断面(対象断面)を入力装置3を介して操作者から受け付ける。
算出部17bは、対象断面受け付け部17aが受け付けた2つの対象断面のいずれか一方の断面である第1断面を複数の小分画に分割し、当該複数の小分画それぞれの特徴量を算出する。
抽出部17cは、算出部17bにより算出された複数の小分画それぞれの特徴量に基づいて、複数の小分画から2つのボリュームデータを位置合わせするための関心領域(ROI)を抽出する。
位置合わせ部17eは、抽出部17cにより抽出されたROIを用いて、2つのボリュームデータの位置合わせを行なう。具体的には、位置合わせ部17eは、設置部17dにより設置されたROIペアを用いて位置合わせを行なう。すなわち、設置部17dは、抽出部17cにより抽出されたROIの第1断面における同様の位置関係にて、当該第1断面とともに対象断面受け付け部17aが受け付けた他方の対象断面である第2断面に対となるROIを設置する。そして、位置合わせ部17eは、抽出部17cおよび設置部17dの処理により2つのボリュームデータそれぞれに対として設定されたROIペアを用いて、2つのボリュームデータの位置合わせを行なう。
より具体的には、位置合わせ部17eは、抽出部17cおよび設置部17dの処理により2つのボリュームデータそれぞれに対として設定された各ROIの該当する対象断面に対する相対的位置が維持された状態で、第1断面又は第2断面のいずれか一方を複数の位置にずらす。そして、位置合わせ部17eは、2つの対象断面を移動するごとに、関心領域間の類似度を評価関数により算出し、算出結果が最適化された状態となった関心領域間の位置関係に基づいて、2つのボリュームデータの位置合わせを行なう。
上述したボリュームデータ処理部17の処理の具体例を、以下、図4及び図5を用いて説明する。図4及び図5は、図1に示すボリュームデータ処理部を説明するための図である。
まず、制御部18の制御により、事前検討の再現時の超音波ボリュームデータ(図4に示す参照ボリュームデータ)と、予想焼灼領域の評価時の超音波ボリュームデータ(図4に示す対象ボリュームデータ)とがモニタ2に表示される。具体的には、まず、画像生成部14は、制御部18の制御により、例えば、ボリュームデータに設定された直交3軸の座標系における初期位置におけるMPR画像を生成する。そして、モニタ2は、制御部18の制御により、図4の(A)に示すように、参照ボリュームデータの初期位置におけるMPR画像と、対象ボリュームデータの初期位置におけるMPR画像とを表示する。
そして、操作者は、参照ボリュームデータと対象ボリュームデータとで共通する構造物、すなわち、位置合わせを行なう上で、主な対象となる主対象構造物を探す。具体的には、操作者は、モニタ2上に初期位置におけるMPR画像ともに表示された「並進移動ボタン」や「回転移動ボタン」を、例えば、入力装置3が有するマウスを用いて、操作することで、MPR画像を生成するための断面の位置を変更する。これにより、操作者は、図4の(B)に示すように、主対象構造物を含む対象断面の選択及び表示を行なう。すなわち、操作者は、「並進移動ボタン」や「回転移動ボタン」を操作することで、主対象構造物が描出されているMPR画像の選択及び表示を行なう。
そして、操作者は、例えば、入力装置3が有するマウスを用いて、図4の(C)に示すように、選択表示した各MPR画像上に描出された主対象構造物の指定を行なう。これにより、参照ボリュームデータの対象断面と、対象ボリュームデータの対象断面とが確定される。その結果、対象断面受け付け部17aは、参照ボリュームデータの対象断面と、対象ボリュームデータの対象断面とを受け付ける。具体的には、対象断面受け付け部17aは、参照ボリュームデータにおける対象断面の位置と、対象ボリュームデータにおける対象断面の位置とを受け付ける。
そして、算出部17bは、対象断面受け付け部17aが受け付けた2つの対象断面のいずれか一方の断面である第1断面を複数の小分画に分割し、当該複数の小分画それぞれの特徴量を算出する。例えば、算出部17bは、参照ボリュームデータの対象断面を第1断面とし、第1断面を各小分画が重複されるように、複数の小分画に分割する。そして、算出部17bは、特徴量として「平均情報量(エントロピー):H」を、例えば、以下の式(1)により算出する。なお、式(1)に示す「pi」は、小分画内の画素値「i」が当該小分画で出現する相対頻度である。
なお、式(1)では、対数の底が「2」であるが、平均情報量を算出する際の対数の底は、「10」など任意の数値が設定可能である。
そして、抽出部17cは、算出部17bにより算出された複数の小分画それぞれの特徴量(平均情報量)に基づいて、ROIを抽出する。例えば、抽出部17cは、算出部17bにより算出された複数の小分画それぞれの平均情報量を、大きい順に並べ、1位から3位までの上位3つの小分画をROIとして抽出する。図3の(D)に示す一例では、参照ボリュームデータの対象断面において、抽出部17cにより3つのROIが抽出された結果が示されている。
なお、本実施形態は、平均情報量が最大値となった小分画をROIとして抽出したり、所定の値より大きい平均情報量が算出された小分画をROIとして抽出したりする場合であっても適用可能である。
そして、設置部17dは、図3の(D)に示すように、抽出部17cにより抽出された3つのROIの第1断面における同様の位置関係にて、対象ボリュームデータの対象断面である第2断面に対となる3つの関心領域を設置する。これにより、抽出部17cおよび設置部17dの処理により2つのボリュームデータそれぞれにROIペアが設定される。すなわち、抽出部17cおよび設置部17dの処理により、主対象構造物、又は、主対象構造物の近傍にて、2つのボリュームデータそれぞれにROIペアが設定される。
なお、本実施形態は、対象ボリュームデータの対象断面が第1断面と設定され、参照ボリュームデータの対象断面が第2断面と設定される場合であっても適用可能である。また、算出部17bが算出する特徴量は、平均情報量に限定されるものではなく、対象断面内に描出された特徴的な構造物を抽出できるのであれば、任意の指標値を用いることができる。
そして、位置合わせ部17eは、ROIペア間の類似度を、相互情報量を算出する評価関数により算出する。さらに、位置合わせ部17eは、各ROIの該当する対象断面に対する相対的位置が維持された状態で、例えば、第2断面の位置を複数の位置にずらす。そして、位置合わせ部17eは、2つの対象断面を移動するごとに、ROI間の類似度として相互情報量を算出する。例えば、位置合わせ部17eは、図5の(A)〜(D)に示すように、「初期設定、ずらし1、ずらし2、ずらし3」といったように、予め設定された所望の移動量で、第2断面を並進移動又は回転移動させる。
そして、位置合わせ部17eは、相互情報量の値が最適化された状態となったROI間の位置関係に基づいて、2つのボリュームデータの位置合わせを行なう。すなわち、位置合わせ部17eは、相互情報量の値が最適化された状態となった第2断面の座標パラメータから、参照ボリュームデータと対象ボリュームデータとの間の位置ずれ量を決定する。
これにより、モニタ2は、図5の(E)に示すように、最良の位置合わせ結果を表示する。具体的には、モニタ2は、被検体Pの略同一断面が描出された2つのMPR画像を表示する。
ここで、位置合わせ部17eの実行する処理について、以下、数式などを用いて説明する。第1断面内のROIを「R」とし、第2断面内のROIを「F」とする。また、「R」及び「F」の間で対応する位置にある画素の画素値(r, f)から生成される2次元ヒストグラムを「HRF(r,f)」とする。また、「R」や「F」の画素数を「V」とする。このとき、「R」及び「F」の画素値がとる確率密度関数「PRF(r,f)」は、以下に示す式(2)により求められる。
また、「R」の画素値がとる確率密度関数「PR(r)」である「PR」は、以下に示す式(3)により求められる。
また、「F」の画素値がとる確率密度関数「PF(f)」である「PF」は、以下に示す式(4)により求められる。
式(2)〜(4)で求められた確率密度関数から、相互情報量「T(F;R)」は、以下に示す式(5)により求められる。
すなわち、位置合わせ部17eは、これら式(1)〜(5)を用いて、第1断面と第2断面とのROI間の相互情報量を算出する。なお、位置合わせ部17eは、各ずれ位置おいて、第2断面内のROIの位置を所定量にて複数箇所に移動させ、各箇所における相互情報量を算出する。そして、位置合わせ部17eは、算出した相互情報量の最大値を「ずれ位置の相互情報量」とする。
そして、位置合わせ部17eは、第2断面を移動させるごとに、相互情報量を算出する。ここで、第2断面の並進又は回転移動にともなう座標変換には、最低、X方向、Y方向、Z方向の並進移動と回転移動との6つの座標パラメータ、必要であれば3つのせん断方向も含めた9つの座標パラメータが用いられる。かかる座標変換を「α」とすると、座標変換後の第2断面のROIは「α(F)」と表される。したがって、位置合わせ部17eは、「R」と「α(F)」との相互情報量「T(α(F);R)」を最大にするαを、公知の最適化手法を用いて決定することで、参照ボリュームデータと対象ボリュームデータとの間の位置ずれ量を決定する。
例えば、位置合わせ部17eは、相互情報量が最適値基準となるまで、第2断面のずらし処理を行なうことで、参照ボリュームデータと対象ボリュームデータとの間の位置ずれ量を決定する。あるいは、位置合わせ部17eは、第2断面のずらし処理を所定の回数(例えば、7回)行ない、相互情報量が最大となった第2断面の位置に基づいて、参照ボリュームデータと対象ボリュームデータとの間の位置ずれ量を決定しても良い。なお、ずらし対象となる対象断面は、第1断面である場合であっても良い。
このように、位置合わせ部17eは、本実施形態に係る超音波診断装置により生成された2つの超音波ボリュームデータ間や、実施形態に係る超音波診断装置により生成された超音波ボリュームデータと他の医用画像診断装置により生成されたボリュームデータとの間で位置合わせを行なう。したがって、位置合わせ部17eは、一つの超音波ボリュームデータを介して、複数のボリュームデータ間の位置合わせを行なうことができる。その結果、モニタ2は、複数の位置合わせされたボリュームデータを表示することができる。図6は、位置合わせ部の処理結果の一例を説明するための図である。
例えば、位置合わせ部17eによる処理結果として、モニタ2は、図6に示すように、「治療前THI」により生成された超音波ボリュームデータと、「治療前CHI」により生成された超音波ボリュームデータと、「治療中THI」により生成された超音波ボリュームデータと、「治療後造影X線CT検査」により生成されたX線CTボリュームデータとで、被検体Pの略同一位置のMPR画像を表示することができる。なお、操作者は、表示画面にて各MPR画像とともに表示された「並進移動ボタン」や「回転移動ボタン」を操作することで、MPR画像の断面位置を、位置合わせされた状態で移動させることができる。
なお、本実施形態は、位置合わせ部17eが類似度を算出するための評価関数として、相互情報量を算出する関数以外にも、他の評価関数を用いる場合であっても良い。例えば、位置合わせ部17eは、類似度を算出するための評価関数として、相互相関係数、又は、ROI間の輝度の差分値の二乗平均、又は、ROI間の輝度(画素値)の差分値の平均情報量を算出する関数を用いる場合であっても良い。これら類似度を用いても、位置合わせ部17eは、第1断面又は第2断面を移動させることで、2つのボリュームデータ間の位置合わせを行なうことができる。
次に、図7及び図8を用いて、本実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図7は、本実施形態に係る超音波診断装置のROI設定処理を説明するためのフローチャートである。また、図8は、本実施形態に係る超音波診断装置の位置合わせ処理を説明するためのフローチャートである。
図7に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置は、操作者から入力装置3を介して、少なくとも一方が超音波ボリュームデータである参照ボリュームデータ及び対象ボリュームデータの指定を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、参照ボリュームデータ及び対象ボリュームデータの指定を受け付けない場合(ステップS101否定)、超音波診断装置は、待機状態となる。
一方、参照ボリュームデータ及び対象ボリュームデータの指定を受け付けた場合(ステップS101肯定)、制御部18は、指定された参照ボリュームデータ及び対象ボリュームデータを読込んで、画像生成部14及びモニタ2に対して、2つのボリュームデータそれぞれから初期位置におけるMPR画像を生成して表示するように制御する(ステップS102)。
そして、対象断面受け付け部17aは、モニタ2に表示された各MPR画像において、主対象構造物の指定を受け付けたか否かを判定する(ステップS103)。ここで、主対象構造物の指定を受け付けない場合(ステップS103否定)、制御部18は、初期位置の変更要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS104)。ここで、初期位置の変更要求を受け付けない場合(ステップS104否定)、制御部18の指示により、対象断面受け付け部17aは、ステップS103の判定処理を行なう。
一方、初期位置の変更要求を受け付けた場合(ステップS104肯定)、制御部18は、画像生成部14及びモニタ2に対して、2つのボリュームデータそれぞれから変更された位置(断面)におけるMPR画像を生成して表示するように制御する(ステップS105)。そして、制御部18の指示により、対象断面受け付け部17aは、ステップS103の判定処理を行なう。
一方、主対象構造物の指定を受け付けた場合(ステップS103肯定)、対象断面受け付け部17aは、主対象構造物が指定された参照ボリュームデータにおける対象断面(第1断面)及び対象ボリュームデータにおける対象断面(第2断面)の位置情報を算出部17bに通知する。
そして、算出部17bは、対象断面受け付け部17aが受け付けた2つの対象断面のうち、第1断面を複数の小分画に分割し(ステップS106)、分割した各小分画の平均情報量を算出する(ステップS107)。
その後、抽出部17cは、算出部17bにより算出された複数の小分画それぞれの平均情報量に基づいて、第1断面にてROI(2つのボリュームデータを位置合わせするための関心領域)を抽出する(ステップS108)。
続いて、設置部17dは、抽出部17cにより抽出されたROIの第1断面における同様の位置関係にて、第2断面に対となるROIを設置し(ステップS109)、ROIペアの設定が終了する。
そして、位置合わせ部17eは、抽出部17cおよび設置部17dの処理により2つのボリュームデータそれぞれに対として設定されたROIペアを用いて、2つのボリュームデータの位置合わせを行なう。
すなわち、図8に示すように、位置合わせ部17eは、抽出部17cおよび設置部17dの処理により2つのボリュームデータそれぞれにROIペアが設定されたか否かを判定する(ステップS201)。ここで、ROIペアが設定されていない場合(ステップS201否定)、位置合わせ部17eは、ROIペアが設定されるまで待機する。
一方、ROIペアが設定された場合(ステップS201肯定)、位置合わせ部17eは、ROI間の相互情報量を算出し(ステップS202)、算出した相互情報量が最適値基準を満たすか否かを判定する(ステップS203)。ここで、最適値基準を満たさない場合(ステップS203否定)、位置合わせ部17eは、第2断面の移動、すなわち、第2断面の座標変換を行ない(ステップS204)、第2断面におけるROIを移動する(ステップS205)。そして、位置合わせ部17eは、ステップS202に戻って、移動後のRIOを用いて、ROI間の相互情報量を算出する。
一方、最適値基準を満たした場合(ステップS203肯定)、位置合わせ部17eは、参照ボリュームデータと対象ボリュームデータとの間の位置ずれ量を決定する(ステップS206)。これにより、参照ボリュームデータと対象ボリュームデータとの位置合わせが終了する。
そして、制御部18は、位置合わせされたボリュームデータをモニタ2にて並列表示するように制御し(ステップS207、図5の(E)を参照)、処理を終了する。
上述してきたように、本実施形態では、対象断面受け付け部17aは、少なくとも一方が超音波の反射波に基づいて生成された超音波ボリュームデータである2つのボリュームデータにおいて、共通する構造物を含む2つの断面(対象断面)を入力装置3を介して操作者から受け付ける。算出部17bは、対象断面受け付け部17aが受け付けた2つの対象断面のいずれか一方の断面である第1断面を複数の小分画に分割し、当該複数の小分画それぞれの特徴量を算出する。抽出部17cは、算出部17bにより算出された複数の小分画それぞれの特徴量に基づいて、複数の小分画から2つのボリュームデータを位置合わせするための関心領域(ROI)を抽出する。位置合わせ部17eは、抽出部17cにより抽出されたROIを用いて、2つのボリュームデータの位置合わせを行なう。
すなわち、本実施形態では、操作者が位置合わせを行なうために重要であると判断した主対象構造物が含まれる断面内で、特徴量に基づいてROIを設定することができる。換言すれば、本実施形態では、操作者が指定した主対象構造物と比べて、より正確な位置合わせを行なえる可能性のあるROIを設定することができる。したがって、本実施形態では、ボリュームデータ間の正確な位置合わせを行なうことが可能となる。また、本実施形態では、操作者は、モニタ2に表示されるMPR画像のスライス位置を変更して、簡易に主対象構造物の選択及び指定を行なうだけで位置合わせが自動的に実行されるので、位置合わせ処理に係る操作者の負担を軽減することが可能となる。
また、本実施形態では、設置部17dは、抽出部17cにより抽出されたROIの第1断面における同様の位置関係にて、当該第1断面とともに対象断面受け付け部17aが受け付けた他方の対象断面である第2断面に対となる関心領域を設置する。そして、位置合わせ部17eは、抽出部17cおよび設置部17dの処理により2つのボリュームデータそれぞれに対として設定されたROIペアを用いて、2つのボリュームデータの位置合わせを行なう。
したがって、本実施形態では、ROIペアが自動的に設定されるので、位置合わせ処理に係る操作者の負担をより軽減することが可能となる。
また、本実施形態では、位置合わせ部17eは、抽出部17cおよび設置部17dの処理により2つのボリュームデータそれぞれに対として設定された各ROIの該当する対象断面に対する相対的位置が維持された状態で、第1断面又は第2断面のいずれか一方を複数の位置にずらす。そして、位置合わせ部17eは、2つの対象断面を移動するごとに、関心領域間の類似度を評価関数により算出し、算出結果が最適化された状態となった関心領域間の位置関係に基づいて、2つのボリュームデータの位置合わせを行なう。
すなわち、本実施形態では、ROIペアの一方の位置をずらしながら位置合わせを行なうので、局所解により位置合わせが行なわれることを回避することができる。その結果、本実施形態では、ボリュームデータ間の位置合わせの精度を向上させることが可能となる。
また、本実施形態では、算出部17bは、特徴量として平均情報量を算出し、位置合わせ部17eは、類似度として相互情報量を算出する。すなわち、本実施形態では、公知の技術を用いて位置合わせを行なうことができ、ボリュームデータ間の正確な位置合わせ簡易に行なうことが可能となる。
なお、上述した実施形態は、以下に説明する変形例により実行される場合であってもよい。以下、本実施形態に係る変形例について図9を用いて説明する。図9は、本実施形態に係る変形例を説明するための図である。
上述した実施形態では、主対象構造物を含む2つの対象断面のうち、第1断面が2次元の小分画に分割されて、2次元の各小分画の特徴量が算出される場合について説明した。しかし、本実施形態は、図9の(A)に示すように、算出部17bが第1断面を含む3次元の第1領域を3次元の小分画に分画し、3次元の各小分画を算出する場合であっても良い。かかる場合、抽出部17cは、3次元のROIを第1領域から抽出する。そして、設置部17dは、抽出部17cにより抽出された3次元のROIの第1領域における位置関係と同様の位置関係にて、第2断面を含む第2領域に対となるROIを設置する。そして、位置合わせ部17eは、3次元のROIペアを用いて類似度(例えば、相互情報量)を算出して、参照ボリュームデータと対象ボリュームデータとの位置合わせを行なう。
3次元のROIペアを設置する変形例を適用することで、2次元のROIペアと比較して、位置合わせに用いられる情報量を増大することができ、ボリュームデータ間の位置合わせをより正確に行なうことが可能となる。
また、上述した実施形態では、抽出部17cおよび設置部17dの処理により2つのボリュームデータそれぞれに設定された複数のROIペアをそのまま位置合わせ処理に用いられる場合について説明した。しかし、本実施形態は、位置合わせ部17eが、操作者が指定したROIペアを用いて、2つのボリュームデータの位置合わせを行なう場合であっても良い。例えば、操作者は、図9の(B)に示すように、モニタ2にて表示されている第1断面内に抽出されたROI(a)を入力装置3が有するマウスを用いてクリックすることで、ROI(a)およびROI(a)に対応する第2断面内のROIを、位置合わせ用のROIから除外する。かかる場合、位置合わせ部17eが、操作者が除外した以外の2つのROIペアを用いて、2つのボリュームデータの位置合わせを行なう。
例えば、比較読影を行なう医師は、主構造対象物から離れた位置に設定されたROIペアについては、正確な位置合わせが実行される必要がないと判断して、除外する。
あるいは、異なるFOV(Field Of View)により撮影が行なわれたボリュームデータ間で位置合わせ処理を行なう場合に、操作者は、位置合わせに用いるROIペアの指定を行なう。例えば、X線CTボリュームデータの第1断面内にて抽出されたROIとペアを形成するROIとして超音波ボリュームデータの第2断面内にて設置されたROIが、当該超音波ボリュームデータのFOV外に位置する場合、かかるROIペアを用いても、位置合わせの精度は、低下する。そこで、操作者は、一方のボリュームデータのFOV外に設定されたROIペアを除外し、両方のボリュームデータのFOV内に設定されたROIペアを、位置合わせに用いるROIペアとして指定する。
このように、ROIペアの指定を操作者に委ねる変形例によれば、操作者の意向に沿ったボリュームデータ間の位置合わせを行なうことや、ボリュームデータ間の位置合わせの精度低下の防止を行なうことが可能となる。
なお、上述した実施形態では、超音波診断装置において位置合わせ処理が行なわれる場合について説明した。しかし、超音波診断装置とは独立に設置された画像処理装置により、上述した位置合わせ処理が行なわれる場合であってもよい。具体的には、図1に示すボリュームデータ処理部17及び制御部18の表示制御機能を有する画像処理装置が、超音波診断装置を含む各種医用画像診断装置、又は、PACSのデータベースや、電子カルテシステムのデータベースから受信した2つのボリュームデータを受信して上述した位置合わせ処理を行なう場合であってもよい。
また、上述した実施形態で説明した画像処理方法は、あらかじめ用意された画像処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータである画像処理装置にて実行することによって実現することができる。この画像処理プログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、この画像処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータである画像処理装置によって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上、説明したとおり、本実施形態によれば、ボリュームデータ間の正確な位置合わせを行なうことが可能となる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。