JP6135527B2 - めっき用樹脂成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、意匠表面(以下、金属めっきが施される表面のことを意味する)に金属めっき層が形成されるめっき用樹脂成形体に関するものである。
自動車にはオーナメント、グリル、ホイールキャップ、レジスター、バンパーなど、金属めっき層を有する部材が多く用いられている。このような部材は、射出成形などによって樹脂基材を作成し、その意匠表面にクロムなどの金属めっきを施すことで製造されている。金属めっきは電解めっきによって行われるが、樹脂基材は絶縁体である場合が多く、電解めっきが困難であることが多い。
そこで樹脂基材に無電解めっきを施してニッケルなどの導電金属層を形成し、その後に電解めっきすることが行われている。あるいはめっきダイレクト工法により、無電解めっき処理を省略して電解めっきすることも行われている。
ところが樹脂成形体に対するめっき被膜の付着性が問題になることが多く、付着性を改良すべく種々の方法が提案されている。例えば特開2011−063855号公報には、樹脂基材をオゾン溶液で処理して表面改質層を形成し、プラズマなどのエネルギーを付与して表面改質層の表層を除去した後に無電解めっきする方法が記載されている。
また特開2007−327131号公報には、樹脂基材の表面を陰イオン性界面活性剤および有機溶剤を含む前処理溶液で処理し、次いで陰イオン性界面活性剤および貴金属イオンを含む貴金属イオン含有処理液で処理し、次いで被めっき材を加熱処理し、次いでアルカリ性水溶液で処理し、その後に無電解めっき処理する方法が記載されている。
これらの方法によれば、クロム酸などの有害物質を用いずにめっき被膜の付着性が向上する。
特開2011−063855号公報 特開2007−327131号公報
ところが上記公報に記載の技術で製造されためっき被膜付き樹脂成形品であっても、温度差の大きな熱履歴が作用した場合などには、めっき被膜に膨れや剥がれが生じることがあった。これは、金属めっき被膜と樹脂基材との熱膨張係数の差が大きいためと考えられている。また上記公報に記載の技術では、クロム酸などによるエッチング処理に比べて工数が大きく生産性が低いという不具合もあった。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、めっき被膜の付着性が格段に向上するめっき用樹脂成形体を提供することを目的とする。
上記課題を解決できる本発明のめっき用樹脂成形体の特徴は、意匠表面と、意匠表面と反対側の裏面とをもち、射出成形によって形成された意匠表面に金属めっき層が形成されるめっき用樹脂成形体であって、全体にブタジエンゴム粒子が分散し、意匠表面から5μmの深さまでの範囲に存在するブタジエンゴム粒子は、断面におけるアスペクト比(長径方向長さ/短径方向長さ)の平均値が1.9以下であることにある。
射出成形によって形成されたABS樹脂成形体にめっき被膜を形成し、その剥離状態を調査したところ、めっき被膜と樹脂基材との界面から剥離するのではなく、樹脂基材のめっき被膜が形成された表層と内層との間で剥離することが明らかとなった。すなわち界面破壊ではなく、凝集破壊によって剥離することがわかった。
そこで樹脂成形体のめっきが施される表面を研磨などによって所定深さまで除去し、それらにめっき被膜を形成して付着強度を測定する試験を行った。結果を図1に示す。図1に示すように研磨量が多いほど、つまり表面から深く除去するほど付着強度が大きく向上することが明らかとなった。すなわち射出成形法によって成形された樹脂成形体は、表層と内層とで組織が異なり、表層には脆化層が形成されていることがわかった。
さらに脆化層の構造を調査したところ、表面に近い部位ほど含まれるブタジエンゴム粒子の形状が扁平形状となっていることが明らかとなった。これは、型面に近い部位ほど冷却されやすいために、射出成形時の剪断応力によって扁平状に弾性変形したブタジエンゴム粒子が弾性力によって元の形状に復元される前に固定化されたためと考えられる。このように扁平状となったブタジエンゴム粒子は、短径方向の応力に対する強度が小さく、そのためめっき被膜の付着強度が小さくなると考えられる。
したがって、脆化層に含まれるブタジエンゴムの形状を非扁平状とすればめっき被膜の付着性が向上することが推察され、鋭意研究を重ねた結果、本発明が完成された。
すなわち本発明のめっき用樹脂成形体によれば、意匠表面から5μmの深さまでの範囲に存在するブタジエンゴム粒子は、断面におけるアスペクト比(長径方向長さ/短径方向長さ)の平均値が1.9以下の非扁平形状である。したがってブタジエンゴム粒子の短径方向の応力に対する強度が向上するため、めっき被膜の付着強度が向上する。
樹脂成形体の意匠表面に対する研磨量とめっき被膜の剥離強度との関係を示すグラフである。 本発明の一実施例で用いた射出成形金型を一部断面で示す模式的な説明図である。 本発明の一実施例で用いた射出成形金型の第二型面の要部を示す斜視図である。 本発明の一実施例で用いた射出成形金型の第二型面の要部を示す模式的な平面図である。 本発明の一実施例の樹脂成形体において一般型面部で形成された意匠表面部分の断面を示すTEM写真である。 本発明の一実施例の樹脂成形体において第二型面の段差部で形成された意匠表面部位の断面を示すTEM写真である。 本発明の樹脂成形体を形成できる射出成形金型の第二型面の要部を示す模式的な平面図である。 本発明の樹脂成形体を形成できる射出成形金型の第二型面の要部を示す模式的な平面図である。 本発明の樹脂成形体を形成できる射出成形金型の第二型面の要部を示す模式的な平面図である。 本発明の樹脂成形体を形成できる射出成形金型の第二型面の要部を示す模式的な平面図である。
本発明のめっき用樹脂成形体は、意匠表面と、意匠表面と反対側の裏面とをもち、意匠表面に金属めっき層が形成される。さらに本発明のめっき用樹脂成形体は、全体にブタジエンゴム粒子が分散し、意匠表面から5μmの深さまでの範囲に存在するブタジエンゴム粒子は、断面におけるアスペクト比(長径方向長さ/短径方向長さ)の平均値が1.9以下である。意匠表面から5μmの深さまでの範囲に存在するブタジエンゴム粒子の平均アスペクト比が1.9を超えると、意匠表面に形成される金属めっき層の付着性が低下する。意匠表面から5μmの深さまでの範囲に存在するブタジエンゴム粒子の平均アスペクト比は1.0に近いほど好ましい。
すなわち本発明のめっき用樹脂成形体は、ブタジエンゴム粒子を含む樹脂から形成されたものであり、この樹脂としてはABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、PC/ABSポリマーアロイなどを用いることができる。
意匠表面から5μmの深さまでの範囲に存在するブタジエンゴム粒子の平均アスペクト比を1.9以下とするには、成形後に意匠表面を所定深さまで除去する方法がある。除去方法としては、サンドペーパーや超音波による研磨、サンドブラスト処理、化学エッチング法などがある。所定深さとしては、射出成形時の樹脂流速などによって異なるが、例えば20cm/秒程度の樹脂流速で成形された成形体であれば、3〜5μm以上の深さまで除去すれば十分である。
意匠表面を加熱して溶融状態とすれば、ブタジエンゴム粒子は自身の弾性力で球状に回復するため、意匠表面から5μmの深さまでの範囲に存在するブタジエンゴム粒子の平均アスペクト比を1.9以下とすることができる。しかし樹脂成形体に塑性変形が生じる場合がある。
また射出成形時の樹脂流速を10cm/秒以下まで遅くしても、意匠表面から5μmの深さまでの範囲に存在するブタジエンゴム粒子の平均アスペクト比を1.9以下とすることができる。しかしこの場合は、成形サイクルが長くなって生産性が低下してしまう。
そこで、以下のような金型を用いて射出成形することが好ましい。すなわちこの射出成形用金型は、第一型面と第二型面とを備えている。第一型面とは、樹脂成形体の意匠表面、つまり金属めっきが施される表面を成形する型面をいう。また第二型面は、意匠表面と反対側である樹脂成形体の裏面を成形する型面であり、第一型面と対向する型面をいう。第一型面と第二型面は、一方を固定型の型面とし他方を可動型の型面とすることができる。また第二型面を、スライドコアの型面とすることもできる。
第二型面には、射出成形時に第一型面と第二型面とで形成されるキャビティを流れる溶融樹脂の主たる流動方向に沿って、一般型面部から段差面を伴って一段高く又は低く延び次いで一般型面部に連続する段差部が複数個形成され、段差面は主たる流動方向に対して直線状に交差し、段差部は主たる流動方向に対して交差する方向にも互いに間隔を隔てて複数個形成されている。
この射出成形用金型を用いて成形すると、第二型面の段差部によって成形時の溶融樹脂の流動が変化し、その影響が第一型面で成形される意匠表面の表層にも及ぶ。そのため意匠表面から5μmの深さまでの範囲に存在するブタジエンゴム粒子の平均アスペクト比を1.9以下とすることができ、脆化層の形成が抑制されるため、意匠表面に形成されるめっき被膜の付着性が向上する。
段差部による作用を効果的に発現させるためには、第一型面と第二型面との間隔が重要であり、その間隔が大きすぎると段差部による作用が奏されなくなると考えられる。またその間隔は、キャビティ内を流動する溶融樹脂の流速、粘度、材質などによって最適範囲が異なると考えられる。例えばABS樹脂の場合、溶融樹脂の流速が2〜150cm/secの範囲においては、上記間隔は2〜6mmの範囲が好ましく、2.5mm〜4mmの範囲が最適である。
第二型面には、射出成形時に第一型面と第二型面とで形成されるキャビティを流れる溶融樹脂の主たる流動方向に沿って、一般型面部から段差面を伴って一段高く又は低く延び次いで一般型面部に連続する段差部が複数個形成されている。段差部としては、凹溝、段差面から徐々に一般型面部に連続するテーパ段部、突条などが例示される。段差面は、第二型面の一般型面部から立ち上がる壁面としてもよいし、一般型面部から第二型面の内部へ彫り込まれた凹部の壁面としてもよい。金型加工の容易性からは、第二型面の内部へ彫り込まれた凹部の壁面を段差面とするのが好ましい。
段差部は、樹脂成形体の意匠表面のうち少なくとも金属めっきが施される範囲を成形する第一型面に対向する第二型面に形成されるが、金属めっきが施されない範囲に対向する第二型面に形成しても構わない。
一般型面部と段差面とのなす角度は、90°以上とするのが望ましい。鋭角であると、アンダーカットとなって樹脂成形体の型抜きが困難となる場合が多い。また一般型面部と段差面とは面取り状の曲面を介して連続していてもよいが、段差部を溶融樹脂の主たる流動方向と平行な平面で切断した断面において、一般型面部と段差面とはエッヂ状に交差していることが望ましい。このようにすることで、めっき被膜の付着性がさらに向上する場合がある。
段差部の深さ又は高さは、0.1mm〜0.3mmの範囲とすることが好ましい。深さ又は高さが0.3mmを超えると第一型面で成形される意匠表面にヒケが生じる場合がある。また0.1mmより浅くなると、段差部を形成した効果の発現が困難となり、めっき被膜の付着性が低下する。したがって段差部で形成される成形体の凸部の高さは、0.1mm〜0.3mmの範囲にあることが望ましい。
段差部の段差面は、溶融樹脂の主たる流動方向に対して直線状に交差している。したがって段差部で形成される成形体の凸部の断面形状は、多角形であることが好ましく、長方形、台形、平行四辺形などの四角形であるのが特に好ましい。
段差部が凹状である場合、その幅(溶融樹脂の流動方向と平行な平面で切断したときの断面幅)は、0.2mm〜1.0mmの範囲が好ましい。この幅が1.0mmを超えると、段差部の深さにもよるが、第一型面で成形される意匠表面にヒケが生じる場合がある。また0.2mmより狭くなると溶融樹脂が段差部内に進入しにくくなり、結果的に段差部を形成した効果の発現が困難となりめっき被膜の付着性が低下する。したがって段差部で形成される成形体の凸部の幅(溶融樹脂の流動方向と平行な平面で切断したときの断面幅)は、0.1mm〜0.3mmの範囲にあることが望ましい。
段差部は、キャビティを流れる溶融樹脂の主たる流動方向に沿って、一般型面部と交互に複数個形成されている。溶融樹脂の主たる流動方向に沿う方向における段差部のピッチ、すなわち段差面どうしの間隔は、2mm〜20mmの範囲が好ましい。このピッチが20mmを超えると一般型面部の範囲が広がることになり、めっき被膜の付着性が低下する。またこのピッチが2mmより小さくても、めっき被膜の付着性が低下する。3〜10mm程度が最も好ましい。
段差面は溶融樹脂の主たる流動方向に対して直線状に交差している。段差面が溶融樹脂の主たる流動方向に対して曲線状に交差していると、めっき被膜の付着性の向上が僅かとなる。溶融樹脂の主たる流動方向に対して直角に交差する平面を段差面とするのが最も好ましい。
段差部は、溶融樹脂の主たる流動方向に対して交差する方向にも互いに間隔を隔てて複数個形成されている。すなわち段差部と一般型面部とが溶融樹脂の主たる流動方向に対して垂直方向に交互に複数個形成されている。このようにすることで、溶融樹脂の流動の変化のばらつきが抑制され、めっき被膜の付着性が安定する。
溶融樹脂の主たる流動方向に対して垂直な平面で切断した断面における段差部の長さは、2mm以上とするのが好ましい。この長さが2mm未満であると、めっき被膜の付着性の向上が見込めない。溶融樹脂の主たる流動方向に対して垂直な平面で切断した断面における段差部どうしの間隔は特に制限されないが、溶融樹脂の主たる流動方向に対して垂直方向における段差部の長さと同程度の間隔とするのが好ましく、2mm以上とするのが好ましく、3mm〜20mmの範囲がより好ましい。
段差部の形状は、実施例に示したように種々の形状とすることができる。溶融樹脂の主たる流動方向は、キャビティの各部位によって異なるのが一般的であるので、各部位における流動方向に応じて段差部を形成することが好ましい。また段差部のパターンによっては、一つのパターンで複数の流動方向に対応できる場合もある。
段差部をもつ第二型面は、樹脂成形体の型抜き方向に延びる型面、あるいはスライドコアの型面とすることもできる。これらの場合、段差部がアンダーカットとなって型抜きが困難となることが想定される。そこでこれらの場合における第二型面の段差部は、樹脂成形体の型抜き方向と反対側へ又は型抜き方向へ向かって徐々に一般型面部に連続するテーパ段部とすることが好ましい。このようにすることで、樹脂成形体の型抜きを可能とすることができる。
すなわち上記射出成形用金型を用いて成形された本発明の樹脂成形体は、第一型面で成形された意匠表面と第二型面で成形された裏面とを有し、裏面に段差部が転写された複数の凸部又は凹部が形成されている。段差部の寸法やピッチを上記範囲とすることで、凸部又は凹部の体積を所定範囲以下とすることができ、意匠表面にヒケが生じたり、樹脂成形体の強度が低下するのが防止される。
本発明の樹脂成形体は、意匠表面に金属めっき被膜を形成することができる。以下、金属めっき被膜を形成する方法を説明する。
樹脂成形体は先ず洗浄、脱脂などのクリーニング処理が行われ、その後一般にエッチング処理が行われる。エッチング処理は、クロム酸、クロム酸と硫酸との混液、過マンガン酸塩などを用いて行っても良いし、オゾン溶液あるいはオゾンガスを用いることもできる。例えば、クロム酸と硫酸の混合溶液を用い、適度に加温した溶液中に樹脂成形体の少なくとも意匠表面を浸漬すればよい。エッチング処理によって構成成分のブタジエンゴムがクロム酸の酸化作用により溶出し、樹脂表面に孔径1〜2μm程度のアンカー部が形成され、また、ブタジエンが酸化分解し、カルボニル基などの極性基が付与されるため、後工程における触媒の吸着が容易になる。
エッチング処理後に、無電解めっき処理と電解めっき処理が行われる。あるいはめっきダイレクト工法により、無電解めっき処理が行われない場合もある。無電解めっき処理を行う場合、無電解めっきに先だって触媒付着処理が行われる。無電解めっきに対して触媒活性を有する金属微粒子(触媒)は、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、スズ、イリジウム、オスミウム、白金などを単独又は混合して用いることができる。これら触媒はコロイド溶液として用いることが好ましい。
触媒付着処理後、公知の方法で無電解めっき処理によってニッケル、銅などからなる導電性めっき層が形成され、その後公知の電解めっき法によりクロムなどからなる金属めっき被膜が形成される。
まためっきダイレクト工法の場合には、塩化スズで囲まれたスズ/パラジウム/コロイド溶液などのアクチベーター溶液で処理することで樹脂表面にできるだけ多くのパラジウムを吸着させる。その後、不活性のコロイドスズをパラジウム皮膜から除去するなどの導体化処理が行われ、次いで公知の電解めっき法によりクロムなどからなる金属めっき被膜が形成される。
めっきダイレクト工法の場合には、樹脂成形体の凸部は一般にめっき成長の障害となる。しかし凸部が意匠表面と反対側の裏面に存在すれば、問題となりにくい。また凸部形状を上述の寸法とすれば、めっきダイレクト工法において凸部にもめっき成長させることができる。
以下、実施例により本発明の実施態様を具体的に説明する。
(実施例1)
ABS樹脂を用い、射出速度2cm/秒、樹脂温度230℃、型温度45℃、射出圧力(保圧)50MPaの条件にて樹脂成形体を形成した。得られた樹脂成形体にクリーニング処理を行い、その後、適度に加温したクロム酸と硫酸の混合溶液中に樹脂成形体を浸漬して意匠表面にエッチング処理を行った。次いで意匠表面にPd触媒を付着させ、無電解めっき法によってニッケルめっき層を形成した。さらに電解めっき法により、ニッケルめっき層の表面に金属クロム層を形成した。
得られた金属めっき付樹脂成形品を25℃で48時間放置した後、膜物性測定装置(島津製作所社製)を用い、引張速度25mm/分、20℃の条件下にてめっき被膜の剥離強度を測定した。結果を表1に示す。
また樹脂成形体の断面をTEMにて観察し、意匠表面から5μmの深さにあるブタジエンゴム粒子のアスペクト比を測定した。結果を表1に示す。なお断面はオスミウム酸にて染色し、アスペクト比はTEM写真における3500nm×2706nmの範囲中の平均値を算出した。100nm以下の微粒子はノイズとして除いた。
(実施例2)
射出速度を8cm/秒としたこと以外は実施例1と同様にして樹脂成形体を形成し、同様に金属めっき層を形成した。めっき被膜の剥離強度とブタジエンゴム粒子の平均アスペクト比を測定し、結果を表1に示す。
(実施例3)
ABS樹脂に代えてPC/ABSポリマーアロイを用いたこと以外は実施例1と同様にして樹脂成形体を形成し、同様に金属めっき層を形成した。めっき被膜の剥離強度とブタジエンゴム粒子の平均アスペクト比を測定し、結果を表1に示す。
(比較例1)
射出速度を10cm/秒としたこと以外は実施例1と同様にして樹脂成形体を形成し、同様に金属めっき層を形成した。めっき被膜の剥離強度とブタジエンゴム粒子の平均アスペクト比を測定し、結果を表1に示す。
(比較例2)
射出速度を30cm/秒としたこと以外は実施例3と同様にして樹脂成形体を形成し、同様に金属めっき層を形成した。めっき被膜の剥離強度とブタジエンゴム粒子の平均アスペクト比を測定し、結果を表1に示す。
<評価>
射出速度(溶融樹脂流速)を小さくすることで、平均アスペクト比が1.9以下となり、剥離強度が向上していることがわかる。しかし射出速度を小さくすると、成形工程に要する時間が長くなり生産性が低いという問題がある。
(実施例4)
射出速度を18cm/秒としたこと以外は実施例1と同様にして樹脂成形体を形成した。得られた樹脂成形体の意匠表面をサンドペーパーで3μmの深さまで研磨した後、実施例1と同様に金属めっき層を形成した。そして実施例1と同様にしてめっき被膜の剥離強度とブタジエンゴム粒子の平均アスペクト比を測定し、結果を図1と表2に示す。
(実施例5)
実施例4で得られた樹脂成形体の意匠表面をサンドペーパーで20μmの深さまで研磨した後、実施例1と同様に金属めっき層を形成した。そして実施例1と同様にしてめっき被膜の剥離強度とブタジエンゴム粒子の平均アスペクト比を測定し、結果を図1と表2に示す。
(実施例6)
実施例4で得られた樹脂成形体の意匠表面をサンドペーパーで60μmの深さまで研磨した後、実施例1と同様に金属めっき層を形成した。そして実施例1と同様にしてめっき被膜の剥離強度とブタジエンゴム粒子の平均アスペクト比を測定し、結果を図1と表2に示す。
(実施例7)
実施例4で得られた樹脂成形体の意匠表面をサンドペーパーで230μmの深さまで研磨した後、実施例1と同様に金属めっき層を形成した。そして実施例1と同様にしてめっき被膜の剥離強度とブタジエンゴム粒子の平均アスペクト比を測定し、結果を図1と表2に示す。
(比較例3)
実施例4で得られた樹脂成形体の意匠表面を研磨することなく、実施例1と同様に金属めっき層を形成した。そして実施例1と同様にしてめっき被膜の剥離強度とブタジエンゴム粒子の平均アスペクト比を測定し、結果を図1と表2に示す。
<評価>
図1及び表2から、研磨深さを3μm以上とすることで平均アスペクト比が1.9以下となり、剥離強度が向上していることがわかる。しかし研磨は、工数が大きく成形品に傷が付きやすいという問題がある。なお60μm以上研磨しても剥離強度が飽和していることから、この試験の場合における脆化層の厚さは60μm程度と考えられる。
(実施例8)
図2に本実施例で用いた射出成形用金型を示す。この金型は、固定型1と可動型2とを有し、固定型1の型面に樹脂成形体の意匠表面を成形する第一型面10をもち、可動型2の型面に意匠表面の裏面を成形する第二型面20をもつ。第二型面20の表面には、図3に示すように、第一型面10と第二型面20とで形成されるキャビティ100を流れる溶融樹脂の主たる流動方向に沿って、互いに間隔を隔てた複数の段差部21が形成されている。段差部21は、溶融樹脂の主たる流動方向に対して直交する方向にも互いに間隔を隔てて複数個形成されている。
溝形状の段差部21は、その長手方向が溶融樹脂の主たる流動方向に対して直角方向に延びている。なお第一型面10と第二型面20との間隔(キャビティ100の厚さ)は、3mmである。
第二型面20の平面図を模式的に示すと、図4のように溝形状の段差部21が千鳥状に並んだ段差群が形成されている。段差部21を溶融樹脂の主たる流動方向と平行な平面で切断した断面形状は図4に示すように台形であり、溶融樹脂の主たる流動方向に対して後側の壁面21aが段差面21aを構成している。溝形状の段差部21の寸法はそれぞれ、長手方向の長さが5mm、開口幅が1mm、深さが0.2mmである。溶融樹脂の主たる流動方向に対して直角方向には、段差部21は5mmの間隔を隔てて列設されている。また溶融樹脂の主たる流動方向と平行な断面における段差面21a(壁面21a)どうしの実効ピッチは4mmである。
この射出成形用金型においては、射出成形時に溶融樹脂は段差部21の長手方向に対して直角に流動する。すなわちある瞬間において、溶融樹脂の流路には段差部21を流れる流路X1と、段差部21どうしの間に存在する一般型面部22を流れる流路X2とが存在し、主たる流動方向に対して垂直な平面で切断した断面において溶融樹脂は流路X1と流路X2とを同時に流動する。流路X1において段差部21上を流れた溶融樹脂は次の一般型面部22を流れ、流路X2において一般型面部22を流れた溶融樹脂は次の段差部21上を流れる。
つまり溶融樹脂の主たる流動方向と平行な断面における段差面21aどうしの実効ピッチは4mmであるが、流路X1と流路X2とを同時に流動する溶融樹脂にはピッチ2mmで段差部21から交互に異なる力が作用する。この繰り返しによって溶融樹脂の流動が変化し、その影響が意匠表面近傍まで及ぶ。
上記した射出成形用金型を用い、射出速度を18cm/秒としたこと以外は実施例1と同様にして樹脂成形体を形成した。そして実施例1と同様にしてTEM観察を行い、一般型面部で成形された部位(裏面シボ無し)と段差部21群をもつ型面で成形された部位(裏面シボ有り)におけるTEM写真を図5,6に示す。またこのTEM写真から、実施例1と同様にしてブタジエンゴム粒子の平均アスペクト比を測定した。結果を表3に示す。
さらに上記樹脂成形体の意匠表面に、実施例1と同様にして金属めっき層を形成した。そして意匠表面において、一般型面部で成形された部位と段差部21群をもつ型面で成形された部位におけるめっき被膜の剥離強度を実施例1と同様にして測定し、結果を表3に示す。
表3より、第二型面に段差部21を形成することで、意匠表面から5μm以内の深さに存在するブタジエンゴム粒子の平均アスペクト比を1.9以下と小さくすることができ、その結果、めっき被膜の剥離強度が向上することが明らかである。
なお第二型面の段差部の形状(パターン)としては、実施例8以外にも、例えば図7〜10に記載したような形状を採用することができる。すなわち図7に示す各段差部21の形状は、実施例1と同一の断面台形の溝形状をなし、実施例1と同様の千鳥状に配列された段差部21の端部どうしが溶融樹脂の主たる流動方向と平行に延びる長さ2.5mmの縦溝23によって連結されている。縦溝23の開口幅と深さは、段差部21と同一である。この樹脂射出成形用金型によれば、縦溝23も段差部として作用するため、溶融樹脂の流動方向が主たる流動方向とは異なる場合であっても溶融樹脂の流動が変化し、その影響が意匠表面近傍まで及ぶ。
図8に示す各段差部21の形状は、実施例1と同一の断面台形の溝形状をなし、実施例1と同様の千鳥状に配列された段差部21の長手方向の中央部に溶融樹脂の主たる流動方向と平行に延びる長さ2.5mmの縦溝24が形成されている。縦溝24の開口幅と深さは、段差部21と同一である。この射出成形用金型によれば、縦溝24も段差部として作用するため、溶融樹脂の流動方向が主たる流動方向とは異なる場合であっても溶融樹脂の流動が変化し、その影響が意匠表面近傍まで及ぶ。
図9に示す各段差部21の形状は、実施例1と同一の断面台形の溝形状をなし、実施例1と同様の千鳥状に配列された複数の段差部21の端部どうしが溶融樹脂の主たる流動方向と平行に延びる直線状の縦溝25で連結されたあみだくじ形状をなしている。縦溝25の開口幅と深さは、段差部21と同一である。この射出成形用金型によれば、縦溝25も段差部として作用するため、溶融樹脂の流動方向が主たる流動方向とは異なる場合であっても溶融樹脂の流動が変化し、その影響が意匠表面近傍まで及ぶ。
図10に示す段差部21の形状は、溶融樹脂の主たる流動方向に対する前方側に向かって深さが徐々に浅くなるテーパ溝210とされている。テーパ溝210は次の段差面21aに連続し、次の段差面21aで一段深く彫り込まれ、その後流動方向に対する前方側に向かって再び深さが徐々に浅くなって一般型面部22に連続する。この場合、一般型面部22はエッヂ状の表面である。テーパ溝210の寸法は、最深部の深さが0.2mm、テーパ溝210どうしのピッチは4mmである。
また段差部21は、実施例1と同様の千鳥状に配列され、民家の瓦葺き屋根のような外観をなしている。
本実施例の射出成形用金型によれば、各段差部21の側面も段差部として作用するため溶融樹脂の流動方向が主たる流動方向とは異なる場合であっても溶融樹脂の流動が変化し、その影響が意匠表面近傍まで及ぶ。
また第二型面20を樹脂成形体の型抜き方向に延びる型面又はスライドコアに適用すれば、テーパ溝210によってスライドコアの型抜きを可能とすることができる。なおこの樹脂射出成形用金型においては、溶融樹脂の主たる流動方向が180°逆向きであっても、つまり溶融樹脂の主たる流動方向に対する前方側に向かって深さが徐々に深くなるテーパ溝210であっても、溶融樹脂の流動が変化し、その影響が意匠表面近傍まで及ぶ。
1:固定型 2:可動型
10:第一型面 20:第二型面 21:段差部
22:一般型面部 21a:段差面

Claims (4)

  1. 金属めっき層が形成される表面と該表面と反対側の裏面とをもち、射出成形によって形成されためっき用樹脂成形体であって、
    全体にブタジエンゴム粒子が分散し、該表面から5μmの深さまでの範囲に存在するブタジエンゴム粒子は、断面におけるアスペクト比(長径方向長さ/短径方向長さ)の平均値が1.9以下であり、
    前記裏面には、射出成形時にキャビティを流れる溶融樹脂の流動方向に対して垂直な平面で切断した断面に互いに間隔を隔てた複数の凸部が形成され、該断面に形成された複数の該凸部とそれらの間の一般部とからなる凹凸部が該流動方向に沿って複数個列設されていることを特徴とするめっき用樹脂成形体。
  2. 前記凸部の高さは0.1mm〜0.3mmの範囲にある請求項に記載のめっき用樹脂成形体。
  3. 前記凹凸部における前記凸部のピッチは2mm〜20mmの範囲にある請求項1又は2に記載のめっき用樹脂成形体。
  4. 前記凸部の断面形状は四角形である請求項1〜3のいずれか一項に記載のめっき用樹脂成形体。
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