JP6143593B2 - 真空断熱パネル - Google Patents
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Description
また、住宅用の断熱材としての適用検討も進められているが、現行の真空断熱パネルは、例えば図1の左図に示すように、グラスウール等の芯材をアルミラミネートフィルムでヒートシールした構造のものが一般的である。
このため、長期に亘って断熱性を維持できる真空断熱パネルの開発が望まれている。
そこで、例えば図1の右図に示すように、グラスウール等の芯材をステンレス鋼などの薄金属板で包み、真空引きした後、端部を溶接接合して真空断熱パネルを製造することが各種試みられている。
しかしながら、レーザー溶接法を採用する場合、2枚の金属板間の隙間管理が重要で、金属板間に僅かな隙間があっても溶け落ちが発生し易くなる(図2(a)参照)。素材金属板の板厚が薄くなるほど溶け落ちの発生頻度が多くなる。
そこで、2枚の金属板を加圧して両者間の隙間を潰しながら溶接するシーム溶接法の採用も検討されている。シーム溶接法で真空断熱パネルを製造すると、圧力の付加によって隙間がなくなるので、安定した溶接が可能になる(図2(b)参照)。
それぞれの溶接ラインの断面では、図3(b)に示すように、高さがほぼ一定のナゲットが規則正しく繋がっている。一方、ラップ部では2回の加熱が行われることになるため、図3(c)、(d)に示すように、2本のラインの交差点でナゲットが過剰に成長し、前後にナゲット未形成部位が生じたり、2本のラインの交差点近傍にブローホールや溶着が生じたりすることがある。いわゆる溶接不良を発生させやすくなる。また、溶接熱の影響で素材金属板が歪み、図3(e)に示すように、フランジ部が波打ち、平坦性が悪化することがある。これらの問題点は板厚が薄い場合に顕著となる。
本発明は、このような問題点を解消するために案出されたものであり、断熱性に優れた芯材と、その周囲を覆うガス不透過性に優れた外包金属板からなり、前記芯材を内包する前記外包金属板の内部が真空状態とされた後、前記外包金属板周縁部で封止された、耐久性に優れた真空断熱パネルであって、溶接不良品の発生頻度が極力低減され、かつフランジ部の平坦性が良好な真空断熱パネルを提供することを目的とする。
外包金属板としてはステンレス鋼板が、特に少なくとも片方にフェライト系ステンレス鋼板が用いられているものが好ましい。
このような相乗的な効果により、高性能な真空断熱パネルが低コストで提供できる。
そこで、本発明者らは、包材の重ね合わせ面から簡便に真空引きした後に封止接合することが可能な方法について鋭意検討する過程で、本発明に到達した。
以下にその詳細を説明する。
このようなシーム溶接法を用いて矩形の真空断熱パネルを製造する際には、溶接ラインの交差が避けられない。この溶接ラインが交差するラップ部は2度溶接されるため、1度目のシーム溶接時に形成されたナゲットが2度目の溶接で板厚方向に過剰に成長し、板表面付近まで成長することにより溶着や穴あき・ブローホールが発生していると考えられる。また、分流の影響もあり2度目の溶接では1度目の溶接箇所に電流が集中的に流れることによりラップ部近傍で電流密度が低下する箇所が発生しナゲットの未形成部が発生しているとも考えられる。すなわち、シーム溶接なる溶融溶接法により形成したナゲットが、次のシーム溶接時の溶接不良の発生の一因になっていると考えられる。
この調査では、種々の溶接条件において2本の溶接ラインが交差するよう溶接を行い、溶接ラインが交差したラップ部のナゲットの形成状態と溶接不良の発生の有無について調査した。この結果、図5(B−B’断面)に示したようにナゲット高さ(H)が総板厚(T)の1/2以上になる溶接条件で2度溶接したラップ部は、(A−A’断面)のように2度目の溶接でいずれもナゲットが過剰に成長しナゲット高さ(H)が総板厚(T)の3/4以上となり先述した溶着や穴あき・ブローホールが発生した。一方、図6(B−B’断面)のようにナゲット高さ(H)が総板厚(T)の1/3以下になる溶接条件で2度溶接したラップ部は、(A−A’断面)に示したようにいずれの条件でも2度目の溶接でナゲット高さ(H)が総板厚(T)の3/4未満に納まり、溶接不良が発生することなく良好な溶接結果であった。また、図7の(B−B’断面)のようにナゲット高さ(H)が1/3を超え1/2未満の範囲では、ナゲット高さ(H)が大きくなるに従って溶接不良の発生頻度が高くなる傾向にあった。さらに、図7(A1−A1’断面)と(A2−A2’断面)に示したように同一条件でもラップ部のナゲット高さ(H)が総板厚(T)の3/4未満に納まり溶接不良を回避できるケースとナゲット高さ(H)が総板厚(T)の3/4以上となり溶接不良を完全に回避できないケースもあり、信頼性に問題があった。
つまり、ラップ部において溶接不良を回避するためには、ナゲット高さが総板厚の1/3以下になる溶接条件で溶接を行えば良いことが判明した。また、同時に2度目の溶接でナゲット高さが総板厚の3/4未満に納まるように溶接すれば、溶着や穴あきなどの溶接不良を回避することができることが判明した。
特に、溶接ラインが交差する部位において、ナゲットの形成を極力抑えることを目的に低入熱の溶接条件による溶接を2度行っている。したがって、2度目のシーム溶接時にナゲットが過剰成長することなく、溶接電流の分流も抑えることができ、溶接不良の発生を抑制することができる。
さらに、溶接時の入熱量が比較的少ないので、溶接熱歪みによるフランジ部の平坦度を圧下させることもない。
図8に作成した真空断熱パネルの部材構成を示す。芯材を覆う上下包材には寸法が220mm×220mm×0.1tmmのSUS430とSUS304の鋼板を用いた。SUS304側には芯材収容用に190mm×190mm×5.0mmの膨出部を張り出し成形により作製した。
そして、下側SUS304包材の膨出部に、180mm×180mm×5.0mmのグラスウール製芯材を収容して、上側SUS430包材と重ね合わせた。
上下包材を加圧保持した状態で、先ず、第一工程として大気中で図9(a)に示したように上下包材のフランジ周縁部を、一部開口部を除いてシーム溶接により溶接する。この時に使用したシーム溶接機は単相交流式で上側電極が円盤状、下側電極が棒状で上側電極が下電極の上を回転移動しながら溶接するタイプの装置を使用した。上下電極には、先端形状は同一として幅4mmで20Rの曲率を付いた電極を使用し、溶接条件は加圧力:150N、溶接速度:1m/min、溶接電流:1.2kA、通電時間on/off:3/2msとし、図10(a)に示したように全ての溶接ラインでナゲット成形高さが総板厚の1/4となる条件とした。
続いて、上下包材にSUS304材同士を使用してステンレス鋼板製の真空断熱パネルを製造する方法を示す。
芯材を覆う上下包材にはSUS304で寸法が220mm×220mm×0.1tmmのステンレス鋼板を用い、一方の包材には芯材収容用に190mm×190mm×5.0mmの膨出部を張り出し成形により作製した。
そして、包材の膨出部に、180mm×180mm×5.0mmのグラスウール製芯材を収容して、上下包材を重ね合わせた。
以上のような方法でステンレス鋼板製の真空断熱パネルを作製した。
作製例2では、2枚のオーステナイト系ステンレス鋼板を用い、オーステナイト系ステンレス鋼板を接合して真空断熱パネルを製作したが、作製例1で確認したように、絞り加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板と、比較的安価なフェライト系ステンレス鋼板を使用しても、フランジ部で問題なく固相接合された真空断熱パネルを製造することが可能になった。
Claims (4)
- 断熱性を有する芯材と、その周囲を覆う二枚の外包金属板からなり、前記芯材を内包する前記二枚の外包金属板の内部が真空状態とされて前記外包金属板周縁部が溶接部の交差するラップ部を含むシーム溶接により接合された真空断熱パネルであって、前記ラップ部を除いたシーム溶接部におけるナゲットの高さが総板厚の1/3以下となっていることを特徴とする真空断熱パネル。
- シーム溶接部におけるラップ部のナゲットの高さが総板厚の3/4未満となっていることを特徴とする請求項1記載の真空断熱パネル。
- 外包金属板としてステンレス鋼板が用いられている請求項1または2に記載の真空断熱パネル。
- 外包金属板の片方にフェライト系ステンレス鋼板が用いられている請求項3に記載の真空断熱パネル。
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