以下、図面を参照して本発明の超音波放射素子の一実施形態について詳細に説明する。図1は、本実施形態の超音波放射素子81の断面構成図を示すものである。
本実施形態の超音波放射素子81は、図1に示すように、正負の駆動電圧の供給によって凸形状と凹形状とに変形し、振動状の動きをする圧電ユニモルフ101と、圧電ユニモルフ101に設けられたパラボラ形状からなる振動板103と、圧電ユニモルフ101が固定された筐体104と、圧電ユニモルフ101に対して正負の駆動電圧を供給する駆動電圧印加端子102とを備えている。振動板103は、その頂上部が圧電ユニモルフ101に接するように接続されている。
圧電ユニモルフ101は、たとえば圧電セラミックと金属板とを重ね合せて形成されるものである。そして、正負の駆動電圧の印加によって圧電セラミックが放射状に圧縮伸長し、一方、金属板は変化しないためにバイメタルと同様な反りを発生させることができる。そして、これにより圧電ユニモルフ101全体が、凸形状と凹形状とに交互に繰り返して変形し、振動状の動きをする。
図2は、振動板103の上面図である。振動板103は、図2に示すように、パラボラ形状に形成されたフレーム103b(グレーの部分)と、フレーム103bの内側に貼り合わされた花弁状フィルム103aとから構成されるものである。
花弁状フィルム103aは、軟らかな弾性部材から形成されるものであり、たとえばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルムまたはスチロールフィルムなどから形成されるものである。そして、花弁状フィルム103aは、図3(a)に示すように、円形のフィルムに対して放射状に複数のスリット103cを形成したものである。このスリット103cによって分離された1つ1つのフィルム部分103dが花弁状であるので、花弁状フィルムと呼んでいる。
フレーム103bは、図3(b)に示すように、剛性を有するパラボラ形状の板に対して複数の扇状の穴103hを形成したものであり、中心部分103eと中心部分から放射状に延びる複数の線状部分103fと周縁部分103gとから構成される骨組構造である。複数の線状部分103fは、花弁状フィルム103aのスリット103cよりも広い幅で形成される。
そして、図2に示すように、花弁状の各フィルム部分103dと、フレーム103bにおける穴103hとがそれぞれ対応するように重ね合わされ、花弁状フィルム103aの中心部分とフレーム103bの中心部分103eのみが接着される。したがって、花弁状の各フィルム部分103dは、中心部分を除く部分については、フレーム103bに対して接したり、離れたり可能なように構成されている。
そして、本実施形態の超音波放射素子81は、駆動電圧印加端子102に対して正(または負)の駆動電圧が印加された際には、図1に示すように、圧電ユニモルフ101が凸形状に変形し、これにより振動板103が上方(図1の矢印方向、パラボラ形状の開口側)に移動する。このとき花弁状フィルム103aは、空気抵抗によってフレーム103b側に押し付けられて、花弁状フィルム103aとフレーム103bとが密着した状態となる。
一方、駆動電圧印加端子102に対して負(または正)の駆動電圧が印加された際には、図4に示すように、圧電ユニモルフ101が凹形状に変形し、これにより振動板103が下方(図4の矢印方向、パラボラ形状の頂上部側)に移動する。このとき、図4および図5に示すように、フレーム103bの穴103hから花弁状フィルム103a側に向かって空気が流れ込み、この風圧によって花弁状の各フィルム部分103dがフレーム103bから離れる。
すなわち、本実施形態の超音波放射素子81は、正負の駆動電圧の供給によって、振動板103が上下に移動し、振動板103が上方に移動した際には、花弁状フィルム103aがフレーム103bに密着し、振動板103が下方に移動した際には、花弁状フィルム103aがフレーム103bから離れるように構成されたものである。
次に、本実施形態の超音波放射素子81において、上述したように振動板103が上下に移動した際に放射される超音波について、従来の超音波放射素子から放射される超音波と比較しながら説明する。
まず、従来の超音波放射素子200から放射される超音波について説明する。なお、ここでいう従来の超音波放射素子200とは、上記実施形態の超音波放射素子81とは、振動板103の構成のみが異なるものである。従来の超音波放射素子200も、図6に示すように圧電ユニモルフ201と、圧電ユニモルフ201が固定された筐体203と、圧電ユニモルフ201上に設けられたパラボラ形状の振動板202とを備えたものであるが、従来の超音波放射素子200の振動板202は、単なる1枚のパラボラ形状の板から構成されるものであり、上記実施形態の超音波放射素子81のように振動板103が下方に移動した際に、空気が振動板103内を通過するようなものではない。
そして、従来の超音波放射素子200において、圧電ユニモルフ201に対して正負の駆動電圧を供給することによって、圧電ユニモルフ201が凸形状と凹形状とに交互に変形し、これにより振動板202が、図6に示すP1の位置からP6の位置まで順次移動する。
そして、振動板202の移動によって超音波が放射されるが、振動板202がP1〜P6の各位置に移動したときに放射される超音波は、超音波放射伝達媒体(ここでは空気とする)の非線形特性を考慮しなければ、超音波の密波部と粗波部とはバランスして放射され、AC的な圧力波となる。
具体的には、図6に示すように、振動板202がP2の位置とP6の位置に移動した際には、すなわち最も上方に移動した際には、圧力の高い部分が形成され、振動板202がP4の位置に移動した際には、すなわち最も下方に移動した際には、圧力の低い部分が形成され、振動板202がP3とP5の位置に移動した際には、周辺媒体と同じ圧力の部分が形成される。
図7は、振動板202がP1〜P6の各位置へ移動した際における超音波の音圧の波形を示すものである。図7に示すように、従来の超音波放射素子200が発生する超音波は、粗波部と密波部とが対象に現れるAC波となる。すなわち、振動板202が上方に移動した際に発生する正方向の圧力と、振動板202が下方に移動した際に発生する負方向の圧力とが同じ線形な超音波となる。
次に、本実施形態の超音波放射素子81から放射される超音波について説明する。
本実施形態の超音波放射素子81においても、上述したように圧電ユニモルフ101に対して正負の駆動電圧を供給することによって、圧電ユニモルフ101が凸形状と凹形状とに交互に変形し、これにより振動板103が、図8に示すP1の位置からP6の位置まで順次移動する。
そして、この振動板103の移動によって超音波が放射されるが、本実施形態の超音波放射素子81の場合、上述したように振動板103が下方に移動する際、振動板103の穴103h内を空気が通過する。
したがって、振動板103が、図8に示すP1〜P6の各位置に移動したときに放射される超音波は、振動板103がP2の位置とP6の位置に移動した際には、すなわち最も上方に移動した際には、圧力の高い部分が形成されるが、振動板103がP4の位置に移動した際には、すなわち最も下方に移動した際には、従来の超音波放射素子200の場合と比較して低い圧力が形成される部分が少なくなる。そして、超音波放射素子81から放射される超音波は、弁付ピストンポンプと同様な圧力波になると同時に、さらに超音波伝達媒体の非線形特性とも相まって一方向に強い圧力を発生させる超音波となる。
図9は、振動板103がP1〜P6の各位置へ移動した際における超音波の音圧の波形を示すものである。図9に示すように、本実施形態の超音波放射素子81の場合、振動板103の花弁状フィルム103aが弁の働きをするので、従来の超音波放射素子200の超音波を比較して、粗波部の圧力を高いままとして非線形にすることができるので、粗密波の密波部と粗波部との圧力が非対象な超音波を発生させることができる。すなわち、振動板103が上方に移動した際に発生する正方向の圧力よりも、振動板103が下方に移動した際に発生する負方向の圧力の方が小さい非線形な超音波であって、図9に示す圧力オフセット量が付加された一方向に強い圧力を有する超音波を発生させることができる。
また、上記実施形態の超音波放射素子81においては、振動板103を花弁状フィルム103aとフレーム103bとから構成し、花弁状フィルム103aの各フィルム部分103dを弁として作用させるようにしたが、振動板103の構成としては、その他の構成を採用するようにしてもよい。
具体的には、たとえば、図10に示すように、厚さが0.05mm〜0.1mm程度の薄いビニール樹脂からなる樹脂膜112に対して、6本〜8本程度の骨線111を放物線状に成形して放射状に配置することによってパラボラ形状の振動板110を構成するようにしてもよい。骨線111としては、たとえば細いピアノ線など弾性体から形成されたものを用いることができる。
図10に示す振動板110は、傘を逆さまにしたような状態でその中心が圧電ユニモルフ101に接続される。そして、図11(a)に示すように、圧電ユニモルフ101が凸形状に変形することによって振動板110が上方に移動した場合には、振動板110は、ほとんど変形せずに傘を開いたような状態のまま移動する。
一方、図11(b)に示すように、圧電ユニモルフ101が凹形状に変形することによって振動板110が下に移動した場合には、振動板110の樹脂膜112が空気抵抗を受けて骨線111が内側に変形し、これにより空気が樹脂膜112の外側に沿って上方(矢印方向)に抜ける。このように構成した場合でも、従来の超音波放射素子200の場合と比較して、低い圧力が形成される部分を少なくすることができ、一方向に強い圧力を発生させる超音波を放射することができる。
以上が、本実施形態の超音波放射素子81の説明である。
次に、上記実施形態の超音波放射素子81を用いた印刷装置について詳細に説明する。本印刷装置は、印刷用紙を搬送する用紙搬送部や印刷用紙の搬送方向を切り替える搬送経路切替部に超音波放射素子を用いたことに特徴を有するものであるが、まずは、印刷装置全体の構成について説明する。図12は、本実施形態の印刷装置1の全体の概略構成図である。
印刷装置1は、コンピュータから出力された印刷ジョブデータや原稿読取部において光電的に読み取られた読取画像データに基づいて、印刷用紙Pに対して印刷処理を施すものである。
印刷装置1は、インクヘッド部10と、給紙部11と、用紙搬送部12と、上面搬送部13と、第1の排紙部14と、反転部15と、第2の排紙部16と、クリーニング部17とを備えている。
インクヘッド部10は、印刷ジョブデータや読取画像データに基づいて、印刷用紙Pに対してインクを吐出することによって印刷処理を施すものである。本実施形態のインクヘッド部10は、印刷用紙Pの搬送方向に直交する方向に延びるライン型のインクヘッドを備えたものであり、ブラックK、シアンC、マゼンダM、イエローYの各色のインクを吐出するインクヘッドを備えている。各色のインクヘッドは、印刷用紙Pの搬送方向に並べて配置される。
クリーニング部17は、各色のインクヘッドに対してそれぞれ設けられ、後述する搬送ローラ22の間に設けられるものである。クリーニング部17は、クリーニング処理の際にインクヘッドから吐出されたインクの受け皿となったり、インクヘッドのインクの吐出面をワイプして、吐出面に付着したインクを除去したりするものである。
給紙部11は、印刷用紙Pをインクヘッド部10へ給紙するものである。給紙部11は、印刷用紙Pが設置される給紙トレイ11aと、給紙トレイ11aに設置された印刷用紙Pを取り出すピックアップローラ18と、ピックアップローラ18によって取り出された印刷用紙Pの先端を一旦停止させて斜行補正を行った後に、所定のタイミングで印刷用紙Pを用紙搬送部12に向けて搬送するレジストローラ19と、各ローラを駆動する複数のモータ(図示省略)とを備えている。
用紙搬送部12は、レジストローラ19から搬送された印刷用紙Pを受け入れてインクヘッド部10へ向けて搬送する一対のローラからなるニップローラ21と、ニップローラ21によって搬送された印刷用紙Pをインクヘッド部10の上流側から下流側へ向けて搬送する搬送ローラ22と、各搬送ローラ22に対して印刷用紙Pを挟むようにして対向して設けられ、印刷用紙Pに対して超音波を放射することによって印刷用紙Pを搬送ローラ22に対して押圧する押圧部23と、搬送ローラ22によって搬送された印刷用紙Pを上面搬送部13の搬送経路に送り出すか、第2の排紙部16の搬送経路に送り出すかを切り替える第1の搬送経路切替部24と、各ローラを駆動する複数のモータ(図示省略)を備えている。
搬送ローラ22と押圧部23とは組として設けられ、印刷用紙Pの搬送方向に複数組設けられている。搬送ローラと押圧部23の各組は、それぞれ各色のインクヘッドの間に配置されている。なお、押圧部23および第1の搬送経路切替部24については後で詳述する。
上面搬送部13は、用紙搬送部12によって搬送された印刷用紙Pを図1の紙面右方向から左方向へとUターンするように搬送するものである。上面搬送部13は、一対のローラからなる複数の上面搬送ローラ31と、上面用紙ガイド32と、第2の搬送経路切替部33と、各ローラを駆動する複数のモータ(図示省略)とを備えている。
第2の搬送経路切替部33は、上面搬送部13の搬送経路の途中に設けられるものであり、搬送された印刷用紙Pの先端に対して超音波を放射することによって押圧し、これにより印刷用紙Pの先端を第1の排紙部14側の搬送経路に送り出すか、反転部側15側の搬送経路に送り出すかを切り替えるものである。第2の搬送経路切替部33についても後で詳述する。
第1の排紙部14は、印刷済みの印刷用紙Pが排紙されて積載されるものである。第1の排紙部14は、上面搬送部13によって搬送され、第2の搬送経路切替部33によって先端の向きが上側に押圧された印刷用紙Pを案内する第1の排紙部ガイド42と、第1の排紙部ガイド42によって案内された印刷用紙Pを搬送する一対のローラからなる第1の排紙ローラ41と、複数の第1の排紙ローラ41によって搬送された印刷用紙Pが排紙されて積載される第1の排紙トレイ43と、各ローラを駆動する複数のモータ(図示省略)とを備えている。
反転部15は、両面印刷の際に片面印刷済みの印刷用紙Pを反転させてレジストローラ19へと搬送するものである。反転部15は、上面搬送部13によって搬送された片面印刷済みの印刷用紙Pを受け入れ、その印刷用紙Pをスイッチバック部52に搬送し、その後、スイッチバック部52内の印刷用紙Pをレジストローラ19に向けて搬送する一対のローラからなる反転ローラ51と、反転ローラ51によって一時的に印刷用紙Pが搬入されるスイッチバック部52と、スイッチバック部52に一時的に搬入された印刷用紙Pの先端がスイッチバック部52から排出される際、その先端に対して超音波を放射することによって押圧し、これにより印刷用紙Pの先端をレジストローラ19側の搬送経路に案内する第3の搬送経路切替部53と、第3の搬送経路切替部53によって先端が押圧された印刷用紙Pをレジストローラ19まで案内する反転用紙ガイド54と、反転ローラ51を駆動するモータ(図示省略)とを備えている。
なお、上面搬送部13から搬送された印刷用紙Pが反転ローラ51により受け入れられる際には、第3の搬送経路切替部53から超音波は放射されない。そして、上面搬送部13から排出された印刷用紙Pの先端がそのまま反転ローラ51に案内されるように、上面搬送部13の上面用紙ガイド32と反転ローラ51とが配置されているものとする。また、第3の搬送経路切替部53についても後で詳述する。
第2の排紙部16は、用紙搬送部12によって搬送された印刷済みの印刷用紙Pが排出され、積載されるものである。第2の排紙部16は、第1の搬送経路切替部24からの超音波の放射によって先端の向きが下側に押圧された印刷用紙Pを案内する第2の排紙部ガイド61と、第2の排紙部ガイド61によって案内された印刷用紙Pを搬送する第2の排紙ローラ62と、第2の排紙ローラ62によって搬送された印刷用紙Pが排紙されて積載される第2の排紙トレイ63と、第2の排紙ローラ62を駆動する複数のモータ(図示省略)とを備えている。
以上が、印刷装置1の装置全体の説明である。
次に、用紙搬送部12の押圧部23の構成およびその制御系について、図13を参照しながら説明する。
各押圧部23は、基板80と、基板80上に設けられた超音波放射素子81と備えている。超音波放射素子81は、基板80上に印刷用紙Pの搬送方向に直交する方向に複数配列されている。この複数の超音波放射素子81は、同一の周波数および同一の位相の超音波をそれぞれ放射するように駆動されるものである。各超音波放射素子81は、押圧部23の下方を通過する印刷用紙Pに向かって超音波を放射するものであり、この超音波の放射によって印刷用紙Pが搬送ローラ22に対して押圧され、これにより印刷用紙Pが搬送ローラ22と接触してその回転によって搬送される。
各押圧部23は、用紙押圧制御部25によって制御されるものである。用紙押圧制御部25は、各押圧部23を駆動制御する押圧部駆動部26を備えている。押圧部駆動部26は、押圧部23の複数の超音波放射素子81に対して駆動電圧を供給するものである。押圧部駆動部26は、各押圧部23に対してそれぞれ設けられており、各押圧部23を独立して駆動制御できるように構成されている。
図14は、押圧部駆動部26の構成を示す回路図である。押圧部駆動部26は、図14に示すように、2つのインバータ回路90,91と、プレドライバ回路92と、4つのスイッチ素子93〜96から構成されている。
インバータ回路90には、押圧タイミング生成部27(図13参照)から出力された駆動信号が入力され、インバータ回路90の出力信号がインバータ回路91に入力される。押圧タイミング生成部27は、周波数40kHz、デューティ比50%の矩形の波形信号を生成して出力するものであり、この波形信号がインバータ回路90に入力される。
インバータ回路90,91の出力信号は、プレドライバ回路92に入力され、プレドライバ回路92からの出力信号が4つのスイッチ素子93〜96に入力される。4つのスイッチ素子93〜96は、プレドライバ回路92からの出力信号に応じて、スイッチ素子93とスイッチ素子96とが同時にオンされ、スイッチ素子95とスイッチ素子94とが同時にオンされる。
そして、スイッチ素子93〜96には、駆動電圧調整部28から出力された直流の調整電圧が供給されており、スイッチ素子93およびスイッチ素子96のオン動作と、スイッチ素子95およびスイッチ素子94のオン動作が交互に行われることによって、超音波放射素子81に対して正方向の駆動電圧と負方向の駆動電圧とが交互に印加される。超音波放射素子81は、この正負方向の駆動電圧の印加によって40kHzの超音波を放射する。押圧部23における各超音波放射素子81は、同じ極性同士が並列に接続されており、これにより各超音波放射素子81からは同一周波数および同一位相の超音波が放射される。
次に、用紙搬送部12によって印刷用紙Pを搬送する際の制御について、図2、図15および図16を参照しながら説明する。
図15(a)〜(e)は、各押圧部23における超音波の放射開始のタイミングと放射停止のタイミングとを時系列に説明するための図である。図15(a)〜(e)の順で時間が経過しているものとする。
まず、図15(a)に示すように、前に搬送されている印刷用紙P0の後端が搬送ローラ22の中心軸位置を通過する直前において、その搬送ローラ22に対向する押圧部23からの超音波の放射が停止される。このように印刷用紙P0の後端が搬送ローラ22を通過する前に超音波の放射を停止させるのは、印刷用紙P0の後端が搬送ローラ22を通過した後まで超音波の放射を継続したのでは、印刷用紙P0の後端にたわみが生じてしまい印刷用紙P0の搬送に悪影響を及ぼす可能性があるからである。なお、印刷用紙P0の後端が搬送ローラ22の中心軸位置を通過する直前の時点は、押圧部23と印刷用紙P1との距離と超音波の伝搬速度とに基づいて求めることができる。
そして、図15(b)に示すように、前に搬送されている印刷用紙P0が搬送ローラ22を抜けた後、次の印刷用紙P1の先端が搬送ローラ22の中心軸位置に到達する前までは超音波の放射は停止され、図15(c)に示すように、次の印刷用紙P1の先端が搬送ローラ22の中心軸位置に到達した時点以降から押圧部23から超音波が放射され、これにより印刷用紙P1が搬送ローラ22に押圧されてその回転により搬送される。
このように印刷用紙P1の先端が搬送ローラ22に到達した時点以降から超音波の放射を開始させるのは、印刷用紙P1の先端が搬送ローラ22に到達する前に超音波の放射を開始したのでは、印刷用紙P1の先端にたわみが生じてしまい印刷用紙P1の搬送に悪影響を及ぼす可能性があるからである。
次いで、図15(d)に示すように、引き続き押圧部23から超音波が放射され、その押圧力と搬送ローラ22の回転とによって印刷用紙P1が搬送され、図15(e)に示すように、印刷用紙P1の後端が搬送ローラ22の中心軸位置に近づくまでは押圧部23から超音波が放射される。そして、印刷用紙P1の後端が搬送ローラ22の中心軸位置を通過する直前において、その搬送ローラ22に対向する押圧部23からの超音波の放射が停止される。
なお、本実施形態では、上述したように印刷用紙P1の先端が搬送ローラ22の中心軸位置に到達した時点以降から超音波の放射を開始するようにしたが、たとえば押圧部23から放射された超音波が印刷用紙P1に到達するまでの時間を考慮し、印刷用紙P1の先端が搬送ローラ22の中心軸位置に到達した時点に超音波が印刷用紙P1の先端に到達するように超音波の放射を開始するようにしてもよい。すなわち、印刷用紙P1の先端が搬送ローラ22の中心軸位置まで到達する直前の時点から超音波の放射を開始するようにしてもよい。印刷用紙P1の先端が搬送ローラ22の中心軸位置まで到達する直前の時点は、押圧部23と印刷用紙P1との距離と超音波の伝搬速度とに基づいて求めることができる。
上述したような押圧部23からの超音波の放射開始および放射停止のタイミングは、図13に示す用紙押圧制御部25における押圧タイミング生成部27によって制御される。押圧タイミング生成部27は、上述したように、周波数40kHz、デューティ比50%の矩形の波形信号を生成して出力するものであり、この波形信号が、各押圧部駆動部26に入力されることによって、各押圧部駆動部26から各押圧部23に対して正負方向の駆動電圧が供給されて超音波の放射タイミングが制御される。
そして、押圧タイミング生成部27は、搬送方向の上流側の押圧部23から下流側の押圧部23の順に超音波が放射され、かつ搬送方向の上流側の押圧部23から下流側の押圧部23の順に超音波の放射が停止されるような波形信号を生成して各押圧部駆動部26に出力するものである。
図16は、各押圧部23に対して各押圧部駆動部26から供給される駆動電圧波形の供給タイミングの一例を示すものである。なお、図16においては、印刷用紙Pの搬送方向上流側の押圧部23から順に、押圧部23_1、押圧部23_2、押圧部23_3、押圧部23_4とし、これらの押圧部23_1〜23_4のそれぞれに対応する搬送ローラ22を搬送ローラ22_1〜22_4とし、押圧部23_1〜23_4のそれぞれに駆動電圧を供給する押圧部駆動部26を押圧部駆動部26_1〜26_4として示している。
図16に示すように、押圧部駆動部26_1は、ニップローラ21によって搬送された印刷用紙Pの先端が搬送ローラ22_1の中心軸位置に到達した後の時点T1から、印刷用紙Pの後端が搬送ローラ22_1の中心軸位置を通過する直前の時点T5までの間において、押圧部23_1に対して駆動電圧を供給する。
また、押圧部駆動部26_2は、搬送ローラ22_1によって搬送された印刷用紙Pの先端が搬送ローラ22_2の中心軸位置に到達した後の時点T2から、印刷用紙Pの後端が搬送ローラ22_2の中心軸位置を通過する直前の時点T6までの間において、押圧部23_2に対して駆動電圧を供給する。
また、押圧部駆動部26_3は、搬送ローラ22_2によって搬送された印刷用紙Pの先端が搬送ローラ22_3の中心軸位置に到達した後の時点T3から、印刷用紙Pの後端が搬送ローラ22_3の中心軸位置を通過する直前の時点T7までの間において、押圧部23_3に対して駆動電圧を供給する。
また、押圧部駆動部26_4は、搬送ローラ22_3によって搬送された印刷用紙Pの先端が搬送ローラ22_4の中心軸位置に到達した後の時点T4から、印刷用紙Pの後端が搬送ローラ22_4の中心軸位置を通過する直前の時点T7までの間において、押圧部23_4に対して駆動電圧を供給する。
ここで、上述したように各押圧部駆動部26から各押圧部23への駆動電圧の供給タイミングは、搬送される印刷用紙Pの搬送位置に基づいて設定されるものである。したがって、本実施形態においては、図13に示すように、ニップローラ21を通過した印刷用紙Pの先端を検出する用紙先端検出センサ71と、その用紙先端検出センサ71によって検出された検出信号と、ニップローラ21および搬送ローラ22を駆動するローラ駆動モータ72の回転数とに基づいて印刷用紙Pの搬送位置を算出する用紙搬送位置算出部70とが設けられている。押圧タイミング生成部27は、用紙搬送位置算出部70において算出された印刷用紙Pの搬送位置に基づいて、各押圧部駆動部26に対して波形信号を出力する。なお、本実施形態においては、上述した用紙先端検出センサ71と用紙搬送位置算出部70とが、搬送位置検出部に相当するものである。
また、上述したように押圧部23から放射される超音波の印刷用紙Pに対する押圧力は、押圧部駆動部26から押圧部23に供給される駆動電圧の大きさに依存し、この駆動電圧の大きさは、図13に示す駆動電圧調整部28から各押圧部駆動部26に供給される調整電圧の大きさに依存する。
そして、押圧部23による印刷用紙Pに対する押圧力は、印刷用紙Pの厚さや腰の強さに応じて変更することが望ましい。具体的には、たとえば軽量紙のように薄くて腰の弱い印刷用紙Pに過大な押圧力を加えると印刷用紙Pのたわみが大きくなり、印字の位置精度が悪化するおそれがある。一方、表彰状のような重たい印刷用紙Pの場合、押圧力が少ないと搬送ローラ22におけるスリップなどの搬送障害が発生するおそれがある。
そこで、本実施形態においては、図13に示す用紙情報記憶部29において、図17に示すような印刷用紙の情報Pa〜Pdと駆動電圧調整部28から出力される調整電圧V1〜V4の大きさとを対応づけたテーブルを記憶しておき、用紙押圧制御部25が、印刷用紙の情報を取得するとともに、上記テーブルを参照し、駆動電圧調整部28から印刷用紙の情報に対応する調整電圧を出力させるようにしてもよい。なお、印刷用紙の情報については、コンピュータから出力された印刷ジョブデータから取得するようにしてもよいし、印刷装置1に設けられたタッチパネルからなる操作パネル(図示省略)上においてユーザーが設定入力するようにしてもよい。
なお、印刷用紙の情報としては、上述したような軽量紙や厚紙などといった印刷用紙の種類の情報や、印刷用紙の厚さ情報や、印刷用紙のサイズ情報や、印刷用紙の腰の強さの情報などがある。
印刷用紙の情報が印刷用紙の厚さ情報や腰の強さの情報である場合には、たとえば、上述したように印刷用紙のたわみやスリップなどを考慮して、印刷用紙が厚いほどまたは印刷用紙の腰が強いほど調整電圧を大きくし、印刷用紙が薄いほどまたは印刷用紙の腰が弱いほど調整電圧を小さくするようにすればよい。また、印刷用紙が薄い方または腰が弱い方が搬送ローラ22との密着度が低く、皺になり易いなどの観点から、印刷用紙が薄いほど調整電圧を小さくし、印刷用紙が厚いほどまたは腰が強いほど調整電圧を大きくするような設定としてもよい。
また、印刷用紙の情報が印刷用紙のサイズ情報である場合には、たとえば、印刷用紙のサイズが大きいほど調整電圧を大きくし、サイズが小さいほど調整電圧を小さくするようにすればよい。また、印刷用紙のサイズが小さい方が搬送ローラ22におけるスリップが生じ易い場合には、逆に、印刷用紙のサイズが小さいほど調整電圧を大きくし、サイズが大きいほど調整電圧を小さくするにしてもよい。
また、印刷用紙の情報が、印刷用紙の種類の情報である場合にも、その印刷用紙の厚さや腰の強さに応じて調整電圧が設定される。
また、本実施形態においては、各押圧部23に対してそれぞれ1つの押圧部駆動部26を設けるようにしたが、たとえば、1つの押圧部23に含まれる各超音波放射素子81に対してそれぞれ図14に示した押圧部駆動部26を設け、各超音波放射素子81からの超音波の放射を独立して制御できるようにしてもよい。そして、このように各超音波放射素子81を独立して制御可能に構成した場合には、たとえば、上述したようなタイミングで所定の押圧部23から超音波を放射させる際、図18に示すように、その押圧部23に含まれる複数の超音波放射素子81のうち、搬送方向に直交する方向について中央に配置された超音波放射素子81から両端側に配置された超音波放射素子81に向かって(図18の矢印方向に向かって)順番に超音波を放射させるようにしてもよい。
このように各超音波放射素子81から超音波を放射させることによって、印刷用紙Pに対し、搬送方向に直交する方向の中央位置から両側に向かって押圧力を加えることができ、これにより印刷用紙Pの皺の発生を抑制することができる。
ここで、本実施形態のように、超音波放射素子81から放射される超音波によって印刷用紙Pを押圧することの効果について、たとえばファンから放出された風によって印刷用紙Pを押圧する場合と比較して説明する。
ファンを用いて印刷用紙Pを押圧しようとした場合、ファンから放出される風の押圧力と印刷用紙Pの搬送時間との関係は、図19(a)のようになる。すなわち、ファンによって発生した風を印刷用紙Pに対して放出した場合、ファンは風を放出および停止するまでの応答速度が比較的遅いので、風の押圧力を、印刷用紙Pを搬送可能なニップ圧まで上昇させるまでに比較的長い時間(左側斜線部)が必要である。また、その後、風の押圧力を、印刷用紙Pをたわませない程度にまで下降させるのにも比較的長い時間(右側車線部)が必要である。したがって、ファンの風による押圧によって印刷用紙Pを搬送した場合、ファンが動作している間に確保できる搬送時間が比較的短くなってしまう。
また、ファンから放出される風は指向性が低いため、印刷用紙Pに対する圧力分布が広くなってしまう。これにより、図19(b)に示すように、搬送ローラの近傍で印刷用紙のたわみが発生しやすくなり、搬送障害を招き易くなる。
一方、本実施形態のように、超音波放射素子81を用いて印刷用紙Pを押圧しようとした場合、超音波放射素子81から放射される超音波の押圧力と印刷用紙Pの搬送時間との関係は、図20(a)のようになる。すなわち、超音波放射素子81によって発生した超音波を印刷用紙Pに対して放射した場合、超音波放射素子81は超音波を放射および停止するまでの応答速度が比較的速いので、超音波の押圧力を、印刷用紙Pを搬送可能なニップ圧まで上昇させるまでに比較的短い時間(左側斜線部)で済む。また、その後、超音波の押圧力を、印刷用紙Pをたわませない程度にまで下降させるのにも比較的短い時間(右側車線部)でよい。したがって、超音波放射素子81の超音波による押圧によって印刷用紙Pを搬送した場合、超音波放射素子81が動作している間に確保できる搬送時間を比較的長くすることができ、印刷処理の処理効率を向上させることができる。
また、超音波放射素子81から放射される超音波は指向性が高いため、印刷用紙Pに対する圧力分布は狭くなる。これにより、図20(b)に示すように、搬送ローラ22の近傍における印刷用紙Pのたわみを抑制することができる。
このように、ファンから放出される風ではなく、超音波放射素子81から放射される超音波によって印刷用紙Pを押圧することによって、処理効率を向上させることができるとともに、印刷用紙Pの搬送障害を抑制することができる。
また、上記実施形態の印刷装置1においては、1つの搬送ローラ22に対して1つの押圧部23を設けるようにしたが、複数の押圧部23を設けるようにしてもよい。たとえば、図21に示すように、1つの搬送ローラ22に対して2つの押圧部23を設けるようにしてもよい。この場合、図21に示すように、各押圧部23から放射される超音波の放射方向が搬送ローラ22の中心軸を向くように、各押圧部23を傾けて設置することが望ましい。このように複数の押圧部23を設けることによって、印刷用紙Pをより大きな圧力で押圧することができる。
以上が、用紙搬送部12の押圧部23の構成およびその制御系の説明である。
次に、第1の搬送経路切替部24、第2の搬送経路切替部33および第3の搬送経路切替部53について詳細に説明する。まず、第2の搬送経路切替部33について説明する。
第2の搬送経路切替部33は、図12に示すように、上面搬送部13の搬送経路(第1の搬送経路)の途中に設けられるものであり、第1の排紙部14側の搬送経路(第2の搬送経路)と反転部15側の搬送経路(第3の搬送経路)との分岐点に設けられるものである。そして、下流側から搬送された印刷用紙Pに対して超音波を放射することによって押圧し、これにより印刷用紙Pを第1の排紙部14側の搬送経路に送り出すか、反転部側15側の搬送経路に送り出すかを切り替えるものである。
具体的には、第2の搬送経路切替部33は、図22に示すように、第1の押圧部33aと第2の押圧部33bとを備えている。第1の押圧部33aと第2の押圧部33bとは、第1の排紙部14側の搬送経路と反転部15側の搬送経路との分岐点を挟むように対向して設けられるものであり、第1の押圧部33aは、下方に超音波を放射するものであり、第1の押圧部33bは、上方に超音波を放射するものである。
第1の押圧部33aと第2の押圧部33bは、上述した用紙搬送部12における押圧部23と同じ構成であり、基板80と、印刷用紙Pの搬送方向に直交する方向に配列された複数の超音波放射素子81とを備えたものである。第1の押圧部33aの複数の超音波放射素子81と第2の押圧部33bの複数の超音波放射素子81も、同一の周波数および同一の位相の超音波を放射するように駆動されるものである。
そして、第2の搬送経路切替部33は、図22に示す搬送経路切替制御部35によって駆動制御されるものである。
搬送経路切替制御部35は、第1の押圧部33aと第2の押圧部33bをそれぞれ駆動制御する押圧部駆動部36を備えている。押圧部駆動部36は、第1および第2の押圧部33a,33bの複数の超音波放射素子81に対して駆動電圧を供給するものである。押圧部駆動部36は、第1の押圧部33aと第2の押圧部33bに対してそれぞれ設けられており、第1の押圧部33aと第2の押圧部33bとを独立して駆動制御できるように構成されている。押圧部駆動部36の詳細な構成は、上述した用紙押圧制御部25の押圧部駆動部26と同様である。
また、搬送経路切替制御部35は、搬送経路切替制御信号生成部37を備えている。搬送経路切替制御信号生成部37は、上述した用紙押圧制御部25の押圧タイミング生成部27と同様に、周波数40kHz、デューティ比50%の矩形の波形信号を生成して出力するものである。搬送経路切替制御信号生成部37から出力された波形信号が、第1および第2の押圧部33a,33bに対してそれぞれ設けられた各押圧部駆動部36に入力されることによって、各押圧部駆動部36から第1および第2の押圧部33a,33bに対して正負方向の駆動電圧が供給されて超音波の放射が制御される。
また、第2の搬送経路切替部33の上流側近傍には、搬送された印刷用紙Pの先端を検出する用紙先端検出センサ34が設けられている。上述した搬送経路切替制御信号生成部37は、用紙先端検出センサ34によって検出された検出信号と、印刷用紙Pの搬送量情報とに基づくタイミングで各押圧部駆動部36に対して波形信号を出力するものである。印刷用紙Pの搬送量情報とは、用紙先端検出センサ34によって印刷用紙Pの先端が検出された時点からの印刷用紙Pの搬送量である。この印刷用紙Pの搬送量情報は、上面搬送ローラ31を駆動するモータの回転数に基づいて算出されるものである。
次に、第2の搬送経路切替部33によって印刷用紙Pの搬送経路を切り換える際の制御について、図22、図23および図24を参照しなら説明する。
図23(a)〜(e)および図24(a)〜(c)は、第1および第2の押圧部33a,33bにおける超音波の放射開始のタイミングと放射停止のタイミングとを時系列に説明するための図である。図23(a)〜(e)、図24(a)〜(c)の順で時間が経過しているものとする。なお、ここでは、第1の排紙部14側の搬送経路への切り替えと、反転部15側への搬送経路の切り替えとを交互に行う場合について説明する。
まず、図23(a)に示すように、前に搬送されている印刷用紙P0の後端が第2の搬送経路切替部33に到達し、次の印刷用紙P1の先端が第2の搬送経路切替部33の直前まで搬送されている時点において、第1の押圧部33aから超音波の放射が開始される。このとき第2の押圧部33bからの超音波の放射は停止されている。
次いで、図23(b)に示すように、前に搬送されている印刷用紙P0の後端が第2の搬送経路切替部33を通過した後、次の印刷用紙P1の先端が第2の搬送経路切替部33まで到達した時点においては、引き続き第1の押圧部33aのみからの超音波の放射が継続され、これにより次の印刷用紙P1の先端が反転部15側の搬送経路に案内され、図23(c)に示すように、引き続き第1の押圧部33aのみからの超音波の放射が継続されて印刷用紙P1がそのまま反転部15側の搬送経路に案内される。
そして、図23(d)に示すように、印刷用紙P1が反転部15側の搬送経路に予め設定された距離だけ搬送された際に、第1の押圧部33aからの超音波の放射が停止される。
次いで、図23(e)に示すように、搬送中の印刷用紙P1の後端が第2の搬送経路切替部33に到達した時点において、第2の押圧部33bのみから超音波の放射が開始される。このとき次の印刷用紙P2の先端が第2の搬送経路切替部33の直前まで搬送されている。
次に、図24(a)に示すように、印刷用紙P1の後端が第2の搬送経路切替部33を通過した後、次の印刷用紙P2の先端が第2の搬送経路切替部33まで到達した時点においては、引き続き第2の押圧部33bのみからの超音波の放射が継続され、これにより次の印刷用紙P2の先端が第1の排紙部14側の搬送経路に案内され、図24(b)に示すように、引き続き第2の押圧部33bのみからの超音波の放射が継続されて印刷用紙P2がそのまま第1の排紙部14側の搬送経路に案内される。
そして、図24(c)に示すように、印刷用紙P1が第1の排紙部14側の搬送経路に予め設定された距離だけ搬送された際に、第2の押圧部33bからの超音波の放射が停止される。以降、図23(a)〜(e)、図24(a)〜(c)の動作が繰り返される。
また、図22に示すように、搬送経路切替制御部35は、駆動電圧調整部38と、用紙情報記憶部39とを備えている。駆動電圧調整部38は、上述した用紙押圧制御部25における駆動電圧調整部28と同様に、各押圧部駆動部36に対して調整電圧を供給するものである。
また、用紙情報記憶部39は、用紙押圧制御部25における用紙情報記憶部29と同様に、印刷用紙の情報と駆動電圧調整部38から出力される調整電圧の大きさとを対応づけたテーブルが記憶されたものである。搬送経路切替制御部35は、印刷用紙の情報を取得するとともに、上記テーブルを参照し、駆動電圧調整部38から印刷用紙の情報に対応する調整電圧を出力させるものである。
なお、印刷用紙の情報としては、上述したように印刷用紙の厚さ情報や、印刷用紙のサイズ情報や、印刷用紙の腰の強さの情報や、印刷用紙の種類の情報などがある。印刷用紙の情報が印刷用紙の厚さ情報や腰の強さの情報である場合には、たとえば、印刷用紙が厚いほどまたは腰が強いほど調整電圧を大きくし、印刷用紙が薄いほどまたは腰が弱いほど調整電圧を小さくするようにすればよい。調整電圧の大きさとしては、超音波によって印刷用紙Pを押圧した際における搬送経路と印刷用紙Pとの摩擦力が所定値以下となるように設定することが望ましい。
また、印刷用紙の情報が印刷用紙のサイズ情報である場合には、たとえば、印刷用紙のサイズが大きいほど調整電圧を大きくし、サイズが小さいほど調整電圧を小さくするようにすればよい。
また、印刷用紙の情報が印刷用紙の種類の情報である場合には、その印刷用紙の厚さや腰の強さに応じて調整電圧を設定するようにすればよい。
次に、第1の搬送経路切替部24について説明する。第1の搬送経路切替部24は、上述したように搬送ローラ22によって搬送された印刷用紙Pを上面搬送部13の搬送経路に送り出すか、第2の排紙部16の搬送経路に送り出すかを切り替えるものである。
第1の搬送経路切替部24の構成は、第2の搬送経路切替部33の構成と同様であり、図1に示すように、第1の押圧部24aと第2の押圧部24bとを備えている。第1の押圧部24aと第2の押圧部24bとは、第2の排紙部16側の搬送経路と上面搬送部13側の搬送経路との分岐点を挟むように対向して設けられるものであり、第1の押圧部24aは、下方に超音波を放射するものであり、第1の押圧部24bは、上方に超音波を放射するものである。第1の押圧部24aおよび第2の押圧部24bの構成も、上述した第1の押圧部33aおよび第2の押圧部33bの構成と同様である。
また、第1の搬送経路切替部24の上流側近傍にも、用紙先端検出センサ(図示省略)が設けられており、この用紙先端検出センサによって検出された検出信号と印刷用紙Pの搬送量情報とに基づいて、搬送経路切替制御部によって第1の押圧部24aと第2の押圧部24bとが駆動制御される。搬送経路切替制御部は、第2の排紙部16側の搬送経路に印刷用紙Pを案内する際には第1の押圧部24aから超音波を放射させ、上面搬送部13側の搬送経路に印刷用紙Pを案内する際には第2の押圧部24bから超音波を放射させるものであるが、その構成および搬送経路の切り替えの制御については、上述した搬送経路切替制御部35と同様である。
次に、第3の搬送経路切替部53について詳細に説明する。第3の搬送経路切替部53は、上述したようにスイッチバック部52に一時的に搬入された印刷用紙Pの先端がスイッチバック部52から排出される際、その先端に対して超音波を放射することによって押圧し、これにより印刷用紙Pの先端をニップローラ21側の搬送経路に案内するものである。
第3の搬送経路切替部53は、図12に示すように、反転部15の反転ローラ51の近傍に設けられるものであり、下方に超音波を放射するものである。第3の搬送経路切替部53は、第1および第2の搬送経路切替部53の2つの押圧部を1つだけにした構成であり、その構成は、上述した第1の押圧部33aや第1の押圧部24aと同様である。
また、第3の搬送経路切替部53の上流側近傍にも、用紙先端検出センサが設けられており、この用紙先端検出センサによって検出された検出信号と印刷用紙Pの搬送量情報とに基づいて、搬送経路切替制御部によって第3の搬送経路切替部53が駆動制御される。第3の搬送経路切替部53の搬送経路切替制御部の構成は、押圧部駆動部36が1つだけであること以外は搬送経路切替制御部35と同様である。
第3の搬送経路切替部53の搬送経路切替制御部の搬送経路切替制御信号生成部は、スイッチバック部52に一時的に搬入された印刷用紙Pの先端が第3の搬送経路切替部53に到達した時点において波形信号を押圧部駆動部に出力し、これにより押圧部駆動部から第3の搬送経路切替部53に駆動電圧が出力されて超音波が放射される。
また、第3の搬送経路切替部53についても、第1および第2の搬送経路切替部24,33と同様に、印刷用紙の種類に応じて駆動電圧を変更するようにしてもよい。
ここで、本実施形態のように、超音波によって印刷用紙Pを押圧して搬送経路を切り替えることの効果について、たとえばファンから放出された風によって印刷用紙Pを押圧して搬送経路を切り替える場合と比較して説明する。
ファンを用いて印刷用紙Pを押圧して搬送経路を切り替えた場合、ファンから放出される風は、肌理の粗い対流となり易く、印刷用紙Pの全幅に亘って均一な風圧を放出する風路を具現化することは極めて困難である。
したがって、図25(b)の矢印で示すような箇所において印刷用紙Pに皺が発生しやすい。なお、図25(b)の下図は、搬送方向に垂直な断面図である。
一方、本実施形態のように、超音波を用いて印刷用紙Pを押圧して搬送経路を切り替えた場合、図25(a)に示すように、個々の超音波放射素子から放射された指向性の強い超音波をアレイ状に配置しているため、均一な圧力波を形成することができ、比較的軽い印刷用紙Pでも皺の発生を少なくすることができる。なお、図25(a)の下図は、搬送方向に垂直な断面図である。
このように、ファンから放射される風ではなく、超音波によって印刷用紙Pを押圧することによって、印刷用紙Pの皺の発生を抑制することができ、搬送障害を少なくすることができる。
次に、本実施形態の印刷装置1の作用について、図12を参照しながら説明する。
まず、コンピュータから出力された印刷ジョブデータまたは原稿読取装置から出力された読取画像データが印刷装置1によって受信され、その印刷ジョブデータまたは読取画像データを印刷するための印刷用紙Pの給紙が開始される。
具体的には、給紙部11の給紙トレイ11aに設置された印刷用紙Pがピックアップローラ18によって取り出され、レジストローラ19まで搬送される。そして、レジストローラ19において印刷用紙Pの先端を一旦停止させて斜行補正を行った後に、所定のタイミングで印刷用紙Pが用紙搬送部12に向けて搬送される。
レジストローラ19によって搬送された印刷用紙Pは、用紙搬送部12のニップローラ21によってニップされて搬送され、その後、搬送ローラ22によってインクヘッド部10の上流側から下流側へ向けて搬送される。
このとき、上述したように印刷用紙Pの搬送位置に応じて、上流側の押圧部23から超音波が順次放射され、この超音波の放射によって印刷用紙Pが搬送ローラ22に押圧されて搬送される。
そして、印刷用紙Pの先端が第1の搬送経路切替部24に到達した際、第2の排紙部16に排紙する場合には、第1の搬送経路切替部24の第1の押圧部24aから超音波が放射され、これにより印刷用紙Pの先端の向きが下側に押圧されて第2の排紙部ガイド61に案内される。そして、印刷済みの印刷用紙Pが、第2の排紙ローラ62によって搬送されて第2の排紙トレイ63に排紙される。
一方、印刷用紙Pの先端が第1の搬送経路切替部24に到達した際、印刷済みの印刷用紙Pを第1の排紙部14に排紙するか、または反転部15で反転させて両面印刷を行う場合には、第1の搬送経路切替部24の第2の押圧部24bから超音波が放射され、これにより印刷用紙Pの先端の向きが上側に押圧されて上面用紙ガイド32に案内される。そして、印刷済みの印刷用紙Pが、上面搬送ローラ31によって搬送される。
そして、印刷済みの印刷用紙Pが、第2の搬送経路切替部33に到達した際、その印刷済みの印刷用紙Pを第1の排紙部14に排紙する場合には、第2の搬送経路切替部24の第2の押圧部33bから超音波が放射され、これにより印刷用紙Pの先端の向きが上側に押圧されて第1の排紙部ガイド42に案内される。そして、印刷済みの印刷用紙Pが、第1の排紙ローラ41によって搬送されて第1の排紙トレイ43に排紙される。
一方、印刷済みの印刷用紙Pを反転部15で反転させて両面印刷を行う場合には、第2の搬送経路切替部24の第1の押圧部33aから超音波が放射され、これにより印刷用紙Pの先端の向きが下側に押圧されて反転部15側の上面用紙ガイド32に案内される。
そして、上面搬送ローラ31によって搬送された印刷用紙Pは、そのまま反転ローラ51に案内され、反転ローラ51によってスイッチバック部52に一時的に搬入される。その後、印刷用紙Pは、反転ローラ51によってスイッチバック部52から搬出されるとともに、第3の搬送経路切替部53から下方に向けて超音波が放射され、これにより印刷用紙Pの先端が押圧されて反転用紙ガイド54に案内される。そして、印刷用紙Pは、そのまま反転用紙ガイド54によってレジストローラ19まで案内され、レジストローラ19によって斜行が補正された後に、レジストローラ19によってニップローラ21まで搬送され、ニップローラ21によって用紙搬送部12に向けて再び送り出される。このとき、印刷用紙Pは、反転部15によって反転されているので、未印刷面はインクヘッド部10側に向けられている。
そして、片面印刷済みの印刷用紙Pが、用紙搬送部12によって搬送されるとともに、インクヘッド部10によって未印刷面に印刷処理が施される。その後、両面印刷済みの印刷用紙Pは、第1の搬送経路切替部24の第1の押圧部24aからの超音波の放射によって第2の排紙部16に案内され、第2の排紙トレイ63に排紙される。
また、クリーニング部17によるインクヘッド部10のクリーニング処理については、コンピュータまたは印刷装置1においてユーザーによって指示されたタイミングで行われる。この際、本実施形態の印刷装置1においては、図1に示すように、クリーニング部17は、インクヘッド部10の各インクヘッドの真下に配置されているので、クリーニング部17の移動をともなうことなく、ユーザーの指示に応じて即座にクリーニング処理を実行することができる。
すなわち、本実施形態のように搬送ローラ22と押圧部23とで印刷用紙Pを搬送する構成ではなく、たとえば、従来のインクジェットプリンタ装置のような搬送ベルトと搬送ローラによって印刷用紙Pを搬送する構成の場合、インクヘッド部の直下には搬送ベルトが配置されるため、クリーニング部を配置することができない。したがって、クリーニング処理を行うために、搬送ベルトとクリーニング部とを入れ替える別の大掛かりな機構を必要とし、コストアップになるとともに、装置が大型化していた。
また、搬送ベルトに穴を開けて空気を吸引して印刷用紙を搬送する構成の場合、搬送ベルト自身も吸引方向に押圧を受けるため搬送方向の大きな損失負荷となり、大型の搬送モータが必要となっていた。また、搬送ベルトに多数の穴を設ける必要があるため耐久劣化が問題となる。
また、搬送ベルトによって印刷用紙を搬送する場合、印刷用紙の幅方向の外側に搬送ベルトが存在するため、その外側の部分にインクヘッド部から吐出されたインクが付着しないように余白を多く設定するなど、用紙上の印刷範囲を制限する必要があった。
これに対し、本実施形態の印刷装置1によれば、搬送ローラ22と押圧部23とで印刷用紙Pを搬送するので、インクヘッドの真下にクリーニング部17を配置することができ、上述したような搬送ベルトとクリーニング部とを入れ替える機構が必要ない。したがって、コストの削減を図るとともに、装置の小型化を図ることができる。
また、搬送ローラ22と押圧部23とで印刷用紙Pを搬送する場合、搬送ベルトを吸引する方式と比べると、印刷用紙の搬送方向に負荷となる圧力は皆無なため、低トルクのモータを用いることができる。また、インクヘッドの直下にはクリーニング部17しか存在しないため、搬送ベルトの場合のような印刷処理面の制限はなく、印刷用紙全面に対して印刷処理を施すことができる。
なお、上記説明では、搬送ベルトと搬送ローラとで印刷用紙を搬送する場合や、搬送ベルトの穴から空気を吸引することによって印刷用紙を搬送する場合の問題点について説明したが、搬送ベルトと上記実施形態の押圧部23との組み合わせによって印刷用紙を搬送する構成を除外するものではない。搬送ベルト上に上記実施形態の押圧部23を複数配列することによっても印刷用紙を搬送することができ、この構成でも、搬送ローラが直接印字面に触れることがないので、インクの再転写を防止することができる。
また、上記実施形態は、超音波放射素子81を備えた押圧部23を印刷装置1の用紙搬送部12に適用したものであるが、押圧部23は、その他の装置に適用するようにしてもよい。具体的には、たとえば、孔版印刷装置における孔版原紙を搬送する孔版原紙搬送部にも適用することができる。図26は、押圧部23を孔版原紙搬送部400に適用したものであり、この孔版原紙搬送部400は、孔版原紙ロールRが設置される孔版原紙設置部401と、孔版原紙ローラRから引き出された孔版原紙Fに対し、印刷データに基づいて穿孔を施すサーマルヘッド402と、サーマルヘッド402において穿孔が施された孔版原紙Fを搬送する搬送ローラ403とを備えている。
この孔版原紙搬送部400においては、孔版原紙Fを挟むようにサーマルヘッド402に対向する位置に上述した押圧部23が設けられる。そして、押圧部23に対して駆動電圧が供給されることによって押圧部23の超音波放射素子81から非線形な超音波が放射され、これにより孔版原紙Fがサーマルヘッド402に対して押圧される。この押圧によってサーマルヘッド402に孔版原紙Fが密着し、適切な穿孔を施すことができる。
従来の孔版原紙搬送部は、サーマルヘッドに対向して設置されたプラテンローラによって孔版原紙を搬送するとともに、サーマルヘッドに対して孔版原紙を押圧するようにしていたが、サーマルヘッドの表面は固いガラスにて平面状に形成されており、プラテンローラとサーマルヘッドとに挟まれた孔版原紙がスリップする問題があり、特に、孔版原紙ロールRの残量が少なくなった場合には、孔版原紙ロールR側の引っ張り強度が大きくなるため、スリップが生じ易くなっていた。
これに対し、上述した孔版原紙搬送部400のように、サーマルヘッド402に対する孔版原紙の押圧については、非接触で押圧部23により行い、孔版原紙の搬送については、下流に設けられた搬送ローラ403によって行うことによって、上述したようなスリップの問題を解消することができる。
また、上記実施形態の超音波放射素子81は、上述したように印刷用紙Pを押圧するために用いられるだけでなく、その他の用途で用いるようにしてもよい。具体的には、たとえば超音波放射素子81を超音波小型ポンプに使用するようにしてもよい。図27(a),(b)は、超音波放射素子81を用いた超音波小型ポンプ300を示す図である。超音波小型ポンプ300は、吸入口から吸入されたインクなどの流体を一旦貯留するポンプシリンダ301と、そのポンプシリンダ301内に設けられた超音波放射素子81とを備えている。
そして、この超音波小型ポンプ300においては、図27(a)に示すように、駆動電圧印加端子102に対して駆動電圧を印加することによって圧電ユニモルフ101を凹形状に変形させ、これにより振動板103を移動させる。この振動板103の移動によってポンプシリンダ301内に圧力の低い部分を形成することができるので、ポンプシリンダ301の吸入口からインクなどの流体を吸入することができる。
一方、図27(b)に示すように、駆動電圧印加端子102に対して駆動電圧を印加することによって圧電ユニモルフ101を凸形状に変形させ、これにより振動板103を移動させる。この振動板103の移動によってポンプシリンダ301内に貯留された流体に圧力をかけることができるので、ポンプシリンダ301の吐出口からインクなどの流体を吐出することができる。
超音波放射素子81を用いた超音波小型ポンプ300によれば、非線形特性を有する超音波放射素子81を用いることによって、図27(a),(b)に点線で示すような従来の弁構造を設ける必要がなく、これによりシンプルで故障の少ないものとすることができる。また、インクヘッド部10におけるインク経路中間ポンプとして使用することによって、省スペースで最短経路のパスを提供することができる。
なお、超音波放射素子81における圧電ユニモルフ101の駆動電圧印加端子102については、ポリイミドやポリウレタンなどで被覆し、液体による腐食防止と絶縁をすることが望ましい。
また、上記実施形態の超音波放射素子81は、静電気除電装置にも使用することができる。図28は、超音波放射素子81を用いた静電気除電装置500を示す図である。また、図29は、図28に示す静電気除電装置500を側方から見た図である。
静電気除電装置500は、図28および図29に示すように、基板80と、基板80上に設けられた複数の超音波放射素子81と、複数の超音波放射素子81の上方に配置された除電ブラシ83とを備えている。
除電ブラシ83は、複数の針状導体83aが、印刷用紙Pの搬送方向に直交する方向に複数配列されたものである。除電ブラシ83は接地されており、帯電した印刷用紙Pとの間でコロナ放電を発生する位置に配置されたものである。
本実施形態の超音波放射素子81は、基板80上に印刷用紙Pの搬送方向に直交する方向に複数配列されている。この複数の超音波放射素子81も、同一の周波数および同一の位相の超音波をそれぞれ放射するように駆動されるものである。
各超音波放射素子81は、用紙ガイド501により案内され、ニップローラ502によって搬送される印刷用紙Pに向かって超音波を放射するものであり、この超音波の放射によって針状導体83aにおいて発生したイオンの印刷用紙Pへの移動を促進することができる。そして、除電ブラシ83の針状導体83aにおいて発生したイオンが、帯電した印刷用紙Pに到達することによって静電気が除電される。
静電気除電装置500は、図28に示す超音波放射制御部504によって制御されるものである。超音波放射制御部504は、静電気除電装置500の各超音波放射素子81を駆動制御する放射素子駆動部505を備えている。放射素子駆動部505は、各超音波放射素子81に対して駆動電圧を供給するものである。放射素子駆動部505の詳細な構成は、図14に示す押圧部駆動部26と同様である。
ただし、図13に示す押圧部駆動部26から出力される駆動電圧の大きさと放射素子駆動部505から出力される駆動電圧の大きさは異なるものである。すなわち、押圧部駆動部26から出力される駆動電圧は、押圧部23から放射される超音波によって印刷用紙Pが充分に押圧される程度の大きさに設定される。これに対し、放射素子駆動部505から出力される駆動電圧は、コロナ放電によって発生したイオンを移動可能な程度の超音波が超音波放射素子81から放射される程度の大きさでよく、印刷用紙Pの搬送に対しては影響を及ぼさない程度の大きさに設定される。すなわち、押圧部駆動部26から出力される駆動電圧よりも放射素子駆動部505から出力される駆動電圧の方が小さく設定される。
また、超音波放射制御部504における駆動電圧調整部507は、図13に示す駆動電圧調整部28と同様に、放射素子駆動部505に対して調整電圧を供給するものである。
また、超音波放射制御部504における気流制御部506は、図13に示す押圧タイミング生成部27と同様に、放射素子駆動部505に対して超音波放射素子81の駆動電圧の周波数およびデューティ比に応じた波形信号を出力するものである。気流制御部506は、静電気除電装置500上を印刷用紙Pが通過する際に、超音波放射素子81から超音波が放射されるようなタイミングで波形信号を出力するものである。
また、図28に示す静電気除電装置500においては、上述したように超音波放射素子81から超音波を放射させて気流を発生させることによって除電効果を促進することができるが、たとえば印刷用紙Pの腰が弱い場合には、この気流によって印刷用紙Pが舞い上がってしまい用紙搬送障害を発生するおそれがある。
したがって、駆動電圧調整部507から放射素子駆動部505に供給される調整電圧は、印刷用紙の情報に応じて変更することが望ましい。図28に示す用紙情報記憶部508は、図13に示す用紙情報記憶部29と同様に、印刷用紙の情報と駆動電圧調整部507から出力される調整電圧の大きさとを対応づけたテーブルが記憶されたものである。
超音波放射制御部504は、印刷用紙の情報を取得するとともに、上記テーブルを参照し、駆動電圧調整部505から印刷用紙の情報に対応する調整電圧を出力させることができる。なお、印刷用紙の情報については、コンピュータから出力された印刷ジョブデータから取得するようにしてもよいし、印刷装置に設けられたタッチパネルからなる操作パネル(図示省略)上においてユーザーが設定入力するようにしてもよい。
また、印刷用紙の情報としては、軽量紙や厚紙などといった印刷用紙の種類の情報や、印刷用紙の厚さ情報や、印刷用紙のサイズ情報や、印刷用紙の腰の強さの情報などがある。
印刷用紙の情報が印刷用紙の厚さ情報や腰の強さの情報である場合には、印刷用紙が厚いほどまたは印刷用紙の腰が強いほど調整電圧を大きくし、印刷用紙が薄いほどまたは印刷用紙の腰が弱いほど調整電圧を小さくするようにすればよい。
また、印刷用紙の情報が印刷用紙のサイズ情報である場合には、たとえば、印刷用紙のサイズが大きいほど調整電圧を大きくし、サイズが小さいほど調整電圧を小さくするようにすればよい。
また、印刷用紙の情報が、印刷用紙の種類の情報である場合にも、その印刷用紙の厚さや腰の強さに応じて調整電圧が設定される。