JP6139662B2 - 神経障害の処置における使用のためのエストロゲン成分 - Google Patents

神経障害の処置における使用のためのエストロゲン成分 Download PDF

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Description

本発明は、医学分野に属する。より具体的には、本発明は、エステトロール(1,3,5(10)−エストラトリエン−3,15α,16α,17β−テトロール)等の或る特定のエストロゲン成分の新たな医学的使用に関する。
神経障害、特に中枢神経系(CNS)障害は、とりわけ急性CNS損傷(例えば、低酸素性虚血性脳症、脳卒中、外傷性脳損傷、脊髄損傷、脳性麻痺)、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症)、及び多数の中枢神経系機能不全(例えば、鬱、てんかん、及び統合失調症)を含む多くの病気を包含する。
新生児の低酸素性虚血性脳症(HIE:Hypoxic-Ischemic Encephalopathy)は、不十分な酸素供給に起因する新生児の脳の細胞に傷害を引き起こす神経障害である。全身性の低酸素症及び脳血流(CBF)の低下に起因する脳の低酸素症及び虚血は、新生児において生じる灰白質及び白質の損傷を伴う新生児HIEをもたらす主要な原因である。新生児HIEは、新生児期の死亡を引き起こすか、又は発達遅延、精神遅滞、若しくは脳性麻痺(CP)として後に認められるものを結果的に生じる可能性がある。近年、種々の治療戦略が開発されてきているにもかかわらず、新生児HIEは、依然として新生児に近い時期又は新生児期における著しい死亡率及び罹患率を引き起こす深刻な状態であり、したがって、今もなお周産期医療に対する挑戦となっている。
過去数年に亘り、ラットの低酸素性虚血性脳傷害モデルは、周産期医学において最も用いられるモデルとなった。産後7日目(P7;誕生した日をP1とする)において、ラットの脳は妊娠32週目〜34週目のヒト胎児又は新生児の脳に組織学的に類似する。すなわち、大脳皮質神経層の形成が完了し、胚芽層が退行しており、白質はまだわずかしかミエリン形成をしていない。7日齢の仔ラットにおいて低酸素性虚血性脳傷害を生じるため、一定温度(37℃)において、ラットを、片方の総頸動脈結紮の後、8%酸素/残部窒素の吸入によりもたらされる全身性の低酸素症に供した(非特許文献1)。
ラットモデルは、周産期低酸素性虚血性脳傷害の根底にある機構、及び治療的介入によりどのようにして組織損傷を予防又は最小化し得るかに関する重要な情報を提供することを証明した。特に、低体温法、キセノン処置及びエリスロポエチン投与を含む可能性のある処置を評価するため、生理的及び治療的な手技が未熟なラットの周産期低酸素性虚血性脳傷害モデルに対して適用されてきた。
有望な神経保護剤としては、抗てんかん薬、エリスロポエチン、メラトニン及びキセノンが挙げられる。仮死の動物モデルによるデータは、低体温法に対して発作後数時間から数日以内に開始するアジュバント療法を追加することによってHIE後の神経学的予後が改善され得ることを更に示唆する。これらの有望な処置は、直ちに臨床試験で判断される必要がある。例えば、バイオマーカーの結果、例えばリン磁気共鳴分光法を用い、少数の幼児を用いる第I〜II相臨床研究は、実際的な試験に対して新たな処置が行われる以前に安全性及び潜在的な有効性を評価するための鍵である。キセノン及びエリスロポエチンの第I〜II相試験は、既に計画されているか、又は進行中である。
神経障害、特にCNS損傷又は神経変性疾患の治療法は、脳若しくは脊髄の傷害から保護すること、又は、例えば神経栄養因子を介して神経細胞の活動を回復することに重点をおく場合がある。例えば、上皮成長因子(EGF)及びトランスフォーミング成長因子−アルファ(TGF−α)等の神経栄養因子は、神経細胞の生存、増殖、分化、大きさ及び機能を多様に支持するポリペプチドである。また、神経障害の処置は、自然な細胞死、損傷又は疾患によるそれらの神経系細胞の脱落を置き換えるための幹細胞の投与も含む場合がある。
かかる神経栄養因子又は幹細胞の投与に見られる問題は、血流からCNS中への移行を妨げ得る血液脳関門である。したがって、処置は、かかる処置を必要とする被験体のCNSの損傷又は傷害部位への直接的な神経栄養因子の適用又は幹細胞の注入をしばしば必要とする。
一般に神経障害の処置の成功が少ないことを考慮すると、好ましくは侵襲的な頭蓋内の処理又は血液脳関門の通過が改善された物質に頼らない、更なる治療剤及び方法が依然として必要である。
Vanucci et al. 2005. Dev Neurosci, vol. 27, 81-86
本発明は、当該技術分野における1又は複数の上述の要求に対処する。
実験の欄に示されるように、本発明者らは、エステトロールにより例証されるように、或る特定のエストロゲン成分が神経保護効果を有することを見出した。例えば、本発明者らは、驚くべきことに、エステトロールを用いて仔ラットを処置することにより低酸素虚血に起因する脳傷害から仔ラットが保護されることを示した。また、とりわけ、低酸素虚血に続いて(すなわち、その後に)エステトロールによって例証される或る特定のエストロゲン成分を用いて仔ラットを処置することによって結果的に脳損傷が少なくなることを示し、これらの化合物が有利な治療効果を呈することを裏付けた。さらに、エステトロールによって例証される或る特定のエストロゲン化合物を用いた仔ラットの処置は、神経発生及び血管新生を促進することが示された。
エステトロール(E4)は、ヒトの妊娠期間中に胎児肝臓のみにより合成され、胎盤を通して母体循環に到達するエストロゲン様ステロイド物質である。E4は妊娠9週目と早期から母親の尿中に見出され、妊娠が進むにつれて実質的に増加する(Holinka et al. 2008. J Steroid Biochem Mol Biol, vol. 110, 138-143)。また、非抱合型E4は、羊水にも見出される。エステトロールは、ヒドロキシル化を介してその前駆体から形成されるエストラジオール(E2)の主要な代謝産物である。
E4は、E2と比較するとエストロゲン受容体結合親和性が低いことから、E2と比べて効能が弱いとされている。競合的受容体結合の研究は、E2の親和性結合と比較して核及び細胞質のエストロゲン受容体に対するE4の低い親和性結合を明らかにし、それぞれE2について1.0及びE4について0.015の細胞質エストロゲン受容体結合の値を示した(上記Holinka et al.)。E4は、E2と比べて培養エストロゲン反応性MCF−7細胞の増殖促進において弱いエストロゲンとして作用し、E2の効能はE4よりも50倍高いことが示された。
Warmerdam et al. 2008(Climacteric, vol. 11 (suppl. 1), 59-63)は、実験の設定に依存する、エステトロールのPowの対数又は「Pow Log」(Pow Log=1.47又は1.695)として表される、化合物の親油性又は親水性特性の尺度であるオクタノール/水分配(Pow)係数を報告した。Pow Log 2.0が化合物を、血液脳関門を通過させるのに最適とされていることから(上記Warmerdam et al. 2008)、新生児HIEのラットモデルにおけるエステトロールの強い神経保護作用は驚くべきものである。
最近の薬理学的データ及び臨床データは、ホルモン療法、避妊、骨粗しょう症及び更年期の顔面潮紅の予防、がんの治療法、並びに心血管症状の処置又は予防等の用途へのE4の臨床的使用の可能性を支持する。我々の知る限り、中枢神経系においてE4により例証されるエストロゲン成分の効果は、これまで説明されていない。
したがって一態様では、本発明は、神経障害の処置に使用される、
式(I):
Figure 0006139662
(式中、R、R、R、Rは、各々独立して、水素原子、ヒドロキシル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基であり、R、R、Rの各々はヒドロキシル基であり、R、R、R、Rのうちの3つ以下は水素原子である)を有するエストロゲン物質、
エストロゲン物質の前駆体、及び、1以上のエストロゲン物質及び/又は前駆体の混合物、
からなる群から選択されるエストロゲン成分を提供する。
好ましくは本発明は、神経障害の処置における使用のための、
式(I):
Figure 0006139662
(式中、R、R、R、Rは、各々独立して、水素原子、キドロキシル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基であり、R、R、Rの各々はヒドロキシル基であり、R、R、R、Rのうちの3つ以下は水素原子である)を有するエストロゲン物質、
エストロゲン物質の前駆体であって、該前駆体が、少なくとも1つのヒドロキシル基の水素原子が炭素数1〜25の炭化水素カルボン酸、スルホン酸若しくはスルファミン酸のアシルラジカル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、又は1残基あたり1個〜20個のグリコシド単位を含有する直鎖若しくは分岐鎖のグリコシド残基によって置換されている、エストロゲン物質の誘導体、及び、
1以上のエストロゲン物質及び/又は前駆体の混合物、
からなる群から選択されるエストロゲン成分を提供する。
また、本発明は、かかる処置を必要とする患者における神経障害を処置する方法であって、治療的有効量の本明細書に教示されるエストロゲン成分を上記患者に投与することを含む、方法を提供する。
また、本発明は、神経障害の処置用医薬の製造への本明細書に教示されるエストロゲン成分の使用を提供する。
好ましい実施の形態では、Rは、ヒドロキシル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を表し、より好ましくはRはヒドロキシル基を表す。
好ましい実施の形態では、R、R、R及びRのうちの少なくとも2つ、より好ましくは3つが水素原子を表す。特に好ましい実施の形態では、R、R及びRは、水素原子を表す。
或る特定の実施の形態では、Rは、ヒドロキシル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を表し、より好ましくはRはヒドロキシル基を表し、基R、R及びRのうちの少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つ、更に好ましくは3つ全てが水素原子を表す。
更に好ましい実施の形態では、R、R及びRは水素原子を表し、R、R及びR及びRはヒドロキシル基を表し、よって、エストロゲン物質又はエストロゲン成分は1,3,5(10)−エストラトリエン−3,15,16,17−テトロールである。特に好ましい実施の形態では、エストロゲン物質又はエストロゲン成分は、1,3,5(10)−エストラトリエン−3,15α,16α,17β−テトロール(エステトロール)である。
好ましい実施の形態では、前駆体は、少なくとも1つのヒドロキシル基の水素原子が炭素数1〜25の炭化水素カルボン酸、スルホン酸若しくはスルファミン酸のアシルラジカル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、又は1残基あたり1〜20のグリコシド単位を含有する直鎖若しくは分岐鎖のグリコシド残基によって置換されているエストロゲン物質の誘導体である。
上述のとおり、本発明は、神経障害の処置に使用される本明細書に教示されるエストロゲン成分を提供する。
好ましい実施の形態では、本発明は、神経障害の治療的処置、すなわちエストロゲン成分を神経障害と診断された被験体に投与する神経障害の処置に使用される、本明細書に教示されるエストロゲン成分を提供する。
「神経障害」という用語は、一般的に、中枢神経系及び末梢神経系を含む神経系に影響を与える障害を意味する。
好ましい実施の形態では、神経障害は損傷であり、好ましくは中枢神経系の損傷、より好ましくは脳損傷、又は神経変性疾患である。よって、神経障害は、脳損傷、脊髄損傷、及び神経変性疾患を含む又はからなる群から選択されるのが好ましい。神経障害は、脳損傷及び神経変性疾患を含む又はからなる群から選択されるのがより好ましい。
好ましい実施の形態では、神経障害は、低酸素性脳損傷、無酸素性脳損傷、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、及びパーキンソン病を含む又はからなる群から選択される。
或る特定の実施の形態では、アルツハイマー病は、初期アルツハイマー病、すなわち前臨床段階又は最も初期の臨床段階のアルツハイマー病である。
或る特定の実施の形態では、パーキンソン病は、初期の認知症を伴わないパーキンソン病又は軽度認知障害を伴うパーキンソン病である。
「低酸素性損傷」又は「無酸素性損傷」という用語は、本明細書において、それぞれ低酸素性(すなわち、脳への酸素供給の低下)又は無酸素性(すなわち、脳に対する完全な酸素の欠如)の機構のいずれかに起因する酸素欠乏の結果としての脳損傷を意味する。低酸素性/無酸素性損傷は、脳の局所領域(複数の場合もあり)又は脳全体に影響を与え得る。或る特定の好ましい実施の形態では、低酸素性/無酸素性/外傷性脳損傷は、少なくとも海馬又は大脳皮質、例えば、少なくとも海馬及び大脳皮質、好ましくは少なくとも海馬に影響を与える。
好ましい実施の形態では、神経障害は、低酸素性虚血性脳症(HIE)である。
「低酸素性虚血性脳症」又は「HIE」という用語は、本明細書において具体的には、脳全体の十分な酸素供給が絶たれているが、完全には欠乏していない場合に生じる状態を意味する。不十分な酸素供給は、低酸素(すなわち酸素利用率の低下)が原因であり、及び/又は虚血(すなわち血流の途絶に起因する酸素欠乏)が原因であり得る。或る特定の好ましい実施の形態では、HIEは、少なくとも海馬又は大脳皮質、例えば少なくとも海馬及び大脳皮質、好ましくは少なくとも海馬に影響を与える。
特に好ましい実施の形態では、本明細書に教示されるエストロゲン成分は、新生児の低酸素性虚血性脳症(HIE)の処置に使用される。
本明細書で使用される「新生児HIEの処置」という表現は、脳傷害から保護することを包含し得て、例えば、発達遅延、精神遅滞又は脳性麻痺(CP)(CPの改善は、例えば、運動、行動、及び/又は認知機能の向上を含む)等の新生児HIE関連障害の予防、それに関連する症状の緩和、又はその程度の減弱を更に包含し得る。本明細書で使用される「脳性麻痺」という用語は、慢性的な運動又は姿勢の障害を特徴とする一連の状態を指す。脳性麻痺は、発作性傷害、感覚機能障害及び/又は認知的限界を伴う場合がある。
上記及び更なる態様、本発明の好ましい実施形態及び特徴は、以下の項及び添付の特許請求の範囲に記載される。本明細書に記載される各々の態様、実施形態又は特徴は、特に明らかに矛盾しない限り、任意の他の態様(複数の場合もあり)、実施形態(複数の場合もあり)又は特徴(複数の場合もあり)と組み合わされてもよい。特に、本明細書に詳述される任意の特徴、とりわけ好ましい又は有利であることが示された任意の特徴は、本明細書に詳述される任意の他の特徴(複数の場合もあり)、とりわけ好ましい又は有利であることが示された任意の他の特徴(複数の場合もあり)と組み合わされてもよい。添付の特許請求の範囲の主題は、これにより具体的に引用することにより本明細書の一部をなす。
手術後の仔ラットの体重。出産後を含む4日〜7日に、ビヒクル(生理食塩溶液)(ビヒクル)、5mg/kg E4(E4 5mg/kg)若しくは50mg/kg E4(E4 50mg/kg)のいずれかを腹腔内注射するか、又は注射しなかった(シャム)仔ラットの手術後の体重。シャム群の仔ラット7匹、ビヒクル群の仔ラット11匹、E4 5mg/kg群の仔ラット7匹、及びE4 50mg/kg群の仔ラット5匹の体重の平均±SEMを示す。 仔ラットの脳重量。出産後を含む4日〜7日に、ビヒクル(生理食塩溶液)(ビヒクル)、5mg/kg E4(5mg/kg)、若しくは50mg/kg E4(50mg/kg)のいずれかを腹腔内注射するか、又は注射しなかった(シャム)仔ラットの脳重量。シャム群の仔ラット7匹、ビヒクル群の仔ラット11匹、E4 5mg/kg群の仔ラット7匹、及びE4 50mg/kg群の仔ラット5匹の出産後14日目の屠殺の際の脳重量の平均±SEMを示す。スケールバー:2mm。 仔ラットの海馬領域の脳切片のヘマトキシリン−エオシン染色。出産後14日目の屠殺の際に仔ラットの脳を摘出し、パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィン包埋した試料の海馬領域の切片作成及びヘマトキシリン−エオシン染色のために加工した。出産後を含む4日〜7日に、ビヒクル(生理食塩溶液)(ビヒクル)、5mg/kg E4(E4 5mg/kg)、若しくは50mg/kg E4(E4 50mg/kg)のいずれかを仔ラットに腹腔内注射するか、又は注射しないかの(シャム)いずれかであった。 仔ラットのヘマトキシリン−エオシン染色脳切片における無傷細胞の計測。仔ラットのヘマトキシリン−エオシン染色脳切片の海馬の歯状回帯(DG)、顆粒細胞下帯(SGZ)、及びアンモン角(CA1、CA2/CA3)、及び皮質において無傷細胞を計測した。無傷細胞を各々の脳領域の3視野において倍率400倍で計測し、平均を1視野あたりの無傷細胞数として表す。シャム群の仔ラット7匹、ビヒクル群の仔ラット11匹、E4 5mg/kg群の仔ラット7匹、及びE4 50mg/kg群の仔ラット5匹の無傷細胞数/1視野重量(weights)の平均±SEMを示す。 エステトロールで予め処置した仔ラットの手術後の体重。指示される各々の出生後日数(X軸)において、6本の棒グラフは左から右に、それぞれ、ビヒクル又はE4を注射していない仔ラット(シャム群、n=24)、出生後4日〜7日を含めてビヒクルを腹腔内注射した仔ラット(ビヒクル群、n=14)、出生後4日〜7日を含めて1mg/kg E4を腹腔内注射した仔ラット(n=11)、出生後4日〜7日を含めて5mg/kg E4を腹腔内注射した仔ラット(n=14)、出生後4日〜7日を含めて10mg/kg E4を腹腔内注射した仔ラット(n=14)、又は出生後4日〜7日を含めて50mg/kg E4を腹腔内注射した仔ラット(n=19)の手術後の体重(単位g)を表す。出生後7日目の最後の注射から30分後に、仔ラットを低酸素性虚血性傷害に供した。シャム動物を、低酸素性虚血性傷害を含まない同様の処理に供した。測定を平均±SEMとして表す。 エステトロールで予め処置した仔ラットの脳重量。ビヒクル若しくはE4を注射しなかった仔ラット(シャム群、n=24)、又は出生後4日〜7日を含めてビヒクル(ビヒクル群、n=14)、1mg/kg E4(n=11)、5mg/kg E4(n=14)、10mg/kg E4(n=14)、若しくは50mg/kg E4(n=19)を腹腔内注射した仔ラットの脳重量(単位g)。出生後7日目の最後の注射から30分後、仔ラットを低酸素性虚血性傷害に供した。シャム動物を、低酸素性虚血性傷害を含まない同様の処理に供した。測定を平均±SEMとして表す。 エステトロールで予め処置した仔ラットの冠状脳切片のヘマトキシリン−エオシン染色及び無傷細胞の計測。仔ラットに、(a)ビヒクル若しくはE4を注射しなかった(シャム群、n=24)、又は出生後4日〜7日を含めて(b)ビヒクル(ビヒクル群、n=16)、(c)1mg/kg E4(n=10)、(d)5mg/kg E4(n=13)、(e)10mg/kg E4(n=10)、若しくは(f)50mg/kg E4(n=14)を腹腔内注射した。出生後7日目の最後の注射から30分後、仔ラットを低酸素性虚血性傷害に供した。シャム動物を、低酸素性虚血性傷害を含まない同様の処理に供した。出生後14日目の屠殺に際して脳を摘出し、パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィン包埋した脳試料を海馬領域において冠状切片にした。試験群の(A)脳冠状切片(スケールバー:2mm)、(B)海馬領域(スケールバー:500μm)、及び(C)皮質(スケールバー:100μm)のヘマトキシリン−エオシン染色を示す。 (D)ヘマトキシリン−エオシン染色された仔ラットの冠状脳切片の海馬の種々の領域:歯状回(DG)、顆粒細胞下帯(SGZ)、及びアンモン角(CA1、CA2/CA3)、ならびに皮質で無傷細胞を計測した。無傷細胞を各々の脳領域の3視野において倍率400倍で計測し、平均を1視野あたりの無傷細胞数として表す。示される各脳領域(X軸上のDG、SGZ、CA1、CA2/3、皮質)について、6本の棒グラフは左から右に、それぞれ、シャム群の仔ラット、ビヒクル群の仔ラット、1mg/kg E4で処置した仔ラット、5mg/kg E4で処置した仔ラット、10mg/kg E4で処置した仔ラット、又は50mg/kg E4で処置した仔ラットの1視野あたりの無傷細胞数を表す。全ての測定を平均±SEMとして表す。 エステトロールで予め処置した仔ラットの脳冠状切片の微小管結合タンパク質2(MAP2)染色。仔ラットに、(a)ビヒクル若しくはE4を注射しなかった(シャム群)、又は出生後4日〜7日を含めて(b)ビヒクル(ビヒクル群)、(c)1mg/kg E4、(d)5mg/kg E4、(e)10mg/kg E4、若しくは(f)50mg/kg E4を腹腔内注射した。出生後7日目の最後の注射から30分後、仔ラットを低酸素性虚血性傷害に供した。シャム動物を、低酸素性虚血性傷害を含まない同様の処理に供した。出生後14日目の屠殺に際して脳を摘出し、パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィン包埋した脳試料を海馬領域において冠状切片にした。抗MAP2抗体による免疫組織学的染色を介して神経細胞骨格の破壊を検出するため切片を加工した。(A)脳冠状切片のMAP2染色(スケールバー:2mm)を示す。 (B)MAP2陽性領域の比率を、同側半球のMAP2陽性領域を対側半球のMAP2陽性領域で除算して算出した。各試験群に由来する10個の試料を分析した。シャム群のMAP2陽性領域の比率をデフォルトで1とした。 エステトロールで予め処置した仔ラットの海馬及び皮質のダブルコルチン(DCX)及び血管内皮成長因子(VEGF)染色。仔ラットに、ビヒクル若しくはE4を注射しなかった(シャム群)、又は出生後4日〜7日を含めてビヒクル(ビヒクル群)、1mg/kg E4、5mg/kg E4、10mg/kg E4、若しくは50mg/kg E4を腹腔内注射した。出生後7日目の最後の注射から30分後、仔ラットを低酸素性虚血性傷害に供した。シャム動物を、低酸素性虚血性傷害を含まない同様の処理に供した。出生後14日目の屠殺に際して脳を摘出し、パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィン包埋した脳試料を海馬領域において冠状切片にした。切片を抗DCX抗体及び抗VEGF抗体で二重染色した。DCX(A)及びVEGF(B)陽性細胞の割合を、DCX又はVEGF陽性染色細胞のいずれかの合計をDAPI陽性細胞の総数で除算して定量化した。海馬の種々の領域(歯状回(DG)、アンモン角1(CA1)、アンモン角2/3(CA2/CA3))及び皮質において定量化を行った。シャム群、1mg/kg E4群、5mg/kg E4群、10mg/kg E4群、又は50mg/kg E4群において10個の試料を解析し、ビヒクル群に由来する12個の試料と比較した。示される各脳領域(X軸上のDG、CA1、CA2/3、皮質)について、6本の棒グラフは左から右に、それぞれ、シャム群、ビヒクル群、1mg/kg E4群、5mg/kg E4群、10mg/kg E4群、又は50mg/kg E4群のDCX(A)又はVEGF(B)陽性細胞の割合を表す。全ての測定を平均±SEMとして表す。 エステトロールで予め処置した仔ラット血清中のS100B及びグリア細胞線維性酸性タンパク質(GFAP:Glial Fibrillary Acidic Protein)の発現。仔ラットに、ビヒクル若しくはE4を注射しなかった(シャム群、それぞれS100Bについてn=20及びGFAPについてn=21)、又は出生後4日〜7日を含めてビヒクル(ビヒクル群、それぞれS100Bについてn=13及びGFAPについてn=15)、1mg/kg E4(それぞれS100Bについてn=10及びGFAPについてn=11)、5mg/kg E4(それぞれS100Bについてn=11及びGFAPについてn=11)、10mg/kg E4(それぞれS100Bについてn=13及びGFAPについてn=10)、若しくは50mg/kg E4(それぞれS100Bについてn=19及びGFAPについてn=18)を腹腔内注射した。出生後7日目の最後の注射から30分後に、仔ラットを低酸素性虚血性傷害に供した。シャム動物を、低酸素性虚血性傷害を含まない同様の処理に供した。出生後14日目の屠殺に際して血液試料を採取した。血清中のS100B(A)、GFAP(B)の濃度を検査するためS100B及びGFAPについてELISAを行った。全ての測定を平均±SEMとして示す。 エステトロールで処置した仔ラットの手術後の体重。出生後7日目に仔ラットを低酸素性虚血性傷害に供した。低酸素状態からの回復に際し、仔ラットに単回用量のビヒクル(ビヒクル群、n=20)、1mg/kg E4(n=16)、5mg/kg E4(n=19)、10mg/kg E4(n=17)、又は50mg/kg E4(n=15)を腹腔内注射した。シャム動物を、低酸素性虚血性傷害を含まない同様の処理に供し、ビヒクル又はE4のいずれも注射しなかった(シャム群、n=29)。示される各出生後の日数において(X軸)、6本の棒グラフは左から右に、それぞれ、シャム群、ビヒクル群、1mg/kg E4群、5mg/kg E4群、10mg/kg E4群、又は50mg/kg E4群に由来する仔ラットの手術後の体重(単位g)を表す。測定を平均±SEMとして表す。 エステトロールで処置した仔ラットの脳重量。出生後7日目に仔ラットを低酸素性虚血性傷害に供した。低酸素状態からの回復に際し、仔ラットに単回用量のビヒクル(ビヒクル群、n=20)、1mg/kg E4(n=16)、5mg/kg E4(n=19)、10mg/kg E4(n=17)、又は50mg/kg E4(n=15)を腹腔内注射した。シャム動物を、低酸素性虚血性傷害を含まない同様の処理に供し、ビヒクル又はE4のいずれも注射しなかった(シャム群、n=29)。仔ラットの脳重量(単位g)を示す。測定を平均±SEMとして表す。 エステトロールで処置した仔ラットの冠状脳切片のヘマトキシリン−エオシン染色及び無傷細胞の計測。出生後7日目に、仔ラットを低酸素性虚血性傷害に供した。低酸素状態からの回復に際し、仔ラットに単回用量の(b)ビヒクル(ビヒクル群、n=10)、(c)1mg/kg E4(n=10)、(d)5mg/kg E4(n=10)、(e)10mg/kg E4(n=10)、又は(f)50mg/kg E4(n=10)を腹腔内注射した。シャム動物(a)を、低酸素性虚血性傷害を含まない同様の処理に供し、ビヒクル又はE4のいずれも注射しなかった(シャム群、n=10)。出生後14日目の屠殺に際して脳を摘出し、パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィン包埋した試料を海馬領域において冠状切片を作製するために加工した後、ヘマトキシリン−エオシン染色を行った。(A)脳冠状切片(スケールバー:2mm)、(B)海馬領域(スケールバー:500μm)、及び(C)皮質(スケールバー:100μm)のヘマトキシリン−エオシン染色を示す。 (D)ヘマトキシリン−エオシン染色された冠状脳切片の海馬の種々の領域:歯状回(DG)、顆粒細胞下帯(SGZ)、及びアンモン角(CA1、CA2/CA3)、ならびに皮質で無傷細胞を計測した。無傷細胞を各脳領域の3視野において倍率400倍で計測し、平均を1視野あたりの無傷細胞数として表す。示される各脳領域(X軸上のDG、SGZ、CA1、CA2/3、皮質)について、6本の棒グラフは左から右に、それぞれ、シャム群の仔ラット、ビヒクル群の仔ラット、1mg/kg E4で処置した仔ラット、5mg/kg E4で処置した仔ラット、10mg/kg E4で処置した仔ラット、又は50mg/kg E4で処置した仔ラットの1視野あたりの無傷細胞数を表す。全ての測定を平均±SEMとして表す。 エステトロールで処置した仔ラットの脳冠状切片の微小管結合タンパク質2(MAP2)染色。出生後7日目に、仔ラットを低酸素性虚血性傷害に供した。低酸素状態からの回復に際し、仔ラットに単回用量の(b)ビヒクル(ビヒクル群、n=10)、(c)1mg/kg E4(n=10)、(d)5mg/kg E4(n=10)、(e)10mg/kg E4(n=10)、又は(f)50mg/kg E4(n=10)を腹腔内注射した。シャム動物(a)を、低酸素性虚血性傷害を含まない同様の処理に供し、ビヒクル又はE4のいずれも注射しなかった(シャム群、n=10)。出生後14日目の屠殺に際して脳を摘出し、パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィン包埋した試料を海馬領域において冠状切片にした。抗MAP2抗体による免疫組織学的染色を介して神経細胞骨格の破壊を検出するため切片を加工した。(A)脳冠状切片のMAP2染色を示す(スケールバー:2mm)。 (B)MAP2陽性領域の比率を、同側半球のMAP2陽性領域を対側半球のMAP2陽性領域で除算して算出した。各群に由来する10個の試料を解析した。シャム群のMAP2陽性領域の比率をデフォルトで1.0とした。 エステトロールで処置した仔ラットの海馬及び皮質におけるダブルコルチン(DCX)及び血管内皮成長因子(VEGF)染色。出生後7日目に、仔ラットを低酸素性虚血性傷害に供した。低酸素状態からの回復に際し、仔ラットに単回用量のビヒクル(ビヒクル群、n=10)、1mg/kg E4(n=10)、5mg/kg E4(n=10)、10mg/kg E4(n=10)、又は50mg/kg E4(n=10)を腹腔内注射した。シャム動物(a)を、低酸素性虚血性傷害を含まない同様の処理に供し、ビヒクル又はE4のいずれも注射しなかった(シャム群、n=10)。出生後14日目の屠殺に際して脳を摘出し、パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィン包埋した試料を海馬領域において冠状切片にした。切片を抗DCX抗体及び抗VEGF抗体で二重染色した。DCX(A)及びVEGF(B)陽性細胞の割合を、DCX又はVEGF陽性染色細胞のいずれかの合計をDAPI陽性細胞の総数で除算して定量化した。海馬の種々の領域(歯状回(DG)、アンモン角1(CA1)、アンモン角2/3(CA2/CA3))及び皮質において定量化を行った。各研究群に由来する10個の試料を分析した。指示される各脳領域(X軸上のDG、CA1、CA2/3、皮質)について、6本の棒グラフは左から右に、それぞれ、シャム群、ビヒクル群、1mg/kg E4群、5mg/kg E4群、10mg/kg E4群、又は50mg/kg E4群のDCX(A)又はVEGF(B)陽性細胞の割合を表す。全ての測定を平均±SEMとして示す。 エステトロールで処置した仔ラットの血清中のS100B及びグリア細胞線維性酸性タンパク質(GFAP)の発現。出生後7日目に仔ラットを、低酸素性虚血性傷害に供した。低酸素状態からの回復に際し、仔ラットに単回用量のビヒクル(ビヒクル群、それぞれS100Bについてn=14及びGFAPについてn=16)、1mg/kg E4(それぞれS100Bについてn=13及びGFAPについてn=15)、5mg/kg E4(それぞれS100Bについてn=16及びGFAPについてn=15)、10mg/kg E4(それぞれS100Bについてn=13及びGFAPについてn=13)、又は50mg/kg E4(それぞれS100Bについてn=15及びGFAPについてn=14)を腹腔内注射した。シャム動物(a)を、低酸素性虚血性傷害を含まない同様の処理に供し、ビヒクル又はE4のいずれも注射しなかった(シャム群、それぞれS100Bについてn=20及びGFAPについてn=21)。出生後14日目の屠殺に際して血液試料を採取した。血清中のS100B(A)、GFAP(B)の濃度を検査するためS100Bタンパク質及びGFAPタンパク質についてELISAを行った。全ての測定を平均±SEMとして示す。
本明細書で使用される数量を特定していない単数形("a", "an", and "the")は、文脈により明確に指示されない限り、単数及び複数の両方の指示物を含む。
本明細書で使用される「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含まれる(comprised of)」という用語は、「含んでいる、挙げられている(including)」、「含む、挙げられる(includes)」又は「含有している(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包括的又はオープンエンド(open-ended)であり、追加的な、列挙されていないメンバー、要素又は方法工程を除外するものではない。また、この用語は、「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
端点(endpoints)による数値範囲の列挙は、各範囲内に包含される全ての数字及び端数、また列挙される端点を含む。
本明細書で使用される「約」という用語は、パラメーター、量、時間的期間等の測定可能な値を指す場合、具体的な値の及びその値からの変量を包含し、具体的には、かかる変量が開示される発明を実施するのに適切である限り、具体的な値の及びその値から±10%以下、好ましくは±5%以下、より好ましくは±1%以下、更に好ましくは±0.1%以下の変量を包含することを意味する。修飾語「約」が指す値は、その値自体も具体的に、また好ましくは、開示される。
一群のメンバーの1以上のメンバーといった「1以上」という用語が、更なる例示によりそれ自体明確であるが、とりわけこの用語は、例えば、上記メンバーの任意の1つ、又は上記メンバーの任意の3以上、4以上、5以上、6以上、若しくは7以上等、また上記メンバーの全てに及ぶ上記メンバーの任意の2以上に対する言及を包含する。
本明細書に引用される全ての文献は、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
別段の定めがない限り、技術用語及び科学用語を含む本発明の開示に使用される全ての用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解される意味を有する。更なる指示により、用語の定義は、本発明の教示をよりよく理解するために含まれ得る。或る特定の用語が具体的な態様又は実施形態と組合せて説明又は定義される場合、別段の定めがない限り又は文脈による明確な規定がない限り、かかる含意は本明細書を、全体を通して、すなわち他の態様又は実施形態に適用されることが意図される。
本発明者らは、エステトロール及び関連するエストロゲン成分が、仔ラットにおける新生児の低酸素性虚血性脳症の確立されたモデルで説明されるように神経保護効果を有することを見出した。また、本発明者らは、エステトロール及び関連するエストロゲン成分が、同じ新生児の低酸素性虚血性脳症のラットモデルにおいて示されるように治療効果を呈することを明らかにした。さらに、本発明者らはエステトロール及び関連するエストロゲン成分は、仔ラットの脳で神経発生及び血管新生を誘導又は促進することを見出した。
本明細書で使用される「エストロゲン成分」という用語は、本明細書に教示されるエストロゲン物質、その前駆体、又は1以上の上記エストロゲン物質及び/又は前駆体の混合物を指す。
或る特定の実施形態では、エストロゲン成分は、
式(I)(式中、Rは水素原子、ヒドロキシル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基であり、Rは水素原子、ヒドロキシル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基であり、Rは水素原子、ヒドロキシル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基であり、Rは水素原子、ヒドロキシル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基であり、Rはヒドロキシル基であり、Rはヒドロキシル基であり、Rはヒドロキシル基であり、かつR、R、R及びRのうちの3つ以下が水素原子である)を有するエストロゲン物質、
上記エストロゲン物質の前駆体、及び、
1以上のエストロゲン物質及び/又は前駆体の混合物、
からなる群から選択される。
或る特定の実施形態では、エストロゲン成分は、
式(I)(式中、Rは水素原子、ヒドロキシル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基であり、Rは水素原子、ヒドロキシル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基であり、Rは水素原子、ヒドロキシル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基であり、Rは水素原子、ヒドロキシル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基であり、Rはヒドロキシル基であり、Rはヒドロキシル基であり、Rはヒドロキシル基であり、かつR、R、R及びRのうちの1つが水素原子、又は炭素数1〜5のアルコキシ基である)を有するエストロゲン物質、
上記エストロゲン物質の前駆体、及び、
1以上のエストロゲン物質及び/又は前駆体の混合物、
からなる群から選択される。
実施形態では、エストロゲン成分は、
式(III):
Figure 0006139662
(式中、Rは水素原子、ヒドロキシル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基であり、Rは水素原子、ヒドロキシル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基であり、Rは水素原子、ヒドロキシル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基であり、Rは水素原子、ヒドロキシル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基であり、
かつR、R、R、及びRの少なくとも1つがヒドロキシル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基である)を有するエストロゲン物質、
上記エストロゲン物質の前駆体、及び、
1以上のエストロゲン物質及び/又は前駆体の混合物、
からなる群から選択される。
「炭素数1〜5のアルコキシ基」という表現は、「C1〜5アルコキシ」又は「C1〜5アルキルオキシ」も意味し得て、式:−OR(式中、Rが本明細書で定義されるC1〜5アルキルである)を有するラジカルを指す。好適なC1〜5アルキルオキシの非限定的な例として、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、イソブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、tert−ブチルオキシ、及びペンチルオキシが挙げられる。
本明細書に教示されるエストロゲン物質は、ステロイド骨格中の五員環が0〜2ではなく少なくとも3つのヒドロキシル置換基を含む点で、医薬製剤に一般的に適用される生物起源及び合成エストロゲンのいずれとも異なる。
また、該エストロゲン物質は、それらの立体異性体、それらの薬学的に許容可能な付加塩、水和物及び溶媒和物も包含する。
式(I)及び式(III)により表されるエストロゲン物質は、ヒドロキシル置換基を保有する炭素原子、具体的にはR、R及びRがキラルに活性(chirally active)であることから、様々なエナンチオマーを包含する。好ましい実施形態では、エストロゲン物質は、15α−ヒドロキシ置換されている。他の好ましい実施形態では、上記物質は16α−ヒドロキシ置換されている。更に他の好ましい実施形態では、上記物質は17β−ヒドロキシ置換されている。エストロゲン物質は、15α,16α,17β−トリヒドロキシ置換されているのが最も好ましい。本明細書に教示されるエストロゲン物質のステロイド骨格中の他のキラルに活性な炭素原子は、17β−エストラジオール及び他の生物起源エストロゲン中の対応する炭素原子と同じ立体配置を有するのが好ましい。
好ましくは、本明細書で使用されるエストロゲン物質は、いわゆる生物起源エストロゲン、すなわち、人体で自然発生するエストロゲンである。生物起源エストロゲンが胎児及び女性の体内に天然に存在することから、特にかかるエストロゲンの外部からの投与により生じる血清レベルが自然発生的な濃度を実質的に超えない限り、副作用が生じないと予想される。
好ましい実施形態では、R、R、R、Rの少なくとも1つ、より好ましくは厳密に1つがヒドロキシル基を表し、エストロゲン物質が少なくとも4つ、好ましくは厳密に4つのヒドロキシル基を含有することを意味する。エストロゲン物質が4つのヒドロキシル基を含有する場合、テトラヒドロキシル化エストロゲンとも称され得る。
少なくとも4つのヒドロキシル基を含有する商業的に入手可能なエストロゲン及びそれらの前駆体の非限定的な例は、1,3,5(10)−エストラトリエン−2,3,15α,16α,17β−ペントール2−メチルエーテル、1,3,5(10)−エストラトリエン−2,3,15β,16α,17β−ペントール2−メチルエーテル、1,3,5(10)−エストラトリエン−3,15α,16α,17β−テトロール、1,3,5(10)−エストラトリエン−3,15α,16α,17β−テトロールテトラアセテート、又は1,3,5(10)−エストラトリエン−3,15β,16β,17β−テトロールテトラアセテートである。
特に好ましい実施形態では、エストロゲン物質は、1,3,5(10)−エストラトリエン−3,15,16,17−テトロールである。
更に特に好ましい実施形態では、エストロゲン物質はエステトロールである。
「エステトロール」、「1,3,5(10)−エストラトリエン−3,15α,16α,17β−テトロール」及び「E」は同義語であり、妊娠期間にのみヒト胎児肝臓により自然に産生されることが知られているエストロゲン化合物を指すため、本明細書では互換的に使用される。それは、4つのヒドロキシル基の存在を特徴とするテトラヒドロキシル化エストロゲンであり、そのため頭字語はEである。その一般式は、式(II)により表される:
Figure 0006139662
また、本発明は、本明細書に教示されるエストロゲン物質の前駆体の使用も包含する。これらの前駆体は、特に本発明に従って使用される場合、例えば、代謝転換の結果、エストロゲン物質を遊離することが可能である。
好ましくは、これらの前駆体は、エストロゲン物質の誘導体であり、少なくとも1つのヒドロキシル基の水素原子が、炭素数1〜25の炭化水素カルボン酸、スルホン酸若しくはスルファミン酸のアシルラジカル;テトラヒドロフラニル;テトラヒドロピラニル;又は1残基あたり1個〜20個のグリコシド単位を含有する直鎖若しくは分岐鎖のグリコシド残基により置換されている。
本発明に従って好適に使用することができる前駆体の非限定的な例は、エストロゲン物質のヒドロキシル基と1以上のカルボキシ(M+−OOC−)基(ここで、Mは水素又は(アルカリ)金属カチオンを表す)を含有する物質とを反応させることにより得ることができるエステルである。それゆえ、前駆体の特に好ましい例は、式(I)又は式(II)又は式(III)の少なくとも1つのヒドロキシル基の水素原子が−CO−R(ここで、Rは1個〜25個の炭素原子を含む炭化水素ラジカルであり、好ましくはRは、水素、又は1個〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルケニル、シクロアルキル、若しくはアリールラジカルである)で置換されているエストロゲン物質の誘導体である。
基として又は基の一部としての「アルキル」という用語は、本明細書では、式C2n+1(式中、nは1〜約25の数字である)のヒドロカルビルラジカルを指す。好ましくは、本明細書で意図されるアルキル基は、1個〜20個の炭素原子、例えば1個〜10個の炭素原子、1個〜5個の炭素原子、1個〜4個の炭素原子、又は1個〜3個の炭素原子、より好ましくは1個〜2個の炭素原子を含む。アルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、本明細書で示されるように置換されてもよい。本明細書において炭素原子の後に下付き文字が使用される場合、下付き文字は、指定された基が含有し得る炭素原子の数を指す。よって、例えば、C1〜5アルキルは、炭素数1〜5のアルキルを意味する。アルキル基、特にC1〜5アルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、2−メチルブチル、ペンチル、イソアミル及びその異性体である。
基としての又は基の一部としての「アルケニル」という用語は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい、1以上の炭素−炭素二重結合を含む不飽和ヒドロカルビル基を指す。アルケニル基は、少なくとも2個、例えば2個〜約25個の炭素原子の炭素原子を含み、本明細書で使用されるように、好ましくは2個〜約20個の炭素原子、例えば2個〜10個の炭素原子、2個〜5個の炭素原子、2個〜4個の炭素原子、又は2個〜3個の炭素原子を含み得る。アルケニル基の例は、エテニル、2−プロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−ペンテニル及びその異性体、2−ヘキセニル及びその異性体、2,4−ペンタジエニル等である。
基としての又は基の一部としての「シクロアルキル」という用語は、1個(すなわち、単環式)若しくは複数、例えば、2個(すなわち、二環式)の環状構造を有する飽和又は一部不飽和のヒドロカルビルラジカルを指す。多環式シクロアルキルラジカルの更なる環は、1以上のスピロ原子により縮合、架橋及び/又は結合されてもよい。シクロアルキル基は、独立して、1つの環に3個以上の炭素原子、例えば3個〜25個の炭素原子、好ましくは3個〜20個の炭素原子、より好ましくは3個〜8個の炭素原子、例えば5個、6個若しくは7個の炭素原子を含み得る。好ましくは、本明細書で意図されるシクロアルキル基は、単環式シクロアルキル基を指し、3個〜20個の炭素原子を含む。単環式シクロアルキルラジカルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル等が挙げられる。
基としての又は基の一部としての「アリール」という用語は、単一の芳香環(例えば、フェニル)又は互いに縮合するか(例えば、ナフチル)若しくは共有結合した(例えば、ビフェニル)複数(例えば、2個、3個、又は4個)の芳香環を含む、多価不飽和芳香族ヒドロカルビル基を指す。アリール基は、1つの環に少なくとも6個の炭素原子、好ましくは6個〜約20個の炭素原子、より好ましくは6個〜10個の炭素原子を含む。アリール基中の芳香環は、それと縮合した1個又は2個の付加的な環(シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び/又はヘテロアリール)を任意に含み得る。アリールの非限定的な例は、フェニル、ビフェニリル、5−又は6−テトラリニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−又は8−アズレニル、ナフタレン−1−又は−2−イル、4−、5−、6−又は7−インデニル、1−、2−、3−、4−又は5−アセナフチレニル、3−、4−又は5−アセナフテニル、1−、2−、3−、4−又は10−フェナントリル、1−又は2−ペンタレニル、4−又は5−インダニル、5−、6−、7−又は8−テトラヒドロナフチル、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、1,4−ジヒドロナフチル、1−、2−、3−、4−又は5−ピレニルを含む。
上述のとおり、本明細書で教示されるエストロゲン成分は、被験体における神経障害の処置に有用である。
本明細書で使用される「処置する」又は「処置」という用語は、治療的処置及び予防又は防止手段の両方を指し、その目的は、神経障害の発症等の望ましくない生理学的変化又は障害を防止又は減速(軽減)することである。有利な又は望ましい臨床結果としては、検出可能であるか又は検出不可能であるかに関わらず、障害の防止、障害の発生の減少、障害と関連する症状の緩和、障害の程度の減弱、安定化された(すなわち、悪化していない)障害の状態、障害の進行の遅延若しくは減速、障害状態の改善若しくは一時的な緩和、寛解(部分的又は全体的に関わらず)、又はこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。「処置」はまた、処置を受けていない場合に予測される生存と比較して、生存の延長を意味し得る。
或る特定の実施形態では、本明細書に教示されるエストロゲン成分は、神経障害の予防的処置又は防止的処置に使用することができる。すなわち、神経障害と診断されていない間(例えば、診断される前)にエストロゲン成分を被験体に投与する。例えば、被験体は、神経障害に罹患する/神経障害を発生するリスクにあると考えられ得る。それゆえ、かかる処置は、神経障害の防止に焦点が当てられる。
好ましい実施形態では、本明細書に教示されるエストロゲン成分は、神経障害の治療的処置に使用することができる。したがって、好ましい実施形態では、本発明は、神経障害の処置に使用される本明細書で教示されるエストロゲン成分に関し、ここで、エストロゲン成分は神経障害と診断された患者に投与される。それゆえ、かかる処置は、存在する神経障害の治療法に焦点が当てられる。
本明細書で使用される「治療的処置」又は「治療法」等の用語は、被験体の身体又はその要素を、神経障害等の望ましくない生理学的変化若しくは障害から、より重症度の低い状態若しくは不快感が和らいだ状態等の望ましい状態とすること(例えば、改善又は一時的な緩和)、又は正常な健康状態へと戻すこと(例えば、健康、生理学的完全性及び被験体の身体の健康の回復)、上記望ましくない生理学的変化若しくは障害を保持すること(すなわち、悪化させない)(例えば、安定化)、又は上記望ましくない生理学的変化若しくは障害と比較してより重症度の高い状態若しくはより悪化した状態へと進行するのを防止する若しくは減速することを目的とする処置を指す。
特に言及される場合を除き、「被験体」又は「患者」は、互換的に使用され、動物、好ましくは温血動物、より好ましくは脊椎動物、更に好ましくは哺乳動物、より一層好ましくは霊長類を指し、具体的にはヒト患者ならびに非ヒト哺乳動物及び霊長類が挙げられる。「哺乳動物の」被験体は、そのように分類される任意の動物を指し、ヒト、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、乳牛等の飼育動物、商業用動物、家畜、動物園の動物、スポーツ動物、ペット及び実験動物;類人猿、サル、オランウータン及びチンパンジー等の霊長類;イヌ及びオオカミ等のイヌ科動物;ネコ、ライオン及びトラ等のネコ科動物;ウマ、ロバ及びシマウマ等のウマ科動物;ウシ、ブタ及びヒツジ等の食用動物;シカ及びキリン等の有蹄動物;マウス、ラット、ハムスター、及びモルモット等の齧歯類等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい患者はヒト被験体である。
本明細書で使用される「処置を必要とする被験体」等の文言は、列挙される障害、具体的には神経障害の処置、好ましくは治療的処置からの利益を得るであろう被験体を含む。かかる被験体としては、上記障害と診断されたもの、上記障害に罹患する若しくは発症する傾向のあるもの、及び/又は上記障害を防止すべきものが挙げることができるが、これらに限定されない。特に意図されるのは、神経障害と診断された患者、又は神経障害を防止すべき患者である。
本明細書で使用される「診断」という用語は、被験体が列挙される障害、具体的には神経障害に影響されていることを確立すること及び結論付けることを指す。診断は、列挙される障害に関連する症状の検査に基づいて行われ得る(例えば、臨床的診断等)。代替的には又は追加的に、診断は、症状が検査可能である前(すなわち、前臨床的診断)か、又は症状が軽度であるか若しくは列挙される障害に限定されるため、例えば列挙される障害及び/又は画像化技術の指標であるバイオマーカーを検出することにより行われ得る。
本明細書で使用される「治療的有効量」という用語は、被験体の神経障害を処置する、すなわち、望ましい局所又は全身の効果及び成績を得るのに有効な本明細書に教示されるエストロゲン成分又は医薬組成物の量を指す。よって、この用語は、研究者、獣医、医師又は他の臨床医に求められる、組織、全身、動物、又はヒトにおける生物学的又は医学的反応を引き出すエストロゲン成分又は医薬組成物の分量を指す。特に、この用語は、神経障害と関連する臨床的な機能障害、症状、又は合併症を予防、治癒、改善、又は少なくとも最小化するのに必要な、単回用量又は複数回用量のいずれかの本明細書に教示されるエストロゲン成分又は医薬組成物の分量を指す。
本明細書で使用される、神経障害の治療的処置等の「神経障害の処置」の表現は、脳細胞の完全性の破壊及び/又は脳細胞の構造若しくは機能の喪失を含む脳傷害に対する保護又は予防、脳傷害の程度の減弱、脳傷害の悪化の防止又は脳傷害の回復を包含し、また神経発生及び/又は血管新生の誘導又は促進を更に包含し得る。
或る特定の実施形態では、神経障害の治療的処置等の神経障害の処置は、脳傷害に対する保護、脳障害の程度の減弱、脳傷害を悪化の防止又は脳傷害の回復を含む。特定の実施形態では、神経障害の治療的処置は、脳傷害を悪化の防止又は脳傷害の回復を含む。
実施形態では、神経障害の治療的処置等の神経障害の処置は、神経発生、血管新生、又は神経発生及び血管新生を促進することを含む。
脳傷害、神経発生及び血管新生を検査する非限定的な例として、画像化技法、特に神経画像化技法、ならびに、例えば血清又は脳脊髄液中の好適な生物学的マーカーの検出及び測定が挙げられる。好適な神経画像化技法として、磁気共鳴画像法(MRI)及びポジトロン放射断層撮影法(PET)が挙げられる。脳傷害の好適な生物学的マーカーとして、例えばS100B及びグリア線維酸性タンパク質(GFAP)が挙げられる。体液中の生物学的マーカーの検出及び測定の技法はよく知られており、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)が挙げられる。
本明細書で使用される「神経障害」という用語は、中枢神経系及び/又は末梢神経系に影響を与える、任意の神経疾患、神経状態、神経行動、及び/又はそれらに関連する任意の症状を指す。
好ましくは、神経障害は、脳及び脊髄を含む中枢神経系に影響を与える可能性があり、より好ましくは少なくとも脳に影響を与える可能性があり、更に好ましくは少なくとも海馬及び皮質等の少なくとも海馬に影響を与える可能性がある。
「海馬」及び「海馬構造」という用語は本明細書において同義語として使用され、記憶、ならびに空間記憶及びナビゲーションに関与する脳の内側側頭葉に位置する脳領域を指す。哺乳動物は脳の両側に2つの海馬を有し、上記用語は両方の海馬を包含する。本明細書で使用されるように、海馬は、歯状回(DG:Dentate Gyrus)、アンモン角(CA:Cornu Ammonis)及び鉤状回を指す。歯状回は、歯状回(fascia dentata)、門部、顆粒細胞下帯(SGZ:SubGranular Zone)、顆粒細胞層、及び分子層を包含する。顆粒細胞下帯(SGZ)は、顆粒細胞層とDG門部との間に位置する狭い細胞層である。アンモン角(CA)は、アンモン角1(CA1)、アンモン角2(CA2)、アンモン角3(CA3)、及びアンモン角4(CA4)の分野へと分化される。神経障害は、特に、歯状回、アンモン角1、アンモン角2、アンモン角3、又は顆粒細胞下帯の少なくとも1つ、2つ以上、又は全てといった、これらの領域の少なくとも1つ、2つ以上又は全てに影響を与え得る。
「皮質」及び「大脳皮質」という用語は、本明細書では同義語として使用され、通常、大脳の最も外側の神経組織シートを意味する。皮質は、通常、感覚野、運動野、及び連合野から構成されて見られる。
神経障害は、皮質、例えば皮質の任意の領域に影響を与え、特に一次体性感覚皮質、より具体的には一次運動皮質に接する一次体性感覚皮質の一次体幹領域(primary trunk region)に影響を与え得る。
本明細書に教示されるエストロゲン成分又は医薬組成物を使用して処置される神経障害は、神経機能不全及び/又は神経変性、神経傷害若しくは神経脱落を含み得る。処置される神経障害は、限定されないが、例えば脳損傷、脊髄損傷、又は神経変性疾患等の神経変性、神経傷害又は神経脱落を含むのが好ましい。
例示的な脳損傷として、好ましくは新生児HIE等の低酸素性虚血性脳症(HIE)を含む低酸素性/無酸素性脳損傷、更に脳虚血若しくは脳卒中、又は外傷性脳損傷が挙げられるが、これらに限定されない。
好ましくは、低酸素性脳損傷、無酸素性脳損傷、又は外傷性脳損傷等の脳損傷は、少なくとも海馬に影響を与え、より好ましくは、脳損傷は少なくとも海馬における脳細胞の完全性を破壊する。
脊髄及び関連する神経節に対する例示的な損傷として、ポリオ後症候群、外傷性損傷、外科的損傷、又は麻痺性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
「神経変性疾患又は障害」という用語により、一般的に、ニューロンの死を含むニューロンの構造又は機能の進行性の喪失を特徴とする神経障害が意味される。
好ましい例示的な神経変性疾患として、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、前頭側頭型認知症(FD)(ピック病、前頭葉変性を含む様々な状態に及ぶ)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の海馬及び/又は皮質のニューロンの構造又は機能の進行性の喪失を特徴とする疾患;進行性核上性麻痺、線条体黒質変性症、大脳皮質基底核変性症、オリーブ橋小脳萎縮症等の基底核(具体的には、視床下核、黒質、及び淡蒼球)、脳幹(具体的には、核上性眼球運動が存在する中脳部分)、小脳の歯状核におけるニューロン死を含むニューロンの構造又は機能の進行性の喪失を特徴とする疾患が挙げられるがこれらに限定されない。
神経変性疾患の他の例としては、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、前頭側頭型認知症(FTD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病(HD)及び他のポリグルタミン伸長病、ピック病、進行性核上性麻痺、線条体黒質変性症、大脳皮質基底核変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、リー病、小児壊死性脳脊髄障害、ハンター病(Hunter's disease)、ムコ多糖症、様々な白質萎縮症(例えばクラッベ病、ペリツェウス−メルツバッハー病等)、黒内障(家族性)白痴、クーフス病、シュピールマイアー−フォークト病、テイ−サックス病、バッテン病、ヤンスキー−ビールショースキー病、ライ病、大脳性運動失調症、慢性アルコール依存症、脚気、ハレルフォルデン−スパッツ症候群、小脳変性症等が挙げられるが、これらに限定されない。
神経変性疾患はアルツハイマー病(AD)又はパーキンソン病(PD)であるのが好ましい。
アルツハイマー病では、海馬は最初に傷害を負う脳領域の1つである(Hampel et al. 2008. Alzheimer & Dementia 4: 38-48)。本明細書に教示されるエストロゲン成分又は医薬組成物は、したがって、或る特定の実施形態では、前臨床段階又は最も初期の臨床段階のAD等の最も初期段階のADにある被験体の処置、特に治療的処置に特に好適であり得る。したがって、或る特定の好ましい実施形態では、処置される神経障害は初期段階のAD(すなわち、前臨床段階又は最も初期の臨床段階のAD)である。
また、パーキンソン病は、海馬の傷害と関連する。特に、記憶障害を呈する初期段階の認知症を伴わないPD患者(Brueck et al. 2004. J Neurol Neurosurg Psychiatry 75: 1467-1469)、及び軽度の認知障害又は認知症を有するPD患者(Camicioli et al. 2003. Mov Disorder 18: 784-790)に海馬の委縮が観察された。したがって、或る特定の好ましい実施形態では、処置される神経障害は、初期段階の認知症を伴わないPD又は軽度認知障害(MCI)を伴うPDである。
本明細書に教示されるエストロゲン成分又は医薬組成物を用いて処置することができる神経障害の更に好ましい例としては、脱髄性自己免疫障害、例えば多発性硬化症;中枢神経系(CNS)の炎症性疾患又は感染性ウイルス疾患、例えばAIDS脳症、脳炎後パーキンソニズム、ウイルス性脳炎、細菌性髄膜炎の感染又は感染性疾患の他のCNSへの影響によって引き起こされる神経学的欠損;神経疾患の症状としての皮質性知覚認知障害、例えば前庭機能障害、バランス調整障害(balance and coordination disorders)、目眩、歩行問題、失読症、手指巧緻障害(clumsiness)、聴覚識別変調障害(audition discrimination and modulation disorders)、視覚問題、眼球運動調整障害又は知覚障害(sensory disturbance);腸機能障害、例えば便秘又は失禁;並びにCNS疾患の症状としての膀胱制御障害、例えば尿失禁;脳性麻痺後の呼吸機能不全;皮膚への血流異常、異常な性的応答、勃起機能不全、頭痛、頸部痛、背部痛、外傷の状況下での脳脊髄障害、体位性起立性頻拍、起立耐性失調、起立性低血圧、卒倒、神経因性腸及び神経因性膀胱を引き起こす自律神経性機能障害が挙げられ得るが、これらに限定されない。
本明細書に教示されるエストロゲン成分又は医薬組成物を用いて処置することができる神経障害の例としては、脱髄性自己免疫障害、例えば多発性硬化症;中枢神経系(CNS)の炎症性疾患、例えばクロイツフェルト−ヤコブ病又は他の遅発感染性ウイルス疾患、AIDS脳症、脳炎後パーキンソニズム、ウイルス性脳炎、細菌性髄膜炎の感染又は感染性疾患の他のCNSへの影響によって引き起こされる神経学的欠損;皮質性運動機能障害、例えば痙縮、不全麻痺、クローン(clones)又は反射亢進;皮質性知覚認知障害、例えば前庭機能障害、バランス調整障害、目眩、歩行問題、失読症、手指巧緻障害、発育遅延、聴覚識別変調障害、遅滞及び機械的発話障害(delayed and mechanical speech disorders)、視覚問題、眼球運動調整障害又は知覚障害;脳神経機能の低下(lower cranial nerve dysfunctions)、例えば発話間の調整、嚥下又は流暢な発音の喪失;腸機能障害、例えば胃食道の括約筋制御問題;異常な尿機能、例えば遺尿症、夜尿症又は膀胱制御障害;呼吸機能不全、例えば過度のいびき、閉塞性若しくは中枢性の無呼吸、又は酸素及び二酸化炭素レベルに対する異常な呼吸応答;睡眠時呼吸障害、例えば睡眠時無呼吸、筋肉機能不全又は乳児突然死;発育障害、例えばキアリ奇形;又は先天性疾患、例えばダウン症候群、モルキオ症候群、脊椎骨端異形成症、軟骨形成不全症又は骨形成(osteogenesis);神経学的行動障害、例えば注意欠陥多動性障害、不安症、双極性障害、統合失調症又はうつ病を含む精神的問題、自閉症、アスペルガー症候群及び特定不能の広汎性行動障害を含む自閉症スペクトラム障害;解剖学的状態、例えば扁平頭蓋底、歯状突起(retroflexed odontoid)、頭蓋底陥入及び大後頭孔狭窄;後天性骨軟化状態、例えばくる病、パジェット病又は副甲状腺機能亢進症;代謝性骨障害;過可動性結合組織障害、例えばエーラース−ダンロス症候群を含む結合組織障害;頸延髄部症候群;腎臓の代謝性又は内分泌性症候群;皮膚への血流異常、異常な性的応答、GERDS、統合運動障害、特発性脊柱側彎、頭痛、頸部痛、背部痛、頭部痛、外傷の状況下での脳脊髄障害、新生物、体位性起立性頻拍及び延髄(bulbar)所見を引き起こす自律神経性機能障害が挙げられるが、これらに限定されない。
実験の項に示されるように、本明細書で教示されるエストロゲン成分は、脳傷害に対して治療効果を呈し、低酸素性虚血後の神経発生及び血管新生を促す。したがって、本明細書で教示されるエストロゲン成分又は医薬組成物は、低酸素性脳損傷、無酸素性脳損傷及び/又は外傷性脳損傷の処置に好適であり、エストロゲン成分又は医薬組成物は低酸素症、虚血及び/又は外傷の後に投与される。特に、本明細書で教示されるエストロゲン成分又は医薬組成物は、好ましくは新生児の低酸素性虚血性脳症等の低酸素性虚血性脳症の処置に好適であり、エストロゲン成分又は医薬組成物は低酸素性虚血の後に投与される(すなわち、HIEの治療的処置)。好ましくは、エストロゲン成分又は医薬組成物は、ヒト被験体等の被験体の低酸素症、虚血、外傷又は低酸素性虚血の後12時間以内、9時間以内、又は6時間以内、より好ましくは低酸素症、虚血、外傷又は低酸素性虚血の後6時間以内、例えば5時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、1時間以内、30分以内、又は15分以内といった低酸素症、虚血、外傷又は低酸素性虚血の後できる限り早期に投与される。
上述のとおり、本明細書に教示されるエストロゲン成分又は医薬組成物は、特にADの処置にも好適であり得る。例えば、本明細書に教示されるエストロゲン成分又は医薬組成物は、ADの予防処置又は防止処置に好適であり、エストロゲン成分又は医薬組成物は、ADの家族歴の或る閉経女性に投与される。本明細書に教示されるエストロゲン成分又は医薬組成物は、初期段階のADの治療的処置にも好適であり、エストロゲン成分又は医薬組成物は初期段階のADと診断された患者に投与される。
初期段階のADの診断は、例えば、MRI等の神経画像化により達成することができ、これにより初期段階のAD患者は海馬構造の委縮を特徴とする(上記Hampel et al. 2008.)。代替的には又は追加的に、初期段階のADの診断は、例えばアミロイドベータ42(Aβ42)、アミロイドベータ40比率(Aβ40)、総タウタンパク質、過剰リン酸化タウタンパク質、β−セクレターゼ(BACE)、又はこれらの任意の組合せ等の脳脊髄液中のバイオマーカーの評価に基づいて確立することができ得る(上記Hampel et al. 2008.)。
上述のとおり、本明細書に教示されるエストロゲン成分又は医薬組成物は、特に、初期段階の認知症を伴わないPD又は軽度の認知障害(MCI)を伴うPDの処置、より好ましくは初期段階の認知症を伴わないPD又は軽度の認知障害を伴うPDの治療的処置にも好適であり、エストロゲン成分又は医薬組成物は、初期段階の認知症を伴わないPDと診断された患者、具体的には記憶障害を呈する初期段階の認知症を伴わないPDと診断された患者、又はMCIを有するPDと診断された患者に投与される。
患者を初期段階の認知症を伴わないPDと診断することは、PDの臨床症状の検査に基づいて行うことができ、初期段階の認知症を伴わないPD患者は、任意に、例えばMRI等の神経画像化技法と組合せて、振戦、硬直及び運動減少からなる群から選択される少なくとも2つのPD症状を有する。容積測定MRI画像診断は、PDの認知症に関する初期マーカーを提供する可能性があり、初期段階の認知症を伴わないPD患者、及び軽度の認知障害を有するPD患者は海馬の委縮を特徴とする。例えば、言語記憶(VEM)に関するウェクスラー記憶検査改訂版等の神経心理学的試験により記憶障害を評価することができる。
本明細書で教示されるエストロゲン成分は、単独で使用されてもよく、又は任意の既知の神経障害の治療法と組合せて使用されてもよい(「併用療法」)。
本明細書で熟考される併用療法は、本明細書で教示される少なくとも1つのエストロゲン成分と少なくとも1つの他の薬学的又は生物学的な有効成分との投与を含み得る。上記エストロゲン成分及び上記薬学的又は生物学的な有効成分は、同一又は別々の医薬組成物(複数の場合もあり)のいずれかで同時に、別々に又は任意の順序で順次に投与され得る。
少なくとも1つの「他の薬学的又は生物学的な有効成分」は、特に、神経障害を処置するのに有効で、エストロゲン成分との相乗効果をもたらしても又はもたらさなくてもよい、本明細書に記載されるエストロゲン成分以外の物質を指す。特に、好ましくは新生児HIE等のHIEの処置における使用のための本明細書に教示されるエストロゲン成分と組合せて投与されるのに好適な薬学的又は生物学的な有効成分の非限定的な例として、抗てんかん薬、エリスロポエチン、メラトニン及びキセノンが挙げられる。
また、本明細書で熟考されるのは、中等度の低体温法(すなわち、33℃〜34℃までの体温の低下)と本明細書に教示される少なくとも1つのエストロゲン成分の投与との組合せである。かかる併用療法は、好ましくは新生児HIE等の低酸素性虚血性脳症(HIE)の処置、好ましくは治療的処置に特に好適であり得る。
本明細書に開示されるエストロゲン成分は、1以上の薬学的に許容可能な担体/賦形剤と共に医薬組成物又は医薬製剤に製剤化され得る。医薬組成物は、本明細書に開示される1以上のエストロゲン成分を含み得る。また、医薬組成物は、上記に定義される1以上の他の薬学的又は生物学的な有効成分を更に含み得る。したがって、本明細書に開示されるエストロゲン成分を含む医薬組成物もまた、本明細書に開示される。
本明細書で使用される「薬学的に許容可能な」という用語は、当該技術分野と矛盾することがなく、医薬組成物の他の成分と適合性であって、その受容者に有害でないことを意味する。
本明細書で使用される「担体(carrier)」又は「賦形剤(excipient)」は、ありとあらゆる溶媒、希釈剤、バッファー(例えば中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、又は任意でTris−HCl、酢酸若しくはリン酸バッファー等)、可溶化剤(例えばTween 80、Polysorbate 80等)、コロイド、分散媒、ビヒクル、充填剤、キレート剤(例えばEDTA又はグルタチオン等)、アミノ酸(例えばグリシン等)、タンパク質、崩壊剤、結合剤、滑剤、湿潤剤、安定剤、乳化剤、甘味料、着色料、香料、着香料(aromatisers)、増粘剤、デポ効果を達成するための作用剤、コーティング剤、抗真菌剤、保存剤(例えばThimerosal(商標)、ベンジルアルコール等)、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム等)、張性制御剤、吸収遅延剤、アジュバント、増量剤(例えばラクトース、マンニトール等)等を含む。医薬組成物を製剤化するためのかかる媒質及び薬剤の使用は、当該技術分野においてよく知られている。任意の従来の媒質及び薬剤が有効成分(復数の場合もあり)と適合性でない場合を除き、治療用組成物におけるその使用が熟慮され得る。好適な薬学的担体は、とりわけRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1990)に記載される。
医薬組成物は、それ自体当業者に既知の様式で調製することができる。この目的のため、本明細書に開示される少なくとも1つのエストロゲン成分、1以上の固体又は液体の薬学的賦形剤を、所望であれば、上記に定義される1以上の他の薬学的又は生物学的な有効成分と組合せて、ヒト医学又は獣医学の医薬として使用され得る好適な投与形態又は剤形とする。担体若しくは賦形剤又は他の原料の正確な特徴は、投与経路に依存する。投与様式に応じて固体、半固体、又は液体であってもよい、かかる好適な投与形態、更にその調製に使用される方法及び担体もまた当業者に明らかであり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences(上記)等の標準的なハンドブックを参照する。
例えば、本明細書で教示される医薬組成物は、発熱物質を含まず、好適なpH、等張性及び安定性を有する、非経口的に許容可能な水溶液の形態で非経口的に(静脈内注射、脳内注射、脳室内注射、筋肉内注射、若しくは皮下注射、又は静脈内点滴等により)投与することができる。代替的には、本明細書に教示される医薬組成物は、経口的、例えば、丸剤、錠剤、ラッカー被覆錠(lacquered tablets)、糖衣錠、顆粒、ハードゼラチンカプセル及びソフトゼラチンカプセル、水溶液、アルコール溶液若しくは油性溶液、シロップ、乳剤若しくは懸濁剤の形態で、又は経直腸的に、例えば坐剤の形態で、経皮的に若しくは局所的に(点眼を含む)、例えば軟膏、チンキ、スプレー若しくは経皮治療システム(例えば、皮膚パッチ等)の形態で、又は鼻腔用スプレー若しくはエアロゾル混合物の形態の吸入により、又は、例えばマイクロカプセル、インプラント若しくはロッドの形態で投与することができる。
丸剤、錠剤、糖衣錠及びハードゼラチンカプセルの製造のため、例えば、乳糖、デンプン、例えばトウモロコシデンプン又はデンプン誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩等を使用することができる。ソフトゼラチンカプセル及び坐剤用の担体は、例えば、脂質、ワックス、半固形及び液体のポリオール、天然油又は硬化油等である。溶液、例えば注射溶液、又は乳剤若しくはシロップの調製用の好適な担体は、例えば、水、生理学的塩化ナトリウム溶液、エタノール、グリセロール、ポリオール等のアルコール、ショ糖、転化糖、ブドウ糖、マンニトール、植物油等である。また、有効成分(復数の場合もあり)を凍結乾燥し、得られた凍結乾燥物を、例えば、注射用又は点滴用の調製剤を調製するために使用することもできる。マイクロカプセル、インプラント又はロッドに好適な担体は、例えば、グリコール酸と乳酸との共重合体である。
経口投与形態のため、本発明の組成物を、賦形剤、安定化剤、又は不活性な希釈剤等の好適な添加剤と共に混合し、通例の方法を用いて、錠剤、被覆剤、ハードカプセル、水溶液、アルコール溶液又は油性溶液等の好適な投与形態とすることができる。好適な不活性な担体の例は、アラビアゴム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カリウム、乳糖、ブドウ糖、又はデンプン、特にコーンスターチである。この場合、乾燥顆粒及び湿顆粒の両方で調製を行うことができる。好適な油性賦形剤又は溶媒は、ヒマワリ油又はタラ肝油等の植物性油又は動物性油である。水溶液又はアルコール溶液用の好適な溶媒は、水、エタノール、糖溶液、又はこれらの混合物である。ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールもまた、他の投与形態に対する更なる助剤として有用である。即時放出錠として、これらの組成物は微結晶セルロース、リン酸二カルシウム、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、及び乳糖及び/又は当該技術分野で既知の他の賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、希釈剤及び滑剤を含有し得る。
本明細書に開示される少なくとも1つのエストロゲン成分を含む医薬組成物の経口投与は、任意には細かく分割された固形担体をも含む、好適な量の粉末形態の上記成分を共に均一に十分にブレンドし、例えばハードゼラチンカプセルに上記ブレンドをカプセル化することにより好適に達成される。固形担体は、結合剤、滑剤、崩壊剤、着色剤等として作用する1つ以上の物質を含み得る。好適な固形担体としては、例えばリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖類、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリドン、低融点ワックス及びイオン交換樹脂が挙げられる。
本明細書に記載される医薬組成物を含有する圧縮剤は、有効成分(復数の場合もあり)を上述のような固形担体と均一に十分に混合して必要な圧縮特性を有する混合物を与え、その後、この混合物を好適な機械で所望の形状及び大きさに圧縮することにより調製され得る。湿製錠剤は、不活性な液体希釈剤で加湿した粉末化有効成分(復数の場合もあり)の混合物を好適な機械で成形することにより作製され得る。
鼻エアロゾル又は吸入により投与される場合、これらの組成物は、医薬製剤の分野でよく知られている技法に従って調製することができ、ベンジルアルコール又は他の好適な保存剤、バイオアベイラビリティを高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は当該技術分野で既知の他の可溶化剤若しくは分散剤を利用して生理食塩水溶液として調製することができる。エアロゾル又はスプレーの形態で投与されるのに好適な医薬製剤は、例えば、エタノール若しくは水、又はかかる溶媒の混合物等の薬学的に許容可能な溶媒中の本発明の化合物又は生理学的に忍容性のあるそれらの塩の溶液、懸濁液、又は乳剤である。必要であれば、製剤は、界面活性剤、乳化剤及び安定化剤、また噴射剤等の他の薬学的な助剤を追加的に含有することも可能である。
皮下又は静脈内投与のため、本明細書に記載されるエストロゲン成分(復数の場合もあり)を、所望であれば、可溶化剤、乳化剤、又は更なる助剤等の慣用の物質と共に溶液、懸濁液、又は乳剤とする。また、有効成分(復数の場合もあり)は凍結乾燥されてもよく、得られた凍結乾燥物は、例えば注射調製剤又は点滴調製剤の製造に使用され得る。好適な溶媒は、例えば、水、生理学的食塩水、又はアルコール(例えば、エタノール、プロパノール、グリセロール)、また更にはブドウ糖液若しくはマンニトール液等の糖溶液、又は代替的には言及された様々な溶媒の混合物である。注射可能な溶液又は懸濁液は、マンニトール、1,3−ブタンジオール、水、リンゲル溶液、若しくは等張な塩化ナトリウム溶液等の好適な非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤若しくは溶媒、又は合成モノグリセリド若しくはジグリセリドを含む滅菌した無刺激の不揮発性油、及びオレイン酸を含む脂肪酸等の好適な分散剤若しくは湿潤剤及び懸濁剤を使用して当該技術分野に従って製剤化され得る。
坐剤の形態で経直腸的に投与される場合、これらの製剤は、本明細書に記載されるエストロゲン成分と、常温で固形であるが直腸腔で液化及び/又は溶解して薬物を放出する、カカオバター、合成グリセリドエステル、又はポリエチレングリコール等の好適な非刺激性の賦形剤とを混合することにより調製され得る。
かかる調製剤の或る好ましい非限定的な例として、ボーラス投与用及び/又は継続投与用の錠剤、丸剤、粉末、トローチ、サシェ、オブラート、エリキシル、懸濁液、乳剤、溶液、シロップ、エアロゾル、軟膏、クリーム、ローション、ソフトゼラチンカプセル及びハードゼラチンカプセル、坐剤、点眼剤、滅菌注射溶液ならびに滅菌包装粉末(通常、使用前に再構成される)が挙げられ、これらは乳糖、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、セルロース、(滅菌)水、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート及びプロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、食用油、植物油及び鉱物油、又はこれらの好適な混合物等のそれ自体かかる製剤に好適である担体、賦形剤及び希釈剤と共に製剤化され得る。製剤は、他の薬学的に有効な物質(本発明の化合物との相乗効果をもたらしてもよく、又はそうでなくてもよい)、並びに滑剤、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、分散剤、崩壊剤、充填剤、フィラー、保存剤、甘味剤、風味剤、粘度調節剤(flow regulators)、放出剤等の医薬製剤で一般的に使用される他の物質を任意に含有することができる。
医薬組成物は、例えば、リポソーム又は天然のゲル若しくは合成高分子に基づく親水性高分子マトリクスを使用して、そこに含有される有効成分(復数の場合もあり)の即時放出、持続放出、又は遅延放出を提供するように製剤化され得る。
上記に定義される1以上の他の薬学的又は生物学的な有効成分と任意に組合せて使用される本明細書に開示されるエストロゲンの投与量又は量は、個々の場合に依存し、慣習的に、最適な効果を達成するために個々の状況に適合される。よってその投与量又は量は、処置される障害の特徴及び重症度、また処置されるヒト若しくは動物の性別、年齢、体重、食事、一般的な健康状態、個々の反応性、使用される成分の有効性、代謝安定性及び作用期間、投与の様式及び時間、排出速度、治療法が急性的若しくは慢性的、若しくは予防的であるかどうか、又はエストロゲン成分に加えて上記に定義される他の薬学的若しくは生物学的な有効成分が投与されるか、若しくは他の治療法が適用されるかどうかに依存する。
限定されないが、障害の種類及び重症度に応じて、典型的な1日当たりの投与量は上述の要因に応じて、約1μg/kg体重〜約250mg/kg体重以上、例えば約1μg/kg体重〜約100mg/kg体重、約1μg/kg体重〜約50mg/kg体重、約1μg/kg体重〜約10mg/kg体重、約1μg/kg体重〜約1mg/kg体重、約1μg/kg体重〜約0.4mg/kg体重、又は約5μg/kg体重〜約0.4mg/kg体重の範囲内である場合がある。好ましくは、1日当たりの投与量は、約0.5mg/kg体重〜約100mg/kg体重、より好ましくは約1mg/kg体重〜約50mg/kg体重、更に好ましくは約2mg/kg体重〜約25mg/kg体重の範囲、例えば約5mg/kg体重又は10mg/kg体重であり得る。
数日又はそれ以上に亘る反復投与については、状態に応じて、病徴の望ましい抑制が生じるまで処置を維持する。エストロゲン成分の好ましい投与量は、約0.05mg/kg体重〜約100mg/kg体重、より好ましくは約0.1mg/kg体重〜約50mg/kg体重、更に好ましくは約1mg/kg体重〜約20mg/kg体重の範囲であり得る。よって、約0.1mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、5mg/kg、10mg/kg又は20mg/kg(又はその任意の組合せ)の1以上の用量を患者に投与し得る。
他の利用可能な投与量は、約0.01mg/kg〜約20mg/kg、例えば約0.05mg/kg〜約10mg/kgの範囲であり得る。よって、約0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kg(又はその任意の組合せ)の1以上の用量を患者に投与し得る。かかる用量は、1日あたりの単回用量、1日あたりの1回以上の分割用量として投与されてもよく、又は例えば点滴を使用して原則として継続的に投与されてもよく、又は例えば1週間若しくは3週間ごとに断続的に投与されてもよい。
本明細書に開示される医薬調製剤は、好ましくは単位投与量形態であり、好適には、例えば箱、ブリスター、バイアル、瓶、サシェ、アンプル、又は任意の他の好適な単回投与若しくは複数回投与の入れ物若しくは容器(適切にラベルが貼られていてもよい)に包装されてもよく、任意に、製品情報及び/又は使用のための指示を含有する1以上の説明書を含んでもよい。通常、かかる単位投与量は、1mg〜1000mg、例えば5mg〜500mgの本発明の少なくとも1つのエストロゲン成分を含有し、例えば、1単位投与量あたり約10mg、25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg又は1000mgを含有する。
投与様式に応じて、医薬組成物は、好ましくは0.05重量%〜99重量%、より好ましくは0.1重量%〜70重量%、更に好ましくは0.1重量%〜50重量%の本明細書に記載されるエストロゲン成分、及び1重量%〜99.95重量%、より好ましくは30重量%〜99.9重量%、更に好ましくは50重量%〜99.9重量%の薬学的に許容可能な担体を含み、全てのパーセンテージは組成物の総重量に基づく。
医薬組成物を一連の治療法の間の異なる時間に別々に投与するか、又は分割形態若しくは単回の配合形態で同時に投与することができる。本開示は、全てのかかる同時又は交互の処置の投与計画を包含し、「投与」という用語はそれに応じて解釈される。
投与は、食品、例えば高脂肪食と共に行われてもよい。「食品と共に」という用語は、本明細書に記載される医薬組成物の投与の間、又はその前若しくは後約1時間以内の食事の摂取を意味する。
実施例1:実験手順
試験動物:
Sprague−Dawley妊娠ラットをJanvier(フランス)から入手した。出産後、新生仔ラットをそれらの雌親と共に収容し、12時間の明暗サイクルのもと、室温(25℃)にて通常通り飼育した。全ての実験プロトコルは、リエージュ大学倫理委員会による承認を受けた。動物の苦痛を最小限にするためのあらゆる努力がなされた。
in vivo操作:
新生仔ラットをシャム群、ビヒクル群、又はE4群に割り当てた。
エステトロール(E4)を種々の濃度で生理食塩溶液に溶解し、等容量(5μl/g)の溶液をE4群(復数の場合もあり)の仔ラットに腹腔内注射した。ビヒクル群の仔ラットに生理食塩溶液を腹腔内注射した。シャム群の仔ラットには注射を全く行わなかった。
左総頸動脈の二重結紮及び切断を含む手術により虚血を生じさせ、11%〜8%が酸素で残部が窒素の酸素濃度が減少された状態で20分間吸入させた後、8%酸素及び92%窒素の一定の濃度で35分間吸入させることによって低酸素状態を生じさせた。シャム群は低酸素性虚血性傷害に供されなかった。
全ての操作を37℃で行った。
仔ラット直腸温度の測定:
低酸素性傷害への暴露から0時間、2時間及び4時間後に直腸プローブ(RET−4、BioMedical Instruments、ドイツ、ツェルニッツ)を備えた多目的体温計(BAT−10R、Physitemp Instruments Inc.、米国、ニュージャージー州、クリフトン)を用いて仔ラットの直腸温度を測定した。温度の変動を低く維持するため、巣から仔ラットを移動してから15分後に25℃室にて直腸温度の測定を行った(すぐに測定が行われた最初の低酸素後測定を除く)。直腸温度は、脳深部温度に非常によく対応することが示されている(Thoresen et al. 1996. Arch Dis Child Fetal Neonatal 74: F3-F9、Yager et al. 1993. Pediatr Res 34: 525-529)。
血液試料及び脳試料の調製:
出生後14日目に仔ラットを屠殺した。動物を過剰量のペントバルビタールナトリウム(100mg/kg、ip)で深く麻酔した。
血液を採取し、遠心分離し、血清試料を−80℃で保存した。
その後、動物を経心的に4℃の0.9%生理食塩溶液で灌流した後、4℃のリン酸緩衝生理食塩溶液0.1mol/L(pH7.4)中の4%パラホルムアルデヒドで灌流した。脳を素早く分離し、計量し、同じ固定溶液中に4℃にて24時間浸漬し、段階的なエタノール及びキシレン系で脱水し、パラフィンに包埋した。
ヘマトキシリン−エオシン染色(組織化学):
摘出した脳のパラホルムアルデヒド固定パラフィン包埋試料を、Paxinosラット脳アトラス(Paxinos and Watson 2007. In: The rat brain in stereotaxic coordinates, 6th edition)に従い海馬領域の同じレベルで冠状切片にした。切片の厚さは5μmであった。ヘマトキシリン−エオシン染色を行った。簡潔には、染色前に切片をキシレン中で脱パラフィンし、段階的なエタノール濃度中で再水和した。スライドをヘマトキシリンで染色し、数秒間水ですすぎ、その後1%エオシン中に置き、洗浄し、脱水し、カバーガラスで覆った。
無傷細胞の計測:
各脳領域の3視野において倍率400倍で仔ラット脳のヘマトキシリン−エオシン染色切片に対して無傷細胞の計測を行った。皮質及び海馬(領域:歯状回(DG)、顆粒細胞下帯(SGZ)、アンモン角(CA1、CA2/CA3))で計測を行った。顕微鏡(Olympus BX51、Olympus、日本、東京)、画像スキャナ(DotSlide Digital Virtual Microscopy、Olympus、ドイツ)及びImageJソフトウェア(NIH、米国)を用いて切片を解析した。
無傷細胞は損傷を受けていない。損傷細胞は、萎縮した、濃縮された、又は青白く肥大した非均一な核密度を伴う青白いエオシン好性の染色を特徴とする。
微小管結合タンパク質2(MAP2)染色:
神経細胞骨格の破壊の免疫組織化学的検出のため脳切片を加工した。抗原の回復のため、切片を10mmol/Lクエン酸緩衝溶液(pH6.0)中で100℃にて10分間加熱した。内因性ペルオキシダーゼ活性を、3%過酸化水素を用いて10分間阻害し、5%正常ヤギ血清を用いた2度目の阻害の後、1:1000に希釈した抗微小管結合タンパク質2(MAP2)抗体(マウスモノクローナル抗体;Sigma、米国、ミズーリ州、セントルイス)と共に室温にて1時間、切片をインキュベートした。すすいだ後、ビオチン化ヤギ抗マウス免疫グロブリンG(Vector Laboratories、カリフォルニア州、バーリンガム)を添加し、色素原として3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)を用いてアビジン−ビオチン複合体法(Vector Laboratories)により抗体検出を行った。DABとの反応後、スライドを洗浄し、脱水し、カバーガラスで覆った。
画像スキャナ(Nanozoomer Virtual Microscopy、日本、東京、浜松)及びImageJソフトウェア(NIH、米国)を用いて試料を解析した。同側半球及び対側半球のMAP2陽性領域を測定した。同側半球のMAP2陽性領域を対側半球のMAP2陽性領域で除算して、MAP2陽性領域の比率を算出した。シャム群のMAP2陽性領域の比率をデフォルトで1.0とした。
ダブルコルチン−血管内皮成長因子二重染色:
切片を10mmol/Lクエン酸緩衝溶液(pH6.0)中で100℃にて10分間加熱した。内因性ペルオキシダーゼ活性を、3%過酸化水素を用いて10分間阻害し、5%正常ヤギ血清を用いた2度目の阻害の後、1:1000に希釈した抗ダブルコルチン(DCX)抗体(ウサギポリクローナル抗体;Abcam、英国、ケンブリッジ)及び1:100に希釈した抗血管内皮成長因子(VEGF)抗体(マウスモノクローナル抗体;Abcam、英国、ケンブリッジ)と共に、切片を4℃にて終夜インキュベートした。すすいだ後、1:1000で希釈したAlexa Fluor(商標)ヤギ抗ウサギ抗体、及び1:1000で希釈したAlexa Fluor(商標)ヤギ抗マウス抗体(Invitrogen Inc.、ベルギー、ヘント)を添加し、切片を室温にて1時間インキュベートした。蛍光試験用の4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)を含有する封入剤を使用した(Vector Laboratories)。顕微鏡(Olympus Vanox AHBT3、Olympus)及びImageJソフトウェア(NIH)を用いて試料を解析した。DCX又はVEGFのいずれかの陽性染色細胞の合計をDAPI陽性細胞の総数で除算して陽性染色細胞の割合を定量化し、パーセンテージで表した。
血清試料中のS100B及びグリア細胞線維性酸性タンパク質(GFAP)の検出:
血清試料において脳傷害マーカーであるS100Bタンパク質(カタログ番号CSB−E08066r、Cusabio Biotech Co., LTD、中国)、及びグリア細胞線維酸性タンパク質(GFAP)(カタログ番号E90068Ra、Uscn Life sciences Inc.、中国)を検出するためのELISAを、製造業者の推奨に従って行った。
統計学的解析:
StatViewソフトウェア(Abacus Concepts, Inc.、米国、カリフォルニア州、バークレー)を使用して解析を行った。ANOVAの後、P<0.05により有意性を示す、FisherのPLSD、Scheffeの検定及びBonferroni/Dunn事後検定を使用して統計学的比較を行った。全ての値を平均±SEMとして表す。
実施例2:新生児の低酸素性虚血性脳症の動物モデルにおけるエステトロールの神経保護効果
出産後、新生仔ラットを以下の4群のうちの1つに割り当てた:シャム群、ビヒクル群、E4 5mg/kg/日群及びE4 50mg/kg/日群。4日目〜7日目を含めて、仔ラットにビヒクル(ビヒクル群)若しくはE4(割り当てられた群に従い5mg/kg又は50mg/kg)を腹腔内注射するか、又は注射を全く行わなかった(シャム群)。7日目の最後の注射から30分後に、ビヒクル群及びE4(5mg/kg又は50mg/kg)群の動物を、左総頚動脈二重結紮及び切断を含む手術に供し、その後、11%〜8%が酸素で残部が窒素の酸素濃度が減少された状態で20分間吸入させた後、8%酸素及び92%窒素の一定の濃度で35分間吸入させることによって低酸素状態を生じさせた。シャム群は、左総頚動脈の結紮及び低酸素状態を含まない同様の処理に供した。全ての操作を37℃にて行った。出生後14日目に屠殺されるまで仔ラットを雌親と共に回復させた。
仔ラットの重量
注射に必要なビヒクル及びE4の量を決定するため、4日目〜7日目に仔ラットの重量測定を行い、仔ラットの手術後の健康状態をモニターするために7日目から14日目までの間重量測定を行った。
手術後13日目及び14日目において、E4 5mg/kgで処置した仔ラットは、ビヒクルで処置した動物よりも有意に体重が重かったのに対し、他の手術後の日において偽手術群は他の群よりも有意に体重が重かった:8日目(シャム対ビヒクル及びE4 5mg/kg)、10日目(シャム対E4 50mg/kg)、12日目(シャム対ビヒクル)、13日目(シャム対ビヒクル)及び14日目(シャム対ビヒクル)(図1)。
脳重量
脳重量の測定より、ビヒクル処置群よりもE4 5mg/kg群及び偽手術群で有意に重いことが明らかとなった(図2)。
ヘマトキシリン−エオシン染色(組織化学):
ビヒクルで処置した群に由来する切片のみが、傷害と対側(右側)の海馬領域に伸びる梗塞領域で囲まれた、傷害と同側(左側)の海馬領域の可視的な組織破壊を示した(図3)。これらの結果は、いずれの用量でもE4が神経保護効果を有することを示している。
無傷細胞の計測:
海馬のDG領域では、1視野あたりの無傷細胞数は、ビヒクル群よりもE4 5mg/kg群及び偽手術動物群において有意に多かった(図4)。SGZでは、E4 5mg/kg群のみがシャム群及びビヒクル群と比較して無傷細胞数が有意に多かったのに対し、CA1では、試験群間で有意差は検出されなかった。海馬のCA2/CA3領域では、E4 50mg/kg処置群のみが、ビヒクル処置群及びE4 5mg/kg群よりも無傷細胞数が有意に多かったのに対し、皮質では、E4 50mg/kg群はビヒクル群と比べた場合のみ無傷細胞の数が有意に多かった。これらの結果は、エステトロールが神経保護効果を有することを示している。
実施例3:新生児の低酸素性虚血性脳症の動物モデルにおけるエステトロールの神経保護効果
新生仔ラットを出生後4日目から以下の6群のうちの1つに割り当てた:シャム群(n=24)、ビヒクル群(n=14)、E4 1mg/kg/日群(n=11)、E4 5mg/kg/日群(n=14)、E4 10mg/kg/日群(n=14)、又はE4 50mg/kg/日群(n=19)。出生後4日目から、仔ラットにビヒクル(ビヒクル群)若しくはE4(E4群の割り当てに従って1mg/kg/日、5mg/kg/日、10mg/kg/日又は50mg/kg/日)のいずれかを腹腔内注射するか、又はビヒクル若しくはE4のいずれも注射しなかった(シャム群)。7日目の最後の注射から30分後に、動物をイソフルラン(導入:3.0%;維持、1.5%)で麻酔し、ビヒクル群及びE4群の仔ラットを左総頚動脈二重結紮及び切断を含む手術に供した。処置の後、仔ラットを雌親に返し、1時間回復させた。その後、仔ラットを加湿した低酸素in vivoキャビネット(CoyLab、米国、ミシガン州、グラスレイク)に置いた。11%〜8%が酸素で残部が窒素の酸素濃度が減少された状態で20分間吸入させた後、8%酸素及び92%窒素の一定の濃度で35分間吸入させることによって低酸素状態を生じさせた。全ての操作を37℃にて行った。シャム群を、左総頚動脈結紮後の低酸素状態及び注射を含まない同様の処理に供した。仔ラットを雌親と共に回復させ、出生後14日目に屠殺するまで通常通り飼育した。
直腸温度:
試験群間で直腸温度の有意差はなく、エステトロールによる前処置は体温に影響しないことを示していた(データは示されていない)。
体重
行われた操作及びエステトロールの前処置による仔ラットの手術後の健康状態をモニターするため、出生後7日目〜14日目を含めて体重をモニターした。図5は、出生後8日目及び13日目の偽手術仔ラット及びエステトロールで前処置した仔ラットの手術後体重がビヒクルで前処置した動物よりも有意に重かったことを示す。さらに、出生後9日目の偽手術動物及び10mg/kgのエステトロールで前処置した動物はビヒクル群よりも体重が有意に重かったのに対し、出生後10日目、11日目及び12日目の偽手術仔ラット、1mg/kgで前処置した仔ラット及び10mg/kgで前処置した仔ラットはビヒクル群よりも有意に体重が重いことを示した。出生後14日目の偽手術動物、ならびに1mg/kg、5mg/kg及び10mg/kgのエステトロールで前処置した動物は、ビヒクル群のみに対して体重が有意に重かった。しかしながら、出生後8日目、9日目、10日目、12日目の偽手術動物の体重は5mg/kg及び50mg/kgのエステトロール前処置群よりも有意に重かったのに対し、出生後11日目、13日目、14日目の偽手術動物は50mg/kgのエステトロール前処置群のみに対して体重が有意に重かった。
脳重量
可能性のある脳傷害を評価するため、仔ラット脳の測定を行った。図6は、ビヒクル群(1.016±0.042g)よりもシャム群(1.225±0.006g)、ならびに1mg/kg E4(1.155±0.022g)、5mg/kg E4(1.181±0.023g)、10mg/kg E4(1.179±0.012g)、及び50mg/kg E4(1.163±0.016g)による前処置群で脳重量が有意に重かったことを示している。
ヘマトキシリン−エオシン染色及び無傷細胞の計測:
ビヒクルで前処置した仔ラットの脳切片は、皮質まで及ぶ、傷害と同側の(左側の)海馬領域の可視的な組織破壊及び傷害を示した(図7AのA〜C)。
海馬のDG領域では、1視野あたりの無傷細胞数は、ビヒクル群(84.563±5.954)(図7AのB(b))よりも偽手術動物(154.5±7.942)(図7AのB(a))及び5mg/kg E4を注射した動物(121.0±8.098)(図7AのB(d))で有意に多かった(図7BのD)。さらに、SGZの無傷細胞数は、ビヒクル群(23.875±3.363)(図7AのB(b))よりも、シャム群(58.357±3.653)(図7AのB(a))、5mg/kg E4群(42.846±3.884)(図7AのB(d))及び10mg/kg E4群(47.6±4.672)(図7B(e))で有意に多かった(図7BのD)のに対し、同じ領域でシャム群は、1mg/kg E4群(35.6±2.75)(図7AのB(c))及び50mg/kg E4群(30.714±3.615)(図7AのB(f))よりも有意に多い無傷細胞数を示した(図7BのD)。CA1領域では、シャム群(70.714±4.819)(図7AのB(a))と、1mg/kg E4群(43.2±2.435)(図7AのB(c))及び10mg/kg E4群(57.4±4.566)(図7AのB(e))との間で有意差が検出されたのに対し、他の群は有意差を示さなかった(図7BのD)。海馬のCA2/CA3領域では、シャム群(56.929±4.859)(図7AのB(a))及び50mg/kg E4群(53.0±4.7)(図7AのB(f))は、ビヒクル群(29±3.543)(図7AのB(b))よりも無傷細胞数が有意に多かったのに対し、シャム群のみが1mg/kg E4群(32.8±2.808)(図7AのB(c))よりも無傷細胞数が有意に多かった(図7BのD)。皮質では、50mg/kg E4群(76.286±3.962)(図7AのC(f))は、ビヒクル群のみ(51.938±5.304)(図7AのC(b))に対して有意に多い無傷細胞数を示した(図7BのD)。
MAP2染色:
出生後14日目の低酸素虚血(HI)後に特定された同側のMAP2染色の喪失を、初期の灰白質領域脱落のマーカーとして使用した。無傷ニューロンを含む領域はMAP2による染色を呈したのに対し、梗塞領域はMAP2染色の喪失を示した。特に、ビヒクル群では、皮質にまで及ぶ、傷害半球と同側の海馬領域におけるMAP2染色の喪失があった(図8A(b))。MAP2陽性領域の比率の定量化により、エステトロールによる前処置後(図8B)、MAP2陽性領域の比率は、ビヒクル群(0.675±0.046)(図8A(b))よりも、偽手術動物(デフォルト1.0)(図8A(a))、及びエステトロール前処置群(1mg/kg E4(0.929±0.019)(図8A(c))、5mg/kg E4(0.889±0.063)(図8A(d))、10mg/kg E4(0.898±0.022)(図8A(e))、50mg/kg E4(0.922±0.031)(図8A(f)))で有意に高かったことが明らかとなった。
ダブルコルチン−血管内皮成長因子二重染色:
出生後14日目のDCX及びVEGFの発現を、それぞれ神経発生及び血管新生のマーカーとして使用した。エステトロール前処置により、ビヒクル群(32.833±2.625%)よりも10mg/kg E4で前処置した動物(55.8±5.658%)の海馬DG領域におけるDCX陽性染色細胞の割合が有意に高くなった(図9A)のに対し、同じ領域のVEGF陽性染色細胞の割合は、ビヒクル群(25.333±2.271%)よりも1mg/kg E4(43.5±2.083%)、5mg/kg E4(46.0±4.361%)、10mg/kg E4(47.0±5.362%)、及び50mg/kg E4(46.0±4.465%)で前処置した群で有意に高かった(図9B)。さらに、CA1領域では、DCX陽性染色細胞の割合は、ビヒクル群(11±1.518%)よりも5mg/kg E4群(35.2±3.309%)、及び10mg/kg E4群(34.1±6.664%)で有意に高かった(図9A)のに対し、VEGF陽性染色細胞の割合は、10mg/kg E4群(37.4±7.645%)のみで有意に高かった(図9B)。CA2/CA3領域では、DCX陽性染色細胞の割合は、ビヒクル群(6.417±1.033%)よりも5mg/kg E4群(30.3±3.7%)で有意に高かったのに対し、VEGF陽性染色細胞の割合は、1mg/kg E4群(34.1±6.855%)においてのみ有意差に達した(図9B)。皮質では、DCX及びVEGF陽性染色細胞の割合は、ビヒクル群(それぞれ、26.0±4.156%及び20.5±2.414%)のみに対して10mg/kg E4群(それぞれ、52.1±7.762%及び46.2±7.646%)で有意に高かった(それぞれ図9A〜図9B)。
血清S100B及びグリア線維酸性タンパク質(GFAP):
S100B及びグリア線維酸性タンパク質(GFAP)を脳傷害のマーカーとして使用した。S100Bタンパク質及びGFAPタンパク質に関するELISAにより血清中のそれらの濃度を測定した。図10Aに示されるように、エステトロールによる前処置の後、S100Bの濃度は、ビヒクルで前処置した動物(698.925±57.342pg/ml)よりも偽手術動物(344.614±50.328pg/ml)、及び50mg/kg E4群(361±32.914pg/ml)で有意に低かったが、10mg/kg E4群ではS100B濃度はシャム群、5mg/kg E4群、及び50mg/kg E4群よりも有意に高かった。
図10Bは、ビヒクル群(1003.926±288.345pg/ml)よりも偽手術動物(407.567±49.258pg/ml)、及び50mg/kg E4で前処置した動物(300.388±31.232pg/ml)でGFAP濃度の有意な減少が観察されたことを示す。
結論:
本結果は、エステトロールが、HIEの動物モデルの海馬構造及び皮質において用量依存的な神経保護効果を有することを示している。また、本結果によれば、エステトロールによる前処置は、初期の灰白質の脱落を減少し、神経発生及び血管新生を促す。さらに、エステトロールによる前処置は、体重、脳重量又は体温に何らの有害効果も有していない。
実施例4:新生児の低酸素性虚血性脳症の動物モデルにおけるエステトロールの治療効果
エステトロールの治療効果を試験するため、新生仔ラットを出生後7日目に以下の6群のうちの1つに割り当てた:シャム群(n=29)、ビヒクル群(n=20)、1mg/kg E4群(n=16)、5mg/kg E4群(n=19)、10mg/kg/日 E4(n=17)及び50mg/kg/日 E4群(n=15)。出生後7日目に動物をイソフルラン(導入、3.0%;維持、1.5%)で麻酔し、ビヒクル群及びE4群の仔ラットを左総頚動脈二重結紮及び切断を含む手術に供した。手術後、仔ラットを雌親に返し、1時間回復させた。その後、仔ラットを加湿した低酸素in vivoキャビネット(CoyLab)に置いた。11%〜8%が酸素で残部が窒素の酸素濃度が減少された状態で20分間吸入させた後、8%酸素及び92%窒素の一定の濃度で35分間吸入させることによって低酸素状態を生じさせた。全ての操作を37℃で行った。
低酸素チャンバーからの回復に際し、仔ラットにビヒクル(ビヒクル群)又は割り当てた群に従ってE4(1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg又は50mg/kg)のいずれかを腹腔内注射した。シャム群の動物を、左総頚動脈結紮及び切断後の低酸素状態、又はビヒクル若しくはエステトロール投与のいずれも行わない同様の処置に供した。仔ラットを出生後14日目に屠殺するまで雌親と共に回復させた。
直腸温度:
試験群間で直腸温度に有意差はなく、エステトロール処置は体温に影響しないことを示していた(データは示されていない)。
体重
行われた操作及びエステトロールの処置による仔ラットの手術後の健康状態を評価するため、出生後7日目〜14日目に手術後の体重を測定した。図11は、出生後14日目の偽手術動物、及び1mg/kg E4群、5mg/kg E4群、10mg/kg E4群、及び50mg/kg E4群の動物は、ビヒクル群よりも体重が有意に重かったことを示す。偽手術動物は、5mg/kg E4処置群よりも有意に重い体重を示した。
脳重量
図12は、ビヒクル群(0.937±0.022g)よりも偽手術動物(1.214±0.007g)、ならびに1mg/kg E4群(1.099±0.037g)、5mg/kg E4群(1.06±0.035g)、10mg/kg E4群(1.12±0.33g)及び50mg/kg E4(1.163±0.025g)において、脳重量が有意に重かったことを示す。偽手術動物は、5mg/kg E4群よりも有意に重い脳重量を示した。この結果パターンは、実施例3と同じである。
ヘマトキシリン−エオシン染色及び無傷細胞の計測:
海馬のDG及びSGZ領域では、1視野あたりの無傷細胞数は、ビヒクル群の動物(図13AのB(b))よりも偽手術動物(図13AのB(a))で有意に高かった(それぞれ、160.8±7.074対88.2±19.477、及び60.8±4.635対28.3±6.73)(図13BのD)。CA1領域では、無傷細胞数は、ビヒクル群(28.4±6.997)(図13AのB(b))よりもシャム群(69.4±5.256)(図13AのB(a))、及び1mg/kg E4群(51.5±2.5)(図13AのB(c))で有意に高く、シャム群では、5mg/kg E4群(45.3±2.989)(図13B(d))、10mg/kg E4群(46.0±3.19)(図13AのB(e))、及び50mg/kg E4群(46.6±5.336)(図13AのB(f))よりも有意に高かった(図13BのD)。海馬のCA2/CA3領域では、偽手術動物(57.1±6.192)(図13AのB(a))及び10mg/kg E4で処置した動物(35.2±3.169)(図13AのB(e))は、ビヒクル群(13.8±3.018)よりも無傷細胞数が有意に多かったのに対し、シャム群は、1mg/kg E4群(33.9±4.306)、5mg/kg E4群(33.8±4.704)、10mg/kg E4群(35.2±3.169)、及び50mg/kg E4群(30.5±2.527)よりも無傷細胞数が有意に多かった(図13BのD)。皮質では、偽手術動物(70.1±6.165)(図13AのC(a))及び5mg/kg E4(57.1±7.012)(図13AのC(d))、10mg/kg E4(56.9±5.958)(図13AのC(e))及び50mg/kg E4(54.5±3.403)(図13AのC(f))で処置した動物は、ビヒクル群(23.2±3.872)(図13AのC(b))よりも有意に多い無傷細胞数を示したのに対し、シャム群は1mg/kg E4群(42.4±4.865)(図13AのC(c))よりも無傷細胞数が有意に多かった(図13BのD)。
MAP2染色:
実施例3で観察されたものと同じMAP2染色パターンが観察された。MAP2陽性領域の比率の定量化により(図14B)、MAP2陽性領域の比率は、ビヒクル群(0.656±0.091)(図14A(b))よりも偽手術動物(デフォルトで1.0)(図14A(a))、及びエステトロール処置群(1mg/kg E4(0.943±0.028)(図14A(c))、5mg/kg E4(0.89±0.037)(図14A(d))、10mg/kg E4(0.938±0.044)(図14A(e))、50mg/kg E4(0.966±0.036)(図14A(f)))において有意に高いことが明らかとなった。
ダブルコルチン−血管内皮成長因子二重染色:
海馬のDG領域では、DCX又はVEGFのいずれの染色も試験群間に有意差はなかった(図15)。CA1領域では、DCX陽性染色細胞の割合は、ビヒクル群(12.8±2.947%)よりも10mg/kg E4群(37.1±3.84)及び50mg/kg E4群(37.3±4.784%)で有意に高かった(図15A)のに対し、VEGF陽性染色細胞の割合は、ビヒクル処置動物(15.7±4.924%)よりも5mg/kg E4群(37.4±4.833%)、10mg/kg E4群(37.1±3.84%)、及び50mg/kg E4群(45.1±4.753%)で有意に高かった(図15B)。CA2/CA3領域では、DCX陽性染色細胞の割合は、ビヒクル処置した動物(10.4±2.868%)よりも10mg/kg E4群(42.5±5.986%)で有意に高かった(図15A)のに対し、VEGF陽性染色細胞の割合は試験群間に有意差はなかった(図15B)。皮質では、DCX陽性染色細胞の割合は、ビヒクル群(23.3±4.74%)よりも5mg/kg E4群(45.2±3.339%)、10mg/kg E4群(49.4±4.949%)、及び50mg/kg E4群(49.6±3.11%)で有意に高かった(図15A)のに対し、VEGF陽性染色細胞の割合は、10mg/kg E4処置群(49.4±4.949%)よりも偽手術動物(24.6±3.7%)で有意に低かった(図15B)。
血清S100B及びグリア線維酸性タンパク質(GFAP):
図16に示されるように、ビヒクル群の動物よりも偽手術動物及びエステトロール処置動物において、S100Bタンパク質及びGFAPタンパク質の有意に低い発現が観察された。
結論:
本発明の結果は、エステトロールがHIEの動物モデルの海馬構造及び皮質において用量依存性の治療効果を有することを示す。また、本発明の結果によれば、エステトロール処置は、初期の灰白質の脱落を低減し、神経発生及び血管新生を促す。さらに、エステトロール処置は、体重、脳重量又は体温に対して何らの有害効果も有していない。
実施例5:周産期又は新生児仮死後の新生児におけるエステトロールの治療効果
出生時仮死を経て、少なくとも1つの以下の症状:意識低下及びアシドーシス(pH<7.00又は12以上の塩基欠乏)、5以下の10分アプガールスコア、又は10分の進行中の蘇生を呈する新生児をエステトロールで処置した。
エステトロールを5mg/kg体重若しくは10mg/kg体重の用量で出生後6時間以内に単回注射として腹腔内投与するか、又は点滴により投与した。投薬は繰り返し行われてもよい。
任意に、新生児は、出産後6時間以内から開始して72時間に亘り低体温法(hypothermia)を同時に経験している場合がある。

Claims (3)

  1. 1,3,5(10)−エストラトリエン−3,15α,16α,17β−テトロール(エステトロール)を含む、神経障害を処置するための医薬組成物であって、該神経障害が、低酸素性脳損傷、無酸素性脳損傷、及び外傷性脳損傷を含む群から選択される、医薬組成物。
  2. 1,3,5(10)−エストラトリエン−3,15α,16α,17β−テトロール(エステトロール)を含む、低酸素性虚血性脳症(HIE)を処置するための医薬組成物。
  3. 1,3,5(10)−エストラトリエン−3,15α,16α,17β−テトロール(エステトロール)を含む、新生児の低酸素性虚血性脳症(HIE)を処置するための医薬組成物。
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