以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1の実施形態)
本発明を適用した第1の実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。本発明を適用した第1実施形態の脈動減衰装置は圧縮機1に設けられている。圧縮機1は、冷媒が循環する冷媒サイクルに用いられる。圧縮機1は、例えば、車両用空調装置、給湯水を加熱する給湯機等に適用することができる。圧縮機1は、ヘルムホルツ共鳴器を有する脈動減衰装置を消音器として備え、共鳴室の共鳴周波数を特定の周波数に設定することにより、その特定周波数と同じ周波数の脈動、及びその近傍の周波数の脈動を効率よく消音することができる。
図1に示すように、冷媒サイクルの一例である冷凍サイクル9は、圧縮機1、放熱器6、減圧器7及び蒸発器8を備える。圧縮機1は、冷媒を吸入して圧縮し、圧縮した高温高圧の冷媒を吐出する。放熱器6は、圧縮機1から吐出された冷媒が有する熱を外部へ放熱する。減圧器7は、放熱器6から流出した冷媒を減圧する。蒸発器8は、外部から吸熱して冷媒を蒸発させる。
圧縮機1を車両用空調装置に用いる場合は、放熱器6は車両の前部に設置される室外熱交換器であり、蒸発器8は空調ユニットの通路に配置される空気冷却用の熱交換器である。圧縮機1をヒートポンプ式の給湯機に用いる場合は、放熱器6は、貯湯タンク内の湯水と圧縮機1により吐出された冷媒とで熱交換を行う水冷媒熱交換器であり、冷凍サイクル9は、ヒートポンプユニットを構成する。
図2に示すように、圧縮機1は、例えばHFC・134aを冷媒として使用し、内部に組み込まれた横置きのモータ部3によって圧縮機構部4が作動される横置き型の圧縮機である。圧縮機1のハウジングは、第1ハウジング13と、インバータ2の外郭をなす第2ハウジングと、圧縮機構部4側に位置する第3ハウジング29と、を含んで構成される。圧縮機1のハウジングには、外部(蒸発器8)からの冷媒が流入する吸入口14と、圧縮された冷媒が外部(放熱器6)へ流出する出口である吐出口27と、が形成される。吸入口14は、第1ハウジング13に設けられ、蒸発器8に通じ、外部回路の一部をなすパイプが接続されている。吐出口27は、第3ハウジング29に設けられ、放熱器6に通じ、外部回路の一部をなすパイプが接続されている。
モータ部3及び圧縮機構部4は、第1ハウジング13内に配置されている。
第1ハウジング13は、モータ部3を収容するモータハウジングを兼ねている。第2ハウジングと第3ハウジング29は、第1ハウジング13を両側から挟むように第1ハウジング13と結合している。図2の紙面左から右に向かって、第2ハウジング、第1ハウジング13、第3ハウジング29の順に配置されている。圧縮機1のハウジングは、第2ハウジング及び第3ハウジング29を第1ハウジング13に対して必要に応じてシール部材を介在させて接合することで形成された密閉容器を形成する。
第2ハウジングの内側には、モータ部3を駆動するインバータ2が設けられており、冷媒は流通していない。冷媒が流通する範囲は、第1ハウジング13と第3ハウジング29の内側である。第1ハウジング13と第3ハウジング29の接合部分には、所定の箇所において、冷媒の漏れを防止するためにシール部材が設けられている。当該シール部材は、例えば、エラストマーからなるOリングや平板リング状のパッキン部材である。
モータ部3は、第1ハウジング13の内部に区画されて形成されるモータ室15に収容されているロータ11と、ロータ11の周囲を囲むステータ12と、ロータ11と一体化して回転するシャフト10とを備えている。さらに、ステータ12は、ロータ11の外周側で第1ハウジング13の内周面に圧入されることによって固定されている。モータ室15は、第1ハウジング13の内側の空間であり、ロータ11及びステータ12が配置される空間である。
モータ室15には、シャフト10を回転可能に支持する軸受のうち、インバータ2側の軸受とフレーム16に覆われる軸受とが配置されている。フレーム16は、第1ハウジング13内の第3ハウジング29側に設けられ、シャフト10を圧縮機構部4側で回転可能に支持する軸受を固定する。
吸入口14は、圧縮機1の外部からの冷媒が流入する入口部である。吸入口14は、モータ室に臨んでいる。冷媒は、図2に示すように、第1ハウジング13の側面に開口する吸入口14からシャフト10に直交する方向に流入し、モータ室15のインバータ2側に吸い込まれる。なお、吸入口14は、図2において紙面手前側に位置するため、想像線で図示している。
圧縮機構部4は、モータ室15から冷媒を取り込んで圧縮する機構である。圧縮機構部4は、第1ハウジング13に固定され、固定渦巻き部を備える固定スクロール19と、この固定渦巻き部と噛み合って圧縮室20を形成する可動渦巻き部を備える可動スクロールとしての旋回スクロール18とを有するスクロール式圧縮機構である。固定スクロール19は、第1ハウジング13内のモータ部3とは反対側に固定されて配置されており、この固定スクロール19に噛み合うように可動部材としての旋回スクロール18が配設されている。
旋回スクロール18における固定スクロール19の反対側には、シャフト10の旋回スクロール18側の先端部に設けられた偏心部17が軸受を介して挿入されている。そして、旋回スクロール18は、自転防止機構によりシャフト10の回転駆動にともなって固定スクロール19に対して公転する。旋回スクロール18と固定スクロール19の間には、中心側に向けて、モータ室15と連通する圧縮室20が形成されている。
固定スクロール19の下部には、オイルセパレータ25の下部に溜まった冷媒中の潤滑油を、旋回スクロール18が摺動する部分等に送ることができる固定スクロール内通路190が貫通されて設けられている。そして、この固定スクロール内通路190は、旋回スクロール18の外周部よりも下方に位置するように設けられている。換言すれば、固定スクロール内通路190の最も低い部位は、旋回スクロール18の外周部よりも低い位置にある。
固定スクロール19には、モータ室15から吸入されて圧縮室20で圧縮された冷媒が吐出される吐出ポート21が設けられている。吐出ポート21直後の下流には、吐出室23が形成されている。吐出ポート21は、固定スクロール19の中心部に設けられた貫通孔である。吐出室23は、吐出ポート21出口に設けられた空間であり、吐出弁22を備えている。吐出室23は、圧縮機構部4で圧縮された直後の冷媒が吐出される室である。吐出弁22は、例えば薄板状の弁体と、弁体の過剰変位を規制するリテーナとを備え、吐出室23へ吐出された高圧の冷媒が吐出ポート21を通って逆流しないことに寄与している。
圧縮機構部4により圧縮された冷媒が吐出室23を経て、吐出口27に至るまでの間は、油分離部5である。この油分離部5には、油分離手段としてのオイルセパレータ25が設けられている。オイルセパレータ25は、吐出ポート21と吐出口27とを連絡する連絡通路270のうち、吐出室23よりも冷媒流れ下流側の途中部位に設けられる。オイルセパレータ25は、圧縮機構部4の吐出側で冷媒中に含まれる潤滑油を分離する遠心分離式の潤滑油分離手段である。オイルセパレータ25は、導入通路24、分離用パイプ26、排出通路28を備えている。
分離用パイプ26は、略円筒状の配管であり、その下流端部は、連絡通路270を介して吐出口27と連通している。分離用パイプ26は、例えば、下方部分が直管状の円筒体として形成され、上方部分は下方部分の上端から上方に向かうに従って徐々に拡径するテーパ管状の円筒体として形成されている。分離用パイプ26は、これと同軸上にある円筒内空間を構成する分離室内に配置されている。
分離用パイプ26が配置される分離室の円筒状の内壁面には、吐出室23と連通する導入通路24が開口している。導入通路24は、分離室の円筒状内壁面の軸線に対してねじれの位置にある軸線を有している。すなわち、導入通路24の軸線は分離室の円筒状内壁面の軸線と交差しない。したがって、導入通路24を介して分離室へ流入する冷媒は、分離室を構成する円筒状内壁面の接線方向から円筒状内壁面に沿うように流入する。
圧縮機構部4により圧縮された冷媒は、吐出室23から導入通路24を通り、分離室内の円筒状内壁面と分離用パイプ26の外周面との間を旋回しながら下降する。このとき冷媒中の潤滑油は、冷媒ガスから分離して分離用パイプ26の下端開口よりもさらに下方に落下し、分離室の底面部に設けられた開口から排出通路28へ流れる。排出通路28に排出された潤滑油は、排出通路28に通じる固定スクロール内通路190に流入して、さらに流下し、旋回スクロール18の摺動部分に至る。また、オイルセパレータ25によって潤滑油が分離された後の冷媒ガスは、分離用パイプ26の内方を上昇し、連絡通路270を介して吐出口27から圧縮機1の外部へ向けて高圧冷媒として吐出される。
共鳴器30は、吐出ポート21と吐出口27とを連絡する連絡通路270の途中部位に接続されている。連絡通路270は、吐出ポート21と吐出口27とを連絡する通路と定義する。したがって、吐出室23は連絡通路270の一部をなし、オイルセパレータ25は連絡通路270の途中に設けられている。
共鳴器30は、共鳴室32と、一端部が連絡通路270の途中部位に接続され他端部が共鳴室32に接続される導入路31と、を備える。本実施形態の共鳴器30は、導入路31として、第1導入路311及び第2導入路312を備えている。すなわち、共鳴室32は、2つの導入路311、312を介して連絡通路270の途中部位に連通する。
共鳴室32は、導入路31よりも断面積が大きく、容積も大きくなるように設定されている。共鳴室32は、第1導入路311及び第2導入路312の断面積の総和よりも断面積が大きく、第1導入路311及び第2導入路312の容積の総和より容積が大きくなるように設定されている。例えば、共鳴室32と導入路31は、2つの首を持つフラスコ状を呈する。連絡通路270を流通して吐出口27に向かう冷媒ガスは、その一部が第1導入路311及び第2導入路312を経て共鳴室32に充満されうる。
図3にも示すように、第1導入路311は、一端部が吐出室23に接続し、他端部が共鳴室32に接続している。図2及び図3では、図示下方が下方向(重力方向)であるため、第1導入路311は、共鳴室32側を吐出室23側よりも上方に位置するようにして設けられている。すなわち、共鳴室32に接続される第1導入路311の他端部は、連絡通路270の途中部位に接続される第1導入路311の一端部よりも高い位置に設けられる。
また、第2導入路312は、連絡通路270のオイルセパレータ25よりも下流部分(吐出口27近傍部分)の軸線に対して交差する軸線となるように、連絡通路270に接続されている。連絡通路270の下流部分は、上下方向、もしくは鉛直方向に延びており、第2導入路312は、共鳴室32側を連絡通路270側よりも上方に位置するようにして設けられている。すなわち、共鳴室32に接続される第2導入路312の他端部は、連絡通路270の途中部位に接続される第2導入路312の一端部よりも高い位置に設けられる。
第1導入路311の一端部は、連絡通路270に対し、油分離部5(オイルセパレータ25)よりも上流側にある吐出室23内に位置する第1接続部位271で接続している。また、第2導入路312は、連絡通路270に対し、油分離部5(オイルセパレータ25)よりも下流側にある第2接続部位272で接続している。すなわち、第1接続部位271と第2接続部位272との間に、油分離部5が設けられている。
第2導入路312には、この導入路を開閉する開閉弁装置40が設けられている。図3に示すように、開閉弁装置40は、弁体41及び弾性部材であるスプリング42を備えている。弁体41は、第2導入路312の軸線方向に変位可能であり、図示左方へ最大変位した場合には、第2導入路312の内周面に環状に形成された弁座に着座する。スプリング42は、弁体41を着座方向に付勢する付勢部材である。スプリング42は、例えばコイルスプリングからなり、図示左方端部が弁体41に係止し、図示右方端部が第3ハウジング29の図示を省略した係止部に係止して、第2導入路312の軸線方向に縮設されている。
ここで、弁体41を平板状とし、付勢部材であるスプリング42をコイル状としていたが、これに限定されるものではない。例えば、弁体を円錐体状としたり、板状のスプリングを採用したりしてもかまわない。
共鳴室32は、鉛直下方に位置する底面320が第2導入路312の他端部に向けて低くなるように形成されている。例えば、共鳴室32の底面320は、第2導入路312と同様に、水平方向の基準線に対して所定角度をなすように第2導入路312側を低い位置にして設定される。また、第1導入路311の他端部は、底面320の比較的低い位置で共鳴室32に接続している。これらにより、仮に共鳴室32に流入した潤滑油は、重力により、共鳴室32から第1導入路311、第2導入路312に流れ出て、さらに傾斜する第1導入路311、第2導入路312を流下して連絡通路270へ流れ出ることになる。
図2及び図3からも明らかなように、共鳴器30は、圧縮機1のハウジングの内部に設けられている。詳細には、共鳴室32は、第1ハウジング13と第3ハウジング29とが組み合わせられることによって形成された室である。第1導入路311及び第2導入路312は、第3ハウジング29の内部に形成された通路である。
共鳴室32は、圧縮機1の軸線方向において、圧縮機構部4をなす固定スクロール19及び旋回スクロール18と吐出室23とにわたって、これらよりも外側(側方または上方)に配される。また、第1導入路311及び第2導入路312は、吐出室23よりも外側(側方または上方)に配される。換言すれば、共鳴室32、導入路31、または共鳴器30は、油分離手段(オイルセパレータ25)よりも外側、または高い位置に配され、吐出口27よりも低い位置に配されている。この構成によれば、圧縮機1において、共鳴器30を配置するためのスペースの有効活用が図れ、脈動低減効果を奏する圧縮機1について大型化を抑制することができる。
上記構成に基づく圧縮機1の作動及び潤滑油の流れについて説明する。外部電源からの電力がインバータ2によってステータ12に供給されると、ロータ11の回転に伴ってシャフト10が回転駆動される。圧縮機1は、シャフト10が駆動されることによって旋回スクロール18を公転作動し、吸入口14から流入した冷媒をモータ室15に流す。吸入口14から流入した直後の吸入冷媒は、モータ室15の図示左方部分を流れる際に、インバータ2を冷却する。
さらに、圧縮機1は、モータ室15に至った冷媒を、圧縮機構部4の圧縮室20で圧縮する。そして、圧縮室20で圧縮された冷媒が所定の吐出圧力に達すると、冷媒は吐出ポート21から吐出室23に吐出される。さらに、冷媒は、吐出室23からオイルセパレータ25の導入通路24を通り、分離室内に流入する。このとき冷媒は、分離用パイプ26と分離室の内壁面との間で旋回しながら下方に流れ、比重の小さい冷媒ガスは分離用パイプ26の下端開口から上方に伸びるパイプ内の通路に流入し、連絡通路270を経由して吐出口27から外部回路に向けて流出する。
一方、冷媒に含まれる比重の大きい潤滑油は、遠心力によって分離室の内壁側に飛ばされることにより分離されて、重力によって下降する。そして、下降した潤滑油は、分離室とモータ室15との圧力差によって、排出通路28、固定スクロール内通路190を通ることで、第3ハウジング29及び固定スクロール19を貫通するように流れる。さらに潤滑油は、旋回スクロール18とフレーム16及び固定スクロール19との互いの境界面上等に溜まることになる。潤滑油は、このような潤滑油供給経路を流れることにより、圧縮機構部4やモータ部3の潤滑を行う。
圧縮機1の圧縮機構部4が作動すると、図1に示した冷凍サイクル9に冷媒が循環する。冷凍サイクル9中の冷媒の流路は、圧縮機構部4の作動に伴って冷媒が流通する流通路である。したがって、上述した圧縮機1のハウジング内における吸入口14から吐出口27へ至る冷媒の流路は、圧縮機構部4の作動に伴って冷媒が流通する流通路の一部である。連絡通路270は、流通路のうち圧縮機構部4が圧縮して吐出した冷媒が流通する吐出側流通路の一部である。共鳴器30の第1導入路311および第2導入路312は、いずれも、この吐出側流通路に接続している。
連絡通路270を流れる冷媒ガスは、その一部が第1導入路311および第2導入路312を介して共鳴室32へと流れる。このとき、ヘルムホルツ共鳴という振動により、共鳴器30の共鳴周波数の音が発生する。この音は、共鳴周波数と同じ周波数、またはそれと近傍の周波数の脈動音を消音する。
次に、共鳴器30に適用されるヘルムホルツ共鳴器の原理について説明する。図4は、この原理を説明するために、共鳴器を模式的に示した断面図である。基本的な原理説明のため、図4では、導入路31を1つの導入路として図示している。
図4のような容器において、連絡通路270を流通するガス冷媒のうちの一部が、導入路31(断面積Sp(m2))に流入すると、導入路31(首の部分)に存在する流体が上に押し上げられて、共鳴室32の容積V(m3)の流体を圧縮する。圧縮された流体は、元に戻ろうとして、導入路31の流体を押し下げる。これが繰り返されることにより、導入路31の流体が振動する。すなわち、容積Vの流体がばねの働きをし、導入路31の流体を振動させることになる。この振動作用によって、特定の共鳴周波数の音が発生する。この振動は、ヘルムホルツ共鳴といい、特定の共鳴周波数は次式で求められる。
fp=(c/2π)(Sp/(Lp・V))1/2
なお、c(m/s)は、冷媒中の音速であり、Lp(m)は、導入路31の長さである。
連絡通路270を流れる冷媒ガスは、導入路31を介して共鳴室32へと流れることにより、共鳴室32の共鳴周波数(上記の式で算出される周波数)と同じ周波数、またはそれと近傍の周波数の脈動を減衰して、脈動音を消音する。
本実施形態では、導入路31は、第1導入路311および第2導入路312からなり、第2導入路312には開閉弁装置40が設けられている。したがって、本実施形態の脈動減衰装置は、図5及び図6に示すようなモデルの共鳴器30を備える。
油分離部5を通過する冷媒は、オイルセパレータ25の部分における圧力損失により、第1接続部位271における圧力Ph(以下、第1圧力と呼ぶ場合がある)が、第2接続部位272における圧力Pl(以下、第2圧力と呼ぶ場合がある)よりも高くなる。油分離部5は、冷媒が通過する際に、第1圧力Phと第2圧力Plとに差圧を生成する差圧生成部として機能する。油分離部5のオイルセパレータ25の冷媒流通部分が、実質的な差圧生成部である。
第1圧力Phは、第1導入路311、共鳴室32、第2導入路312の弁座よりも共鳴室側の部分を介して、弁体41の図示上面(共鳴室側の面)に印加される。一方、第2圧力Plは、第2導入路312の弁座よりも反共鳴室側の部分を介して、弁体41の図示下面(反共鳴室側の面)に印加される。
圧縮機構部4の回転数が比較的小さく、連絡通路270を流れる冷媒の流速が比較的小さい場合には、図5に示すように、開閉弁装置40は弁体41を弁座に着座させ第2導入路312を閉塞している。これは、第1圧力Phと第2圧力Plとの差圧が小さく、スプリング42による弁体41への閉弁方向の付勢力をFsとした場合に、次式の関係が成立するためである。
Fs≧(Ph−Pl)Sp2
ここで、Sp2(m2)は第2導入路312の通路断面積であり、具体的には、弁体41が着座する弁座の内方の面積である。
図5に示す状態では、共鳴器30の特定の共鳴周波数fp1は次式で求められる。
fp1=(c/2π)(Sp1/(Lp・V))1/2
ここで、Sp1(m2)は第1導入路311の通路断面積である。
すなわち、圧縮機構部4の回転数が比較的小さく、連絡通路270を流れる冷媒の流速が比較的小さい場合には、共鳴器30は、第1導入路311のみを首部としたヘルムホルツ共鳴器となる。換言すれば、圧縮機構部4の回転数が比較的小さく、連絡通路270を流れる冷媒の圧力脈動周波数が比較的低い場合には、共鳴器30は、第1導入路311のみを首部とした比較的共鳴周波数が低い共鳴器となる。
これに対し、圧縮機構部4の回転数が比較的大きく、連絡通路270を流れる流速が比較的大きい場合には、図6に示すように、開閉弁装置40は弁体41を弁座から離座させ第2導入路312を開放する。これは、第1圧力Phと第2圧力Plとの差圧が大きく、次式の関係が成立するためである。
Fs<(Ph−Pl)Sp2
図6に示す状態では、共鳴器30の特定の共鳴周波数fp2は次式で求められる。
fp2=(c/2π)((Sp1+Sp2)/(Lp・V))1/2
すなわち、圧縮機構部4の回転数が比較的大きく、連絡通路270を流れる冷媒の流速が比較的大きい場合には、共鳴器30は、第1導入路311及び第2導入路312の両者を首部としたヘルムホルツ共鳴器となる。換言すれば、圧縮機構部4の回転数が比較的大きく、連絡通路270を流れる冷媒の圧力脈動周波数が比較的高い場合には、共鳴器30は、第1導入路311及び第2導入路312を首部とした比較的共鳴周波数が高い共鳴器となる。
なお、本実施形態では、第1導入路311の長さと第2導入路312の長さとを共通の長さLpとしている。また、図5及び図6では、開閉弁装置40の機能を理解し易くために、第2導入路312の弁座よりも反共鳴室側の部分の通路を、弁座よりも共鳴室側の部分の通路よりも、極めて断面積を大きく図示している。第2導入路312は、このような通路形状に限定されるものではなく、長さ方向にほぼ同一の断面積が連続するものであってもよい。また、第2導入路312の通路断面積が長さ方向において大きく変化する場合には、この断面積変化も加味した共鳴周波数が得られる。
本実施形態の脈動減衰装置よれば、脈動減衰装置が備える共鳴器30は、連絡通路270に接続する複数の導入路311、312と、複数の導入路311、312を介して連絡通路270に連通可能な共通の共鳴室32と、を備えている。そして、複数の導入路のうちの一部の導入路である第2導入路312には、第2導入路312を開閉可能な開閉弁装置40が設けられている。この開閉弁装置40は、冷媒の圧力脈動の周波数が高くなるに従って連絡通路270と共鳴室32とを連通する導入路の数が増加するように、第2導入路312を開閉する。
これによると、開閉弁装置40の開閉により連絡通路270と共鳴室32とを繋ぐ導入路の数を変更して、圧力脈動の周波数に応じて共鳴器30の共鳴周波数を複数の特定周波数fp1、fp2のいずれかに切り替えることができる。したがって、複数の特定周波数および特定周波数の近傍の周波数の脈動を減衰するために、比較的小型化が容易な開閉弁装置40を用いればよく、共鳴室を複数設けたり、共鳴室の容積を変更する構成を設けたりする必要がない。このようにして、本実施形態の脈動減衰装置によれば、大型化を抑制しつつ優れた脈動減衰特性を得ることができる。
また、複数の導入路は、第1導入路311と、第1導入路311よりも冷媒流れ下流側で連絡通路270に接続する第2導入路312と、を有し、開閉弁装置40は、第2導入路312を開閉可能に設けられている。連絡通路270は、第1導入路311が接続する第1接続部位271と第2導入路312が接続する第2接続部位272との間に、差圧生成部となる油分離部5を備えている。油分離部5は、第1接続部位271における第1圧力が第2接続部位272における第2圧力よりも高くなるように第1圧力と第2圧力とに差圧を生成する。油分離部5は、通過する冷媒の流速の増大に応じて差圧を増大させるものであり、開閉弁装置40には、第1圧力および第2圧力が印加されて、開閉弁装置40は、差圧が所定圧以上となった場合に第2導入路312を開く。開閉弁装置40は、差圧に応じて、第2導入路312を閉塞する状態と開放する状態とを選択的に切り替える。
これによると、油分離部5が生成する第1圧力と第2圧力との差圧が所定圧以上となった場合に、第1圧力および第2圧力の印加により開閉弁装置40が第2導入路312を開いて共鳴周波数を上昇させることができる。油分離部5を通過する冷媒の流速が増大して差圧が大きくなるときには、圧縮機構部4の作動周期が短縮しており脈動周波数も上昇する。したがって、脈動周波数の上昇に対応して開閉弁装置40が圧力印加により開動作し、共鳴周波数を上昇させる。このように、油分離部5が生成する差圧で開閉弁装置40を動作させるという簡素な構成により、大型化を抑制しつつ優れた脈動減衰特性を得ることができる。差圧により開閉動作する開閉弁装置40は、シンプルな構成であり、大きなコストアップを招き難い。
図7および図8は、本発明者が行った本実施形態の脈動減衰装置の脈動減衰効果の確認結果である。
図7に示すグラフは、横軸を圧縮機構部4の冷媒吐出の周波数(Hz)とし、縦軸を圧力脈動の一次成分の圧力変動幅(kPa)としている。共鳴器30を備える本実施形態相当の圧縮機1は、比較例としての共鳴器を備えない圧縮機に対し、60Hz〜140Hzの広い周波数範囲において、吐出冷媒の圧力脈動を減衰できることが確認できる。横軸の周波数は、圧縮機の回転数に対応する。例えば、1回転で1回冷媒を吐出するロータリ型の圧縮機の場合、100(Hz)は回転数6000(rpm)に相当する。
図8に示すグラフは、横軸を圧縮機構部4の冷媒吐出の周波数(Hz)とし、縦軸を共鳴器30による圧力脈動の減衰率(dB)としている。低速側のターゲット周波数(第1の減衰目標中心周波数、例えば80Hz)および高速側のターゲット周波数(第2の減衰目標中心周波数、例えば130Hz)で約10dBの大きな減衰率が得られることが確認できる。また、各ターゲット周波数およびその近傍の周波数を含む比較的広い周波数帯で比較的大きな減衰率が得られることが確認できる。本例の結果を示す実線の2つの山の間の谷部に相当する周波数で、開閉弁装置40の開閉状態が切り替わっている。
図8において、破線で示した結果は、共鳴器が第1導入路311に相当する導入路のみを首部として持つ場合であり、一点鎖線で示した結果は、共鳴器が第1導入路311および常開の第2導入路312に相当する導入路を首部として持つ場合である。いずれの場合も、1つのターゲット周波数には効果があるものの、本例の共鳴器30のように幅広い周波数帯での脈動減衰効果は得難いことが確認できる。
また、第1導入路311および第2導入路312は、いずれも、流通路のうち圧縮機構部4が圧縮して吐出した冷媒が流通する吐出側流通路に接続している。そして、開閉弁装置40を開閉させるための差圧を生成する差圧生成部は、圧縮機構部4から吐出された冷媒から潤滑油を分離する油分離部5である。
油分離部5を通過する冷媒の圧力損失により、油分離部5の上下流には差圧が生成される。したがって、油分離部5を差圧生成部として利用することにより、専用の差圧生成部を設ける必要がない。また、油分離部5は、比較的脈動の振幅が大きくなり易い吐出側流通路に設けられている。したがって、吐出側流通路に本発明を適用した脈動減衰装置を設けることは極めて有効である。このようにして、一層簡素な構成により、大型化を抑制しつつ極めて優れた脈動減衰特性を得ることができる。
上述したように、第1接続部位271と第2接続部位272との間に油分離部5のオイルセパレータ25が介設されている。これに伴い、吐出ポート21から第1接続部位271までの冷媒流路距離と吐出ポート21から第2接続部位272までの冷媒流路距離とは、例えば数十mm程度異なる。しかしながら、冷媒中の音速cは、例えば約150m/sと大きく、100Hzの周波数では、脈動の波長は約1500mmとなるため、距離差による脈動の位相差は問題となり難い。
また、共鳴器30は、圧縮機構部4を収容する圧縮機1のハウジングの内部に設けられている。これによると、共鳴器30をハウジング内に設け、共鳴器30を形成する部材にハウジング等を利用することが可能である。すなわち、共鳴室32や複数の導入路311、312を形成する部材にハウジング等を用いることができる。したがって、脈動減衰装置をハウジングの外部に設けた場合よりも、全体の体格を小型化することが可能である。
また、複数の導入路311、312は、いずれも、共鳴室32側の他端部よりも連絡通路270側の一端部の方が下方に位置している。これによると、仮に導入路311、312に潤滑油が混入したとしても、潤滑油は、重力により、共鳴室32側から連絡通路270側へ向かって導入路311、312を流れやすい。したがって、導入路31の断面積が潤滑油によって狭くなってガスの流通が妨げられる事態を可及的速やかに排除することができる。
また、共鳴室32は、鉛直下方に位置する底面320が導入路311、312の他端部に向けて低くなるように形成される。これによると、仮に共鳴室32に潤滑油が混入したとしても、潤滑油は、重力により、導入路311、312側に向かって流れやすい。したがって、ガスが占める共鳴室32の容積が潤滑油によって狭くなる事態を可及的速やかに排除することができる。
上記した説明では、共鳴器30は圧縮機1のハウジング内に設けられていたが、圧縮機ハウジングとは別体で備えるものであってもよい。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図9に基づいて説明する。
第2の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、差圧生成部を固定絞り部とした点が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1の実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第2の実施形態において説明しない他の構成は、第1の実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
図9に示すように、本実施形態の脈動減圧装置は、圧縮機1Aとは別体の共鳴器ハウジング50を備え、共鳴器ハウジング50内に共鳴器30が設けられている。圧縮機1Aは、第1の実施形態で説明した圧縮機1に対し、共鳴器30を有していない点が異なる。
共鳴器ハウジング50は、例えば金属製であり、内部には、図示上下方向に延びる接続通路370が形成されている。接続通路370の上流端部は、圧縮機1の吐出口27に、例えば螺子部の嵌め合いにより接続している。接続通路370の下流端部は、放熱器6に繋がる吐出側配管91の上流端部に、例えば螺子部の嵌め合いにより接続している。これにより、吐出口27と吐出側配管91内を接続する接続通路370は、冷媒の流通路の一部、かつ、吐出側流通路の一部を構成している。
接続通路370には、上下方向に延びる軸線方向におけるほぼ中央部に、通路断面積を絞ったオリフィス373が形成されている。第1導入路311の一端部は、接続通路370に対し、オリフィス373よりも上流側にある第1接続部位371で接続している。また、第2導入路312は、接続通路370に対し、オリフィス373よりも下流側にある第2接続部位372で接続している。すなわち、第1接続部位371と第2接続部位372との間に、オリフィス373が設けられている。
オリフィス373は、流通路の通路断面積を絞る固定絞り部であり、第1接続部位371における圧力Ph(第1圧力)と、第2接続部位372における圧力Pl(第2圧力)とに差圧を生成する差圧生成部に相当する。
本実施形態の脈動減衰装置よれば、脈動減衰装置が備える共鳴器30は、接続通路370に接続する複数の導入路311、312と、複数の導入路311、312を介して接続通路370に連通可能な共通の共鳴室32と、を備えている。そして、複数の導入路のうちの一部の導入路である第2導入路312には、第2導入路312を開閉可能な開閉弁装置40が設けられている。この開閉弁装置40は、冷媒の圧力脈動の周波数が高くなるに従って連絡通路270と共鳴室32とを連通する導入路の数が増加するように、第2導入路312を開閉する。
これによると、開閉弁装置40の開閉により接続通路370と共鳴室32とを繋ぐ導入路の数を変更して、圧力脈動の周波数に応じて共鳴器30の共鳴周波数を複数の特定周波数fp1、fp2のいずれかに切り替えることができる。したがって、複数の特定周波数および特定周波数の近傍の周波数の脈動を減衰するために、比較的小型化が容易な開閉弁装置40を用いればよく、共鳴室を複数設けたり、共鳴室の容積を変更する構成を設けたりする必要がない。このようにして、本実施形態の脈動減衰装置によれば、大型化を抑制しつつ優れた脈動減衰特性を得ることができる。
また、複数の導入路は、第1導入路311と、第1導入路311よりも冷媒流れ下流側で接続通路370に接続する第2導入路312と、を有し、開閉弁装置40は、第2導入路312を開閉可能に設けられている。接続通路370は、第1導入路311が接続する第1接続部位371と第2導入路312が接続する第2接続部位372との間に、差圧生成部となるオリフィス373を備えている。オリフィス373は、第1接続部位371における第1圧力が第2接続部位372における第2圧力よりも高くなるように第1圧力と第2圧力とに差圧を生成する。オリフィス373は、通過する冷媒の流速の増大に応じて差圧を増大させるものであり、開閉弁装置40には、第1圧力および第2圧力が印加されて、開閉弁装置40は、差圧が所定圧以上となった場合に第2導入路312を開く。
これによると、オリフィス373が生成する第1圧力と第2圧力との差圧が所定圧以上となった場合に、第1圧力および第2圧力の印加により開閉弁装置40が第2導入路312を開いて共鳴周波数を上昇させることができる。オリフィス373を通過する冷媒の流速が増大して差圧が大きくなるときには、圧縮機構部4の作動周期が短縮しており脈動周波数も上昇する。したがって、脈動周波数の上昇に対応して開閉弁装置40が圧力印加により開動作し、共鳴周波数を上昇させる。このように、オリフィス373が生成する差圧で開閉弁装置40を動作させるという簡素な構成により、大型化を抑制しつつ優れた脈動減衰特性を得ることができる。
また、差圧生成部をなすオリフィス373は、流通路の通路断面積を絞る固定絞り部である。これによると、固定絞り部を通過する冷媒の圧力損失により、固定絞り部の上下流には差圧が生成される。したがって、固定絞り部を差圧生成部とするという簡素な構成により、大型化を抑制しつつ優れた脈動減衰特性を得ることができる。
また、第1導入路311および第2導入路312は、いずれも、冷媒の流通路のうち圧縮機構部4が圧縮して吐出した冷媒が流通する吐出側流通路に接続している。圧縮機構部が圧縮して吐出した冷媒が流通する吐出側流通路は、比較的脈動の振幅が大きくなり易い。したがって、吐出側流通路に本発明を適用した脈動減衰装置を設けることで、大型化を抑制しつつ極めて優れた脈動減衰特性を得ることができる。
また、本実施形態の脈動減衰装置においても、複数の導入路311、312を、いずれも、共鳴室32側の他端部よりも接続通路370側の一端部の方を下方に位置づけることができる。これにより、仮に導入路311、312に潤滑油が混入したとしても、潤滑油の排出を容易に行うことができる。また、共鳴室32の底面を導入路311、312の他端部に向けて低くなるように形成することができる。これにより、仮に共鳴室32に潤滑油が混入したとしても、潤滑油の排出を容易に行うことができる。
また、共鳴器ハウジング50の吐出口27への接続部の構造を、吐出側配管91の共鳴器ハウジング50への接続部と同一構造とすることができる。これによると、圧縮機1Aと吐出側配管91とを直接接続する形態に対し、圧縮機1Aと吐出側配管91との間に脈動減衰装置を容易に介設することができる。
また、本実施形態では、圧縮機と脈動減衰装置とを別体としていたが、これに限らず、圧縮機のハウジングと共鳴器ハウジングとを一体化してもかまわない。また、共鳴器ハウジングと吐出側配管とを一体化してもかまわない。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について図10に基づいて説明する。
第3の実施形態は、前述の第2の実施形態と比較して、開閉弁装置をアクチュエータ駆動の開閉弁装置とした点が異なる。なお、第1、第2の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1、第2の実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第3の実施形態において説明しない他の構成は、第1、第2の実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
図10に示すように、本実施形態の脈動減圧装置は、第2導入路312を開閉する開閉弁装置340を備えている。開閉弁装置340は、例えば電動アクチュエータにより開閉動作する。開閉弁装置340は、制御装置100からの出力信号により作動制御される。本実施形態の脈動減圧装置は、オリフィス等の差圧生成部を有していない。
圧縮機1Aが、例えば車両用空調装置に用いられるエンジン駆動圧縮機である場合には、制御装置100は、車両用空調装置の制御装置(所謂A/CECU)とすることができる。この場合には、制御装置100は、例えば入力したエンジン回転数情報から圧縮機回転数を導出し、圧縮機回転数に基づいて開閉弁装置340を開閉制御する。制御装置100は、導出した圧縮機回転数が所定回転数以上であるときに、開閉弁装置340を開状態とする。
また、圧縮機1Aが、例えば電動圧縮機である場合には、制御装置100は、圧縮機1Aのインバータ2(インバータ制御回路)とすることができる。制御装置100は、回転制御するモータ部3の回転数情報に基づいて開閉弁装置340を開閉制御する。制御装置100は、圧縮機回転数が所定回転数以上であるときに、開閉弁装置340を開状態とする。
このように、制御装置100の制御動作により、開閉弁装置340は、圧縮機回転数に応じて、第2導入路312を閉塞する状態と開放する状態とを選択的に切り替える。
本実施形態の脈動減圧装置によれば、開閉弁装置を差圧生成部が生成する差圧で開閉動作させる効果以外は、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、制御装置100は、圧縮機1Aの回転数に基づいてアクチュエータで流通路と共鳴室とを連通する導入路の数を切り替えるので、脈動減衰特性の精度を向上することが可能である。
また、本実施形態では、圧縮機と脈動減衰装置とを別体としていたが、これに限らず、圧縮機のハウジングと共鳴器ハウジングとを一体化してもかまわない。また、共鳴器ハウジングと吐出側配管とを一体化してもかまわない。
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
上記実施形態では、共鳴器30は、連絡通路270や接続通路370に接続していた。連絡通路270及び接続通路370は、いずれも、冷媒が流通する流通路の一部であり、流通路のうち圧縮機構部4が吐出した冷媒が流通する吐出側流通路の一部である。共鳴器30は、連絡通路270や接続通路370に接続されるものに限定されるものではない。共鳴器は、連絡通路270や接続通路370以外の吐出側流通路、例えば吐出側配管91や放熱器6の入口側タンクに接続されるものであってもよい。
また、共鳴器は、吐出側流通路に接続するものに限定されず、流通路のうち圧縮機構部4が吸入する冷媒が流通する吸入側流通路、例えば蒸発器8の出口側タンクやこのタンクと圧縮機の吸入口14とを繋ぐ吸入側配管に接続されるものであってもよい。また、圧縮機ハウジング内の吸入側流通路に接続するものであってもよい。
本発明を適用した脈動減衰装置の共鳴器は、冷凍サイクル9中の冷媒の流通路のいずれの箇所に接続するものであっても有効である。また、吸入側流通路および吐出側流通路、すなわち、蒸発器8の出口側タンクから放熱器6の入口側タンクまでの間に接続するものであれば好ましい。さらに、吐出側流通路、すなわち、圧縮機の吐出ポート21から放熱器6の入口側タンクまでの間に接続するものであれば一層好ましい。
また、上記実施形態では、冷媒の流通路と共鳴室とを連通可能な導入路、所謂共鳴器の首部は、第1導入路311および第2導入路312の2つであったが、これに限定されるものではない。例えば、導入路の数は3つ以上であってもかまわない。3つ以上の導入路のうち、少なくとも1つの導入路を開閉する開閉弁装置を有し、冷媒の圧力脈動の周波数が高くなるに従って流通路と共鳴室とを連通する導入路の数が増加するように、連通する導入路の数を変更するものであればよい。
また、上記実施形態では、圧縮機1、1Aはスクロール型の圧縮機であったが、これに限定されるものではない。例えば、圧縮機は、ロータリピストン型、往復動型、スライドベーン型、ロータリ型等の圧縮機で構成することも可能である。
また、上記実施形態では、圧縮機1、1Aに取り込む冷媒は、HFC・134aであったが、他の種類の冷媒を用いることもできる。例えば、CO2を主成分とする冷媒を用いることもできる。