JP6136348B2 - 多層伝送線路板、該多層伝送線路板を有する電磁結合モジュール、アンテナモジュール - Google Patents

多層伝送線路板、該多層伝送線路板を有する電磁結合モジュール、アンテナモジュール Download PDF

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Description

本発明は、電磁結合構造に関し、より詳細には、マイクロ波帯からミリ波帯の高い周波数帯域で使用される伝送線路における多層伝送線路板、並びに、該多層伝送線路板を有する電磁結合モジュール及びアンテナモジュールに関する。
マイクロ波帯からミリ波帯の高い周波数帯域において電磁結合構造として使用される伝送線路の電磁結合モジュール、あるいは、導波管、金属板等を用いて空気層を挟み込んだ複数のスロットが採用された回路基板が提案されている(特許文献1)。
図24に、特許文献1に記載された回路基板の断面構成を示す。図24に示す回路基板1Bにおいて、誘電体基板94の上に半導体素子Dが実装され、半導体素子Dにはマイクロストリップ線路93が接続されている。誘電体基板94の下面にはグランドパターン95が設けられており、このグランドパターン95にはスロットS1が形成されている。マイクロストリップ線路93とスロットS1とは、電磁結合されている。また、グランドパターン95には、導波管Fが接続されており、導波管Fの内部には追加スロットS2を形成した金属板98が収容されている。追加スロットS2は、導波管F内部に形成される空洞99を介してスロットS1と符合するように形成されている。
この特許文献1に記載された発明は、高周波信号が導波管内を通過する際の伝送損失を抑制して、高速大容量の情報伝達が可能であるとともに、低歩留まりで安価な量産に適した回路基板を提供することを目的として、上記のような構成を有している。
ここで、誘電体基板に用いる材料としては、低誘電率且つ低誘電正接である材料が、伝送損失の低減に有効であることが一般的に知られている。そのような材料として、従来はセラミック基板が広く用いられてきたが、セラミック基板は、誘電正接が低い一方、比誘電率は高く、またコスト及び大判化の面でも不利であるため、現在では樹脂基板材料への移行が進んでいる。比誘電率、誘電正接の低い樹脂基板材料としては、フッ素系樹脂が挙げられる。しかしながら、フッ素系樹脂は、コスト、プレス成型条件(高温・高圧)、熱膨張特性、寸法安定性、金属めっき層との接着性など、回路基板として用いる上で多くの問題点を含んでいる。
低誘電率且つ低誘電正接である耐熱性熱可塑性樹脂(エンジニアリング・プラスチックス)として、ポリフェニレンエーテル(PPO又はPPE)系樹脂を用いる方法も従来から知られている。これらの樹脂は、実装時のはんだ接続工程における耐熱性の問題から、例えば熱硬化性樹脂の中でも誘電率が低いシアネートエステル樹脂で変性する方法などが提案されている(特許文献2)。
その他、低誘電率且つ低誘電正接である材料を得るために、ポリフェニレンオキサイド系樹脂組成物、架橋性ポリマー及び架橋性モノマー、難燃剤あるいは難燃助剤を含有させた樹脂組成物を用いる方法(特許文献3)、不飽和基を含む特定の硬化ポリフェニレンエーテル樹脂を適度に架橋させる方法(特許文献4)、ポリフェニレンエーテル系樹脂とシアネートエステル樹脂を用いた変性シアネートエステル系樹脂を用いる方法(特許文献5)、ポリフェニレンエーテル含有の変性シアネートエステル樹脂等にエラストマを配合する方法(特許文献6)等も開示されている。
特許第4236607号公報 特公平1-53700号公報 特公平5-77705号公報 特開平7-188362号公報 特開平11−124451号公報 特開2003−138133号公報
しかしながら、伝送線路板における誘電体基板として上述した特許文献2〜6に記載の材料を用いた場合、十分に伝送損失を低減できない傾向にあるほか、機械的特性及び取り扱い性の面でも問題があった。
そこで、本発明は、伝送損失を十分に抑制することが可能な多層伝送線路板、及びそれを有する電磁結合モジュール及びアンテナモジュールを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る多層伝送線路板は、マイクロ波帯域で使用される多層伝送線路板であって、誘電体により構成される第1の層と、第1の層上に設けられた外側導体層と、第1の層の外側導体層とは反対側の面上に設けられた、少なくとも導体層を有する第2の層とを備え、第1の層を構成する誘電体は、(A)スチレンユニットを有する飽和型熱可塑性エラストマと、(B)エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分と、を含有し、且つ、前記(A)成分の含有量Wと前記(B)成分の含有量Wとの質量比W/Wが0.430〜5.000である樹脂組成物からなることを特徴とする。
本発明の多層伝送線路板は、第1の層が上記のような特定の樹脂組成物からなる誘電体により構成されることから、かかる多層伝送線路板を用いることで、より伝送損失の小さい電磁結合モジュールを形成することが可能となる。
本発明の多層伝送線路板において、第2の層としては、一対の導体層間に誘電体層が設けられた積層体、又は、導体層と誘電体層とが、両表面に導体層が配置されるように交互に複数積層された積層体からなり、この積層体が、その積層方向に貫通する貫通孔を有し、この貫通孔が、積層体における両表面の導体層同士が電気的に接続されるように内部に導体を有しているものが挙げられる。
第2の層がこのような積層体によって構成される場合、積層体における貫通孔に対応する外側導体層の反対側の位置に半導体チップ等の電気部材を配置すると、外側導体層と電気部材とが電磁結合することができる。ここで、上記特許文献1に記載の回路基板の構造では、電磁結合のために導波管を設ける必要がある。しかし、導波管内に空気層となる空洞部を形成する必要があるので、特殊な加工が必要となる等、製造コストが増大し易かった。さらに、導波管が存在しているため、その他の部材を接続する場合にはアタッチメントを取り付ける必要がある等、機能の拡張性が低くなる傾向にもあった。これに対し、上記の積層体により構成される第2の層を備える多層伝送線路板によれば、電磁結合を生じさせるために導波管を設ける必要が無いので、低伝送損失で拡張性の高い電磁結合モジュールを低コストで製造することが可能となる。
第2の層を構成する積層体における貫通孔は、その内壁を覆うように金属膜が形成されていることによって内部に導体を有していてもよい。このような構造を有することで、電磁結合モジュールを形成する場合に、多層伝送線路板における外側導体層と、多層伝送線路板に実装する電気部材との電磁結合が一層生じ易くなる傾向にある。
第1の層を構成する樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテルの含有量が、上記(A)成分及び上記(B)成分の合計100質量部に対して10質量部以下であることが好ましい。これにより、第1の層を構成する樹脂組成物の相容性、耐熱性、接着性等を向上させることができるほか、Tgを高めることができ、より伝送損失を低減し易くなる。
第1の層を構成する樹脂組成物において、上記(A)成分は、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体を含有してもよい。これにより、第1の層の他の層との接着性が向上する。また、上記(B)成分が、シアネートエステル樹脂を含有すると好ましい。これにより、さらに効果的に多層伝送線路板の誘電特性、耐湿性、耐熱性の向上を図ることができる。さらに、樹脂組成物は、(C)酸化防止剤を更に含有すると好ましい。これにより、多層伝送線路板の誘電特性の経年変化を抑制する効果、及び絶縁信頼性を向上する効果が得られるようになる。
上記多層伝送線路板は、配線部と導体パッチ部とを含み、上記導体パッチ部は、上記配線部の延在方向と直交する方向において、上記配線部の長さよりも長い部分を有すると好ましい。これにより、導体パッチ部と孔とのインピーダンス整合を容易にとることができる。また、製造時に高い寸法精度を必要としないため、製造コストを削減することができる。
また、本発明に係る電磁結合モジュールは、多層伝送線路板と、電気部材とを備え、多層伝送線路板は、誘電体により構成される第1の層と、第1の層上に設けられた外側導体層と、第1の層の外側導体層とは反対側の面上に設けられた第2の層とを備え、第1の層を構成する誘電体は、(A)スチレンユニットを有する飽和型熱可塑性エラストマと、(B)エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分とを含有し、且つ、(A)成分の含有量Wと(B)成分の含有量Wとの質量比W/Wが0.430〜5.000である樹脂組成物からなり、第2の層は、一対の導体層間に誘電体層が設けられた積層体、又は、導体層と誘電体層とが、両表面に導体層が配置されるように交互に複数積層された積層体からなり、この積層体が、その積層方向に貫通する貫通孔を有し、この貫通孔が、積層体における両表面の導体層同士が電気的に接続されるように内部に導体を有するものであり、多層伝送線路板における外側導体層と電気部材とが電磁結合されるものである、ことを特徴とする。
上記本発明の電磁結合モジュールは、第2の層として特定の積層体を備える上記本発明の多層伝送線路板を備えるものである。そのため、導波管を用いずに多層伝送線路板における外側導体層と電気部材とを電磁結合することができ、また多層伝送線路板における誘電体層が特定の樹脂組成物からなるものであるので、低伝送損失であり、拡張性が高く、しかも低コストで製造可能なものとなる。
本発明の電磁結合モジュールとしては、電気部材がアンテナを有する半導体チップであって、そのアンテナが、多層伝送線路板の積層体における貫通孔と、この積層体の積層方向に重なる位置に配置されているものが挙げられる。また、電気部材が導波管であり、この導波管が、その開口の中心が、多層伝送線路板の積層体における前記貫通孔の中心と一致するように配置されているものが挙げられる。
また、本発明に係るアンテナモジュールは、多層伝送線路板と、マイクロ波回路を有する半導体チップとを備え、多層伝送線路板は、誘電体により構成される第1の層と、第1の層上に設けられた第2の層と、第1の層及び第2の層を挟むように配置された一対の外側導体層とを備え、第1の層を構成する誘電体は、(A)スチレンユニットを有する飽和型熱可塑性エラストマと、(B)エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分と、を含有し、且つ、(A)成分の含有量Wと(B)成分の含有量Wとの質量比W/Wが0.430〜5.000である樹脂組成物からなり、第2の層は、一対の導体層間に誘電体層が設けられた積層体、又は、導体層と誘電体層とが、両表面に導体層が配置されるように交互に複数積層された積層体からなり、この積層体が、その積層方向に貫通する貫通孔を有し、この貫通孔が、積層体における両表面の導体層同士が電気的に接続されるように内部に導体を有するものであり、多層伝送線路板における一対の外側導体層のうちの一方がマイクロストリップアンテナを含むとともに、これとは異なる側の前記外側導体層に前記半導体チップが実装されており、多層伝送線路板における一対の外側導体層同士が電磁結合され、半導体チップと前記マイクロストリップアンテナとが接続されるものであることを特徴とする。
このような本発明のアンテナモジュールは、多層伝送線路板として、第2の層である積層体部分が内部に導体が形成された貫通孔を有するとともに、誘電体層が上記特定の樹脂組成物からなるものを備えている。このような構造によれば、多層伝送線路板における一対の外側導体層同士が電磁結合することができるため、導波管を用いなくてもマイクロストリップアンテナと半導体チップとが接続されたアンテナモジュールが得られるようになる。かかるアンテナモジュールは、低伝送損失であり、拡張性が高いほか、低コストで製造可能なものとなる。また、多層伝送線路板における誘電体層が、上記特定の樹脂組成物からなるため、伝送損失を一層低減することができる。
本発明によれば、伝送損失を十分に抑制することが可能な多層伝送線路板、並びにその多層伝送線路板を有する電磁結合モジュール及びアンテナモジュールを提供することが可能となる。
(a)は、本発明の一実施形態に係る多層伝送線路板の分解斜視図であり、(b)は、(a)におけるA−A線を通る垂直断面図である。 (a)は、本発明の一実施形態に係るアンテナモジュールを示す断面図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係るアンテナモジュールを示す断面図である。 本発明の一実施形態に係るアンテナモジュールを示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る多層伝送線路板を示す断面図である。 本発明の他の実施形態に係る電磁結合モジュールを示す断面図である。 本発明の他の実施形態に係る電磁結合モジュールを示す断面図である。 本発明の他の実施形態に係る電磁結合モジュールを示す断面図である。 本発明の他の実施形態に係る電磁結合モジュールを示す断面図である。 本発明の他の実施形態に係るアンテナモジュールを示す断面図である。 本発明の他の実施形態に係るアンテナモジュールを示す断面図である。 本発明の他の実施形態に係るアンテナモジュールを示す断面図である。 (a)〜(d)は、導体パッチ部と孔との関係を示す上面図である。 (a)は、実施例1に係る多層伝送線路板を第3導体層11側から見た平面透視図であり、(b)は、上記(a)におけるB−B線を通る垂直断面図である。 (a)は、実施例3に係る多層伝送線路板を第3導体層11側から見た平面透視図であり、(b)は、(a)におけるC−C線を通る垂直断面図である。 (a)は、実施例4に係る多層伝送線路板を第3導体層11側から見た平面透視図であり、(b)は、(a)におけるD−D線を通る垂直断面図である。 (a)は、比較例1に係る多層伝送線路板1Lを第3導体層11側から見た平面透視図であり、(b)は、(a)におけるE−E線を通る垂直断面図である。 (a)は、比較例2に係る多層伝送線路板1Mを第3導体層11側から見た平面透視図であり、(b)は、(a)におけるF−F線を通る垂直断面図である。 (a)は、比較例3に係る多層伝送線路板1Nを第3導体層11側から見た平面透視図であり、(b)は、(a)におけるG−G線を通る垂直断面図である。 実施例1及び比較例1の高周波特性の測定結果を示すグラフである。 実施例1、実施例2、及び比較例2の高周波特性の測定結果を示すグラフである。 実施例3、実施例4、及び比較例3の高周波特性の測定結果を示すグラフである。 (a)は、実施例5に係るアンテナモジュールを示す分解斜視図であり、(b)は、(a)におけるH−H線を通る垂直断面図である。 (a)は、比較例4に係るアンテナモジュールを示す分解斜視図であり、(b)は、(a)におけるI−I線を通る垂直断面図である。 従来の実施形態にかかる回路基板を示す断面図である。
以下、本発明にかかる電磁結合構造を有する多層伝送線路、この多層伝送線路を有する電磁結合モジュール、アンテナモジュールの好適な実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
[多層伝送線路板]
本実施形態に係る電磁結合構造を有する多層伝送線路板は、マイクロ波帯の高周波数帯域で使用されるものである。ここでいうマイクロ波帯の周波数帯域とは、具体的には、例えば、10GHz〜100GHzをマイクロ波の高周波帯域という。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る多層伝送線路板1Aは、第1導体層16、第1誘電体層21、第2導体層17、第2誘電体層26(第1の層)、第3導体層11(外側導体層)がこの順に積層されている。本発明の一実施形態において、第3導体層11は、伝送線路を形成する。なお、図1において、導波管の取り付け穴7が記されているが、以降の図面では省略する。
多層伝送線路板1Aにおいては、第1導体層16、第1誘電体層21及び第2導体層17によって、積層体(第2の層)が構成されている。第1導体層16及び第2導体層17は、それぞれ地導体層である。第1導体層16、第1誘電体層21及び第2導体層17を貫通するように孔3を設け、さらに孔3の内面に金属膜2を形成することで、第1導体層16と第2導体層17とが電気的に接続される構成になっている。
第2導体層17の第2誘電体層26側の表面の表面粗さは、特に限定されないが、十点平均粗さRzJISが0.1μm〜9μmであることが好ましく、0.1μm〜6μmであるとより好ましく、0.1μm以上3μm未満であるとさらに好ましい。表面粗さが上記範囲であると表皮効果による導体層での伝送損失が小さい。
また、第1導体層16及び第2導体層17の厚みは、取扱い性、及びコストの観点から、5μm〜50μmであることが好ましく、12μm〜50μm以下であるとより好ましい。第1導体層16及び第2導体層17を構成する材料としては、一般的に配線板に用いられる電解銅箔及び圧延銅箔が挙げられる。
第1誘電体層21は、第1導体層16と第2導体層17とを絶縁する。第1誘電体層21の材料としては特に指定はなく、基板の支持性を高める材料であれば制限なく用いることができる。第1誘電体層21としては、低損失材料を用いると伝送線路板全体として低損失になるので好ましい。例えば、セラミック、テフロン(登録商標)、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンエーテルの変性物、液晶ポリマ等の絶縁材料又は後述する第2誘電体層26と同じ材料を用いることもできる。また、電磁結合構造の損失には影響しないので、コストを低減する観点から、ガラス布を含んだFR−4レベルの通常のエポキシ基板等を使用することもできる。
第1誘電体層21の厚みは、伝送損失抑制の観点から、0.02mm〜4mmであると好ましく、0.02mm〜2mm以下であるとより好ましい。
上述したような第1導体層16、第1誘電体層21及び第2導体層17からなる積層体の構造を得るための材料としては、一般的な多層配線板材料を用いることもできる。例えば、セラミック系又は有機系の配線板材料を用いることができる。安価な多層伝送線路板1Aを得るためには、汎用的な多層配線板材料を用いることができる。第1導体層16、第1誘電体層21及び第2導体層17からなる積層体としては、例えば、両面銅張り積層板であるMCL−E−679(日立化成工業株式会社製、商品名)等を適用できる。
上記のように、第1導体層16、第1誘電体層21及び第2導体層17からなる積層体は、その積層方向に貫通するように孔3が設けられ、さらにこの孔3の内面に金属膜2が形成されている。
図1に示す例では、積層方向に垂直な平面における孔3の断面は、第3導体層11に垂直な方向に延びる帯状部分の両端のそれぞれにおいて、この帯状部分の外側に向かって半円部分が突出した形状を有している。ただし、孔3の断面形状は、このような帯状部分と半円部分とからなる形状をなしていることが好ましいが、この形状に限られず、例えば円形、矩形等でもよい。
孔3内面の金属膜2の厚みは、5μm〜50μm以下であることが好ましく、10μm〜50μm以下であることがより好ましい。この金属膜の厚み5μm未満であると、管状の金属膜を均一に形成できなくなるおそれがある。金属膜はめっき以外に蒸着又はスパッタリングによって形成することも可能であるが、上記厚みを効率よく均一に得るためには、めっきにより形成することが好ましい。なお、金属膜2は、孔3内面の全面に亘って形成されることが好ましいが、使用される周波数に対応する実行波長λの1/4未満の大きさの穴があってもよい。
また、金属膜2が形成された孔3内には、比誘電率及び誘電正接の小さい誘電体4が充填されている。当該誘電体としては、10GHzにおける比誘電率が2〜30、誘電正接が0〜0.03の少なくとも一方を満たすものが好ましい。伝送損失は材料の比誘電率と誘電正接との積に比例して大きくなるので、孔3内が比誘電率及び誘電正接が共に小さい誘電体で充填されることにより、伝送損失を抑制できる。誘電体4としては、無機フィラーを充填したエポキシ樹脂等が挙げられる。また、孔3内には、空気を充填してもよい。この場合も伝送損失の抑制が可能である。また、誘電体が空気であると誘電体を充填する工程をより簡略化できるので好ましい。さらに、誘電体4を構成する誘電体が、本実施形態における第1の層を構成する誘電体を含むと、比誘電率及び誘電正接がともに低くなるため好ましい。
また、第3導体層11の延在方向と直交する方向の孔3の幅は、使用する周波数の波長以下とすることが好ましい。このように孔3の幅を設計することで伝送損失を抑制しながら高密度化を達成できる。
図1に示すように、多層伝送線路板1Aにおいて、第3導体層11は、孔3の開口部(図において略矩形状)と、多層伝送線路板1Aの積層方向からみて少なくとも一部が重なるように設けられている。また、第3導体層11は、孔3の開口部(図において略矩形状)の長辺と直交する方向に延在するよう設けられている。
第3導体層11の厚みは、5μm〜50μm以下であることが好ましく、12μm〜50μm以下であるとより好ましい。第3導体層11としては、一例として、3EC−VLP−12(三井金属鉱業株式会社製、商品名)等を使用することができる。
例えば、第3導体層11は銅箔により形成することができる。第3導体層11の第2誘電体層26側の表面の表面粗さは、表面粗さRzJISが0.1μm〜9μm以下であることが好ましく、0.1μm〜6μm以下であるとより好ましく、0.1μm以上3μm未満であるとさらに好ましい。表面粗さが上記範囲であると表皮効果による導体層での伝送損失が小さくなる。なお、銅箔の代わりに銀ペースト又は銅ペーストを印刷して形成した層を使用することもできる。
第3導体層11は、パッチパターンを有していてもよい。例えば、図1に示す第3導体層11(配線部)の端部に、これよりも幅が広いパッチ部が設けられた構成であってもよい。パッチパターンを有することで、結合部のインピーダンスを調整することが可能となり、伝送損失を一層抑制し易くなる。このようなパッチパターンの具体例については、後述する。
第2誘電体層26は、第2導体層17と第3導体層11とを電気的に絶縁する絶縁層である。第2誘電体層26の厚みは、0.02mm〜0.8mmであることが好ましく、0.07mm〜0.2mmであることがより好ましい。
第2誘電体層26は、(A)スチレンユニットを有する飽和型熱可塑性エラストマと、(B)エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分と、を含有し、(A)成分の含有量Wと(B)成分の含有量Wとの質量比W/Wが、0.430〜5.000である樹脂組成物からなる。これらを必須成分として組み合わせることにより、優れた高周波特性、耐湿性、高接着性、高耐熱性を具備する誘電体層を形成できる。また、樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテルの含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して10質量部以下であってもよい。以下、上記樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
((A)成分)
(A)成分は、分子中にスチレンユニットを有する飽和型熱可塑性エラストマである。本実施形態において、飽和型熱可塑性エラストマとは、スチレンユニットを構成する芳香族炭化水素の部分以外の脂肪族炭化水素部分が、いずれも飽和結合基によって構成された構造を有するものをいう。(A)成分は、分子中にスチレンユニットを有する飽和型熱可塑性エラストマであれば、特に限定されない。このような(A)成分の飽和型熱可塑性エラストマを含むことにより、樹脂組成物及びこれにより形成される誘電体層は、誘電特性、耐吸湿性、導体との接着性が優れ、またフィルム形成能を有するものとなる。
飽和型熱可塑性エラストマにおけるスチレンユニットの含有比率は、特に限定されないが、全質量に対するスチレンユニットの質量百分率で、20〜80質量%であると好ましく、30〜70質量%であるとより好ましい。スチレンユニットの含有比率が上記範囲内であるとB成分との相溶性が良好となり、外観、接着性、耐熱性に優れるため好ましい。
(A)成分の具体例としては、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体(以下、SEBSと呼ぶ。)が挙げられる。SEBSは、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体のブタジエンに由来する構造単位が有している不飽和二重結合に水素添加を行うことにより得ることができる。
(A)成分は、数平均分子量が6万未満である飽和型熱可塑性エラストマを含有することが好ましい。(A)成分がこのようなエラストマを含むと、得られた樹脂組成物を、導体又は他の樹脂基板材料と接着させた場合に、両者の接着性を高めることができる。また、その樹脂組成物からなる樹脂フィルムを回路及びビアホール付きの基板に接着させて多層板を製造する際の多層化成形性が良好となる。また、上記エラストマを含む樹脂組成物によれば、ロープロファイル箔等の表面粗さの小さい金属箔との引き剥がし強さが大きい樹脂フィルム、並びに、タックフリーで、かつ割れ及び粉落ちがない樹脂フィルムが得られ、また支持基材として用いられるPETフィルム等との離形性も優れるようになる。
(A)成分における数平均分子量6万未満の飽和型熱可塑性エラストマの含有量は、(A)成分の全質量を基準として、50質量%以上であることが好ましく、60〜100質量%であるとより好ましい。このような含有量であれば、上記の作用効果をさらに良好に得られ、優れた接着性と吸水率の低減が可能である。なお、数平均分子量6万未満の飽和型熱可塑性エラストマは、数平均分子量6万以上の飽和型熱可塑性エラストマと併用することができる。
また、(A)成分は、側鎖又は末端に無水マレイン酸基を有する化学変性飽和型熱可塑性エラストマを含有することが好ましい。この化学変性飽和型熱可塑性エラストマは、数平均分子量6万未満の飽和型熱可塑性エラストマとして含んでいても、数平均分子量6万以上の飽和型熱可塑性エラストマとして含んでいても、それらの両方として含んでいてもよい。
(A)成分における化学変性飽和型熱可塑性エラストマの含有量は、(A)成分の全質量を基準として、20〜50質量%であることが好ましく、20〜35質量%であるとより好ましい。このような割合で化学変性飽和型熱可塑性エラストマを含有すると、樹脂組成物及びこれにより形成される誘電体層の、導体及び他の樹脂基板材料との接着性、及び高周波領域での誘電特性が更にバランス良く良好に得られる。側鎖又は末端に無水マレイン酸基を有する化学変性飽和型熱可塑性エラストマは、化学変性されていない非変性飽和型熱可塑性エラストマと併用することができる。
ここで、化学変性飽和型熱可塑性エラストマとしては、無水マレイン酸で変性されたSEBSが挙げられる。その具体例としては、タフテックM1911、M1913、M1943等(旭化成ケミカルズ社製)が挙げられる。一方、非変性飽和型熱可塑性エラストマとしては、非変性のSEBSが挙げられ、その具体例としては、タフテックH1041、H1051、H1043、H1053(旭化成ケミカルズ社製)等が挙げられる。
((B)成分)
(B)成分は、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分である。このような(B)成分を(A)成分と組み合わせて含むことにより、耐熱性及び耐溶剤性を向上させることができる。
エポキシ樹脂としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有するものであればどのようなものでもよい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、2官能ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物等が挙げられる。これらは一種類単独で用いてもよいが、又は二種類以上を混合して用いてもよい。なお、高周波特性を考慮すると、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、2官能ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂又はジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を用いることがより好ましい。
また、エポキシ樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂の硬化剤又は硬化促進剤を使用することもできる。硬化剤又は硬化促進剤としては、例えば、多官能フェノール化合物、アミン化合物、イミダゾール化合物、酸無水物、有機リン化合物、これらのハロゲン化物等が挙げられる。
シアネートエステル樹脂としては、分子内にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物であれば、特に限定せずに使用することができる。具体例としては、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、α,α’−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、フェノール付加ジシクロペンタジエン重合体のシアネートエステル化合物、フェノールノボラック型シアネートエステル化合物、クレゾールノボラック型シアネートエステル化合物等が挙げられる。これらは一種類単独で用いてもよいが、又は二種類以上を混合して用いてもよい。
シアネートエステル樹脂を用いる場合、シアネートエステル樹脂の硬化剤又は硬化促進剤が含まれていてもよい。硬化剤又は硬化促進剤としては、例えば、単官能フェノール化合物、多官能フェノール化合物、アミン化合物、酸無水物、有機金属化合物等が挙げられる。なお、高周波特性、耐湿性、耐熱性等を考慮すると、単官能フェノール化合物及び有機金属化合物を併用することがより好ましい。
有機金属化合物としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等の2−エチルヘキサン酸塩、ナフテン酸塩、アセチルアセトン錯体などが挙げられる。これらの中でも、特にマンガン又は亜鉛のナフテン酸塩がシアネートエステルの硬化性を良好にするため好ましい。これらは一種類単独で用いてもよいが、又は二種類以上を混合して用いてもよい。
単官能フェノール化合物としては、例えば、p−t−オクチルフェノール、p−フェニルフェノール及びp−(α−クミル)フェノールが挙げられる。これらの化合物は、誘電特性と耐熱性が良好であるため好ましい。また、単官能フェノール化合物の配合量は、シアネートエステル樹脂のシアナト基に対するフェノール化合物の水酸基の当量比で0.01〜1.00の範囲であると好ましい。単官能フェノール化合物の配合量が上記範囲であると、得られる樹脂組成物の誘電特性、耐湿性及び耐熱性が向上するため好ましい。
なお、シアネートエステル樹脂の硬化剤として、単官能フェノール化合物を併用する場合は、以下のような態様とすることが好ましい。すなわち、シアネートエステル樹脂と単官能フェノール化合物とを加熱することにより、ゲル化しない程度に反応させてシアネートエステル樹脂のプレポリマーを合成する。そして、上記(B)成分として、当該プレポリマーを用いることによって、樹脂組成物の未硬化(Bステージ)フィルムの外観及び取り扱い性、並びに樹脂組成物の硬化フィルムの硬化性が向上する。配合する単官能フェノール化合物は、プレポリマーを合成する際に規定量全てを配合してもよいが、ワニスの保存安定性の観点からは、プレポリマーを合成する前後で規定量を分割して配合する方が好ましい。
ポリブタジエン樹脂としては、ポリフェニレンエーテルと、1,2−ブタジエンに由来する構造単位であって側鎖に1,2−ビニル基を有する構造単位を分子中に40モル%以上含み、かつ、数平均分子量が500〜10000である化学変性されていないポリブタジエン樹脂とを反応させて得られる、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンポリマーを含有するものが好ましい。この場合におけるポリブタジエン樹脂は、分子中の側鎖1,2−ビニル基及び末端の両方又は片方を、エポキシ化、グリコール化、フェノール化、マレイン化、(メタ)アクリル化、ウレタン化等の化学変性された変性ポリブタジエンではなく、未変性のブタジエン樹脂であることがより好ましい。またポリブタジエン樹脂は、硬化性を考慮して、1,2−ブタジエンに由来する構造単位であって側鎖に1,2−ビニル基を有する構造単位を、分子中に50モル%以上含むことがより好ましく、65モル%以上含むことが更に好ましい。また数平均分子量は、樹脂組成物の硬化性及び硬化物とした時の誘電特性と、印刷配線板とした時の樹脂の流動性とのバランスを考慮すると、700〜8000の範囲であることがより好ましく、1000〜5000の範囲であることが更に好ましい。ポリブタジエン樹脂の具体例としてはB−3000(日本曹達製)が挙げられる。
マレイミド化合物としては、分子内にマレイミド基を2個以上含有するポリマレイミド化合物が好ましい。ポリマレイミド化合物の具体例としては、1,2−ジマレイミドエタン、1,3−ジマレイミドプロパン、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,7−ジマレイミドフルオレン、N,N’−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(1,3−(4−メチルフェニレン))ビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)エ−テル、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−(3−マレイミドフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、ビス(4−マレイミドフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル] スルホキシド、4,4’−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(2−(3−マレイミドフェニル)プロピル)ベンゼン、1,3−ビス(1−(4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル)−1−プロピル)ベンゼン、ビス(マレイミドシクロヘキシル)メタン、2、2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ) フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(マレイミドフェニル)チオフェン等が挙げられる。これらの中でも、樹脂組成物及びそれにより形成される誘電体層の吸湿性及び熱膨張係数を低下できることから、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンを用いることが好ましい。あるいは、樹脂組成物の破壊強度及び金属箔引き剥がし強さがさらに高まることから、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンを用いることが好ましい。
また、これらのようなポリマレイミド化合物のほか、分子内にマレイミド基を1個含有するものモノマレイミド化合物を用いることもできる。モノマレイミド化合物の具体例としては、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2、6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2、6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。モノマレイミド化合物は、(B)成分として、マレイミド化合物を他の樹脂と併用する場合に特に有効である。
マレイミド化合物を用いる場合、マレイミド化合物の硬化剤又は硬化促進剤を使用することもできる。硬化促進剤としては、例えば、アミン化合物、有機過酸化物等が挙げられる。硬化剤としては、パーブチルPが挙げられる。
(B)成分の第一の態様は、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分である。本実施形態に係る樹脂組成物は、必要に応じて、これらの成分の硬化剤及び/又は硬化促進剤を更に含有することができる。
(B)成分の第一の態様としては、ポリブタジエン樹脂を用いることが好ましくポリブタジエン樹脂とマレイミド化合物とを併用することがより好ましい。これにより、樹脂組成物及び誘電体層の誘電特性、耐湿性、耐熱性、熱膨張特性等を向上させることができる。
また、ポリブタジエン樹脂とマレイミド化合物を併用する場合、マレイミド化合物の配合割合が、ポリブタジエン樹脂100質量部に対して2〜200質量部の範囲であると好ましく、5〜100質量部であるとより好ましく、10〜75質量部であると更に好ましい。マレイミド化合物の配合割合が上記範囲であると、樹脂組成物及び誘電体層の熱膨張係数、Tg及び金属箔引き剥がし強さと誘電特性とが良好に得られる。
(B)成分の第一の態様として、ポリブタジエン樹脂及びマレイミド化合物を併用する場合は、硬化促進剤としてラジカル反応開始剤を含有していることが好ましい。ラジカル重合開始剤の具体例としては、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、イソブチリルパーオキサイド、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾインメチルエーテル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエートなどが挙げられる。
(B)成分が第一の態様である場合、樹脂組成物における(A)成分と(B)成分の質量比W/Wは、0.430〜5.000であり、0.430〜1.500であることが好ましく、0.430〜1.000であることがより好ましい。第一の態様の(B)成分において、W/W上記範囲内であれば、得られる樹脂組成物は、フィルム形成能、取り扱い性及び高周波帯域での誘電特性に優れると共に、耐熱性、耐湿性及び高接着性を備える。
また、(B)成分が第一の態様である場合、樹脂組成物におけるポリフェニレンエーテルの含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して10質量部以下であると好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、7質量部以下であることがさらに好ましい。ポリフェニレンエーテルの含有量が上記範囲であると、樹脂組成物の相容性、耐熱性、接着性等を向上させることができるほか、Tgを高めることができる。
ポリフェニレンエーテルとしては、2,6−ジメチルフェノールを単独重合して得られるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、2,3,6−トリメチルフェノールを単独重合して得られるポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレン)エーテル、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体等が挙げられる。また、これらのポリフェニレンエーテルと、ポリスチレン、スチレン−ブタジエンコポリマー等とのアロイ化ポリマーのような変性ポリフェニレンエーテルも、ポリフェニレンエーテルに含まれる。
(B)成分の第二の態様は、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分である。樹脂組成物は、必要に応じて、これらの成分の硬化剤及び/又は硬化促進剤を含有することができる。
(B)成分が第二の態様である場合、樹脂組成物における(A)成分と(B)成分の質量比W/Wは、0.7〜5.0であると好ましく、0.8〜2.0であることがより好ましく、0.9〜1.5であることが更に好ましい。W/Wが、上記範囲内であれば、得られる樹脂組成物は、フィルム形成能、取り扱い性及び高周波帯域での誘電特性に優れると共に、耐熱性、耐湿性及び高接着性を有するものとなる。
また、(B)成分が第二の態様の場合、樹脂組成物におけるポリフェニレンエーテルの含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して10質量部以下であると好ましく、8質量部以下であるとより好ましく、7質量部以下であるとさらに好ましい。ポリフェニレンエーテルの含有量が上記範囲であると、樹脂組成物の相容性、耐熱性、接着性等の向上のほか、Tgを高めることができる。
(B)成分の第二の態様としては、誘電特性、耐熱性、接着性を良好に得る観点から、シアネートエステル樹脂が好ましい。特に、シアネートエステル樹脂としては、単官能フェノール化合物を併用したもの、及び予め単官能フェノール化合物で変性したフェノール変性シアネートエステル樹脂が、誘電特性、耐湿性、耐熱性を一層向上できる観点から好ましい。
((C)成分)
本実施形態の樹脂組成物は、(C)成分として、酸化防止剤を更に含有していてもよい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤が好ましい。例えば、下記式(1)〜式(3)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種のフェノール系酸化防止剤が好適である。これらの化合物は、比較的対称性が高い構造を有し、かつ、フェノール性水酸基に隣接するt−ブチル基が高いため、誘電特性の悪化を招くことなく、効率的に酸化抑制効果と絶縁劣化抑制効果を発現することができる。
Figure 0006136348

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また、(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して0.01〜5質量部とすることが好ましい。(C)成分の含有量を上記範囲とすることにより、得られる樹脂組成物の誘電特性、耐湿性、耐熱性等を悪化させることなく、高温処理による誘電特性の酸化劣化の抑制及び絶縁信頼性を向上させることができる。特に(A)成分として化学変性SEBSを用いる場合に、加熱酸化による誘電特性の経年変化の抑制効果を発揮できる。
(難燃剤、無機充填剤、各種添加剤)
また、本実施形態における樹脂組成物には、必要に応じて難燃剤、無機充填剤、各種添加剤を樹脂組成物の特性(取り扱い性、誘電特性、耐熱性、導体及び他の樹脂材料との接着性、耐湿性、熱膨張特性等)を過度に悪化させない範囲の配合量で、更に配合してもよい。
[電磁結合モジュール及びアンテナモジュール]
上述した実施形態の多層伝送線路板1Aは、伝送線路電磁結合構造を有することから、この多層伝送線路板1Aの孔3に対応する位置に、トリプレート線路、導波管の開口部、あるいはアンテナを内蔵する半導体チップ等を実装して、電磁結合モジュールを構成することができる。さらに、その他の受動部品を多層伝送線路板1Aに実装することにより、アンテナモジュールを構成することもできる。
例えば、図示していないが、第3導体層11の一方の端部にマイクロストリップアンテナを接続するよう構成することもできる。また、第3導体層11の両端にマイクロストップアンテナを接続することも可能である。また、マイクロストリップアンテナは、1つのパッチアンテナ、パッチパターンである場合に限らず、アレーアンテナとすることも可能である。
図2(a)及び(b)に、好適な実施形態のアンテナモジュールの例を示す。これらのアンテナモジュールにおいて、特記しない多層伝送線路板1の構成は、いずれも上述した実施形態の多層伝送線路板1Aと同様である。
図2(a)は、好適な実施形態に係るアンテナモジュールの断面構成を模式的に示す図である。図2(a)において、アンテナモジュール1Eは、アンテナ内蔵の半導体チップ−伝送線路の電磁結合構造を有している。この電磁結合構造を有する多層伝送線路板1の孔3に対応する位置(図において、孔3の下部を覆う位置)にアンテナを内蔵した半導体チップDが配置されている。多層伝送線路板1の両表面には、受動部品Eが実装されている。
このアンテナモジュール1Eにおいて、半導体チップDから給電される電力は、孔3と多層伝送線路板1表面の伝送線路をなす第3導体層11を介してマイクロストリップアンテナ(パッチパターン)5に給電される。あるいは、マイクロストリップアンテナ5で受信された電力は、伝送線路をなす第3導体層11及び孔3を介して半導体チップDに給電される。
本実施形態のアンテナモジュールで用いられる半導体チップD、マイクロストリップアンテナ及び受動部品Eとしては、ミリ波信号を処理する高周波ICとマイクロストリップアンテナを組み合わせたもの、又はマイクロストリップアンテナを内蔵した高周波ICといった能動素子の周辺に、インダクタ、キャパシタ、抵抗のチップ部品を配置したものが挙げられる。チップ部品は1608、1005、0603等一般に用いられているものを使用することができる。
図2(b)は、他の実施形態に係るアンテナモジュールの断面構成を模式的に示す図である。図2(b)において、アンテナモジュール1Dは、導波管−伝送線路の電磁結合構造を有している。この電磁結合構造を有する多層伝送線路板の孔3に対応する位置(図において、孔3の下部を覆う位置)に導波管Fが配置される。このとき、孔3の中心と導波管Fの空洞部の中心とは略一致するように配置される。
このアンテナモジュール1Eにおいて、導波管Fから給電される電力は、孔3と多層伝送線路板1表面の伝送線路をなす第3導体層11を介してマイクロストリップアンテナ5に給電される。あるいは、マイクロストリップアンテナ5で受信された電力は、伝送線路をなす第3導体層11及び孔3を介して導波管Fに給電される。本実施形態で用いられる導波管としては、WR−22、WR−19、WR−15、WR−12、WR−10(EIA規格)等が挙げられる。
なお、図2(a)、(b)に示したアンテナモジュールの例では、多層伝送線路板1として、片面側のみに誘電体層(第1誘電体層26)及び導体層(第3導体層11)が積層された構成について説明したが、これに限られず、多層伝送線路板としては、両側に誘電体層及び導体層が設けられた構成のものを用いることもできる。
図3は、他の実施形態に係るアンテナモジュールの断面構成を模式的に示す図である。図3に示すアンテナモジュール1Fは、第1導体層16と第1誘電体層21と第2導体層17とからなる積層体の両側を、第2誘電体層26と第2誘電体層27とで挟み込み、さらにその両側を第3導体層11と第3導体層12とで挟み込むように積層した構造を有する。
図3に示した構成により、マイクロ波回路を形成した半導体チップDから出力される電力は、この半導体チップD側の伝送線路である第3導体層12、孔3、裏面の伝送線路である第3導体層11を介してマイクロストリップアンテナ5に給電される。あるいは、逆に、マイクロストリップアンテナ5で受信した電力は、マイクロ波として第3導体層11、孔3、第3導体層12の順に伝送され、半導体チップDに給電される。
なお、図3に示すアンテナモジュール1Fにおける多層伝送線路板1と、図1に示した多層伝送線路板1Aとの相違点は、図3に示したアンテナモジュール1Fの多層伝送線路板1において、第2誘電体層27、及びさらにその外側に第3導体層12が設けられている点にある。
上記図3に示したような構成とする場合、第2誘電体層27には、第2誘電体層26と同じ絶縁材料を用いることが好ましく、また、第3導体層12には、第3導体層11と同様の銅箔を用いることが好ましい。また、第3導体層12の厚みも第3導体層11と同程度とすることが好ましく、第3導体層12の第2誘電体層27側の表面粗さについても、第3導体層11の第2誘電体層26側の表面粗さと同程度にすることが好ましい。
また、図2(a)、(b)に示したアンテナモジュール1D、1Eにおける多層伝送線路板1では、導体層が、第1導体層16、第2導体層17、及び第3導体層11の計3層で構成されていたが、多層伝送線路板は、3層以上の導体層を有していてもよい。例えば、図4に示すように、導体層を5層とすることができる。
図4は、他の実施形態に係る多層伝送線路板を模式的に示す断面図である。図4に示した多層伝送線路板1Gでは、グランド層となる第1導体層16の両外側に、第1誘電体層21、22、第2導体層17、18、第2誘電体層23、26及び第3導体層11、19がこの順に積層されている。このように、図4に示した多層伝送線路板1Gは、第1導体層16、第2導体層17、18及び第3導体層11、19の計5層の導体層を有している。
[電磁結合モジュール及びアンテナモジュールの変形例]
本発明の実施形態に係る多層伝送線路板、電磁結合モジュール及びアンテナモジュールには、上述した実施形態の他にも、多くの変形例がある。以下、上述した実施形態の場合も含めて体系的に例示する。
(c1)
図5に、他の実施形態に係る電磁結合モジュールの断面構成を示す。この電磁結合モジュールは、アンテナ内蔵半導体チップ−多層伝送線路板の伝送線路間の電磁結合構造を有する。図5に示す電磁結合モジュールは、第5導体層17、第4誘電体層23、第4導体層42、第3誘電体層22、第1導体層41、第1誘電体層21、第2導体層16、第2誘電体層26、及び第3導体層11がこの順に積層された多層伝送線路板を有する。また、パターニングされた第5導体層17の下部に、半導体チップDが接続部材89を介して接続されている。この例においては、半導体チップDのアンテナは孔3と対応する位置に配置されており、半導体チップDと第3導体層11とが、孔3を介して電磁結合される。
(c2)
図6に、他の実施形態に係る電磁結合モジュールの断面構成を示す。この電磁結合モジュールは、マイクロ波帯域で使用されるアンテナ内蔵半導体チップ−多層伝送線路板の伝送線路間の電磁結合構造を有する。図6において、電磁結合モジュールは、第1導体層16、第1誘電体層21、第2導体層17、第2誘電体層26、及び第3導体層11がこの順に積層された多層伝送線路板を有する。また、パターニングされた第1導体層16の下部に、半導体チップDが接続部材89を介して接続されている。この変形例においては、半導体チップDのアンテナは孔3と対応する位置に配置されており、半導体チップDと第3導体層11とが孔3を介して電磁結合される。
(c3)
図7に、他の実施形態に係る電磁結合モジュールの断面構成を示す。この電磁結合モジュールは、マイクロ波帯域で使用される導波管−多層伝送線路板の伝送線路間の電磁結合構造を有する。図7において、電磁結合モジュールは、第5導体層17、第4誘電体層23、第4導体層42、第3誘電体層22、第1導体層41、第1誘電体層21、第2導体層16、第2誘電体層26及び第3導体層11がこの順に積層された多層伝送線路板を有する。また、第5導体層17の下部に導波管Fが接続されている。この変形例においては、導波管Fは、その開口部の中心と孔3の中心とが一致するように配置され、導波管Fと第3導体層11とが孔3を介して電磁結合される。
(c4)
図8に、他の実施形態に係る電磁結合モジュールの断面構成を示す。この電磁結合モジュールは、マイクロ波帯域で使用される導波管−多層伝送線路板の伝送線路間の電磁結合構造を有する。図8において、電磁結合モジュールは、第1導体層16、第1誘電体層21、第2導体層17、第2誘電体層26及び第3導体層11がこの順に積層された多層伝送線路板を有する。また、第1導体層16の下部に導波管Fが接続されている。この変形例においては、導波管Fは、その開口部の中心が孔3の中心と一致するように配置されており、導波管Fと第3導体層11とが孔3を介して電磁結合される。
(c5)
図9に、他の実施形態に係るアンテナモジュールを示す。図9において、アンテナモジュールは、第6導体層12、第5誘電体層27、第5導体層16、第4誘電体層23、第4導体層42、第3誘電体層22、第1導体層41、第1誘電体層21、第2導体層17、第2誘電体層26及び第3導体層11がこの順に積層された多層伝送線路板を有する。また、第3導体層11の先端にはマイクロストリップアンテナ5が接続されており、パターニングされた第3導体層11の上部には受動部品Eが実装されている。さらに、パターニングされた第6導体層12の下部には、接続部材89を介して半導体チップDが接続されている。この変形例においては、第3導体層11と第6導体層12とは孔3を介して電磁結合される。そして、第3導体層11及び第6導体層12にそれぞれ接続されたマイクロストリップアンテナ5とマイクロ波回路を形成した半導体チップDとが接続される。
(c6)
図10に、他の実施形態にかかるアンテナモジュールを示す。図10において、アンテナモジュールは、第5導体層17、第4誘電体層23、第4導体層42、第3誘電体層22、第1導体層41、第1誘電体層21、第2導体層16、第3誘電体層26及び第3導体層11がこの順に積層された多層伝送線路板を有する。また、第3導体層11の先端には、マイクロストリップアンテナ5が接続されており、パターニングされた第3導体層11の上部には受動部品Eが実装されている。さらに、パターニングされた第5導体層17の下部には、接続部材89を介してアンテナを内蔵した半導体チップD及び受動部品Eが接続されている。この変形例においては、半導体チップDのアンテナは孔3と対応する位置に配置されている。そして、第3導体層11とアンテナ内蔵半導体チップDとが孔3を介して電磁結合され、これによりマイクロストリップアンテナ5とアンテナ内蔵半導体チップDとが接続される。
(c7)
図11に、他の実施形態にかかるアンテナモジュールを示す。図11において、アンテナモジュールは、第5導体層17、第4誘電体層23、第4導体層42、第3誘電体層22、第1導体層41、第1誘電体層21、第2導体層16、第2誘電体層26及び第3導体層11がこの順に積層された多層伝送線路板を有する。また、第3導体層11の先端にはマイクロストリップアンテナ5が接続され、パターニングされた第3導体層11の上部には受動部品Eが接続されている。さらに、第5導体層17の下部には導波管Fが接続されている。この変形例においては、導波管Fが、その開口部の中心と孔3の中心とが一致するように配置されている。そして、第3導体層11と導波管Fとが孔3を介して電磁結合され、これにより、マイクロストリップアンテナ5と導波管Fとが接続されている。
(外側導体層のパッチパターンの例)
上述のように、図1に示す多層伝送線路板1Aにおける第3導体層11等の外層導体層は、所定のパッチパターンを有することができる。具体的には、略直線状の配線部の端部に、この配線部よりも幅が広いパッチ部を有する構造を有することができる。以下、多層伝送線路板1Aにおける第3導体層11を用いて、外側導体層のパッチパターンについて例示する。
第3導体層11は、図12(a)に示すように、配線部Wと、当該配線部の先端に設けられた導体パッチ部Pとをそれぞれ含む。導体パッチ部Pは、配線部Wの延在方向と直交する方向に延びる長方形状であり、この方向において、配線部Wの長さよりも長い部分を有する。また、図12(a)に示すように、第3導体層11は、そのパッチ部Pにおいて、孔3と重なるように設けられている。このように第3導体層11の先端をパッチ形状とすることにより、導体パッチ部Pと孔3とのインピーダンス整合を容易にとることができる。
このような構成とすれば、従来のように、伝送信号の周波数と誘電体の比誘電率に応じて、所定の不等式の条件を満たすように、電磁結合部分の種々の寸法を厳密に管理する必要がない。つまり、本実施形態の多層伝送線路板1Aでは、このような導体パッチ部Pを有する第3導体層11を用いることにより、製造段階で電磁結合部分の種々の寸法にばらつきが生じても、寸法精度の影響を受けにくくなり、優れた伝送特性を維持できる。その結果、高い寸法精度が必要とされずに、低損失な伝送特性を有する多層伝送線路板を得ることができる。
また、図12(a)に示すように、導体パッチ部Pは、積層方向から見て孔3の領域内に配置されていると好ましい。すなわち、導体パッチ部Pにおける長軸方向の長さL2及び短軸方向の長さL3は共に、孔3の開口部の長軸方向の長さL4及び短軸方向の長さL5よりも、それぞれ小さいことが好ましい。また、導体パッチ部Pにおける長軸方向の長さL2及び短軸方向の長さL3は共に、多層伝送線路板1Aで使用される周波数帯域の周波数に対応する実効波長λ以下であるのが好適であり、λ/2以下であるのがより好適であり、λ/4以下であるのがさらに好適である。なお、かかるλは、例えば1.5mm〜30mmである。
導体パッチ部Pにおける長軸方向の長さL2及び短軸方向の長さL3を上記の条件を満たすようにすることにより、孔3と導体パッチ部Pとの強い電磁結合が得られるので、伝送損失を抑制できる。導体パッチ部Pの寸法が大き過ぎると、導体パッチ部Pからの放射が発生するため、損失が増大するおそれがある。また、導体パッチ部Pの大きさが上記の条件を満たすことにより、パターン面積を縮小できるので、効率的なパターン配置を図ることができる。特に、L2及びL3が、それぞれλ/4以下であることにより、孔3と導体パッチ部Pとのより強い電磁結合が得られ、低損失な信号伝送に最も適した形態となる。ただし、それらの長さがλ/80以下になると、多層伝送線路板1Aの基板製造時の寸法精度(例えばパターニングにおけるエッチングの精度等)の影響が大きくなるおそれがある
導体パッチ部Pの形状は、図12(a)に示すような長方形状に限られることなく、例えば、図12(b)に示すように正方形、図12(c)に示すように円形、図12(d)に示すように星形でも良い。ここで、星形とは、多角形の各辺を延長し、得られた交点を結んだ図形から、多角形の各辺を取り除いた形を言う。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、必ずしも以下の実施例に限定されない。
以下では、本発明の実施形態に係る多層伝送線路板、電磁結合モジュール、及びアンテナモジュールの特性を測定するための、いくつかの実施例について説明する。なお、本発明では、多層伝送線路板の表面側と裏面側とに配線(例えば、第1導体層16と第3導体層11)が分離しているために、この状態ではウェハプローバ等を用いて高周波測定をすることが困難である。従って、以下に説明する実施例では、1つの孔ではなく2つの孔を設けた多層伝送線路板を準備した。このような2つの孔を設けたことにより、一方を入力側、他方を出力側とする直列的なスロット結合が実現され、プロービングによる測定が可能となる。
[実施例1]
実施例1として、多層伝送線路板1Hを作製した。図13(a)に、多層伝送線路板1Hを第3導体層11側から見た平面透視図を示す。また、図13(b)に、図13(a)におけるB−B線を通る垂直断面図を示す。図13(b)に示すように、多層伝送線路板1Hは、導波管F1、F2、第1導体層16、第1誘電体層21、第2導体層17、第2誘電体層26及び第3導体層11がこの順に積層されている。また、図13(b)に示すように、多層伝送線路板1Hには、孔31、孔32が設けられている。そして、上述したように、孔31、孔32のうち、いずれか一方を入力側、他方を出力側とする直列的なスロット結合が実現され、プロービングによる測定が可能となっている。
また、第3導体層11の両端部は開放端となっている。孔31及び孔32は、第3導体層11の両方の開放端からそれぞれ使用実効波長λの1/4の長さだけ中心寄りの位置と、それぞれの孔の中心とが一致する位置に設けられている。さらに、孔31及び孔32の水平断面は長辺と短辺とを有する略矩形状であり、それぞれの長辺が第3導体層11の延在方向と直交する向きに形成されている。
次に、多層伝送線路板1Hの製造方法について説明する。まず、内層回路板として誘電体層(第1誘電体層21)の両面に銅箔(第1及び第2導体層16、17)が形成された積層板(日立化成工業株式会社製、商品名MCL−E−679)を準備した。この積層板の厚さは0.2mmであり、銅箔の厚さは12μm、誘電体層側の導体表面粗さはRz:6.0μmである。次に、この積層体に直径0.45mmのドリルを用いて、延在方向と直交する方向に長さ2mmの穴開けを行い、孔31及び孔32を形成した。この穴の内壁及び銅箔表面に厚さ10μmの銅めっきを施した後、孔31及び32内に穴埋め樹脂(太陽インキ製造株式会社製、商品名DX−1、10GHzにおける誘電正接0.03、比誘電率3.5)を充填し、表面を研磨して、内層回路板を作製した。なお、図13(b)において、第1導体層16及び第2導体層17表面上の銅めっき膜は省略してある。
次に、誘電体層26を形成するための半硬化樹脂フィルムを次の手順で作製した。2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(BADCY、ロンザ社製)48質量部(固形分量)、p−(α−クミル)フェノール(東京化成工業社製)4質量部(固形分量)及びナフテン酸マンガン(和光純薬工業社製)0.008質量部(固形分量)をトルエン21mlに溶解させ、110℃で約3時間加熱反応させた。その後、温度を80℃とし、この溶液にスチレン-ブタジエン共重合体の水素添加物(タフテックH1051、スチレン含有比率:42%、数平均分子量Mn66,000、旭化成ケミカルズ社製)48質量部(固形分量)及びトルエン80ml及びメチルエチルケトン25mlを攪拌しながら配合して室温まで冷却した。そして、ナフテン酸亜鉛(和光純薬工業社製)0.02質量部(固形分量)を配合して調製したワニスから、65μm厚のBステージの半硬化樹脂フィルムを作製した。
次に、作製した半硬化樹脂フィルムを上記内層回路板上に2枚重ね合わせ、温度120℃、圧力0.5MPa、時間40秒の条件で仮圧着し、さらに厚さ12μmの銅箔(三井金属鉱業株式会社製、商品名3EC−VLP−12、粗化処理面表面粗さRz:3.0μm)を重ね合わせて温度230℃、圧力3.0MPa、時間80分の条件で積層一体化処理を施した。
そして、銅箔をエッチングでパターニングすることにより、内層回路板で形成した孔31、孔32に対応する位置に、幅220μmの第3導体層11を形成した。そして、内層回路板の第3導体層11とは反対側の面に、導波管F1、F2を、それらの開口の中心が孔32及び孔31の中心と一致するように設けて、多層伝送線路板1Hを得た。
[実施例2]
2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(BADCY、ロンザ社製)48質量部(固形分量)、p−(α−クミル)フェノール(東京化成工業社製)4質量部(固形分量)及びナフテン酸マンガン(和光純薬工業社製)0.008質量部(固形分量)をトルエン21mlに溶解させ、110℃で約3時間加熱反応させた。その後室温まで冷却したこの溶液にビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER815、三菱化学社製)30質量部、球状シリカ(アドマファインSO−C3、アドマテックス社製)123質量部、ナフテン酸亜鉛(和光純薬工業社製)0.02質量部(固形分量)を撹拌しながら配合した。その後室温で2時間真空乾燥し、比誘電率3.2、誘電正接0.003の穴埋め樹脂を作製した。
孔31及び32内にこの穴埋め樹脂を充填した以外は、実施例1と同様にして、多層伝送線路板1H´を製作した。
[実施例3]
実施例3として、多層伝送線路板1Jを作製した。図14(a)に、多層伝送線路板1Jを第3導体層11側から見た平面透視図を示す。図14(b)に、図14(a)におけるC−C線を通る垂直断面図を示す。図14(b)において、多層伝送線路板1Jは、第4導体層12a及び12b、第3誘電体層27、第1導体層16、第1誘電体層21、第2導体層17、第2誘電体層26、第3導体層11がこの順に積層されている。また、図14(b)に示すように、多層伝送線路板1Jには、孔31及び32が設けられている。そして、上述したように、孔31、孔32のうち、いずれか一方を入力側、他方を出力側とする直列的なスロット結合が実現され、プロービングによる測定が可能となっている。
また、第3導体層11の両端部は開放端となっており、これら両方の開放端からそれぞれ使用実効波長λの1/4の長さだけ中心寄りの位置と、それぞれの孔の中心とが一致する位置に、孔31及び孔32が設けられている。さらに、孔31及び孔32の水平断面は、長辺と短辺とを有する略矩形状であり、それぞれの長辺が第3導体層11の延在方向と直交する向きに形成されている。また、孔31及び孔32の、第3導体層11の延在方向と直交する方向の幅は2mmである。
次に、多層伝送線路板1Jの製造方法について説明する。まず、実施例1と同様にして、内層回路板を製造した。次に、実施例1で作製したものと同じ半硬化樹脂フィルムを上記内層回路板の両面に2枚ずつ重ね合わせ、温度120℃、圧力0.5MPa、時間40秒の条件で仮圧着した後、さらにその両外側に厚さ12μmの銅箔(三井金属鉱業株式会社製、商品名3EC−VLP−12、粗化処理面表面粗さRz:3.0μm)を重ね合わせて、温度230℃、圧力3.0MPa、時間80分の条件で積層一体化処理を施した。そして、両表面の銅箔をエッチングでパターニングすることにより、内層回路板で形成した導体パターンに対応する位置に、幅220μmの第3導体層11及び第4導体層12a、12bを形成した。
[実施例4]
実施例4として、多層伝送線路板1Kを作製した。図15(a)に、多層伝送線路板1Kを第3導体層11側から見た平面透視図を示す。また、図15(b)に、図15(a)におけるD−D線を通る垂直断面図を示す。
多層伝送線路板1Kは、第3導体層11の両端にパッチパターン62及び63を、第4導体層12a及び12bのそれぞれ孔31及び孔32に近い端部にパッチパターン61及び64をそれぞれ形成した以外は、実施例3と同様に作成した。パッチパターン62及び63は、孔31及び孔32のそれぞれの中心よりも外側に位置するように設けられている。また、パッチパターン61及び64は、孔31及び孔32のそれぞれの中心よりも内側に位置するようにそれぞれ設けられている。
なお、伝送線路としての第3導体層11並びに第4導体層12(a)及び12(b)は、それぞれ特性インピーダンス50Ωとしたマイクロストリップラインである。
[比較例1]
比較例1として、多層伝送線路板1Lを作製した。図16(a)に、多層伝送線路板1Lを第2導体層12側から見た平面透視図を示す。また、図16(b)に、図16(a)におけるE−E線を通る垂直断面図を示す。図16(b)に示すように、多層伝送線路板1Lは、第1導体層16、第1誘電体層21、第2導体層12がこの順に積層されている。第1導体層16の下部には、導波管F1、F2が接続されている。そして、多層伝送線路板1Lにおいては、図16(b)に示すように、第1導体層16のみを貫通するスロットS1及びS2と、導波管F1及びF2内に設置した金属板M1、M2によりそれぞれ形成された追加スロットS11、S12を有する。
また、第2導体層17の両端部は開放端となっている。スロットS1及びS2は、これら両方の開放端からそれぞれ使用実効波長λの1/4の長さだけ中心寄りの位置と、それぞれの孔の中心とが一致する位置に設けられている。さらに、スロットS1及びS2は、長辺と短辺とを有する矩形状であり、それぞれの長辺が第3導体層12の延在方向と直交する向きに形成されている。
次に、多層伝送線路板1Lの作製方法を説明する。まず、誘電体層の両面に銅箔が形成された積層板(日立化成工業株式会社製、商品名MCL−FX−2)を準備する。一方の銅箔をエッチングによりパターンニングして幅0.2mm、長さ2.2mmのスロットS1、S2を形成すると共に、もう一方の銅箔もエッチングによりパターニングして幅220μmの第2導体層17を形成した。
次に、金属板に追加スロットを穴あけ加工するとともに、導波管の開口寸法に合わせて外形を加工し、この金属板を導波管F1、F2に取り付けた。最後に、スロットS1とS11、スロットS2とS12の中心とを合わせ、伝送線路板にネジ留めして固定した。
[比較例2]
比較例2として多層伝送線路板1Mを作製した。図17(a)に、多層伝送線路板1Mを第3導体層11側から見た平面透視図を示す。また、図17(b)に、図17(a)におけるF−F線を通る垂直断面図を示す。図17(b)において、多層伝送線路板1Mは、第1導体層16、第1誘電体層21、第2導体層17、第2誘電体層26、第3導体層11がこの順に積層されている。第1導体層16の下部には、導波管F1、F2が接続されている。
そして、多層伝送線路板1Mにおいては、図17(b)に示すように、第1導体層16のみを貫通するスロットS1及びS3と、第2導体層17のみを貫通するスロットS2及びS4とを有する。なお、スロットとは、導体に設けられた孔のことである。
また、第3導体層11の両端部は開放端となっており、これら両方の開放端からそれぞれ使用実効波長λの1/4の長さだけ中心よりの位置と、それぞれの孔の中心とが一致する位置に、スロットS2及びS4は設けられている。さらに、スロットS2及びS4は、長辺と短辺とを有する矩形状であり、それぞれの長辺が第3導体層11の延在方向と直交する向きに形成されている。
次に、多層伝送線路板1Mの作製方法を説明する。まず、誘電体層の両面に銅箔が形成された積層板(日立化成工業株式会社製、商品名MCL−E−679)を準備する。積層板の一方の面にエッチングによりパターニングして幅0.4mm、長さ2.2mmのスロットS2、S4形成し、内層回路板を作製した。
次に、プリプレグ(日立化成工業株式会社製、商品名GFA−2、厚さ100μm)と、厚さ12μmの銅箔(三井金属鉱業株式会社製、商品名3EC−VLP−12、粗化処理面表面粗さRz:3.0μm)とを、上記内層回路板のスロットを形成した面にこの順に積層し、温度180℃、圧力3MPa、時間80分の条件で積層一体化処理を施した。
そして、上下の銅箔をエッチングでパターニングすることにより、内層回路板で形成したスロットに対応する位置に、幅220μmの第3導体層11を配置するとともに、導波管を接続する面にスロットS1、S3を配置した。スロットS1、S3のサイズはS2、S4と略同じとした。
[比較例3]
比較例として、多層伝送線路板1Nを作製した。図18(a)に、多層伝送線路板1Nを第3導体層11から見た平面透視図を示す。図18(b)に、図18(a)におけるG−G線を通る垂直断面図を示す。図18(b)において、多層伝送線路板1Nは、第4導体層12a及び12b、第3誘電体層27、第1導体層16、第1誘電体層21、第2導体層17、第2誘電体層26、第3導体層11がこの順に積層されている。
次に、多層伝送線路板1Nの作製方法を説明する。まず、誘電体層の両面に銅箔が形成された積層板(日立化成工業株式会社製、商品名MCL−E−679)を準備する。積層板の両方の面をエッチングによりパターンニングして幅0.4mm、長さ2.2mmのスロットS1〜S4形成し、内層回路板を作製した。
次に、この内層回路板の両面にプリプレグ(日立化成工業株式会社製、商品名GFA−2、厚さ100μm)と、厚さ12μmの銅箔(三井金属鉱業株式会社製、商品名3EC−VLP−12、粗化処理面表面粗さRz:3.0μm)とをこの順に積層し、温度180℃、圧力3MPa、時間80分の条件で積層一体化処理を施した。そして、表面の銅箔にエッチングを施すことにより、一方の面に第3導体層11を、他方の面に第4導体層12a、12bを形成した。
[測定結果]
以上のように作製した実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の多層伝送線路板の孔及びスロットに対応した位置に導波管を接続させ、同軸ケーブル(アジレントテクノロジーズ社製、商品名E7342)を介して接続されたネットワークアナライザ(アジレントテクノロジーズ社製、商品名HP8510C)から電力を供給して、多層伝送線路板を通過する際の伝送損失を測定した。また、実施例3、実施例4及び比較例3では、導波管の変わりに高周波プローブを用いて測定した。
測定すべき特性を伝送損失として測定した結果を図19〜図21に示す。これらのグラフに示す特性は、伝送線路及び伝送線路電磁結合構造を介した入力側(一方の孔)と出力側(他方の孔)との間の伝送損失である。
図19は、実施例1及び比較例1の高周波特性の測定結果を対比的に示すグラフである。図19において、G1は、実施例1における入力側と出力側との間の伝送損失を示す。R1は、比較例1における入力側と出力側との間の伝送損失を示す。
図20は、実施例1、実施例2、及び比較例2の高周波特性の測定結果を対比的に示すグラフである。図20において、G1は、実施例1における入力側と出力側との間の伝送損失を示す。G2は、実施例2における入力側と出力側との間の伝送損失を示す。R2は、比較例2における入力側と出力側との間の伝送損失を示す。
また、導波管を接続して測定した実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の71GHz時の特性をそれぞれ下記の表1に示す。
Figure 0006136348
図21は、実施例及び比較例の高周波特性の測定結果を示すグラフである。図21において、G3は実施例3における入力側と出力側との間の伝送損失を示し、G4は実施例4における入力側と出力側との間の伝送損失を示す。R3は、比較例3における入力側と出力側との間の伝送損失を示す。また、プローブを用いて測定した実施例3、実施例4、及び比較例3の71GHz時の特性をそれぞれ下表2に示す。
Figure 0006136348
[考察]
図19に示したG1、あるいは表1に示した通り、実施例1の伝送損失は−5.82dBあり、図19に示したR1、あるいは表1に示した比較例1よりも伝送損失が小さかった。
図20に示したG1、あるいは表1に示した通り、実施例1の伝送損失は−5.82dBあり、図20に示したR2、あるいは表1に示した比較例2よりも伝送損失が小さかった。また、図20のG2あるいは表1の実施例2の測定結果は、−4.80dBであり、実施例1よりもさらに小さかった。
図21に示したG3、あるいは表2に示した通り、実施例3の伝送損失は−2.19dBあり、図21に示したR3、あるいは表2に示した比較例3よりも伝送損失が小さかった。また、表2の実施例4の測定結果は、−2.30dBであり、実施例3と同程度であった。
上述した測定結果から、特殊な加工をした導波管を用いなくても一般的な多層伝送線路板の製造工程で製作が可能であり、簡便な伝送線路電磁結合構造を得られる。また、多層伝送線路板に形成したスロットを用いた構造よりも変換ロスを小さくすることができ、さらに誘電特性に優れる材料を用いることにより伝送損失の低減が可能である。
また、実施例3及び比較例3に示した構造において、それぞれ同一のマイクロストリップアンテナ5を接続した場合の特性を比較した。図22(a)は、実施例3に示した多層伝送線路板1Jにマイクロストリップアンテナ5を接続した変形構造の分解斜視図である。図22(b)は、図22(a)におけるH−H線を通る垂直断面図である。ただし、図22(a)及び(b)では、図14(a)及び(b)に示した多層伝送線路板の、第4導体層12aを含む片側半分のみしか示していない。
また、図23(a)は、比較例3に示した多層伝送線路板1Nにマイクロストリップアンテナ5を接続した変形構造の分解斜視図である。図23(b)に、図23(a)におけるG−G線を通る垂直断面図を示す。ただし、図23(a)及び(b)では、図18(a)及び(b)に示した多層伝送線路板の、第4導体層12aを含む片側半分のみしか示していない。
そして、図22(a)、図23(a)に示したそれぞれの変形構造において電力を供給し、供給された電力が第4導体層12、電磁結合構造、及び第3導体層11を介して伝播し、第3導体層11の端部に接続された一辺1mmの方形のマイクロストリップアンテナ5から放出される際の放出電力を計算して比較した。電力放射計算に関しては、電磁界シミュレータ(有限要素法)を用いた。
71GHzにおけるマイクロストリップアンテナ5の利得を計算した結果を表3に示す。
Figure 0006136348
表3の結果から、同じ特性のマイクロストリップアンテナ5を接続した場合においても、スロット構造を用いた従来構造の場合よりも良好な特性を得られることが分かる。すなわち、一般的な多層伝送線路板の製造工程で製作が可能あり簡便な構造を有する伝送線路電磁結合構造、この電磁結合構造を有する多層伝送線路板、及びアンテナ一体型の高周波モジュール等を得ることができる。
1…多層伝送線路板、2…金属膜、11、12、12a、12b、16〜19、41、42…導体層、21〜23、26、27…誘電体層、3…孔、4…誘電体、5…マイクロストリップアンテナ(パッチパターン)、6…導体パッチ、7…取り付け穴、C…トリプレート線路、D…半導体チップ、E…受動部品、F、F1、F2…導波管、S、S1〜S4…スロット、S11、S12…追加スロット

Claims (10)

  1. マイクロ波帯域で使用される多層伝送線路板であって、
    誘電体により構成される第1の層と、
    前記第1の層上に設けられた外側導体層と、
    前記第1の層の前記外側導体層とは反対側の面上に設けられた、少なくとも導体層を有する第2の層と、を備え、
    前記第1の層を構成する前記誘電体は、(A)スチレンユニットを有する飽和型熱可塑性エラストマと、(B)エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分と、を含有し、且つ、前記(A)成分の含有量Wと前記(B)成分の含有量Wとの質量比W/Wが0.430〜5.000である樹脂組成物からなり、
    前記第2の層は、一対の導体層間に誘電体層が設けられた積層体、又は、導体層と誘電体層とが、両表面に前記導体層が配置されるように交互に複数積層された積層体からなり、該積層体は、その積層方向に貫通する貫通孔を有し、該貫通孔は、前記積層体における両表面の前記導体層同士が電気的に接続されるように内部に導体を有しており、
    前記外側導体層及び導体層のうち、前記外側導体層のみが、前記貫通孔の開口部と、多層伝送線路板の積層方向からみて少なくとも一部が重なるように設けられている、
    多層伝送線路板。
  2. 前記樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテルの含有量が、前記(A)成分及び前記(B)成分の合計100質量部に対して10質量部以下である、請求項1に記載の多層伝送線路板。
  3. 前記(A)成分が、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体を含有する、請求項1又は2に記載の多層伝送線路板。
  4. 前記(B)成分が、シアネートエステル樹脂を含有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の多層伝送線路板。
  5. 前記樹脂組成物が、さらに(C)酸化防止剤を含有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の多層伝送線路板。
  6. 前記外側導体層は、配線部と該配線部よりも幅が広いパッチ部とを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の多層伝送線路板。
  7. マイクロ波帯域で使用される電磁結合モジュールであって、
    多層伝送線路板と、電気部材と、を備え、
    前記多層伝送線路板は、
    誘電体により構成される第1の層と、
    前記第1の層上に設けられた外側導体層と、
    前記第1の層の前記外側導体層とは反対側の面上に設けられた第2の層と、を備え、
    前記第1の層を構成する前記誘電体は、(A)スチレンユニットを有する飽和型熱可塑性エラストマと、(B)エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分と、を含有し、且つ、前記(A)成分の含有量Wと前記(B)成分の含有量Wとの質量比W/Wが0.430〜5.000である樹脂組成物からなり、
    前記第2の層は、一対の導体層間に誘電体層が設けられた積層体、又は、導体層と誘電体層とが、両表面に前記導体層が配置されるように交互に複数積層された積層体からなり、該積層体は、その積層方向に貫通する貫通孔を有し、該貫通孔は、前記積層体における両表面の前記導体層同士が電気的に接続されるように内部に導体を有しており、
    前記多層伝送線路板における前記外側導体層と前記電気部材とが電磁結合され、
    前記多層伝送線路板の、前記外側導体層とは反対側の面上に前記電気部材が実装されており、
    前記電気部材が前記貫通孔を覆うように設けられている、
    電磁結合モジュール。
  8. 前記電気部材が、アンテナを有する半導体チップであり、前記アンテナが、前記多層伝送線路板の前記積層体における前記貫通孔と重なる位置に配置されている、請求項7に記載の電磁結合モジュール。
  9. 前記電気部材が、導波管であり、該導波管は、その開口の中心が、前記多層伝送線路板の前記積層体における前記貫通孔の中心と一致するように配置されている、請求項7に記載の電磁結合モジュール。
  10. マイクロ波帯域で使用されるアンテナモジュールであって、
    多層伝送線路板と、電気部材と、を備え、
    前記多層伝送線路板は、
    誘電体により構成される第1の層と、
    前記第1の層上に設けられた第2の層と、
    前記第1の層上に設けられた外側導体層と、を備え、
    前記第1の層を構成する前記誘電体は、(A)スチレンユニットを有する飽和型熱可塑性エラストマと、(B)エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分と、を含有し、且つ、前記(A)成分の含有量Wと前記(B)成分の含有量Wとの質量比W/Wが0.430〜5.000である樹脂組成物からなり、
    前記第2の層は、一対の導体層間に誘電体層が設けられた積層体、又は、導体層と誘電体層とが、両表面に前記導体層が配置されるように交互に複数積層された積層体からなり、該積層体は、その積層方向に貫通する貫通孔を有し、該貫通孔は、前記積層体における両表面の前記導体層同士が電気的に接続されるように内部に導体を有しており、
    前記多層伝送線路板における前記外側導体層がマイクロストリップアンテナを含むとともに、前記多層伝送線路板の、前記外側導体層とは反対側の面上に前記電気部材が実装されており、
    前記多層伝送線路板における前記外側導体層と前記電気部材とが電磁結合され、前記電気部材と前記マイクロストリップアンテナとが接続され、
    前記電気部材が前記貫通孔を覆うように設けられている、
    アンテナモジュール。
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