JP6135278B2 - 車両 - Google Patents
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Description
このステアバイワイヤを採用した車両では、ステアリングホイールへの操舵入力に基づいて転舵輪を転舵させる操舵トルクを調整可能なアクチュエータを備えている。このアクチュエータは、ステアリングホイールの操舵状態に応じて安定した車両挙動を維持することが要求される。
本発明の課題は、直進安定性を制御する制御系に異常が発生した場合に車両の挙動の安定化を適正に行うことである。
(第1実施形態)
(全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両1の構成を示す概略図である。
図1において、車両1は、車体1Aと、ステアリングホイール2と、入力側ステアリング軸3と、操舵角検出部としての操舵角センサ4と、操舵トルクセンサ5と、操舵反力アクチュエータ6と、操舵反力アクチュエータ角度センサ7とを備えている。
さらに、車両1は、ブレーキディスク18と、ホイールシリンダ19と、圧力制御ユニット20と、車両状態パラメータ取得部21と、車輪速センサ24FR,24FL,24RR,24RLと、コントロール/駆動回路ユニット26と、メカニカルバックアップ27とを備えている。
入力側ステアリング軸3は、操舵反力アクチュエータ6を備えており、ステアリングホイール2から入力された操舵入力に対し、操舵反力アクチュエータ6による操舵反力を加える。
操舵トルクセンサ5は、入力側ステアリング軸3に設置してあり、入力側ステアリング軸3の回転トルク(即ち、ステアリングホイール2への操舵入力トルク)を検出する。そして、操舵トルクセンサ5は、検出した入力側ステアリング軸3の回転トルクをコントロール/駆動回路ユニット26に出力する。
操舵反力アクチュエータ角度センサ7は、操舵反力アクチュエータ6の回転角(即ち、操舵反力アクチュエータ6に伝達した操舵入力による回転角)を検出し、検出した回転角をコントロール/駆動回路ユニット26に出力する。
転舵アクチュエータ角度センサ9は、転舵アクチュエータ8の回転角(即ち、転舵アクチュエータ8が出力した転舵のための回転角)を検出し、検出した回転角をコントロール/駆動回路ユニット26に出力する。
転舵トルクセンサ11は、出力側ステアリング軸10に設置してあり、出力側ステアリング軸10の回転トルク(即ち、ラック軸14を介した車輪17FR,17FLの転舵トルク)を検出する。そして、転舵トルクセンサ11は、検出した出力側ステアリング軸10の回転トルクをコントロール/駆動回路ユニット26に出力する。
ピニオン角度センサ13は、ピニオンギヤ12の回転角(即ち、ラック軸14を介して出力される車輪17FR,17FLの転舵角度)を検出し、検出したピニオンギヤ12の回転角をコントロール/駆動回路ユニット26に出力する。
タイロッド15は、ラック軸14の両端部と車輪17FR,17FLのナックルアームとを、ボールジョイントを介してそれぞれ連結している。
タイロッド軸力センサ16は、ラック軸14の両端部に設置されたタイロッド15それぞれに設置してあり、タイロッド15に作用している軸力を検出する。そして、タイロッド軸力センサ16は、検出したタイロッド15の軸力をコントロール/駆動回路ユニット26に出力する。
コントロール/駆動回路ユニット26は、車両1全体を制御するものであり、各部に設置したセンサから入力する信号を基に、入力側ステアリング軸3の操舵反力、前輪の転舵角、あるいはメカニカルバックアップ27の連結について、各種制御信号を、操舵反力アクチュエータ6、転舵アクチュエータ8、あるいはメカニカルバックアップ27等に出力する。
なお、メカニカルバックアップ27は、例えばケーブル式ステアリング機構や電磁クラッチ機構等によって構成することができる。
図2は、第1実施形態に係るフロントサスペンション装置1Bの構成を模式的に示す斜視図である。図3は、図2のフロントサスペンション装置1Bの構成を模式的に示す平面図である。図4は、図2のフロントサスペンション装置1Bの構成を模式的に示す(a)部分正面図および(b)部分側面図である。
図2から図4に示すように、フロントサスペンション装置1Bは、ホイールハブWHに取り付けられた車輪17FR,17FLを懸架しており、車輪17FR,17FLを回転自在に支持する車軸(アクスル)32を有するアクスルキャリア33、車体側の支持部から車体幅方向に配置されてアクスルキャリア33に連結する複数のリンク部材、およびコイルスプリング等のバネ部材34を備えている。
タイロッド15は、車軸32の下側に位置して、ラック軸14とアクスル部材33を連結し、ラック軸14は、ステアリングホイール2からの回転力(操舵力)が伝達されて転舵用の軸力を発生させる。従って、タイロッド15により、ステアリングホイール2の回転に応じてアクスル部材33に車幅方向の軸力が加えられ、アクスル部材33を介して転舵輪17FR,17FLが転舵される。
図5に示す実線は、図2〜4に示すサスペンション構造において、キャスター角0度、キャスタートレイル0mm、スクラブ半径+10mmに設定した場合のラック軸力特性を示している。
なお、図5においては、フロントサスペンション装置1Bと同方式の懸架構造で、キングピン軸KSに関する設定をステアバイワイヤ方式の操舵装置を備えていない構造に合わせて設定したときの比較例(破線)を併せて示している。
図5に示すように、上記検討結果に従って設定すると、ラック軸力は比較例に対し約30%低減することができる。
図7は、ポジティブスクラブとした場合のセルフアライニングトルクを説明する概念図である。
図7に示すように、タイヤに働く復元力(セルフアライニングトルク)は、キャスタートレイル、ニューマチックトレイルの和に比例して大きくなる。
ここで、ポジティブスクラブの場合、キングピン軸の接地点から、タイヤ接地中心を通るタイヤの横すべり角β方向の直線に下ろした垂線の足の位置によって定まるホイールセンタからの距離εc(図7参照)をキャスタートレイルとみなすことができる。
そのため、ポジティブスクラブのスクラブ半径が大きければ大きいほど、転舵時にタイヤに働く復元力は大きくなる。
図2〜4に示すフロントサスペンション装置1Bの構成において、上記検討結果に従い、キングピン傾角13.8度、キャスタートレイル0mm、スクラブ半径5.4mm(ポジティブスクラブ)、キャスター角5.2度、ホイールセンタの高さにおけるキングピンオフセット86mmとした場合、ラック軸力を約30%低減できる。
即ち、キングピンロアピボット点(仮想ピボットも含む)はホイールセンタ後方、キングピンアッパーピボット点(仮想ピボットも含む)はロアピボット点後方に位置する構成とする。
次に、本実施形態に係るフロントサスペンション装置1Bの作用について説明する。
本実施形態に係るフロントサスペンション装置1Bでは、少なくともステアリングホイール2の中立位置で、キングピン軸KSの路面接地点がタイヤ接地面内に位置する設定としている。また、キャスタートレイルがタイヤ接地面内に位置する設定としている。
例えば、キングピン軸KSの設定を、キャスター角0度、キャスタートレイル0mm、スクラブ半径0mm以上のポジティブスクラブとしている。また、キングピン傾角については、スクラブ半径をポジティブスクラブとできる範囲で、より小さい角度となる範囲(例えば15度以下)で設定する。
そのため、ラック軸力をより小さいものとすることができることから、キングピン軸KS周りのモーメントをより小さくでき、転舵アクチュエータ8の出力を低減することができる。また、より小さい力で車輪の向きを制御でき、転舵応答性を向上させることができる。
すなわち、コントロール/駆動回路ユニット26には、前述したように、トルクセンサ5で検出する入力側ステアリング軸3の操舵トルクTsと、車両状態パラメータ取得部21で取得した車速Vと、操舵反力アクチュエータ角度センサ7で検出したアクチュエータ6の回転角θmiとが入力されている。
目標転舵角演算部51は、車速Vおよび回転角θmiが入力され、これらに基づいて転舵アクチュエータ8を駆動するための目標転舵角δ*を算出する。
転舵応答性設定部52は、直進性制御部54および外乱補償部55を有する車両の直進性を担保する直進性担保部56と、遅延制御部57とを備えている。
セルフアライニングトルク算出部54aには、車速Vと、ピニオン角度センサ13で検出したピニオン角度に基づいて算出される転舵輪17FR,17FLの実転舵角δrと、ヨーレートセンサ22bで検出したヨーレートγに基づいて下記(1)式の演算を行ってセルフアライニングトルクTsaを算出する。
この(1)式において、キャスタートレイルεを通常のサスペンション装置で設定されるキャスタートレイルεc0から本実施形態で設定するキャスタートレイルεc2を減算した値に設定することにより、本発明に適用するフロントサスペンション装置1Bで不足する補完すべきセルフアライニングトルクTsaを算出することができる。
外乱補償部55は、操舵トルクセンサ5からの操舵トルクTs、転舵アクチュエータ角度センサ9からの回転角θmo、およびモータ電流検出部64からのモータ電流imrが入力され、車両に入力される外乱を周波数帯域毎に分離してそれぞれ推定し、これらの外乱を抑制するための外乱補償値Adisを算出する。
遅延制御部57は、図8に示すように、操舵開始検出部57a、単安定回路57b、ゲイン調整部57cおよび乗算器57dを有する。
また、単安定回路57bは操舵開始検出部57aから出力される操舵開始信号に基づいて所定の遅延時間例えば0.1秒の間オン状態となる制御開始遅延信号をゲイン調整部57cに出力する。
乗算器57dでは、加算器56から出力される直進安定性制御値δaが入力され、この直進安定性制御値δaに制御ゲインGaを乗算し、乗算結果を目標転舵角演算部51から出力される目標転舵角δ*が入力された加算器57eに供給する。
さらに、転舵制御部50は、直進性制御部54の異常を検出する異常検出部58と、直進性制御部54の異常検出時に車両挙動を制御する異常時挙動制御部59とを有する。
また、異常検出部58は、ゲイン乗算部54bから出力されるセルフアライニングトルク制御値Asaに基づいて直進性制御部54の異常を検出するようにしてもよい。
また、コントロール/駆動回路ユニット26は、前述した異常検出部58で直進性制御部54が異常であることを検出したときに動作される異常時挙動制御部59を備えている。
この異常時挙動制御処理は、フェール信号Sfが入力されたときに起動され、所定時間(例えば1μsec)毎に実行されるタイマ割込処理として実行される。
この異常時挙動制御処理は、図9に示すように、まず、ステップS1では車速Vを読込み、次いでステップS2に移行して、このステップS2では操舵角θsを読込んでからステップS3に移行する。
このステップS5では、車速Vと操舵角θsとに基づいて図10に示す目標タイヤ横力算出マップを参照して旋回外輪側の目標タイヤ横力Ft*を算出してからステップS6に移行する。ここで、目標タイヤ横力算出マップは、図10に示すように、正値(例えば右旋回時)の操舵角θsをパラメータとして車速Vと旋回外輪側の目標タイヤ横力Ft*との関係を表している。すなわち、実験またはシミュレーションによって求めた操舵角θs0、θs1、θs2、θs3及びθs4のそれぞれについて車速Vと旋回外輪側の目標タイヤ横力Ft*との関係を表す特性線L0、L1、L2、L3及びL4が設定されている。
ステップS6では、算出した目標タイヤ横力Ft*とタイヤ横力Ftとを比較し、両者が等しい(Ft=Ft*)か否かを判定する。この判定結果が、タイヤ横力Ftと目標タイヤ横力Ft*とが等しい場合すなわちFt=Ft*である場合には、車両ステア特性ニュートラルステアが維持されているものと判断してタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
さらに、前述したステップS3の判定結果が、θs≠0である場合には、ステップS10に移行して、左右輪のタイヤ横力FtL及びFtRを読込んでからステップS11に移行する。
アクチュエータ制御装置53は、転舵角偏差Δδを算出する転舵角偏差演算部61と、転舵モータ制御部62と、電流偏差演算部63とモータ電流制御部65とを備えている。
転舵モータ制御部62は、入力される転舵角偏差Δδが零となるようにアクチュエータ8を構成する転舵モータ8aの駆動指令電流im*を算出し、算出した駆動指令電流im*を電流偏差演算部63に出力する。
モータ電流制御部65は、入力される電流偏差Δiが零となるように、すなわち、実際のモータ電流imrが駆動指令電流im*に追従するようにフィードバック制御し、このモータ電流imtが転舵モータ8aに出力される。
次に、上記第1の実施形態の動作を図12および図13を伴って説明する。
今、直進性制御部54が正常であり、ステアリングホイール2を中立位置に保持して直進走行しているものとする。
この直進走行状態では、目標転舵角演算部51で演算される目標転舵角δ*が零となる。このため、アクチュエータ制御装置53で制御される転舵モータ8aによって、ラック軸14が中立位置に制御され、タイロッド15を介して転舵輪17FRおよび17FLの転舵角δrが零に制御される。このとき、ステアリングホイール2が中立位置を保持しているので、ヨーレートセンサ22bで検出される車両のヨーレートγは零であり、直進性制御部54のセルフアライニングトルク算出部54aで前記(1)式に従って算出されるセルフアライニングトルクTsaは、転舵角δrが零であることにより重心点横滑り角βが零となり、ヨーレートγも零であるので、零となる。
さらに、異常時挙動制御部59では、直進性制御部54が正常であり、異常検出部58から論理値“1”のフェール信号Sfが入力されていないので、動作を停止している。
この状態では、アクチュエータ制御装置53の転舵角偏差演算部61から出力される転舵角偏差Δδも零となり、転舵モータ制御部62から出力されるモータ電流指令値im*も零となる。このためモータ電流制御部65からモータ電流imtは出力されず、転舵モータ8aは停止状態を維持し、ラック軸14が中立位置を維持して転舵輪17FRおよび17FLの転舵角δtが“0”に制御される。
このため、目標転舵角δ*がセルフアライニングトルク制御値Asaで補正されることにより、アクチュエータ制御装置53で転舵アクチュエータ8を構成する転舵モータ8aが駆動制御されて、転舵モータ8aでセルフアライニングトルクTsaに相当するセルフアライニングのための復元力を発生させ、これがラック軸14およびタイロッド15を介して転舵輪17FRおよび17FLに伝達される。
ところが、ステアリングホイール2を中立位置に保持した直進走行状態を維持している状態からステアリングホイール2を右(又は左)に操舵する転舵状態となると、この直進走行状態からの操舵による転舵状態への移行が操舵開始検出部57aで検出される。
このため、操舵角センサ4で検出した操舵角θsが目標転舵角演算部51に供給され、この目標転舵角演算部51で演算された目標転舵角δ*がそのまま転舵角偏差演算部61に供給される。このため、目標転舵角δ*に一致するように転舵モータ8aが回転駆動される。この間、直進性制御部54における直進性担保制御が停止される。
このとき、フロントサスペンション装置1Bのキャスター角が零に設定されている。このキャスター角と転舵応答性と操縦安定性との関係は、図12(a)に示すように、キャスター角が零であるときには転舵応答性が高い状態をとなるが、操縦安定性を確保することはできない、すなわち、キャスター角に対する転舵応答性と操縦安定性とはトレードオフの関係が存在する。
この初期応答期間T1では、フロントサスペンション装置1Bは、上述したように、キャスター角が零あり、操縦応答性が高いので、図13(a)で実線図示の特性線L1で示すように、一点鎖線図示の特性線L2で示す一般的なステアバイワイヤ形式の操舵系を有する車両における転舵応答特性(ヨーレート)より高い転舵応答特性(ヨーレート)とすることができる。このとき、運転者のステアリングホイール2の操舵による操舵角変化に対応した転舵角変化となるので、運転者に違和感を与えることはない。
このため、車両が旋回状態にある状態では、ステップS2で読込まれる操舵角θsがθs≠0となっているので、図9の処理において、ステップS3からステップS4に移行して、旋回外輪側のハブ横力センサ22aで検出したタイヤ横力Ftを読込む。次いで、ステップS5に移行して、操舵角θsに基づいて図10に示す目標タイヤ横力算出マップの特性線Li(Li=L1〜L4)を選択し、選択した特性線Liと車速車速Vとに基づいてニュートラル特性とする外輪側の目標タイヤ横力Ft*を算出する。
ところが、旋回外輪側に路面外力が作用することにより、旋回外輪側のタイヤ横力Ftが目標タイヤ横力Ft*より小さい場合には、転舵輪17FR及び17FLの外輪側がアンダーステア側すなわち直進状態に戻す方向にタイヤ横力が作用しているものと判断する。したがって、ステップS7からステップS8に移行して、旋回内輪側の車輪に対してタイヤ横力偏差に応じた制動力を発生させる車両挙動制御信号Smを圧力制御ユニット20に出力する。このため、圧力制御ユニット20で旋回内輪側の車輪のホイールシリンダ19に対して制動圧を供給して旋回内輪側の車輪に制動力を付与する。このため、車両にニュートラルステア方向に戻すヨーモーメントが発生されて、車両のステア特性がニュートラルステア側に修正される。
このように、直進性制御部54に異常が発生して、フロントサスペンション装置1Bで発生するセルフアライニングトルクが不足する異常状態が発生すると、異常時挙動制御部59が起動されて、路面外力によるフロントサスペンションの転舵を抑制することができる。したがって、直進性制御部54の異常時に路面外乱によるヨーレート変化を抑制して車両挙動を安定化することができる。
この転舵制御処理は、図15に示すように、先ず、ステップS21で、車速V、操舵角センサ4で検出した操舵角θs、転舵アクチュエータ角度センサ9で検出した回転角θmo、操舵トルクセンサ5で検出した操舵トルクTs等の演算処理に必要なデータを読込む。次いで、ステップS22に移行して、操舵角センサ4で検出した操舵角θsに基づいてステアリングホイール2が中立位置を保持している状態から右又は左に操舵された操舵開始状態であるか否かを判定し、操舵開始状態ではないときにはステップS23に移行する。
このステップS25では、前述した目標転舵角演算部51と同様に車速Vと操舵角θsに基づいて目標転舵角δ*を算出する。
次いで、ステップS26に移行して、前述した直進性制御部54のセルフアライニングトルク算出部54aと同様に、前記(1)式の演算を行ってフロントサスペンション装置1Bで不足するセルフアライニングトルクTsaを算出し、このセルフアライニングトルクTsaに所定ゲインKsaを乗算してセルフアライニングトルク制御値Asaを算出する。
次いで、ステップS28に移行して、目標転舵角δ*と、セルフアライニングトルク制御値Asaと、外乱補償値Adisとに基づいて下記(2)式の演算を行って加算後目標転舵角δ*aを算出する。
δ*a=δ*+Ga(Asa+Adis) …………(2)
また、ステップS22の判定結果が操舵開始状態であるときにはステップS30に移行して、制御フラグFを“1”にセットしてからステップS31に移行する。さらに、ステップS23の判定結果が、制御フラグFが“1”にセットされているときに直接ステップS31に移行する。
また、ステップS31の判定結果が、所定の遅延時間(例えば0.1秒)が経過したときには、ステップS33に移行して、制御フラグFを“0”にリセットしてから前記ステップS24に移行して、制御ゲインGaを“1”に設定する。
これに対して、ステアリングホイール2が中立位置に保持されている状態から右又は左に操舵が開始された操舵開始状態であるときには、予め設定された遅延時間が経過するまでは、制御ゲインGaが“0”に設定されるため、直進性担保制御が停止される。このため、目標転舵角δ*のみが転舵角偏差演算部61に出力され、これによって転舵アクチュエータ8を構成する転舵モータ8aが回転駆動される。このため、初期転舵応答性はサスペンション装置自体の高転舵応答性が設定されることになり、高転舵応答性を得ることができる。
この図15の処理において、ステップS25の処理が目標転舵角演算部51に対応し、ステップS26の処理が直進性制御部54に対応し、ステップS27の処理が外乱補償部55に対応し、ステップS22〜S24、S30〜S33の処理が遅延制御部57に対応し、ステップS22〜33の処理が転舵応答性設定部52に対応している。
(1)アッパーピボット点及びロアピボット点を通るキングピン軸をステアリングホイールの中立位置でタイヤ接地面を通るように設定したフロントサスペンション装置と、前記ステアリングホイールの操舵状態に応じてアクチュエータを動作させて、当該ステアリングホイールから切り離された左右の転舵輪を転舵させるステアバイワイヤシステムとを備えた車両であって、前記ステアバイワイヤシステムに設けた前記アクチュエータを動作させて前記転舵輪に対するセルフアライニングのための復元力を発生する直進性制御部と、車両の車速を検出する車速検出部と、車両のタイヤ横力を検出するタイヤ横力検出部と、前記ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出部と、前記左右の車輪に対して個別に制動力を付与する制動力付与部と、前記直進性制御部の異常を検出する異常検出部と、該異常検出部で前記直進性制御部の異常を検出したときに、前記操舵角及び前記車速に基づいて目標タイヤ横力を算出し、前記タイヤ横力が前記目標タイヤ横力に一致するように前記制動力付与部を制御する異常時挙動制御部とを備えている。
したがって、転舵応答性を向上させることができる。このとき、キャスター角を零近傍の値とすることにより、転舵応答性をより高めたサスペンション装置を構成することができる。
さらに、サスペンション装置の転舵応答性を確保することによる車両の直進性の低下を直進性制御部で担保することができる。
この構成によれば、フロントサスペンション装置を軽い転舵力で転舵させることができ、転舵機構を軽量化することができる。
(3)前記直進性制御部は、フロントサスペンション装置のセルフアライニングトルク不足分を補完するセルフアライニングトルクを算出する。
この構成によれば、フロントサスペンション装置のセルフアライニングトルク不足分を補完して車両の直進安定性を確実に担保することができる。
この構成によれば、運転者がステアリングホイールを操舵したときの操舵感覚に応じた車両のステア特性を得ることができ、運転者に違和感を与えることを確実に防止することができる。
この構成によれば、目標タイヤ横力の算出を、操舵角及び車速をもとに目標タイヤ横力算出マップを参照することにより、直ちに行うことができ、目標タイヤ横力の算出を迅速且つ正確に行うことができる。
この構成によれば、目標タイヤ横力算出マップを参照して算出した目標タイヤ横力にタイヤ横力が一致するように左右の車輪に対する制動力を制御するだけで、車両ステア特性をニュートラルステアに制御することができる。
この構成によれば、タイヤに作用する横力をハブ横力センサで検出遅れを生じることなく直接且つ正確に検出することができる。
(8)フロントサスペンション装置は、ステアリングホイールが中立位置にあるときに、キングピン軸がタイヤ接地面内を通るように設定されている。また、前記サスペンション装置の直進性は直進性担保部で担保されている。
上記第1の実施形態では、ステアリングラック部材14を一つの転舵アクチュエータ8で駆動する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、2つの転舵アクチュエータを適用してステアリングラック部材14を駆動するようにしてもよい。この場合には、一方の転舵アクチュエータに故障が発生してもステアリングラック部材14の駆動が可能となる。
なお、転舵輪を転舵する転舵機構としては、ラックアンドピニオン機構に代えてボールねじ機構を適用することができ、この場合にはボールナットを転舵アクチュエータ8で回転駆動するようにすればよい。このように、ボールねじ機構を適用することにより、転舵角を高精度に制御することができる。
また、転舵機構としてピニオンアンドラック機構やボールねじ機構に代えて他の形式の転舵機構を適用することができる。
上記実施形態では、目標タイヤ横力算出マップを参照して目標タイヤ横力を算出する場合について説明した。しかしながら、本発明は上記に限定されるものではなく、目標タイヤ横力算出マップを参照する場合に代えて、操舵角をパラメータとする複数の操舵角特性線を車速および目標タイヤ横力の関数として表し、操舵角θsをもとに操舵角特性線を選択し、選択した操舵角特性線に車速Vを代入することにより目標タイヤ横力を算出するようにしてもよい。
なお、上記実施形態において、目標タイヤ横力算出マップにおける操舵角特性線の本数を4本に設定した場合について説明したが、操舵角特性線の本数は4本に限らず任意数に設定することができる。
また、上記実施形態では、異常時挙動制御部59で車両挙動制御信号Smを圧力制御ユニット20に出力することにより、転舵輪17FR及び17FLの一方に制動力を付与する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、前後の左側車輪及び右側車輪の一方について前後同時に制動力を作用させて車両を回頭させるようにしてもよい。
上記実施形態では、フロントサスペンション装置のロアリンクを互いに交差することがない第1リンク37と第2リンク38とで構成する場合について説明した。しかしながら、サスペンション装置の構成は上記構成に限定されるものではなく、キングピン軸がタイヤ接地面内を通るように設定して、転舵力を軽減できればよい。このため、ロアリンク構造を例えば図16に模式的に示すように、互いに交差するトランスバースリンク81とコンプレッションリンク82とで構成することもできる。また、ロアリンク構造を、図17に模式的に示すように、互いに交差するトランスバースリンク81とテンションリンク83とで構成することもできる。
このように、ロアリンク構造を平面視で互いに交差する第1リンクおよび第2リンクで構成することにより、キングピン軸を構成するロアピボット点を両リンクの交点位置とすることができる。このため、ロアピボット点の位置を転舵輪の車体内側により近づけることが可能となる。したがって、キングピン軸がタイヤ接地面内を通るように設定することが容易となる。
また、フロントサスペンション装置1Bとしては上記構成に限定されるものではなく、他の種々の構成のサスペンション装置を適用することができる。
Claims (7)
- アッパーピボット点及びロアピボット点を通るキングピン軸をステアリングホイールの中立位置でタイヤ接地面を通るように設定したフロントサスペンション装置と、前記ステアリングホイールの操舵状態に応じてアクチュエータを動作させて、当該ステアリングホイールから切り離された左右の転舵輪を転舵させるステアバイワイヤシステムとを備えた車両であって、
前記ステアバイワイヤシステムに設けた前記アクチュエータを動作させて前記転舵輪に対するセルフアライニングのための復元力を発生する直進性制御部と、
車両の車速を検出する車速検出部と、
車両のタイヤ横力を検出するタイヤ横力検出部と、
前記ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出部と、
前記左右の車輪に対して個別に制動力を付与する制動力付与部と、
前記直進性制御部の異常を検出する異常検出部と、
該異常検出部で前記直進性制御部の異常を検出したときに、前記操舵角及び前記車速に基づいて目標タイヤ横力を算出し、前記タイヤ横力が前記目標タイヤ横力に一致するように前記制動力付与部を制御する異常時挙動制御部と
を備えたことを特徴とする車両。 - 前記フロントサスペンション装置はサスペンションジオメトリが直進安定性より転舵応答性を重視するように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両。
- 前記直進性制御部は、前記フロントサスペンション装置のセルフアライニングトルク不足分を補完するセルフアライニングトルクを算出することを特徴とする請求項2に記載の車両。
- 前記異常時挙動制御部は、前記タイヤ横力と前記目標タイヤ横力とが一致するように左右輪の一方に制動力を付与して車両ステア特性をニュートラルステアとすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両。
- 前記異常時挙動制御部は、操舵角をパラメータとし、車速とタイヤ横力との関係を表す特性線を設定した目標タイヤ横力算出マップを参照して目標タイヤ横力を算出することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両。
- 前記目標タイヤ横力算出マップは、操舵角に応じたニュートラルステア特性を得るために必要なタイヤ横力が定義されていることを特徴とする請求項5に記載の車両。
- 前記タイヤ横力検出部は、ハブユニットに内蔵されたハブ横力センサで構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車両。
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