図1は本発明の第1の実施形態に用いられる個別液室基板の平面図及び保持基板・個別液室基板・ノズルプレートの個別液室配列と直交する方向の断面図を、図2は保持基板・個別液室基板・ノズルプレートの個別液室基板配列方向の断面図をそれぞれ示している。
同図において、振動板13と圧電素子12とメタル層16とを上部に積層した個別液室基板8の下面にノズルプレート1を接合し、個別液室基板8の上部に保持基板6、図示しない共通液室基板を積層して、インク流路を形成することにより液滴吐出ヘッド18を構成している。液滴となるインクは、図示しないインクタンクから連通する共通液室(共通液室基板、保持基板6)を介して個別液室基板8に開口するインク供給口5、流体抵抗部4、個別液室3に供給され、個別液室3の振動板13上に形成される圧電素子12(圧電体10、上部電極11、下部電極9によって構成)を駆動することで生じる圧力により、個別液室3に連通するノズル2からインクを吐出する。圧電素子12の駆動は、上部電極11及び下部電極9からそれぞれ個別配線17及び図示しない共通配線を用いて接続された駆動IC7によって行う。
ノズルプレート1は、インク吐出用のノズル2が配列されている基板であり、材料としては必要な剛性や加工性に見合った任意のものを使用可能である。例えば、ステンレスやニッケル等の金属、合金、シリコン、セラミックス等の無機材料、ポリイミド等の樹脂材料等を挙げることができる。ノズル2の加工方法は、材料の特性と要求される精度や加工性から任意の方法を選ぶことができ、例えば電鋳めっき法、エッチング法、プレス加工法、レーザ加工法、フォトリソグラフィ法等が挙げられる。ノズル2の開口径、配列数、配列密度は、液滴吐出ヘッドに要求される仕様に合わせて最適な組み合わせを設定することができる。
個別液室基板8には、個別液室3、流体抵抗部4、インク供給口5が形成される。個別液室基板8の材料としては加工性や物性から任意のものを用いることができるが、300dpi(約85μmピッチ)以上ではフォトリソグラフィ法を適用可能なシリコン基板を用いることが好ましい。個別液室3の加工は任意の方法を適用可能であるが、フォトリソグラフィ法を適用する場合にはウェットエッチング法、ドライエッチング法の何れかを適用できる。何れの方法でも振動板13の個別液室3側を二酸化シリコン膜等とすることによりエッチングストップ層を構成できるため、個別液室3の高さを高精度に制御することができる。
個別液室3は、インクに圧力を加えてノズル2から液滴として吐出させる機能を有している。個別液室3の上部には振動板13が設けられ、振動板13上には下部電極9、圧電体10、上部電極11が積層された圧電素子12が形成されている。振動板13としては任意のものを用いることができるが、シリコンや窒化物、酸化物、炭化物等の剛性の高い材料を用いることが好ましく、これ等の材料の積層構造を採用してもよい。積層膜とする場合には、各材料の内部応力を考慮して残留応力が少ない構成とすることが好ましい。例えば、Si3N4とSiO2の積層の場合には、引張応力となるSi3N4と圧縮応力となるSiO2とを交互に積層して応力緩和する構成が例として挙げられる。
振動板13の厚さは所望の特性に応じて選択できるが、概ね0.5〜10μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは1.0〜5.0μmの範囲である。振動板13が薄すぎる場合にはクラック等により振動板13が破損し易くなり、厚すぎる場合には変位量が小さくなって吐出効率が低下してしまう。また薄すぎる場合には振動板13の固有振動数が低下して駆動周波数が高められないという問題点がある。
下部電極9及び上部電極11としては、導電性を有する任意の材料を用いることができる。例えば金属、合金、導電性化合物等が挙げられ、これ等の材料の単層膜でも積層膜でもよい。また、圧電体10と反応したり拡散したりしない材料を選定する必要があるために安定性の高い材料を選定する必要があり、必要に応じて圧電体10や振動板13との密着性を考慮して密着層を形成してもよい。電極材料としては、白金、イリジウム、イリジウム酸化物、パラジウム、パラジウム酸化物が安定性の高いものとして挙げられる。また振動板13との密着層としては、チタン、タンタル、タングステン、クロム等が挙げられる。
圧電体10の材料としては、圧電性を示す強誘電体材料が適用可能であり、例えばチタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウム等が一般的に用いられる。圧電体10の成膜方法としては任意の方法が適用可能であり、例えばスパッタリング法やゾルゲル法等が挙げられるが、成膜温度の低さからゾルゲル法が好ましい。上部電極11、圧電体10は個別液室3毎にパターニングする必要があり、パターニングは通常のフォトリソグラフィ法が適用可能である。また、圧電体10の成膜をゾルゲル法にて行う場合には、スピンコーティング法や印刷法を用いることもできる。
上述の圧電体10と各電極9,11から構成される圧電素子12は、個別液室3の上部に形成される必要がある。個別液室3を区画する隔壁15上に形成すると振動板13の変形を阻害してしまうため、吐出効率の低下や応力集中による圧電素子の破損等の原因となる。
個別液室基板8には、個別液室3に連通する流体抵抗部4が形成される。流体抵抗部4は、図示しない共通液室から個別液室3にインクを供給する機能を有すると同時に、圧電素子12を駆動することにより個別液室3に発生する圧力により、インクの逆流を防止しノズル2から吐出させる機能を有する。このため、個別液室3のインク流動方向の断面積を小さくして流体抵抗を高くする必要がある。個別液室基板8としてシリコンを用い、個別液室3と流体抵抗部4とをフォトリソグラフィ法(+エッチング)を用いて形成した場合には、個別液室3と同一の条件で加工できるというメリットがある。流体抵抗部4の高さを個別液室3よりも低くすることで、流体抵抗を高めるためには個別液室3のオーバエッチング量を時間管理で制御する必要があるため、エッチングレートのばらつきにより流体抵抗を均一にすることができず、結果として吐出均一性が悪化する。流体抵抗部4は、振動板13が開口するインク供給口5を通じて共通液室に連通する。
図2に示すように個別液室3は隔壁15によって区画されており、それぞれに対応する圧電素子12が形成される。個別液室3の高さはヘッド特性から任意に設定可能であるが、20〜100μmの範囲とすることが好ましい。また、個別液室3間の隔壁15の幅は配列密度に合わせて任意に設定可能であるが、10〜30μmとすることが好ましい。隔壁15の幅が狭い場合には、隣接する個別液室3の圧電素子12を駆動した場合に隣接液室間の相互干渉が発生して吐出ばらつきが大きくなる。隔壁15の幅を狭くする場合には、個別液室3の高さを低くすることによって対応する。
本実施形態における電極配線は、圧電素子12に駆動信号を入力するために上部電極11から個別配線17を引き出し、下部電極9から共通配線を引き出す構成を採用している。配線は、上部電極11からメタル層16の一部である個別配線17を介して個別配線パッドまで引き出され、下部電極9からは図示しない共通配線を介して共通配線パッドまで引き出されて駆動IC7にそれぞれ接続される。個別配線17と共通配線とは、同一材料、同一工程で形成することが望ましく、配線材料としては抵抗値の低い金属、合金、導電性材料が適用可能である。
また、上部電極11及び下部電極9とコンタクト抵抗の低い材料を用いることが必要であり、例えばアルミニウム、金、銀、パラジウム、イリジウム、タングステン、チタン、タンタル、銅、クロム等が挙げられ、コンタクト抵抗を低減するためにこれ等の材料の積層構造としてもよい。コンタクト抵抗を下げる材料としては任意の導電性化合物を用いてもよく、例えばTa2O5、TiO2、ZnO、In2O3、SnO等の酸化物、窒化物、及びその複合化合物が挙げられる。膜厚は任意に設定可能であるが3μm以下とすることが好ましく、成膜には真空成膜法等の膜厚均一性が高い成膜方法を採用することが好ましい。
これ等の配線は、後述の保持基板6との接合面にもなるため、高さ均一性を確保できる膜厚・成膜方法を採用する必要がある。すなわち、図1に示すようにインク供給口5の周囲を囲むようにメタル層16を配置した場合、インク供給口5付近は保持基板6と個別液室基板8との開口部同士が接合されるためにシール性が要求される。そこで、個別液室基板8の高さ均一性を高めるためにインク供給口5の周囲にメタル層16を形成して信頼性を高めている。ここで図1の断面図から判るように、個別液室基板8のうち保持基板6と接合されるのはメタル層16と温度検出手段としての測温抵抗体14等であるため、より広い範囲での接合信頼性確保のためそれぞれの層厚を揃えることが好ましい。
上述したように個別液室基板8はその厚みが20〜100μmと薄いため、個別液室基板8の剛性を確保するために保持基板6をノズルプレート1と対向する側に接合する。保持基板6の材料としては任意のものを用いることができるが、個別液室基板8の反りを防止するために熱膨張係数が個別液室基板8と近いものを選定する必要があり、例えばガラス、シリコン、SiO2、ZrO2、Al2O3等のセラミックス材料とすることが好ましい。
図1に示すように、保持基板6にはインク供給口5の一部を形成する開口部を設ける必要があり、さらに個別液室3に対向する領域に保持基板凹部を形成して、圧電素子12を駆動して振動板13が変位可能となる空間を確保する必要がある。そして、図2に示すように保持基板凹部は個別液室3毎に区画され、個別液室3の隔壁15上で接合されることが好ましい。これにより、板厚の薄い個別液室基板8の剛性を高めることができ、圧電素子12を駆動した際の隣接液室間の相互干渉を低減することができる。そのためには、保持基板6は樹脂等の低剛性材料ではなく、シリコン等の高剛性材料が好ましい。また、保持基板6の凹部は個別液室3毎に区画されるため、高密度化のためには高度な加工精度が要求され、300dpiヘッドにおいては隔壁15の幅を5〜20μmとすることが望ましい。
測温抵抗体14は、よりインクに近い部位の温度を検出するために個別液室基板8上に形成し、さらに局所的な温度が検出可能となるように個別液室3の圧電素子12の間に形成する。この構成により、列内の平均温度ではなく任意の部位の温度を検出可能となると共に、インクシールに問題が生じない。また、層構成は個別液室3を加圧する圧電素子12と同じ層構成としており、これにより測温抵抗体14専用の材料やプロセスを追加する必要がないためにコストアップとならない。さらに専用のエリアも必要ないためにヘッドが大型化することも防止でき、上部電極11に定電流を与えたときの電圧値から温度を推定することができる。上部電極11の材料としては、上述では白金、イリジウム、イリジウム酸化物、パラジウム、パラジウム酸化物等としたが、測温抵抗体14としては白金が最も好ましい。白金製の測温抵抗体14は、国際温度目盛の標準温度計に採用されている等、測温抵抗体14としては精度が最も高く、線形成が高いことや耐腐食性及び経時安定性に優れる等、温度センサとして最適である。
次に、本実施形態の具体例について説明する。直径6インチ、厚さ600μmのシリコンウェハ上にSiO20.6μm、Si1.5μm、SiO20.4μmを積層することで3層構造の振動板13を形成した後、下部電極9としてチタン20nm、白金200nmをスパッタリング法で成膜した。下部電極9上にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を有機金属溶液に用いたゾルゲル法で厚さ2μmを成膜した後、700℃で焼成してPZTの圧電体膜を圧電体10として形成した。その後、圧電体膜上に白金を200nmスパッタリング法で成膜して上部電極11とした。
上部電極11の形成後に、上部電極11、圧電体10、下部電極9をドライエッチング法でパターニングすることにより、図1及び図2に示すような配列をした個別液室3に対応した圧電素子12と測温抵抗体14とを形成した。圧電素子12の配列ピッチは85μmとし、圧電体10の幅は40μm、圧電素子12の長手方向長さは1000μm、圧電素子12の配列数は300個とした。測温抵抗体14の幅は10μmで個別液室3に対応した圧電素子12の周囲を囲むように形成した。測温抵抗体14は抵抗が高いほど感度が高く精度も高くなるため、周囲に形成することにより抵抗を高めた。また、隔壁15上の部分は隔壁15上で振動板13の可動部にかからないように構成した。これにより個別液室3に対応した振動板13の変形を阻害することが防止される。次に、プラズマCVD法により層間絶縁膜を成膜し、上部電極11上に個別配線コンタクトホール、共通配線コンタクトホールを層間絶縁膜に形成後、チタン50nmとアルミニウム2μmを順次積層しドライエッチングすることでメタル層16を形成し、個別配線17及び共通配線とインク供給口5周りのメタル層16を形成した。共通配線の幅は300μmとした。その後、図1に示すインク供給口5部分の振動板13をドライエッチング法で除去して個別液室基板8にインク供給口を形成し、個別液室基板8が完成する。
次に、保持基板凹部及び保持基板開口部を有する保持基板6を直径6インチのシリコンウェハを用いて形成した。先ず、ウェハを厚さ400μmに研磨して個別液室基板8側に酸化膜等を形成した後、その酸化膜を保持基板凹部及び保持基板開口部が開口するようにフォトリソパターニングする。そして、さらにその上にレジストを形成して保持基板開口部だけが開口するようにレジストをフォトリソパターニングする。そして、ICPエッチングで個別液室基板8側から開口部を貫通形成した後、個別液室基板8側のレジストのみを除去して始めにパターニングした酸化膜パターンをマスクとして、個別液室基板8側をICPエッチングでハーフエッチングし、最後に酸化膜を除去すると個別液室基板8側の凹部と貫通開口部とを形成することができる。
作成した保持基板6の接合面にエポキシ系接着剤をフレキソ印刷機で膜厚2μmで塗布し、接合後に接着剤を硬化させることで保持基板6を接合した。個別液室基板8のうち、測温抵抗体14とインク供給口5周りのメタル層16が保持基板6と主に接合される。ここで、上述のように層厚を同等としているので、問題なく接合を行うことができる。
その後、600μmの個別液室基板8を80μmまで研磨した後、個別液室3、流体抵抗部4をICPドライエッチング法で形成した。個別液室3の幅は60μm、流体抵抗部4の幅は30μmとし、長さは300μmとした。流体抵抗部4、個別液室3のエッチングは振動板13に到達するまで行い同一の高さとした。また、インク供給口5の振動板13は、事前にエッチングしたため貫通口を形成することができる。
ウェハをダイシングによりチップに切り出した後、保持基板6と同様の手法でノズルプレート1と個別液室基板8とを接合した。ノズルプレート1は、厚さ30μmのステンレス材にプレス加工で直径20μmのノズル2を85μmピッチで形成したものを用いた。保持基板6上に図示しないステンレス製の共通液室基板を接合し、これをインクタンクと接続して個別配線パッド部にACF接合にて駆動IC7を実装したTABを接合することにより、液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドを構成することができる。
次に、本発明の第1の実施形態に示す液滴吐出ヘッドを備える画像形成装置の一例を図3、図4を参照して説明する。図3は画像形成装置の機構部の全体構成を示す概略図、図4は同機構部の要部概略平面図である。
同図において画像形成装置200はシリアル型画像形成装置であり、左右の側板221A,221Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド231,232でキャリッジ233を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して矢印方向であるキャリッジ主走査方向に移動走査する。キャリッジ233には、イエロ(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための本発明に係る液滴吐出ヘッドである記録ヘッド234を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。記録ヘッド234は、それぞれ2つのノズル列を有する液滴吐出ヘッド234a,234bを1つのベース部材に取り付けて構成されており、一方のヘッド234aの一方のノズル列はブラックの液滴を、他方のノズル列はシアンの液滴を、他方のヘッド234bの一方のノズル列はマゼンタの液滴を、他方のノズル列はイエロの液滴をそれぞれ吐出する。ここでは2ヘッド構成で4色の液滴を吐出する構成としているが、各色毎の液滴吐出ヘッドを備える構成としてもよい。キャリッジ233には記録ヘッド234のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのサブタンク235a,235bが搭載されている。サブタンク235には、各色のインク供給チューブ236を介して供給ユニット224によって各色のインクカートリッジ210から各色のインクが補充供給される。
一方、給紙トレイ202の用紙積載部241上に積載した記録媒体である用紙242を給紙するための給紙部として、用紙積載部241から用紙242を1枚ずつ分離給送する半月形状の給紙コロ243と、給紙コロ243に対向配置され摩擦係数の大きな材質からなり給紙コロ243側に付勢された分離パッド244とが設けられている。また、給紙部より給送された用紙242を記録ヘッド234の下方へと送り込むため、用紙242を案内するガイド部材245、カウンタローラ246、搬送ガイド部材247、先端加圧コロ249を有する押さえ部材248、給送された用紙242を静電吸着して記録ヘッド234に対向する位置で搬送する搬送ベルト251等を備えている。搬送ベルト251は無端状ベルトであり、搬送ローラ252とテンションローラ253との間に掛け渡されて副走査方向であるベルト搬送方向に走行駆動される。
搬送ベルト251の表面を帯電させる帯電ローラ256は、搬送ベルト251の表層に接触して搬送ベルト251の走行に従動して回転するように構成されている。搬送ベルト251は、図示しない副走査モータによって搬送ローラ252が回転駆動されることにより走行駆動される。また、記録ヘッド234で記録された用紙242を排紙するための排紙部として、搬送ベルト251から用紙242を分離するための分離爪261、排紙ローラ262及び排紙コロ263とを備え、排紙ローラ262の下方に排紙トレイ203を有している。
装置本体の背面部には両面ユニット271が着脱自在に配設されている。両面ユニット271は、搬送ベルト251の逆回転で戻される用紙242を取り込み、反転させて再度カウンタローラ246と搬送ベルト251との間に給紙する。両面ユニット271の上面は手差しトレイ272として機能する。キャリッジ233の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド234のノズルの状態を維持させると共に回復させる維持回復機構281が配設されている。維持回復機構281には、記録ヘッド234の各ノズル面をキャッピングするためのキャップ282a,282b、ノズル面をワイピングするためのワイパブレード283、増粘したインクを排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け284等が設けられている。キャリッジ233の走査方向他方側の非印字領域には空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け288が設けられ、空吐出受け288には記録ヘッド234のノズル列方向に沿った開口部289が設けられている。
上述のように構成された画像形成装置200においては、給紙トレイ202から用紙242が1枚ずつ分離給送され、ほぼ鉛直上方に給紙された用紙242はガイド部材245で案内されて搬送ベルト251とカウンタローラ246との間に挟まれて搬送される。その後、用紙242はさらに先端を搬送ガイド部材247で案内されて先端加圧コロ249で搬送ベルト251に押し付けられ、その搬送方向をほぼ90°転換される。
このとき、帯電ローラ256に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように交番電圧が印加され、搬送ベルト251が交番する帯電電圧パターン、すなわち周回方向である副走査方向にプラスとマイナスとが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラスとマイナスとが交互に帯電した搬送ベルト251上に用紙242が給送されると、用紙242が搬送ベルト251に吸着されて搬送ベルト251の走行移動によって用紙242が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ233を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド234を駆動することにより、停止している用紙242にインク液滴を吐出して1行分を記録し、用紙242を所定量搬送後に次の行の記録を行う。そして、記録終了信号または用紙242の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して用紙242を排紙トレイ203上に排出する。このように、この画像形成装置200では本発明の液滴吐出ヘッドを記録ヘッドとして備えているので、信頼性の高い安定した液滴吐出を行うことができると共に、高速で高画質の画像形成を行うことができる。
次に、本発明に係る液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置の第1の実施形態の変形例について、機構部全体の概略構成図である図5を参照して説明する。同図において画像形成装置400はライン型画像形成装置であり、装置本体401の内部に画像形成部402を有し、装置本体410の下方に多数枚の記録媒体である用紙403を積載可能な給紙トレイ404を備えている。そして、給紙トレイ404から給送される用紙403を取り込んで搬送機構405によって用紙403を搬送しつつ画像形成部402によって所望の画像を記録した後、装置本体401の側方に設けられた排紙トレイ406に用紙403を排出する。また、装置本体401に対して着脱自在な両面ユニット407を備え、両面印刷時には一面の画像形成終了後に搬送機構405によって用紙403を逆方向に搬送しつつ両面ユニット407内に取り込む。そして、反転後に用紙403の他面を画像形成可能面として再度搬送機構405に送り込み、他面の画像形成終了後に用紙403を排紙トレイ406に排出する。
ここで画像形成部402は、例えばブラック、シアン、マゼンタ、イエロの各色の液滴を吐出する、フルライン型の4個の本発明に係る液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド411k,411c,411m,411yを備え、各記録ヘッド411は液滴を吐出するノズルを形成したノズル面を下方に向けてヘッドホルダ413に装着されている。
また、各記録ヘッド411に対応してヘッドの性能を維持回復するための維持回復機構412k,412c,412m,412yを備え、パージ処理、ワイピング処理等のヘッド性能維持動作時には、記録ヘッド411と維持回復機構412とを相対的に移動させて記録ヘッド411のノズル面に維持回復機構412が有するキャッピング部材等を対向させる。ここでは記録ヘッド411は用紙搬送方向上流側からブラック、シアン、マゼンタ、イエロの順に各色の液滴を吐出する配置としているが、配置及び色数はこれに限られない。また、ライン型ヘッドとしては各色の液滴を吐出する複数のノズル列を所定間隔で設けた1または複数のヘッドを用いてもよく、ヘッドとこのヘッドにインクを供給する記録液カートリッジとを一体としても別体としてもよい。
給紙トレイ404上の用紙403は、給紙コロ421と図示しない分離パッドとにより1枚ずつに分離されて装置本体401内に給紙され、搬送ガイド部材423のガイド面423aに沿って給送される。そして、レジストローラ425の駆動により所定のタイミングでガイド部材426を介して搬送機構405の搬送ベルト433に給送される。搬送ガイド部材423には、両面ユニット407から送り出される用紙403を案内するガイド面423bが設けられており、ガイド部材426の上方には両面印刷時に搬送機構405から戻される用紙403を両面ユニット407に案内するガイド部材427が配設されている。
搬送機構405は、駆動ローラである搬送ローラ431と従動ローラ432との間に掛け渡した無端状の搬送ベルト433と、搬送ベルト433を帯電させる帯電ローラ434と、画像形成部402に対向する部分で搬送ベルト433の平面性を維持するプラテン部材435と、搬送ベルト433から送り出す用紙403を搬送ローラ431側に押し付ける押さえコロ436と、その他図示しないが搬送ベルト433に付着したインクを除去する多孔質体等からなるクリーニングローラ等を有している。また搬送機構405の用紙搬送方向下流側には、画像が記録された用紙403を排紙トレイ406に送り出すための排紙ローラ438及び拍車439が配設されている。
上述のように構成された画像形成装置400において、搬送ベルト433は図の矢印方向に走行移動して高電位の印加電圧が印加される帯電ローラ434と接触することで帯電され、高電位に帯電した搬送ベルト433上に用紙403が給送されると用紙403は搬送ベルト433に静電的に吸着される。このようにして搬送ベルト433によって強力に吸着された用紙403は反りや凹凸が校正され、硬度に平滑な面が形成される。そして、搬送ベルト433を走行させて用紙403を移動させつつ記録ヘッド411から液滴を吐出することにより用紙403上に所望の画像が形成され、画像が記録された用紙403は排紙ローラ438によって排紙トレイ406上に排出される。
上述のように、このインクジェット記録装置である画像形成装置400によれば、温度検出手段である測温抵抗体14の少なくとも一部を圧電素子12の間に形成したので、インクに近く局所的な温度を測定でき、専用のエリアを必要とせず圧電素子12上の空間の圧力変動を抑制することが可能となり、小型高密度化及び高速化に対応することができると共にインクシール性を確保することができる。
図6は、本発明の第2の実施形態を示している。この第2の実施形態は、測温抵抗体14に代えて温度検出手段としての測温抵抗体19を用いる点においてのみ第1の実施形態と相違しており、他の構成は同一である。測温抵抗体19は、第1の実施形態で示した測温抵抗体14が2つ接続されて構成されている。この構成により第1の実施形態に比して抵抗値が高くなり、温度に対する抵抗の感度が向上すると共にノイズによる誤差の影響が低減されるので、より高精度な温度検出を行うことが可能となる。
上述の各構成では、測温抵抗体14,19の少なくとも一部が隔壁15上に設けられているので、振動板13の変形が測温抵抗体14,19によって阻害されることがなく、良好な液滴吐出を行うことができる。また、測温抵抗体14,19の一部が保持基板6に接合されているので、保持基板6と個別液室基板8との接合信頼性が得られ、良好な液滴吐出ヘッドを構成することができる。また、測温抵抗体14,19を下部電極9または上部電極11と同時に形成することにより、新たな形成プロセスを設けることがなくコストアップを防止できると共に作成効率を向上することができる。
上記実施形態では、液滴吐出ヘッドとしてインクジェットヘッドを示したが、液滴吐出ヘッドとしてはこれに限定されず、インク以外の液体、例えばパターニング用の液体レジストを吐出する液滴吐出ヘッド、遺伝子分析試料を吐出する液滴吐出ヘッド等に適用してもよい。また、本発明が適用可能な画像形成装置はプリンタには限られず、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これ等の複合機にも本発明は適用可能である。