しかしながら、上述の特許文献に記載されている構成は、何れも走行面上の搬送対象物を所定位置から照射する装置や、反射光を検知可能な装置、或いは照射機能及び検知機能を兼ね備えた光センサなど、メカニカルな装置やパーツが必須である。したがって、搬送対象物の姿勢選別処理の精度がこれら各装置やセンサの検出精度や取付精度に依存する構成となり、またコストアップを招来する構成であるといえる。
さらに、正しい姿勢でないと判定された搬送対象物に対してエアを吹き付けて走行面から排除したり、或いは走行面上で反転させて姿勢を変換する構成を採用した場合、搬送対象物の形状や重量などに応じてエアの吹出位置や吹出量などを高精度で調整することが条件とされ、その条件を満たさない場合には、正しい姿勢でない搬送対象物を走行面から排除したり、走行面上で反転させることができず、正しい姿勢とは異なる姿勢の搬送対象物がさらに下流側へ搬送されてしまう事態が生じ得る。また、正しい姿勢でないと判定された搬送対象物に対してエアを確実に吹き付けることができるように、搬送対象物の搬送速度を遅く設定することも考えられるが、搬送速度が遅い分だけ搬送処理能力も低下することになる。
特に、エアを吹き付けるための吹出孔を走行面に形成した場合には、吹出孔を形成した部分を通過する搬送対象物が、正常な搬送姿勢であるか否かに関わらずその吹出孔に不意に引っ掛かり、所期の搬送処理を行うことができない事態も想定される。
また、正しい姿勢ではないと判定された搬送対象物をエアによって吹き飛ばして走行面から排除し、姿勢判別処理が実施された領域(姿勢判別領域)よりも搬送方向上流側に一旦戻した搬送対象物を再び姿勢判別領域にまで搬送し、姿勢判別領域に到達した順に再度姿勢判別処理を実施する構成を採用した場合、搬送対象物が姿勢判別領域に到達するまでに正しい姿勢となっていない限り、その搬送対象物に対する姿勢判別処理は繰り返されることになり、搬送処理能力及び判別処理能力の低下を招来し得る。
なお、走行面上に切欠部を形成し、切欠部を形成した部分を他の走行面よりも幅が狭い姿勢判別領域として、搬送対象物の重心が姿勢判別領域から外れるか否かによって搬送対象物の姿勢を選別し、搬送対象物の重心が姿勢判別領域から外れた場合には、その搬送対象物を姿勢判別領域よりも上流側に戻し、再び姿勢判別領域まで搬送する構成も知られている。しかしながら、このような構成であっても、搬送対象物の重心が姿勢判別領域から外れない姿勢で姿勢判別領域を通過しない限り、その搬送対象物の選別処理は繰り返されることになり、やはり搬送処理能力及び選別処理能力の低下を招来し得る。
ここで、搬送対象物には、その中心に重心があるものもあれば、重心が対面(正対)するオモテ面又はウラ面の何れか一方に寄った位置にあるものも存在する。上述したような問題は、重心位置に関わらず全ての搬送対象物を搬送する場合に生じ得るものである。
本発明は、対面するオモテ面又はウラ面の何れか一方に寄った位置に重心がある略直方体状の搬送対象物を搬送しながら姿勢を揃えるパーツフィーダに関し、上述した課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、メカニカルな装置を用いたり、エア吹出孔を走行面に形成することなく、本来の重心位置とは異なる位置に重心がある略直方体状の搬送対象物の姿勢をトラックの所定領域において全て正姿勢に変換することができ、搬送姿勢を揃える処理能力の向上、ひいては搬送処理能力の向上を図ることが可能なパーツフィーダを提供することにある。
すなわち、本発明のパーツフィーダは、搬送対象物を支持する走行面を有するトラックと、トラックを振動させることによって搬送対象物を走行面上所定の搬送方向に搬送させる加振手段とを備え、搬送対象物を走行面上における所定領域に形成した姿勢変換部によって正姿勢に変換可能なものである。ここで、本発明における搬送対象物は、略直方体状をなし且つ相互に正対するオモテ面又はウラ面の何れか一方の面側に寄った位置に重心があるものである。そして、本発明のパーツフィーダでは、オモテ面又はウラ面のうち重心から遠い方の面を上向きに表出させた姿勢を正姿勢とし、姿勢変換部によって搬送対象物を正姿勢に変換するものであり、以下に述べる構成を有していることを特徴としている。
本発明のパーツフィーダは、走行面のうち少なくとも搬送方向において姿勢変換部よりも上流側の走行面を、所定角度傾斜し且つ搬送中の搬送対象物のオモテ面又はウラ面の何れか一方の面に対面して接触し得る上流側第1走行面と、上流側第1走行面に対して90度又は略90度傾斜し且つ搬送中の搬送対象物のオモテ面及びウラ面以外の何れか一つの面に対面して接触し得る上流側第2走行面を有する上流側走行面に設定している。ここで、上流側走行面は、上流側第1走行面及び上流側第2走行面に跨がる鉛直方向の縦断面における形状がL字状ではなく、上流側第1走行面及び上流側第2走行面が互いに斜め上方を向く傾斜面に設定してV字状又は略V字状となるように設定されていることが好ましい。
そして、本発明に係るパーツフィーダは、走行面上における所定領域に、第1姿勢変換部と、搬送方向において第1姿勢変換部よりも下流側に設けた第2姿勢変換部とを備えた姿勢変換部を形成している。
第1姿勢変換部は、上流側第1走行面及び上流側第2走行面にそれぞれ連続する第1走行面及び第2走行面に跨がって形成された第1溝を有するものである。本発明では、第1走行面及び第2走行面に跨がる鉛直方向の縦断面における第1溝の開口幅を、同じ縦断面における搬送対象物の短辺よりも長く且つ同じ縦断面における搬送対象物の長辺よりも短く設定している。
ここで、「搬送対象物の短辺」は、上流側走行面において上流側第1走行面にオモテ面又はウラ面が接触し且つ上流側第2走行面にオモテ面又はウラ面以外の面が接触した姿勢で搬送される搬送対象物を上流第1走行面及び上流側第2走行面に跨がる鉛直方向の縦断面で見た場合に、上流側第2走行面に接触している面(オモテ面又はウラ面以外の面)に相当する線分(辺)である。また、「搬送対象物の長辺」は、同様に上流側走行面上の搬送対象物を上流第1走行面及び上流側第2走行面に跨がる鉛直方向の縦断面で見た場合に、上流側第1走行面に接触しているオモテ面又はウラ面に相当する線分(辺)である。
そして、このような第1溝を有する第1姿勢変換は、第1溝に到達する直前の搬送対象物の姿勢が、上流側第1走行面にオモテ面又はウラ面のうち重心から遠い方の面を接触させた第1姿勢である場合、第1溝に到達した搬送対象物のうち上流側第2走行面に対面して接触していた面全体を第1溝内に落として収容することにより、搬送対象物の重心を前記縦断面における当該第1溝の中心を通る垂線上又は垂線よりも第2走行面側に位置付けることで、第1姿勢から、オモテ面又はウラ面のうち重心に近い方の面を第2走行面に接触させ且つオモテ面又はウラ面のうち重心から遠い方の面を斜め上方に表出させた姿勢に変換するとともに、第1溝に到達する直前の搬送対象物の姿勢が、上流側第1走行面にオモテ面又はウラ面のうち重心に近い方の面を接触させた第2姿勢である場合、第1溝に到達した搬送対象物のうち上流側第2走行面に対面して接触していた面全体を第1溝内に落として収容することにより、搬送対象物の重心を垂線よりも第1走行面側に位置付けることで、オモテ面又はウラ面のうち重心に近い方の面を第1走行面に接触させ且つオモテ面又はウラ面のうち重心から遠い方の面を斜め上方に表出させた第2姿勢を保持するものである。
すなわち、本発明のパーツフィーダでは、第1姿勢変換部よりも搬送方向上流側に設けた上流側搬送面における搬送対象物の姿勢が、上流側第1走行面にオモテ面又はウラ面のうち重心から遠い方の面を接触させた第1姿勢、又は上流側第1走行面にオモテ面又はウラ面のうち重心に近い方の面を接触させた第2姿勢の何れかに限定されており、第1溝の開口幅を上述したように縦断面における搬送対象物の短辺より大きく設定しているため、第1溝に到達する直前までは上流側第2走行面に対面して接触していた面(オモテ面又はウラ面以外の4面のうち何れか1つの面)は第2走行面に接触せずに、第1溝内に収容される。すると、第1溝内にオモテ面又はウラ面以外の4面のうち何れか1つの面全体が収容されることで、上流側第1走行面と上流側第2走行面による搬送対象物の安定した支持状態が一旦解除されることになる。
そして、本発明に係るパーツフィーダの搬送対象が、オモテ面又はウラ面の何れか一方の面側に寄った位置に重心がある搬送対象物であることから、上流側第1走行面と上流側第2走行面による支持状態が解除された搬送対象物は、自ずとオモテ面又はウラ面のうち重心に近い方の面をオモテ面又はウラ面のうち重心から遠い方の面よりも低位となる姿勢へと傾動しようとする。
したがって、上流側第1走行面にオモテ面又はウラ面のうち重心から遠い方の面を接触させた第1姿勢の搬送対象物が第1溝に到達すると、その重心が前記縦断面における第1溝の中心を通る垂線上又は垂線よりも第2走行面側にあることによって、搬送対象物は、オモテ面又はウラ面のうち重心に近い方の面を第2走行面側に近付ける方向に傾動(回転)して、第1姿勢から、オモテ面又はウラ面のうち重心に近い方の面を第2走行面に接触させ且つオモテ面又はウラ面のうち重心から遠い方の面を斜め上方に表出させた姿勢に変換されることになる。
また、上流側第1走行面にオモテ面又はウラ面のうち重心に近い方の面を接触させた第2姿勢の搬送対象物が第1溝に到達すると、その重心が縦断面における第1溝の中心を通る垂線よりも第1走行面側にあることによって、搬送対象物は、オモテ面又はウラ面のうち重心に近い方の面を第1走行面側に近付ける方向に傾動(回転)するが、第1溝に到達した時点で既にオモテ面又はウラ面のうち重心に近い方の面が第1走行面に接触しているため、オモテ面又はウラ面のうち重心に近い方の面を第1走行面側に近付ける方向への傾動は規制され、その結果、ウラ面を第1走行面に接触させ且つオモテ面又はウラ面のうち重心から遠い方の面を斜め上方に表出させた第2姿勢が維持されることになる。
さらに、本発明に係るパーツフィーダでは、第2姿勢変換部として、第1走行面及び第2走行面に跨がって形成され、縦断面における開口幅を搬送対象物の縦断面における長辺よりも大きく設定した第2溝を有し、第2溝に到達した搬送対象物と第1走行面及び第2走行面との接触状態を解除して搬送対象物を正姿勢(オモテ面又はウラ面のうち重心から遠い方の面を上向きに表出させた姿勢)にするものを適用している。
このように、本発明では、第2溝の縦断面における開口幅を搬送対象物の縦断面における長辺よりも大きく設定しているため、第1溝を通過することによって、オモテ面又はウラ面のうち重心に近い方の面を第2走行面に接触させ且つオモテ面又はウラ面のうち重心から遠い方の面を斜め上方に表出させた姿勢にある搬送対象物が第2溝に到達した場合、オモテ面又はウラ面のうち重心に近い方の面と第2走行面の接触状態が解除されることによって、搬送対象物は、オモテ面又はウラ面のうち重心に近い方の面がより一層低位となる姿勢へと自ずと傾動し、オモテ面又はウラ面のうち重心から遠い方の面を上向きに表出させた正姿勢に変換される。
また、第1溝を通過することによって、ウラ面を第1走行面に接触させ且つオモテ面又はウラ面のうち重心から遠い方の面を斜め上方に表出させた第2姿勢にある搬送対象物が第2溝に到達した場合、オモテ面又はウラ面のうち重心に近い方の面と第1走行面の接触状態が解除されることによって、搬送対象物は、オモテ面又はウラ面のうち重心に近い方の面がより一層低位となる姿勢へと自ずと傾動し、オモテ面又はウラ面のうち重心から遠い方の面を上向きに表出させた正姿勢に変換される。
以上に述べたように、本発明に係るパーツフィーダであれば、搬送対象物の前記短辺を含む面全体(オモテ面又はウラ面以外の何れか1つの面全体)を収容可能である一方、搬送対象物の前記長辺を含むオモテ面全体又はウラ面全体を収容し得ない開口幅に設定した第1溝を有する第1姿勢変換部と、搬送対象物の前記長辺を含むオモテ面全体又はウラ面全体を収容可能な開口幅に設定した第2溝を有する第2姿勢変換部とを用いて姿勢変換部を構成し、重心位置がオモテ面又はウラ面の何れか一方の面側に寄っている搬送対象物自体の傾動により姿勢変換するように設定しているため、走行面上の搬送対象物を所定位置から光線を照射する装置や、反射光を検知可能な装置、或いは照射機能及び検知機能を兼ね備えた光センサなどのメカニカルな装置やパーツが不要であり、コストの点で有利であるとともに、メカニカルな装置の検出精度や取付精度に左右されることなく、姿勢変換部に到達した搬送対象物をもれなく正姿勢に姿勢変換することができ、搬送姿勢を揃える処理能力の向上、ひいては搬送処理能力の向上を図ることができる。
さらに、上述した姿勢変換部を備えた本発明のパーツフィーダは、例えば正しい姿勢でないと判定された搬送対象物に対してエアを吹き付けて走行面から排除したり、或いは走行面上で反転させて姿勢を変換する構成を採用した場合であれば要求されるシビアな条件、つまり、搬送対象物の形状や重量などに応じてエアの吹出位置や吹出量などを高精度で調整しなければならないという条件が課されることもなく、搬送対象物を走行面の特徴的な形状により物理的に正姿勢に変換することが可能であり、適切な姿勢変換処理を確保するために要する労力や負担の軽減することができる。
特に、エアを吹き付けるための吹出孔を走行面に形成した場合には、吹出孔を形成した部分を通過する搬送対象物が、正常な搬送姿勢であるか否かに関わらずその吹出孔に不意に引っ掛かり、所期の搬送処理を行うことができない事態も想定されるが、本発明では、吹出孔を形成する必要がなく、第1溝及び第2溝を有する姿勢変換部によって搬送対象物の姿勢を正姿勢に変換するように構成し、第1溝及び第2溝の何れもが、第1走行面及び第2走行面に跨がって形成したものであるため、比較的小さい孔であると思われる吹出孔とは異なり、第1溝や第2溝に搬送対象物が不意に引っ掛かる事態が起こり得ないか、極めて起こり難いことは容易に理解することができる。
加えて、本発明に係るパーツフィーダであれば、搬送対象物の重心位置が中心部分からずれているそのアンバランスさを利用して、第1溝及び第2溝を通過する搬送対象物が自ら倒れて最終的に正姿勢になるように構成しているため、搬送対象物の搬送速度によって姿勢変換効率にばらつきが生じることがなく、搬送対象物の比較的速く設定した場合であっても姿勢変換部を通過する全ての搬送対象物を姿勢変換することができ、搬送速度を遅く設定することによる搬送処理能力の低下を回避することが可能である。
また、本発明に係るパーツフィーダでは、上流側走行面上の搬送対象物は、上流側第1走行面にオモテ面又はウラ面の何れか一方を対面して接触させ、上流側第2走行面にオモテ面又はウラ面以外の4面のうち1つの面を接触させた姿勢をとり、その姿勢で姿勢変換部に到達した搬送対象物を全て正姿勢に変換する構成であるため、例えば正しい姿勢ではないと判定された搬送対象物をエアによって吹き飛ばして走行面から排除し、姿勢判別処理を行う領域よりも搬送方向上流側に一旦戻した搬送対象物を再び姿勢判別領域にまで搬送し、姿勢判別処理を行う態様や、走行面上に切欠部を形成し、切欠部を形成した部分を他の走行面よりも幅が狭い姿勢判別領域として、搬送対象物の重心が姿勢判別領域から外れるか否かによって搬送対象物の姿勢を判別し、搬送対象物の重心が姿勢判別領域から外れた場合には、その搬送対象物を姿勢判別領域よりも上流側に戻し、再び姿勢判別領域まで搬送する態様であれば生じる問題、つまり、所望の姿勢で姿勢判別領域に到達しない限り、姿勢判別処理が何度も繰り返されて、搬送姿勢を揃える処理能力及び搬送処理能力の低下を招来し得るという問題を解消することができる。
本発明は、第1姿勢変換部の第1溝と第2姿勢変換部の第2溝を搬送方向に連続させた構成、又は第1溝と第2溝を搬送方向に連続させない構成の何れをも包含するものであるが、第1溝に到達した搬送対象物を正姿勢に姿勢変換するまでに掛かる時間の短縮化という点では、前者の構成、つまり第1溝と第2溝を搬送方向に連続させた構成が望ましい。
本発明のパーツフィーダの具体例として、直線状をなすトラックに沿って搬送対象物を搬送可能なリニア型パーツフィーダ(リニアフィーダ)や、螺旋状をなすトラックに沿って搬送対象物を搬送可能なボウル型パーツフィーダ(ボウルフィーダ)を挙げることができる。特に、周壁の内向き面に沿って螺旋状のトラックを形成するボウルフィーダに上述の姿勢変換部を適用すれば、第1走行面又は第2走行面の何れか一方の面を周壁の内向き面を利用して形成することができる。
本発明によれば、対面するオモテ面又はウラ面の何れか一方に寄った位置に重心がある略直方体状の搬送対象物を搬送しながら姿勢を揃えるパーツフィーダが、上述した形状の第1溝及び第2溝をそれぞれ第1走行面及び第2走行面を跨ぐ位置に形成した姿勢変換部を備えた構成であり、第1溝や第2溝に到達した搬送対象物が自ずと傾動したり、倒れることが正姿勢となるように設定したことにより、メカニカルな装置を用いたり、エア吹出孔を走行面に形成することなく、本来の重心位置とは異なる位置に重心がある略直方体状の搬送対象物の姿勢をトラックの所定領域において全て正姿勢にスムーズに変換することができ、搬送姿勢を揃える処理能力の向上、ひいては搬送処理能力の向上を図ることが可能なパーツフィーダを提供する
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態に係るパーツフィーダFは、図1に示すように、搬送対象物を支持する走行面を有するトラックTを備え、加振手段(図示省略)によってトラックTを振動させることによって搬送対象物Wを走行面に沿って所定の搬送方向に搬送可能なものである。
本実施形態では、搬送対象物として、図2及び図3に示すワークWを適用している。このワークWは、図4(同図は図2のA方向矢視図である)に示すように、オモテ面W1とウラ面W2が対向する方向(本実施形態ではこの方向をワークWの厚み方向または高さ方向とする)においてオモテ面W1又はウラ面W2の何れか一方の面側に寄った位置に重心WGがある略直方体状のものである。図2及び図3には、オモテ面W1にのみ開口した凹部W4を形成した直方体状のケースW5(例えばセラミック製)を主体とし、凹部W4内に合成樹脂W6を充填したワークWを示す。
このワークWのオモテ面W1には、凹部W4内に充填した合成樹脂W6と、合成樹脂W6を囲むケースW5とが表出する一方で、ワークWのウラ面W2には、合成樹脂W6が表出することなく、ケースW5が表出している。そして、このようなワークWは、ケースW5を形成する素材が凹部W4内に充填される素材よりも比重が大きい(重い)ことによって、ワークWの重心WGは、図4に示すように、ワークWの中心WCよりもワークWのウラ面W2側に寄った位置にある。特に、本実施形態では、オモテ面W1に開口する凹部W4の開口中心をオモテ面W1の中心に一致または略一致させているため、ワークWの重心WGは、図4に示すように、ウラ面W2の中央寄りにあるといえる。なお、凹部W4の開口深さや開口形状は適宜の値や形状に設定することができる。また、ケースW5を形成する素材が凹部W4内に充填される素材よりも比重が小さい(軽い)場合には、ワークWの重心WGは、ワークWの中心WCよりもワークWのオモテ面W1側に寄った位置になるが、以下では、ワークWの重心WGが図4に示す位置、つまりウラ面W2の中央寄りにあるものとして説明する。
また、本実施形態では、平面視形状(底面視形状)が正方形または略正方形状をなす直方体状のケースW5を備えたワークWを適用している。したがって、ケースW5の外面を形成する6面のうち、厚み方向または高さ方向に対向するオモテ面W1及びウラ面W2以外の4面の形状は、全て同一または略同一の長方形または略長方形状をなし、これら4面を以下ではワークWの側面W3として説明する。すなわち、本実施形態のワークWは、側面視形状が長方形または略長方形状のものである。本実施形態では、オモテ面W1とウラ面W2との距離(厚み寸法または高さ寸法)が、対向(正対)する側面W3同士の距離よりも短く設定したワークWを適用している。これにより、図4に示すように、ワークWの側面視において、オモテ面W1とウラ面W2とを結ぶ線分である短辺WSと、対向する側面W3同士を結ぶ線分である長辺WLとを区別することができる。以下の説明におけるワークWの「短辺WS」及び「長辺WL」は、これら短辺WSと長辺WLを指す。
なお、図示していないものの、本実施形態のワークWのうち、ケースW5の所定部分には端子が取り付けられているが、これら端子の存在が、ワークWのオモテ面W1、ウラ面W2及び側面W3の平滑度に大きな影響を与えることはないため、以下では、ワークWのオモテ面W1、ウラ面W2及び側面W3の6面全てが平滑または略平滑な面であるとして説明する。端子自体の重量は、ワークWの重心WGに影響を与えるものであり、本実施形態では、ワークWのケースWのうち例えば側面W3及びウラ面W2に亘る部分に端子を取り付けている。
本実施形態に係るパーツフィーダFは、ワークWを収容し整列させて搬送する(整送する)ボウルBと、ボウルBの下方に配置され且つトラックTを含むボウルB全体に振動を発生させる加振手段(図示省略)とを備えた捩じり振動パーツフィーダ、いわゆるボウルフィーダとして構成されている。
ボウルBは、周壁における内向き面に設けたスパイラル状に延びるトラックTを備え、加振手段から与えられる振動によりワークWをトラックTに沿って搬送するものである。加振手段は、ボウルBの下方に配置された例えば圧電式発振タイプのものである。もちろん、加振手段として電磁式発振タイプのものを適用してもよい。本実施形態のパーツフィーダFは、図示しないステージ上に適宜の防振部を介在させた状態で加振手段を配置している。そして、ワークWをその姿勢を整えつつ搬送するために、ボウルBに対して高い振動数の捩じり振動を発生させる。これにより、ボウルB内に収納されたワークWは、トラックTに沿って、平面視反時計廻りに搬送されることになる。
ボウルBの底面B1には多数のワークWが収容され、底面B1の周縁部に起点TSを有するトラックTがボウルBの周壁B2に沿い登り傾斜のスパイラル状に形成されている。本実施形態では、トラックTの終点TEに連続する直線状のトラックを備えたリニアフィーダ(図示省略)をボウルフィーダFに接続している。トラックTのうち、起点TSから始まり且つ径外方へ向かって若干下向き傾斜に設けられる下向き傾斜トラックT1では、ワークWが受ける捩じり振動による搬送力の径外方向へ向かう成分と下向き傾斜トラックT1の傾斜とによって、ワークWは周壁B2に接しながら搬送される。下向き傾斜トラックT1の途中には下向き傾斜トラックT1の幅を狭める切欠部や溝(図示省略)が形成されており、これら切欠部や溝によって下向き傾斜トラックT1上を幅一杯に広がって搬送されるワークWのうち内周側のワークWや、下向き傾斜トラックT1上から重心WGが外れたワークWを底面B1へ戻し、下向き傾斜トラックT1上を幅一杯に広がって搬送されるワークWのうち外周側のワークWや、重心WGが下向き傾斜トラックT1上にあるワークWを下流側に搬送することができるようにしている。また、下向き傾斜トラックT1の途中には、早出しゲートGが設けられている。この早出しゲートGは、定常時には使用されず、作業終了時等に底面B1に残るワークWを早く取り出すためのものである。早出しゲートGの下流側には、略V字型の走行面を有する整列用トラックT2が形成されている。
このV字型の整列用トラックT2は、水平又は略水平な面に対して所定角度傾斜させた第1走行面T21と、この第1走行面T21に対して90度又は略90度傾斜し且つ搬送中のワークWの何れか一の側面W3に対面して接触し得る第2走行面T22とを有している。そして、整列用トラックT2のうち第2走行面T22の所定領域に、走行面T22の幅を狭めた幅狭部(図示省略)を搬送方向に沿って形成し、ワークWのオモテ面W1又はウラ面W2の何れか一方の面が第1走行面T21に対面して接触し、ワークWの何れか一の側面W3が第2走行面T22に対面して接触し得る搬送姿勢のワークWのみを幅狭部よりも下流側に搬送するように設定している。この整列用のトラックT2にて、ワークWは、そのオモテ面W1又はウラ面W2の何れか一方の面が第1走行面T21に対面して接触するとともに、何れか一つの側面W3が第2走行面T22に対面して接触した姿勢に整えられてさらに下流側へと搬送される。ここで、V字型の整列用トラックT2の第1走行面T21及び第2走行面T22のうち、幅狭部よりも下流側の第1走行面T21及び第2走行面T22がそれぞれ本発明の「上流側第1走行面TA1」及び「上流側第2走行面TA2」に相当し、これら「上流側第1走行面TA1」及び「上流側第2走行面TA2」からなる走行面が本発明の「上流側走行面TA」に相当する。
本実施形態に係るボウルフィーダFは、整列用トラックT2の下流側、より具体的には上流側走行面TAに連続する領域に、この領域に到達したワークWを、オモテ面W1又はウラ面W2のうち重心WGから遠い方の面(本実施形態では、図2〜図4に示すように重心WGから遠い方の面はオモテ面W1である)を上向きに表出させた正姿勢(r)に変換可能な姿勢変換部1(姿勢変換トラックT3)を設けている。
姿勢変換部1は、第1姿勢変換部2と、第1姿勢変換部2よりも搬送方向下流側に設けた第2姿勢変換部3とを備えている。
第1姿勢変換部2は、図1及び図5(同図は図1のa−a線端面模式図である)に示すように、上流側走行面TAの上流側第1走行面TA1及び上流側第2走行面TA2に連続する第1走行面4及び第2走行面5に跨がって形成され、鉛直方向に切った縦断面における開口幅、つまり第1走行面4及び第2走行面5を横切る鉛直方向の縦断面における開口幅を、ワークWの短辺WSよりも大きく且つワークWの長辺WLよりも小さく設定した第1溝21を有するものである。なお、上述したように、ワークWの「短辺WS」及び「長辺WL」はそれぞれワークWを側面W3から見た場合の短辺WS及び長辺WLを意味する(図4参照)。ここで、「ワークWの短辺WS」は、上流側走行面TAにおいて上流側第1走行面TA1にオモテ面W1又はウラ面W2が接触し且つ上流側第2走行面TA2にオモテ面W1又はウラ面W2以外の面W3が接触した姿勢で搬送されるワークWを上流第1走行面TA1及び上流側第2走行面TA2に跨がる鉛直方向の縦断面で捉えた場合に、上流側第2走行面TA2に接触している面、つまりオモテ面W1又はウラ面W2以外の面である側面W3に相当する線分(辺)である。また、「ワークWの長辺WL」は、上流側走行面TA上のワークWを上流第1走行面TA1及び上流側第2走行面TA2に跨がる鉛直方向の縦断面で捉えた場合に、上流側第1走行面TA1に接触しているオモテ面W1又はウラ面W2に相当する線分(辺)である。
また、姿勢変換部1の一部を形成する第1走行面4と第2走行面5の傾斜角度は、上流側走行面TAの上流側第1走行面TA1及び上流側第2走行面TA2の傾斜角度とそれぞれ同一な又は略同一である。本実施形態では、ボウルBにおける周壁の内向き面を利用して第1走行面4を形成している。また、本実施形態では、第1走行面4を第2走行面5よりも急勾配な傾斜面に設定している。
そして、上流側走行面TAに到達するまでの搬送過程を経て、上流側走行面TA上において上流側第1走行面TA1にオモテ面W1又はウラ面W2の何れか一方の面が接触するように向きを整えられたワークWの姿勢が、図6(同図は図1のc−c線端面を模式的に示す図である)に示すように、重心WGから遠い方の面であるオモテ面W1を上流側第1走行面TA1に対面して接触させた第1姿勢(f)である場合、本実施形態における第1姿勢変換部2は、図7乃至図10に示すように、その姿勢(f)で第1溝21に到達したワークWをオモテ面W1が斜め上方を向く第3姿勢(t)に変換して下流側に搬送するとともに、図11に示すように、第1溝21に到達する直前のワークWの姿勢が、重心WGに近い方の面であるウラ面W2を上流側第1走行面TA1に対面して接触させた第2姿勢(s)である場合、図12に示すように、その姿勢(s)で第1溝21に到達したワークWを第2姿勢(s)のままさらに下流側に搬送するものである。
具体的に、第1溝21は、図5及び図7に示すように、上方に開口した部分円弧状をなし、第1走行面4側の開口縁211を第2走行面5側の開口縁212よりも高く設定したものである。また、本実施形態では、第1溝21の円弧の中心21Cを、第1走行面4と第2走行面5の下端同士の交点T24(この交点T24は実際には存在しない想像上の交点であり、図5では、第1走行面4及び第2走行面5のうち実在しない面を想像線で示している)よりも第2走行面5側に所定寸法だけ僅かに寄った位置に設定し、第1溝21のうち最も低い位置が、第1走行面4と第2走行面5の下端同士の交点T24よりも低位となるように設定している。
そして、開口幅をワークWの短辺WSより大きく且つ長辺WLより短く設定した第1溝21に到達する直前の姿勢が図6に示す第1姿勢(f)又は図11に示す第2姿勢(s)であるワークWが、第1溝21に到達すると、その時点で、直前まで上流側第2走行面TA2に接触していたワークWの何れか一の側面W3が、上流側第2走行面TA2に連続する第2走行面5と接触することなく、ワークW自体の自重によってその側面W3全体が第1溝21内に進入した(収容された)状態になる(図7、図12参照)。また、第1姿勢(f)又は第2姿勢(s)のワークWが、第1溝21に到達した時点で、ワークWの第1溝21に到達する直前において上流側第1走行面TA1に全体が対面していたオモテ面W1又はウラ面W2の一部が第1溝21内に侵入した(収容された)状態になる。
ワークWが図6に示す第1姿勢(f)で第1溝21に到達して、図7に示すように、直前まで上流側第2走行面TA2に接触していた何れか一の側面W3が第1溝21内に収容されると、ワークWの重心WGが、第1走行面4及び第2走行面5に跨がる鉛直方向の縦断面における第1溝21の中心21Cを通る垂線21L(鉛直線)よりも第2走行面5側にあることによって、図8に示すように、ワークWの側面W3の4隅全て又は4隅のうち複数箇所が第1溝21に接触した状態で、ワークWのうち重心WGに近い方の面であるウラ面W2が第2走行面5に近付く方向にワークW全体が傾動(回転)する。その結果、ワークWは、図9に示すように、重心WGから遠い方の面であるオモテ面W1が第1走行面4から漸次又は一挙に離間して、ワークWのうち重心WGに近い方の面であるウラ面W2が第2走行面5にさらに近付き、最終的に、図10に示すように、重心WGに近い方の面であるウラ面W2の一部を第2走行面5に対面して接触させ且つ重心WGから遠い方の面であるオモテ面W1全体を斜め上方に向けた表出させた第3姿勢(t)に変換される。ここで、図7乃至図10を参照して説明した第1溝21におけるワークWの第1姿勢(f)から第3姿勢(t)への経時的変化(ワークWの傾動)を図18に示す。同図では、第1姿勢(f)から第3姿勢(t)に変化する過程において、図7に示す時点に相当するワークW(a)を実線で示し、図8に示す時点に相当するワークW(b)を破線で示し、図9に示す時点に相当するワークW(c)を一点鎖線で示し、図10に示す時点に相当するワークW(d)を二点鎖線で示し、各時点におけるワークWの重心位置WGには、それぞれ(a)、(b)、(c)、(d)を付している。
また、ワークWが図11に示す第2姿勢(s)で第1溝21に到達して、図12に示すように、直前まで上流側第2走行面TA2に接触していた何れか一の側面W3全体が第1溝21内に収容されると、ワークWの重心WGが、第1走行面4及び第2走行面5に跨がる鉛直方向の縦断面における第1溝21の中心21Cを通る垂線21Lよりも第1走行面4側にあることによって、ワークWが第1走行面4側に近付く方向に傾動しようとする。しかしながら、図12に示すように、ワークWが第1溝21に到達した時点で、直前まで上流側第2走行面TA2に接触していた何れか一の側面W3全体が第1溝21内に収容され、この側面W3の4隅全て又は4隅のうち複数箇所が第1溝21に接触し、且つワークWのうち重心WGに近い方の面であるウラ面W2の一部が第1走行面4に対面して接触しているため、ワークWが第1走行面4側にそれ以上近付く方向に傾動する動きは規制される。よって、この第1姿勢変換部2では、第2姿勢(s)で第1溝21に到達したワークWが、ワークWのうち重心WGに近い方の面であるウラ面W2が第2走行面5に近付く方向にワークW全体が傾動(回転)することなく、第1溝21に到達する直前の姿勢、すなわち第2姿勢(s)を保持することができる。第1溝21に到達後のワークWは、重心WGに近い方の面であるウラ面W2の一部を第1走行面4に対面して接触させるとともに、ウラ面W2のそれ以外の部分(第1走行面4に対面して接触していない部分)が第1溝21内に収容され、重心WGから遠い方の面であるオモテ面W1全体を斜め上方に向けた表出させた姿勢となる。
ここで、第3姿勢(t)と第2姿勢(s)とを比較した場合、重心WGに近い方の面であるウラ面W2を第2走行面5に対面して接触させている姿勢(第3姿勢(t))か、第1走行面4に対面して接触させている姿勢(第2姿勢(s))かの点において異なるものの、何れも重心WGから遠い方の面であるオモテ面W1を斜め上方に向けた姿勢である点で一致している。つまり、第1姿勢変換部2の第1溝21を通過し終えた時点におけるワークWの姿勢は、重心WGに近い方の面であるウラ面W2の一部を第2走行面5又は第1走行面4に対面して接触させ、重心WGから遠い方の面であるオモテ面W1を斜め上方に向けた姿勢となる。
第2姿勢変換部3は、図13(同図は図1のb−b線端面模式図である)に示すように、第1走行面4及び第2走行面5を跨ぐ領域に亘って形成され、第1走行面4及び第2走行面5に跨がる鉛直方向の縦断面における開口幅をワークWの長辺WLよりも大きく設定した第2溝31を有するものである。本実施形態では、第2溝31を第1溝21に連続して形成している。
この第2溝31は、図13に示すように、上方に開口した部分円弧状をなし、第1走行面4及び第2走行面5に跨がる鉛直方向の縦断面における開口幅をワークWの長辺WLよりも大きく設定している。したがって、図14に示すように、ワークWが第3姿勢(t)で第2溝31に到達した場合、重心WGに近い方の面であるウラ面W2と第2走行面5との接触状態が解除される。その結果、ワークWは、図15に示すように、自重によって重心WGをさらに低位に移動させるように、ワークWのうち重心WGに近い方の面であるウラ面W2の4隅全て又は4隅のうち複数箇所が第2溝31に接触した状態で、ワークW全体が下方に沈み込む方向に傾動しながら第2溝31内で姿勢変更し、重心WGから遠い方の面であるオモテ面W1が、第1溝21を通過し終えた時点の姿勢(t)よりも真上を向く正姿勢(r)となる。
また、図16に示すように、ワークWが第2姿勢(s)で第2溝31に到達した場合、重心WGに近い方の面であるウラ面W2と第1走行面4との接触状態が解除される。その結果、ワークWは、図17に示すように、自重によって重心WGをさらに低位に移動させるように、ワークWのうち重心WGに近い方の面であるウラ面W2の4隅全て又は4隅のうち複数箇所が第2溝31に接触した状態で、ワークW全体が下方に沈み込む方向に傾動しながら第2溝31内で姿勢変更し、重心WGから遠い方の面であるオモテ面W1が、第1溝21を通過し終えた時点の姿勢(s)よりも真上を向く正姿勢(r)となる。
なお、本実施形態では、図13に示すように、第2溝31の円弧の中心31Cを、第1走行面4と第2走行面5の下端同士の交点T24(この交点T24は実際には存在しない想像上の交点であり、図13では、第1走行面4及び第2走行面5のうち実在しない面を想像線で示している)よりも第2走行面5側に寄った位置に設定し、第2溝31のうち最も低い位置が、第1走行面4と第2走行面5の下端同士の交点T24よりも低位となるように設定している。
このように、第3姿勢(t)又は第2姿勢(s)で第2溝31に到達したワークWは、何れも重心WGから遠い方の面であるオモテ面W1全体を、第1溝21通過終了時点よりも鉛直方向に近い方向に向けて表出させた正姿勢(r)に変換され、その正姿勢(r)を保持したまま第2溝31を通過する。
このような第2溝31を有する第2姿勢変換部3を通過して正姿勢(r)に整えられたワークWは、第2姿勢変換部3よりもさらに下流に搬送されることになる。
このような姿勢変換部1(姿勢変換トラックT3)を備えた本実施形態に係るパーツフィーダFは、第1姿勢変換部2によってワークWの姿勢を、重心WGから遠い方の面であるオモテ面W1を斜め上方に向けて表出させた第3姿勢(t)又は第2姿勢(s)の何れかに整え、第1姿勢変換部2よりも下流側に設けた第2姿勢変換部3によって、重心WGから遠い方の面であるオモテ面W1が、第3姿勢(t)又は第2姿勢(s)よりも相対的に真上を向く姿勢に近い正姿勢(r)に整えることができ、正姿勢(r)のワークWのみを下流側(次工程)へ搬送することができる。
しかも、本実施形態に係るパーツフィーダFは、第1姿勢変換部2及び第2姿勢変換部3の何れにおいても、ワークWの重心位置が何れか一つの面(本実施形態ではウラ面)側に寄っている点を利用して、比較的単純な形状である第1溝21や第2溝32をトラックTの所定領域に形成し、第1溝21や第2溝を通過する際にワークWが自ずと傾動して全て正姿勢(r)となるように構成しているため、例えば所定位置からトラックの所定領域を照射する装置や、照射光又は反射光を受光する装置、或いは受光量に基づいてトラック上のワークの姿勢を判別する装置が一切不要であり、部品点数の削減及びコストの削減を図ることができ、メカニカルな装置の検出精度や取付精度に左右されることなく、姿勢変換部1に到達したワークWをもれなく正姿勢(r)に姿勢変換することができ、搬送姿勢を揃える処理能力の向上、ひいては搬送処理能力の向上を図ることが可能である。
さらに、姿勢変換部1を備えた本実施形態に係るパーツフィーダFによれば、例えば所定の姿勢ではないと判定されたワークに対してエアを吹き付けて反転させることで所定の姿勢に変換する構成であれば生じ得る不具合、つまり、ワークの形状や重量などに応じてエアの吹出処理にシビアな条件(エアを吹き付ける向きやエアの風力)が課され、それらの条件をクリアしなければ、ワークを反転させる効率が劣り、姿勢変換効率が悪化するという不具合が生じ得ず、安定した姿勢変換処理を実現することができ、搬送効率の向上に貢献する。特に、本実施形態における姿勢変換部1によれば、ワークWの搬送速度によらずこの姿勢変換部1に到達した全てのワークWを正姿勢(r)に確実に変換することができ、搬送速度のスピードアップに応じて搬送処理能力も向上させることができる。
また、本実施形態にパーツフィーダFは、姿勢変換部1に到達した全てのワークWを姿勢変換部1において正姿勢(r)に変換するように構成しているため、例えば所定の姿勢ではないと判定されたワークに対してエアを吹き付けてワークをトラック外へ排除したり、所定の姿勢ではないと判定されたワークをエア吹出地点よりも上流側へ戻す処理を、所定の姿勢となるまで繰り返して行う構成と比較すれば、エア吹出装置自体が不要である点で有利であることはもちろんのこと、姿勢変化部1にまで到達したワークWが姿勢変換部1よりも上流側へ戻されることがないことで、トラックTに沿って搬送される各ワークWがトラックTの終点TEに到達するまでにトラックの起点TS又は起点TSに近い位置に戻される回数や確率を確実に低減することができ、搬送処理効率の向上を図ることができる。
また、エアを吹き付けるための吹出孔を走行面に形成した場合には、吹出孔を形成した部分を通過するワークが、正常な搬送姿勢であるか否かに関わらずその吹出孔に不意に引っ掛かり、所期の搬送処理を行うことができない事態も想定されるが、本実施形態に係るパーツフィーダFでは、吹出孔を形成する必要がなく、第1溝21及び第2溝31を有する姿勢変換部1によってワークWの姿勢を正姿勢(r)に変換するように構成し、第1溝21及び第2溝31の何れもが、第1走行面4及び第2走行面5に跨がって形成したものであるため、比較的小さい孔である吹出孔とは異なり、第1溝21や第2溝31にワークWが不意に引っ掛かる事態を防止・抑制することができ、この点もまた搬送処理効率の向上に寄与する。
特に、本実施形態に係るパーツフィーダFは、第1姿勢変換部2の第1溝21と第2姿勢変換部3の第2溝31とを相互に連続して形成しているため、第1姿勢変換部2の第1溝21と第2姿勢変換部3の第2溝31とを相互に連続して形成していない構成と比較して、第1姿勢(f)又は第2姿勢(f)のワークWが第1溝31に到達してから、第1溝21を通過し終えて第3姿勢(t)又は第2姿勢(s)にあるワークWを正姿勢(r)に変換するまでに掛かる所要時間を短縮することができ、搬送効率のより一層の向上を実現することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態で述べた姿勢変換部は、ワーク等の搬送対象物の搬送時に姿勢を整えて次工程へと供給するパーツフィーダ全般に関し、広く適用可能なものである。したがって、姿勢変換部を備えたパーツフィーダが、直線型の振動パーツフィーダ(リニア型パーツフィーダ)など他の形式や形状のパーツフィーダであっても、上述した種々の効果、或いはそれに準じた効果を奏することができる。
また、姿勢変換部が、第1姿勢変換部の第1溝と第2姿勢変換部の第2溝とを搬送方向に連続して形成していないものであっても構わない。この場合、第1溝と第2溝との間の走行面は、搬送対象物の第2姿勢及び第3姿勢を維持可能な走行面であることが要求される。
また、第1溝や第2溝の縦断面形状は、部分円弧状に限定されることなく、これら各溝を利用した搬送対象物の傾動に支障を来さなければ、部分楕円弧状や、部分多角形状、或いはアール形状と部分多角形状とを組み合わせた縦断面形状の第1溝や第2溝を適用することができる。
さらに、上述した実施形態では、略直方体状の搬送対象物の重心位置が、相互に対面(正対)するオモテ面とウラ面のうちウラ面側に寄った位置にある場合について説明したが、相互に対面(正対)するオモテ面とウラ面のうちオモテ面側に寄った位置に重心位置がある搬送対象物であっても、上述した実施形態における「オモテ面」「ウラ面」をそれぞれ「ウラ面」「オモテ面」に読み替えることで、同様の姿勢変換処理が行われる。
また、オモテ面とウラ面が対向する方向が搬送対象物の厚み方向又は高さ方向ではなく、幅方向であっても構わない。
また、オモテ面及びウラ面の形状が、長方形または略長方形状である搬送対象物であってもよい。この場合、オモテ面及びウラ面はそれぞれ一対の長辺と一対の短辺を有する面であるが、これらオモテ面及びウラ面の長辺及び短辺は、何れも本発明における「搬送対象物の長辺」に相当する。すなわち、長方形のオモテ面及びウラ面が有するそれぞれ一対の長辺と一対の短辺は、オモテ面とウラ面とを結ぶ線分である本発明の「搬送対象物の短辺」よりも長く設定されている必要がある。このような条件を満たすことで、上流側走行面上においてオモテ面又はウラ面が上流側第1走行面に対面して接触し、オモテ面又はウラ面以外の面が上流側第2走行面に対面して接触した姿勢にある搬送対象物が、第1溝に到達した場合に、上流側第2走行面に対面して接触していた面(オモテ面又はウラ面以外の面)全体が第1溝内に落下して収容される一方で、上流側第1走行面に対面して接触していたオモテ面又はウラ面の何れか一方の面全体が第1溝内に落下して収容される事態を回避することができ、第1溝を利用した姿勢変換或いは姿勢を維持する処理を適切に行うことができる。
上述した実施形態では、第1姿勢で第1溝に到達した搬送対象物の重心が、縦断面において第1溝の中心を通る垂線(鉛直線)よりも第2走行面側にあることによって(図7参照)、第1姿勢から第3姿勢に変換する構成を示したが、第1姿勢で第1溝に到達した搬送対象物の重心が、縦断面において第1溝の中心を通る垂線上にある場合も、第1姿勢から第3姿勢に変換することができる。
また、搬送対象物としては、ワーク以外のもの、例えばピンセットで辛うじて掴むことが可能な程度の寸法を有する微小部品等が挙げられるが、本発明のパーツフィーダによって姿勢変換可能な搬送対象物のサイズや形状は特に限定されるものではない。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。