JP6143593B2 - 真空断熱パネル - Google Patents

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Description

本発明は、例えば冷蔵庫や保冷庫、或いは保温庫や住宅等の断熱壁等に好適に用いられる真空断熱パネルに関するものである。
昨今、電力不足などの影響によりあらゆる産業で省エネ製品や省エネ技術の開発が進められている。真空断熱パネルも省エネ対策の1つとして開発された商品であり、現在では冷蔵庫や自動販売機などの断熱材として、断熱性能を高めて消費電力を抑えるために広く採用されている。
また、住宅用の断熱材としての適用検討も進められているが、現行の真空断熱パネルは、例えば図1の左図に示すように、グラスウール等の芯材をアルミラミネートフィルムでヒートシールした構造のものが一般的である。
アルミラミネートフィルムでヒートシールした構造の真空断熱パネルでは、ヒートシール部から水分が透過して真空度が低下するため、活性炭やゼオライト等の吸着剤を封入しているが、それでも7〜8年で断熱性能が半減するといった問題がある。
このため、長期に亘って断熱性を維持できる真空断熱パネルの開発が望まれている。
そこで、例えば図1の右図に示すように、グラスウール等の芯材をステンレス鋼などの薄金属板で包み、真空引きした後、端部を溶接接合して真空断熱パネルを製造することが各種試みられている。
特許文献1では、芯材を包む金属外包材の一方に空気を案内して排出するための溝と溝に接続された排気口を設けて真空引き行う方法が提案されている。この方法では、予め真空引きを行う前にシーム溶接やプラズマ溶接などで溝及び排気口周辺の予備封止を行い、予備封止後に溝部を通して排気口より真空引きを行い、真空引き完了後、溝部周辺をプレスなどにより平らにした後に先と同じ溶接方法により平らになった溝部上を溶接し完全封止して、封止完了後、余分な材料をカットして真空断熱パネルを製造している。
また特許文献2では、外周部が溶接接合された上下包材によって形成される略平板状の空間内に厚肉領域と薄肉領域を兼ね備えたスペーサー(断熱材)を挿入し、真空引き時は厚肉領域と薄肉領域で発生する段差を利用して上下包材の内面が接触することを防止するとともに、排気通路を確保しながら排気口より真空引きを行った後、排気口を封止し、排気口手前を溶接接合し、その後に溶接箇所の外側をカットして真空断熱パネルを製造している。
特開2009‐228803号公報 特開2001‐311497号公報
前記の溶接接合方法としては、シーム溶接、TIG溶接、レーザー溶接、プラズマ溶接等の各種溶接法が採用されている。特にステンレス薄鋼板を素材とした場合には溶接時に歪の発生が少ないレーザー溶接法が採用されることが多い。
しかしながら、レーザー溶接法を採用する場合、2枚の金属板間の隙間管理が重要で、金属板間に僅かな隙間があっても溶け落ちが発生し易くなる(図2(a)参照)。素材金属板の板厚が薄くなるほど溶け落ちの発生頻度が多くなる。
そこで、2枚の金属板を加圧して両者間の隙間を潰しながら溶接するシーム溶接法の採用も検討されている。シーム溶接法で真空断熱パネルを製造すると、圧力の付加によって隙間がなくなるので、安定した溶接が可能になる(図2(b)参照)。
シーム溶接法で矩形の真空断熱パネルを製造する場合、図3(a)に見られるように、4本の溶接ラインを作るように溶接することが考えられ、その場合、溶接ラインが交差したラップ部が生じることになる。
それぞれの溶接ラインの断面では、図3(b)に示すように、高さがほぼ一定のナゲットが規則正しく繋がっている。一方、ラップ部では2回の加熱が行われることになるため、図3(c)、(d)に示すように、2本のラインの交差点でナゲットが過剰に成長し、前後にナゲット未形成部位が生じたり、2本のラインの交差点近傍にブローホールや溶着が生じたりすることがある。いわゆる溶接不良を発生させやすくなる。また、溶接熱の影響で素材金属板が歪み、図3(e)に示すように、フランジ部が波打ち、平坦性が悪化することがある。これらの問題点は板厚が薄い場合に顕著となる。
シーム溶接法で真空断熱パネルを製造する場合、真空チャンバー内でシーム溶接することになるが、真空チャンバー内で連続的にシーム溶接すると熱を外に排出できず、電極の温度がどんどん上昇する現象が発生する。この現象は、溶接線長及び溶接時間が長くなるほど発生しやすく、溶接部は後半になればなるほど入熱過多条件となり先述した溶接不良や歪を増長することになる。また、電極の温度が上昇することによりチャンバーの温度も上昇するため製造設備全体の機能を低下させて、装置の長時間の使用ができなくなることもある。
本発明は、このような問題点を解消するために案出されたものであり、断熱性に優れた芯材と、その周囲を覆うガス不透過性に優れた外包金属板からなり、前記芯材を内包する前記外包金属板の内部が真空状態とされた後、前記外包金属板周縁部で封止された、耐久性に優れた真空断熱パネルであって、溶接不良品の発生頻度が極力低減され、かつフランジ部の平坦性が良好な真空断熱パネルを提供することを目的とする。
本発明の真空断熱パネルは、その目的を達成するため、断熱性を有する芯材と、その周囲を覆う二枚の外包金属板からなり、前記芯材を内包する前記二枚の外包金属板の内部が真空状態とされて前記外包金属板周縁部が溶接部の交差するラップ部を含むシーム溶接により接合された真空断熱パネルであって、前記ラップ部を除いたシーム溶接部におけるナゲットの高さが総板厚の1/3以下となっていることを特徴とする。
外包金属板としてはステンレス鋼板が、特に少なくとも片方にフェライト系ステンレス鋼板が用いられているものが好ましい。
本発明の真空断熱パネルでは、その製造時に、外包金属板周縁部の接合法としてシーム溶接が使用され、ラップ部を除くシーム溶接部のナゲット高さが総板厚の1/3以下に納まるような低入熱の溶接条件で接合されている。このため2回溶接されるラップ部であっても入熱過多によりナゲットが板表面まで過剰に成長し、ブローホールや溶着が生じたりすることもない。また、全体的に入熱量が少ない条件でシーム溶接されているために、溶接熱の影響で素材金属板が歪むことも抑制され、フランジ部の平坦性が優れた真空断熱パネルが提供される。
このような相乗的な効果により、高性能な真空断熱パネルが低コストで提供できる。
真空断熱パネルの構造を説明する概略図 レーザー溶接とシーム溶接の違いを説明する図 シーム溶接で真空断熱パネルを製造する際の問題点を説明する図 ナゲット高さ(H)と総板厚(T)の定義を説明する図 不適正なナゲット高さを選定した場合の溶接結果の一例 最適なナゲット高さを選定した場合の溶接結果の一例 溶接結果にバラツキが見られるナゲット高さを選定した場合の溶接結果を説明する図 実施例で作製した真空断熱パネルの部材構成を説明する図 実施例で作製した真空断熱パネルの溶接工程を説明する図 実施例でのナゲット形成状態を説明する図 実施例での真空断熱パネルの作製に使用した装置の概略構造を示す図
前記した通り、断熱性に優れた芯材を、その周囲をガス不透過性に優れた外包金属板で覆い、内部を長期に亘り高真空状態に維持できる真空断熱パネルを製造するためには、芯材をステンレス鋼などの薄金属板等の包材で包み、真空引きした後、端部を溶接接合する必要がある。溶接法として、シーム溶接法を採用すると、前記した通りの溶接不良を発生したり、フランジ部の平坦度が悪化したりする。また、溶接熱の影響で、製造装置の機能が低下し、長時間の連続操業を行うことができなくなってしまう。
そこで、本発明者らは、包材の重ね合わせ面から簡便に真空引きした後に封止接合することが可能な方法について鋭意検討する過程で、本発明に到達した。
以下にその詳細を説明する。
シーム溶接法は、接合しようとする金属間に電流を流して抵抗発熱させ、その熱で溶融接合しようとするものである。
このようなシーム溶接法を用いて矩形の真空断熱パネルを製造する際には、溶接ラインの交差が避けられない。この溶接ラインが交差するラップ部は2度溶接されるため、1度目のシーム溶接時に形成されたナゲットが2度目の溶接で板厚方向に過剰に成長し、板表面付近まで成長することにより溶着や穴あき・ブローホールが発生していると考えられる。また、分流の影響もあり2度目の溶接では1度目の溶接箇所に電流が集中的に流れることによりラップ部近傍で電流密度が低下する箇所が発生しナゲットの未形成部が発生しているとも考えられる。すなわち、シーム溶接なる溶融溶接法により形成したナゲットが、次のシーム溶接時の溶接不良の発生の一因になっていると考えられる。
このことよりラップ部近傍で発生している溶接不良を回避するためには、2度目の溶接後にラップ部近傍においてナゲットが過剰に成長しない溶接条件を選定し、その後はその溶接条件を変更することなくシーム溶接を行えばよい。同時に分流の影響も1度目の溶接でナゲットを小さくすることにより低減できるため、溶接全長で溶接不良が発生することなく安定した溶接が可能になると想定できる。
そこで、実際にラップ部において溶接不良を回避できるナゲット高さについて調査した。まず、図4にナゲット高さ(H)と総板厚(T)の関係を図示する。ナゲット高さ(H)は、溶接ライン方向に総板厚(T)のおよそ100倍の長さの断面を観察し、その中で最大のナゲットの板厚方向高さを採用するものとする。
この調査では、種々の溶接条件において2本の溶接ラインが交差するよう溶接を行い、溶接ラインが交差したラップ部のナゲットの形成状態と溶接不良の発生の有無について調査した。この結果、図5(B−B’断面)に示したようにナゲット高さ(H)が総板厚(T)の1/2以上になる溶接条件で2度溶接したラップ部は、(A−A’断面)のように2度目の溶接でいずれもナゲットが過剰に成長しナゲット高さ(H)が総板厚(T)の3/4以上となり先述した溶着や穴あき・ブローホールが発生した。一方、図6(B−B’断面)のようにナゲット高さ(H)が総板厚(T)の1/3以下になる溶接条件で2度溶接したラップ部は、(A−A’断面)に示したようにいずれの条件でも2度目の溶接でナゲット高さ(H)が総板厚(T)の3/4未満に納まり、溶接不良が発生することなく良好な溶接結果であった。また、図7の(B−B’断面)のようにナゲット高さ(H)が1/3を超え1/2未満の範囲では、ナゲット高さ(H)が大きくなるに従って溶接不良の発生頻度が高くなる傾向にあった。さらに、図7(A1−A1’断面)と(A2−A2’断面)に示したように同一条件でもラップ部のナゲット高さ(H)が総板厚(T)の3/4未満に納まり溶接不良を回避できるケースとナゲット高さ(H)が総板厚(T)の3/4以上となり溶接不良を完全に回避できないケースもあり、信頼性に問題があった。
以上の検証結果より、ナゲット高さが一定の大きさ以下になる溶接条件であれば2度の溶接を行うラップ部でも、入熱過多によるナゲットの過剰成長や分流によるナゲット未形成部の発生などの溶接不良を回避することが可能となり、溶接全長で安定した溶接が可能になることが確認できた。
つまり、ラップ部において溶接不良を回避するためには、ナゲット高さが総板厚の1/3以下になる溶接条件で溶接を行えば良いことが判明した。また、同時に2度目の溶接でナゲット高さが総板厚の3/4未満に納まるように溶接すれば、溶着や穴あきなどの溶接不良を回避することができることが判明した。
なお、ナゲットの成形高さが総板厚の1/3以下になる溶接条件であれば、溶接ライン毎に溶接条件を変更したり、溶接ラインの溶接するラップ部近傍のみ溶接条件を変更することにより同様に溶接不良を回避することが可能である。但し、溶接ライン毎に溶接条件を変更したり、溶接ラインの一部のみ溶接条件を変更することは非常に手間になるため同一条件で溶接する方が好ましい。
本発明法の採用により、絞り加工または張り出し加工を施して芯材収容部を形成する加工部側素材にオーステナイト系ステンレス鋼板を、前記芯材収容部を覆う非加工部側素材にフェライト系ステンレス鋼板を用いて真空断熱パネルを製造する際にあっても、溶接不良を発生させることなく、またフランジ部の平坦性を悪化させることなく安定的に製造することができる。
特に、溶接ラインが交差する部位において、ナゲットの形成を極力抑えることを目的に低入熱の溶接条件による溶接を2度行っている。したがって、2度目のシーム溶接時にナゲットが過剰成長することなく、溶接電流の分流も抑えることができ、溶接不良の発生を抑制することができる。
さらに、溶接時の入熱量が比較的少ないので、溶接熱歪みによるフランジ部の平坦度を圧下させることもない。
作製例1;
図8に作成した真空断熱パネルの部材構成を示す。芯材を覆う上下包材には寸法が220mm×220mm×0.1mmのSUS430とSUS304の鋼板を用いた。SUS304側には芯材収容用に190mm×190mm×5.0mmの膨出部を張り出し成形により作製した。
そして、下側SUS304包材の膨出部に、180mm×180mm×5.0mmのグラスウール製芯材を収容して、上側SUS430包材と重ね合わせた。
上下包材を加圧保持した状態で、先ず、第一工程として大気中で図9(a)に示したように上下包材のフランジ周縁部を、一部開口部を除いてシーム溶接により溶接する。この時に使用したシーム溶接機は単相交流式で上側電極が円盤状、下側電極が棒状で上側電極が下電極の上を回転移動しながら溶接するタイプの装置を使用した。上下電極には、先端形状は同一として幅4mmで20Rの曲率を付いた電極を使用し、溶接条件は加圧力:150N、溶接速度:1m/min、溶接電流:1.2kA、通電時間on/off:3/2msとし、図10(a)に示したように全ての溶接ラインでナゲット成形高さが総板厚の1/4となる条件とした。
続く第二工程の封止では図11に示す真空チャンバー内に第一工程で使用した同一のシーム溶接機を内蔵した装置を用いた。本装置には、真空チャンバー内にワークを固定するためのワーク用テーブルも備えられており、このワーク用テーブルに第一工程で溶接したパネルを固定し、チャンバー内の真空度が2Pa以下になるまで真空引きを行った。この際パネル内部の真空度はパネル開口部を通して内部空気が強制的に排気されるため真空チャンバー内の真空度とほぼ同一となっていると推定される。目標とする真空度到達後、第一工程で未溶接だった開口部を先述したシーム溶接機を用いて第一工程と同一の溶接条件で図9(b)に示すように溶接開始部と終了部がそれぞれ第一工程の溶接部とラップするよう溶接し、封止した。
作製例2;
続いて、上下包材にSUS304材同士を使用してステンレス鋼板製の真空断熱パネルを製造する方法を示す。
芯材を覆う上下包材にはSUS304で寸法が220mm×220mm×0.1mmのステンレス鋼板を用い、一方の包材には芯材収容用に190mm×190mm×5.0mmの膨出部を張り出し成形により作製した。
そして、包材の膨出部に、180mm×180mm×5.0mmのグラスウール製芯材を収容して、上下包材を重ね合わせた。
作製例1と同様の方法で大気中での第一工程の溶接とチャンバー内での第二工程の封止により真空断熱パネルを製造する。この際使用する上下電極形状と溶接条件を変更した。電極の上側には幅4mmで棒状電極を、下側には幅4mmで20Rの曲率が付された円盤状電極を使用した。溶接条件は加圧力:150N、溶接速度:1.2m/min、溶接電流:1.3kA、通電時間on/off:3/2msとし、図10(b)に示したように全ての溶接ラインでナゲット成形高さが総板厚の1/3となる条件とした。
以上のような方法でステンレス鋼板製の真空断熱パネルを作製した。
上記2つの方法で作製された真空断熱パネルは、いずれもフランジ部で溶接不良は発生しておらず、またフランジ部の平坦性も良好で、全体的な形状変化も見られなかった。
作製例2では、2枚のオーステナイト系ステンレス鋼板を用い、オーステナイト系ステンレス鋼板を接合して真空断熱パネルを製作したが、作製例1で確認したように、絞り加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板と、比較的安価なフェライト系ステンレス鋼板を使用しても、フランジ部で問題なく固相接合された真空断熱パネルを製造することが可能になった。

Claims (4)

  1. 断熱性を有する芯材と、その周囲を覆う二枚の外包金属板からなり、前記芯材を内包する前記二枚の外包金属板の内部が真空状態とされて前記外包金属板周縁部が溶接部の交差するラップ部を含むシーム溶接により接合された真空断熱パネルであって、前記ラップ部を除いたシーム溶接部におけるナゲットの高さが総板厚の1/3以下となっていることを特徴とする真空断熱パネル。
  2. シーム溶接部におけるラップ部のナゲットの高さが総板厚の3/4未満となっていることを特徴とする請求項1記載の真空断熱パネル。
  3. 外包金属板としてステンレス鋼板が用いられている請求項1または2に記載の真空断熱パネル。
  4. 外包金属板の片方にフェライト系ステンレス鋼板が用いられている請求項3に記載の真空断熱パネル。
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