以下、図面を参照して、本発明の定量シリンジ型噴出容器を、様々な実施形態を用いて詳細に説明する。
図1〜5には、本発明の第1実施形態である、合成樹脂製の点鼻薬噴出容器1を示す。図1中、符号10は、内容物(点鼻薬)Cを充填可能な合成樹脂製シリンジである。シリンジ10は、中空の胴部11を有し、この胴部11には、肩部12を介して先端部13が一体に繋がる。先端部13は、胴部11よりも径が小さい。また、胴部11には、先端部13と対向する後端部に、指掛け部14が別体に設けられている。指掛け部14には、シリンジ10内を外界に通じさせる、シリンジ10の後端開口部A2が形成されている。これにより、指掛け部14の後端は、シリンジ10の後端10eを構成する。なお、指掛け部14は、胴部11と一体に設けることもできる。また、シリンジ10はガラス製とすることができる。
符号20は、シリンジ10の先端部13に装着されるノズルである。本実施形態では、ノズル20は、内容物Cの噴霧用のノズルであり、噴出孔A1が形成された本体21にチップ22を内蔵する。チップ22は、シリンジ10の貫通孔10aから圧送された内容物Cを、霧状に変化させて噴出孔A1に放出する。ノズル20は、チップ22を交換すること等により、貫通孔10aを通って圧送された内容物Cを噴出孔A1より、噴霧に限らず、様々な形態で噴出させることができる。
符号Pは、シリンジ10内に押し込み可能な合成樹脂製のプランジャである。プランジャPは、ピストン保持部材30と、このピストン保持部材30の後方に配置されるプランジャ操作部材40とを有する。
ピストン保持部材30は、ピストン30pを保持する本体31を備える。ピストン30pは、本体31の先端部に設けられている。本体31は、ピストン30pを固定する固定部31hと、断面十字形に組み合わせた縦長の4枚のプレート部31aと、ディスク部31bとを一体に備える。ピストン30pは、例えば、ゴムなどの弾性材料からなり、シリンジ10の胴部11の内周面10fに摺動可能に保持されている。
本体31に設けたピストン30pと、シリンジ10との間には、内容物Cを充填する充填空間Rが形成される。内容物C(例えば、本実施形態では、「点鼻薬」)は、ピストン30pの押し込みによって、シリンジ10の先端部13に形成した貫通孔10aに圧送される。
また、本体31には、シャフト32が一体に設けられている。シャフト32は、ディスク部31bから軸線(点鼻薬噴出容器1の中心軸線)Oに沿って後方に伸びる。シャフト32は、図2に示すように、ディスク部31bに繋がりディスク部31bよりも径の小さい大径部32aと、大径部32aよりも径の小さい小径部32bとを有する。本実施形態では、シャフト32には、軸線Oを挟んで反対側の位置にそれぞれ、小径部32bから大径部32aにかけて、平坦に窪ませた窪み面32cが形成されている。さらに小径部32bは、その後端側に軸線O周りを周回する環状溝32dが形成されている。小径部32bに環状溝32dが形成されていることで、シャフト32の後端には、ヘッド32eが形成される。ヘッド32eは、シャフト32の後端に向かって先細りする傾斜面32fを有する。
また、本体31には、2つのアーム33が一体に設けられている。アーム33はそれぞれ、シャフト32に形成した窪み面32cと対向する位置に配置されている。アーム33はそれぞれ、平板状の形状を有し、ディスク部31bから軸線Oに沿って後方に伸びる。アーム33はそれぞれ、外力を負荷することによって固定端33aを起点に径方向(軸線Oに直交する方向)内向きに変形させることができる。またアーム33はそれぞれ、その負荷(外力)を解除することによって初期位置(本実施形態では、図1の位置)に復元させることができる。これにより、アーム33の自由端33eは、固定端33aを起点に径方向内向きに変位させることができるとともに、前記初期位置に復帰させることができる。なお、本実施形態では、アーム33は薄肉に形成されていることで、その変形及び復元がしやすく構成されている。
また、アーム33には、1つの摺動突起34が一体に設けられている。摺動突起34はそれぞれ、図1に示すように、シリンジ10の内周面10fと対向するように配置されている。また、2つの摺動突起34は、図1に示すように、軸線Oを挟んで反対側に配置されるとともに、2つの摺動突起34の最大外形寸法が径方向の相互間に形成する間隔がシリンジ10の内径(本実施形態では、シリンジ10の後端開口部A2と同径)よりも大きく設定されている。摺動突起34は、シリンジ10の後端10eに接触すると、アーム33が固定端33aを起点に撓み変形することで、シリンジ10内に進入するとともに、シリンジ10の内周面10fを摺動することができる。
本実施形態では、図2に示すように、摺動突起34は、固定端33aに向かって先細りに傾斜する傾斜面34fを有する。これにより、摺動突起34は、シリンジ10の後端開口部A2からシリンジ10内に容易に進入させることができる。
さらに、アーム33には、係止突起35が一体に設けられている。係止突起35は、径方向外向きに突出している。また係止突起35は、摺動突起34よりも後方の位置に間隔を置いて配置されている。加えて、係止突起35は、図1の全体図に示すように、2つの最大外形寸法が径方向の相互間に形成する間隔がシリンジ10の後端開口部A2よりも大きく設定されている。これにより、係止突起35は、シリンジ10の後端10eとの接触によりシリンジ10の後端10eに引っ掛かって係止される。すなわち、係止突起35は、ピストン保持部材30がシリンジ10に進入することを制限するストッパ部として機能する。
また、本実施形態では、図1の拡大図に示すように、アーム33の自由端33eは、軸線Oと直交する線(水平線)に対して径方向外向きに向かうに従って先端側に角度θで傾斜するテーパで構成されている。例えば、θは、アーム33が内側に傾いたときに、前記水平線と平行になるように設定する。なお、本実施形態では、係止突起35は、アーム33の自由端33e側に一体に形成されている。すなわち、本実施形態では、係止突起35の後端面は、アーム33の自由端33eとして構成される。
加えて、本実施形態では、図1の拡大図に示すように、係止突起35に段差36が設けられている。段差36は、アーム33の自由端33eの内側に形成されている。本実施形態では、段差36は、平坦な段差底面36aと、この段差底面36aに繋がる段差側面36bで形作られる。本実施形態では、段差側面36bは、段差底面36aからアーム33の自由端33eに向かって外向きに傾斜するテーパ面として形成されている。
一方、プランジャ操作部材40は、図1の全体図に示すように本体41を有する。本体41の後端には、使用者がピストン保持部材30を押し込むためのプランジャ操作部42が一体に設けられている。本体41は、図2に示すように、円筒形状をなしている。プランジャ操作部材40の内側には、プランジャ操作部材40の先端40aと後端40bとの間を貫通する内部空間R4,R5が形成されている。内部空間R4,R5には、ピストン保持部材30のシャフト32がスライド可能に貫通する。本実施形態では、シャフト32の小径部32bを内部空間R4に配置することにより、プランジャ操作部材40の軸線O周りの動き(ガタツキ)を制限する。
また、プランジャ操作部材40は、図2に示すように、内部空間R4に、環状突起43が設けられている。環状突起43は、本体41の内側から突出し、その内側に、内部空間R4よりも径の小さい開口部A3を形成する。開口部A3は、ピストン保持部材30に設けたシャフト32の環状溝32dの外径よりも大きく、ヘッド32eよりも小さい内径を有する。環状突起43は、図1に示すように、シャフト32の環状溝32dの部分を貫通させるとともに、ヘッド32eを抜け止め保持する。すなわち、ヘッド32eと環状突起43とは、ピストン保持部材30にプランジャ操作部材40を抜け止め保持する抜け止め部として機能する。
特に、本実施形態では、図2に示すように、環状突起43の内周面43fが後方に向かって縮径するテーパ面で構成されている。これにより、ヘッド32eを開口部A3に通して環状突起43の内側に容易に組み付けることができる。また、環状突起43は、内部空間R4に設けられることで、図1に示すように、遊び空間41sを形成する。遊び空間41sは、シャフト32のヘッド32eを、内部空間R4のうち、環状突起43よりも後端側の内部空間R4に収容することにより、ピストン保持部材30とプランジャ操作部材40とを軸線Oに沿って前後に移動させることができる。これにより、ピストン保持部材30とプランジャ操作部材40とを、互いに軸線Oに沿って移動可能に連結することができる。
また、図2に示すように、プランジャ操作部材40の本体41には、内部空間R4よりも大きい内径を有する内部空間R5に通じる複数の切欠き44が形成されている。切欠き44は、プランジャ操作部材40の先端40aから後方に向かって内部空間R4に至るまで伸びている。本実施形態では、切欠き44は、軸線Oを挟んで向かう合う2箇所に形成されている。切欠き44は、図3に示すように、アーム33の横幅によりも僅かに広い幅を有し、アーム33を動作可能に収容することで、アーム33の動きを実質、径方向に沿った動きのみに規制する。
また、プランジャ操作部材40の本体41には、切欠き44が形成されることにより、この切欠き44が突き当たる突き当たり端部45が設けられる。このプランジャ操作部材40の本体41に設けた突き当たり端部45は、ピストン保持部材30のアーム33に設けた係止突起35側に接触することで、アーム33をピストン30pとプランジャ操作部材40との間に拘束することができる。本実施形態では、切欠き44の突き当たり端部45は、図1の拡大図に示すように、本体41から突き当たり端部45に向かって先細りする傾斜面46を介して一体に伸びる凸部として形成されている。本実施形態では、突き当たり端部45に形成された平坦な突き当たり先端面45aが、ピストン保持部材30の段差底面36aを受圧面として、この段差底面36aを押圧する押圧面として形成されている。すなわち、プランジャ操作部材40に設けた突き当たり先端面45aは、プランジャ操作部材40を押し込むことでピストン保持部材30の段差底面36aを押圧する。これにより、プランジャ操作部材40を押し込めば、ピストン保持部材30をシリンジ10内に押し込むことができる。
加えて、プランジャ操作部材40は、図3に示すように、本体41に、軸線Oを挟んで反対側の位置にそれぞれ、1つの係止部47が一体に設けられている。係止部47は、切欠き44の相互間の2箇所の位置に配置されているとともに、プランジャ操作部材40の本体41の先端40a側に配置されている。本実施形態では、係止部47は、本体41から一体に隆起してなる。2つの係止部47の最大外形寸法が径方向の相互間に形成する間隔は、図3に示すようにシリンジ10に形成された後端開口部A2の内径よりも大きくなるように設定されている。これにより、係止部47は、シリンジ10の後端10eとの接触によって引っ掛かることで、シリンジ10に対して係止される。
さらに本実施形態では、プランジャ操作部材40に設けた係止部47とシリンジ10の後端10eとの引っ掛かりは、係止部47がシリンジ10の後端10eを所定の力以上で押圧したときに解除できるように設定している。本実施形態では、2つの係止部47の最大外形寸法が径方向の相互間に形成する間隔とシリンジ10の後端開口部A2の内径との差分(シリンジ10の後端10eに接触する量)を調整することで、引っ掛かりが所定の力で解除できるように設定している。引っ掛かりを解除するのに必要な所定の力は、使用者、内容物、使用目的等に応じて、適宜設定することができる。
本実施形態では、係止部47は、図3に示すように、本体41からドーム状に隆起する。さらに、係止部47は、図1に示すように、トラック形状(2つの半円の両端をそれぞれ、1つの直線で連結した形状)の輪郭を有する。なお、係止部47を本体41の外表面から見たときの輪郭は、トラック形状に限定されることなく、本体41の幅方向(周方向)に沿って伸びる長軸を有する楕円形状等、様々な形状を採用することができる。
ところで、プランジャ操作部材40でピストン保持部材30を押し込んで、ピストン保持部材30の摺動突起34をシリンジ10の後端開口部A2からシリンジ10内に進入させると、アーム33には、図4(a),(b)に示すように、摺動突起34を起点にした撓み変形が生じる。このため、この押し込みを解除すれば、図4(c)に示すように、アーム33は、摺動突起34を起点に斜め内向き(アーム33の後方に向かうに従ってアーム33が軸線Oに接近するように傾斜する向き)に変形(復元)する。これは、アーム33全体が復元しようとしても、アーム33の固定端33a側は摺動突起34を起点に内側に変形したままのためである。
本実施形態では、図4(c)に示すように、ピストン保持部材30に設けた係止突起35は、シリンジ操作部材40の押し込みを解除してアーム33が斜め内向きに変形(復元)したのちもシリンジ10の後端10eとの接触による引っ掛かりによって、シリンジ操作部材40の押し込み、すなわち、さらにピストン保持部材30がシリンジ10内に進入することを制限している。
さらに本実施形態では、ピストン保持部材30に設けた係止突起35とシリンジ10の後端10eとの引っ掛かりは、ピストン保持部材30に設けた係止突起35がシリンジ10の後端10eを所定の力以上で押圧したときに解除できるように設定している。本実施形態では、ピストン保持部材30に設けた係止突起35がアーム33の側面から突出する寸法(シリンジ10の後端10eに接触する量)を調整することで、引っ掛かりが所定の力で解除できるように設定している。引っ掛かりを解除するのに必要な所定の力は、使用者、内容物、使用目的等に応じて、適宜設定することができる。
次に、点鼻薬噴出容器1の使用方法を説明する。
使用者は先ず、図1に示す状態で、人差し指と中指を指掛け部14に掛けてプランジャ操作部42を親指で押さえて点鼻薬噴出容器1を保持する。点鼻薬噴出容器1のノズル20を一方の鼻孔に挿入した後は、プランジャ操作部材40を押し込む。本実施形態では、プランジャ操作部材40に設けた係止部47とシリンジ10の後端10eとの引っ掛かりが解除されるまでプランジャ操作部材40を押し込む必要がある。すなわち、プランジャ操作部材40を押し込む力が所定以上の力に達するまでは、プランジャ操作部材40をピストン保持部材30とともに押し込むことができない。
一方、プランジャ操作部材40をさらに強い力で押し込めば、プランジャ操作部材40に設けた係止部47とシリンジ10の後端10eとの引っ掛かりが解除されることで、プランジャ操作部材40をピストン保持部材30とともに強い力で勢いよく押し込むことができる。ピストン保持部材30の押し込みは、図1の拡大図に示すように、プランジャ操作部材40の突き当たり先端面45aがピストン保持部材30の段差底面36aを押圧することにより生じる。このため、ピストン保持部材30は、プランジャ操作部材40とともに、プランジャPとしてシリンジ10内に押し込まれる。
本実施形態では、ピストン保持部材30の摺動突起34に傾斜面34fが形成されている。このため、摺動突起34は、図4(a)に示すように、シリンジ10の後端開口部A2からシリンジ10内に容易に進入させることができる。ピストン保持部材30に設けたアーム33の摺動突起34は、プランジャ操作部材40から勢い良く受けた強い力によって、シリンダ10の後端開口部A2からシリンジ10の内周面10fを勢い良く一気にスライドする。
すなわち、プランジャ操作部材40が押し込まれることで、プランジャ操作部材40に設けた係止部47とシリンジ10の後端10eとの引っ掛かりが解除されると、その瞬間、シリンジ10内の内容物Cは、ピストン保持部材30によって勢い良く短時間にシリンジ10の貫通孔10aから押し出される。このように、シリンジ10の貫通孔10aから内容物Cが勢いよく短時間に押し出されることで、ノズル20に形成された噴出孔A1からは、内容物Cを一定の状態に保ちつつ安定的に噴出させることができる。
ところで、ピストン保持部材30の押し込みは、図1の拡大図に示すように、プランジャ操作部材40の突き当たり先端面45aが、ピストン保持部材30に設けたアーム33の段差底面36aに接触することで実現される。また、ピストン保持部材30は、ピストン30pを介してシリンジ10にスライド可能に保持されている。このため、ピストン保持部材30に設けたアーム33の段差底面36aは、アーム33の内向き変位を規制する規制部分としても機能する。特に本実施形態では、プランジャ操作部材40の突き当たり先端面45aが本体41の傾斜面46に繋がる突き当たり端部45に形成されているとともに、この突き当たり端部45がアーム33の段差36に収容されていることから、アーム33の段差側面36bもアーム33の内向き変位を規制する規制部分として機能する。
また、本実施形態では、ピストン保持部材30をシリンジ10内に押し込んだとき、例えば、図4(c)に示すように、アーム33の摺動突起34がシリンジ10の後端開口部A2(シリンジ10の内周面10f)に接触する。このため、アーム33の固定端33a側の動きは、シリンジ10との間で拘束される。また、アーム33の自由端33e側も、プランジャ操作部材40の押し込みによってシリンジ10との間で拘束される。その結果、プランジャ操作部材40の押し込みは、図4(a)に示すように、ピストン保持部材30に設けたアーム33の固定端33aと自由端33eとの間で摺動突起34を起点にした撓み変形を生じさせつつ、摺動突起34がシリンジ10の内周面10fを摺動することで許容される。
これにより、プランジャ操作部材40に設けた係止部47とシリンジ10の後端10eとの引っ掛かりが解除されたのちは、図4(b)に示すように、ピストン保持部材30に設けたアーム33に設けた係止突起35がシリンジ10の後端10eに引っ掛かって係止されるまで、噴出孔A1から内容物Cを鼻孔に一定量噴出させることができる。なお、本実施形態では、ピストン保持部材30に設けたシャフト32に2つの窪み面32cを形成し、これら窪み面32cと向かい合わせにそれぞれ、アーム33を配置したことで、アーム33に撓み変形が生じたときも、アーム33がシャフト32に干渉することがない。このため、プランジャ操作部材40の径方向寸法を大径化させることなく、アーム33が撓み変形したときの撓み量を大きく確保することができる。
ピストン保持部材30に設けた係止突起35がシリンジ10の後端10eに引っ掛かって係止されると、プランジャ操作部材40をシリンジ10内に押し込むことができなくなる。すなわち、ピストン保持部材30に設けた係止突起35は、シリンジ10の後端10eに係止されることでストッパ部として機能する。これにより、空間Rに内容物Cを残した状態で1回目の噴出は終了する。この時点での空間Rの容量は、使用目的に応じて適宜選択できるが、例えば、噴出開始前の空間Rの容量の半分とする。
次いで、プランジャ操作部材40の押し込みを解除すると、図4(c)に示すように、ピストン保持部材30に設けたアーム33の撓み変形に対する復元力によって、アーム33の自由端33e側だけが摺動突起34を起点に変形(復元)する。本実施形態では、図4(c)に示すように、アーム33の自由端33e側が摺動突起34を基点として内向きに変形(復元)するとき、プランジャ操作部材40の突き当たり端部45は、アーム33に形成された段差側面36bに案内される。この場合、アーム33の自由端33e側は、図4(c)に示すように、プランジャ操作部材40を後方に押し戻しつつプランジャ操作部材40による規制から解除されることで、内向きに容易に復元させることができる。
しかしながら、本実施形態では、図4(c)に示すように、ピストン保持部材30に設けたアーム33が摺動突起34を基点として斜め内向きに変形したのちも、アーム33に設けた係止突起35とシリンジ10の後端10eとの引っ掛かりは維持される。このため、2回目の噴出の際も、アーム33に設けた係止突起35とシリンジ10の後端10eとの引っ掛かりが解除されるまでプランジャ操作部材40を押し込む必要がある。すなわち、2回目の噴出の際も、プランジャ操作部材40を押し込む力が所定以上の力に達するまでは、プランジャ操作部材40をピストン保持部材30とともに押し込むことができない。
一方、プランジャ操作部材40をさらに強い力で押し込めば、ピストン保持部材30のアーム33に設けた係止突起35とシリンジ10の後端10eとの引っ掛かりが解除されることで、図5に示すように、プランジャ操作部材40をピストン保持部材30とともに強い力で勢いよく押し込むことができる。すなわち、プランジャ操作部材40を押し込んで、アーム33に設けた係止突起35とシリンジ10の後端10eとの引っ掛かりが解除されると、その瞬間、1回目の噴出と同様、シリンジ10内の内容物Cは、ピストン保持部材30によって勢い良く短時間に貫通孔10aから押し出される。このように、シリンジ10に形成した貫通孔10aから内容物Cが勢いよく短時間に押し出されることで、ノズル20に形成された噴出孔A1からは、内容物Cを一定の状態に保ちつつ安定的に噴出させることができる。
従って、本実施形態では、図4(c)に示すように、プランジャ操作部材40の押し込みを解除した後、他方の鼻孔にノズル20を挿入して、再びプランジャ操作部材40を押し込めば、図5に示すように、2回目の噴出として、噴出口A1から充填空間R内に残った内容物Cを1回目と同様、一定の状態に保ちつつ安定的に噴出させることができる。なお、アーム33が摺動突起34を基点に斜め内向きに変形したときも、シャフト32に窪み面32cが形成されていることで、アーム33がシャフト32に干渉することがない。このため、プランジャ操作部材40の径方向寸法を大径化させることなく、アーム33が摺動突起34を基点に斜め内向きに撓み変形したときの撓み量を大きく確保することができる。
また、本実施形態では、上述のとおり、ピストン保持部材30に設けたアーム33の自由端33eに角度θのテーパをつけたため、アーム33の自由端33e側が摺動突起34を起点に斜め内向きに復元しても、プランジャ操作部材40の突き当たり先端面45aと平行に近い状態で接触できるので、ピストン保持部材30の押し込みを円滑に行うことができる。ただし、θの値は、点鼻薬噴出容器1の大きさ等に応じて、適宜変更することができる。すなわち、アーム33の自由端33eは、図1に示すような初期状態において前記水平線に対して平行な平坦面を形成することも可能である。
上述のように、本実施形態によれば、1つのシリンジ10に充填された内容物Cを一定の状態に保ちつつ安定的に、小分けして噴出させることができる。また、本実施形態では、プランジャ操作部材40の押し込みを解除したのち再度、プランジャ操作部材を押し込むことで、2回目の噴出が可能になる。このため、使用者は、2回目の噴出を行うときに点鼻薬噴出容器1を持ち替える必要がない。従って、使用者は、内容物Cの小分けを片手操作で行うことができる。
また、本実施形態では、プランジャ操作部材40がシリンジ10の後端10eに解除可能に係止される係止部47を有し、プランジャ操作部材40をピストン操作部材30に組み付けたときに、ピストン操作部材30に設けた係止突起35が係止部47よりも後方に位置するように設けられている。この場合、プランジャ操作部材40の押し込みを始める前から、プランジャ操作部材40に設けた係止部47がシリンジ10の後端10eに引っ掛かっているので、一定の状態を保ちつつ安定的に1回目の噴出を行うことができる。
また、本実施形態では、アーム33の自由端33e内側に、プランジャ操作部材40からの押し込みを受ける段差36を設けたことで、プランジャ操作部材40からの押し込みを効率的にピストン保持部材30に伝達させることができる。また、後述の第2実施形態のように、プランジャ操作部材40に、アーム33の自由端33eを押し込む押圧部としての突き当たり端部45の内側に延長リブ(突出部)45bを設けた場合も同様である。
ところで、2回目の噴出を安定して行うためには、例えば、図6(a)に参考技術として示す点鼻薬噴出容器4のように、プランジャ操作部材40に設けた係止部47を軸線Oに沿って間隔を置いて複数配置することも可能である。
しかしながら、プランジャ操作部材40は、2回目の噴出動作を確保するため、ピストン保持部材30に対して軸線O方向に遊び空間41sをもって組み付けられている。すなわち、プランジャ操作部材40は、ピストン保持部材30に設けたアーム33が摺動突起34を基点に斜め内向きに変形(復元)したときに、軸線O方向に沿って後方に押し戻される。このため、プランジャ操作部材40に2つの係止部47を設け、1回目の噴出動作を終了させると、図6(b)に示すように、ピストン保持部材30に設けたアーム33が摺動突起34を基点に斜め内向きに変形(復元)したとき、プランジャ操作部材40に設けた係止部47も、遊びΔxの分だけ、軸線O方向に沿って後方に押し戻されてしまう。
すなわち、プランジャ操作部材40に複数の係止部47を設けてシリンジ10の後端10eに引っ掛ける場合、プランジャ操作部材40に設けた係止部47は、シリンジ10の後端10eに対して軸線O方向に沿って後側にずれる可能性がある。こうしたずれは、結果的に、1回目の噴出動作と2回目の噴出動作との間で、ずれ(遊びΔx)の分だけ、押し込みによる、予期せぬ微小な噴出動作を引き起こすことが考えられる。
一方、ピストン保持部材30は、図6(b)及び図4(c)に示すように、上記参考技術においても、本発明に従う第1実施形態と同様に、1回目の噴出が終了した後も、そのアーム33に設けた摺動突起34によってシリンジ10内に保持されている。このため、本発明に従う本実施形態のように、ピストン保持部材30に設けた係止突起35をシリンジ10の後端10eに引っ掛ければ、図4(c)に示すように、この係止突起35がシリンジ10の後端10eに対してずれることがない。このため、本発明に従う本実施形態では、1回目の噴出動作と2回目の噴出動作との間で、予期せぬ微小な噴出を防止することができる。
図7には、本発明の第2実施形態である、合成樹脂製の点鼻薬噴出容器2を示す。図7(a)は、1回目の噴出が終了した状態を示し、図7(b)は、2回目の噴出を開始するためにプランジャ操作部材40の押し込みを開始した直後の状態を示す。また、本実施形態において、第1実施形態と実質的に同一の部分は、同一符号をもってその説明を省略する。
本実施形態では、プランジャ操作部材40に設けた突き当たり端部45の形状に変更を加えている。本実施形態では、図7(b)の拡大図に示すように、突き当たり端部45の内側に延長リブ45bが設けられている。延長リブ45bには、その先端に向かって先細りに傾斜する傾斜面45fが形成されている。
延長リブ45bの傾斜面45fは、例えば、1回目の噴出時には、図7(a)に示すように、ピストン保持部材30に設けたアーム33の段差底面36aに繋がる、アーム33の内面に合わさることで、アーム33に設けた係止突起35の径方向内側への変形を一定の位置までに制限する。また、延長リブ45bの傾斜面45fは、さらにプランジャ操作部材40を押し込んで2回目の噴出を開始する直後には、図7(b)の拡大図に示すように、ピストン保持部材30の段差側面36bに合わさることで、アーム33に設けた係止突起35の径方向内側への変形を一定の位置までに制限する。
本実施形態では、上述のとおり、アーム33の自由端33e側の変形を制限することで、1回目の噴出終了を確実なものとするとともに、2回目の噴出時には、ピストン保持部材30のアーム33に設けた係止突起35とシリンジ10の後端10eとの引っ掛かりが比較的強固になることで、より確実に内容物Cを勢い良く短時間に押し出すことができる。
図8には、本発明の第3実施形態である、合成樹脂製の点鼻薬噴出容器3を示す。図8(a),(b)にはそれぞれ、プランジャ操作部材40を押し込む前の初期状態を異なる方向から示す。本実施形態も、他の実施形態と実質的に同一の部分は、同一符号をもってその説明を省略する。
本実施形態では、第1及び第2実施形態よりも、プランジャ操作部材40の先端40aを先端側に向かって延長させている。例えば、図8(a)では、プランジャ操作部材40の先端40aは、ピストン保持部材30にプランジャ操作部材40を組み付けたとき、プランジャ操作部材40がピストン保持部材30に設けたアーム33を覆い隠すように規定されている。なお、本実施形態では、ピストン保持部材30は、本体31のディスク部31bに嵩上げ部31cを設け、この嵩上げ部31cにアーム33を連結している。
本実施形態では、プランジャ操作部材40の先端40aを延長することにより、ピストン保持部材30に組み付けたときのプランジャ操作部材40の傾き(ガタツキ)を抑えることで、ピストン保持部材30とプランジャ操作部材40とを安定した状態に組み付けることができる。
同様に、上記各実施形態では、プランジャ操作部材40に、係止突起35を動作可能に収納する切欠き44を形成したことから、プランジャPとしての全長を短縮できるとともに、ピストン保持部材30とプランジャ操作部材40を組み付けることで生じるガタツキを軽減することができる。従って、良好な操作を維持しつつ内容物を小分けにして噴出することができる。また、上記各実施形態のように、プランジャ操作部材40に設けた突き当たり端部45を、ピストン保持部材30に設けたアーム33を押し込む押圧部とすれば、別部材を用いることなく、アーム33をプランジャ操作部材40で押し込むことができる。
上述したところは、本発明の様々な実施形態であるが、本発明に従えば、様々な変更が可能となる。例えば、アーム33及び切欠き44は、3以上設けることができる。特に、本実施形態のように、偶数個で配置すれば、軸線O周りのバランスが安定するため、良好な操作が実現できる。上述の実施形態では、定量シリンジ型噴出容器を噴霧用の噴出容器として説明したが、本発明に従えば、泡として噴出させ、または、通常の液体として噴出させるなど、内容物を様々な形態で噴出させることができる。