JP6135278B2 - 車両 - Google Patents

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本発明は、転舵応答性の高いサスペンション装置とステアバイワイヤシステムとを搭載した車両に関する。
従来、車両用の操舵制御装置では、ステアリングホイールと転舵輪との間の機械的連結を切り離したステアバイワイヤ(SBW)方式を採用することが提案されている。
このステアバイワイヤを採用した車両では、ステアリングホイールへの操舵入力に基づいて転舵輪を転舵させる操舵トルクを調整可能なアクチュエータを備えている。このアクチュエータは、ステアリングホイールの操舵状態に応じて安定した車両挙動を維持することが要求される。
例えば、特許文献1に記載の技術では、旋回中で制動制御が実行されている際に、ステアバイワイヤ制御系でステアリングホイールとステアリングギヤボックスとクラッチ等のバックアップ機構で直結する故障が発生し、操舵角に基づき算出されたヨーレートに基づいて各輪の制動力を制御する場合に、操舵角に対する車両応答性の変化を検出したときに、ヨーレートの算出モデルを切り替えて車両挙動制御の誤介入を防止するようにしている。
特開2008−30591号公報
ところで、上記特許文献1に記載された従来技術では、ステアリングホイール及びステアリングギヤボックスをクラッチ等のバックアップ機構で直結するステアバイワイヤ制御系の故障が発生した場合を制御対象として、各輪の制動力を操舵角に基づき算出されたヨーレートに基づいて制御するようにしている。
しかしながら、ステアバイワイヤシステムでは、種々の転舵制御を行っており、バックアップ機構を作動させるには至らない異常が発生した場合には上記特許文献1に記載された従来技術では対処できない。特に、直進安定性より転舵応答性を重視するサスペンション装置を搭載した車両では、車両の直進安定性の担保をステアバイワイヤシステムで行うことになり、直進安定性の制御系に異常が発生した場合には、パックアップ機構を作動させる程の異常ではないので、上記特許文献1に記載された異常制御対象から外れてしまう。
本発明の課題は、直進安定性を制御する制御系に異常が発生した場合に車両の挙動の安定化を適正に行うことである。
以上の課題を解決するため、本発明に係る車両は、車両の直進性を制御する直進性制御部の異常を検出したときに、タイヤ横力に基づいて車両挙動を推定し、操舵角と車速とに基づいて目標タイヤ横力を算出し、タイヤ横力が目標タイヤ横力に一致するように左右の転舵輪に付与する制動力を制御する。
本発明によれば、車両の直進性を制御する直進性制御部に異常が発生したときに、タイヤ横力に基づいて車両挙動を推定するので、ヨーレートに基づく制動力制御より高い応答性で左右の転舵輪の制動力制御を行って、応答遅れを抑制して迅速且つ適正に車両の挙動を安定化することができる。
本発明の第1の実施形態に係る自動車を示す概略構成図である。 サスペンション装置の構成を模式的に示す斜視図である。 サスペンション装置の構成を模式的に示す平面図である。 サスペンション装置の構成を模式的に示す部分正面図および部分側面図である。 サスペンション装置のラックストロークとラック軸力との関係を示す特性線図である。 サスペンションのキングピン軸の路面着地点と横力との関係を示す特性線図である。 ポジティブスクラブとした場合のセルフアライニングトルクを説明する概念図である。 転舵制御部及び異常時挙動制御部の具体的構成を示すブロック図である。 図8の異常時挙動制御部で実行する異常時挙動制御処理手順の一例を示すフローチャートである。 操舵角をパラメータとして車速と目標タイヤ横力との関係を表す目標タイヤ横力算出マップを示す特性線図である。 図10における操舵角が0の状態のタイヤ横力変化を示す特性線図である。 サスペンション装置の特性を示す図であって、(a)はキャスター角と応答性および安定性との関係を示す図、(b)はキャスタートレイルと横力低減代および直進性との関係を示す図である。 転舵応答特性を示す図であって、(a)は車両の応答特性の変化を示す特性線図、(b)は制御特性の切換タイミングを示す図である。 異常時挙動制御部の動作の説明に供する車両挙動を示す説明図である。 転舵制御処理の一例を示すフローチャートである。 本発明に適用し得るサスペンション装置の他の例を示す模式的平面図である。 本発明に適用し得るサスペンション装置のさらに他の例を示す模式的平面図である。
以下、図を参照して本発明を適用した自動車の実施の形態を説明する。
(第1実施形態)
(全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両1の構成を示す概略図である。
図1において、車両1は、車体1Aと、ステアリングホイール2と、入力側ステアリング軸3と、操舵角検出部としての操舵角センサ4と、操舵トルクセンサ5と、操舵反力アクチュエータ6と、操舵反力アクチュエータ角度センサ7とを備えている。
また、車両1は、転舵アクチュエータ8と、転舵アクチュエータ角度センサ9と、出力側ステアリング軸10と、転舵トルクセンサ11と、転舵機構を構成するピニオンギヤ12、ピニオン角度センサ13、ラック軸14、タイロッド15、およびタイロッド軸力センサ16と、車輪17FR,17FL,17RR,17RLとを備えている。
さらに、車両1は、ブレーキディスク18と、ホイールシリンダ19と、圧力制御ユニット20と、車両状態パラメータ取得部21と、車輪速センサ24FR,24FL,24RR,24RLと、コントロール/駆動回路ユニット26と、メカニカルバックアップ27とを備えている。
ステアリングホイール2は、入力側ステアリング軸3と一体に回転するよう構成され、運転者による操舵入力を入力側ステアリング軸3に伝達する。
入力側ステアリング軸3は、操舵反力アクチュエータ6を備えており、ステアリングホイール2から入力された操舵入力に対し、操舵反力アクチュエータ6による操舵反力を加える。
操舵角センサ4は、入力側ステアリング軸3に備えられ、入力側ステアリング軸3の回転角(即ち、運転者によるステアリングホイール2への操舵入力角度)を検出する。そして、操舵角センサ4は、検出した入力側ステアリング軸3の回転角をコントロール/駆動回路ユニット26に出力する。
操舵トルクセンサ5は、入力側ステアリング軸3に設置してあり、入力側ステアリング軸3の回転トルク(即ち、ステアリングホイール2への操舵入力トルク)を検出する。そして、操舵トルクセンサ5は、検出した入力側ステアリング軸3の回転トルクをコントロール/駆動回路ユニット26に出力する。
操舵反力アクチュエータ6は、モータ軸と一体に回転するギヤが入力側ステアリング軸3の一部に形成されたギヤに噛合しており、コントロール/駆動回路ユニット26の指示に従って、ステアリングホイール2による入力側ステアリング軸3の回転に対して反力を付与する。
操舵反力アクチュエータ角度センサ7は、操舵反力アクチュエータ6の回転角(即ち、操舵反力アクチュエータ6に伝達した操舵入力による回転角)を検出し、検出した回転角をコントロール/駆動回路ユニット26に出力する。
転舵アクチュエータ8は、モータ軸と一体に回転するギヤが出力側ステアリング軸10の一部に形成されたギヤに噛合しており、コントロール/駆動回路ユニット26の指示に従って、出力側ステアリング軸10を回転させる。
転舵アクチュエータ角度センサ9は、転舵アクチュエータ8の回転角(即ち、転舵アクチュエータ8が出力した転舵のための回転角)を検出し、検出した回転角をコントロール/駆動回路ユニット26に出力する。
出力側ステアリング軸10は、転舵アクチュエータ8を備えており、転舵アクチュエータ8が入力した回転をピニオンギヤ12に伝達する。
転舵トルクセンサ11は、出力側ステアリング軸10に設置してあり、出力側ステアリング軸10の回転トルク(即ち、ラック軸14を介した車輪17FR,17FLの転舵トルク)を検出する。そして、転舵トルクセンサ11は、検出した出力側ステアリング軸10の回転トルクをコントロール/駆動回路ユニット26に出力する。
ピニオンギヤ12は、ラック軸14に形成したラックギヤと噛合しており、出力側ステアリング軸10から入力した回転をラック軸14に伝達する。
ピニオン角度センサ13は、ピニオンギヤ12の回転角(即ち、ラック軸14を介して出力される車輪17FR,17FLの転舵角度)を検出し、検出したピニオンギヤ12の回転角をコントロール/駆動回路ユニット26に出力する。
ラック軸14は、ピニオンギヤ12と噛合する平歯を有し、ピニオンギヤ12の回転を車幅方向の直線運動に変換する。
タイロッド15は、ラック軸14の両端部と車輪17FR,17FLのナックルアームとを、ボールジョイントを介してそれぞれ連結している。
タイロッド軸力センサ16は、ラック軸14の両端部に設置されたタイロッド15それぞれに設置してあり、タイロッド15に作用している軸力を検出する。そして、タイロッド軸力センサ16は、検出したタイロッド15の軸力をコントロール/駆動回路ユニット26に出力する。
車輪17FR,17FL,17RR,17RLは、タイヤホイールにタイヤを取り付けて構成したものであり、フロントサスペンション装置1Bを介して車体1Aに設置してある。これらのうち、前輪(転舵輪17FR,17FL)は、タイロッド15によってナックルアームが揺動することにより、車体1Aに対する転舵輪17FR,17FLの向きが変化する。
圧力制御ユニット20は、主にコントロール/駆動回路ユニット26から出力される制動制御信号Sbに基づいてブレーキペダルの踏込量に応じた制動力を各車輪17FR〜17RFに設けたホイールシリンダ19で発生するように制御する。また、圧力制御ユニット20は、コントロール/駆動回路ユニット26から出力される車両挙動制御信号Smに基づいて左右の転舵輪17FR及び17FLの一方の車輪に付与する制動力を制御する制動力付与部としても機能する。
車両状態パラメータ取得部21は、車輪速センサ24FR,24FL,24RR,24RLから出力される車輪の回転速度を示すパルス信号を基に車速Vを取得する。また、車両状態パラメータ取得部21は、車速Vと各車輪の回転速度とを基に、各車輪のスリップ率を取得する。そして、車両状態パラメータ取得部21は、取得した各パラメータをコントロール/駆動回路ユニット26に出力する。
また、車両1には車両1のタイヤ横力を検出するタイヤ横力検出部としての前輪17FR及び17FLのハブユニットに内蔵されたハブ横力センサ22aが設けられ、このハブ横力センサ22aで検出したタイヤ横力Ftをコントロール/駆動回路ユニット26に出力する。さらに、車両1には車両1のヨーレートγを検出するヨーレートセンサ22bが設けられ、このヨーレートセンサ22bで検出したヨーレートγをコントロール/駆動回路ユニット26に出力する。
車輪速センサ24FR,24FL,24RR,24RLは、各車輪の回転速度を示すパルス信号を、車両状態パラメータ取得部21およびコントロール/駆動回路ユニット26に出力する。
コントロール/駆動回路ユニット26は、車両1全体を制御するものであり、各部に設置したセンサから入力する信号を基に、入力側ステアリング軸3の操舵反力、前輪の転舵角、あるいはメカニカルバックアップ27の連結について、各種制御信号を、操舵反力アクチュエータ6、転舵アクチュエータ8、あるいはメカニカルバックアップ27等に出力する。
また、コントロール/駆動回路ユニット26は、各センサによる検出値を使用目的に応じた値に換算する。例えば、コントロール/駆動回路ユニット26は、操舵反力アクチュエータ角度センサ7によって検出された回転角を操舵角θsに換算したり、転舵アクチュエータ角度センサ9によって検出された回転角を転舵輪17FR,17FLの転舵角δdに換算したり、ピニオン角度センサ13によって検出されたピニオンギヤ12の回転角を転舵輪17FR,17FLの実転舵角δrに換算したりする。
なお、コントロール/駆動回路ユニット26は、操舵角センサ4によって検出された入力側ステアリング軸3の回転角、操舵反力アクチュエータ角度センサ7によって検出された操舵反力アクチュエータ6の回転角、転舵アクチュエータ角度センサ9によって検出された転舵アクチュエータ8の回転角、および、ピニオン角度センサ13によって検出されたピニオンギヤ12の回転角を監視し、これらの関係を基に、操舵系統におけるフェールの発生を検出することができる。そして、操舵系統におけるフェールを検出すると、コントロール/駆動回路ユニット26は、メカニカルバックアップ27に対し、入力側ステアリング軸3と出力側ステアリング軸10とを連結させる指示信号を出力する。
メカニカルバックアップ27は、コントロール/駆動回路ユニット26の指示に従って、入力側ステアリング軸3と出力側ステアリング軸10とを連結し、入力側ステアリング軸3から出力側ステアリング軸10への力の伝達を確保する機構である。ここで、メカニカルバックアップ27に対しては、通常時には、コントロール/駆動回路ユニット26から、入力側ステアリング軸3と出力側ステアリング軸10とを連結しない状態を指示している。そして、操舵系統におけるフェールの発生により、操舵角センサ4、操舵トルクセンサ5および転舵アクチュエータ8等を介することなく操舵操作を行う必要が生じた場合に、入力側ステアリング軸3と出力側ステアリング軸10とを連結させる指示が入力する。
なお、メカニカルバックアップ27は、例えばケーブル式ステアリング機構や電磁クラッチ機構等によって構成することができる。
(サスペンション構成)
図2は、第1実施形態に係るフロントサスペンション装置1Bの構成を模式的に示す斜視図である。図3は、図2のフロントサスペンション装置1Bの構成を模式的に示す平面図である。図4は、図2のフロントサスペンション装置1Bの構成を模式的に示す(a)部分正面図および(b)部分側面図である。
図2から図4に示すように、フロントサスペンション装置1Bは、ホイールハブWHに取り付けられた車輪17FR,17FLを懸架しており、車輪17FR,17FLを回転自在に支持する車軸(アクスル)32を有するアクスルキャリア33、車体側の支持部から車体幅方向に配置されてアクスルキャリア33に連結する複数のリンク部材、およびコイルスプリング等のバネ部材34を備えている。
複数のリンク部材は、ロアリンク部材である第1リンク(第1リンク部材)37と第2リンク(第2リンク部材)38、タイロッド(タイロッド部材)15、および、ストラット(バネ部材34およびショックアブソーバ40)から構成されている。本実施形態において、フロントサスペンション装置1Bはストラット式のサスペンションであり、バネ部材34およびショックアブソーバ40が一体となったストラットSTの上端が、車軸32より上方に位置する車体側の支持部に連結する(以下、ストラットの上端を適宜「アッパーピボット点P1」と称する。)。ロアアームを構成する第1リンク37と第2リンク38は、車軸32より下方に位置する車体側の支持部とアクスルキャリア33の下端を連結する。このロアアームは、車体側と2箇所で支持され、車軸32側と1箇所で連結されるAアーム形状を有している(以下、ロアアームとアクスル部材33との連結部を適宜「ロアピボット点P2」と称する。)。
そして、左右のショックアブソーバ40の外筒間にスタビライザ41が連結されている。このスタビライザ41は、車両後方側の直線部41aが車体側部材に固定されたブラケット42によって回動可能に支持されている。
タイロッド15は、車軸32の下側に位置して、ラック軸14とアクスル部材33を連結し、ラック軸14は、ステアリングホイール2からの回転力(操舵力)が伝達されて転舵用の軸力を発生させる。従って、タイロッド15により、ステアリングホイール2の回転に応じてアクスル部材33に車幅方向の軸力が加えられ、アクスル部材33を介して転舵輪17FR,17FLが転舵される。
本願発明においては、ステアリングホイール2の中立位置すなわち転舵輪17FLおよび17FRが直進走行状態となっている状態で、上記フロントサスペンション装置1Bのアッパーピボット点P1およびロアピボット点P2を結ぶキングピン軸KSを、キングピン軸KSの路面接地点がタイヤ接地面内に位置するようにしている。また、キャスタートレイルがタイヤ接地面内に位置するよう設定している。
より具体的には、本実施形態におけるフロントサスペンション装置1Bでは、キャスター角をゼロに近い値とし、キャスタートレイルがゼロに近づくようにキングピン軸KSを設定している。これにより、転舵時のタイヤ捻りトルクを低減でき、キングピン軸KS周りのモーメントをより小さくすることができる。また、スクラブ半径はゼロ以上のポジティブスクラブとしている。これにより、転舵時のタイヤ横滑り角に対し、スクラブ半径分のキャスタートレイルが生じることから、直進性を確保することができる。
図5は、本実施形態に係るフロントサスペンション装置1Bにおけるラック軸力の解析結果を示す図である。
図5に示す実線は、図2〜4に示すサスペンション構造において、キャスター角0度、キャスタートレイル0mm、スクラブ半径+10mmに設定した場合のラック軸力特性を示している。
なお、図5においては、フロントサスペンション装置1Bと同方式の懸架構造で、キングピン軸KSに関する設定をステアバイワイヤ方式の操舵装置を備えていない構造に合わせて設定したときの比較例(破線)を併せて示している。
図5に示すように、上記検討結果に従って設定すると、ラック軸力は比較例に対し約30%低減することができる。
このように、キャスター角を0度とすることは、サスペンション剛性を向上させることができ、また、キャスタートレイル0mmとすることは、図6において符号3で示すように、キングピン軸KSの路面着地点がタイヤ接地面におけるタイヤ接地中心点に一致させることを意味し、これにより横力低減効果を向上させることができる。言い換えると、軽い転舵力で転舵が可能であり転舵応答性を向上させることができる。
(ポジティブスクラブによる直進性確保)
図7は、ポジティブスクラブとした場合のセルフアライニングトルクを説明する概念図である。
図7に示すように、タイヤに働く復元力(セルフアライニングトルク)は、キャスタートレイル、ニューマチックトレイルの和に比例して大きくなる。
ここで、ポジティブスクラブの場合、キングピン軸の接地点から、タイヤ接地中心を通るタイヤの横すべり角β方向の直線に下ろした垂線の足の位置によって定まるホイールセンタからの距離εc(図7参照)をキャスタートレイルとみなすことができる。
そのため、ポジティブスクラブのスクラブ半径が大きければ大きいほど、転舵時にタイヤに働く復元力は大きくなる。
本実施形態においては、転舵応答性を高めるためにキャスター角を0に近づけることによる直進性への影響を、ポジティブスクラブとすることで低減するものである。また、ステアバイワイヤ方式を採用していることから、転舵アクチュエータ8によって最終的に目的とする直進性を確保することができる。したがって、サスペンションジオメトリとしては、直進性よりは転舵応答性を重視したものとなる。
(サスペンション設計例)
図2〜4に示すフロントサスペンション装置1Bの構成において、上記検討結果に従い、キングピン傾角13.8度、キャスタートレイル0mm、スクラブ半径5.4mm(ポジティブスクラブ)、キャスター角5.2度、ホイールセンタの高さにおけるキングピンオフセット86mmとした場合、ラック軸力を約30%低減できる。
上記設計値については、制動時に、サスペンションロアリンクが車両後方へ移動し、このときキングピン下端も同様に車両後方へ移動するため、キャスター角は一定の後傾をとることとしたものである。ちなみに、キャスター角0度以下の場合(キングピン軸が前傾している場合)、転舵制動時ラックモーメントが大きくなるため、ラック軸力が増大する。したがって、キングピンの位置を上記のように規定する。
即ち、キングピンロアピボット点(仮想ピボットも含む)はホイールセンタ後方、キングピンアッパーピボット点(仮想ピボットも含む)はロアピボット点後方に位置する構成とする。
(サスペンションの作用)
次に、本実施形態に係るフロントサスペンション装置1Bの作用について説明する。
本実施形態に係るフロントサスペンション装置1Bでは、少なくともステアリングホイール2の中立位置で、キングピン軸KSの路面接地点がタイヤ接地面内に位置する設定としている。また、キャスタートレイルがタイヤ接地面内に位置する設定としている。
例えば、キングピン軸KSの設定を、キャスター角0度、キャスタートレイル0mm、スクラブ半径0mm以上のポジティブスクラブとしている。また、キングピン傾角については、スクラブ半径をポジティブスクラブとできる範囲で、より小さい角度となる範囲(例えば15度以下)で設定する。
このようなサスペンションジオメトリとすることにより、転舵時におけるタイヤ接地面中心の軌跡がより小さいものとなり、タイヤ捻りトルクを低減できる。
そのため、ラック軸力をより小さいものとすることができることから、キングピン軸KS周りのモーメントをより小さくでき、転舵アクチュエータ8の出力を低減することができる。また、より小さい力で車輪の向きを制御でき、転舵応答性を向上させることができる。
また、転舵応答性を重視するために、キャスター角を0度、キャスタートレイルを0mmとしたことに伴い、サスペンション構造上の直進性に影響が生じる可能性があるところ、ポジティブスクラブに設定することにより、その影響を軽減できる。さらに、転舵アクチュエータ8による制御と併せて、直進性を担保している。即ち、操縦性・安定性の向上を図ることができる。
また、キングピン傾角を一定の範囲(15度以下)に制限したことに対しては、転舵アクチュエータ8での転舵を行うことにより、運転者が操舵操作に重さを感じることを回避できる。また、路面からの外力によるキックバックについても、転舵アクチュエータ8によって外力に対抗できるため、運転者への影響を回避できる。即ち、操縦性・安定性の向上を図ることができる。
次に、転舵アクチュエータ8を制御するコントロール/駆動回路ユニット26における操舵応答性制御について図8を伴って説明する。
すなわち、コントロール/駆動回路ユニット26には、前述したように、トルクセンサ5で検出する入力側ステアリング軸3の操舵トルクTsと、車両状態パラメータ取得部21で取得した車速Vと、操舵反力アクチュエータ角度センサ7で検出したアクチュエータ6の回転角θmiとが入力されている。
このコントロール/駆動回路ユニット26には、図8に示す転舵制御部50が設けられている。この転舵制御部50は、目標転舵角演算部51、転舵応答性設定部52及びアクチュエータ制御装置53を備えている。
目標転舵角演算部51は、車速Vおよび回転角θmiが入力され、これらに基づいて転舵アクチュエータ8を駆動するための目標転舵角δを算出する。
転舵応答性設定部52は、直進性制御部54および外乱補償部55を有する車両の直進性を担保する直進性担保部56と、遅延制御部57とを備えている。
直進性制御部54は、前述したフロントサスペンション装置1Bのセルフアライニングトルクの不足分を補完して転舵輪17FR,17FLにセルフアライニングのための復元力を与えるものである。この直進性制御部54は、セルフアライニングトルク算出部54aと、このセルフアライニングトルク算出部54aで算出したセルフアライニングトルクに所定ゲインを乗算するゲイン乗算部54bとを備えている。
セルフアライニングトルク算出部54aには、車速Vと、ピニオン角度センサ13で検出したピニオン角度に基づいて算出される転舵輪17FR,17FLの実転舵角δrと、ヨーレートセンサ22bで検出したヨーレートγに基づいて下記(1)式の演算を行ってセルフアライニングトルクTsaを算出する。
Figure 0006135278
ここで、εcはキャスタートレイル、Kfは前輪1輪当たりのコーナリングパワー、βは重心点滑り角、Lfは重心点前輪軸間距離、Krは後輪1輪当たりのコーナリングパワー、Lrは重心点後輪軸間距離、mは車両の質量、Lは前輪後輪軸間距離である。
この(1)式において、キャスタートレイルεを通常のサスペンション装置で設定されるキャスタートレイルεc0から本実施形態で設定するキャスタートレイルεc2を減算した値に設定することにより、本発明に適用するフロントサスペンション装置1Bで不足する補完すべきセルフアライニングトルクTsaを算出することができる。
なお、セルフアライニングトルクTsaは、上記(1)式によって算出する場合に限らず、車両の横加速度Gyを検出する横加速度センサを設け、車両の横加速度Gyと車両のヨーレートγとに基づいて車両の運動方程式に基づいてヨーレートγの微分値と横加速度Gyとに基づいて横力Fyを算出し、この横力Fyにニューマチックトレイルεnを乗算することにより、算出することができる。さらには、ステアリングホイール2の操舵角θsと、セルフアライニングトルクTsaとの関係を、車速Vをパラメータとして実測するか又はシミュレーションによって算出した制御マップを参照して操舵角センサ4で検出した操舵角θsと車速Vとに基づいてフロントサスペンション装置1Bで不足する補完すべきセルフアライニングトルクTsaを算出することもできる。また、転舵輪17FR,17FLを駆動輪とする場合には、左右の駆動力差に基づいてトルクステア現象で転舵時に発生する発生トルクThを推定し、操舵トルクセンサ5で検出した操舵トルクTsから発生トルクThを減じてフロントサスペンション装置1Bで不足する補完すべきセルフアライニングトルクTsaを算出することもできる。同様に、左右の転舵輪17FR,17FLの制動力差に基づいてセルフアライニングトルクTsaを算出することができる。
ゲイン乗算部54bは、セルフアライニングトルク算出部54aで算出したセルフアライニングトルクTsaに所定の制御ゲインKsaを乗算して直進安定性補正値としてのセルフアライニングトルク制御値Asa(=Ksa・Tsa)を算出する。
外乱補償部55は、操舵トルクセンサ5からの操舵トルクTs、転舵アクチュエータ角度センサ9からの回転角θmo、およびモータ電流検出部64からのモータ電流imrが入力され、車両に入力される外乱を周波数帯域毎に分離してそれぞれ推定し、これらの外乱を抑制するための外乱補償値Adisを算出する。
この外乱補償部55では、例えば特開平2007−237840号公報に記載されているように、運転者による操舵入力である操舵トルクTsと転舵アクチュエータ8による転舵入力を制御入力とし、実際の操舵状態量を制御量とするモデルにおいて、前記制御入力をローパスフィルタに通した値と、前記制御量を前記モデルの逆特性と前記ローパスフィルタとに通した値との差に基づいて外乱を推定する複数の外乱推定部を有する。各外乱推定部は、ローパスフィルタのカットオフ周波数を異ならせることにより、外乱を複数の周波数帯域毎に分離する。
そして、直進性制御部54および外乱補償部55で算出された外乱補償値Adisおよびセルフアライニングトルク制御値Asaが加算器56aで加算されて直進性担保部56の出力となる直進安定性制御値δaを算出する。この直進安定性制御値δaは、遅延制御部57に供給される。
遅延制御部57は、図8に示すように、操舵開始検出部57a、単安定回路57b、ゲイン調整部57cおよび乗算器57dを有する。
操舵開始検出部57aは、操舵角センサ4で検出した操舵角θsに基づいて中立位置を維持する状態から右操舵又は左操舵したタイミングを検出して中立状態からの操舵開始を表す操舵開始信号SSを単安定回路57bに出力する。
また、単安定回路57bは操舵開始検出部57aから出力される操舵開始信号に基づいて所定の遅延時間例えば0.1秒の間オン状態となる制御開始遅延信号をゲイン調整部57cに出力する。
ゲイン調整部57cは、制御開始遅延信号がオン状態であるときに、制御ゲインGaを“0”に設定し、制御開始遅延信号がオフ状態であるときに制御ゲインGaを“1”に設定し、設定した制御ゲインGaを乗算器57dに出力する。
乗算器57dでは、加算器56から出力される直進安定性制御値δaが入力され、この直進安定性制御値δaに制御ゲインGaを乗算し、乗算結果を目標転舵角演算部51から出力される目標転舵角δが入力された加算器57eに供給する。
したがって、遅延制御部57では、操舵開始検出部57aで中立状態を維持している状態から右操舵又は左操舵を行った操舵開始状態を検出したときに、加算器56で算出された直進安定性制御値δaを目標転舵角δに加算する直進安定性担保制御を単安定回路57bで設定される所定時間例えば0.1秒間停止させるようにゲイン調整部57cで、直進安定性制御値δaに乗算する制御ゲインGaを“0”に設定する。そして、ゲイン調整部57cでは、0.1秒経過後に単安定回路57bの出力信号がオフ状態に反転すると、ゲイン調整部57cで、直進安定性制御値δaを目標転舵角δに加算する直進安定性担保制御を開始するように制御ゲインGaを“1”に設定する。
また、遅延制御部57は、ステアリングホイール2の操舵が継続されているときには、操舵開始検出部57aで中立状態からの操舵開始を検出しないので、単安定回路57bの出力がオフ状態を維持することにより、ゲイン調整部57cで制御ゲインGaが“1”に設定される。このため、加算器56で算出された直進安定性制御値δaをそのまま加算器56eに供給する。このため、目標転舵角δに直進安定性制御値δaが加算されて直進安定性担保制御が行われる。
さらに、転舵制御部50は、直進性制御部54の異常を検出する異常検出部58と、直進性制御部54の異常検出時に車両挙動を制御する異常時挙動制御部59とを有する。
異常検出部58には、操舵角センサ4によって検出された入力側ステアリング軸3の回転角θs、車両状態パラメータ取得部21で算出した車速Vおよび直進性制御部54のセルフアライニングトルク算出部54aから出力されるセルフアライニングトルクTsaが入力されている。この異常検出部58では、例えば車両が走行開始した状態すなわち|V|>0の状態で、且つ操舵角θsの中立位置から右または左に操舵を開始したときの操舵角θsの変化量Δθsの絶対値|Δθs|が所定閾値Δθth以上となったときに、セルフアライニングトルク算出部54aで前記(1)式にしたがって算出されるセルフアライニングトルクTsaの変化量ΔTsaが予め設定した設定値ΔTss以上であるか否かを判定する。そして、異常検出部58では、上記判定結果がΔTsa≧ΔTssであるときに直進性制御部54が正常であると判断し、ΔTsa<ΔTssであるときに直進性制御部54が異常であると判断する。また、異常検出部58は、直進性制御部54が正常であると判断したときには論理値“0”のフェール信号Sfを出力し、直進性制御部54が異常であるときには論理値“1”のフェール信号Sfを出力する。
なお、異常検出部58での直進性制御部54の異常判定は、上記に限定されるものではなく、車両の走行状態で、且つ操舵状態であって、セルフアライニングトルクTsaが変化する状況を監視し、セルフアライニングトルクTsaの変化が所定時間以上ないときまたは所定時間内の変化量が少ないときに直進性制御部54の異常と判定するようにしてもよい。
また、異常検出部58は、ゲイン乗算部54bから出力されるセルフアライニングトルク制御値Asaに基づいて直進性制御部54の異常を検出するようにしてもよい。
また、コントロール/駆動回路ユニット26は、前述した異常検出部58で直進性制御部54が異常であることを検出したときに動作される異常時挙動制御部59を備えている。
この異常時挙動制御部59には、操舵角センサ4で検出した操舵角θs、ハブ横力センサ22aで検出したタイヤ横力Ft、異常検出部58からのフェール信号Sfが入力されるとともに、車両状態パラメータ取得部21で算出した車速Vが入力されている。この異常時挙動制御部59では、異常検出部58からフェール信号Sfが入力されたときに動作状態となって、目標タイヤ横力を算出するとともに、算出した目標タイヤ横力とタイヤ横力Ftが一致するように、前輪17FR及び17FLの制動力を制御する制動力付与部としての圧力制御ユニット20に対して車両挙動制御信号Smを出力する。
異常時挙動制御部59では、論理値“1”のフェール信号Sfが入力されたときに、車両挙動を安定化させる異常時挙動制御処理を実行する。
この異常時挙動制御処理は、フェール信号Sfが入力されたときに起動され、所定時間(例えば1μsec)毎に実行されるタイマ割込処理として実行される。
この異常時挙動制御処理は、図9に示すように、まず、ステップS1では車速Vを読込み、次いでステップS2に移行して、このステップS2では操舵角θsを読込んでからステップS3に移行する。
このステップS3では、ステップS2で読込んだ操舵角θsが“0”すなわち直進走行状態であるか否かを判定し、θ≠0であるときには旋回状態であると判断してステップS4に移行する。このステップS4では、旋回外輪側のハブ横力センサ22aで検出したタイヤ横力Ft0を読込んでからステップS5に移行する。
このステップS5では、車速Vと操舵角θsとに基づいて図10に示す目標タイヤ横力算出マップを参照して旋回外輪側の目標タイヤ横力Ftを算出してからステップS6に移行する。ここで、目標タイヤ横力算出マップは、図10に示すように、正値(例えば右旋回時)の操舵角θsをパラメータとして車速Vと旋回外輪側の目標タイヤ横力Ftとの関係を表している。すなわち、実験またはシミュレーションによって求めた操舵角θs0、θs1、θs2、θs3及びθs4のそれぞれについて車速Vと旋回外輪側の目標タイヤ横力Ftとの関係を表す特性線L0、L1、L2、L3及びL4が設定されている。
この目標タイヤ横力算出マップでは、特性線L1〜L4上の点が車両ステア特性をニュートラルステアとする目標タイヤ横力を表している。したがって、特性線L1〜L4を境界線として操舵角θsが小さくなる領域がアンダーステア領域に設定され、操舵角θsが大きくなる領域がオーバーステア領域に設定されている。同様に、図示は省略するが負値(例えば左旋回時)の操舵角θsをパラメータとした目標タイヤ横力算出マップも備えている。
なお、操舵角θsが零となる直進走行状態では、車両のステア領域を設定することができないので、図11に示すように、左右輪のタイヤ横力を読込み、大きな値のタイヤ横力が旋回外輪となるので、この旋回外輪に対して制動力を付与して旋回状態となることを抑制する。
ステップS6では、算出した目標タイヤ横力Ftとタイヤ横力Ftとを比較し、両者が等しい(Ft=Ft)か否かを判定する。この判定結果が、タイヤ横力Ftと目標タイヤ横力Ftとが等しい場合すなわちFt=Ftである場合には、車両ステア特性ニュートラルステアが維持されているものと判断してタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
一方、ステップS6の判定結果が、Ft≠Ftであるときには、ステップS7に移行して、旋回外輪側の目標タイヤ横力Ftから旋回外輪側のタイヤ横力Ftを減算した偏差が正であるか否かを判定する。この判定結果が、Ft−Ft>0であるときにはタイヤ横力Ftが目標タイヤ横力Ftより小さく車両の特性がアンダーステアであると判断してステップS8に移行する。このステップS8では、旋回内輪側の車輪のホイールシリンダ19に対して制動力を付与する車両挙動制御信号Smを圧力制御ユニット20に対して出力してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
一方、ステップS7の判定結果が、Ft−Ft<0であるときには、車両ステア特性がオーバーステアであると判断してステップS9に移行する。このステップS9では、旋回外輪側の車輪のホイールシリンダ19に対して制動力を付与する車両挙動制御信号Smを出力してからタイマ割込処理を終了する。
さらに、前述したステップS3の判定結果が、θs≠0である場合には、ステップS10に移行して、左右輪のタイヤ横力FtL及びFtRを読込んでからステップS11に移行する。
このステップS11では、右輪のタイヤ横力FtRから左輪のタイヤ横力FtLを減算した偏差が正であるか否かを判定する。この判定結果が、FtR−FtL>0であるときには直進走行状態から右旋回状態に移行しようとしているものと判断してステップS12に移行する。このステップS12では、右輪のホイールシリンダ19に対して制動力を付与する車両挙動制御信号Smを圧力制御ユニット20に出力してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
また、前記ステップS11の判定結果が、FtR−FtL≦0であるときには、ステップS13に移行して、FtR−FtL<0であるか否かを判定する。この判定結果が、FtR−FtL<0であるときには車両が左旋回状態に移行しようとしているものと判断してステップS14に移行し、左輪のホイールシリンダ19に対して制動力を付与する車両挙動制御信号Smを圧力制御ユニット20に出力してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
さらに、ステップS13の判定結果が、FtR=FtLであるときには、直進走行状態を維持しているものと判断してそのままタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
アクチュエータ制御装置53は、転舵角偏差Δδを算出する転舵角偏差演算部61と、転舵モータ制御部62と、電流偏差演算部63とモータ電流制御部65とを備えている。
転舵角偏差演算部61は、加算器57eから出力される目標舵角補正値δaから転舵アクチュエータ角度センサ9から出力される転舵アクチュエータ角度に基づく実転舵角δrを減算して舵角偏差Δδを算出し、算出した舵角偏差Δδを転舵モータ制御部62に出力する。
転舵モータ制御部62は、入力される転舵角偏差Δδが零となるようにアクチュエータ8を構成する転舵モータ8aの駆動指令電流imを算出し、算出した駆動指令電流imを電流偏差演算部63に出力する。
電流偏差演算部63は、入力される駆動指令電流imから転舵アクチュエータ8を構成する転舵モータ8aに供給するモータ電流を検出するモータ電流検出部64から出力されるモータ電流imrを減算して電流偏差Δiを算出し、算出した電流偏差Δiをモータ電流制御部65に出力する。
モータ電流制御部65は、入力される電流偏差Δiが零となるように、すなわち、実際のモータ電流imrが駆動指令電流imに追従するようにフィードバック制御し、このモータ電流imtが転舵モータ8aに出力される。
(第1の実施形態の動作)
次に、上記第1の実施形態の動作を図12および図13を伴って説明する。
今、直進性制御部54が正常であり、ステアリングホイール2を中立位置に保持して直進走行しているものとする。
この直進走行状態では、目標転舵角演算部51で演算される目標転舵角δが零となる。このため、アクチュエータ制御装置53で制御される転舵モータ8aによって、ラック軸14が中立位置に制御され、タイロッド15を介して転舵輪17FRおよび17FLの転舵角δrが零に制御される。このとき、ステアリングホイール2が中立位置を保持しているので、ヨーレートセンサ22bで検出される車両のヨーレートγは零であり、直進性制御部54のセルフアライニングトルク算出部54aで前記(1)式に従って算出されるセルフアライニングトルクTsaは、転舵角δrが零であることにより重心点横滑り角βが零となり、ヨーレートγも零であるので、零となる。
外乱補償部55では、外乱を抑制する外乱補償値Adisが算出されるので、この外乱を生じていないときには外乱補償値Adisも零となる。
さらに、異常時挙動制御部59では、直進性制御部54が正常であり、異常検出部58から論理値“1”のフェール信号Sfが入力されていないので、動作を停止している。
この状態では、アクチュエータ制御装置53の転舵角偏差演算部61から出力される転舵角偏差Δδも零となり、転舵モータ制御部62から出力されるモータ電流指令値imも零となる。このためモータ電流制御部65からモータ電流imtは出力されず、転舵モータ8aは停止状態を維持し、ラック軸14が中立位置を維持して転舵輪17FRおよび17FLの転舵角δtが“0”に制御される。
この直進走行状態で、転舵輪17FRおよび17FLの少なくとも一方が轍にはまったり、マンホールの蓋を通過したりして転舵輪17FRおよび17FLの一方が転舵されたり、ヨーレートγが発生したりすると、直進性制御部54のセルフアライニングトルク算出部54aで算出されるセルフアライニングトルクTsaが増加する。このとき、前述したフロントサスペンション装置1Bのようにステアリングホイール2が中立位置にある状態でキングピン軸KSがタイヤ接地面を通るように設定して直進安定性より転舵応答性を重視した場合には、フロントサスペンション装置1B自体で発生するセルフアライニングトルクTsaが不足することになる。
しかしながら、本実施形態では、前述した(1)式に基づいてセルフアライニングトルクTsaを算出するので、この(1)式におけるキャスタートレイルεcを通常のフロントサスペンション装置で設定するキャスタートレイルεc0から本実施形態で設定する応答性を重視したフロントサスペンション装置のキャスタートレイルεc2を減算した値に設定しておくことにより、算出されるセルフアライニングトルクTsaは本実施形態に適用される転舵応答性を重視したフロントサスペンション装置1Bで不足するセルフアライニングトルクに対応した補完すべき値を算出することができる。そして、算出したセルフアライニングトルクTsaにゲインKsaを乗算して、セルフアライニングトルク制御値Asaを算出し、このセルフアライニングトルク制御値Asaを遅延制御部57に供給する。
このとき、遅延制御部57では直進走行状態であるので操舵開始検出部57aで操舵開始を検出することはなくゲイン調整部57cでゲインGaが“1”に設定されている。このため、セルフアライニングトルク制御値Asaがそのまま加算器57eに供給される。
このため、目標転舵角δがセルフアライニングトルク制御値Asaで補正されることにより、アクチュエータ制御装置53で転舵アクチュエータ8を構成する転舵モータ8aが駆動制御されて、転舵モータ8aでセルフアライニングトルクTsaに相当するセルフアライニングのための復元力を発生させ、これがラック軸14およびタイロッド15を介して転舵輪17FRおよび17FLに伝達される。
このため、転舵輪17FRおよび17FLに対してセルフアライニングのための復元力となるセルフアライニングトルクTsaを付与させて、フロントサスペンション装置1Bでのセルフアライニングトルク不足を補完して車両の直進性を担保することができる。
ところが、ステアリングホイール2を中立位置に保持した直進走行状態を維持している状態からステアリングホイール2を右(又は左)に操舵する転舵状態となると、この直進走行状態からの操舵による転舵状態への移行が操舵開始検出部57aで検出される。
このため、単安定回路57bから所定時間例えば0.1秒間オン状態となる制御遅延信号がゲイン調整部57cに出力される。したがって、ゲイン調整部57cで、制御遅延信号がオン状態を継続している間制御ゲインGaが“0”に設定される。このため、乗算器57dから出力される乗算出力は“0”となり、直進性担保制御値δaの加算器57eへの出力が停止される。
したがって、ステアリングホイール2の中立位置から操舵を開始した時点から0.1秒の初期応答期間T1の間は制御ゲインGaが“0”に設定されるので、乗算器57dから出力される乗算出力が“0”となり、目標転舵角δに対する直進性担保制御が図13(b)で実線図示のように停止される。
このため、操舵角センサ4で検出した操舵角θsが目標転舵角演算部51に供給され、この目標転舵角演算部51で演算された目標転舵角δがそのまま転舵角偏差演算部61に供給される。このため、目標転舵角δに一致するように転舵モータ8aが回転駆動される。この間、直進性制御部54における直進性担保制御が停止される。
したがって、初期応答期間T1では、キングピン軸KSの路面接地点がタイヤの接地面内の接地中心位置に設定され、且つキャスター角が零に設定されたフロントサスペンション装置1Bによる転舵が開始される。
このとき、フロントサスペンション装置1Bのキャスター角が零に設定されている。このキャスター角と転舵応答性と操縦安定性との関係は、図12(a)に示すように、キャスター角が零であるときには転舵応答性が高い状態をとなるが、操縦安定性を確保することはできない、すなわち、キャスター角に対する転舵応答性と操縦安定性とはトレードオフの関係が存在する。
このため、中立位置から操舵を開始した初期状態では、ステアバイワイヤ制御による直進性担保制御は実行されないことにより、この初期転舵をフロントサスペンション装置1Bが賄うことになる。
この初期応答期間T1では、フロントサスペンション装置1Bは、上述したように、キャスター角が零あり、操縦応答性が高いので、図13(a)で実線図示の特性線L1で示すように、一点鎖線図示の特性線L2で示す一般的なステアバイワイヤ形式の操舵系を有する車両における転舵応答特性(ヨーレート)より高い転舵応答特性(ヨーレート)とすることができる。このとき、運転者のステアリングホイール2の操舵による操舵角変化に対応した転舵角変化となるので、運転者に違和感を与えることはない。
ところが、フロントサスペンション装置1Bによる転舵応答性のみで初期応答期間T1を越えて転舵を継続すると、図13(a)で破線図示の特性線L3のように中期応答期間T2および後期応答期間T3で操舵による車両の転舵応答性が敏感になる。また、中期応答期間T2から後期応答期間T3に掛けての車両の内側への巻き込み現象が大きくなってしまう。
このため、上記第1の実施形態では、図13(b)に示すように、初期応答期間T1が経過する例えば0.1秒後に、直進性制御部54および外乱補償部55による目標転舵角δに対する直進性担保制御がステップ状に開始される。このため、フロントサスペンション装置1Bによる車両の転舵応答性を抑制して車両のふらつきを抑制するとともに、図12(b)で点線図示のように、ステアバイワイヤ制御によってフロントサスペンション装置1Bの直進性を補完して、操縦安定性を確保することができる。
その後、中期応答期間T2が終了する例えば0.3秒経過後には、直進性制御部54による直進性担保制御により一般的な車両の転舵応答特性に比較しても転舵応答特性をより抑制してアンダーステア傾向とすることができる。これにより、図13(a)で実線図示の特性線L1で示すように、操縦安定性を向上させることができ、特性線L1で示す理想的な車両の転舵応答特性を実現することができる。
この直進性制御部54が正常な状態から直進性制御部54に異常が発生したり、直進性制御部54の入力系統に断線や地絡が発生することにより、直進性制御部54を構成するセルフアライニングトルク算出部で算出するセルフアライニングトルクTsaが算出できない状態となると、これが異常検出部58で検出される。このため、この異常検出部58から論理値“1”のフェール信号Sfが異常時挙動制御部59に出力される。
しかしながら、本実施形態では、異常検出部58から論理値“1”のフェール信号Sfが異常時挙動制御部59に入力されると、これと同時に、異常時挙動制御部59が作動状態となって、図9に示す異常時挙動制御処理が実行される。
このため、車両が旋回状態にある状態では、ステップS2で読込まれる操舵角θsがθs≠0となっているので、図9の処理において、ステップS3からステップS4に移行して、旋回外輪側のハブ横力センサ22aで検出したタイヤ横力Ftを読込む。次いで、ステップS5に移行して、操舵角θsに基づいて図10に示す目標タイヤ横力算出マップの特性線Li(Li=L1〜L4)を選択し、選択した特性線Liと車速車速Vとに基づいてニュートラル特性とする外輪側の目標タイヤ横力Ftを算出する。
その後、外輪側の目標タイヤ横力Ftから外輪のタイヤ横力Ftを減算した偏差Ft−Ftを算出し、この偏差Ft−Ftが“0”である場合には、ニュートラルステア特性が維持されているものとしてタイマ割込処理を終了して、次にタイマ割込処理を開始するまで待機する。
ところが、旋回外輪側に路面外力が作用することにより、旋回外輪側のタイヤ横力Ftが目標タイヤ横力Ftより小さい場合には、転舵輪17FR及び17FLの外輪側がアンダーステア側すなわち直進状態に戻す方向にタイヤ横力が作用しているものと判断する。したがって、ステップS7からステップS8に移行して、旋回内輪側の車輪に対してタイヤ横力偏差に応じた制動力を発生させる車両挙動制御信号Smを圧力制御ユニット20に出力する。このため、圧力制御ユニット20で旋回内輪側の車輪のホイールシリンダ19に対して制動圧を供給して旋回内輪側の車輪に制動力を付与する。このため、車両にニュートラルステア方向に戻すヨーモーメントが発生されて、車両のステア特性がニュートラルステア側に修正される。
逆に、旋回外輪側に路面外力が作用することにより、旋回外輪側のタイヤ横力Ftが目標タイヤ横力Ftより大きい場合には、転舵輪17FR及び17FLの外輪側がオーバーステア側すなわち旋回半径が小さくなる方向にタイヤ横力が作用しているものと判断する。したがって、ステップS7からステップS9に移行して、旋回外輪側の車輪に対してタイヤ横力偏差に応じた制動力を発生させる車両挙動制御信号Smを圧力制御ユニット20に出力する。このため、圧力制御ユニット20で旋回外輪側の車輪のホイールシリンダ19に対して制動圧を供給して旋回外輪側の車輪に制動力を付与する。このため、車両にニュートラルステア方向に戻すヨーモーメントが発生されて、車両のステア特性がニュートラルステア側に修正される。
したがって、図14に示すように、ステアバイワイヤシステムSBWに異常が発生して転舵輪17FR及び17FLの転舵制御を行うことができなくなったときに、そのときの操舵角θsに応じて車両特性がニュートラルステアとなる目標タイヤ横力Ftを算出し、この目標タイヤ横力Ftにタイヤ横力Ftが一致するように左右輪の何れかに制動力を付与して図14の曲線L11で示すようにニュートラルステアを維持しながら旋回走行することができる。
ちなみに、異常時挙動制御部59を適用しない場合には、フロントサスペンション装置1への転舵応答性が高くセルフアライニングトルクが不足するので、路面からの外乱入力により転舵輪17FR及び17FLが転舵され易くなる。このため、車両の挙動が不安定となり、車両の旋回走行経路が図14で点線図示の曲線L12で誇張して示すようにジグザグ状の走行経路となり、運転者に違和感を与えることになる。
本実施形態によると、上述したように異常時挙動制御部59でニュートラルステアを維持するように左右輪の制動力が制御されるので、路面からの外乱入力の影響を受けることなく車両挙動が安定化されて円滑な走行経路を通って旋回走行することができる。したがって、運転者に違和感を与えることがない。
また、車両が直進走行状態であって、操舵角θsが“0”である状態では、旋回状態のように車両のステア特性を判断することはできないので、左右の転舵輪17FR及び17FLのハブ横力センサ22aで検出したタイヤ横力FtR及びFtLを読込む(ステップS10)。そして、図11に示すように、左右のタイヤ横力FtR及びFtLのうち右輪17FRのタイヤ横力FtRが左輪17FLのタイヤ横力FtLより大きい場合(FtR−FtL>0)は、車両が左旋回する方向にタイヤ横力が作用しているものと判断する。このため、右転舵輪17FLのホイールシリンダ19に対してタイヤ横力偏差に応じた制動力を発生させるように制動圧を作用させる。このため、車両の左旋回が抑制されてニュートラルステアを維持し、直進性を担保することができる。
逆に、左右のタイヤ横力FtR及びFtLのうち左輪17FLのタイヤ横力FtLが右輪17FRのタイヤ横力FtRより大きい場合(FtR−FtL<0)は、車両が右旋回する方向にタイヤ横力が作用しているものと判断する。このため、左転舵輪17FLのホイールシリンダ19に対してタイヤ横力偏差に応じた制動力を発生させるように制動圧を作用させる。このため、車両の右旋回が抑制されてニュートラルステアを維持し、直進性を担保することができる。
さらに、左右のタイヤ横力FtR及びFtTLが等しい場合(FtR=FtL)である場合には、ニュートラルステア特性にあるものと判断して圧力制御ユニット20に対して車両挙動制御信号Smを出力することなくタイマ割込処理を終了して、次回のタイマ割込処理まで待機する。
このように、直進性制御部54に異常が発生して、フロントサスペンション装置1Bで発生するセルフアライニングトルクが不足する異常状態が発生すると、異常時挙動制御部59が起動されて、路面外力によるフロントサスペンションの転舵を抑制することができる。したがって、直進性制御部54の異常時に路面外乱によるヨーレート変化を抑制して車両挙動を安定化することができる。
なお、本実施形態において、入力側ステアリング軸3、操舵反力アクチュエータ6、操舵反力アクチュエータ角度センサ7、転舵アクチュエータ8、転舵アクチュエータ角度センサ9、出力側ステアリング軸10、および転舵制御部50を含むコントロール/駆動回路ユニット26がステアバイワイヤシステムSBWを構成する。また、車輪17FR,17FL,17RR,17RLがタイヤホイール、タイヤおよびホイールハブ機構に対応し、第1リンク37、第2リンク38、ショックアブソーバ40が複数のリンク部材に対応する。また、第1リンク37および第2リンク38でロアアームを構成し、バネ部材34およびショックアブソーバ40がストラット部材STを構成している。
なお、上記第1の実施形態においては、転舵制御部50をハードウェアで構成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば目標転舵角演算部51、転舵応答性設定部52を例えばマイクロコンピュータ等の演算処理装置で構成し、この演算処理装置で、図15に示す転舵制御処理を実行するようにしてもよい。
この転舵制御処理は、図15に示すように、先ず、ステップS21で、車速V、操舵角センサ4で検出した操舵角θs、転舵アクチュエータ角度センサ9で検出した回転角θmo、操舵トルクセンサ5で検出した操舵トルクTs等の演算処理に必要なデータを読込む。次いで、ステップS22に移行して、操舵角センサ4で検出した操舵角θsに基づいてステアリングホイール2が中立位置を保持している状態から右又は左に操舵された操舵開始状態であるか否かを判定し、操舵開始状態ではないときにはステップS23に移行する。
このステップS23では、操舵開始制御状態であることを表す制御フラグFが“1”にセットされているか否かを判定し、制御フラグFが“0”にリセットされているときには、ステップS24に移行して、制御ゲインGaを“1”に設定してからステップS25に移行する。
このステップS25では、前述した目標転舵角演算部51と同様に車速Vと操舵角θsに基づいて目標転舵角δを算出する。
次いで、ステップS26に移行して、前述した直進性制御部54のセルフアライニングトルク算出部54aと同様に、前記(1)式の演算を行ってフロントサスペンション装置1Bで不足するセルフアライニングトルクTsaを算出し、このセルフアライニングトルクTsaに所定ゲインKsaを乗算してセルフアライニングトルク制御値Asaを算出する。
次いで、ステップS27に移行して、転舵アクチュエータ角度センサ9からのモータ回転角θmo、操舵トルクTsおよびモータ電流検出部64で検出したモータ電流imrに基づいて車両に入力される外乱を周波数帯域毎に分離してそれぞれ推定し、これらの外乱を抑制するための外乱補償値Adisを算出する。
次いで、ステップS28に移行して、目標転舵角δと、セルフアライニングトルク制御値Asaと、外乱補償値Adisとに基づいて下記(2)式の演算を行って加算後目標転舵角δaを算出する。
δa=δ+Ga(Asa+Adis) …………(2)
次いで、ステップS29に移行して、ステップS28で算出した加算後目標転舵角δaを図8における転舵角偏差演算部61に出力してから前記ステップS21に戻る。
また、ステップS22の判定結果が操舵開始状態であるときにはステップS30に移行して、制御フラグFを“1”にセットしてからステップS31に移行する。さらに、ステップS23の判定結果が、制御フラグFが“1”にセットされているときに直接ステップS31に移行する。
このステップS31では、予め設定された遅延時間(例えば0.1秒)が経過したか否かを判定する。このとき、遅延時間が経過していないときには、ステップS32に移行し、制御ゲインGaを“0”に設定してから前記ステップS25に移行して、目標転舵角δ*を算出する。
また、ステップS31の判定結果が、所定の遅延時間(例えば0.1秒)が経過したときには、ステップS33に移行して、制御フラグFを“0”にリセットしてから前記ステップS24に移行して、制御ゲインGaを“1”に設定する。
この図15に示す転舵制御演算処理でも、ステアリングホイール2が中立位置に保持されている状態から右又は左に操舵が開始された操舵開始状態ではないときには、目標転舵角δにセルフアライニングトルク制御値Asaおよび外乱補償値Adisを加算した直進性担保制御値δaを目標転舵角δに加算する直進性担保制御が行われる。
これに対して、ステアリングホイール2が中立位置に保持されている状態から右又は左に操舵が開始された操舵開始状態であるときには、予め設定された遅延時間が経過するまでは、制御ゲインGaが“0”に設定されるため、直進性担保制御が停止される。このため、目標転舵角δのみが転舵角偏差演算部61に出力され、これによって転舵アクチュエータ8を構成する転舵モータ8aが回転駆動される。このため、初期転舵応答性はサスペンション装置自体の高転舵応答性が設定されることになり、高転舵応答性を得ることができる。
その後、遅延時間が経過すると、制御ゲインGaが“1”に設定されるため、目標転舵角δにセルフアライニングトルク制御値Asaおよび外乱補償値Adisが加算された直進性担保制御値δaを目標転舵角δに加えた値によって転舵アクチュエータ8を構成する転舵モータ8aを回転駆動する。このため、フロントサスペンション装置1Bの高転舵応答性が抑制されると共に、フロントサスペンション装置1Bの直進性が担保されて、理想的な転舵応答特性を得ることができる。
この転舵制御処理でも、車両の直進走行状態では、目標転舵角δが零となり、外乱が生じない場合には、この目標転舵角δが直接図8の転舵角偏差演算部61に供給されるので、前述したと同様にアクチュエータ制御装置53によって直進性が担保される。
この図15の処理において、ステップS25の処理が目標転舵角演算部51に対応し、ステップS26の処理が直進性制御部54に対応し、ステップS27の処理が外乱補償部55に対応し、ステップS22〜S24、S30〜S33の処理が遅延制御部57に対応し、ステップS22〜33の処理が転舵応答性設定部52に対応している。
(第1実施形態の効果)
(1)アッパーピボット点及びロアピボット点を通るキングピン軸をステアリングホイールの中立位置でタイヤ接地面を通るように設定したフロントサスペンション装置と、前記ステアリングホイールの操舵状態に応じてアクチュエータを動作させて、当該ステアリングホイールから切り離された左右の転舵輪を転舵させるステアバイワイヤシステムとを備えた車両であって、前記ステアバイワイヤシステムに設けた前記アクチュエータを動作させて前記転舵輪に対するセルフアライニングのための復元力を発生する直進性制御部と、車両の車速を検出する車速検出部と、車両のタイヤ横力を検出するタイヤ横力検出部と、前記ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出部と、前記左右の車輪に対して個別に制動力を付与する制動力付与部と、前記直進性制御部の異常を検出する異常検出部と、該異常検出部で前記直進性制御部の異常を検出したときに、前記操舵角及び前記車速に基づいて目標タイヤ横力を算出し、前記タイヤ横力が前記目標タイヤ横力に一致するように前記制動力付与部を制御する異常時挙動制御部とを備えている。
この構成によれば、サスペンション装置のキングピン軸周りのモーメントをより小さくすることができるため、より小さいラック軸力で転舵を行うことができると共に、より小さい力で車輪の向きを制御できる。
したがって、転舵応答性を向上させることができる。このとき、キャスター角を零近傍の値とすることにより、転舵応答性をより高めたサスペンション装置を構成することができる。
さらに、サスペンション装置の転舵応答性を確保することによる車両の直進性の低下を直進性制御部で担保することができる。
そして、直進性制御部に異常が発生してフロントサスペンション装置で発生するセルフアライニングのための復元力が不足する状態となったときに、異常時挙動制御部が作動状態となって、タイヤ横力が目標タイヤ横力に一致するように制動力付与部を制御する。このため、路面からの外部入力の影響による車両ステア特性の変動を抑制して車両挙動を安定させることができる。このとき、車両挙動の安定化制御が、タイヤ横力を検出し、このタイヤ横力が目標タイヤ横力と一致するように制動力付与部の制動力を制御することにより行われる。このため、従来例のようにヨーレートを算出し、算出したヨーレートに基づいて車両挙動制御を行う場合に生じる応答遅れを抑制して迅速な挙動制御を適正に行うことができる。
(2)前記転舵輪を支持するフロントサスペンション装置が直進安定性より転舵応答性を重視するサスペンションジオメトリに設定されている。
この構成によれば、フロントサスペンション装置を軽い転舵力で転舵させることができ、転舵機構を軽量化することができる。
(3)前記直進性制御部は、フロントサスペンション装置のセルフアライニングトルク不足分を補完するセルフアライニングトルクを算出する。
この構成によれば、フロントサスペンション装置のセルフアライニングトルク不足分を補完して車両の直進安定性を確実に担保することができる。
(4)前記異常時挙動制御部は、前記タイヤ横力と前記目標タイヤ横力とが一致するように左右輪の一方に制動力を付与して車両ステア特性をニュートラルステアとしている。
この構成によれば、運転者がステアリングホイールを操舵したときの操舵感覚に応じた車両のステア特性を得ることができ、運転者に違和感を与えることを確実に防止することができる。
(5)前記異常時挙動制御部は、操舵角をパラメータとし、車速とタイヤ横力との関係を表す特性線を設定した目標タイヤ横力算出マップを参照して目標タイヤ横力を算出する。
この構成によれば、目標タイヤ横力の算出を、操舵角及び車速をもとに目標タイヤ横力算出マップを参照することにより、直ちに行うことができ、目標タイヤ横力の算出を迅速且つ正確に行うことができる。
(6)前記目標タイヤ横力算出マップは、操舵角に応じたニュートラルステア特性を得るために必要なタイヤ横力が定義されている。
この構成によれば、目標タイヤ横力算出マップを参照して算出した目標タイヤ横力にタイヤ横力が一致するように左右の車輪に対する制動力を制御するだけで、車両ステア特性をニュートラルステアに制御することができる。
(7)前記タイヤ横力検出部は、ハブユニットに内蔵されたハブ横力センサで構成されている。
この構成によれば、タイヤに作用する横力をハブ横力センサで検出遅れを生じることなく直接且つ正確に検出することができる。
(8)フロントサスペンション装置は、ステアリングホイールが中立位置にあるときに、キングピン軸がタイヤ接地面内を通るように設定されている。また、前記サスペンション装置の直進性は直進性担保部で担保されている。
(第1実施形態の応用例)
上記第1の実施形態では、ステアリングラック部材14を一つの転舵アクチュエータ8で駆動する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、2つの転舵アクチュエータを適用してステアリングラック部材14を駆動するようにしてもよい。この場合には、一方の転舵アクチュエータに故障が発生してもステアリングラック部材14の駆動が可能となる。
(転舵機構の変形例)
なお、転舵輪を転舵する転舵機構としては、ラックアンドピニオン機構に代えてボールねじ機構を適用することができ、この場合にはボールナットを転舵アクチュエータ8で回転駆動するようにすればよい。このように、ボールねじ機構を適用することにより、転舵角を高精度に制御することができる。
また、転舵機構としてピニオンアンドラック機構やボールねじ機構に代えて他の形式の転舵機構を適用することができる。
(本発明の異常時挙動制御部応用例)
上記実施形態では、目標タイヤ横力算出マップを参照して目標タイヤ横力を算出する場合について説明した。しかしながら、本発明は上記に限定されるものではなく、目標タイヤ横力算出マップを参照する場合に代えて、操舵角をパラメータとする複数の操舵角特性線を車速および目標タイヤ横力の関数として表し、操舵角θsをもとに操舵角特性線を選択し、選択した操舵角特性線に車速Vを代入することにより目標タイヤ横力を算出するようにしてもよい。
このように操舵特性線を車速と目標タイヤ横力の関数で表すことにより、目標タイヤ横力算出マップを用いることなく、操舵角特性線を選択して演算処理することにより目標タイヤ横力を算出することができる。
なお、上記実施形態において、目標タイヤ横力算出マップにおける操舵角特性線の本数を4本に設定した場合について説明したが、操舵角特性線の本数は4本に限らず任意数に設定することができる。
また、上記実施形態では、異常時挙動制御部59で車両挙動制御信号Smを圧力制御ユニット20に出力することにより、転舵輪17FR及び17FLの一方に制動力を付与する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、前後の左側車輪及び右側車輪の一方について前後同時に制動力を作用させて車両を回頭させるようにしてもよい。
(本発明に適用するフロントサスペンション応用例)
上記実施形態では、フロントサスペンション装置のロアリンクを互いに交差することがない第1リンク37と第2リンク38とで構成する場合について説明した。しかしながら、サスペンション装置の構成は上記構成に限定されるものではなく、キングピン軸がタイヤ接地面内を通るように設定して、転舵力を軽減できればよい。このため、ロアリンク構造を例えば図16に模式的に示すように、互いに交差するトランスバースリンク81とコンプレッションリンク82とで構成することもできる。また、ロアリンク構造を、図17に模式的に示すように、互いに交差するトランスバースリンク81とテンションリンク83とで構成することもできる。
(応用例の効果)
このように、ロアリンク構造を平面視で互いに交差する第1リンクおよび第2リンクで構成することにより、キングピン軸を構成するロアピボット点を両リンクの交点位置とすることができる。このため、ロアピボット点の位置を転舵輪の車体内側により近づけることが可能となる。したがって、キングピン軸がタイヤ接地面内を通るように設定することが容易となる。
また、フロントサスペンション装置1Bとしては上記構成に限定されるものではなく、他の種々の構成のサスペンション装置を適用することができる。
1…車両、1A…車体、1B…サスペンション装置、2…ステアリングホイール、3…入力側ステアリング軸、4…操舵角センサ、5…操舵トルクセンサ、6…操舵反力アクチュエータ、7…操舵反力アクチュエータ角度センサ、8…転舵アクチュエータ、8a…転舵モータ、9…転舵アクチュエータ角度センサ、10…出力側ステアリング軸、11…転舵トルクセンサ、12…ピニオンギヤ、13…ピニオン角度センサ、14…ラック軸、15…タイロッド、16…タイロッド軸力センサ、17FR,17FL,17RR,17RL…車輪、18…ブレーキディスク、19…ホイールシリンダ、20…圧力制御ユニット、21…車両状態パラメータ取得部、22a…ハブ横力センサ、22b…ヨーレートセンサ、24FR,24FL,24RR,24RL…車輪速センサ、26…駆動回路ユニット、27…メカニカルバックアップ、32…車軸、33…アクスルキャリア、34…バネ部材、37…第1リンク、38…第2リンク、40…ショックアブソーバ、41…スタビライザ、SBW…ステアバイワイヤシステム、50…転舵制御部、51…目標転舵角演算部、52…転舵応答性設定部、53…アクチュエータ制御装置、54…直進性制御部、54a…セルフアライニングトルク算出部、54b…ゲイン乗算部、55…外乱補償部、56…直進性担保部、56a…加算器、57…遅延制御部、57a…操舵開始検出部、57b…単安定回路、57c…ゲイン調整部、57d…乗算器、57e…加算器、58…異常検出部、59…異常時挙動制御部、60…電流偏差演算部、61…転舵角偏差演算部、62転舵モータ制御部、63…電流偏差演算部、64…モータ電流検出部、65…モータ電流制御部、81…トランスバースリンク、82…コンプレッションリンク、83…テンションリンク

Claims (7)

  1. アッパーピボット点及びロアピボット点を通るキングピン軸をステアリングホイールの中立位置でタイヤ接地面を通るように設定したフロントサスペンション装置と、前記ステアリングホイールの操舵状態に応じてアクチュエータを動作させて、当該ステアリングホイールから切り離された左右の転舵輪を転舵させるステアバイワイヤシステムとを備えた車両であって、
    前記ステアバイワイヤシステムに設けた前記アクチュエータを動作させて前記転舵輪に対するセルフアライニングのための復元力を発生する直進性制御部と、
    車両の車速を検出する車速検出部と、
    車両のタイヤ横力を検出するタイヤ横力検出部と、
    前記ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出部と、
    前記左右の車輪に対して個別に制動力を付与する制動力付与部と、
    前記直進性制御部の異常を検出する異常検出部と、
    該異常検出部で前記直進性制御部の異常を検出したときに、前記操舵角及び前記車速に基づいて目標タイヤ横力を算出し、前記タイヤ横力が前記目標タイヤ横力に一致するように前記制動力付与部を制御する異常時挙動制御部と
    を備えたことを特徴とする車両。
  2. 前記フロントサスペンション装置はサスペンションジオメトリが直進安定性より転舵応答性を重視するように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両。
  3. 前記直進性制御部は、前記フロントサスペンション装置のセルフアライニングトルク不足分を補完するセルフアライニングトルクを算出することを特徴とする請求項2に記載の車両。
  4. 前記異常時挙動制御部は、前記タイヤ横力と前記目標タイヤ横力とが一致するように左右輪の一方に制動力を付与して車両ステア特性をニュートラルステアとすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両。
  5. 前記異常時挙動制御部は、操舵角をパラメータとし、車速とタイヤ横力との関係を表す特性線を設定した目標タイヤ横力算出マップを参照して目標タイヤ横力を算出することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両。
  6. 前記目標タイヤ横力算出マップは、操舵角に応じたニュートラルステア特性を得るために必要なタイヤ横力が定義されていることを特徴とする請求項5に記載の車両。
  7. 前記タイヤ横力検出部は、ハブユニットに内蔵されたハブ横力センサで構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車両。
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