図1は本発明の一実施形態に用いられる液滴吐出ヘッドの全体図を、図2はヘッド短手方向の断面図を、図3は個別液室基板の保持基板側の面の上面図をそれぞれ示している。本実施形態では個別液室基板は4列とし、図2には4列のうちの1列を示している。
図2、図3に示すように液滴吐出ヘッド1は、振動板2と圧電素子3と配線4と測温抵抗体5と駆動IC6と個別配線7と接続パッド8を上部に積層した個別液室基板9の下面にノズルプレート10を接合して形成されている。液滴吐出ヘッド1は、個別液室基板9上部に保持基板11、共通液室基板12、及びフレーム部材13を積層してインク流路を形成している。
図示していないインクタンクから連通する共通液室14(共通液室基板12、保持基板11)を介して、個別液室基板9に開口するインク供給口15、流体抵抗部16、個別液室17にインクが供給される。そして、個別液室17の振動板2上に形成される圧電素子3(圧電体と上部電極18及び下部電極19で構成)を駆動することで生じる圧力により、個別液室17に連通するノズル20からインクを吐出する。圧電素子3の駆動は、上部電極18と下部電極19とからそれぞれ配線を用いて引き出された先で、駆動IC6と接続されて行われる。
ノズルプレート10は、インク吐出用のノズル20が配列されている基板であり、その材料は必要な剛性や加工性から任意のものを用いることができる。例としてはステンレス、ニッケル等の金属または合金やシリコン、セラミックス等の無機材料、ポリイミド等の樹脂材料を挙げることができる。ノズル20の加工方法は、材料の特性と要求される精度・加工性から任意のものを選ぶことができ、電鋳メッキ法、エッチング法、プレス加工法、レーザ加工法、フォトリソグラフィ法等を例示できる。ノズル20の開口径、配列数、配列密度は、インクヘッドに要求される仕様に合わせて最適な組み合わせを設定することができる。
個別液室基板9には、個別液室17、流体抵抗部16、インク供給口15が形成される。基板材料は加工性及び物性から任意のものを用いることができるが、300dpi(約85μmピッチ)以上ではフォトリソグラフィ法を用いることができるシリコン基板を用いることが好ましい。液室の加工は任意のものを用いることができるが、フォトリソグラフィ法を用いる場合はウェットエッチング法、ドライエッチング法の何れかを用いることができる。何れの手法でも振動板2の液室側を二酸化シリコン膜等とすることでエッチストップ層とできるため、液室高さを高精度に制御することができる。
個別液室17はインクに圧力を加え、ノズル20から液滴を吐出させる機能を有する。個別液室17上部には振動板2が形成され、振動板2上には下部電極19、圧電体と上部電極18が積層された圧電素子3が形成される。振動板2は任意のものを用いることができるが、シリコンや窒化物、酸化物、炭化物等の剛性の高い材料とすることが好ましい。またこれ等の材料の積層構造としてもよく、その場合はそれぞれの材料の内部応力を考慮し、残留応力が少ない構成とすることが好ましい。例えばSi3N4とSiO2との積層の場合は、引張応力となるSi3N4と圧縮応力となるSiO2とを交互に積層し、応力緩和する構成が例として挙げられる。
振動板2の厚さは所望の特性に応じて選択できるが、概ね0.5〜10μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは1.0〜5.0μmの範囲である。振動板2が薄すぎる場合にはクラック等により振動板2が破損し易くなり、厚すぎる場合は変位量が小さくなり吐出効率が低下してしまう。また薄すぎる場合は、振動板2の固有振動数が低下し、駆動周波数が高められないという問題点がある。
下部電極19と上部電極18とは、導電性を有する任意の材料を用いることができる。例としては金属、合金、導電性化合物が挙げられる。これ等の材料の単層膜でも積層膜でもよい。また圧電体と反応したり拡散したりしない材料を選定する必要があるため、安定性の高い材料を選定する必要がある。また、必要に応じて圧電体、振動板2との密着性を考慮し、密着層を形成してもよい。電極材料の例としては、Pt、Ir、Ir酸化物、Pd、Pd酸化物等が安定性の高い材料として挙げられる。また、振動板2との密着層としては、Ti、Ta、W、Cr等が挙げられる。
圧電体材料は圧電性を示す強誘電体材料を用いることができる。例としてはチタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムが一般的に用いられる。圧電体の成膜方法は任意の手法を用いることができ、例としてはスパッタリング法、ゾルゲル法が挙げられ、成膜温度の低さからゾルゲル法が好ましい。上部電極18及び圧電体は個別液室17毎にパターニングする必要がある。パターニングは通常のフォトリソグラフィ法を用いることができる。また、圧電体の成膜をゾルゲル法にて行う場合は、スピンコーティング法や印刷法を用いることもできる。
上述の圧電体と電極とから構成される圧電素子3は、個別液室17の上部に形成される必要がある。個別液室17を区画する隔壁上に形成した場合には振動板2の変形を阻害してしまうため、吐出効率の低下や応力集中による圧電素子の破損等の原因となる。個別液室基板9には、個別液室17に連通する流体抵抗部16が形成される。流体抵抗部16は、共通液室14から個別液室17にインクを供給する機能を有すると同時に、圧電素子3を駆動することにより個別液室17に発生する圧力により、インクの逆流を防止しノズル20から吐出させる機能を有する。そのため、個別液室17のインク流動方向の断面積を小さくし、流体抵抗を高くする必要がある。個別液室基板9にシリコンを用い、フォトリソグラフィ法(+エッチング)を用いて個別液室17と流体抵抗部16とを形成した場合、個別液室17と同一の条件で加工できるメリットがある。流体抵抗部16の高さを個別液室より低くすることで流体抵抗を高めるには、個別液室17のオーバエッチング量を時間管理で制御する必要があるため、エッチングプレートのばらつきにより流体抵抗を均一にすることができない。その結果、吐出均一性が悪化する。流体抵抗部16は、振動板2が開口するインク供給口15を通じて共通液室14に連通する。
図示しないが、個別液室17は隔壁により区画されており、それぞれに対応する圧電素子3が形成される。個別液室17の高さはヘッド特性から任意に設定可能であるが、20〜100μmの範囲とすることが好ましい。また、個別液室17間の隔壁は配列密度に合わせて任意に設定可能であるが、隔壁幅は10〜30μmとすることが好ましい。また、隔壁幅が狭い場合は隣接する個別液室17の圧電素子3を駆動した場合に隣接液室間の相互干渉が発生し、吐出ばらつきが大きくなる。隔壁幅を狭くする場合は、液室高さを低くすることで対応する。
次に、配線について説明する。配列した圧電素子3に駆動信号を入力するために、上部電極18から個別配線7を引き出し、下部電極19から配線を引き出す構成を採る。上部電極18からは、配列する上部電極18から配線層の一部である個別配線7を介して図示しない個別配線パッドまで引き出され、駆動IC6と接続されて駆動IC6からさらに配線を介して接続パッドまで引き出される。下部電極19は、配線を介して接続パッドまで引き出され、駆動IC6と接続される。また、測温抵抗体5から配線を接続パッドまで引き出す。そして、接続パッドから図示しないヘッド外部回路に対して電気的に接続される。
配線は、同一材料及び同一工程で形成することが好ましい。配線材料としては、抵抗値の低い金属、合金、導電性材料を用いることができる。また、上部電極18、下部電極19とコンタクト抵抗の低い材料を用いることが必要である。例としては、Al,Au,Ag,Pd,Ir,W,Ti,Ta,Cu,Cr等が挙げられ、コンタクト抵抗を低減するためにこれ等の材料の積層構造としてもよい。コンタクト抵抗を下げる材料としては、任意の導電性化合物を用いてもよい。例としては、Ta2O5,TiO2,TiN,ZnO,In2O3,SnO等の酸化物、窒化物及びその複合化合物が挙げられる。膜厚は任意に設定できるが、3μm以下とすることが好ましい。また、成膜には真空成膜法等の膜厚均一性が高い成膜方法を採用することが好ましい。これ等の配線は、後述の保持基板との接合面にもなるため、高さ均一性を確保できる膜厚・成膜方法を採る必要がある。
次に、保持基板について説明する。上述したとおり個別液室基板9は20〜100μm厚と薄いため、個別液室基板9の剛性を確保するために保持基板11をノズルプレート10と対向する側に接合する。保持基板材料は任意の材料を用いることができるが、個別液室基板9の反りを防止するために熱膨張係数の近い材料を選定する必要がある。そのため、ガラス、シリコン、SiO2、ZrO2、Ai2O3等のセラミックス材料とすることが好ましい。
図2に示すように保持基板11には、個別液室配列方向に連通した開口部を有し、共通液室14の一部となる。さらに、個別液室17に対向する領域に保持基板凹部21を形成する。圧電素子3を駆動し、振動板2が変位できる空間を確保する必要がある。そして、図示しないが保持基板凹部21は個別液室17毎に区画し、個別液室隔壁上で接合されることが好ましい。それにより、板厚の薄い個別液室基板9の剛性を高めることができ、圧電素子3を駆動した際の隣接液室間の相互干渉を低減することができる。そのためには、保持基板11は樹脂等の低剛性材料ではなく、シリコン等の高剛性材料が好ましい。また、保持基板凹部21は個別液室17毎に区画されるため、高密度化のためには高度な加工精度が要求され、300dpiヘッドにおいては保持基板隔壁幅を5〜20μmとすることが望ましい。
次に、第1の温度検出手段について説明する。第1の温度検出手段はヘッド外の雰囲気温度を高精度に検出する。その手段としては、熱電対、サーミスタ、測温抵抗体、ダイオード等の市販されている温度検出手段を接着剤等でヘッドに組み付ける。第1の温度検出手段はヘッド外に配設されているため、ヘッド内の温度を応答よく高精度には検出できない。
次に、第2の温度検出手段について説明する。インク温度に対応した駆動エネルギをヘッドに供給するため、及び駆動IC6の過熱による故障を防止するために、測温抵抗体をヘッド内の個別液室基板上に形成する。層構成は、個別液室17を加圧する圧電素子3の積層構成とした。ここで、上部電極18を用いても下部電極19を用いてもよい。測温抵抗体専用の材料やプロセスを追加する必要がないため、コストアップすることがない。また専用のエリアも狭いため、ヘッドの大型化を防止することもできる。上部電極18または下部電極19の材料として、上述ではPt、Ir、Ir酸化物、Pd、Pd酸化物等としたが、測温抵抗体としてはPtが最も好ましい。Pt測温抵抗体は、国際温度目盛の標準温度計に採用されている等、測温抵抗体としては精度が最も高く、線形性が高い、耐腐食性や経時安定性に優れる等、温度センサとして最適である。
ここで、上部電極18または下部電極19に定電流を与えたときの電圧値から温度を推定するが、製造ばらつきによって推定する温度に誤差が生じる。そこで、高精度な第1の温度検出手段を用いて、この製造ばらつきによる誤差を補正する。具体的には、第1の温度検出手段と第2の温度検出手段とが同じ温度であるタイミングで、2種類の温度で補正を行う。例えば、ヘッド製造時、プリンタ電源投入時等が好ましい。プリンタ印字中等は、両者に温度差が生じるので好ましくない。2種類の温度における各温度検出手段の電圧値から電気抵抗を求め、温度に対する電気抵抗変化の予測式を作成する。そして、その予測式を元に温度検出手段で検出した温度情報を図4に示すようにヘッド外部回路へと送り、駆動IC6を通じて温度に応じた駆動エネルギを圧電素子3に供給する。また、駆動IC6が故障に至る温度が例えば150℃とすると、安全のために第2の温度検出手段が100℃を超えた場合にはヘッドへの電力供給を遮断し、画像形成を中断する。
次に、具体例を説明する。直径6インチ、厚さ600μmのシリコンウェハ上にSiO20.6μm、Si1.5μm、SiO20.4μmを積層することで3層構成の振動板を巻成した後に、下部電極としてTi20nm、Pt200nmをスパッタリング法で成膜した。下部電極上にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を有機金属溶液に用いたゾルゲル法で厚さ2μmを成膜した後に700℃で焼成し、PZTの圧電体膜を形成した。その後、圧電体膜上にPtを200nmスパッタリング法で成膜して上部電極とした。
上部電極形成後に、上部電極、圧電体、下部電極をドライエッチング法でパターニングすることで、個別液室に対応した圧電素子と第2の温度検出手段である測温抵抗体を形成した。圧電素子の配列ピッチは85μmとし、圧電体の幅は40μmとした。圧電素子の長手方向の長さは1000μmとし、1列当たりの圧電素子の配列数は300個で4列配置とした。測温抵抗体については個別液室基板の接続パッドに近い位置に形成した。接続パッドに近い位置に形成することにより、FPCを通ってヘッドへ供給されるエネルギによる温度状態を示すことが可能となり、精度よく波形制御を行うことができる。
また、個別液室隔壁上の部分は隔壁上で振動板の可動部にかからないように構成した。これにより個別液室に対応した振動板の変形を阻害することがない。次に、プラズマCVD法により層間絶縁膜を成膜し、上部電極上及び下部電極上の層間絶縁膜にコンタクトホールを形成後、Ti50nmとAl2μmを順次積層しドライエッチングすることで配線層を形成した。その後、図2に示すインク供給口15部分の振動板をドライエッチングで除去し、個別液室基板にインク供給口を形成して個別液室基板が完成する。
次に、保持基板凹部及び共通液室の一部となる保持基板開口部を有する保持基板を、直径6インチのシリコンウェハを用いて形成した。先ず、ウェハを厚さ400μmに研磨し、液室基板側に酸化膜等を形成する。その後、その酸化膜を保持基板凹部及び保持基板開口部が開口するようにフォトリソパターニングする。そして、さらにその上にレジストを形成し、保持基板開口部だけが開口するようにレジストをフォトリソパターニングする。そして、ICPエッチングで液室基板側から開口部を貫通形成する。その後、液室基板側のレジストのみを除去し、はじめにパターニングした酸化膜パターンをマスクとして基板側をICPエッチングでハーフエッチングする。最後に酸化膜を除去すると、個別液室基板側の凹部と貫通開口部を形成することができる。
作成した保持基板の接合面にエポキシ系接着剤をフレキソ印刷機で膜厚2μmで塗布して接合し、接着剤を硬化させることで保持基板を接合した。その後、600μmの個別液室基板を80μmまで研磨した後、個別液室、流体抵抗部をICPドライエッチング法で形成した。個別液室幅は60μmとし、流体抵抗部幅は30μm、長さは300μmとした。流体抵抗部、個別液室のエッチングは振動板に到達するまで行い、同一の高さとした。また、インク供給口の振動板は、事前にエッチングしたため貫通口を形成することができる。
ウェハをダイシングによりチップに切り出した後に、保持基板と同様の手法でノズルプレートと個別液室基板とを接合した。ノズルプレートは、厚さ30μmのステンレス材にプレス加工で直径20μmのノズルを85μmのピッチで形成したものを用いた。保持基板上にステンレス製の共通液室基板とフレーム部材とを接合し、インクタンクと接続して個別配線パッド部にACF接合やワイヤボンディングにて外部回路へ接続されるFPCを接合することで液滴吐出ヘッドとすることができた。そして、液滴吐出ヘッドの外部にサーミスタを組み付け、液滴吐出ヘッド製造時にサーミスタの温度に対して測温抵抗体の電気抵抗を検出する。また、プリンタへ液滴吐出ヘッドを組み付けた後、再度サーミスタの温度に対して測温抵抗体の電気抵抗を検出し、2点の温度における測温抵抗体の電気抵抗が得られ、ここからヘッド内の温度を高精度に応答よく推定することができた。
次に、本発明における液滴吐出ヘッドを備える画像形成装置の一例を図5、図6を参照して説明する。図5は画像形成装置の機構部の全体構成を示す概略図、図6は同機構部の要部概略平面図である。
同図において画像形成装置200はシリアル型画像形成装置であり、左右の側板221A,221Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド231,232でキャリッジ233を主走査方向に摺動自在に保持している。そして、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して矢印方向であるキャリッジ主走査方向に移動走査する。キャリッジ233には、イエロ(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための記録ヘッド234を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列している。本発明に係る液滴吐出ヘッドである記録ヘッド234は、インク滴吐出方向を下方に向けて装着されている。記録ヘッド234は、それぞれ2つのノズル列を有する液滴吐出ヘッド234a,234bを1つのベース部材に取り付けて構成されている。一方のヘッド234aの一方のノズル列はブラックの液滴を、他方のノズル列はシアンの液滴を、他方のヘッド234bの一方のノズル列はマゼンタの液滴を、他方のノズル列はイエロの液滴をそれぞれ吐出する。ここでは2ヘッド構成で4色の液滴を吐出する構成としているが、各色毎の液滴吐出ヘッドを備える構成としてもよい。キャリッジ233には記録ヘッド234のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのサブタンク235a,235bが搭載されている。サブタンク235には、各色のインク供給チューブ236を介して供給ユニット224によって各色のインクカートリッジ210から各色のインクが補充供給される。
一方、給紙トレイ202の用紙積載部241上に積載した記録媒体である用紙242を給紙するための給紙部として、用紙積載部241から用紙242を1枚ずつ分離給送する半月形状の給紙コロ243が設けられている。また給紙部は、給紙コロ243に対向配置され摩擦係数の大きな材質からなり給紙コロ243側に付勢された分離パッド244を有している。また、給紙部より給送された用紙242を記録ヘッド234の下方へと送り込むため、用紙242を案内するガイド部材245、カウンタローラ246、搬送ガイド部材247を備えている。その他、先端加圧コロ249を有する押さえ部材248、給送された用紙242を静電吸着して記録ヘッド234に対向する位置で搬送する搬送ベルト251等を備えている。搬送ベルト251は無端状ベルトであり、搬送ローラ252とテンションローラ253との間に掛け渡されて副走査方向であるベルト搬送方向に走行駆動される。
搬送ベルト251の表面を帯電させる帯電ローラ256は、搬送ベルト251の表層に接触して搬送ベルト251の走行に従動して回転するように構成されている。搬送ベルト251は、図示しない副走査モータによって搬送ローラ252が回転駆動されることにより走行駆動される。また、記録ヘッド234で記録された用紙242を排紙するための排紙部として、搬送ベルト251から用紙242を分離するための分離爪261、排紙ローラ262及び排紙コロ263とを備えている。さらに排紙部として、排紙ローラ262の下方に排紙トレイ203を有している。
装置本体の背面部には両面ユニット271が着脱自在に配設されている。両面ユニット271は、搬送ベルト251の逆回転で戻される用紙242を取り込み、反転させて再度カウンタローラ246と搬送ベルト251との間に給紙する。両面ユニット271の上面は手差しトレイ272として機能する。キャリッジ233の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド234のノズルの状態を維持させると共に回復させる維持回復機構281が配設されている。維持回復機構281には、記録ヘッド234の各ノズル面をキャッピングするためのキャップ282a,282b、ノズル面をワイピングするためのワイパブレード283が設けられている。また維持回復機構281には、増粘したインクを排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け284等が設けられている。キャリッジ233の走査方向他方側の非印字領域には空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け288が設けられ、空吐出受け288には記録ヘッド234のノズル列方向に沿った開口部289が設けられている。
上述のように構成された画像形成装置200においては、給紙トレイ202から用紙242が1枚ずつ分離給送される。ほぼ鉛直上方に給紙された用紙242は、ガイド部材245で案内されて搬送ベルト251とカウンタローラ246との間に挟まれて搬送される。その後、用紙242はさらに先端を搬送ガイド部材247で案内されて先端加圧コロ249で搬送ベルト251に押し付けられ、その搬送方向をほぼ90°転換される。
このとき、帯電ローラ256に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように交番電圧が印加される。これにより、搬送ベルト251が交番する帯電電圧パターン、すなわち周回方向である副走査方向にプラスとマイナスとが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラスとマイナスとが交互に帯電した搬送ベルト251上に用紙242が給送されると、用紙242が搬送ベルト251に吸着されて搬送ベルト251の走行移動によって用紙242が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ233を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド234を駆動することにより、停止している用紙242にインク液滴を吐出して1行分を記録し、用紙242を所定量搬送後に次の行の記録を行う。そして、記録終了信号または用紙242の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して用紙242を排紙トレイ203上に排出する。このように、この画像形成装置200では本発明の液滴吐出ヘッドを記録ヘッドとして備えているので、信頼性の高い安定した液滴吐出を行うことができると共に、高速で高画質の画像形成を行うことができる。
次に、本発明に係る液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置の変形例について、機構部全体の概略構成図である図7を参照して説明する。同図において画像形成装置400はライン型画像形成装置であり、装置本体401の内部に画像形成部402を有し、装置本体410の下方に多数枚の記録媒体である用紙403を積載可能な給紙トレイ404を備えている。給紙トレイ404から給送される用紙403を取り込んで搬送機構405により用紙403を搬送しつつ、画像形成部402により所望の画像を記録した後、装置本体401の側方に設けられた排紙トレイ406に用紙403を排出する。また、装置本体401に対して着脱自在な両面ユニット407を備え、両面印刷時には一面の画像形成終了後に搬送機構405によって用紙403を逆方向に搬送しつつ両面ユニット407内に取り込む。そして、反転後に用紙403の他面を画像形成可能面として再度搬送機構405に送り込み、他面の画像形成終了後に用紙403を排紙トレイ406に排出する。
ここで画像形成部402は、例えばブラック、シアン、マゼンタ、イエロの各色の液滴を吐出する、フルライン型の4個の本発明に係る液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド411k、411c,411m,411yを備えている。各記録ヘッド411は、液滴を吐出するノズルを形成したノズル面を下方に向けてヘッドホルダ413に装着されている。
また、各記録ヘッド411に対応してヘッドの性能を維持回復するための維持回復機構412k,412c,412m,412yを備えている。パージ処理、ワイピング処理等のヘッド性能維持動作時には、記録ヘッド411と維持回復機構412とを相対的に移動させて記録ヘッド411のノズル面に維持回復機構412が有するキャッピング部材等を対向させる。ここでは記録ヘッド411は用紙搬送方向上流側からブラック、シアン、マゼンタ、イエロの順に各色の液滴を吐出する配置としているが、配置及び色数はこれに限られない。また、ライン型ヘッドとしては各色の液滴を吐出する複数のノズル列を所定間隔で設けた1または複数のヘッドを用いてもよく、ヘッドとこのヘッドにインクを供給する記録液カートリッジとを一体としても別体としてもよい。
給紙トレイ404上の用紙403は、給紙コロ421と図示しない分離パッドとにより1枚ずつに分離されて装置本体401内に給紙され、搬送ガイド部材423のガイド面423aに沿って給送される。そして、レジストローラ425の駆動により所定のタイミングでガイド部材426を介して搬送機構405の搬送ベルト433に給送される。搬送ガイド部材423には、両面ユニット407から送り出される用紙403を案内するガイド面423bが設けられている。ガイド部材426の上方には、両面印刷時に搬送機構405から戻される用紙403を両面ユニット407に案内するガイド部材427が配設されている。
搬送機構405は、駆動ローラである搬送ローラ431と従動ローラ432との間に掛け渡した無端状の搬送ベルト433と、搬送ベルト433を帯電させる帯電ローラ434とを有している。また搬送機構405は、画像形成部402に対向する部分で搬送ベルト433の平面性を維持するプラテン部材435と、搬送ベルト433から送り出す用紙403を搬送ローラ431側に押し付ける押さえコロ436とを有している。さらに搬送機構405は、その他図示しないが搬送ベルト433に付着したインクを除去する多孔質体等からなるクリーニングローラ等を有している。また搬送機構405の用紙搬送方向下流側には、画像が記録された用紙403を排紙トレイ406に送り出すための排紙ローラ438及び拍車439が配設されている。
上述のように構成された画像形成装置400において、搬送ベルト433は図の矢印方向に走行移動して高電位の印加電圧が印加される帯電ローラ434と接触することで帯電される。高電位に帯電した搬送ベルト433上に用紙403が給送されると、用紙403は搬送ベルト433に静電的に吸着される。このようにして、搬送ベルト433によって強力に吸着された用紙403は反りや凹凸が校正され、硬度に平滑な面が形成される。そして、搬送ベルト433を走行させて用紙403を移動させつつ記録ヘッド411から液滴を吐出することにより、用紙403上に所望の画像が形成される。画像が記録された用紙403は、排紙ローラ438によって排紙トレイ406上に排出される。
上述のように、このインクジェット記録装置である画像形成装置400によれば、第2の温度検出手段は第1の温度検出手段によって補正される手段を有するので、波形制御及び駆動ICの過熱を精度よく検出することができる。また、圧電素子の下部電極及び上部電極と同時に形成され、基板上に一体形成できるので、正確な温度検出を行うことができると共に、コストアップを抑制することができる。
また、第2の温度検出手段が接続パッド近傍の個別液室基板上に配置されることにより、さらに精度よくは系制御を行うことができる。また、第2の温度検出手段が白金測温抵抗体からなることにより、正確な温度検出を行うことができる。また、第2の温度検出手段の検出温度が閾値を超えた場合には供給電力を遮断する手段を有することにより、駆動ICの故障を未然に防止することができる。
上記実施形態では、液滴吐出ヘッドとしてインクジェットヘッドを示したが、液滴吐出ヘッドとしてはこれに限定されることはない。インク以外の液体、例えばパターニング用の液体レジストを吐出する液滴吐出ヘッド、遺伝子分析試料を吐出する液滴吐出ヘッド等に適用してもよい。また、本発明が適用可能な画像形成装置はプリンタには限られず、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これ等の複合機にも本発明は適用可能である。