JP6140806B2 - 全草の一過性トランスフェクションのためのアグロバクテリウム - Google Patents

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Description

本発明は、植物または植物上の葉に一過性トランスフェクションする方法に関する。本発明は、対象のDNA配列を植物において、または植物上の葉において一過性発現させる方法にも関する。さらに、本発明はアグロバクテリウム株に関する。
農業のための現在の遺伝子工学プロセスは、全て作物種の安定な遺伝子改変に基づいており、それはまず1983年に実証され(Fraley et al 1983; Barton et al 1983)、1996年以来商業化されている。今日、植物の安定な遺伝子形質転換に基づく農業のプロセスは実在しており、新たな実践を成功させる基礎となっているが、それは多数の制限を有しており、主なものはトランスジェニック作物の開発のために非常に長い時間と高い費用がかかることである。植物バイオテクノロジーに関わる企業間の一般的なコンセンサスは、その研究開発プロセスは作物種に応じて8〜16年を必要とし、総平均開発費用は1億ドル〜1億5千万ドルであると見積もられることである。これらの制限のため、植物の遺伝子形質転換プロセスの発見から25年を超える期間が過ぎた後でも、ごく少数の形質およびわずかなGM作物種しかこれまでに商業化されていない。
植物細胞および全草を一過性に(すなわち、新規の遺伝物質が植物の染色体上に安定に組み込まれることなく)再プログラミングすることもでき、その一過性のプロセス、例えばウイルス感染は迅速であることが知られている。そのような一過性のプロセスは、使用者が関心を示す特定の生成物に有利な植物代謝を極めて迅速に改変することを原理的に可能にし得る。そのようなプロセスは、その植物に有効かつ安全にトランスフェクションするために操作されたDNAまたはRNAベクター(ウイルスまたは細菌)を必要とする。植物ウイルスに基づくベクターを用いようとした早期の試みは、高価値の組換えタンパク質、例えば特定の生物製剤の製造のために植物のトランスフェクションを可能にする点で、部分的に成功している(Gleba et al 2007, 2008; Lico et al 2008)。他の形質、例えば入力形質(input traits)(例えば除草剤抵抗性、Shiboleth et al 2001; Zhang and Ghabiral 2006)の操作のためのウイルスの使用は文献において記載されているが、ウイルストランスフェクションは感染した宿主において多くの望ましくない変化を導入するため、この種の一過性プロセスは入力形質に関してそれ以上追求されていない。一過性プロセスは、アグロバクテリウム種の、それらのTiプラスミドの一部を真核細胞、特に植物細胞に移す能力に基づいて構築することもできる。アグロバクテリウムに基づくトランスフェクションの使用は、遺伝子操作、例えば遺伝子形質転換プロトコルに関する、および実験室の一過性トランスフェクションアッセイの基礎である。アグロバクテリウムに基づくトランスフェクションの産業的適用はまた、最適な適用条件、例えば細菌懸濁液による植物の真空浸潤は野外で大規模に用いることができないため、組換えタンパク質製造に限られてきたが、一方で、気中部分に細菌溶液を噴霧すること、または植物に細菌溶液を注ぐこと(watering)は、植物細胞のおそらく非常に少ない割合しかトランスフェクションされない結果をもたらし、以前の研究はその特定の問題に全く取り組まなかった。
アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)およびA.リゾゲネス(A.rhizogenes)は世界中で研究所において植物の一過性トランスフェクションおよび安定な遺伝子形質転換のために広く用いられている。これらの適用はアグロバクテリウムの遺伝情報を真核細胞に移す能力に基づいている。今日栽培されているトランスジェニック植物、例えばダイズ、キャノーラおよびワタの多くはアグロバクテリウムに媒介される遺伝子形質転換により生成されてきた。一過性と安定形質転換との間の本質的な違いは、安定形質転換のプロセスではアグロバクテリウムに送達されるDNAは最終的に植物の染色体中に組み込まれ、その後その植物の子孫により受け継がれることである。そのような組み込みの事象は、植物細胞および細菌の間の大規模な(massive)接触を提供するように具体的にデザインされた実験室での実験においてさえも稀であり;従って、安定形質転換体の選択のため、特定の選択的スクリーニング法を利用しなければならず、最適な形質転換および全草への再生のために選択された(分裂組織に富む)特定の植物外植片が用いられている。それ以降、この科学領域で蓄積された知識は、トランスフェクションされた細胞の選択を行わずに植物体の多くの細胞が影響を受けるはずである一過性プロセスについて関心を示す人には価値が限られている。
一方で、一過性形質転換はアグロバクテリウムに駆動される植物細胞の核中へのDNA送達のより早い段階のみを考慮しており、これはそのような送達されたDNA分子は植物の染色体中へのDNAの組み込みがない場合でさえも核中で転写されることができ、そのような発現は結果として植物細胞の一過性の代謝的再プログラミングをもたらすという事実に沿っている。そのような再プログラミングは、異なる遺伝子実験の迅速な評価のための実験室ツールへと開発されてきた。アグロバクテリウムに媒介される植物細胞へのDNAの移動に関するかなりの知識体系が存在するが、その情報は常に実験室規模の実験に限られており、そして今までにDNAベクターとしてのアグロバクテリウムを含む産業的規模での適用を開発するための試みは非常に少なかった。
実験室適用の限界の1つは、アグロバクテリウムに基づくDNA送達は露地で、または大規模に適用することが困難または不可能である特定の処理を必要とするという事実である。典型的な一過性実験では、最大限の送達を提供するために、培養した植物細胞または植物の一部(外植片)を過剰量の細菌で処理する。典型的な研究実験では、産業的規模で行われた場合に経済的に実行可能ではない発現レベルにも興味が持たれている。一般に、この領域で行われる研究は、本発明者らを、一過性発現に重大な影響を及ぼすパラメーターはアグロバクテリウムの植物体内の植物細胞への最高の相互作用アクセスを可能にするパラメーターであるという結論へと導いてきた。ほとんどのそのような研究は、真空浸潤、植物の葉中への注入もしくは界面活性剤処理、例えばカミソリの刃による植物表面の傷付け、またはそれらの組み合わせを利用する。実際、元のDNAのさらなる(ウイルスに基づく)増幅を含まない組換えタンパク質の商業生産のためのアグロバクテリウムに基づくトランスフェクション方法を開発している唯一のグループは、Medicagoのグループである(D’Aoust et al 2008, 2009; Vezina et al, 2009)。彼らの方法は、送達法として完全に真空浸潤に依存している。しかし、大過剰な細菌対植物細胞の比率に基づいているため、植物の一過性トランスフェクションのために用いられる現在の実験室プロトコルは重大な翻訳価値を有さず、すなわちそれらは産業レベルで直接複製することができない。少数の事例(例えばVaquero et al, 1999, D’Aoust et al, 2008, 2009)を除いて、彼らはまた、その一過性トランスフェクション方法の効率の問題に定量的に取り組んでこなかった。(そのような研究の例は多数あり、我々はごく少数の代表的な研究に関する引用を提供する:Li et al, 1992; Liu et al, 1992; Clough and Bent, 1998; De Buck et al, 1998, 2000; Chung et al, 2000; Yang et al, 2000; Zambre et al, 2003; Wroblewski et al, 2005; Lee and Yang, 2006; Zhao et al, 2006; Shang et al, 2007; Jones et al., 2009; Li et al, 2009; De Felippes and Weigel, 2010)。
今日において開発中である産業用のプロセスの1つはマグニフェクション(magnifection)であり、これは植物の葉中へのアグロバクテリウムの真空浸潤に基づく方法である。マグニフェクションプロセス(Icon Genetics GmbHによりmagnICON(登録商標)として商標登録されており、いくつかの特許/特許出願によりカバーされている)は、植物における異種タンパク質発現のための簡単かつ無制限に規模を変更できるプロトコルであり、それは植物の安定な遺伝子形質転換を欠いているが、代わりにDNA前駆体としてアグロバクテリウムにより植物体の多数の領域に送達(全身送達)されたウイルスベクターの一過性増幅に依存している。そのようなプロセスは、本質的にウイルスRNAレプリコンをコードするT−DNAを有するアグロバクテリウムの希釈された懸濁液による成熟した全草の浸潤である。このプロセスでは、その細菌は一次感染および全体への移動の(以前にはウイルス的な)機能を帯びており、一方でそのウイルスベクターは細胞間(短距離)の拡散、増幅および高レベルのタンパク質発現を提供する。そのスケールアップ(産業的)バージョンは(インプランタ組み立てを必要とするプロ−ベクターではなく)完全に組み立てられたウイルスベクターに基づいて構築され、真空浸潤による全草への高スループットなアグロバクテリウム送達のための装置を必要とする。そのプロセスはスケールアップすることができるが、それは植物の気中部分の真空下での細菌懸濁液中への浸漬を必要とし(そのプロセスは植木鉢またはトレー中で成長させた植物を逆さにすることを含む)、これはこの方法で処理することができる生物体の量に、そのプロセスの処理量に、その植物を処理の前に栽培することができる方法に制限を課す手順であり、それはある程度の費用もかかり、それはそのプロセスの用途を高費用な製品、例えば組換え生物製剤のみに限定する。そのマグニフェクションプロセスは、それが処理された植物中のほとんど全ての葉の細胞、または総気中植物生物体量のおおよそ50%(残りは茎および葉柄である)のトランスフェクションを可能にするため、効率的である。そのプロセスは多くの方法で最適化されており、例えばMarillonnet et al, 2005を参照。しかし、現在のプロセスは完全に植物の葉中への注入もしくは真空浸潤(例えばSimmons et al, 2009)、葉の傷付け(Andrews and Curtis, 2005)、または土壌中にアグロバクテリウムを注ぐこと(‘アグロドレンチング(agrodrenching)’, Ryu et al, 2004; Yang et al, 2008)のような細菌送達法に基づいて構築されてきたが、これらの方法は野外での植物の大量処理に適用することはできない(Gleba et al, 2004, 2007, 2008; Gleba & Giritch, 2010, 2011; Lico et al, 2008において総説されている;我々のグループの原著論文には、Giritch et al. 2006; Marillonnet et al., 2004, 2005; Santi et al, 2006が含まれる;他の研究グループからの観念的に類似した論文−Voinnet et al, 2003; Sudarshana et al, 2006; Gao et al, 2006; Mett et al, 2007; Lindbo, 2007a,b; Plesha et al, 2007, 2009; Huang et al, 2006; Regnard et al 2009; Green et al, 2009; Shoji et al, 2009)。
全草(インプランタ)で真空浸潤なしでアグロバクテリウム処理を用いる試みは、結果として非常に少ない数の最初にトランスフェクションされた細胞しかもたらさず、従ってそのプロセスの実用的適用を大きく制限してきた。さらに、一過性トランスフェクション系ではトランスフェクションされた植物細胞に関する選択が行われないため、真空浸潤を避けるべきである場合、一過性トランスフェクションプロセス全体が大規模適用には効率が低すぎる。さらに、ダイズまたはナタネのようないくつかの植物種は特定の植物組織を用いない限りアグロバクテリウムによりトランスフェクションするのが困難であり、それによりインプランタ一過性トランスフェクションは意味のある程度まで達成されていない。
先行技術から逸脱して、本発明の目的は、一過性インプランタトランスフェクションの効率的なプロセスを提供することである。対象のDNA配列をインプランタで一過性発現させる効率的なプロセスを提供することは、本発明の別の目的である。さらに、アグロバクテリウムを植物の細胞間隙中に導入するために圧力差を適用する必要のない大(産業的)規模での(すなわち並行して多くの植物に対する)アグロバクテリウムを用いる一過性植物トランスフェクションを可能にする効率的なプロセスを提供することは、本発明の目的である。この目的のためのアグロバクテリウム細胞および株を提供することも目的である。
これらの問題は、植物または植物上の葉に一過性トランスフェクションする方法であって、前記の植物または前記の葉を受託番号:DSM25686の下で寄託されたCryX株またはCryX株の誘導株のアグロバクテリウム細胞を含む懸濁液と接触させることを含むプロセスにより解決され、ここで前記の誘導株はCryX株の染色体背景を有し、または前記の誘導株はCryX株のvirプラスミドもしくは前記のvirプラスミドの派生物を含有する。
さらに、目的のDNA配列を植物中で一過性発現させる方法であって、前記の植物または前記の植物上の前記の葉を受託番号:DSM25686の下で寄託されたCryX株またはCryX株の誘導株のアグロバクテリウム細胞を含む懸濁液と接触させることを含む方法も提供され、ここで前記の誘導株はCryX株の染色体背景を有し、または前記の誘導株はCryX株のvirプラスミドもしくは前記のvirプラスミドの派生物を含有する。
本発明は、DSM受託番号:DSM25686を有するアグロバクテリウムCryX株もしくはCryX株の誘導株、またはCryX株の、もしくは前記の誘導株のアグロバクテリウム細胞も提供し、ここで前記の誘導株はCryX株の染色体背景を有し、または前記の誘導株はCryX株のvirプラスミドもしくは前記のvirプラスミドの派生物を含有する。
本発明は、DSM受託番号:DSM25686を有するCryX株またはその誘導株のアグロバクテリウム細胞も提供し、前記の細胞は植物の細胞中にトランスフェクションされるべき対象のDNA配列をT−DNA中に含有するバイナリーベクターを含有し、ここでそのバイナリーベクターはCryX株からのVirGタンパク質または下記で定義されるような近縁のVirGタンパク質をコードしていてよい。
本発明はさらに、以下のものを含むキットを提供する:
−上記で定義したような、前記の株または前記の誘導株のアグロバクテリウム細胞、および
−植物の細胞中にトランスフェクションされるべき対象のDNA配列をT−DNA中に含有するバイナリーベクター。
そのバイナリーベクターは、CryX株からのVirGタンパク質または下記で定義されるような近縁のVirGタンパク質をコードしていてよい。
本発明は、CryX株のvirプラスミドおよびCryX株の染色体を有するアグロバクテリウム細胞も提供する。
本発明はさらに、DSM受託番号:DSM25686を有するアグロバクテリウムCryX株または(本明細書で定義されるような)CryX株の誘導株の水性細胞懸濁液を提供し、前記の懸濁液は最大で1.1・10cfu/懸濁液1ml、好ましくは最大で4.4・10cfu/懸濁液1ml、より好ましくは1.1・10cfu/懸濁液1mlの細胞濃度を有する。
本発明の発明者らは、アグロバクテリウムによる植物の一過性トランスフェクション効率を大きく増大させる方法を見出している。本発明者らは、多種多様な植物を用いたインプランタでの一過性トランスフェクションにおいて特に高い効率を達成するアグロバクテリウム株(アグロバクテリウムCryX株)を同定している。特に、CryX株は、植物の形質転換またはトランスフェクションに関する標準として用いられている他のアグロバクテリウム株、例えばLBA4404またはEHA105株(Plant Biotechnology, 第2版, Oxford University Press, 2008中のSlater et al.の64ページを参照)よりもはるかに高いインプランタでの一過性トランスフェクション効率を達成する。本発明者らはさらに、CryX株が関連するアグロバクテリウム株、例えばChry5/KYRT1よりも高い一過性トランスフェクション効率を達成することを見出している。さらに、本発明者らは、virG遺伝子、特にアグロバクテリウム株LBA4404からのvirG遺伝子またはLBA4404からのvirG遺伝子に近縁であるvirG遺伝子をクリソピン(chrysopine)またはスクシナモピン(succinamopine)型アグロバクテリウム・ツメファシエンス株中で発現させた場合に特に高いトランスフェクション効率を得ることができることを見出している。
図1Aおよび1Bは、実施例において用いられるベクターの対象のDNA配列を有するT−DNA領域を示している。Pact2:アラビドプシス(Arabidopsis)のアクチン2遺伝子のプロモーター;o:TVCV(カブ葉脈透化ウイルス(turnip vein clearing virus))からの5’末端;RdRp:cr−TMV(十字花科植物に感染するタバモウイルス)からのRNA依存性RNAポリメラーゼのオープンリーディングフレーム(ORF);MP:cr−TMVからの移動タンパク質のORF;N:cr−TMVからの3’非翻訳領域;Tnosまたはnos:ノパリンシンターゼのターミネーター;RdRpおよびMPのORF中の灰色の区間を遮る白色の区間は、植物細胞の細胞質中でのRNAレプリコンの形成の可能性を増大させるためにこれらのORF中に挿入されたイントロンを示しており、それは国際公開第2005049839号において詳細に記載されている;GUS:GUSタンパク質のコード配列;GFP:緑色蛍光タンパク質のコード配列;fs:細胞間移行能力を削除するレームフト(rame−hift);P35S:35Sプロモーター;P19:トマトブッシースタントウイルスの遺伝子サイレンシング抑制因子(Plant J. 33, 949-56を参照);Tocs:ocsターミネーター;LB:左側T−DNA境界;RB:右側T−DNA境界。 図1Aおよび1Bは、実施例において用いられるベクターの対象のDNA配列を有するT−DNA領域を示している。Pact2:アラビドプシス(Arabidopsis)のアクチン2遺伝子のプロモーター;o:TVCV(カブ葉脈透化ウイルス(turnip vein clearing virus))からの5’末端;RdRp:cr−TMV(十字花科植物に感染するタバモウイルス)からのRNA依存性RNAポリメラーゼのオープンリーディングフレーム(ORF);MP:cr−TMVからの移動タンパク質のORF;N:cr−TMVからの3’非翻訳領域;Tnosまたはnos:ノパリンシンターゼのターミネーター;RdRpおよびMPのORF中の灰色の区間を遮る白色の区間は、植物細胞の細胞質中でのRNAレプリコンの形成の可能性を増大させるためにこれらのORF中に挿入されたイントロンを示しており、それは国際公開第2005049839号において詳細に記載されている;GUS:GUSタンパク質のコード配列;GFP:緑色蛍光タンパク質のコード配列;fs:細胞間移行能力を削除するレームフト(rame−hift);P35S:35Sプロモーター;P19:トマトブッシースタントウイルスの遺伝子サイレンシング抑制因子(Plant J. 33, 949-56を参照);Tocs:ocsターミネーター;LB:左側T−DNA境界;RB:右側T−DNA境界。 図2は、異なるアグロバクテリウム・ツメファシエンス株のそれらの一過性トランスフェクション効率に関する比較を示す。写真は、実施例2で記載するように注射器でニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)の葉に希釈したアグロバクテリウム培養液を浸潤させた後のTMVに基づくGFP発現による紫外光下での4dpi(感染後の日数)のGFP蛍光を示す。数字10−2、10−3および10−4は、それぞれ10倍、10倍および10倍希釈に対応する600nmにおいてOD=1.3のアグロバクテリウムの一夜培養液の濃度因子を示す。浸潤のための緩衝液の組成は、5mM MES、pH5.5および10mM MgSOである。それぞれの浸潤は、同じ植物の3枚の独立した葉を用いて3重に(in triplicate)実施された。(A)細胞間移行が可能であるTMVに基づくベクター:TMV(MP)−GFP (pNMD560)(B)細胞間移行能力を欠くTMVに基づくベクター:TMV(fsMP)−GFP (pNMD570)。1 − アグロバクテリウム・ツメファシエンスAGL1株;2 − アグロバクテリウム・ツメファシエンスEHA105株;3 − アグロバクテリウム・ツメファシエンスGV3101株;4 − アグロバクテリウム・ツメファシエンスICF320株;5 − アグロバクテリウム・ツメファシエンスCryX株;6 − アグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404株;7 − アグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA9402株。 図2は、異なるアグロバクテリウム・ツメファシエンス株のそれらの一過性トランスフェクション効率に関する比較を示す。写真は、実施例2で記載するように注射器でニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)の葉に希釈したアグロバクテリウム培養液を浸潤させた後のTMVに基づくGFP発現による紫外光下での4dpi(感染後の日数)のGFP蛍光を示す。数字10−2、10−3および10−4は、それぞれ10倍、10倍および10倍希釈に対応する600nmにおいてOD=1.3のアグロバクテリウムの一夜培養液の濃度因子を示す。浸潤のための緩衝液の組成は、5mM MES、pH5.5および10mM MgSOである。それぞれの浸潤は、同じ植物の3枚の独立した葉を用いて3重に(in triplicate)実施された。(A)細胞間移行が可能であるTMVに基づくベクター:TMV(MP)−GFP (pNMD560)。(B)細胞間移行能力を欠くTMVに基づくベクター:TMV(fsMP)−GFP (pNMD570)。1 − アグロバクテリウム・ツメファシエンスAGL1株;2 − アグロバクテリウム・ツメファシエンスEHA105株;3 − アグロバクテリウム・ツメファシエンスGV3101株;4 − アグロバクテリウム・ツメファシエンスICF320株;5 − アグロバクテリウム・ツメファシエンスCryX株;6 − アグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404株;7 − アグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA9402株。 図3は、virG遺伝子の過剰発現のAGL1、EHA105、ICF320およびGV3101株に関する一過性トランスフェクション効率への影響を示す。N54D変異を有するGV3101およびLBA4404株からのvirG配列ならびにLBA4404株からの天然の配列を比較のために用いた。写真は、実施例3で記載するように注射器で3つの独立した植物からの同じ年齢のニコチアナ・ベンサミアナの葉に希釈したアグロバクテリウム培養液を浸潤させた後のTMVに基づくGFP発現による紫外光下での4(図3A)および6(図3B)dpiのGFP蛍光を示す。数字10−2、10−3および10−4は、600nmにおいてOD=1.3のアグロバクテリウムの一夜培養液の細胞濃度を低減させた因子を示す。従って、数字10−2、10−3および10−4は、それぞれ10倍、10倍および10倍希釈に対応する。浸潤のための緩衝液の組成:5mM MES、pH5.3および10mM MgCl。全ての場合で、細胞間移行が可能であるTMVに基づくベクターを用いた。1 − GV3101におけるpNMD560(virGなし);2 − GV3101におけるpNMD064(virGN54D/GV3101);3 − GV3101におけるpNMD063(virGN54D/LBA4404);4 − GV3101におけるpNMD062(virG/LBA4404);5 − ICF320におけるpNMD560(virGなし);6 − ICF320におけるpNMD064(virGN54D/GV3101);7 − ICF320におけるpNMD063(virGN54D/LBA4404);8 − ICF320におけるpNMD062(virG/LBA4404);9 − EHA105におけるpNMD560(virGなし);10 − EHA105におけるpNMD064(virGN54D/GV3101);11 − EHA105におけるpNMD063(virGN54D/LBA4404);12 − EHA105におけるpNMD062(virG/LBA4404);13 − AGL1におけるpNMD560(virGなし);14 − AGL1におけるpNMD064(virGN54D/GV3101);15 − AGL1におけるpNMD063(virGN54D/LBA4404);16 − AGL1におけるpNMD062(virG/LBA4404)。 図3は、virG遺伝子の過剰発現のAGL1、EHA105、ICF320およびGV3101株に関する一過性トランスフェクション効率への影響を示す。N54D変異を有するGV3101およびLBA4404株からのvirG配列ならびにLBA4404株からの天然の配列を比較のために用いた。写真は、実施例3で記載するように注射器で3つの独立した植物からの同じ年齢のニコチアナ・ベンサミアナの葉に希釈したアグロバクテリウム培養液を浸潤させた後のTMVに基づくGFP発現による紫外光下での4(図3A)および6(図3B)dpiのGFP蛍光を示す。数字10−2、10−3および10−4は、600nmにおいてOD=1.3のアグロバクテリウムの一夜培養液の細胞濃度を低減させた因子を示す。従って、数字10−2、10−3および10−4は、それぞれ10倍、10倍および10倍希釈に対応する。浸潤のための緩衝液の組成:5mM MES、pH5.3および10mM MgCl。全ての場合で、細胞間移行が可能であるTMVに基づくベクターを用いた。1 − GV3101におけるpNMD560(virGなし);2 − GV3101におけるpNMD064(virGN54D/GV3101);3 − GV3101におけるpNMD063(virGN54D/LBA4404);4 − GV3101におけるpNMD062(virG/LBA4404);5 − ICF320におけるpNMD560(virGなし);6 − ICF320におけるpNMD064(virGN54D/GV3101);7 − ICF320におけるpNMD063(virGN54D/LBA4404);8 − ICF320におけるpNMD062(virG/LBA4404);9 − EHA105におけるpNMD560(virGなし);10 − EHA105におけるpNMD064(virGN54D/GV3101);11 − EHA105におけるpNMD063(virGN54D/LBA4404);12 − EHA105におけるpNMD062(virG/LBA4404);13 − AGL1におけるpNMD560(virGなし);14 − AGL1におけるpNMD064(virGN54D/GV3101);15 − AGL1におけるpNMD063(virGN54D/LBA4404);16 − AGL1におけるpNMD062(virG/LBA4404)。 図4Aおよび4Bは、virG遺伝子の過剰発現のGV3101およびCryX株の一過性トランスフェクション効率への影響を示す。N54D変異を有するGV3101およびLBA4404株からのvirG配列ならびにLBA4404株からの天然の配列を比較のために用いた。写真は、実施例3で記載するように注射器で3つの独立した植物からの同じ年齢のニコチアナ・ベンサミアナの葉に希釈したアグロバクテリウム培養液を浸潤させた後のTMVに基づくGFP発現による紫外光下での3、4および5dpiのGFP蛍光を示す。数字10−4および10−5は、600nmにおいてOD=1.3のアグロバクテリウムの一夜培養液の濃度因子を示す。浸潤のための緩衝液の組成:5mM MES、pH5.3および10mM MgCl。細胞間移行が可能であるTMVに基づくベクターを用いた。1 − GV3101株におけるpNMD560(virGなし);2 − GV3101株におけるpNMD064(virGN54D/GV3101);3 − GV3101株におけるpNMD063(virGN54D/LBA4404);4 − CryX株におけるpNMD560(virGなし);5 − CryX株におけるpNMD064(virGN54D/GV3101);6 − CryX株におけるpNMD063(virGN54D/LBA4404)。 図4Aおよび4Bは、virG遺伝子の過剰発現のGV3101およびCryX株の一過性トランスフェクション効率への影響を示す。N54D変異を有するGV3101およびLBA4404株からのvirG配列ならびにLBA4404株からの天然の配列を比較のために用いた。写真は、実施例3で記載するように注射器で3つの独立した植物からの同じ年齢のニコチアナ・ベンサミアナの葉に希釈したアグロバクテリウム培養液を浸潤させた後のTMVに基づくGFP発現による紫外光下での3、4および5dpiのGFP蛍光を示す。数字10−4および10−5は、600nmにおいてOD=1.3のアグロバクテリウムの一夜培養液の濃度因子を示す。浸潤のための緩衝液の組成:5mM MES、pH5.3および10mM MgCl。細胞間移行が可能であるTMVに基づくベクターを用いた。1 − GV3101株におけるpNMD560(virGなし);2 − GV3101株におけるpNMD064(virGN54D/GV3101);3 − GV3101株におけるpNMD063(virGN54D/LBA4404);4 − CryX株におけるpNMD560(virGなし);5 − CryX株におけるpNMD064(virGN54D/GV3101);6 − CryX株におけるpNMD063(virGN54D/LBA4404)。 図5は、ニコチアナ・ベンサミアナの葉の注射器での浸潤を用いた、10−3から10−7までのアグロバクテリウムの一夜培養液の希釈の範囲における、CryXおよびGV3101株に関する一過性トランスフェクション効率の比較を示す。数字10−3、10−4、10−5、10−6および10−7は、600nmにおいてOD=1.3のアグロバクテリウムの一夜培養液の濃度因子を示す。これらはそれぞれ10、10、10、10および10倍希釈に対応する。浸潤のための緩衝液の組成:水中5mM MES、pH5.3および10mM MgCl。写真は4dpiにおいて撮影される。1 − GV3101株におけるpNMD560 (virGなし);2 − GV3101株におけるpNMD064 (virGN54D/GV3101);3 − GV3101株におけるpNMD063 (virGN54D/LBA4404);4 − CryX株におけるpNMD560 (virGなし);5 − CryX株におけるpNMD064 (virGN54D/GV3101);6 − CryX株におけるpNMD063 (virGN54D/LBA4404)。 図6は、アグロバクテリウム細胞の懸濁液の噴霧を用いたダイズの一過性トランスフェクションに関する異なるアグロバクテリウム株の試験の結果を示す。pNMD2190コンストラクト(プラスミドのバックボーン中の35S:GUS;35S:p19およびvirGN54D/LBA4404)を、AGL1、EHA105、CryXおよびLBA4404株と共に用いた;pNMD2180コンストラクト(プラスミドのバックボーン中の35S:GUS;35S:p19およびvirGN54D/GV3101)を、GV3101およびICF320株と共に用いた。GUS活性に関する葉の染色を11dpsにおいて実施した。(A)噴霧のため、OD600=1.3の液体アグロバクテリウム培養物を5mM MES、pH5.3;10mM MgClおよび0.05%(v/v)Tween(登録商標)20を含有する緩衝液で1:10の比率で希釈した。(b)噴霧のため、OD600=1.3の液体アグロバクテリウム培養物を、サイズ800の炭化ケイ素粒子を0.3%(w/v)の濃度で補った(5mM MES、pH5.3;10mM MgClおよび0.05%(v/v)Tween(登録商標)20)を含有する緩衝液で1:10、1:100および1:1000の比率で希釈した。 図6は、アグロバクテリウム細胞の懸濁液の噴霧を用いたダイズの一過性トランスフェクションに関する異なるアグロバクテリウム株の試験の結果を示す。pNMD2190コンストラクト(プラスミドのバックボーン中の35S:GUS;35S:p19およびvirGN54D/LBA4404)を、AGL1、EHA105、CryXおよびLBA4404株と共に用いた;pNMD2180コンストラクト(プラスミドのバックボーン中の35S:GUS;35S:p19およびvirGN54D/GV3101)を、GV3101およびICF320株と共に用いた。GUS活性に関する葉の染色を11dpsにおいて実施した。(A)噴霧のため、OD600=1.3の液体アグロバクテリウム培養物を5mM MES、pH5.3;10mM MgClおよび0.05%(v/v)Tween(登録商標)20を含有する緩衝液で1:10の比率で希釈した。(b)噴霧のため、OD600=1.3の液体アグロバクテリウム培養物を、サイズ800の炭化ケイ素粒子を0.3%(w/v)の濃度で補った(5mM MES、pH5.3;10mM MgClおよび0.05%(v/v)Tween(登録商標)20)を含有する緩衝液で1:10、1:100および1:1000の比率で希釈した。 図7は、アグロバクテリウム細胞の懸濁液の噴霧を用いたワタ(Gossipium hirsutum L.)の一過性トランスフェクションに関するCryXおよびEHA105株の試験結果を示す。噴霧のため、OD600=1.3の液体アグロバクテリウム培養物を5mM MES、pH5.3;10mM MgClおよび0.25%(v/v)Silwet L−77を含有する緩衝液で1:10の比率で希釈した。試験に関して、コンストラクトpNMD1971(35S:GUS;35S:p19)、pNMD2180(そのプラスミドのバックボーン中の35S:GUS;35S:p19およびvirGN54D/GV3101)およびpNMD2190(そのプラスミドのバックボーン中の35S:GUS;35S:p19およびvirGN54D/LBA4404)を用いた。GUS活性試験を6dpsにおいて実施した。 図8は、細胞間移行が可能なTMVに基づくベクター(TMV−GFP、pNMD560ベクター)を用いた異なる実験室から得たアグロバクテリウム・ツメファシエンスChry5/KYRT1株の2種類の系統種の比較を示す。写真は、実施例8で記載するように注射器でニコチアナ・ベンサミアナの葉に希釈した600nmにおいてOD=1.3のアグロバクテリウムの一夜培養液を浸潤させた後のTMVに基づくGFP発現による紫外光下での4dpi(感染後の日数)のGFP蛍光を示す。ケンタッキー大学(米国レキシントン)のDr.G.Collinsの研究室から得た株を、それぞれの葉の右側上に浸潤させる。細胞生物学および遺伝子工学研究所(ICBGE、ウクライナ、キエフ)からの系統種を、それぞれの葉の左側上に浸潤させる。浸潤のための緩衝液の組成は、5mM MES、pH5.5および10mM MgSOである。それぞれの浸潤を、同じ植物の3枚の独立した葉を用いて3重に実施した。1 − ICBGEの系統種、濃度因子10−1(10倍希釈);2 − ICBGEの系統種、濃度因子10−2;3 − ICBGEの系統種、濃度因子10−3;4 − ケンタッキー大学の系統種、濃度因子10−1;5 − ケンタッキー大学の系統種、濃度因子10−2;6 − ケンタッキー大学の系統種、濃度因子10−3
本発明において、特定のクラスのアグロバクテリウム・ツメファシエンス株を植物、例えば植物上の葉の一過性トランスフェクションのために用いる。このクラスのアグロバクテリウムは、A.ツメファシエンスCryX株および下記で定めるようなその誘導株を含む。CryX株は、2012年2月23日にブダペスト条約の下でDSMZ−ドイツ微生物細胞培養コレクション(有限会社)、インホッフェンシュトラッセ7B、38124 ブラウンシュヴァイク、ドイツに寄託された。受託番号DSM25686がそれに割り当てられた。CryX株は染色体に組み込まれたリファンピシン耐性を有する。
CryX株は、1991年にBuschおよびPuepkeにより同定されたクリュサンテムム・モリフォリウム(Chrysanthemum morifolium)由来のアグロバクテリウム株Chry5に関連する。彼らの論文において、その株は伝統的な生物型試験により生物型Iであること、およびそれは少なくとも10の植物種において腫瘍をもたらすことが示されている。それは、ダイズ(Glycine max)上に効率的に大きい腫瘍を形成するその能力のために異常であると特性付けられ、この理由のため、それは続いて様々なグループによりいくつかの論文においてさらに特性付けられてきた。Chry5はオクトピンまたはマンノピンを炭素源として利用することができず;代わりにそれはそれぞれの単一の異性体であるノパリンおよびスクシナモピンを代謝することができ、同時にそれはアグロシン84に非感受性である(Busch & Puepke, 1991)。加えて、Chry5株に誘導される腫瘍はアマドリ型(Amadori−type)オピン類のファミリーを生成し、それにはデオキシフルクトシルグルタミン(Dfg)およびそのラクトンであるクリソピン(Chy)が含まれる(Palanichelvam et al., 2000)。Chry5の分離株は少なくとも2個のプラスミドを含有することが示されており、1つはpTiB6との相同性を有する。Toriskyら(1997)は、Chry5株の285kbのTiプラスミドから約4kbの腫瘍原性T−DNAが含まれる約16.5kbの区間を相同組換えにより除去することにより、その株を部分的に武装解除した(disarmed)。KYRT1と名付けられたこの欠失変異体は効率的なベクター生物であることが示されており、この部分的に武装解除されたChry5株の誘導株は、それ以来一部の研究者により用いられてきた。より最近、Palanichelvametら(2000)は完全に武装解除された誘導株を開発した。
本発明につながった研究において、本発明者らは、異なる研究室から得たChry5/KYRT1の2種類の系統種を最初に試験した。Dr.G.Collinsの研究室から得た株(Torisky et al., 1997)は我々の一過性試験において標準的な比較株EHA105およびGV3101を超える優位性を一切示さず、さらなる研究から除外された。一方で、細胞生物学および遺伝子工学研究所(キエフ、ウクライナ)からの系統種は、その一過性トランスフェクションおよび発現効率において異常に活性であることが分かっており、本発明において用いられてきた。この後者の系統種は、ブダペスト条約下で公式の寄託機関であるDSMZ−ライプニッツ研究所−ドイツ微生物細胞培養コレクション(有限会社)、ブラウンシュヴァイク、ドイツにおいて、それに関する明確な由来の情報がない事実を反映した名称CryXの下で寄託された。
原著論文およびそれに続く論文は、Chry5株をより詳細に特性付けている。これらの研究は、その株の分子生物学および遺伝学、ならびにその腫瘍を誘導する、異なる植物種の遺伝子形質転換を引き起こす他と比較した能力、ならびにそのアグロバクテリウムで処理した外植片において一過性発現を引き起こす能力の標準的な特性付けを目的とした。これらの研究の結果が下記で簡潔に要約されている。
アグロバクテリウム・ツメファシエンスChry5を特性付けるために用いた比較の方法
1.腫瘍原性に関するデータ
BushおよびPuepkeの原著論文(1991)では、Chry5株は7の植物ファミリーを代表する10の植物種において腫瘍を引き起こすことができることが確証されている。その試験には、この株対一般的な実験室株B6により引き起こされた腫瘍を有する植物の数の半定量的評価が含まれていた。9種の内の6種(テンサイ、カランコエ、マリーゴールド、ヒマワリ、タバコおよびトマト)において、その株の間で腫瘍形成能における有意な差はなかった。コラードではChry5はおおよそ2倍効率的であり、ダイズではおおよそ3倍効率的であり、一方でエンドウマメではそれはB6よりもいくらか非効率的であった。Toriskyら(1997)は、タバコおよびトマトの茎における腫瘍形成に関する追加のデータを提供し;この研究において、Chry5株およびその部分的に武装解除された誘導株KYRT1が形質転換研究においてしばしば用いられる2種類の他のアグロバクテリウム株と比較され、それにはC58染色体背景中にBo542 Tiプラスミドを含有するスクシナモピン型株であるA281およびその武装解除された誘導株EHA105株が含まれていた。その研究において、元のChry5および用いられた他のスクシナモピン株A281は両方とも高度に腫瘍形成性であるが、部分的に無力化された(disabled)誘導株KYRT1およびEHA105は活性ではなかったことが示されている。
2.部分的に無力化された、および完全に無力化された株を用いた形質転換効率に関するデータ
Toriskyら(1997)は、KYRT1はベータグルクロニダーゼ(GUS)遺伝子をタバコの葉の外植片中に首尾よく移してGUSを発現するカルスを生成し、それを生存可能な植物へと再生することができることを実証した。これらの実験において、KYRT1株の形質転換効率はEHA105に関して示された効率とおおよそ同じであった。Grantら(2003)は、KYRT1株は、評価に関して3つの異なる植物の遺伝子型の子葉の外植片を用いるエンドウマメのトランスジェニック植物の生成に関して、AGL1よりも平均で3倍効率的であることを見出した。
Palanichelvamら(2000)の研究において、KYRT1誘導株は部分的にしか武装解除されておらず、腫瘍原性のT右側領域の全部およびT左側領域の断片を含有することが示されている。しかし、完全に武装解除されたTiプラスミドpKPSF2を有するChry5誘導株(Palanichelvam et al., 2000)は、そのKYRT1株は植物の外植片に対してダイズにおける体細胞性胚形成を増進するいくらかのホルモン性作用を保持しているため、ダイズの安定な形質転換に関して有効性がより低かった(Ko et al., 2004)。
3.一過性活性を特性付けるデータ
また、Toriskyら(1997)は、ダイズの子葉の節の外植片におけるGUS発現の定量アッセイを用いることにより、Chry5誘導株KYRT1により引き起こされるβ−グルクロニダーゼ導入遺伝子の一過性発現を最初に研究した。これらのデータは、KYRT1誘導株はEHA105またはGV3850と比較した場合に一過性発現の誘発においておおよそ2.5倍効率的であることを示した。KYRT1は、不応性の(recalcitrant)マメ科植物であるレンズマメ(Lens culinaris M.)の子葉の葉柄における一過性β−グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子(gus)発現の生成に関して、EHA105およびC58C1よりも平均で2.8倍効率的であった(Akcay et al., 2009)。Akbulutら(2008)は、傷付けた実生由来の外植片における、KYRT1ならびに2種類の他の一般的なベクターであるC58C1およびEHA105による処理後のGUS活性を測定した。GUSを発現するスポットの定量的評価は、吸水(imbibition)の16時間後にKYRT1およびC58C1の間に統計的に有意な差はなく、40時間後にKYRT1は約50%優れていたが、2つの測定点の1つにおいてのみであることを示した。
上記で言及したデータのそのままでの解釈は、異なる著者が異なる植物種、異なる植物の外植片、異なるアグロバクテリウムの株を比較に関して使用し、彼らの結論を3つの異なる活性の方法:腫瘍形成活性、遺伝子形質転換の効率、および一過性発現の効率に基づいて出しているため、困難である。植物細胞およびアグロバクテリウムの相互作用のプロセスは非常に複雑であり、それはT−DNA−タンパク質複合体の移動、VirE2のようなタンパク質の(別々の分泌系による)移動、植物細胞におけるT−DNA遺伝子の一過性発現、発現した遺伝子のホルモン性作用、一部のT−DNA分子の植物の染色体DNA中への組み込み等を含む。これらの中間プロセスのいずれも最終結果に影響を及ぼす可能性があり;従って、腫瘍形成能に関するデータおよび形質転換効率に関するデータは、T−DNAの移動および一過性発現の効率に関する情報を与えない。一方で、一過性活性に関する示されたデータは限られており、観察されたわずかな差は決定的ではなく、実際的に関連してもいない。
本明細書で記載されるプロセスおよび株ならびに上記で記載された先行技術で用いられる方法における主な違いは、一過性発現研究に関して用いられる植物材料の異なる生物学である。全ての以前の著者らは、分裂組織に富むインビトロで培養された、または切り取った植物外植片(最終的な目的は、植物細胞を形質転換し、前記のトランスジェニック細胞から全草を再生する能力である)、例えば切り取った胚、若い実生の一部等を用いたが、本発明はアグロバクテリウムと異なる方式で相互作用する完全な発生した植物の一過性トランスフェクションに関する。全草において、アグロバクテリウムは(他の器官および分裂組織には存在しない)気孔を介して葉に入り、植物外植片上の傷を介しては入らない。前に言及したように、全ての著者は例外なく植物外植片を処理する際に高い細菌密度を用いていた。
本発明の株CryXはvirプラスミドを含有し、それは少なくとも部分的に武装解除されている。“武装解除されている”は、そのvirプラスミドおよびその宿主であるアグロバクテリウムが腫瘍原性ではない、すなわちそれが腫瘍遺伝子またはオピン類の産生のための遺伝子を、それがそのような遺伝子を含有しないか、またはそのような遺伝子を移すことができないかのどちらかのために、植物細胞中に挿入しないことを意味する。virプラスミドはT−DNAの植物細胞中への移動に必要なvir遺伝子(病原性遺伝子)を含む。vir遺伝子およびT−DNAの移動におけるそれらの機能は当該技術において既知であり、例えばSlater et al., Plant Biotechnology, 第2版; Oxford University Press, 2008の本において要約されている;Hellens et al., Trends in Plant Science 5 (2000) 446-451も参照。
本発明のCryX株はバイナリー株(binary strain)であり、すなわちT−DNAの植物細胞中への移動に必要なvir遺伝子およびT−DNAが別のプラスミド上にある(例えば、バイナリーアグロバクテリウム株およびベクター系に関するSlaterらの本およびHellensらの論文を参照)。バイナリーアグロバクテリウム株の文脈において、vir遺伝子を含有するプラスミドは本明細書において“virプラスミド”または“virヘルパープラスミド”と呼ばれる。トランスフェクションされるべきT−DNAを含有するプラスミドは、“ベクター”または“バイナリーベクター”と呼ばれる。用語“株”または“アグロバクテリウム株”は、そのバイナリーベクター以外のアグロバクテリウムの構成要素に関する。従って、本明細書において、バイナリーベクターを含有しないバイナリーアグロバクテリウム株およびバイナリーベクターの導入後のバイナリーアグロバクテリウム株は同じ株の名前により言及される。寄託されたCryX株はvirプラスミドを含有するが、バイナリーベクターは含有しない。
本発明は、CryX株の誘導株にも関する。態様(i)において、CryX株の誘導株はCryX株の染色体背景を有する。それはCryXと同じ染色体を有していてよい。別の態様(ii)において、CryX株の誘導株はCryX株のvirプラスミドを含有する。さらなる態様(iii)において、CryX株の誘導株はCryX株のvirプラスミドの派生物を含有し、CryX株の染色体を有していてよい。態様(ii)において、その株はバイナリー株であり、本発明の方法において、対象のT−DNAを含有するバイナリーベクターの導入後に用いられる。態様(i)および(iii)において、その株はバイナリー株であってよい。それらがバイナリー株である場合、それらは本発明の方法において対象のT−DNAを含有するバイナリーベクターの導入後に用いられる。あるいは、態様(i)および(iii)において、本発明の方法において植物細胞中に移されるべきT−DNAは、そのvir遺伝子およびT−DNAが1つの同じプラスミド分子上に存在するようにそのvirプラスミド中に挿入することができる。しかし、バイナリー株を用いることが一般により好都合であり、従って好ましい。
用語“染色体背景”は、アグロバクテリウムの形質転換またはトランスフェクションの技術分野における標準的な用語である(Hellens et al., Trends in Plant Science 5 (2000) 446-451参照)。それは、前記のアグロバクテリウム株のTiプラスミド、virヘルパープラスミドおよびバイナリーベクター以外の遺伝物質に関する。1態様において、CryX株の誘導株はCryX株と同じ染色体を有する。CryX株の染色体背景を有する誘導株は、例えばvirプラスミドにおいてCryXのvirプラスミドと比較して、CryXと異なっていてよい。従って、CryX株の誘導株は、CryX株のvirプラスミドの派生物であるvirプラスミドを含有していてよい。
CryX株の染色体と同一でない染色体を有する所与のアグロバクテリウム株がCryX株の染色体背景を有するかどうかは、CryX株のバイナリーベクターを含有するT−DNAからのT−DNA移動効率(またはトランスフェクション効率)を、CryXのvirプラスミドおよび同じバイナリーベクターを含有する試験すべき株と比較することにより、実験的に試験することができる。その試験すべき株は、それがCryX株のT−DNA移動効率の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%を達成する場合、CryXの染色体背景を有すると考えられる。トランスフェクション効率は実施例2において記載されるように決定することができる。あるいは、トランスフェクション効率はpNMD570のような細胞間移行することができないTMVウイルスレプリコンをコードしているバイナリーベクターを用いることを除いて実施例2におけるように決定することができる。T−DNA移動効率は、国際公開第2005049839号において記述されるように、プロトプラスト計数により決定することもできる。1態様において、CryX株の染色体背景を有するアグロバクテリウム株の染色体は、塩基配列がCryX株の塩基配列と同じである染色体を有する。
CryX株のvirプラスミドの派生物は、CryX株と同じ染色体を有するアグロバクテリウム細胞中に存在する場合、類似のT−DNAのこれらの細胞中に存在するT−DNA含有バイナリーベクターから植物細胞中への移動の効率を達成する。この目的のため、その派生virプラスミドは、CryX株のvirプラスミドのvir領域に十分に類似したvir領域を有する。その派生virプラスミドは、CryX株のvirGタンパク質または近縁のvirGタンパク質をコードしていてよい。好ましくは、その派生virプラスミドはCryX株のvirG遺伝子を含有している。1態様において、その派生virプラスミドは、以下のCryXの病原性タンパク質:VirA、VirG、VirB1−BirB11、VirC1、VirD1、VirD2、VirD4、VirE1、VirE2、VirFおよびVirJの少なくとも2つをコードしている遺伝子を含有する。さらなる態様において、派生virプラスミドは、少なくとも以下のCryXの病原性タンパク質:VirA、VirG、VirD2、およびVirE2をコードしている遺伝子を含有する。さらなる態様において、派生virプラスミドはvir領域全体、すなわちCryX株のvirプラスミドの全てのvir遺伝子を含有する。その派生virプラスミドは、プラスミドのバックボーンにおいてCryXのvirプラスミドと異なっていてよい。例えば、その派生virプラスミドは異なる、もしくは追加の選択マーカー遺伝子を有していてよく、またはそのvir領域の外側からさらなる核酸部分を欠失したものであってもよい。1態様において、その派生virプラスミドは、特にその誘導株がCryXと同じ染色体を有する場合、pKYRT1(米国特許第5,929,306号)である。
所与のvirプラスミドが本発明の意味での派生virプラスミドであるかどうかは、CryX株のアグロバクテリウムおよび試験すべきvirプラスミドを除いてCryX株の染色体を有するアグロバクテリウムの間のT−DNA含有バイナリーベクターからのT−DNA移動効率をその他の点では同一の条件の下で比較することにより、実験的に試験することができる。1態様において、本発明に従う派生プラスミドを含有するアグロバクテリウムは、CryX株のT−DNA移動効率の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%を達成する。移動効率は実施例2において記載されるように、および上記で言及したように決定することができる。
CryXのvirGタンパク質に“近縁のvirGタンパク質”は、最大で3個の非保存的アミノ酸置換において、または最大で6個、好ましくは最大で3個の保存的アミノ酸置換においてCryXのvirGタンパク質と異なるvirGタンパク質を意味する。その非保存的アミノ酸置換は、アグロバクテリウムLBA4404株からのVirGタンパク質であるSEQ ID NO:1のアミノ酸配列の6、7または106位に対応する位置においてであってよく、全ての他のアミノ酸残基はSEQ ID NO:1における通りである。加えて、その近縁のvirGタンパク質は、SEQ ID NO:1の54位に対応する位置においてアスパラギンのアスパラギン酸への置換を有していてよい。その保存的アミノ酸置換は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列の6、7および/または106位においてであってよい。
本明細書において、保存的置換は、以下の4つの群のそれぞれの内でのアミノ酸残基の置換である:
− Ala、Pro、Gly、Glu、Asp、Gln、Asn、Ser、Thr
− Val、Ile、Leu、Met
− Lys、Arg、His
− Phe、Tyr、Trp
全ての他のアミノ酸残基の置換は非保存的であると考えられる。
本明細書において、“対象のT−DNA”は、T−DNAの左側および右側境界配列の間に対象のDNA配列を含有するDNAである。対象のT−DNAは、virプラスミド、例えばCryX株のvirプラスミド中に存在していてよく、またはサブクローニングにより組み込まれていてよい。本発明の方法において、バイナリーベクター系を用いることが好ましい。従って、対象のT−DNAは好ましくはバイナリーベクター中に存在する、または組み込まれるであろう。
本発明において用いられるべきバイナリーベクターは、植物細胞中にトランスフェクションされるべき対象のDNA配列を含むDNA分子である。対象のDNA配列は、典型的にはトランスフェクションされた植物の細胞中で発現されるべきタンパク質またはRNAをコードしている。そのバイナリーベクターは一般に、アグロバクテリウムに媒介される植物のトランスフェクションにおいて一般的に行われるように、対象のDNA配列を含有する核酸コンストラクトを前駆体バイナリーベクターのT−DNA内のクローニング部位中に挿入またはクローニングすることにより生成される。前記の挿入後、その核酸コンストラクトは前記の植物の前記のT−DNAによるトランスフェクションを可能にするためにT−DNAの左側および右側境界配列に隣接されている。バイナリーベクターのT−DNAにおいて、対象のDNA配列は、例えば植物細胞中で発現可能であるように存在する。この目的のため、対象のDNA配列は、例えば前記の核酸コンストラクト中で、典型的には植物細胞中で活性なプロモーターの制御下にある。対象のDNA配列の例は、DNAウイルスレプリコンまたはRNAウイルスレプリコンまたは発現させるべき遺伝子をコードするDNA配列である。その遺伝子は、植物(単数または複数)の細胞中で発現させるべき対象のRNAまたは対象のタンパク質をコードしていてよい。また、そのウイルスレプリコンは典型的には植物中で発現させるべき対象のRNAまたはタンパク質をコードしている。そのDNAコンストラクトは、対象のDNA配列に加えて、他の配列、例えば対象のDNA配列の発現のための制御配列を含んでいてよい。本発明において使用可能なバイナリーベクターは、例えば導入において引用した参考文献から、または植物バイオテクノロジーに関する教科書、例えばSlater, Scott and Fowler, Plant Biotechnology, 第2版, Oxford University Press, 2008から当業者には既知である。そのバイナリーベクターは、典型的には大腸菌のような細菌中での選択を可能にするための抗生物質耐性遺伝子を有する。
トランスフェクション効率を増大させるため、そのバイナリーベクターはT−DNAの外側に前記のアグロバクテリウム株中で発現可能なvirG遺伝子を含んでいてよい。あるいは、追加のプラスミドが前記のアグロバクテリウム株中に挿入されていてよく、それにより前記の追加のプラスミドは前記のアグロバクテリウム株中で発現可能なvirG遺伝子を含有する(Pazour et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88 (1991) 6941-6945)。そのvirG遺伝子は、好ましくはアグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404株からのVirGタンパク質または近縁のVirGタンパク質をコードしている。さらに、そのVirGタンパク質は、SEQ ID NO:1、すなわちA.ツメファシエンスLBA4404株からのVirGタンパク質の54位に対応する位置においてN54D変異を有していてよい。別のアグロバクテリウム株からのVirGタンパク質におけるN54D変異がJung et al., Current Microbiology 49 (2004) 334-340により記載された。
その近縁のVirGタンパク質は、
(i)SEQ ID NO:1のアミノ酸配列の、もしくはSEQ ID NO:1のアミノ酸配列のN54D変異体のアミノ酸配列の少なくとも235個、好ましくは少なくとも239個の連続するアミノ酸を含むタンパク質;または
(ii)SEQ ID NO:1もしくはそのN54D変異体のアミノ酸配列の3個より多くない非保存的アミノ酸置換および10個より多くない保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むタンパク質;または
(iii)SEQ ID NO:1もしくはそのN54D変異体のアミノ酸配列の20個より多くない、好ましくは10個より多くない保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むタンパク質。
項目(ii)および(iii)において、前記のタンパク質は好ましくはSEQ ID NO:の54位に対応する位置においてアスパラギンまたはアスパラギン酸残基を有する。
上記で言及した態様における保存的アミノ酸置換に関する可能な位置は、SEQ ID NO:1の6、7、18、35、38、42、44、66、69、73、81、86、89、97、106、107、122、124、133、135、143、147、150、165、188、208、212、213、232、235、および238位であり、一方で他の位置のアミノ酸残基はSEQ ID NO:1における通りのアミノ酸残基である。非保存的置換に関する可能な位置は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列の6、7および106位である。
タンパク質またはRNAの強い発現が望まれる、またはウイルス核酸の前記の植物の細胞中における高い量までの蓄積および可能性のある植物の健康状態への負の作用が懸念ではない態様において、対象の核酸コンストラクトまたはDNA配列は植物細胞中で複製されることができる複製ウイルスベクターをコードしていてよい。複製されるために、そのウイルスベクターは植物細胞中に存在する核酸ポリメラーゼにより、例えばそのレプリコンから発現されるウイルスのポリメラーゼにより認識されることができる複製起点を含有する。RNAウイルスベクターの場合、そのウイルスのレプリコンは、植物のプロモーターの制御下でのDNAコンストラクトからの転写により、後者が植物細胞核中に導入された後に形成されてよい。DNAウイルスレプリコンの場合、そのウイルスレプリコンは、例えば国際公開第00/17365号および国際公開第99/22003号において記載されているように、DNAコンストラクト中のそのウイルスレプリコンをコードしている配列に隣接する2つの組換え部位の間の組換えにより形成されてよい。ウイルスレプリコンがDNAコンストラクトによりコードされている場合、RNAウイルスレプリコンが好ましい。DNAおよびRNAウイルスレプリコンの使用は、少なくとも過去15年間にわたって文献において広範に記載されてきた。一部の例は、Icon Geneticsによる以下の特許公開である:国際公開第2008028661号、国際公開第2007137788号、国際公開第2006003018号、国際公開第2005071090号、国際公開第2005049839号、国際公開第02097080号、国際公開第02088369号、および国際公開第02068664号。DNAウイルスベクターの例は、ジェミニウイルスに基づくDNAウイルスベクターである。本発明に関して、植物のRNAウイルスに基づく、特にプラス−センス一本鎖RNAウイルスに基づくウイルスベクターまたはレプリコンが好ましい。そのようなウイルスベクターの例は、実施例において用いられるタバコモザイクウイルス(TMV)およびポテックスウイルスX(PVX)である。ポテックスウイルスに基づくウイルスベクターおよび発現系は、欧州特許第2061890号において記載されている。多くの他の植物のウイルスレプリコンが上記で言及した特許公開において記載されている。
本発明の方法を実施する場合、T−DNA中に対象のDNA配列を含有するバイナリーベクターを、virプラスミドまたはその派生物を含有するアグロバクテリウム株中に、一般に用いられる方法、例えば電気穿孔法により導入することができる。次いでそのバイナリーベクターを含有する株の培養物を、適切な培地中で、典型的にはそのバイナリーベクターを含有するアグロバクテリウム細胞を選択するための選択薬剤の存在下で増殖させ、場合により所望の量のそのアグロバクテリウム細胞を含む水性懸濁液を生成するために二次培養する。得られた懸濁液を水、適切な緩衝液または培地により所望の濃度に希釈し、植物またはその植物上の葉にトランスフェクションするために用いることができる。あるいは、そのT−DNAがそのvirプラスミドの一部である場合、そのvirプラスミドを含有するT−DNAをアグロバクテリウム中に、一般に用いられる方法、例えば電気穿孔法により導入し、さらにそのバイナリー系に関して記載されているように処理する。
本発明の方法において、インプランタトランスフェクションが用いられる。インプランタは、そのプロセスが、切り取られた、またはインビトロで培養された植物組織または器官に対してではなく、幼苗期後の生きた植物全体に対して、好ましくは完全に発生した植物に対して実施されることを意味する。好ましくは、そのプロセスは並行して多くの植物に、例えば野外で成長している植物に適用される。
前記の植物を、真空の適用を含む、または含まない浸潤により、アグロバクテリウム細胞の懸濁液と接触させることができる。1態様において、特に並行して多くの植物に適用する場合、その植物を噴霧により懸濁液と接触させることができる。本発明の方法において用いられる水性懸濁液は、最大で1.1・10cfu/mlの濃度のアグロバクテリウム細胞を有していてよく、それはおおよそ1の600nmにおける光学密度のLB培地中でのアグロバクテリウム培養液に対応する。しかし、本発明において達成される高いトランスフェクション効率のため、はるかに低い濃度を用いることができ、それはアグロバクテリウム生成のための巨大な発酵槽を必要としない多くの植物、例えば圃場全体の処理を可能にする。従って、その濃度は好ましくは最大で2.2・10cfu/ml、より好ましくは最大で1.1・10cfu/ml、より好ましくは最大で4.4・10cfu/mlである。1態様において、その濃度は最大で1.1・10cfu/懸濁液1mlである。さらなる態様において、その濃度は最大で4.4・10cfu/懸濁液1mlであり、さらなる態様において、その濃度は最大で1.1・10cfu/懸濁液1mlである。
cfu/mlの単位での細胞濃度の決定を避けるため、アグロバクテリウム懸濁液の濃度はしばしば分光光度計を用いて600nmにおける見かけの光学密度を測定することにより評価される。本明細書において、1.1・10cfu/mlの濃度は0.01の600nmにおける計算された光学密度に対応し、それによりその計算された光学密度は1.0の600nmにおける光学密度を有する懸濁液の水または緩衝液による100倍希釈により定義される。同様に、その懸濁液の4.4・10cfu/ml、1.1・10cfu/ml、4.4・10cfu/mlおよび1.1・10cfu/mlの濃度はそれぞれ0.004、0.001、0.0004、および0.0001の600nmにおける計算された光学密度に対応し、それによりその計算された光学密度は1.0の600nmにおける光学密度を有する懸濁液の水または緩衝液によるそれぞれ250倍、1000倍、2500倍、または10000倍希釈により定義される。
従って、特に好ましい態様において、本発明は、対象のDNA配列を植物において一過性発現させる方法およびそのためのアグロバクテリウム細胞懸濁液であって、前記の植物または前記の植物上の前記の葉をCryX株またはCryX株の誘導株のアグロバクテリウム細胞を含む懸濁液と接触させることを含む方法およびそのためのアグロバクテリウム細胞懸濁液を提供し、ここで前記の誘導株はCryX株の染色体背景を有し、または前記の誘導株はCryX株のvirプラスミドもしくは前記のvirプラスミドの派生物を含有し、ここで前記の懸濁液は前記の2つの段落のいずれか1つで言及された最大アグロバクテリウム細胞濃度のいずれかを有する。この態様において、そのアグロバクテリウム株は、好ましくは前記のCryX株または前記の誘導株中で発現可能なvirG遺伝子を含むバイナリーベクターを含有するバイナリー株である。前記のvirG遺伝子は、SEQ ID NO:1のアグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404株からのVirGタンパク質をコードしていてよく、またはアグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404株からのvirG遺伝子によりコードされるVirGタンパク質のN54D変異体である。
トランスフェクション効率を増大させるためにその懸濁液中に研磨剤を含ませることが可能である。その研磨剤は、アグロバクテリウム細胞の水性懸濁液中で本質的に不溶性である粒状物質である。その研磨剤は、特に湿潤剤と一緒に用いられる場合、植物組織、例えば葉の表面を弱め、それによりアグロバクテリウム細胞の植物組織の細胞間隙中への浸透を促進すると信じられている。本発明において用いることができる可能な研磨剤、その粒径、濃度および可能な商業製品に関して、国際公開第2012/019669号として公開されている国際特許出願への参照がなされ、この公開の研磨剤に関する開示が本明細書に援用される。
本発明の水性懸濁液は、農業用噴霧補助剤を含有していてよい。その噴霧補助剤は、界面活性剤または湿潤剤であってよい。その界面活性剤および湿潤剤は、本発明において多数の利点を有する。それは水性懸濁液の水の表面張力を低減し、植物の葉のろう様の表面をアグロバクテリウムに関してより透過性にする。それはさらにその懸濁液の安定性を向上させ、その懸濁液中の研磨剤の沈殿を低減する。本発明の方法において用いることができる界面活性剤は特に限定されず、国際公開第2012/019669号として公開されている国際特許出願において開示されている。好ましい界面活性剤は、12以上、好ましくは少なくとも13のHLB値の非イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤として、オルガノシリコン界面活性剤、例えばポリアルキレンオキシド修飾ヘプタメチルトリシロキサンが本発明において最も好ましい。商業製品はGE Advanced MaterialsからのSilwet L77(商標)噴霧補助剤である。
界面活性剤、例えば国際公開第2012/019669号において開示されている界面活性剤は、単独で、または2種類以上の界面活性剤の組み合わせで用いることができる。特に、好ましいオルガノシリコン界面活性剤は他の界面活性剤と組み合わせることができる。本発明の水性懸濁液中の界面活性剤の総濃度は、実施例において行われるものと同様に比較噴霧実験を実施することにより容易に試験することができる。しかし、一般に、界面活性剤の総濃度は前記の懸濁液の0.005〜2体積%、好ましくは0.01〜0.5体積%、より好ましくは0.025〜0.2体積%であることができる。界面活性剤の密度は一般に1.0g/mlに近いため、界面活性剤の総濃度は前記の懸濁液1リットルあたり0.05〜20g、好ましくは0.1〜5.0g、より好ましくは前記の懸濁液(研磨剤を含む)1リットルあたり0.25〜2.0gとして定義することができる。上記のオルガノシリコン界面活性剤、例えばポリアルキレンオキシド修飾ヘプタメチルトリシロキサンが用いられる場合、噴霧のために用いられるアグロバクテリウム懸濁液中のオルガノシリコン界面活性剤の濃度は0.01〜0.5体積%、好ましくは0.05〜0.2体積%であってよい。あるいは、噴霧のために用いられるアグロバクテリウム懸濁液中のオルガノシリコン界面活性剤の濃度は、前記の懸濁液1リットルあたり0.1〜5.0g、好ましくは0.5〜2.0gとして定義することができる。
その水性懸濁液の物理特性を向上させるために、高度に分散したサブミクロンの大きさのケイ酸(シリカ)または多孔性ポリマー、例えば尿素/ホルムアルデヒド縮合物(Pergopak(商標))を添加することが可能である。特に、その研磨剤の粒径の中央値が0.1〜30μm、または上記で示したこの範囲の好ましい部分範囲の1つにおける場合、高度に分散したサブミクロンの大きさのシリカをその懸濁液に添加することが可能である。本明細書において、サブミクロンの大きさのシリカは、0.01〜0.5μm、好ましくは0.02〜0.5μm、より好ましくは0.02〜0.1μmの粒径の中央値を有するシリカである。高度に分散したケイ酸、例えばHi−Sil(商標)233(PPG Industries)は、その水性懸濁液の研磨特性に寄与することができる(Jensen et al., Bull. Org. mond. Sante, Bull. Wld Hlth Org. 41 (1969) 937-940参照)。これらの薬剤は、本発明の懸濁液1リットルあたり1から10gまでの量で組み込むことができる。
アグロバクテリウム懸濁液へのさらなる可能な添加剤は、噴霧のために用いられる懸濁液のpHを所望のpH、典型的には4.5〜6.5、好ましくは5.0〜5.5で維持するための緩衝剤物質である。さらに、無機性可溶性塩類、例えば塩化ナトリウムをその懸濁液のイオン強度を調節するために添加することができる。栄養ブロス、例えばLB培地もその懸濁液中に含有されていてよい。
植物と接触させるための水性懸濁液は以下のように製造することができる。1つの方法において、本発明の方法において用いられるべき所望のバイナリーベクターを含有するアグロバクテリウム株または細胞を培地中に植え付け、高い細胞濃度まで増殖させる。大量の培地を得ることについて、より大きい培養液は、高濃度化された少量の培地で植え付けられることができる。アグロバクテリウムを一般に、少なくとも1の、典型的には約1.5の600nmにおけるODに対応する細胞濃度まで増殖させる。次いで、そのような高度に濃縮されたアグロバクテリウム懸濁液を希釈して、所望の細胞濃度を達成する。その高度に濃縮されたアグロバクテリウム懸濁液を希釈するために水が用いられる。その水は緩衝剤を含有していてよい。その水はさらに、本発明の界面活性剤を含有していてよい。あるいは、その濃縮されたアグロバクテリウム懸濁液を水で希釈することができ、いずれかの添加剤、例えば界面活性剤および任意の緩衝剤物質をその希釈プロセスの後または間に添加する。その研磨剤は、希釈の前、間または後に添加することができる。しかし、その懸濁液をその研磨剤の添加の間に攪拌してその研磨剤をそのアグロバクテリウム懸濁液中で均一に分散させることが好ましい。その濃縮されたアグロバクテリウム懸濁液を希釈する工程は、その希釈された懸濁液を噴霧するために用いられる噴霧器の噴霧タンク中で実施することができる。
次いで、前記の植物、特に前記の植物上の葉をアグロバクテリウム細胞の懸濁液と接触させて、その植物の細胞の一過性トランスフェクションを達成する。上記で説明したように、接触は噴霧により行われてよい。本発明の方法において用いられるべき噴霧器は、主に噴霧すべき植物の数または面積に依存する。1つまたは少数の噴霧すべき植物に関して、家庭および園芸において広く用いられるようなポンプ噴霧器を用いることができる。これらは0.5〜2リットルの噴霧タンクの容積を有し得る。中規模での適用に関して、手動操作の水圧式噴霧器、例えばレバー操作のナップザック噴霧器または手動操作の圧縮噴霧器を用いることができる。しかし、本発明において達成される高いトランスフェクション効率は、多くの植物、例えば圃場において、または温室において成長している植物のトランスフェクションにおいてその完全な可能性を有する。この目的のために、電力で作動する水圧式噴霧器、例えば噴霧ブームを備えたトラクターに据え付けられた水圧式噴霧器を用いることができる。大きい農地に関してはヘリコプターまたは飛行機を用いる航空適用技法も可能である。全てのこれらのタイプの噴霧器は当該技術において既知であり、例えばG.A. Matthewsによる書籍“Pesticide Application Methods”、第3版、Blackwell Science、2000において記述されている。その噴霧器の噴霧タンク中での均質な懸濁を確実にするため、小さい、または中程度の大きさの噴霧器を噴霧の間に規則的な間隔で、または連続的に振盪することができる。大きい噴霧器、例えばトラクターに据え付けられた噴霧器は、その噴霧タンク中に攪拌器を備えているべきである。
噴霧すべき懸濁液中のアグロバクテリウム細胞および研磨剤の存在を考慮すると、本発明で用いられる噴霧器は少なくとも微細な噴霧の液滴直径の噴霧を生成するべきである。G.A. Matthewsによる“Pesticide Application Methods”、第3版、Blackwell Science、2000、74ページにおいて用いられている噴霧の分類における中程度の噴霧または粗い噴霧を用いることもできる。本発明における噴霧の主な目的は、植物組織をその懸濁液で濡らすことである。従って、正確な液滴直径は重要ではない。しかし、その噴霧を植物表面に対して増大した圧力により提供することにより、トランスフェクション効率をさらに向上させることができる。
本発明の方法において、植物の少なくとも一部に噴霧する。1つの重要な態様において、土壌中で増殖している植物、すなわち移動可能な植木鉢または容器中で成長していない植物に噴霧する。そのような植物は、真空浸潤のために逆さまにひっくり返してアグロバクテリウム懸濁液中に浸すことはできない。植物の少なくとも一部、例えば葉に噴霧する。好ましくは、ほとんどの葉または植物全体に噴霧する。
本発明は、植物の一過性トランスフェクションのために、または対象のDNA配列による一過性トランスフェクションのために用いられ、次いでそれは一過性発現されることができる。用語“一過性”は、トランスフェクションされていない細胞または植物のバックグラウンド中の対象のDNA配列がトランスフェクションされた細胞または植物を、例えば選択可能な薬剤およびその選択可能な薬剤を無害化することができる選択可能なマーカー遺伝子を用いて選択するための選択法が用いられないことを意味する。結果として、そのトランスフェクションされた対象のDNA配列は一般に植物の染色体DNA中に安定に導入されない。代わりに、一過性の方法はトランスフェクションの作用をトランスフェクションされたまさにその植物において利用する。
本発明は一般に多細胞植物、特に高等植物にトランスフェクションするために用いられる。単子葉および双子葉植物の両方にトランスフェクションすることができ、それにより双子葉植物が好ましい。この発明における使用のための植物にはあらゆる植物種が含まれ、農業経済学的および園芸学的に重要な作物種が優先される。本発明における使用のための一般的な作物植物には、アルファルファ、オオムギ、マメ、キャノーラ、ササゲ、ワタ、トウモロコシ、クローバー、ハス、レンズマメ、ハウチワマメ、キビ、エンバク、エンドウマメ、ラッカセイ、コメ、ライムギ、スイートクローバー、ヒマワリ、スイートピー、ダイズ、モロコシ、ライコムギ、クズイモ、ハッショウマメ、カラスノエンドウ、コムギ、フジ、およびナッツ植物が含まれる。この発明を実施するために好ましい植物種には、イネ科、キク科、ナス科およびバラ科の代表的なものが含まれるが、それらに限定されない。
本発明における使用に関するさらに好ましい種は、以下の属からの植物である:シロイヌナズナ属、コヌカグサ属、ネギ属、キンギョソウ属、オランダミツバ属、ラッカセイ属、アスパラガス属、ベラドンナ属、カラスムギ属、ホウライチク属、アブラナ属、スズメノチャヒキ属、ルリマガリバナ属、ツバキ属、アサ属、トウガラシ属、ヒヨコマメ属、アカザ属、キクニガナ属、ミカン属、コーヒー属、ジュズダマ属、キュウリ属、カボチャ属、ギョウギシバ属、カモガヤ属、チョウセンアサガオ属、ニンジン属、ジギタリス属、ヤマノイモ属、アブラヤシ属、オヒシバ属、ウシノケグサ属、イチゴ属、フクロソウ属、ダイズ属、ヒマワリ属、ワスレグサ属、パラゴムノキ属、オオムギ属、ヒヨス属、サツマイモ属、アキノノゲシ属、レンズマメ属、ユリ属、アマ属、ドクムギ属、ミヤコグサ属、トマト属、マヨラナ属、リンゴ属、マンゴー属、キャッサバ属、ウマゴヤシ属、ネメシア属、タバコ属、オノブリキス属、イネ属、キビ属、テンジクアオイ属、チカラシバ属、ペチュニア属、エンドウ属、インゲンマメ属、アワガエリ属、イチゴツナギ属、サクラ属、キンポウゲ属、ダイコン属、スグリ属、トウゴマ属、キイチゴ属、サトウキビ属、サルメンバナ属、ライムギ属、ハンゴンソウ属、エノコログサ属、シロガラシ属、ナス属、モロコシ属、ステノタフルム属(Stenotaphrum)、カカオ属、ジャジクソウ属、レイリョウコウ属、コムギ属、ソラマメ属、ササゲ属、ブドウ属、トウモロコシ属、および草本タケ類(Olyreae)、ファロイダエ(Pharoideae)等。
好ましくは、本発明の方法は双子葉植物、例えばニコチアナ・ベンサミアナ、タバコ、ワタ、ダイズ、ナタネ、コショウ、ジャガイモ、またはトマトに適用される。
1態様において、本発明の方法は、植物において、または野外で成長している多くの植物において対象のタンパク質を生成させるために用いることができる。この目的のため、その植物に所望のバイナリーベクターを含有するアグロバクテリウム細胞を含む懸濁液をその植物の所望の成長状態において噴霧することができる。高量のそのタンパク質を含有する植物材料を得るために、最高の可能な発現レベルを達成させ、その後に植物を収穫することを主な目的とする場合、ウイルスベクターを用いることができ、これはそれらが一般に最も高い発現レベルを与えるためである。
別の態様において、本発明の方法は、入力形質のような植物における形質を生成する、または変化させるために用いられる。この態様において、対象のタンパク質またはRNAの過剰発現は、植物の健康状態への有害な作用を避けるために望ましくない可能性がある。そのような態様に関しては、非複製ベクター(本明細書において“転写ベクター”とも呼ばれる)、すなわち、植物細胞中に存在する核酸ポリメラーゼにより認識される機能する複製起点を欠いているベクターが好ましい。本発明の別の適用は、例えばRNA干渉のためのRNA発現であり、ここでその干渉シグナルは植物中でそのシグナルを発現した細胞から他の細胞に拡散することができる。1つの例は、Nat. Biotech. 21 (2003) 131においてPoogginにより記載されたような、植物における望ましくないウイルスDNAの標的化である。一過性の系に適合させることができる腫瘍遺伝子サイレンシングの例がEscobar et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98 (2001) 13437-13442により記載されている。さらなる例は、Baum et al., Nat. Biotech. 25 (2007) 1322-1326により記載されたものと類似のRNA干渉による甲虫類の害虫の制御であり、それは害虫に外寄生された植物にdsRNAをそれが発現され得るようにコードする対象のDNA配列を一過性トランスフェクションすることにより、本発明の一過性プロセスに適合させることができる。本発明の一過性プロセスに適用可能なさらなる方法は、Huang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103 (2006) 14302-14306; Chuang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97 (2000) 4985-4990により記載された方法である。
さらに、本発明の方法は、所望の時点において、開花時期もしくは果実形成、例えばジャガイモにおける結藷の制御(Martinez-Garcia et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99 (2002) 15211-15216)、または転写因子を用いたフラボノイド経路の制御(Deluc et al., Plant Physiol. 147 (2008) 2041-2053)に関する形質を変化させることを可能にする。開花は移動可能な花成ホルモンタンパク質FTを一過性発現させることにより誘導することができる(Zeevaart, Current Opinion in Plant Biology 11 (2008) 541-547; Corbesier et al., Science 316 (2007) 1030-1033)。トマト類における単為結実性果実を、本発明およびPandolfini et al., BMC Biotechnology 2 (2002)により記載されている方法を用いて大規模に生産することができる。本発明のさらなる適用は、Lee et al., Annals of Botany 100 (2007) 1391-1401により記載されているようなMYB転写因子、または植物の防御遺伝子の活性化(Bergey et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93 (1996) 12053-12058)により、ワタの繊維の発生を変化させることに関連する。
本発明は、作物植物を野外で害虫から保護する方法も提供する。そのような方法では、耕区(lot)または圃場で成長している複数の植物から少なくとも1つの植物の外寄生を決定することができる。本発明の方法の迅速性のため、害虫に有害なタンパク質またはRNAの発現は、その害虫による外寄生が決定された場合にのみ引き起こされればよい。従って、外寄生の危険性がない場合にも行われる害虫用毒素またはRNAiのためのdsRNAの強力かつ構成的な発現は不要である。バシラス・スリンジエンシス(Bacillus thuringiensis)の内毒素の一過性発現は、対応するPVXに基づく発現ベクターを有する希釈したアグロバクテリウム培養物を噴霧した後、タバコのイモムシであるマンジュカ・セクスタ(Manduca sexta)の幼虫による食害からニコチアナ・ベンサミアナ植物を保護した(国際公開第2012/019660号の図30参照)。
参考例1:コロニー形成単位(cfu)の点での液体培養物中のアグロバクテリウム細胞濃度の決定
mlあたりのコロニー形成単位(cfu/ml)の点での液体培養物中のアグロバクテリウム細胞の濃度を、以下のプロトコルを用いて決定することができる。コンストラクトpNMD620を用いて形質転換したアグロバクテリウム・ツメファシエンスICF320株の細胞を、25mg/Lカナマイシン(AppliChem,A1493)および50mg/Lリファンピシン(Carl Roth,4163.2)を含有する7.5mlの液体LBS培地中で増殖させた。その細菌培養液を、連続して振盪しながら28℃で培養した。吸光度単位(AU)で表される細菌培養液の吸光度または光学密度を、分光光度計を用いて600nmの波長でその培養物の1mlアリコート(aliquots)において監視した(OD600)。1ミリリットルの液体培養物あたりのコロニー形成単位の数(cfu/ml)として概算される細胞濃度を、1;1.3;1.5;1.7および1.8のOD600値において分析することができる。この目的のため、液体培養物の250μlアリコートをLBS培地で希釈して25mlの終体積を達成した(1:100希釈)。そのような1:100希釈液の2.5mlを22.5mlのLBSと混合して1:1000希釈を達成した。液体培養物の希釈液1:100;1:1,000;1:10,000;1:100,000;1:1,000,000;1:10,000,000および1:100,000,000を同様に調製した。最後の3つの希釈液のアリコートを寒天で凝固させた25mg/Lカナマイシンおよび50mg/Lリファンピシンを補ったLBS培地上に広げた(直径90mmのプレートあたり250μlの細菌培養液)。それぞれの希釈液に関するアリコートのプレーティングを3重に(in triplicate)実施した。28℃で2日間の培養後、細菌のコロニーをそれぞれのプレートに関して計数した。1:1,000,000および10,000,000希釈液のプレーティングは、結果としてそれぞれプレートあたり数100および数10個のコロニーを生じさせた。1:100,000,000までもの希釈液はプレートあたりごく少数のコロニーしかもたらさず、この希釈は細胞濃度の計算には用いられなかった。細胞濃度を次の式に従って概算した:cfu/ml=4×プレートあたりのコロニー数×希釈因子。
(LB培地中での)600nmにおける吸光度測定により、および細胞形成単位の点で測定されるような形質転換細胞濃度に関して、以下の関係を本明細書において用いる:1.0のOD600が1.1×10cfu/mlに対応する。
LBS培地(液体)
1%大豆ペプトン(大豆油粕のパパイン加水分解物;Duchefa,S1330)
0.5%酵母抽出物(Duchefa,Y1333)
1%塩化ナトリウム(Carl Roth,9265.2)
水中で溶解させ、1M NaOH(Carl Roth,6771.2)でpH7.5に調節する。
固体LBS培地を調製するため、液体LBS培地に1.5%寒天(Carl Roth,2266.2)を補った。培地を121℃で20分間オートクレーブした。
実施例1:後述の実施例において用いたベクター
この研究において、我々はTMVおよびPVXに基づくウイルスベクターならびに35S CaMVプロモーターに基づく標準的な転写ベクターを用いた。
細胞間移行能力を有するTMVに基づくベクターpNMD560、pNMD062、pNMD063およびpNMD064(図1A)を、Marillonnet et al. (2006)において記載されているベクターを基にして作製した。全てのこれらのベクターは、レポーター遺伝子としてのGFPの発現に関してデザインされており;それらはクラゲエクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)からの緑色蛍光タンパク質(GFP)の改変型であるsGFP(GeneBankアクセス番号EF030489)のコード配列の挿入を含有する。pNMD560コンストラクトは、順番にアラビドプシスアクチン2(ACT2)プロモーター(GeneBankアクセス番号AB026654)からの断片;TVCV(GenBankアクセス番号BRU03387、塩基対1〜5455)の5’末端およびcr−TMV[GenBankアクセス番号Z29370、塩基対5457〜5677、両方とも一緒に16のイントロンの挿入を含有する]の断片;sGFPコード配列;cr−TMVの3’非翻訳領域(3’NTR;GenBankアクセス番号Z29370)、ならびにノパリンシンターゼ(Nos)ターミネーターを含有する。断片全体をバイナリーベクターの左側および右側境界の間にクローニングした。
pNMD062プラスミドをpNMD560コンストラクトを基にして作製した。この目的のため、アグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404株からのオクトピン型TiプラスミドのvirG遺伝子のコード配列および5’上流ゲノム領域(GenBankアクセス番号AF242881.1、塩基対160603〜161600)が5’末端から配列ctgtcgatcおよび3’末端から配列aagatcgacag(SEQ ID NO:8)により隣接されているものを含むDNA断片をPCRにより増幅し、AfeI制限部位を用いてそのプラスミドのバックボーン中に挿入した。
pNMD063コンストラクトは、N54D変異を除いてpNMD062と同一であった。
pNMD064コンストラクトを作製するため、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのGV3101株からのノパリン型TiプラスミドのvirG遺伝子のN54D変異を含有するコード配列および5’上流ゲノム領域(GenBankアクセス番号AE007871.2、塩基対194307〜193333)を含むDNA断片をPCRにより増幅し、AfeI制限部位を用いてpNMD560コンストラクトのプラスミドバックボーン中に挿入した。
pNMD570コンストラクト(細胞間移行能力を欠くTMVに基づくベクター)は、MPの翻訳を歪めるオープンリーディングフレームシフトをもたらすMPをコードする配列中の点変異を除いてpNMD560と同一であった(図1A)。
GFP発現に関する細胞間および全身移行能力を有しないPVXを基にしたベクターであるpNMD620コンストラクトは、順番に35S CaMVプロモーター、RNA依存性RNAポリメラーゼのコード配列、25kDa、12kDaおよび8kDaのタンパク質を含む3遺伝子のブロックモジュール、sGFPコード配列ならびに3’非翻訳領域を含有していた。その断片全体をバイナリーベクターのT−DNAの左側および右側境界の間にクローニングした(図1B)。
全ての転写ベクターはpBIN19由来のバイナリーベクターであるpICBV10(Marillonnet et al., 2004, 2006)を基にして作製された。それらは同じT−DNA領域の右側および左側境界内に挿入された2つの発現カセットを含有していた(図1B)。pNMD1971コンストラクトの場合、右側境界に隣接する発現カセットは、順にカリフラワーモザイクウイルス(CAMV)35Sプロモーター、タバコモザイクウイルスからのオメガ翻訳エンハンサー、ペチュニア・ハイブリダ(Petunia hybrids)PSK7遺伝子(GenBankアクセス番号AJ224165.1、塩基対4411〜4484)からのイントロンを含有する大腸菌からのベータグルクロニダーゼのコード配列(GenBankアクセス番号S69414)、およびアグロバクテリウム・ツメファシエンスのノパリンシンターゼ遺伝子からのターミネーターを含んでいた。第2の発現カセットは、最初の発現カセットおよびT−DNAの左側境界の間に挿入された。それは順にカリフラワーモザイクウイルス(CAMV)35Sプロモーター、タバコモザイクウイルスからのオメガ翻訳エンハンサー、トマトブッシースタントウイルス(TBSV)からのサイレンシング抑制因子P19のコード配列(GenBankアクセス番号CAB56483.1)およびアグロバクテリウム・ツメファシエンスのオクトピンシンターゼ遺伝子からのターミネーターを含有していた。
pNMD2180コンストラクトはpNMD1971ベクターを基にして作製された。この目的に関して、pNMD1971コンストラクトのNotI/NdeI断片を、5’上流ゲノム領域に隣接されるアグロバクテリウム・ツメファシエンスのGV3101株からのノパリン型TiプラスミドのvirGN54D遺伝子を含有するpNMD064コンストラクトの同じ断片で置き換えた。
pNMD2190は類似の方法で作製された。pNMD1971コンストラクトのNotI/NdeI断片を、5’上流ゲノム領域に隣接されるアグロバクテリウム・ツメファシエンスのLBA4404株からのオクトピン型TiプラスミドのvirGN54D遺伝子を含有するpNMD063ベクターの同じ断片で置き換えた。
実施例2:CryX株は、一般的に用いられるアグロバクテリウム・ツメファシエンス株と比較した場合により強いニコチアナ・ベンサミアナの一過性トランスフェクションを示す
我々は、AGL1、EHA105、GV3101、ICF320、CryX、LBA4404およびLBA9402が含まれるいくつかの(the number of)アグロバクテリウム・ツメファシエンス株を、ニコチアナ・ベンサミアナ植物の一過性トランスフェクションに関して試験した。この目的のため、植物の葉に無針注射器を用いて図2Aにおいて示されるような細胞間移行が可能なTMVを基にしたGFP発現ベクター(TMV−GFP、pNMD560コンストラクト)を有する7種類の上記の株のOD600=1.3のアグロバクテリウム培養物の10−3および10−4希釈液を浸潤させた。並行して、図2Bにおいて示されるような細胞間移行能力を欠いたTMVを基にしたベクター(TMV(fsMP)−GFP、pNMD570コンストラクト)を有する同じ株のアグロバクテリウムの一夜培養物の10−3および10−4希釈液を葉に浸潤させた。
蛍光を発するスポットの密度およびGFP蛍光の強度に基づいて、我々はいくつかの株(例えば、AGL1、EHA105、およびLBA9402)に関する効率的な一過性トランスフェクションを証明したが、CryX株の一過性トランスフェクション効率は、あらゆる他の試験した株と比較した場合に、両方のコンストラクトに関して、全ての試験したアグロバクテリウム培養液の希釈度で有意に高かった。
CryX株に関する一過性トランスフェクション効率の定量的評価を提供するため、我々は葉中に浸潤させた細菌懸濁液中の細胞の数および単一のトランスフェクション事象と考えられる生成されたGFP蛍光スポットの数の間の比率を概算した。この目的のため、6週齢のニコチアナ・ベンサミアナ植物に、無針注射器を用いて、5mM MES、pH5.3および10mM MgClからなる緩衝液で10−5、10−6および10−7の希釈因子により希釈したOD600=1.3のアグロバクテリウム培養液200μlを浸潤させた。CryX、EHA105、GV3101およびICF320アグロバクテリウム細胞はコンストラクトpNMD560(TMV−GFPベクター)を有していた。細菌細胞の計数のため、葉への浸潤のために用いられる細菌懸濁液の100μlアリコートを、50μl/lリファンピシンおよび50μl/lカナマイシンを含有するLB−寒天プレート上に3重にまいた。プレートを28℃で2日間培養し、その後cfu(コロニー形成単位)の数を計数した。我々の概算によれば、CryX、EHA105、GV3101およびICF320の細菌培養液100μlは、7.38+/−1.72、5.00+/−1.50、2.53+/−0.87および6.17+/−1.37cfuを含有していた(表1)。並行して、4dpiにおいてニコチアナ・ベンサミアナの葉をGFP蛍光のスポットに関して採点した。浸潤させたCryX、EHA105、GV3101およびICF320株に関するアグロバクテリウム培養液の10−7希釈液100μlあたり、それぞれ平均して7.38+/−1.72、5.00+/−1.50、2.53+/−0.87および6.17+/−1.37個の蛍光スポットが生成された。それぞれのアグロバクテリウム細胞は、CryX株に関して0.46個のトランスフェクション部位を、そして全ての他の試験した株に関して0.01個のトランスフェクション部位を生成し、CryX株はEHA105、GV3101およびICF320株よりも46倍効率的であった。
実施例3.LBA4404株からのvirG遺伝子の過剰発現はCryX株の一過性トランスフェクション効率を増大させる
我々は、いくつかのアグロバクテリウム株の一過性トランスフェクション効率へのvirG遺伝子の過剰発現の影響を試験した。この目的のため、我々はそれらのプラスミドバックボーン中にGV3101またはLBA4404株のどちらかからのvirG遺伝子の挿入を有するTMVを基にしたベクターを作製した(図1A)。最初に、我々はAGL1、EHA105、ICF320およびGV3101株を、GV3101およびLBA4404株からのvirGN54D遺伝子を有するベクター(それぞれpNMD063およびpNMD064)ならびにLBA4404株からの天然のvirG遺伝子配列を有するベクター(pNMD062)を用いて試験した。ニコチアナ・ベンサミアナの葉に無針注射器を用いてOD600=1.3のアグロバクテリウム培養液の10、10および10倍希釈液を浸潤させた。紫外光中でのGFP蛍光を示す写真を、4dpi(図3A)および6dpi(図3B)において撮影した。目視評価に基づいて、我々は一過性トランスフェクション効率の株特異的増大を実証した。表2において要約されているように、virGN54DのGV3101株からの過剰発現はGV3101およびICF320株に関する一過性トランスフェクション効率を増大させ;virGN54DのLBA4404株からの過剰発現はAGL1、EHA105およびLBA4404株の一過性トランスフェクション効率を向上させた。
CryX株を図4に示したように同様に試験した。ニコチアナ・ベンサミアナの葉に、無針注射器を用いて、浸潤用の緩衝液で10−4および10−5希釈したOD600=1.3の液体CryXおよびGV3101アグロバクテリウム培養物を浸潤させた。そのプラスミドのバックボーン中にGV3101およびLBA404株からのvirGN54D遺伝子を含有するTMVに基づくGFP発現ベクター(それぞれpNMD063およびpNMD064)を、virG遺伝子の挿入を含有しないpNMD560ベクターと比較した。図4Aは、3および4dpiにおける希釈度10−4に関するGFP蛍光を示し;図4Bは4および5dpiにおける希釈度10−5に関するGFP蛍光を示す。我々は、LBA4404からのvirGN54D遺伝子と組み合わせたCryX株に関する一過性トランスフェクション効率の有意な増大を実証し;対照的に、GV3101株からのvirGN54D遺伝子の過剰発現は、CryXに媒介される一過性トランスフェクションに負の影響を有していた。
実施例4.virGN54D/LBA4404との組み合わせでのCryXは、葉への浸潤を用いて10倍希釈に至るまでにおいてニコチアナ・ベンサミアナの効率的な一過性トランスフェクションを提供する。
ニコチアナ・ベンサミアナ植物の一過性トランスフェクションに関するCryX液体培養物の最大有効希釈度を見つけるため、我々は浸潤用の緩衝液で10−3、10−4、10−5、10−6および10−7に希釈したOD600=1.3の液体CryXおよびGV3101アグロバクテリウム培養物による葉の注射器浸潤を実施した。
我々の実験において、LBA4404株からのvirGN54Dとの組み合わせでのアグロバクテリウム・ツメファシエンスCryX株は、我々が今までに観察したニコチアナ・ベンサミアナ植物の最も効率的なトランスフェクションを提供し、結果として一夜培養物の10−7濃度因子においてさえも相当な数の蛍光を発するスポットをもたらした(図5)。それは、植物への浸潤のために用いられるアグロバクテリウム培養物の希釈度を、Magnicon(登録商標)システムにおいて典型的に用いられる10倍希釈と比較しておおよそ100〜1000倍増大させることを可能にする。
CryX株に関する一過性トランスフェクション効率の定量的評価を提供するため、我々は、葉中に浸潤させた細菌懸濁液中の細胞数と単一のトランスフェクション事象と考えられる生成されたGFP蛍光スポットの数との間の比率を概算した。この目的のため、6週齢のニコチアナ・ベンサミアナ植物の葉に、無針注射器を用いて、5mM MES、pH5.3および10mM MgClを含有する水性緩衝液で10−7希釈したOD600=1.3のアグロバクテリウム培養液200μlを浸潤させた。CryXのアグロバクテリウム細胞は、pNMD560(TMV−GFPベクター)およびpNMD062(そのプラスミドのバックボーン中にLBA4404株からのvirGN54Dを含有するTMV−GFPベクター)を有していた。細菌細胞の採点のため、葉への浸潤のために用いられた細菌懸濁液の100μlアリコートを、50μl/lリファンピシンおよび50μl/lカナマイシンを含有するLB−寒天プレート上で3重にまいた。プレートを28℃で2日間培養し、その後cfu(コロニー形成単位)の数を計数した。我々の概算によれば、100μlの細菌培養液はpNMD560およびpNMD062コンストラクトに関してそれぞれ14.7+/−4.4および13.9+/−3.4cfuを含有していた(表3)。並行して、5dpiにおいてニコチアナ・ベンサミアナの葉をGFP蛍光のスポットに関して採点した。浸潤させたpNMD560およびpNMD062コンストラクトに関するアグロバクテリウム培養液100μlあたり、それぞれ平均して16.3+/−1.5および24.0+/−0.0個の蛍光スポットが生成された。言い換えると、pNMD560コンストラクトを有するそれぞれのアグロバクテリウム細胞は約1.1個のトランスフェクション部位を生成し;pNMD062コンストラクトに関してはこの値はより高い1.7であり、これはvirG遺伝子の過剰発現によるトランスフェクション効率の増大を示している。
実施例5.virGN54D/LBA4404との組み合わせでのアグロバクテリウム・ツメファシエンスCryX株は、ダイズに関して高い噴霧トランスフェクション効率を示す
我々は、AGL1、EHA105、GV3101、ICF320、CryXおよびLBA4404が含まれるいくつかの(the number of)アグロバクテリウム・ツメファシエンス株を、アグロバクテリウム細胞の懸濁液による植物の噴霧を用いたダイズ(Glycine max L.)の一過性トランスフェクションに関して試験した。この目的のため、GUS発現ベクターを有する液体培養物をOD600=1.3まで増殖させ、噴霧のために5mM MES pH5.3;10mM MgClおよび0.05%(v/v)Tween(登録商標)20を含有する緩衝液で1:10の比率で希釈した。AGL1、EHA105、CryXおよびLBA4404株の試験に関して、我々はpNMD2190コンストラクト(プラスミドバックボーン中の35S:GUS;35S:p19およびvirGN54D/LBA4404)を用いた。GV3101およびICF320株をpNMD2180ベクター(プラスミドバックボーン中の35S:GUS;35S:p19およびvirGN54D/GV3101)を用いて試験した。GUS活性に関する葉の染色を噴霧の11日後に実施した。全くまたはほとんどトランスフェクションを示さなかった他の試験した株と比較して、CryXは、GUS染色により明らかにされたように、有意に高い一過性トランスフェクション率を提供した(図6A)。
界面活性剤および研磨剤処理を組み合わせて、我々は、GUS発現転写ベクターpNMD2190を用いた場合に、アグロバクテリウム培養液の10−2希釈に至るまでに関して、CryX株によるダイズの効率的な一過性トランスフェクションを達成した(図6B)。
実施例6.virGN54D/LBA4404との組み合わせでのアグロバクテリウム・ツメファシエンスCryX株は、ワタに関して高められた一過性噴霧トランスフェクションを示す
我々は、噴霧を用いたEHA105、GV3101、ICF320、およびCryX株によるワタの一過性トランスフェクションを試験した。この目的のため、OD600=1.3の液体アグロバクテリウム培養物を5mM MES、pH5.3;10mM MgClおよび0.25%(v/v)Silwet L−77を含有する緩衝液で1:10の比率で希釈した。pNMD2180コンストラクト(プラスミドバックボーン中の35S:GUS;35S:p19およびvirGN54D/GV3101)をGV3101およびICF320株に関して用いて、pNMD2190(プラスミドバックボーン中の35S:GUS;35S:p19およびvirGN54D/LBA4404)をEHA105およびCryX株に関して用いた。pNMD1971コンストラクト(35S:GUS;35S:p19)を対照として全ての株に関して適用した。GUS染色試験を噴霧の6日後に実施した。染色後、GV3101およびICF320株に関しては少数の青い点しか見付からなかった(データは示していない)。pNMD1971コンストラクトと共に用いたEHA105およびCryX株に関しても、非常に低いトランスフェクション効率が示された。全ての他の試験した株と比較して、LBA4404株からのvirGN54D(pNMD2190)との組み合わせでのCryXは、増大した一過性トランスフェクション効率を示した(図7)。
実施例7.アグロバクテリウム・ツメファシエンスChry5/KYRT1株のICBGEの系統種は、同じ株のケンタッキー大学の系統種と比較してより強いニコチアナ・ベンサミアナの一過性トランスフェクションを示す
我々は、異なる研究室から得たアグロバクテリウム・ツメファシエンスChry5/KYRT1株の2種類の系統種:ケンタッキー大学(米国レキシントン)のDr.G.Collinsの研究室および細胞生物学および遺伝子工学研究所(ICBGE、キエフ、ウクライナ)からの系統種を、ニコチアナ・ベンサミアナ植物の一過性トランスフェクションに関して試験した。この目的のため、植物の葉に、無針注射器を用いて、図8において示されるように、細胞間移行が可能なTMVを基にしたGFP発現ベクター(TMV−GFP、pNMD560コンストラクト)を有する両方の株の系統種のOD600=1.3のアグロバクテリウム培養液の10−1、10−2および10−3の濃度因子を用いた希釈液を浸潤させた。蛍光を発するスポットの密度およびGFP蛍光の強度に基づいて、我々はICBGEの系統種に関してケンタッキー大学の系統種と比較した場合により高い一過性トランスフェクション効率を示した。
2012年4月3日に出願された欧州特許出願第12 002 402.1号の内容は、記載、特許請求の範囲、図および配列リストを含め、本明細書に参照によりそのまま援用される。
ある態様において、本発明は以下であってもよい。
[態様1]植物または植物上の葉に一過性トランスフェクションする方法であって、前記の植物または前記の葉をCryX株またはCryX株の誘導株のアグロバクテリウム細胞を含む懸濁液と接触させることを含み、
ここで前記の誘導株はCryX株の染色体背景を有し、または前記の誘導株はCryX株のvirプラスミドもしくは前記のvirプラスミドの派生物を含有する、前記方法。
[態様2]目的のDNA配列を植物中で一過性発現させる方法であって、前記の植物または前記の植物上の葉をCryX株またはCryX株の誘導株のアグロバクテリウム細胞を含む懸濁液と接触させることを含み、
ここで前記の誘導株はCryX株の染色体背景を有し、または前記の誘導株はCryX株のvirプラスミドもしくは前記のvirプラスミドの派生物を含有する、前記方法。
[態様3]前記のCryX株または前記の誘導株が、前記の植物または葉の細胞中にトランスフェクションされるべき対象のDNA配列を含むT−DNAを有するバイナリーベクターを含有する、態様1または2に記載の方法。
[態様4]前記のCryX株または前記の誘導株が、武装解除されたvirプラスミドまたは武装解除されたTiプラスミドを含有する、態様1〜3のいずれか1に記載の方法。
[態様5]前記のCryX株の誘導株が、CryX株のvirプラスミドの派生物であるvirプラスミドを含有し、前記の誘導株が、CryX株でのT−DNA移動効率の、少なくとも70%の、T−DNA含有バイナリーベクターから植物細胞中へのT−DNA移動効率を達成する、態様1〜4のいずれか1に記載の方法。
[態様6]前記のCryX株のvirプラスミドの派生物がCryX株のvirGタンパク質をコードしている、態様1〜5のいずれか1に記載の方法。
[態様7]前記のCryX株のvirプラスミドの派生物がCryX株のvirプラスミドのvir領域を含有する、態様6に記載の方法。
[態様8]前記のバイナリーベクターが、前記のCryX株または前記の誘導株中で発現可能なvirG遺伝子を含む、態様3に記載の方法。
[態様9]前記のvirG遺伝子が、SEQ ID NO:1のアグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404株からのVirGタンパク質をコードしている、またはA.ツメファシエンスLBA4404株からのVirG遺伝子によりコードされるVirGタンパク質のN54D変異体である、態様8に記載の方法。
[態様10]前記のCryX株のvirプラスミドの派生物が、対象のT−DNAをCryX株のvirプラスミド中に導入することにより得られる、態様1または2に記載の方法。
[態様11]前記の植物または前記の植物上の葉に前記の懸濁液を噴霧することにより、または真空浸潤させることにより、前記の植物または前記の植物上の葉を前記の懸濁液と接触させる、態様1〜10のいずれか1に記載の方法。
[態様12]前記の植物が、ニコチアナ・ベンサミアナ、タバコ、ワタ、ダイズ、ナタネ、コショウ、ジャガイモ、トマトのような双子葉植物、または単子葉植物である、態様1〜11のいずれか1に記載の方法。
[態様13]前記のアグロバクテリウムCryX株がDSM受託番号:DSM25686を有する株である、態様1〜12のいずれか1に記載の方法。
[態様14]誘導株がCryX株の染色体背景を有する、または誘導株がCryX株のvirプラスミドもしくは前記のvirプラスミドの派生物を含有する、DSM受託番号:DSM25686を有するアグロバクテリウムCryX株もしくはCryX株の誘導株;またはCryX株の、もしくは前記の誘導株のアグロバクテリウムの細胞。
[態様15]前記の細胞が、植物中にトランスフェクションされるべき対象のDNA配列を含むT−DNAを含むバイナリーベクターをさらに含む、態様14に記載のアグロバクテリウムの細胞。
[態様16]態様14に記載の前記の株または前記の誘導株のアグロバクテリウムの細胞、および
植物の細胞中にトランスフェクションされるべき対象のDNA配列をT−DNA中に含有するベクター;
を含むキット。
[態様17]DSM受託番号:DSM25686を有するアグロバクテリウムCryX株のvirプラスミド。
[態様18]DSM受託番号:DSM25686を有するCryX株の染色体を有するアグロバクテリウム細胞。
[態様19]DSM受託番号:DSM25686を有するアグロバクテリウムCryX株またはCryX株の誘導株の水性細胞懸濁液であって、最大で1.1・10cfu/該懸濁液1ml、好ましくは最大で4.4・10cfu/該懸濁液1ml、より好ましくは1.1・10cfu/該懸濁液1mlの細胞濃度を有する、前記懸濁液。
参考文献
付録
SEQ ID NO:1:アグロバクテリウムLBA4404のvirGタンパク質からのアミノ酸配列。N54を太字で示す。
SEQ ID NO:2:pNMD560、pNMD062、pNMD063、pNMD064のT−DNA領域の配列
SEQ ID NO:3:pNMD570のT−DNA領域の配列
SEQ ID NO:4:pNMD620のT−DNA領域の配列
SEQ ID NO:5:pNMD062のvirG遺伝子を含有するプラスミドバックボーンの挿入
SEQ ID NO:6:pNMD063、pNMD2190のvirG遺伝子を含有するプラスミドバックボーンの挿入
SEQ ID NO:7:pNMD1971の完全長ヌクレオチド配列

Claims (19)

  1. 植物または植物上の葉に一過性トランスフェクションする方法であって、前記の植物または前記の葉を、DSM受託番号:DSM25686を有するCryX株またはCryX株の誘導株のアグロバクテリウム細胞を含む懸濁液と接触させることを含み、
    ここで前記の誘導株はCryX株の染色体背景を有し、または前記の誘導株はCryX株のvirプラスミドもしくは前記のvirプラスミドの派生物を含有する、前記方法。
  2. 目的のDNA配列を植物中で一過性発現させる方法であって、前記の植物または前記の植物上の葉を、DSM受託番号:DSM25686を有するCryX株またはCryX株の誘導株のアグロバクテリウム細胞を含む懸濁液と接触させることを含み、
    ここで前記の誘導株はCryX株の染色体背景を有し、または前記の誘導株はCryX株のvirプラスミドもしくは前記のvirプラスミドの派生物を含有する、前記方法。
  3. 前記のCryX株または前記の誘導株が、前記の植物または葉の細胞中にトランスフェクションされるべき対象のDNA配列を含むT−DNAを有するバイナリーベクターを含有する、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記のCryX株または前記の誘導株が、武装解除されたvirプラスミドまたは武装解除されたTiプラスミドを含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記のCryX株の誘導株が、CryX株のvirプラスミドの派生物であるvirプラスミドを含有し、前記の誘導株が、CryX株でのT−DNA移動効率の、少なくとも70%の、T−DNA含有バイナリーベクターから植物細胞中へのT−DNA移動効率を達成する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記のCryX株のvirプラスミドの派生物がCryX株のvirGタンパク質をコードしている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記のCryX株のvirプラスミドの派生物がCryX株のvirプラスミドのvir領域を含有する、請求項6に記載の方法。
  8. 前記のバイナリーベクターが、前記のCryX株または前記の誘導株中で発現可能なvirG遺伝子を含む、請求項3に記載の方法。
  9. 前記のvirG遺伝子が、SEQ ID NO:1のアグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404株からのVirGタンパク質をコードしている、またはA.ツメファシエンスLBA4404株からのVirG遺伝子によりコードされるVirGタンパク質のN54D変異体である、請求項8に記載の方法。
  10. 前記のCryX株のvirプラスミドの派生物が、対象のT−DNAをCryX株のvirプラスミド中に導入することにより得られる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記の植物または前記の植物上の葉に前記の懸濁液を噴霧することにより、または真空浸潤させることにより、前記の植物または前記の植物上の葉を前記の懸濁液と接触させる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記の植物が、ニコチアナ・ベンサミアナ、タバコ、ワタ、ダイズ、ナタネ、コショウ、ジャガイモ、トマトのような双子葉植物、または単子葉植物である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. CryX株またはCryX株の誘導株のアグロバクテリウムの細胞であって、該CryX株はDSM受託番号:DSM25686を有しており、
    前記誘導株がCryX株の染色体背景を有する、または誘導株がCryX株のvirプラスミドもしくは前記のvirプラスミドの派生物を含有する、前記細胞
  14. 前記の細胞が、植物中にトランスフェクションされるべき対象のDNA配列を含むT−DNAを含むバイナリーベクターをさらに含む、請求項13に記載のアグロバクテリウムの細胞。
  15. 請求項13に記載のアグロバクテリウムの細胞、および
    植物の細胞中にトランスフェクションされるべき対象のDNA配列をT−DNA中に含有するベクター;
    を含むキット。
  16. DSM受託番号:DSM25686を有するアグロバクテリウムCryX株のvirプラスミド。
  17. DSM受託番号:DSM25686を有するCryX株の染色体を有するアグロバクテリウム細胞。
  18. DSM受託番号:DSM25686を有するアグロバクテリウムCryX株またはCryX株の誘導株の水性細胞懸濁液であって、最大で1.1・10cfu/該懸濁液1mlの細胞濃度を有する、前記懸濁液。
  19. 前記水性細胞懸濁液が、最大で1.1・10 cfu/該懸濁液1mlの細胞濃度を有する、請求項18に記載の懸濁液。
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