JP6135595B2 - 耐衝突性に優れた鋼板の高能率製造方法 - Google Patents

耐衝突性に優れた鋼板の高能率製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、船舶等の大型構造物に使用される鋼板の製造方法に関し、特に船舶の衝突時に衝突エネルギーを吸収し船体の破損を抑制する、高い一様伸びを有する、耐衝突性に優れた鋼板の高能率製造方法に関するものである。
近年、大型タンカーの座礁や衝突が原因で生じる油流出による環境汚染が問題となっている。これらの事故による油流出を防止するために、船殻の二重構造化等の船体構造面からの改善が行われている。
しかし、船体用鋼板についてはいくつか対応策が検討されているものの十分ではない。例えば、船体用鋼板面からの取り組みとして、衝突時のエネルギーを鋼板自体に多く吸収させることが提案されているが、未だ十分な実用段階には達していない。
鋼板が破断までに吸収するエネルギーは、鋼板の強度と伸びの積から決定される。一般に、船体用鋼板においては設計上の要求から必要な降伏応力が決められており、使用する部位に応じて鋼板の強度等級が選択される。このため、必要以上の強度を持つ鋼板は特に必要とされない。また、強度を向上させるための合金元素の添加はコスト上昇や溶接性劣化の原因になる。このため、強度増加による吸収エネルギーの向上は好ましくない。したがって、鋼板が吸収するエネルギーを大きくするには伸び(特に、一様伸び)を大きくすることが望ましい。
以上の観点から、特許文献1には、フェライト相を主体とし、フェライト相と硬質相とからなる組織とすることで、一様伸びを高めて、船舶の衝突時のエネルギー吸収性能を改善した鋼板およびその製造方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1の製造方法では、第1段の冷却の後、5秒以上の放冷を行い、その後、第2段の冷却を行うため、製造に時間がかかる。そこで、さらに能率良く耐衝突性に優れた鋼板を製造する方法が望まれている。すなわち、第1段の冷却と第2段の冷却の間の放冷時間を短くできれば、鋼板の製造効率が大幅に向上することになる。
特開2011−252201号公報
本発明は、かかる事情に鑑み、合金元素の添加等によるコス卜の増加や、船体構造設計の変更なしに、機械的特性に優れるとともに、耐衝突性に優れた鋼板を能率良く製造する方法を提供することを目的とする。
特に、フェライト相を主体とし、フェライト相と硬質相とからなる組織とすることで、一様伸びを高めて上記エネルギー吸収性能を改善した鋼板を2段冷却で製造するに際し、第1段の冷却と第2段の冷却との間の放冷時間を短くし、製造効率を高めることを目的とする。
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]鋼組成が、質量%で、C:0.05〜0.16%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.8〜1.6%、Sol.Al:0.002〜0.07%、Nb:0.005〜0.05%を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、Ceq≦0.36を満たす鋼素材を加熱し、次いで、圧延中の一部または全部のパス間において、鋼板平均冷却速度15〜300℃/秒で急冷しつつ、900℃以下の累積圧下率が20%以上、圧延終了温度がAr以上850℃以下の条件で、鋼素材から鋼板の圧延を行い、該圧延終了後、第1段の冷却として、冷却開始温度が鋼板平均温度でAr以上、平均冷却速度が10℃/秒以上、冷却停止温度が(Ar−90)℃以上(Ar−70)℃以下の条件の冷却を行い、次いで、前記第1段の冷却終了後、1秒以上4秒以内に開始する第2段の冷却として、平均冷却速度が10℃/秒以上、冷却停止温度が300℃以上650℃以下の条件で冷却を行うことを特徴とする耐衝突性に優れた鋼板の高能率製造方法。
ただし、Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15であり、式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。
[2]前記鋼組成として、さらに、質量%で、Ti:0.003〜0.03%を含有することを特徴とする[1]に記載の耐衝突性に優れた鋼板の高能率製造方法。
[3]前記鋼組成として、さらに、質量%で、Cr:0.1〜0.5%、Mo:0.02〜0.3%、V:0.01〜0.08%及びCu:0.1〜0.6%の中から選択される1種以上を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の耐衝突性に優れた鋼板の高能率製造方法。
[4]前記鋼組成として、さらに、質量%で、Ni:0.1〜0.5%を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の耐衝突性に優れた鋼板の高能率製造方法。
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%は、すべて質量%である。
本発明によれば、通常の船体用鋼板とほぼ同じ成分で、機械的特性に優れるとともに、一様伸びが高く耐衝突性に優れた鋼板を能率良く製造できる。その結果、合金元素の添加等によるコストの増加なしに、船舶の衝突時のエネルギー吸収性能に優れた鋼板を迅速に提供可能で、産業上その効果は極めて大きい。また、大型タンカーの座礁や衝突による油流出を防止するという観点から、環境保護の効果も極めて大きい。
なお、機械的特性に優れるとは、実施例に記載の通り、YS≧355MPa、TS≧490MPa、一様伸び≧20%、vTrs≦0℃を意味する。
以下に、本発明の詳細を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
1)鋼組成
C:0.05〜0.16%
Cは強度を確保するために必要である。しかし、C含有量が0.05%未満ではその効果が十分でなく、C含有量が0.16%を超えるとフェライト主体の組織が得られず一様伸びが劣化する。よって、C含有量は0.05%〜0.16%とする。
Si:0.1〜0.5%
Siは製鋼段階の脱酸材および強度向上元素として必要である。しかし、Si含有量が0.1%未満ではその効果が十分でなく、Si含有量が0.5%を超えると延性が劣化する。よって、Si含有量は0.1〜0.5%とする。
Mn:0.8〜1.6%
Mnは強度を確保するために必要である。Mn含有量が0.8%未満ではその効果が十分でなく、Mn含有量が1.6%を超えるとフェライト主体の組織が得られない。よって、Mn含有量は0.8〜1.6%とする。好ましくは1.0〜1.5%である。
Sol.Al:0.002〜0.07%
Alは脱酸のため添加する。Sol.Al含有量が0.002%未満の場合はその効果が十分でなく、Sol.Al含有量が0.07%を超えると鋼板の表面疵が発生し易くなる。よって、Sol.Al含有量は0.002〜0.07%とする。
Nb:0.005〜0.05%
Nbは、オーステナイト再結晶を強く抑制する元素である。本発明では、第1段の冷却と第2段の冷却との間に4秒を超える放冷時間を設けることなく、フェライト変態を起こさせ、所望のフェライト量を確保する必要がある。オーステナイト結晶粒界は、フェライトの核生成サイトとして作用するため、オーステナイト結晶粒径が小さいほど、結晶粒界面積が大きくなり、フェライト変態が起こりやすい。このため、Nbを添加することで、熱間圧延中および熱間圧延後のオーステナイト再結晶を抑制して、オーステナイト結晶粒を小さくすることが、第1段の冷却と第2段の冷却との間に4秒を超える放冷時間を設けることなく、フェライト変態を起こさせるために必要である。Nb含有量が0.005%未満では再結晶抑制効果が十分でなく、Nb含有量が0.05%を超えると溶接熱影響部の靭性が劣化する。よって、Nb含有量を0.005〜0.05%とする。
Ceq:0.36以下
Ceqが高いほど強度が高まりフェライト相の強度も高くなるため、一様伸びが低下する。Ceqが0.36を超えると一様伸びの低下が著しい。また、Ceqは溶接熱影響部の靭性の指標であり、Ceqが0.36を超えた場合、大入熱溶接の熱影響部靭性が劣化する。このため、Ceqは0.36以下とする。なお、ここで、Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15である。元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、含有しないものは0とする。
上記の元素以外の残部はFeおよび不可避不純物である。不可避不純物としては、P:0.04%以下、S:0.01%以下、N:0.008%以下等が挙げられる。
ただし、これらの成分元素に加えて、以下の合金元素を必要に応じて添加することができる。
Ti:0.003〜0.03%
本発明では、オーステナイト粒径を微細化するため、Tiを添加することができる。Tiは圧延加熱時あるいは溶接時にTiNを生成し、オーステナイト結晶粒の成長を抑制し、オーステナイト粒径を微細化する。このことにより、フェライト変態の発生を容易にする。また、オーステナイト結晶粒の微細化により、オーステナイトから変態して生成するフェライト結晶粒も微細化し、母材靭性ならびに溶接熱影響部の靭性が向上する。Ti含有量が0.003%未満ではその効果が十分でなく、Ti含有量が0.03%を超えると溶接熱影響部の靭性が劣化する。よって、Tiを添加する場合は、その含有量を0.003〜0.03%とする。
本発明では、強度を向上させるためCr、Mo、V、Cuを単独添加あるいは複合添加することができる。
Cr:0.1〜0.5%
Cr含有量が0.1%未満では強度向上の効果が十分でなく、Cr含有量が0.5%を超えると溶接性および溶接影響部の靭性が劣化する。よって、Crを添加する場合はその含有量を0.1〜0.5%とする。
Mo:0.02〜0.3%
Mo含有量が0.02%未満では強度向上の効果が十分でなく、Mo含有量が0.3%を超えると溶接性および溶接熱影響部の靭性が著しく劣化する。よって、Moを添加する場合、その含有量を0.02〜0.3%とする。
V:0.01〜0.08%
V含有量が0.01%未満では強度向上効果が十分でなく、V含有量が0.08%超えでは著しく靭性が劣化する。よって、Vを添加する場合、その含有量を0.01〜0.08%とする。
Cu:0.1〜0.6%
Cu含有量が0.1%未満では強度向上効果が十分でなく、Cu含有量が0.6%を超えるとCu割れの懸念が高まる。よって、Cuを添加する場合、その含有量を0.1〜0.6%とする。
本発明では、靭性を向上させるためNiを添加することもできる。
Ni:0.1〜0.5%
Ni含有量が0.1%未満では靭性向上効果が十分でなく、Ni含有量が0.5%を超えると鋼板コストの上昇が著しい。よって、Niを添加する場合はその添加量を0.1〜0.5%とする。
2)製造条件
本発明では、圧延条件を規定して、圧延後のオーステナイト結晶粒を微細化する。圧延においては、オーステナイト結晶粒を微細化するため、オーステナイトの未再結晶温度域であるAr以上900℃以下の温度域で加工歪を導入する。ここで、本発明の鋼板ではNbが添加されているため、再結晶温度が高く、900℃以下が未再結晶温度域である。さらに、本発明では、第1段の冷却条件を規定することで、フェライト変態が容易に生ずるようにして、第1段の冷却後に4秒を超える放冷をせずとも、所望のフェライト相分率を確保する。また、本発明では、第2段の冷却により未変態のオーステナイト相をベイナイト相及び/又はマルテンサイト相を主体とする硬質相に変態させることで、フェライト相を主体とし、フェライト相と硬質相とからなる組織になる。以上のようなことから、本発明では、耐衝突性に優れた鋼板を能率良く製造できる。圧延条件と冷却条件の規定は、本発明において重要な要件である。以上の知見をもとに完成した本発明の製造方法は以下の通りである。
鋼素材としては、通常の転炉や電炉等で所定の鋼組成の鋼を溶製し、連続鋳造等により得られた鋳片を圧延に用いることができる。
上記の鋼組成を有する鋼素材に対して、加熱し、次いで、圧延中の一部または全部のパス間において、鋼板平均冷却速度15〜300℃/秒で急冷しつつ、900℃以下の累積圧下率が20%以上、圧延終了温度がAr以上850℃以下の条件で、上記鋼素材から鋼板の圧延を行い、該圧延終了後、第1段の冷却として、冷却開始温度が鋼板平均温度でAr以上、平均冷却速度が10℃/秒以上、冷却停止温度が(Ar−90)℃以上(Ar−70)℃以下の条件の冷却を行い、次いで、第1段の冷却終了後、1秒以上4秒以内に開始する第2段の冷却として、平均冷却速度が10℃/秒以上、冷却停止温度が300℃以上650℃以下の条件で冷却を行う。
以下、製造条件について、詳細に説明する。
加熱
「上記の鋼組成を有する鋼に対して、加熱」の「加熱」とは、鋼素材(例えば、スラブ)の加熱を意味する。通常の加熱の目的は、圧延可能な温度にすること、および、組織、組成の均一化である。本発明では、これらに加えて、加熱によってNb炭化物、Nb窒化物などを溶解し、Nbを固溶させることを目的とする。これらの観点から加熱温度は1050〜1250℃が好ましい。
圧延条件:圧延中の一部または全部のパス間において鋼板平均冷却速度15〜300℃/秒で急冷、900℃以下の累積圧下率:20%以上、圧延終了温度:Ar以上850℃以下
圧延中の一部または全部のパス間において、圧延と同時に急冷を行う。本発明では、圧延しながらパス間で冷却を行うため、圧延機の冷却待ち時間がなく、圧延時間を短縮して、鋼板(厚鋼板)の製造効率を高めることができる。パス間の鋼板平均冷却速度は15℃/秒〜300℃/秒とする。パス間の鋼板平均冷却速度を15℃/秒〜300℃/秒にすることで、想定される全ての板厚の鋼板について、冷却待ち時間をなくして目的の圧延終了温度でかつ所定板厚まで連続して圧延を行うことができる。そのため、圧延時間の短縮ができ、生産性の向上を図ることができる。鋼板平均冷却速度が15℃/秒未満では本発明のパス間急冷を行う能力が不足し、300℃/秒超えでは必要以上の能力を有する急冷設備となって経済的ではない。
なお、鋼板平均温度は鋼板中の板厚1/4の部分の温度を意味し、鋼板の形状と表面温度、冷却条件等が与えられた場合に、シミュレーション計算等により求められたものを用いることができる。鋼板平均冷却速度は、冷却開始時の鋼板平均温度から冷却停止時の鋼板平均温度を引いたものを冷却時間で割って算出された値を指す。
累積圧下率については、900℃以下の累積圧下率が20%以上である。これにより変態後のフェライト結晶粒が十分微細化してフェライト変態が容易に生じるようになる。また、圧延中の累積圧下率をAr以上900℃以下の温度域で20%以上とすることが好ましい。なお、Arは、例えば、Ar=910−310C−80Mn−20Cu−15Cr−55Ni−80Mo(℃、元素記号は各元素の含有量(質量%)を意味する。)として求められる。
圧延終了温度はAr以上850℃以下とする。圧延終了温度が850℃を超えると、圧延終了後にオーステナイト結晶粒が成長し、オーステナイト結晶粒が粗大化するため、フェライト変態が起こりにくくなる。このため、圧延終了温度は850℃以下とする。好ましくは840℃以下である。また、圧延終了温度がAr未満となると、フェライト変態が圧延中に起こる。圧延中に生成したフェライト粒は、圧延後、第1段の冷却前および冷却中に成長し、第1段の冷却後に生成するフェライト結晶粒よりも大きくなる。その結果、フェライト結晶粒径が不均一になり、一様伸びが低下する。このため、圧延終了温度は、Ar以上とする。
第1段の冷却:冷却開始温度:Ar以上、鋼板平均冷却速度:10℃/秒以上、冷却停止温度:(Ar−90)℃以上(Ar−70)℃以下
圧延終了後の第1段の冷却は急冷である。第1段の冷却(急冷)により、フェライト相の相分率、硬さ、平均粒径を所定のものにする。
冷却開始温度はAr以上とする。冷却開始温度がAr未満となると第1段の冷却(急冷)以前にフェライトが生成するため、フェライト結晶粒径が不均一な組織となり一様伸びが低下する。このため、冷却開始温度はAr以上とする。
鋼板平均冷却速度は、10℃/秒未満であると、冷却中にフェライト変態が開始するため、フェライト相分率が高くなりすぎ、硬質相が不足して強度不足となる。このため鋼板平均冷却速度は10℃/秒以上とする。ただし、70℃/秒を超えると冷却停止温度を制御するのが難しくなるため、鋼板平均冷却速度(急冷速度)は70℃/秒以下が好ましい。
冷却停止温度は(Ar−90)℃以上(Ar−70)℃以下とする。第1段の冷却停止直後にフェライト変態を起こし、短時間でフェライト変態を完了させる必要がある。そこで、冷却停止温度は、フェライト変態が最も短時間で起こるフェライトノーズの近傍である、(Ar−90)℃以上(Ar−70)℃以下に設定する。この温度域よりも冷却停止温度が高くとも、低くとも、フェライト変態が遅れるのでフェライト相分率が低下し、目標のフェライト相分率が得られない。
第2段の冷却:第1段の冷却停止から1秒以上4秒以内に冷却開始、鋼板平均冷却速度:10℃/秒以上、冷却停止温度:300℃以上650℃以下
第2段の冷却(急冷)は、第1段の冷却によりフェライト相に変態しなかった未変態のオーステナイト相を急冷して、ベイナイト相および/またはマルテンサイト相を主体とする硬質相を生成するために行う。
第2段の冷却は、第1段の冷却停止から1秒以上4秒以内に冷却を開始する。第1段の冷却停止から第2段の冷却開始までは放冷(空冷)である。第1段の冷却停止から4秒を超える時間、放冷すると、フェライト変態が進行してフェライト相分率が高くなりすぎ、硬質相が不足して強度が低下する。このため、第2段の冷却は、第1段の冷却停止から4秒以内に冷却を開始する。また、フェライト変態させるため、第1段の冷却停止から第2段の冷却開始までは、1秒以上の間隔を空ける必要がある。好ましくは2秒以上である。
鋼板平均冷却速度は、速いほど強度が向上する。鋼板平均冷却速度が10℃/秒未満ではフェライト変態が進行して、硬質相が得られず所定の強度が得られない。そこで、鋼板平均冷却速度を10℃/秒以上とする。なお、第1段の冷却と同様の理由で、第2段の冷却の鋼板平均冷却速度は70℃/秒以下が好ましい。
冷却停止温度は、低いほど強度が向上する。冷却停止温度を300℃未満とすると延靭性が劣化する。逆に、冷却停止温度が650℃を超えると、フェライト変態が進行して硬質相が得られず、所定の強度が得られない。そこで、冷却停止温度は300℃以上650℃以下とする。
以上により、耐衝突性に優れた鋼板が得られる。そして、以上の製造方法により製造された本発明の耐衝突性に優れた鋼板の組織は、フェライト相と硬質相とからなり、フェライト相の相分率が板厚中央部で70%以上90%以下かつ板厚表層部で50%以上90%以下、フェライト相の硬さがHv160以下、フェライト相の平均粒径が2μm以上となる。以下、鋼板の組織について、説明する。
3)鋼組織
フェライト相と硬質相
本発明の製造方法により製造された鋼板は、強度を低下させることなく、一様伸びを向上させるために、軟質相であるフェライト相と硬質相とからなる組織を有する。硬質相は主にベイナイト相および/またはマルテンサイト相からなる。
フェライト相分率:板厚中央部で70%以上90%以下かつ板厚表層部で50%以上90%以下
軟質相と硬質相の割合と一様伸びの関係を検討したところ、軟質相であるフェライト相の分率が高いほど一様伸びの向上が見られ、特にフェライト相分率が板厚中央部で70%以上、板厚表層部で50%以上のときに、一様伸びに優れることを見出した。従って、十分な一様伸びを得るにはフェライト相分率が板厚中央部で70%以上、板厚表層部で50%以上とすることが必要である。板厚表層部では、フェライト相分率がこれより低くてもよいが、板厚表層部のフェライト相分率が50%未満では一様伸びが低下する。しかし、フェライト相分率が高くなりすぎると硬質相の分率が低下し、所望の強度が得られなくなるため、フェライト相分率は板厚中央部、板厚表層部とも90%以下とする。
硬質相は主にベイナイト相、または、マルテンサイト相、あるいは、これらの混合組織からなる。また、硬質相はパーライト相を含んでいてもよい。また、変態時にフェライト相から炭素が排出されて、硬質相に濃化する。このため硬質相の分率が小さい場合には炭素濃度が高くなり、硬質相がより硬化し易くなるため、硬質相の分率による強度の変化は比較的少ない。
また、本発明では、板厚表層部を板の表面から板厚の1/10の深さまでの領域とする。この板厚表層部は、冷却時において、板厚中央部に比べて相対的に冷却速度が速くなり、硬質相が生成しやすく、一様伸びが劣化しやすい領域である。板厚全体を考慮した場合、板厚表層部のフェライト相の量は分率的にはさほど多くなく、特性的にもその影響はある程度は許容できる。しかし、板厚表層部と板厚中央部との特性差が大きくなると、板厚表層部のフェライト相の量が少ないことによる影響を無視できなくなってくる。そのため、板厚表層部についても、このようにフェライト相分率を確保する必要がある。板厚中央部は鋼板の表層部以外の領域である。
フェライト相の硬さ:HV160以下
一般に2相以上の組織を有する鋼板においては、軟質相が主に延靭性向上の役割を担い、硬質相が主に強度向上の役割を担う。両相の差が大きい方が軟質相への歪の集中が大きくなり、一様伸びに対する軟質相の寄与が大きくなる。フェライト相への歪集中を大きくするためには、フェライト相の硬さをビッカース硬さでHV160以下にしなければならない。以上より、フェライト相の硬さがHV160以下で一様伸びが優れるため、HV160以下とする。
フェライト相の平均結晶粒径:2μm以上
また、一様伸びはフェライト相の結晶粒径が小さくなるほど低下するため、2相以上の組織を有する鋼板のフェライト結晶粒径の影響を調査した。その結果、フェライト相の平均結晶粒径が2μm未満になると急速に一様伸びが低下することを確認した。このため、フェライト相の平均結晶粒径は2μm以上とする。
船舶等に使用される鋼板においては、靭性も重要な機械的性質の一つである。本発明が対象にしているフェライト相主体の組織の鋼板においては、靭性は主にフェライト相の平均結晶粒径の影響を受ける。本発明では、望ましくはフェライト相の平均結晶粒径を40μm以下にする。フェライト相の平均結晶粒径の制御は、圧延工程で圧下率を一定値以上にすること等により可能である。
なお、上記鋼組織は以下の測定方法により確認することができる。本発明におけるフェライト相、硬質相の相分率とは、観察面積に占める面積の割合のことである。上記相分率は、例えば、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面を研磨後、3%ナイタールで腐食し、SEM(走査電子顕微鏡)を用いて2000倍の倍率で10視野観察し、市販の画像処理ソフトを用いて求めることができる。また、上記の方法によりフェライト相と認識された組織について、フェライト相の平均結晶粒径を画像処理ソフトにより測定することができる。
また、フェライト相の硬さはマイクロビッカース硬度計により測定することで、確認することができる。
以下、実施例について説明する。表1に実施例に用いた供試鋼の成分を示す。表示しない残部は鉄及びS、P、N以外の不可避不純物である。表1における鋼種A〜Dは本発明を満足する成分組成の鋼で、鋼種EはCeqが発明の範囲外(上限0.36%超)となっている。
Figure 0006135595
これらの鋼組成を有する鋳片を加熱後、板厚20〜25mmの鋼板に圧延して種々の冷却パターンで冷却した。表2に製造条件を示す。鋼番1、8〜10は本発明の製造条件を満足する本発明例であり、鋼番2〜7、11は本発明の製造条件又は成分組成から外れている比較例である。
Figure 0006135595
以上により得られた鋼板の組織をSEMにより観察し、板厚中央部と板厚表層部のフェライト相の分率、フェライトの結晶粒径(平均粒径)を測定した。フェライト相の硬さはマイクロビッカース硬度計により測定した。
また、機械的特性として、強度、一様伸び、靭性を求めた。引張試験は、全厚のJIS1B号試験片を、鋼板の圧延方向と直角の方向に採取して行った。一様伸びは、最大応力時の伸びとして評価した。衝撃試験は、JIS4号標準試験片を、圧延方向と平行に、かつ表層に寄せて(鋼板の表面と試験片の端面との間隔が2mm以下)採取して行った。靭性は、脆性遷移温度;vTrsにより評価した。表3に鋼板の組織および機械的特性を示す。
Figure 0006135595
表3に示すように、本発明例は、いずれも目標特性とするYS≧355MPa、TS≧490MPa、一様伸び≧20%、vTrs≦0℃を満足している。
これに対して、比較例については、TSまたは一様伸びが目標を満足しない。
鋼番2は900℃以下の累積圧下率が小さく、オーステナイト結晶粒が大きく、フェライト変態が起こりにくいため、フェライト相分率が低く、一様伸びが低い。鋼番3は圧延終了温度が高いため、オーステナイト結晶粒が大きく、フェライト変態が起こりにくいため、フェライト相分率が低く、一様伸びが低い。鋼番4は第1段冷却の冷却速度が小さく、第1段冷却中にフェライト変態が起こり、フェライト相分率が高すぎ、TSが低い。
鋼番5は第1段冷却の冷却停止温度が高く、フェライト変態が遅れ、フェライト相分率が低すぎ、一様伸びが低い。鋼番6は第1段冷却の冷却停止温度が低く、フェライト変態が遅れ、フェライト相分率が低すぎ、一様伸びが低い。鋼番7は第1段冷却から第2段冷却開始までの時間が長く、第1段冷却フェライト相分率が低すぎ、一様伸びが低い。鋼番11はCeqが高いため、フェライト相の硬度が高く、一様伸びが低い。

Claims (4)

  1. 鋼組成が、質量%で、C:0.05〜0.16%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.8〜1.6%、Sol.Al:0.002〜0.07%、Nb:0.005〜0.05%を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、Ceq≦0.36を満たす鋼素材を加熱し、
    次いで、圧延中の一部または全部のパス間において、鋼板平均冷却速度15〜300℃/秒で急冷しつつ、900℃以下の累積圧下率が20%以上、圧延終了温度がAr以上850℃以下の条件で、前記鋼素材から鋼板の圧延を行い、
    該圧延終了後、第1段の冷却として、冷却開始温度が鋼板平均温度でAr以上、平均冷却速度が10℃/秒以上、冷却停止温度が(Ar−90)℃以上(Ar−70)℃以下の条件の冷却を行い、
    次いで、前記第1段の冷却終了後、1秒以上4秒以内に開始する第2段の冷却として、平均冷却速度が10℃/秒以上、冷却停止温度が300℃以上650℃以下の条件で冷却を行うことを特徴とする耐衝突性に優れた、YS≧355MPa、TS≧490MPa、一様伸び≧20%、vTrs≦0℃である鋼板の高能率製造方法。
    ただし、Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15であり、式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、含有しないものは0とする。
  2. 前記鋼組成として、さらに、質量%で、Ti:0.003〜0.03%を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐衝突性に優れた鋼板の高能率製造方法。
  3. 前記鋼組成として、さらに、質量%で、Cr:0.1〜0.5%、Mo:0.02〜0.3%、V:0.01〜0.08%及びCu:0.1〜0.6%の中から選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐衝突性に優れた鋼板の高能率製造方法。
  4. 前記鋼組成として、さらに、質量%で、Ni:0.1〜0.5%を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐衝突性に優れた鋼板の高能率製造方法。
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