JP6139973B2 - 酸化物半導体薄膜及びその製造方法、並びに当該酸化物半導体薄膜を備えてなる薄膜トランジスタ - Google Patents

酸化物半導体薄膜及びその製造方法、並びに当該酸化物半導体薄膜を備えてなる薄膜トランジスタ Download PDF

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本発明は、酸化物半導体薄膜及びその製造方法、並びに当該酸化物半導体薄膜を備えてなる薄膜トランジスタに関する。
電界効果型トランジスタは、半導体メモリ集積回路の単位電子素子、高周波信号増幅素子、液晶駆動用素子等として広く用いられており、現在、最も多く実用化されている電子デバイスである。そのなかでも、近年における表示装置の発展に伴い、液晶表示装置(LCD)のみならず、エレクトロルミネッセンス表示装置(EL)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等の各種表示装置において、表示素子に駆動電圧を印加して表示装置を駆動させるスイッチング素子として、薄膜トランジスタ(TFT)が多用されている。
大型液晶表示装置の液晶駆動用トランジスタにおいては、従来アモルファスシリコン系半導体薄膜が使用されていた。ところが、近年のさらなる大型化、高精細化の要求に伴い、アモルファスシリコンでは移動度が不足するため、画像の書き込みが間に合わなくなってきつつある。また有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイについても大型化技術が進展中で、バックプレーンに対しても、大面積で均一、かつ高移動度の材料がこれまで以上に求められている。
そこで、アモルファスシリコン系半導体薄膜のように大面積化が可能で、結晶シリコンに次いで移動度が高い材料として金属酸化物からなる透明半導体薄膜、特に、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ガリウムからなる酸化物半導体薄膜が注目されている。
従来、TFT活性層に用いる酸化物半導体膜は、膜の電気特性を制御するため、酸素ガスを導入した雰囲気中で成膜されるのが一般的である。しかし、酸素分圧のわずかな振れにより、膜中のキャリア濃度が大きく変化し、半導体特性が変動するという問題があった。
例えば特許文献1は、In、Znの少なくとも一方の元素、及び水素を含むアモルファス酸化物半導体を開示する。しかしながら、これらはいずれも4インチサイズ以下のターゲットで適用される技術であり、実生産を想定した高速成膜に関しては改良の余地があった。
非特許文献1及び2は、酸化物半導体薄膜に200℃〜300℃で脱離する弱い結合種である酸素や、物理吸着水が存在すると信頼性が悪化することを開示する。
特開2010−80936号公報
Keisuke Ide et al.,Appl.Phys.Lett.99,093507 (2011) Jae Kyeong Jeong et al.,Appl.Phys.Lett.93,123508 (2008)
本発明の目的は、薄膜トランジスタの信頼性を向上させることができる酸化物半導体薄膜を提供することである。
本発明の一態様によれば、昇温脱離法において、200℃以上600℃以下の温度範囲で脱離する水分子の量が3×1020cm−3以上であり、200℃以上400℃未満の温度範囲で脱離する水分子の量が1×1021cm−3以下であり、400℃以上600℃以下の温度範囲において脱離する水分子の量が1×1020cm−3以上である酸化物半導体薄膜が提供される。
本発明によれば、薄膜トランジスタの信頼性を向上させることができる酸化物半導体薄膜が提供できる。
スパッタ装置の一例の要部を示す図である。 本発明の一形態に係る酸化物半導体を備えてなる薄膜トランジスタの一実施形態を示す概略断面図である。 本発明の一形態に係る酸化物半導体を備えてなる薄膜トランジスタの他の実施形態に係る概略断面図である。 実施例1−2及び比較例2−3の分光エリプソメトリーの結果を示す図である。 比較例6−7の分光エリプソメトリーの結果を示す図である。 実施例3及び比較例5の分光エリプソメトリーの結果を示す図である。 実施例1−2及び比較例1−4の昇温脱離測定における水素分子の脱離結果を示す図である。 実施例3及び比較例5−7の昇温脱離測定における水素分子の脱離結果を示す図である。 実施例4及び比較例8の昇温脱離測定における水素分子の脱離結果を示す図である。 実施例5−7の昇温脱離測定における水素分子の脱離結果を示す図である。 実施例1−2及び比較例1−4の昇温脱離測定における水分子の脱離結果を示す図である。 実施例3及び比較例6の昇温脱離測定における水分子の脱離結果を示す図である。 比較例5及び比較例7の昇温脱離測定における水分子の脱離結果を示す図である。 実施例4及び比較例8の昇温脱離測定における水分子の脱離結果を示す図である。 実施例5−7の昇温脱離測定における水分子の脱離結果を示す図である。 実施例2及び比較例4のラマン測定結果を示す図である。 実施例1及び2のN2/H2雰囲気下アニール後のTFT測定結果を示す図である。
[酸化物半導体薄膜]
以下、本発明の酸化物半導体薄膜について説明するが、本発明において「半導体」とは、例えば薄膜のキャリア濃度が1×1020/cm以下の状態をいう。このキャリア濃度は、例えば株式会社東陽テクニカ製の高抵抗ホール測定装置Resi Test8310により求めることができる。
本発明の一形態に係る酸化物半導体薄膜は、200℃以上600℃以下の温度範囲で脱離する水分子の量が3×1020cm−3以上であり、200℃以上400℃未満の温度範囲で脱離する水分子の量が1×1021cm−3以下であり、400℃以上600℃以下の温度範囲において脱離する水分子の量が1×1020cm−3以上である。
これら脱離する水分子の量は昇温脱離法により評価できる。
400以上600℃以下の温度範囲で脱離する水分子を含むことは、酸化物半導体薄膜中において金属元素と水酸基が結合(Metal−OH結合)していると推測される。Metal−OH結合は結合強度が強いため、Metal−OH結合を含む本発明の一形態に係る酸化物半導体薄膜は、酸素欠陥の低い膜である。
尚、Metal−OH結合については、例えばTakeshi Koida et al.,JOURNAL OF APPLIEDPHYSICS 107,033514 (2010)に記載されている。
本発明の一形態に係る酸化物半導体薄膜は、400以上600℃以下の温度範囲で脱離する水分子の量が1×1020cm−3以上である。
400以上600℃以下の温度範囲で脱離する水分子の量は、膜中のMetal−OH結合に由来する。当該Metal−OH結合に由来する水分子の量が1×1020cm−3以上であることは、膜中の酸素欠陥が低減されていることを表わし、キャリア濃度を半導体領域1×1019cm−3以下まで低減することができる。また、Metal−OH結合形成によって酸化物半導体のアモルファス構造が安定化し、バンドギャップを広くすることができる。
脱離する水分子の量の上限は特にないが、例えば1×1022cm−3である
本発明の一形態に係る酸化物半導体薄膜は、200℃以上400℃未満の温度範囲で脱離する水分子の量が1×1021cm−3以下である。
200℃以上400℃未満で脱離する水分子は、結合の弱い水酸基に由来する水分子であり、脱離する水分子の量が1×1021cm−3以下であることは、酸化物半導体薄膜中において結合の弱い水酸基が少ないことを意味する。膜中に結合の弱い水酸基が少ないことで、不純物によって形成されるエネルギー準位を低減することができる。
本発明の一形態に係る酸化物半導体薄膜は、200℃以上600℃以下の温度範囲で脱離する水分子の量が3×1020cm−3以上である。
200℃以上600℃以下の温度範囲で脱離する水分子が3×1020cm−3以上であることは、酸化物半導体膜中において電気特性に寄与する水分子が十分に取り込まれていることを意味する。尚、200℃以上600℃以下の温度範囲で脱離する水分子の量の上限は特に限定されないが、例えば1×1022cm−3未満である。
本発明の一形態に係る酸化物半導体薄膜は、好ましくは200℃以上400℃未満の温度範囲で脱離する水分子の量を[A]とし、400℃以上600℃以下の温度範囲で脱離する水分子の量を[B]とした場合に、[B]/[A]≧0.1を満たす。
膜中のMetal−OH結合の量及び水酸基の量が、Metal−OH結合の量/水酸基の量≧0.1を満たすことで、酸素欠陥低減の効果が得られるようになる。
酸化物半導体薄膜の200℃以上600℃以下の温度範囲で脱離する水分子の量、400以上600℃以下の温度範囲で脱離する水分子の量、及び200以上400℃未満の温度範囲で脱離する水分子の量は、昇温脱離法によって定量評価できる。
昇温脱離法による評価は、シリコンウエハー上に積層させた酸化物半導体を、背圧10−8〜10−5Paの高真空中チャンバー内で基板加熱し、四重極マス(QMS)でマスクロマトグラムm/z=18で実施できる。
本発明の一形態に係る酸化物半導体薄膜について、150℃〜600℃の温度範囲における水分子の昇温脱離カーブに極大値が存在する場合、好ましくは最も小さい極大値の温度をT0としたときに、350℃<T0を満たす。温度に対する膜中の水濃度の絶対量は膜厚によって変動しやすいが、膜中の弱い結合である水酸基の昇温脱離カーブの極大値は350℃>T0となる温度で一定である。
膜中の弱い結合である水酸基が少ないことで、不純物によって形成されるエネルギー準位をなくすことができる。
尚、昇温脱離カーブとは、酸化物半導体薄膜の横軸に温度[単位:℃]、縦軸に水分子脱離量[単位:cm−3]とした時に得られるカーブである。
本発明の一形態に係る酸化物半導体薄膜は、好ましくはIn、Sn、Zn及びGaからなる群から選択される1以上の元素の酸化物を含む。酸化物半導体薄膜がこれら元素を含む場合、電子移動度の高い膜となりえる。
本発明の一形態に係る酸化物半導体薄膜は、好ましくはインジウム錫亜鉛酸化物(In−Sn−Zn−O)、インジウムガリウム酸化物(In−Ga−O)、及びインジウムガリウム亜鉛酸化物(In−Ga−Zn−O)からなる群から選択される酸化物を1以上含み、これら酸化物のいずれかからなってもよい。
インジウム元素は最も移動度を上昇させる効果がある。また、酸化物半導体薄膜が、スズ元素を含む場合、耐薬品性が向上し、チャネルエッチ型で薄膜トランジスタを積層する際、エッチストッパー層を設けなくてもよくなり好適である。加えて、酸化物半導体薄膜が、ガリウムを含む場合、酸素欠損が低い膜を形成されうる。
尚、酸化物半導体薄膜中の各種元素含有の有無及び含有量は、X線光電子分光分析(XPS)測定において各元素のスペクトル及びスペクトル強度からの定量解析を実施することで、見積もることができる。
酸化物半導体薄膜は、上述した酸化物以外の成分を含んでもよく、例えば本発明の効果を損なわない範囲で他に不可避な不純物を含んでいてもよい。
酸化物半導体薄膜の厚みは、例えば薄膜トランジスタのチャネル層に用いる場合、通常20〜500nmであり、好ましくは50〜150nmであり、より好ましくは60〜140nmであり、さらに好ましくは70〜130nmであり、特に好ましくは70〜110nmである。
[酸化物半導体薄膜の製造方法]
本発明の一形態に係る酸化物半導体薄膜の製造方法は、スパッタリングターゲットをスパッタリングして薄膜を成膜する工程と、得られた薄膜をアニール処理する工程とを含み、薄膜を成膜する工程及びアニール処理する工程の少なくとも一方を、水蒸気を含む雰囲気で行う。
スパッタリング及び/又はアニール処理を、水蒸気を含む雰囲気下で行うことで、得られる酸化物半導体薄膜中にMetal−OH結合が形成され、酸素欠陥を低減することができる。
スパッタリングするターゲットは、例えば、各金属元素を含有する原料粉末を焼結することにより製造できる。具体的には、原料粉末をボールミル、ビーズミル等の粉砕機を用いて混合粉砕し、得られる混合粉末をスプレイドライヤー等により造粒し、得られる造粒粉を、HP、CP等の一軸プレスやCIP、HIP等の等方プレスにより成型後、焼成することで得られる。
原料酸化物は、得られるターゲットが目的とする組成を形成できれば特に限定されるものではないが、凝集やクラック、ポアといった欠陥が生成しないように粒径や比表面積を適宜選択して配合するとよい。
本発明の一形態に係る酸化物半導体薄膜の製造方法において、スパッタリングターゲットは、好ましくはIn、Sn、Zn及びGaからなる群から選択される1以上の元素の酸化物を含む。
ターゲットがIn、Sn、Zn及びGaからなる群から選択される元素を1以上含むことで、得られる酸化物半導体薄膜の移動度を向上させることができる。
スパッタリングターゲットは、好ましくはインジウム錫亜鉛酸化物(In−Sn−Zn−O)、インジウムガリウム酸化物(In−Ga−O)、及びインジウムガリウム亜鉛酸化物(In−Ga−Zn−O)からなる群から選択される1以上を含む。スパッタリングターゲットは、インジウム錫亜鉛酸化物(In−Sn−Zn−O)、インジウムガリウム酸化物(In−Ga−O)、及びインジウムガリウム亜鉛酸化物(In−Ga−Zn−O)のいずれかからなってもよい。
インジウムは、得られる酸化物半導体薄膜の移動度を上昇させる効果がある。また、酸化物半導体薄膜が、スズを含む場合、耐薬品性が向上し、チャネルエッチ型で薄膜トランジスタを積層する際、エッチストッパー層を設けなくてもよくなり好適である。加えて、酸化物半導体薄膜がガリウムを含む場合、酸素欠損を低減しやすく信頼性(PBS及びNBIS)を高めることができる。
本発明の一形態に係る酸化物半導体薄膜の製造方法において、スパッタリングは好ましくは水蒸気を含む雰囲気下で行う。
スパッタリング時の雰囲気が水蒸気(水分子)を含むことによって、成膜時のスパッタリングチャンバー内で酸化力の強い・OH(ヒドロシキラジカル)が発生し、得られる薄膜を酸素欠陥の低い膜とすることができる。得られる薄膜をアニール処理して得られる酸化物半導体薄膜を用いてトランジスタを形成した場合、トランジスタの信頼性を示すPBS(Positive Bias Stress)を0.5V以下、且つNBIS(Positive Bias Illumination Stress)を−1V以下とすることができる。
上記水蒸気を含む雰囲気は、より好ましくは水分圧が1×10−3Pa〜0.5Paの雰囲気である。
スパッタリング雰囲気の水分圧を上記範囲とすることで、得られる酸化物半導体薄膜のキャリア濃度を1017cm−3〜1019cm−3の半導体領域に制御することができる。また、Metal−OH結合を形成することができることによって、欠陥の少ない膜とすることができる。
スパッタリングガス(雰囲気)は、水蒸気の他に、アルゴン等の希ガス、及び酸化性ガスを用いることができる。酸化性ガスとはO、CO、O、NO等が挙げられる。
スパッタリングガスは、例えば希ガスと、水蒸気、酸素ガス及び亜酸化窒素ガスから選択される1以上を含有する混合気体を用いることができ、水蒸気と希ガスを少なくとも含有する混合気体を用いることもできる。
スパッタリング雰囲気の圧力(スパッタ圧力)は、プラズマが安定して放電できる範囲であれば特に限定されないが、好ましくは0.1〜5.0Paである。
尚、スパッタ圧力とは、スパッタ開始時の雰囲気ガス全圧をいう。
スパッタリングにより成膜する際の基板温度は、例えば10〜300℃であり、25〜120℃であることが好ましく、さらに好ましくは25〜100℃である。
成膜時の基板温度が120℃以下であると、成膜時に導入する水蒸気等を十分に取り込むことができ、加熱後の薄膜のキャリア濃度を1018cm−3以下とすることができる。また、成膜時の基板温度が25℃以上であると、薄膜の膜密度が低下せず、TFTの移動度が低下することを防ぐことができる。
スパッタリングの成膜速度は、基板の成膜面に対して垂直方向に通常は1〜250nm、好ましくは1〜100nm/minであり、さらに好ましくは10〜80nm/minであり、特に好ましくは30〜60nm/minである。
成膜速度が1nm/min未満の場合、成膜速度が遅いため生産性が悪くなるおそれがある。一方、成膜速度が250nm/min超の場合、成膜速度が速くなりすぎて、膜厚の制御性が悪くなるとともに、OH基が膜中に均一に取り込まれず特性の面内均一性が損なわれるおそれがある。また、成膜速度が速すぎると膜中に十分にOH基が取り込まれないため、スパッタ成膜時に過剰な水分子の導入が必要となるおそれがある。
ターゲット及び基板間の距離は、基板の成膜面に対して垂直方向に好ましくは1〜15cmであり、より好ましくは5〜15cmであり、さらに好ましくは4〜8cmである。
この距離が1cm未満の場合、基板に到達するターゲット構成元素の粒子の運動エネルギーが大きくなり、良好な膜特性を得ることができないおそれがあるうえ、膜厚及び電気特性の面内分布が生じてしまうおそれがある。一方、ターゲットと基板との間隔が15cmを越える場合、基板に到達するターゲット構成元素の粒子の運動エネルギーが小さくなりすぎて、緻密な膜を得ることができず、良好な膜特性を得ることができないおそれがある。
磁場強度が300〜1000ガウスの雰囲気下でスパッタリングすることが望ましい。
磁場強度が300ガウス未満の場合、プラズマ密度が低くなるため高抵抗のスパッタリングターゲットの場合スパッタリングできなくなるおそれがある。一方、1000ガウス超の場合、膜厚及び膜中の電気特性の制御性が悪くなるおそれがある。
スパッタリングの方法は特に限定されず、プラズマ活性の低いDCスパッタリング及び周波数10MHz以下の高周波スパッタリングのいずれでもよい。また、スパッタリングはパルススパッタリングでもよい。
ここでDCスパッタリングとは、直流電源を印加して行うスパッタ方法(直流スパッタ)をいい、高周波スパッタ(RFスパッタリング)とは、交流電源(交流スパッタ)を印加して行うスパッタリングをいう。また、パルススパッタリングとは、パルス電圧を印加して行うスパッタリングをいう。
RFスパッタリングは、DCスパッタリングに比べてプラズマ密度が高く、放電電圧が下がるため、格子の乱れ等が減少し、キャリア移動度を高めることができる。また、一般的にRFスパッタリングの方が面内均一性が良好な膜が得られやすい。
そのため、RFスパッタリングより得られる膜は、TFT素子としたときの電界効果移動度も高くなることが期待される。しかし、一般的にRFスパッタリングは、DCスパッタリングよりも成膜が遅いため、工業的にはDCスパッタリングが採用されている。
DCスパッタ成膜時のターゲットに印加するパワー密度は、好ましくは1〜10W/cmであり、さらに好ましくは2〜5W/cmである。特に好ましくは2.5〜5W/cmである。
パワー密度が1W/cm未満の場合、成膜速度が遅くなって生産性が悪くなるおそれがあるうえ、また放電も安定しないおそれがある。一方、スパッタパワー密度が10W/cm超の場合、成膜速度が速くなりすぎて、膜厚の制御性及び特性の均一性が悪くなるおそれがある。
好適な交流スパッタリングとして以下の方法がある。
真空チャンバー内に所定の間隔を置いて並設された3枚以上のターゲットに対向する位置に、基板を順次搬送し、上記各ターゲットに交流電源から負電位及び正電位を交互に印加して、ターゲット上にプラズマを発生させて基板表面上に成膜する。
このとき、交流電源からの出力の少なくとも1つを、分岐して接続した2枚以上のターゲットの間で、電位を印加するターゲットの切替を行いながら成膜を行う。即ち、上記交流電源からの出力の少なくとも1つを分岐して2枚以上のターゲットに接続し、隣り合うターゲットに異なる電位を印加しながら成膜を行う。
このスパッタリングに用いることができる装置としては、例えば特許文献1に記載の大面積生産用のAC(交流)スパッタ装置が挙げられる。この装置を用いることにより、さらなる高速成膜が可能となり、また膜キャリア濃度を再現性よく所定の値とすることができる。
上記のACスパッタ装置は、具体的には、真空槽と、真空槽内部に配置された基板ホルダと、この基板ホルダと対向する位置に配置されたスパッタ源とを有する。スパッタ源の要部を図1に示す。
スパッタ源は、複数のスパッタ部を有し、板状のターゲット100a〜100fをそれぞれ有し、各ターゲット100a〜100fのスパッタされる面をスパッタ面とすると、各ターゲットはスパッタ面が同じ平面上に位置するように配置される。
各ターゲット100a〜100fは長手方向を有する細長の直方体に形成され、各ターゲットは同一形状であり、スパッタ面の長手方向の縁部分(側面)が互いに所定間隔を空けて平行に配置される。従って、隣接するターゲット100a〜100fの側面は平行になる。
真空槽の外部には、交流電源300a〜300cが配置されており、これら交流電源には、それぞれ対応する電極が2つずつ接続している。各交流電源300a〜300cのそれぞれの2つの端子のうち、一方の端子は隣接する2つの電極のうちの一方に接続され、他方の端子は他方の電極に接続されている。
各交流電源300a〜300cの2つの端子は正負の異なる極性の電圧を出力するようになっており、ターゲット100a〜100fは、電極に密着して取り付けられているので、隣接する2つのターゲット100a〜100fには互いに異なる極性の交流電圧が交流電源300a〜300cから印加される。従って、互いに隣接するターゲット100a〜100fのうち、一方が正電位に置かれる時には他方が負電位に置かれた状態になる。
電極のターゲット100a〜100fとは反対側の面には磁界形成手段200a〜200fが配置されている。各磁界形成手段200a〜200fは、外周がターゲット100a〜100fの外周と略等しい大きさの細長のリング状磁石と、リング状磁石の長さよりも短い棒状磁石とをそれぞれ有している。
各リング状磁石は、対応する1個のターゲット100a〜100fの真裏位置で、ターゲット100a〜100fの長手方向に対して平行に配置されている。上述したように、ターゲット100a〜100fは所定間隔を空けて平行配置されているので、リング状磁石もターゲット100a〜100fと同じ間隔を空けて配置されている。
上記の装置を用いる場合、パワー密度は、3〜20W/cmが好ましい。3W/cm未満の場合、成膜速度が遅く、生産上経済的でない。20W/cmを超えるとターゲットが破損する場合がある。パワー密度は、より好ましくは5〜20W/cm、さらに好ましくは4〜10W/cmである。
ACスパッタの周波数は10kHz〜1MHzの範囲が好ましい。10kHz未満であると、騒音の問題が発生するおそれがある。1MHzを超えるとプラズマが広がりすぎるため、所望のターゲット位置以外でスパッタが行われ、均一性が損なわれることがある。より好ましいACスパッタの周波数は20kHz〜500kHzである。
また、上記の装置を用いる場合、成膜速度は好ましくは70〜250nm/min、より好ましくは100〜200nm/minである。
スパッタリングによって得られた薄膜のアニール処理は、好ましくは水蒸気を含む雰囲気下で行う。スパッタリングによって得られた薄膜が酸素欠損の多い膜であっても、水蒸気を含む雰囲気下でアニール処理することによって、雰囲気中の水分子が薄膜中に入り込み、アニール処理の熱によってMetal−OH結合が形成され、得られる酸化物半導体薄膜中の酸素欠陥を低減することができる。また、アニール処理によって、得られる酸化物半導体薄膜について、弱い結合であるOH基の含有量を低減し、不純物準位を無くすことができる。
スパッタリングによって得られた薄膜のアニール処理を水蒸気を含む雰囲気下で行う場合、当該雰囲気中の水蒸気量は、好ましくは80原子%以下である。アニール処理の雰囲気中の水蒸気の含有量を80原子%以下とすることで、得られる酸化物半導体薄膜中に水分子が過剰に入らず、結合の弱いOH基が形成されず、結合の強いMetal−OH結合のみを膜中に形成することができる。
アニール処理温度は、好ましくは150℃以上500℃以下の温度範囲である。
上記温度範囲でアニール処理することで、得られる酸化物半導体薄膜中に結合の弱いOH基を十分に脱離させることができ、Metal−OH結合のみ残留させることができる。また、上記温度でアニールすることで、得られる酸化物半導体薄膜のアモルファス秩序性を向上させることができる。
アニール処理時において、好ましくは昇温速度が1℃/sec以上である。同様に、アニール処理時において、好ましくは降温速度が1℃/sec以上である。
アニール処理の昇温速度を1℃/sec以上、及び/又は降温速度を1℃/sec以上とすることで、アニール処理炉内側面に存在する有機物が膜中に取り込まれることを防ぐことができる。
尚、アニール処理時間は、例えば5〜360分間である。
[薄膜トランジスタ]
本発明の一形態に係る酸化物半導体薄膜は、薄膜トランジスタのチャネル層として好適に用いることができる。酸素欠陥の少ないチャネル層を備える本発明の一形態に係る薄膜トランジスタは、信頼性に優れるトランジスタである。
ここで優れた信頼性とは、例えばPBS(Positive Bias Stress)が0.5V以下、且つNBIS(Positive Bias Illumination Stress)が−1V以下であることを意味する。
薄膜トランジスタの構成は、ボトムゲート、トップゲート、ボトムコンタクト、トップコンタクト等、公知の構成を制限なく利用することができ、好ましくはバックチャンネルエッチ型のボトムゲート構成である。
バックチャネルエッチ型のトランジスタを形成する場合、チャネル層は薬液によるダメージに曝されるが、酸素欠陥及び/又は不純物の少ない酸化物半導体薄膜からなるチャネル層であれば、ダメージを低減することができる。
本発明の酸化物半導体を含む電界効果型トランジスタのS値は、好ましくは1V/decade以下、さらに好ましくは0.7V/decade以下、特に好ましくは0.5V/decade以下である。S値の値が1V/decadeを超えると、駆動電圧が高くなる等トランジスタが良好なスイッチング特性を示さなくなるおそれがある。
酸化物半導体を含む電界効果型トランジスタの閾値電圧は、通常は−5.0〜5.0V、好ましくは−1.0〜2.0V、より好ましくは−1.0〜1.0V、さらに好ましくは0〜1.0Vである。
閾値電圧が−5.0〜5.0Vであることで、駆動電圧と消費電力のバランスが良好なものとすることができる。
酸化物半導体を含む電界効果型トランジスタのチャネル長は、通常用いられる範囲であれば特に制限されるものではないが、通常10〜70μm、好ましくは20〜50μmである。
酸化物半導体を含む電界効果型トランジスタのチャネル幅は、通常10〜100μmであり、好ましくは20〜70μmである。
ディスプレイの高精細化のために、TFTは微小にする必要がある。その場合、所望のオン電流を得るためには、TFTチャネル層に用いられる半導体膜には高い移動度が必要となる。
本発明の一形態に係る酸化物半導体を含む電界効果型トランジスタは高い移動度を有するので、1〜10μm領域、さらには2〜8μmの領域においても好適に使用することが期待できる。またチャネル幅について、1〜10μmの領域、さらには2〜8μmの領域においても好適に使用することが期待できる。
図2は、本発明の一形態に係る酸化物半導体を備えてなる薄膜トランジスタの一実施形態を示す概略断面図である。
電界効果型トランジスタである薄膜トランジスタ1はボトムゲート型であり、ガラス基板60上に、ゲート電極30が形成され、その上にゲート絶縁膜50が形成されている。ゲート絶縁膜50上には、酸化物半導体膜40が形成され、さらにその上にドレイン電極10とソース電極20とが離間して形成されている。
ドレイン電極10、ソ−ス電極20及びゲート電極30の各電極を形成する材料に特に制限はなく、一般に用いられている材料を任意に選択することができる。
例えば、ITO,IZO,ZnO,SnO等の透明電極や、Al,Ag,Cu,Cr,Ni,Mo,Au,Ti,Ta等の金属電極、又はこれらを含む合金の金属電極を用いることができる。
ドレイン電極10、ソ−ス電極20及びゲート電極30の各電極は、異なる2層以上の導電層を積層した多層構造とすることもでき、例えば図3では、各電極10,20及び30は、それぞれ第1導電層31,21,11及び第2導電層32,22,12から構成されている。特にソース・ドレイン電極は低抵抗配線への要求が強いため、AlやCu等の良導体をTiやMo等の密着性に優れた金属でサンドイッチして使う場合がある。
ゲート絶縁膜50を形成する材料は特に制限はなく、一般に用いられている材料を任意に選択できる。
ゲート絶縁膜50の材料としては、例えばSiO,SiNx,Al,Ta,TiO,MgO,ZrO,CeO,KO,LiO,NaO,RbO,Sc,Y,Hf,CaHfO,PbTiO,BaTa,SrTiO,AlN等の化合物を用いることができる。これらのなかでも、好ましくはSiO,SiNx,Al,Y,Hf,CaHfOであり、より好ましくはSiO,SiNx,Y,Hf,CaHfOである。
尚、上記の酸化物の酸素数は、必ずしも化学量論比と一致していなくともよい(例えば、SiOでもSiOxでもよい)。
ゲート絶縁膜50は、異なる2層以上の絶縁膜を積層した構造でもよい。また、ゲート絶縁膜50は、結晶質、多結晶質、非晶質のいずれであってもよいが、工業的に製造しやすい多結晶質か、非晶質であるのが好ましい。
酸化物半導体膜40は、本発明の一形態に係る成膜方法により得られる酸化物半導体である。
酸化物半導体膜40は、通常はホール測定で求めたキャリア密度が1018cm−3未満であり、好ましくは5×1017cm−3未満であり、より好ましくは1×1017cm−3未満である。キャリア密度が1018cm−3以上の場合、漏れ電流が大きくなるおそれがある。
尚、キャリア密度の下限としては、酸化物半導体膜40を備える素子の用途にもよるが、例えば1015cm−3以上とするのが好ましい。
酸化物半導体膜40の比抵抗は、四端子法で求めた値が、通常10−1〜10Ωcmであり、好ましくは10〜10Ωcmであり、より好ましくは10〜10Ωcmである。
比抵抗が10−1Ωcm未満の場合、電気が容易に流れ半導体薄膜として機能しないおそれがある。一方、比抵抗が10Ωcm超の場合、強い電界をかけないと半導体として機能しないおそれがある。
酸化物半導体膜40の膜厚は、酸化物半導体40自身の比抵抗に応じて適宜最適な値が選定され、均一性の観点からは膜厚が厚い方が好ましく、成膜時間(工程のタクトタイム)の観点からは膜厚が薄い方が好ましい。
酸化物半導体膜40の膜厚は、通常は、20〜500nm、好ましくは50〜150nm、より好ましくは60〜140nm、特に好ましくは70〜130nm、特に好ましくは70〜110nmである。
酸化物半導体の膜厚が20nm未満の場合、大面積に成膜した際の膜厚の不均一性により、作製したTFTの特性が不均一になるおそれがある。一方、膜厚が500nm超の場合、成膜時間が長くなり工業的に採用できないおそれがある。
薄膜トランジスタ1の電界効果移動度は、通常1cm/Vs以上であり、好ましくは5cm/Vs以上、より好ましく10cm/Vs以上、さらに好ましくは18cm/Vs以上、特に好ましくは30cm/Vs以上、最も好ましくは50cm/Vs以上である。
電界効果移動度が1cm/Vs未満の場合、スイッチング速度が遅くなるおそれがある。また、電界効果移動度の上限は例えば500cm2/Vsである。
薄膜トランジスタ1のon−off比は、通常10以上であり、好ましくは10以上、よりより好ましく10以上、さらに好ましくは10以上であり、特に好ましくは10以上である。
また、薄膜トランジスタ1は、低消費電力の観点からは閾値電圧(Vth)がプラスでノーマリーオフとなることが好ましい。閾値電圧(Vth)がマイナスでノーマリーオンとなると、消費電力が大きくなるおそれがある。
本発明の一形態に係る酸化物半導体を含む電界効果型トランジスタの製造方法は、例えば以下の方法により製造することができる。
まず絶縁性基板上に金属膜を成膜し、ゲート電極を形成する。金属膜としてはMo,Al、Cr及びこれらを主成分とする合金が好適に用いられる。これらの金属膜の積層膜を用いてもよい。
ゲート電極及び絶縁性基板上に、プラズマCVD法により、ゲート絶縁膜を成膜する。次にスパッタリング法によりチャネルとなる半導体層を成膜する。次に、フォトリソグラフィー工程及びエッチング工程を経て、TFTとなる領域の半導体層を島状に形成する。続いて、ソース電極、ドレイン電極を形成するための第2金属膜を成膜する。この第2金属膜には、ゲート電極と同様に、Al、CrやMo、これらを含む合金等の材料を用いることができる。積層膜により構成することも可能である。
成膜した第2金属膜を、フォトリソグラフィー工程、エッチング工程により所望の形状のソース電極、ドレイン電極のパターンを得ることでトランジスタが得られる。
実施例1−7及び比較例1−8
マグネトロンスパッタリング装置に、表1−4に示すターゲット組成を有する2インチのターゲットを装着し、基板A1としてスライドガラス(コーニング社製♯1737)、基板B1としてシリコンウェハー、基板C1として基板A1上にAuを10nmさせた基板、及び基板D1として厚み100nmの酸化膜付きシリコンウェハーをそれぞれ装着した。
基板をチャンバー内へ搬送後、所定の到達圧力とした後、表1−4に示す分圧比であるArガス、Oガス又はHOガスを導入し、表1−4に示すスパッタ条件にて膜厚50nmの非晶質膜を基板A1、基板B1、基板C1及び基板D1上にそれぞれ成膜した。
得られた薄膜を表1−4に示す水分量(原子%)等のアニール条件でオーブン中でアニール処理を行い、基板A1、基板B1、基板C1及び基板D1上にそれぞれ積層してなる酸化物半導体を得た。
尚、例えば比較例4、6及び7では、アニール処理をしていない。
得られた実施例1−7及び比較例1−8の酸化物半導体薄膜を備えてなる基板A1、B1、C1及びD1について、以下の評価を行った。
表1−4の条件で酸化物半導体を成膜した基板A1を1cmにカットし、4隅にAu電極をつけた。Au電極と銅線を銀ペーストにより接着してホール効果測定用素子A1とし、キャリア濃度及びホール移動度を評価した。結果を表1−4に示す。
尚、キャリア濃度及びホール移動度の測定は、室温にてResiTest8300型(東陽テクニカ社製)を用いてホール効果測定を行うことにより求めた。
基板A1について、裏面反射が無くなるまで研磨した後、研磨した面に対して裏面に表1−4と同じ条件で酸化物半導体を成膜した。室温にて分光エリプソメトリー測定装置M−2000D(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン株式会社製)を用いて偏光の入射角度を基板に垂直方向から50°、60°、70°と変化させ、それぞれについて測定波長を192.3nm〜1689nm、測定幅3.4nmで測定を行った。さらに得られたスペクトルψとΔから、吸収モデルとしてDrude model、Tauc−Lorentz mode、Gaussian functione modelを置き、二乗誤差MSE=10以下になるまで最適化を行うことで各光のエネルギーに対して吸収係数αを算出した。さらに光のエネルギー範囲2eV〜5eVに対し、αをプロットし直線を延長させたエネルギー軸との交点をバンドギャップとして算出した。結果を表1−4に示す。また、実施例1−2及び比較例2−3の分光エリプソメトリーの結果を図4に、比較例6−7の分光エリプソメトリーの結果を図5に、実施例3及び比較例5の分光エリプソメトリーの結果を図6に示す。
表1−4の条件で酸化物半導体を成膜した基板B1を1cmにカットした。カットした基板を用いて水分子の脱離量を評価した。具体的には、測定はTDS−MS装置WA1000S/W型(電子科学株式会社製)にて行い、背圧10−7Pa、50℃〜600℃の間で昇温速度10℃/minで昇温し、それぞれマスクロマトグラムm/z=2(Hの脱離を示す)及びm/z=18(HOの脱離を示す)をSCANモードで測定した。
それぞれの結果から、基板B1のみの測定を行ったマスククロマトグラムの値を引いた値を酸化物半導体薄膜中の水素、及び水分子の脱離量の絶対値とした。結果を表1-4に示す。また、実施例1−2及び比較例1−4の昇温脱離測定における水素分子の脱離結果を図7に、実施例3及び比較例5−7の昇温脱離測定における水素分子の脱離結果を図8に、実施例4及び比較例8の昇温脱離測定における水素分子の脱離結果を図9に、実施例5−7の昇温脱離測定における水素分子の脱離結果を図10に示す。同様に、実施例1−2及び比較例1−4の昇温脱離測定における水分子の脱離結果を図11に、実施例3及び比較例6の昇温脱離測定における水分子の脱離結果を図12に、比較例5及び7の昇温脱離測定における水分子の脱離結果を図13に、実施例4及び比較例8の昇温脱離測定における水分子の脱離結果を図14に、実施例5−7の昇温脱離測定における水分子の脱離結果を図15に示す。
表1の条件で酸化物半導体を成膜した基板C1を用いてラマン測定を行った。ラマン測定はNicolet Almega(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用い、波長785nmのレーザー光を照射させ、ラマン光の波数187cm−1〜4000cm−1を測定幅0.482cm−1で行った。サンプル平面10μmの範囲で測定を行った。結果を表1に示す。また実施例2及び比較例4のラマン測定の結果を図16に示す。
[信頼性評価用TFTの作製及び評価]
図1に示すボトムゲート構造を有する電界効果型トランジスタ1を作製した。
具体的には、基板A1を用意し、スパッタリング法で厚さ50nmのCrを成膜した後、フォトリソ法によりゲート配線状にパターニングし、ゲート電極とした。次にこの基板をPE−CVD装置にセットし、SiH、NO、Nを導入して、厚さ150nmのゲート絶縁膜(SiO膜)を得た。
次に、このゲート絶縁膜付基板A1をスパッタ装置に装着し、表1−4と同じ条件で、45nmのチャンネル層(半導体層)を成膜した。次に、フォトリソグラフィ法により半導体領域の形に加工し、チャンネル層(半導体層)とした。
再びこの基板をPE−CVD装置にセットし、SiH、NO、Nを導入して、250℃で厚さ200nmの層間絶縁膜(半導体層保護膜:SiO)を積層した。次に、この基板をドライエッチング装置にセットし、ゲート電極とソース・ドレイン電極用のコンタクトホールを形成した。そして、この積層体をスパッタ装置にセットし、ITOを成膜後、再びフォトリソ法でパターニングしてソース電極、ドレイン電極とした。
引き続き、この基板をPECVD装置にセットし、SiH、NO、Nを導入して、250℃で厚さ200nmのパッシベーション膜(SiO)を成膜した。そして再度フォトリソグラフィー法により、ソース・ドレイン・ゲート電極用のコンタクトホールを形成した。最後にこの基板を窒素中、350℃、1時間の条件でアニールして、電界効果型トランジスタ1を得た。
得られた電界効果型トランジスタ1について、ケースレーの4200SCSにセットし、トランジスタの信頼性を評価した。結果を表1−4に示す。
(1)信頼性 PBS
ストレス条件は、空気中、50℃でゲート電極に+15Vの電圧を10000秒加えた。ストレスをかける前後のVthを比較し、閾値電圧のシフト量(ΔVth)を測定した。
(2)信頼性 NBIS
ストレス条件は、空気中、365nm〜620nmの波長を含む白色光を0.1mW
50℃で電界効果型トランジスタ1に照射させ、ゲート電極に-15Vの電圧を10
000秒加えた。ストレスをかける前後のVthを比較し、閾値電圧のシフト量 (ΔVth)を測定した。
4インチカソードのマグネトロンスパッタリング装置に、酸化物半導体膜を備える基板D1を再度装着するとともに、カソードにAuターゲットを装着し、専用のメタルマスクを用いて、Au電極を50nm成膜し、W/L=1000/200μmのTFT特性評価用素子を作製した。
その後、表1に示す加熱処理後、さらにN2/H2=98%/2%の雰囲気中で10分アニールし、得られた酸化物半導体をケースレーの4200SCSにセットし、Vds=5Vの条件でTFTの伝達特性(移動度)を評価した。結果を表1に示す。また、実施例1及び2のN2/H2雰囲気下アニール後のTFT測定結果を図17に示す。
1,2 薄膜トランジスタ
10 ドレイン電極
11 第1導電層
12 第2導電層
20 ソース電極
21 第1導電層
22 第2導電層
30 ゲート電極
31 第1導電層
32 第2導電層
40 酸化物半導体膜
50 ゲート絶縁膜
60 ガラス基板
100 ターゲット
200 磁界形成手段
300 交流電源

Claims (16)

  1. 昇温脱離法において、
    200℃以上600℃以下の温度範囲で脱離する水分子の量が3×1020cm−3以上であり、
    200℃以上400℃未満の温度範囲で脱離する水分子の量が1×1021cm−3以下であり、
    400℃以上600℃以下の温度範囲において脱離する水分子の量が1×1020cm−3以上である酸化物半導体薄膜。
  2. 前記200℃以上400℃未満の温度範囲で脱離する水分子の量を[A]とし、前記400℃以上600℃以下の温度範囲で脱離する水分子の量を[B]とした場合に、[B]/[A]≧0.1を満たす請求項1に記載の酸化物半導体薄膜。
  3. 150℃以上600℃以下の温度範囲における水分子の昇温脱離カーブに極大値が存在する場合において、最も小さい極大値の温度をT0としたときに、350℃<T0を満たす請求項1又は2に記載の酸化物半導体薄膜。
  4. In、Sn、Zn及びGaからなる群から選択される1以上の元素の酸化物を含む請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物半導体薄膜。
  5. インジウム錫亜鉛酸化物(In−Sn−Zn−O)、インジウムガリウム酸化物(In−Ga−O)、及びインジウムガリウム亜鉛酸化物(In−Ga−Zn−O)からなる群から選択される1以上を含む請求項1〜4のいずれかに記載の酸化物半導体薄膜。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の酸化物半導体薄膜を含む薄膜トランジスタ。
  7. バックチャネルエッチ型である請求項記載の薄膜トランジスタ。
  8. 請求項6又は7に記載の薄膜トランジスタを備える表示装置。
  9. スパッタリングターゲットをスパッタリングして薄膜を成膜する工程と、
    前記薄膜をアニール処理する工程と、を含み、
    前記薄膜を成膜する工程及び前記アニール処理する工程、又は前記アニール処理する工程を水蒸気を含む雰囲気下で行い
    前記アニール処理の昇温速度が、1℃/sec以上である酸化物半導体薄膜の製造方法。
  10. 前記アニール処理の雰囲気中の水蒸気量が80原子%以下である請求項に記載の酸化物半導体薄膜の製造方法。
  11. 前記アニール処理の処理温度が150〜500℃である請求項9又は10に記載の酸化物半導体薄膜の製造方法。
  12. 前記アニール処理の降温速度が、1℃/sec以上である請求項9〜11のいずれかに記載の酸化物半導体薄膜の製造方法。
  13. 前記スパッタリングターゲットがIn、Sn、Zn及びGaからなる群から選択される1以上の元素の酸化物を含む請求項9〜12のいずれかに記載の酸化物半導体薄膜の製造方法。
  14. 前記スパッタリングターゲットが、インジウム錫亜鉛酸化物(In−Sn−Zn−O)、インジウムガリウム酸化物(In−Ga−O)、及びインジウムガリウム亜鉛酸化物(In−Ga−Zn−O)からなる群から選択される1以上を含む請求項9〜13のいずれかに記載の酸化物半導体薄膜の製造方法。
  15. 前記スパッタリングを水蒸気を含む雰囲気下で行う請求項9〜14のいずれかに記載の酸化物半導体薄膜の製造方法。
  16. 前記スパッタリングを水分圧が10−3Pa〜0.5Paの雰囲気下で行う請求項9〜15のいずれかに記載の酸化物半導体薄膜の製造方法。
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