JP6143264B2 - ラクトン類が富化された油脂組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、油脂組成物、特にバターの風味の改善方法に関する。本発明は、油脂加工、食品製造等の分野で有用である。
バター風味及びミルク風味の増強を目的として、乳脂肪をリパーゼやエステラーゼ等の脂肪分解酵素により加水分解する方法が知られている(特許文献1、及び非特許文献1)。また、従来のバターフレーバーに見られた酸化臭や刺激臭が抑制され、ラクトン類やケトン類の含有量が多く、しかも好ましいバター風味を有するハターフレーバーを製造することを目的として、少なくとも1種の脂肪分解酵素により加水分解する第1加水分解工程と、その後、少なくとも1種の脂肪分解酵素により加水分解する第2加水分解工程を含むことを特徴とする、2段階の酵素分解によるバターフレーバーの製造方法が開発されている(特許文献2)。
一方、酸化されたバター脂肪を添加することにより、均整のとれたバターフレーバーを食品に付与できるとして、0.5 ppm以上のn-ペンタナール含有量及び/又は0.05 ppm以上の2-トランス-ノネナール含有量を有する酸化されたバター脂肪の少なくとも0.05%(重量/重量)を食用物質に添加することを特徴とする、フレーバーを付与した食品の製造法が開発されている(特許文献3)。また、バター脂の酸化によるフレーバーの変化に着目し、従来の酵素分解により得られるバターフレーバーを改良すべく、乳脂肪を脂肪分解酵素で加水分解した後、紫外線照射して酸化させることを特徴とするミルク風味とバター風味が増強されたバターフレーバーの製造法が開発されている(特許文献4)。さらに、溶融バターを105〜110℃で加熱15分間加熱処理することにより、バター中のδ−デカラクトン濃度は1193から2633 ppbに増大し、香りの増強が可能であることが報告されている(非特許文献2及び3)。
バターフレーバーとしては、ラクトン類やケトン類の含有量が多いことが好ましいと考えられている(前掲特許文献2)。具体的には、無発酵バター(スイートクリームバター)は、フルーティーかつクリーミーなノートを伴うラクトン類によって特徴づけられ、また発酵バターの鍵化合物は、主として乳酸菌発酵による、ジアセチル(バター様)、ブタン酸(チーズ様)、δ-デカラクトン(ピーチ様)であり、バターオイルは、グリーンノート及びオイリーノートとして参照される、(E)-又は(Z)-2-ノネナール並びに(E,E)-2,4-デカジエナールのようなアルデヒド類によって特徴づけられるとの報告がある(非特許文献4)。
特開昭64-2549(特公平07-083686) 特許公開2009-261339 特開昭64-39962 特開平09-094062
Balcao VM, and Malcata FX, Lipase catalyzed modification of milkfat. Biotechnology Advances, Vol. 16, No. 2, pp. 309-341, 1998. Peterson DG, and Reineccius GA, Determination of the aroma impact compounds in heated sweet cream butter. Flavour and Fragrance Journal, Vol. 18, pp. 320-324, 2003. Peterson DG, and Reineccius GA, Chracterization of the volatile compounds that constitute fresh sweet cream butter aroma. Flavour and Fragrance Journal, Vol. 18, pp. 215-220, 2003. Mallia S, et al., Aroma-active compounds of butter. European Food Research and Technology, Vol. 226, pp. 315-325, 2008.
バターを構成する脂質の97〜98%は、多種多様な脂肪酸がグリセロールとエステル結合したトリグリセリドである。乳脂肪中に含まれるラクトン類は、バターフレーバーの鍵化合物であるが、ラクトンの前駆物質は、グリセロールにエステル結合した4-又は5-ヒドロキシ脂肪酸であると考えられる。リパーゼやエステラーゼ等の脂質分解酵素を用いてヒドロキシ脂肪酸エステルを加水分解し、ラクトン類を生成させようとすると、圧倒的に多量の低級脂肪酸類、中級脂肪酸類及び高級脂肪酸類も同時に生成する。そして、揮発性の低級脂肪酸に起因する刺激臭や、中級及び高級脂肪酸に起因するワックス臭の発生が問題となる。さらに、使用された酵素は、最終的には失活させなければならないが、失活は、通常、80℃、20分間程度の熱処理による。その際に、バターの風味が劣化してしまう。
本発明は、非酵素的に、油脂組成物においてラクトンを富化する方法を提供するものである。発明者らは、グリセロールとエステル結合しているヒドロキシ脂肪酸のエステル分解反応とラクトン形成反応が、水分子の触媒作用により温和な条件下で進行すると考えた。すなわち、ヒドロキシ基の酸素とアシル炭素間の結合形成と、ヒドロキシ基からのプロトン脱離と、エステル結合している酸素へのプロトン供与と、エステル結合の開裂が同時に進行する反応メカニズムが存在すると考えた。一方、過剰の水分子の存在下では、ヒドロキシ基とアシル炭素間の結合形成が阻害され、ラクトン生成速度が低下すると考えた。以上要するに、4−又は5−ヒドロキシ脂肪酸エステルを含有する油脂組成物中に触媒量の水分が存在するならば、これを温和な条件下に保持することにより、選択的にラクトンを生成させることができるとの考えに至った。
そして、バター油脂中の水分を調整し、これを20℃(固体脂含量約26%)で数週間放置することにより、ラクトン含量を増強した風味に優れるバター油脂が得られるとの知見を得て、本発明の一態様を完成した。
本発明者らはまた、油脂組成物中にショ糖を添加し、これを40〜60℃の温度で2〜4時間放置することにより、ラクトン含量を増強した風味に優れるバター油脂が得られるとの知見を得て、本発明の別の態様を完成した。
本発明は以下を提供する:
[1]水分含量が300 ppm以上1200 ppm以下である油脂組成物を、油脂組成物中に固体脂が存在する温度で保持して、油脂組成物中の4-又は5-ヒドロキシ脂肪酸を含むトリグリセリドから、非酵素的にγ-ラクトン、又はδ-ラクトンを生成させる工程を含む、ラクトン類が富化された油脂組成物の製造方法。
[2]溶融状態である原料油脂組成物を減圧下に置くことにより、及び/又は遠心分離工程により、水分を除去して、水分含量が300 ppm以上1200 ppm以下である油脂組成物を得る工程を含む、[1]に記載の製造方法。
[3]原料油脂組成物に水分を添加して、水分含量が300 ppm以上1200 ppm以下である油脂組成物を得る工程を含む、[1]に記載の製造方法。
[4]油脂組成物がバター由来である、[1]〜[3]のいずれか一に記載の製造方法。
[5]10℃以上35℃以下、好ましくは15℃以上30℃以下で保持する、[1]〜[4]のいずれか一に記載の製造方法。
[6]保持期間が3日〜2カ月、好ましくは1週間〜4週間である、[1]〜[5]のいずれか一に記載の製造方法。
[7]ラクトン類を50 ppm以上含有する油脂組成物を製造するための、[1]〜[6]のいずれか一に記載の製造方法。
[8][1]〜[7]のいずれか一に記載された工程を含む、ラクトン類が富化された食品又は食品原料の製造方法。
[9]油脂組成物中に水分子と水素結合を形成する性質をもつ添加剤を添加し、40〜60℃の温度で保持して、油脂組成物中の4-又は5-ヒドロキシ脂肪酸を含むトリグリセリドから、非酵素的にγ-ラクトン、又はδ-ラクトンを生成させる工程を含む、ラクトン類が富化された油脂組成物の製造方法。
[10]添加剤が、単糖類、二糖類、オリゴ糖、デキストリン、デンプン類の少なくとも一から選択される糖類である、[9]に記載の製造方法。
[11]糖類が、ショ糖である[10]記載の製造方法。
[12]油脂組成物がバター由来である、[9]〜[11]のいずれか1項に記載の製造方法。
[13]保持期間が2〜4時間、好ましくは3時間である、[9]〜[12]のいずれか1項に記載の製造方法。
[14]ラクトン類を50 ppm以上含有する油脂組成物を製造するための、[9]〜[13]のいずれか1項に記載の製造方法。
[15]ラクトン類を50 ppm以上含有する、ラクトン類富化油脂組成物。
[16][1]〜[6]のいずれか1項に記載の製造方法により生成される、[15]に記載のラクトン類富化油脂組成物。
[17][15]または[16]に記載のラクトン類富化油脂組成物を使用した食品又は食品原料。
[18]4-又は5-ヒドロキシ脂肪酸を含むトリグリセリドを、低水分環境下に保持し、前記トリグリセリドから非酵素的にγ-ラクトン、又はδ-ラクトンを生成させる工程を含む、ラクトン類の製造方法。
本法によると高価な酵素を使用する必要がなく良質なフレーバーを発生させることができる。
本発明の方法によれば、脂質分解酵素を使用しなくてもよい。そのため、好ましいフレーバーを増強しつつ、フレーバーの品質低下を招く刺激臭やワックス臭の発生を抑制することができる。さらに、本発明の方法は、温和な条件で非酵素的に実施されるので、過度なエステル交換反応によるラクトンの重合反応を抑制することができ、ラクトン類を製品中に蓄積させることができる。
本発明により、原料油脂組成物としてバターを用いた場合は、バター中の、ほぼすべての前駆体を、ラクトンに変換することができる。
図1は、5-ヒドロキシ脂肪酸エステルからδ-ラクトンの生成を示す図である。 図2は、試料Bを20℃で保管したときのラクトン濃度を示す図である。 図3は、試料Dを20℃で保管したときのラクトン濃度を示す図である。 図4は、試料Eを20℃で保管したときのラクトン濃度を示す図である。 図5は、20℃保管中の全ラクトン濃度に及ぼす含水率の影響を示す図である。 図6は、試料Bの20℃保管中の脂肪酸の生成を示す図である。 図7は、試料Cの20℃保管中の脂肪酸の生成を示す図である。 図8は、試料Dを5℃で保管したときのラクトン濃度を示す図である。 図9は、全ラクトン濃度に及ぼす保持温度の影響を示す図である。 図10は、試料Gを50及び60℃に保持したときのラクトン濃度の推移を示す図である。
本発明は、ラクトン類を富化させた油脂組成物の非酵素的な製造方法を提供する。
本発明で「油脂組成物」というときは、特に記載した場合を除き、脂肪酸とグリセリンのエステル(トリグリセリド、トリアシルグリセロール、トリ-O-アシルグリセリンということもある。)を主要成分とする組成物をいう。本発明において、油脂組成物に関し、「主要成分」というときは、重量で90%以上を占める成分をいう。本発明で「脂肪酸」というときは、特に記載した場合を除き、炭素数が4以上のモノカルボン酸をいう。本発明でトリグリセリドというときは、特に記載した場合を除き、その構成脂肪酸は、炭素数が6以下の低級脂肪酸、炭素数が7〜10の中級脂肪酸、炭素数が10を超える高級脂肪酸(それぞれ、短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸、ということがある。)のいずれであってもよい。
本発明に用いる油脂組成物は、バター、クリーム、バターオイル、又はチーズ由来であることが好ましい。
本発明で「バター(製品)」というときは、特に記載した場合を除き、獣乳中の脂肪を分離・凝固させた、食用油脂組成物(製品)をいう。なお、発明で獣乳というとき、その典型的な例は、牛乳である。牛乳以外の獣乳を原料としたものであっても、本発明でいう「バター(製品)」に含まれる。
本発明でいうバターは、製造方法に特に制限はなく、通常、遠心分離して原料乳からクリームを分離した後、攪動(チャーニング)して固化させるが、乳酸発酵工程を経てもよい。本発明のバターは、発酵バター(醗酵クリームバター)と、無発酵バター(スイートクリームバター)とを含む。また、食塩を添加した有塩バターと添加しない食塩不使用バター(無塩バターということもある。)も含む。なお、典型的なバターは、成分の約80%が乳脂肪であり、水分を約17%含む油中水滴型エマルションである。また、バター中の飽和脂肪酸は、約50%である。
本発明でクリームというときは、特に記載した場合を除き、獣乳から乳脂肪分以外の成分を除去し、典型的には乳脂肪分を約18.0%以上含むものをいう。
本発明でバターオイルというときは、特に記載した場合を除き、バター又はクリームからほとんどすべての乳脂肪以外の成分を除去したものをいう。
本発明で「非酵素的に」というときは、特に記載した場合を除き、リパーゼ、エラスターゼ等の脂質分解酵素を用いないことを指す。
これまでに5%の水分存在下、バターオイルを160℃で1〜2時間加熱することにより、定量的にラクトンを形成させることができることが報告されている(非特許文献 The formation mechanism of lactones in Gouda cheese. International Dairy Journal, Vol. 17, pp.59-66, 2007.)。
しかるに、本発明においては、適量の水分が存在するとき油脂中のヒドロキシ脂肪酸のエステル分解反応とラクトン形成反応とが酵素作用によらず、温和な条件下で自動的に進行する。このようにラクトン生成がリパーゼなどの酵素の存在なしに、水分子の触媒作用により温和な条件下で進行することは報告されていない。
本発明者らは、リパーゼを用いたラクトン生成についても種々検討したが、バター中の水分含量が高いときには多量の揮発性脂肪酸が遊離されること、及び脱水したバターオイルにリパーゼを少量添加すると1〜3分程度以内に強烈な芳香を伴うラクトン生成が官能的に確認されるが、酵素添加5〜7分後にはラクトンの芳香は顕著に低減することを認めた。これは脱水状態のバター油脂中に生成したラクトンが、酵素によって種々のエステル交換反応を受けるためだと考えられた。リパーゼを用いる方法は、ラクトン生成上最適となった時点で、リパーゼを完全に失活させるか又は完全に分離することができれば、有効な手段となり得るかもしれないが、実用的ではないと思われた。これに対し、本発明は、非酵素的であり、かつラクトン生成を穏やかに進行させる。
より詳細には、本発明の第一の態様においては、トリグリセリドを構成するヒドロキシ脂肪酸のヒドロキシ基の酸素とエステル結合しているアシル炭素間の結合形成と、ヒドロキシ基からのプロトン脱離と、エステル結合している酸素へのプロトン供与と、エステル結合の開裂が、1分子の水の介在する反応中間体を経ることにより、温和な条件下で同時に進行する。この態様においては、過剰の水分子の存在により、反応中間体の形成が阻害されるために、ラクトン生成速度が低下する。この反応の典型例として、5-ヒドロキシ脂肪酸エステルからδ-ラクトンの生成反応を図1に示した。
なお、トリグリセリドはエステル結合しているアシル炭素を3つ有し、立体障害を考慮すると1、2及び3の位置での反応が同等の確率で進行するとは考えにくいが、ヒドロキシ脂肪酸がエステル結合している限り、いずれの位置おいても、このラクトン生成反応は生じうる。
その一方で、ヒドロキシ脂肪酸のヒドロキシ基は、他のトリグリセリド分子のエステル結合の加アルコール分解にも利用されうる。したがって、ラクトン生成反応を最適化するには、分子間の加アルコール分解を抑制しつつ、分子内の加アルコール分解反応であるラクトン生成反応を優先的に進行させるような条件を選択するとよい。
本発明の第一の態様においては、ラクトン生成反応は、微量の水分存在下で行われる。そのため、原料油脂組成物の水分調整(水分の、除去又は添加)を行う必要がある。水分除去が十分でなく、原料油脂組成物中に残存している水分量が多いままでは、ヒドロキシ脂肪酸のヒドロキシ基のアシル炭素への求核性は低いと考えられる。また、本発明者らの検討によると、水分量を一定値以下、具体的には280 ppmに調整したバター油脂では、ラクトン生成は大幅に低下した。これはヒドロキシ脂肪酸からのラクトン生成に適量の水分の存在が必要不可欠であることを示す。
油脂組成物からの水分の除去は、当業者であれば、同様の目的で使用される様々な手段により実施することができる。例えば、原料油脂組成物を溶融状態とし、充分に遠心処理し、水相を分離させて除くことにより、大部分の水分を除去することができる。さらに水分含量を減じるためには、溶融状態である原料油脂組成物を、減圧下に置くとよい。なお、本発明で油脂組成物に関し「溶融状態」というときは、特に記載した場合を除き、油脂組成物中の溶融した油脂(溶融脂)の含量が、80%(重量比)以上であることをいう。本発明においては、脱水処理のための好ましい溶融状態は、溶融脂の含量が90%以上となる温度であり、より好ましくは、99%以上となる温度である。なお、バター油脂中の固体脂含量は、20℃では26.4%、25℃では25%、30℃では21%、35℃で7.4%、40℃で0%である(J. Am. Oil Chem. Soc. Vol. 87, pp. 493-497(2010))。また、低温側では、15℃では32%、10℃では44%、5℃では56%程度である(J. Am. Oil Chem. Soc. Vol. 70, pp. 1193-1201(1993))。したがって、本発明においてバター油脂の脱水を行う場合には、30℃以上で行うことが好ましく、35℃以上で行うことがより好ましく、38℃以上で行うことがさらに好ましい。
油脂組成物への水分の添加もまた、当業者であれば、同様の目的で使用される様々な手段により実施することができる。油脂組成物は、保存性、安定性を確保するために、水分量が極低く調整されていることがある。本発明においてこのような原料油脂組成物を用いる場合は、所定の水分量となるように、水分を適宜添加すればよい。
一方、水分調整したバター油脂を40℃又は50℃で保持したとき、ラクトン生成量は2時間後に最大となり、以降減少に転じた(図10)。これは原料油脂組成物において、トリグリセリドを構成するヒドロキシ脂肪酸がラクトン形成反応以外の反応により消費されたためと考えられる。すなわち、原料油脂組成物が外見上固体である場合には、分子内反応によりラクトンが優先的に生成するのに対して、溶融状態ではトリグリセリド分子が比較的自由に動ける環境であるために、分子間反応の確率が高まるためと考えられる。
このような観点から溶融状態での水分除去のための処理は短時間で行うとよい。本発明者らの検討によると、減圧下でのロータリーエバポレーターを用いた処理(40℃)、又はそれと同等の処理であれば、約20分で280 ppmまで原料油脂組成物から水分を除去することが可能である。総じて、本発明における原料油脂組成物からの水分除去の条件は、減圧下で、35℃以上であることが好ましく、38℃以上であることがより好ましい。いずれの場合も、温度は45℃以下であることが好ましく、42℃以下であることがより好ましく、40℃以下であることがさらに好ましい。なお、本発明において、工程の温度をいうときは、処理に供される油脂組成物が置かれる環境の温度をいい、この温度は、通常、油脂組成物自体の温度と同じである。
本発明の第一の態様においては、原料油脂組成物中の水分量は、280 ppmを超えた量とすることが必要であり、例えば300 ppm以上とすることが好ましく、400 ppmとすることがより好ましく、520 ppm以上とすることがさらに好ましい。また、いずれの場合においても、水分量は10000 ppm以下であるとよく、1300 ppm以下であることが好ましく、1200 ppm以下であることがより好ましく、1000 ppm以下であることがさらに好ましい。油脂組成物中の水分量は、飲食品中の水分含量を測定するための慣用法、例えばカールフィッシャー法等を用いることにより、測定できる。
本発明の第一の態様においては、水分含量を300 ppm以上1200 ppm以下に調整した原料油脂組成物を、ラクトン生成上有効な温度下、ラクトン生成上有効な時間置くことにより、自動的にラクトンを生成させる。
第一の態様において、ラクトン生成上有効な温度は、より詳細には、原料油脂組成物が見かけ上固体であるか、又は固体脂含量が相対的に高い状態である温度であり、油脂組成物中に固体脂が十分量存在する温度である。溶融状態ではトリグリセリド分子が比較的自由に動き、分子間反応(加アルコール分解)が生じ易いのに比較して、固体状態ではトリグリセリド分子の拡散が抑制されており、分子内反応によるラクトン化の比重が増すからである。したがって、本発明においては、ラクトン生成上有効な温度の上限値は、固体脂が存在する温度であり、より好ましくは固体脂が7%以上含まれる温度であり、さらに好ましくは固体脂が20%以上含まれる温度である。上述した各温度におけるバター中の固体脂割合に基づけば、本発明の第一の態様において原料油脂組成部としてバター油脂を用いる場合は、ここでの処理温度は、好ましくは35℃以下であり、より好ましくは30℃以下である。
このような観点から、本発明の第一の態様におけるラクトン生成工程の条件は、10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましい。いずれの場合も、温度は35℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましい。
第一の態様において、ラクトン形成上有効な期間は、3日間以上であり、1週間以上であることがより好ましく、2週間以上であることがさらに好ましい。表1に示す通り、3週間でその油脂のラクトンポテンシャル(最大ラクトン生成量)(International Dairy Journal, Vol. 17, pp. 59-66 (2007))に匹敵する量のラクトンが蓄積される。期間が長くなると、油脂の酸化が進行する傾向がある。したがって、期間は2か月以下であり、好ましくは4週間以下であり、より好ましくは3週間以下である。
本発明の第一の態様においては、微量の水分を含む原料油脂組成物を、比較的温和な条件下で保持することにより、トリグリセリドを構成しているヒドロキシ脂肪酸のエステル分解反応と、ラクトン形成反応を非酵素的に進行させることができる。一方、4位及び5位にヒドロキシ基をもたない脂肪酸のエステル結合は、本発明の条件下では加水分解を受け難い。すなわち、本発明によれば、好ましくない遊離の脂肪酸の発生を抑えつつ、選択的にラクトン類を生成させることができる。
本発明はさらに、第一の態様における問題点である、時間がかかるという問題点を解消することを目的としてさらに検討を行った。その結果、水の含有量を厳密にコントロールしなくても、油脂組成物中に水分子と水素結合を形成する能力を有する添加剤を混在させた上で、温度の条件を適切に設定することにより、第一の態様と比較して非常に短時間に第一の態様と同等の油脂組成物中ラクトン含有量を確保することができることを見出した。
上述した添加剤としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖、デキストリン、デンプン類などの有機化合物やシリカゲル等の無機化合物、これらの任意の組み合わせが適用できる。
具体的には、本発明の第二の態様においては、油脂組成物中にショ糖を添加し、40〜60℃の温度で保持することにより、油脂組成物中の4-又は5-ヒドロキシ脂肪酸を含むトリグリセリドから、非酵素的にγ-ラクトン、又はδ-ラクトンが生成されることにより、ラクトン類が富化された油脂組成物を製造することができることを示した。
理論に拘束されることを望まないものの、この第二の態様におけるラクトン類の富化は、油脂組成物中に添加されるショ糖分子が、油脂組成物中の水分と結合して、水分子の加水分解能を適度に抑制することにより、生じることが明らかになった。
この第二の態様は、第一の態様において必要であった減圧処理を伴う水分調整工程が不要であり、その結果第一の態様と比較して非常に短時間に油脂組成物中のラクトン類を富化することができるという効果を有する。また、反応時間を短くすることができることから、フレーバーの品質低下を招く刺激臭やワックス臭の発生をさらに抑制することができる。
第二の態様において、ラクトン生成上有効な温度は、より詳細には、40℃〜60℃であり、より好ましくは50℃である。そしてこの態様において、ラクトン形成のためには、上述した温度で、2〜4時間程度反応を継続すればよく、より好ましくは、3時間程度反応を継続すればよい。
従来の脂質分解酵素を用いる方法では、ラクトン生成に必要なヒドロキシ脂肪酸以外の低級脂肪酸類、中級脂肪酸類及び高級脂肪酸類が同時に多量生成してしまうために、揮発性の低級脂肪酸に起因する刺激臭や、中級及び高級脂肪酸に起因するワックス臭の発生が問題となる。その上、使用された酵素の失活のための熱処理により、風味が劣化するという問題があった。
本発明により得られたラクトン類が富化された油脂組成物は、従来のバターフレーバーに比較して、刺激的な分解臭や酸化臭が抑制され、好ましいバター風味が増強されたものである。本発明により得られたラクトン類が富化された油脂組成物は、ラクトン類を50 ppm以上含有するものであり得る。60 ppm以上含有するものであることがより好ましい。ラクトン類としては、δ-デカラクトン、γ-ドデカラクトン、δ-ドデカラクトン、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン等が1または2種以上含まれていることが好ましく、特にδ-デカラクトン、δ-ドデカラクトン及びδ-テトラデカラクトンの含有量が高いことが好ましい。
本発明の第一の態様により得られたラクトン類が富化された油脂組成物は、以下に示すいずれか一つ、又はいずれかを組み合わせた特徴を有しうる。
(1)ラクトン類を50 ppm、好ましくは60 ppm以上含有する。
(2)ラクトン類を、原料油脂組成物のラクトンポテンシャルに匹敵する量、例えば原料油脂組成物のラクトンポテンシャルの90%以上、好ましくは95%以上、含有する。換言すれば、グリセロールにエステル結合した4-又は5-ヒドロキシ脂肪酸をほとんど含有しない。
(3)水分量が、280 ppmを超えた量であり、例えば300 ppm以上であることが好ましく、400 ppmであることがより好ましく、520 ppm以上であることがさらに好ましい。また、いずれの場合においても、水分量は10000 ppm以下であるとよく、1300 ppm以下であることが好ましく、1200 ppm以下であることがより好ましく、1000 ppm以下であることがさらに好ましい。
(4)好ましくない脂肪酸、より特定すると、揮発性の低級脂肪酸に起因する刺激臭や、中級及び高級脂肪酸に起因するワックス臭が少ない。特に、C10、C12、C14の脂肪酸のそれぞれの含量が、原料油脂組成物のそれらとほぼ同じ、具体的には、原料油脂組成物の脂肪酸含量(重量)を100とした場合、120%以下、好ましくは110%以下、さらに好ましくは105%以下である。
本発明の第二の態様により得られたラクトン類が富化された油脂組成物は、以下に示すいずれか一つ、又はいずれかを組み合わせた特徴を有しうる。
(1)ラクトン類を50 ppm、好ましくは60 ppm以上含有する。
(2)ラクトン類を、原料油脂組成物のラクトンポテンシャルに匹敵する量、例えば原料油脂組成物のラクトンポテンシャルの90%以上、好ましくは95%以上、含有する。換言すれば、グリセロールにエステル結合した4-又は5-ヒドロキシ脂肪酸をほとんど含有しない。
(3)ショ糖が、0.5%〜6.0%含まれ、より好ましくは1.0〜6.0%含まれ、さらに好ましくは2.0〜6.0%含まれることを特徴としている。
(4)好ましくない脂肪酸、より特定すると、揮発性の低級脂肪酸に起因する刺激臭や、中級及び高級脂肪酸に起因するワックス臭が少ない。特に、C10、C12、C14の脂肪酸のそれぞれの含量が、原料油脂組成物のそれらとほぼ同じ、具体的には、原料油脂組成物の脂肪酸含量(重量)を100とした場合、120%以下、好ましくは110%以下、さらに好ましくは105%以下である。
このような特徴を有する油脂組成物は、それ自体で新規なものである。また、本発明の非酵素法で温和な条件で製造しうるという点でも優れている。
本発明により得られうる油脂組成物を使用した食品又は食品原料は、油脂組成物の特徴をそのまま維持している。すなわち、本発明により得られうるラクトン類富化油脂組成物を使用した食品又は食品原料もまた、上記のいずれか一つ、又はいずれかを組み合わせた特徴を有しうる。
なお、本発明で「製造方法により得られうる(obtainable)ラクトン類富化油脂組成物」というときは、特に記載した場合を除き、その製造方法で得られた(obtained)油脂組成物のほか、それと同一の油脂組成物を含む。
本発明の方法により、生成したラクトンは、酸及びアルカリ領域のpHでは加水分解を受けやすいが、熱や水分には比較的安定である。したがって、本発明により得られたラクトン類が富化された油脂組成物は、通常の食品加工においては充分安定であり得る。したがって、本発明により得られた油脂組成物は、そのまま食品として利用することができるほか、様々な食品に添加するための食品原料として用いることができる。
本発明で「食品」又は「食品原料」というときは、固形状のもののほか、飲料、スープ等の液体状のものも含む。「食品原料」というときは、食品として許容される種々の添加物を含む。
本発明は、乳製品、特にクリーム又はバターの風味の増強のために適用することができる。またそれ以外の乳製品、例えばバターオイル、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、濃縮乳(脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳)、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調整粉乳(育児用粉ミルク等)、発酵乳、 乳酸菌飲料、乳飲料(コーヒー牛乳、カルシウムなどの栄養強化乳)、サワークリーム(生クリームの乳酸発酵物)に利用することができる。本発明はまた、クリーム又はバターの風味の増強が好ましい食品に利用することができる。このような製品には、パン類、洋菓子類、チョコレート類、オムレツなどの卵製品、加工油脂(マーガリン、ショートニング等)、マヨネーズ、ドレッシング等が挙げられる。
本発明により得られた、ラクトン類が富化された油脂組成物又はラクトンは、食品に添加するための香料として、利用することができる。
一般に、出発物質、触媒、副反応物等の残存が懸念される通常の合成法により得られる化合物の食品への添加は、少ないほうが好ましいという志向がある。一方で、天然物中のラクトン濃度は非常に低く、ラクトンは香料業界では重要な化合物でもある。酵素を用いない自発的な反応によりラクトン類を製造可能な本発明は、このような観点からも有用である。
[実施例1] 水分含量とバター中のラクトン類
無塩バターを市場で購入して使用した。原料の無塩バター200 gを40℃恒温槽中で融解し、30 分間以上放置した後、上層を分離してバター油脂(試料A)を得た。試料Aを遠心分離(3000 rpm, 3分間)して微細な水滴を除き、試料Bを得た。試料A及び試料Bには、それぞれ18600 ppm及び1222 ppmの水分が含まれていることが、平沼産業株式会社製の微量水分測定装置AQ-300を用いたカールフィッシャー法により明らかになった。さらに、減圧方式のロータリーエバポレーター(40℃)を使用して、数分間から15分間程度脱水処理を行うことにより、バター油脂中の水分含量を948 ppm(試料C)、757 ppm(試料D)、510 ppm(試料E)、280 ppm(試料F)に調整した。試料A、B、C、D、EおよびFを20℃定温下で、0、1、2、3、4週間保管し、バター油脂中のラクトン類及び脂肪酸類の濃度を追跡した。
バター油脂中の揮発性成分をGC-MS分析するためには、多量の不揮発性又は難揮発性の油脂から、脂溶性の揮発性物質のみを選択的に抽出することが必要である。従来、分子蒸留法(50℃、0.1 mbar)による以外、GC-MS分析に供する試料を調製することができなかった。今回、簡便な試料調製法を新たに考案した。すなわち、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムで縦6 cm、横5 cmのパウチをヒートシールして作製し、これをジエチルエーテルに2 h以上浸漬して、フィルム中のエーテル溶出物を除去した。クリーンアップしたパウチに試料20 gを採取し、パウチ開口部をヒートシールした。これを容量100 mlの耐圧密閉広口ビンに入れ、ジエチルエーテル30 mlを加えて密閉し、40℃の恒温水槽中で1時間、振とう抽出した。抽出終了後、パウチを取り出したのち、エーテル溶液に内標準として4-n-ブチルクロロベンゼン を5 mg添加し、所定量まで濃縮してGC-MS(島津製作所製 GCMS-QP2010 plus)分析の試料とした。以上の前処理操作をLDPEパウチ抽出法と呼ぶ。
LDPEパウチ抽出法によるラクトン類の抽出効率(回収率)を求めるために、δ-デカラクトン、γ-ドデカラクトン、δ-ドデカラクトン、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン(株式会社ワコーケミカル社あるいはAAA Chemicals社製品)をバター油脂に一定量添加した試料を調製して、LDPEパウチ抽出法ならびにGC-MS分析に供した。この結果、これらすべてのラクトンの抽出率は10〜11%であることが判明した。そこでLDPEパウチ抽出法による試料からのラクトン類の回収率を10%としてデータを取りまとめた。
試料B(水分含量1220 ppm)を20℃恒温条件下で0、1、2、3、4週間保管したときの、δ-デカラクトン(δ-C10)、γ-ドデカラクトン(γ-C12)、δ-ドデカラクトン(δ-C12)、δ-テトラデカラクトン(δ-C14)、δ-ヘキサデカラクトン(δ-C16)の濃度変化を図2に示す。LDPEパウチ抽出法では原料バター油脂中のラクトン濃度を測定することが困難であったので、非特許文献、Characterization of the volatile compounds that constitute fresh cream butter aroma. Flavour and Fragrance Journal, vol. 18, pp. 215-220, 2003の値をプロットした。(図2以下においても同じ)。
水分含量948 ppm及び757 ppmの試料C及び試料Dは、ラクトン生成に関してほぼ同様の挙動を示したので、試料Dの経時的変化を図3に示す。図2と比較してラクトン類の濃度増加が顕著であった。図4は、水分含量510 ppmの試料Eの経時的濃度変化を示しているが、ラクトン類の生成は比較的緩慢であった。以上の結果から、ラクトン類の生成にバター油脂中の水分含量が影響を及ぼすことが判明した。
図2(試料B)、図3(試料D)及び図4(試料E)は、個々のラクトンの濃度変化を示したものであるが、試料A〜Fに関して全ラクトン含量の変化を調べ、そのうち試料A、B、D、E、Fにおける全ラクトン含量の変化を図5に示す。この図から水分含量757 ppmの試料Dにおいてラクトン類の蓄積が最も大きく、70 ppm以上に達した。1200 ppm以上の水分を含む試料B、及び水分含量が510 ppmの試料Eではラクトン生成が低下する傾向が認められた。なお、図には示していないが、試料Cについて同様の手順により全ラクトン含量を測定したところ、水分含量が948 ppmの試料Cのラクトン類の蓄積は44 ppmであった。さらに、水分含量280 ppmの試料Fと、逆に水分含量が18600 ppmの試料Aにおいては、ラクトン類の蓄積は極めて少量であった。
試料Aにおいてラクトン類の蓄積が低かったのは、高水分含量下では、図1の反応中間体が形成され難いためと考えられた。試料Fにおいてラクトンがほとんど生成しなかったのは、ラクトン生成反応を触媒する水分子の不在を示している。
このようにバター油脂中の水分含量を280 ppm以下に調整することにより、ラクトン生成反応を実質的に停止させることができたことから、試料B、C、Dからのラクトン抽出はロータリーエバポレーターで水分量を280 ppm以下に脱水した後に行った。
本分析法によると、供試バター油脂中の遊離脂肪酸の相対的な含量も知ることができる。試料Bを20℃恒温下に保管したときの、デカン酸(C10 acid)、ドデカン酸(C12 acid)、テトラデカン酸(C14 acid)の濃度変化を図6に示す。図より、テトラデカン酸の大幅な増加が明らかである。ドデカン酸及びデカン酸の増加も認められた。一方、試料Dの結果を図7に示すが、脂肪酸の増加はまったく認められなかった。試料B及び試料Dのいずれにおいてもブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸などの生成は認められなかった。
[比較例1]
融解、遠心分離及び減圧下でのロータリーエバポレーター(40℃)処理により調製されたバター油脂(試料D;水分含量757 ppm)を5℃恒温下で0、1、2、3、4週間保管したものを、LDPEパウチ抽出法ならびにGC-MS分析に供した。
結果を図8に示す。図より、温度5℃ではラクトン類は、ほとんど生成しないことが明らかとなった。ラクトン類を有効に生成させるためには、水分調整を行ったバター油脂を20℃程度に保持する工程が重要であった。なお、比較例2においても、LDPEパウチ抽出中のラクトン生成が問題となることから、水分含量を280 pp以下まで脱水した後、パウチ抽出を行った。
[比較例2]
ラクトン生成に及ぼす温度の影響を明らかにするために、試料Dを40℃及び50℃で1時間、2時間、4時間、8時間保持した。これらのバター油脂を直ちにLDPEパウチ抽出法ならびにGC-MS分析に供した。結果を図9に示す。40℃では、ラクトン濃度は2時間まで増加傾向を示したが、それ以降、緩やかに減少した。50℃では、40℃に比べてラクトンの蓄積はさらに少なく、保持時間の延長とともにその傾向は顕著になった。以上の結果は、バター油脂が完全に溶融状態にある40℃以上の温度では、ヒドロキシ脂肪酸エステルが種々の分子間反応を受けることを示唆している。すなわち、完全な溶融状態においてヒドロキシ脂肪酸はラクトン化反応以外の経路により消費される比率が増大した。
[比較例3]
供試したバター油脂のラクトンポテンシャル(最大ラクトン生成量)を以下の方法で求めた。バター油脂20 gと脱イオン水1.0 gを耐圧容器(内径15 mm x長さ200 mm)に採取し、160℃の恒温槽中で100 分間保持することにより、4-及び5-ヒドロキシ脂肪酸をそれぞれγ-及びδ-ラクトンに変換した。このバター油脂分解物をパウチ抽出法に供することにより、ラクトンポテンシャルを求めた。今回使用したバター油脂のラクトンポテンシャル(LP)、試料Dを20℃で3 週間保管したときのラクトン濃度(L)、ならびにL/LP比を表1に示す。いずれのラクトンについても、L/LP比はほぼ1であったことから、本発明技術によりバター油脂中の4-及び5-ヒドロキシ脂肪酸は、ほぼ完全に対応するラクトンに変換されたことが判る。
Figure 0006143264
[実施例3] 油脂組成物中へのショ糖の添加の、ラクトン類形成に対する効果(1)
市販の無塩バターを40℃で溶融し、遠心分離によりバターオイルを調製した。このバターオイルの水分含量は1400ppmであり、国際的に流通しているバターオイルの水分含量内にあった。このバターオイルを6分割し、スクロース(ショ糖)を0.5%から6.0%添加した試料と、対象として無添加の試料を準備した。
下表は、撹拌しながら60℃で1あるいは2時間保持した後のラクトン強度と揮発性脂肪酸強度を官能的に示したものである。本実験では60℃で加熱したが時間の延長によってもラクトンが減少しないことが確認された。
ラクトン特有の甘くてミルク様の香りは、ショ糖添加1.0%以上で強く認められた。ショ糖無添加、0.5%添加試料ではラクトンの生成はほとんど認められなかった。一方、揮発性脂肪酸特有のツンツン、ザラザラした臭いがショ糖無添加試料で明瞭に認められた。ショ糖を添加したバターオイルは加熱によって異臭が発生しにくいことが判明したことは産業上有用である。
ショ糖添加バターオイルを60℃で1時間加熱した後も、余分なショ糖は粒子状で存在していた。そこでこれを遠心分離してショ糖粒子を沈降させてから、上部の透明なバターオイルをカールフィッシャー水分測定装置に供した。その結果、ショ糖添加量に依存して水分含量は減少したがいずれの試料においても900 ppm以上であった。
ショ糖を添加せずに水分含量900 ppm以上のバターオイルを60℃で加熱すると、ラクトンの生成反応と同時に消滅反応も促進されるために、ラクトンの蓄積は促進されないことは、図9からも明らかである。
Figure 0006143264
[実施例3] 油脂組成物中へのショ糖の添加の、ラクトン類形成に対する効果(2)
融解バターの油脂層を遠心分離(3000 rpm、3分間)して調製された水分含量1222 ppmの試料Bに、ショ糖を4重量%添加して20分間撹拌して過剰の水分をショ糖分子に結合させたものを試料Gとした。このとき添加されたショ糖の大部分はバター油脂の底部に粒状態で存在した。試料Gの水分含量は1180 ppmであり、ショ糖分子と結合した状態で油脂中に分散していることが推察された。試料Gを60℃で0.5、1、2、3、または4時間保持し、バター油脂中のラクトン類の濃度を追跡した。
ショ糖添加試料Gを60℃で0.5、1、2、3、または4時間保持したときの、δ−デカラクトン(δ-C10)、γ−ドデカラクトン(γ-C12)、δ-ドデカラクトン(δ-C12)、δ-テトラデカラクトン(δ-C14)、δ-ヘキサデカラクトン(δ-C16)の濃度変化を図10に示した。図10より、60℃、3時間経過後にラクトン濃度は最高に達し、合計濃度72 ppmに達した。
このように、ショ糖を添加した水分含量1180 ppmの試料Gを60℃、3時間保持することにより、ショ糖無添加の水分含量757 ppm(試料D)を20℃、3週間保管したときと、ほぼ同量のラクトンを生成することが判明した。すなわち、溶融バター油脂にグルコースやフラクトースなどの単糖類、ショ糖などの二糖類、オリゴ糖、デキストリン、デンプン類などの水分子と水素結合を形成する性質をもつ成分を結晶粒として、あるいは粉末状で添加し、これを40℃〜70℃で1時間〜10時間ほど保持することにより、ラクトンポテンシャルに匹敵するラクトン濃度を与えることができる。同様の効果は、ショ糖とコーンスターチからなる粉糖を使用し場合にも確認された。
[比較例4]
融解バターの油脂層を遠心分離して調製された試料Gにショ糖を添加することなく、60℃で0.5、1、2、3、または4時間保持しても、ラクトン濃度の有意な増加は認められなかった。

Claims (16)

  1. 水分含量が300 ppm以上1200 ppm以下である油脂組成物を、15℃以上30℃以下で保持して、油脂組成物中の4−又は5−ヒドロキシ脂肪酸を含むトリグリセリドから、非酵素的にγ−ラクトン、又はδ−ラクトンを生成させる工程を含む、ラクトン類が富化された油脂組成物の製造方法。
  2. 溶融状態である原料油脂組成物を減圧下に置くことにより、及び/又は遠心分離工程により、水分を除去して、水分含量が300 ppm以上1200 ppm以下である油脂組成物を得る工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
  3. 原料油脂組成物に水分を添加して、水分含量が300 ppm以上1200 ppm以下である油脂組成物を得る工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
  4. 油脂組成物がバター由来である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 保持期間が3日〜2カ月である、請求項1〜いずれか1項に記載の製造方法。
  6. ラクトン類を50 ppm以上含有する油脂組成物を製造するための、請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載された工程を含む、ラクトン類が富化された食品又は食品原料の製造方法。
  8. 油脂組成物中に単糖類、二糖類、オリゴ糖、デキストリン、デンプン類及びこれらを任意に組み合わせた添加剤を添加し、40〜60℃の温度で保持して、油脂組成物中の4−又は5−ヒドロキシ脂肪酸を含むトリグリセリドから、非酵素的にγ−ラクトン、又はδ−ラクトンを生成させる工程を含む、ラクトン類が富化された油脂組成物の製造方法。
  9. 添加剤が、単糖類、二糖類、オリゴ糖、デキストリン、デンプン類の少なくとも一から選択される糖類である、請求項に記載の製造方法。
  10. 糖類が、ショ糖である請求項記載の製造方法。
  11. 添加剤が、結晶粒または粉末状の形状である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
  12. 油脂組成物がバター由来である、請求項〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
  13. 保持期間が2〜4時間である、請求項〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
  14. ラクトン類を50 ppm以上含有する油脂組成物を製造するための、請求項〜13のいずれか1項に記載の製造方法。
  15. 請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法により生成される、ラクトン類富化油脂組成物。
  16. 請求項15に記載のラクトン類富化油脂組成物を使用した食品又は食品原料。
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