JP2009035211A - 自動車の車両制御装置、及び自動車の制動システム - Google Patents

自動車の車両制御装置、及び自動車の制動システム Download PDF

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Abstract

【課題】各車輪を別個独立したブレーキユニットによって制動する自動車において、各車輪の稼動状態に応じた最適な制動力を制御できる車両制御装置及び制動システムを提供する。
【解決手段】車両制御装置100は、電気自動車10の実前後力F と目標車両前後力F との誤差FeX、実横力F と目標車両横力F との横力誤差FeY、実ヨーモーメントM と目標ヨーモーメントM との誤差MeZ、及び、車輪の実前後力F と実横力F に対する各車輪の接地荷重FZiに基づいて定められる各車輪のタイヤ稼働率ηを用いて、各車輪に対して制御すべき制御前後力FXi’(各車輪の駆動力)を演算する制駆動力演算部129と、演算された各車輪の制御前後力FXi’(駆動力)に基づいて、ブレーキユニット40FL,40FR,40RL,40RRの油圧装置に供給するブレーキ油圧pを制御するブレーキユニット制御部133とを備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、自動車の挙動を制御する車両制御装置及び制動システムに関し、特に、ブレーキ圧を電気制御可能な摩擦式のブレーキユニットによって各車輪を別個独立に制動する自動車の車両制御装置、及び自動車の制動システムに関する。
従来、自動車の挙動制御に関して、左右の車輪の駆動力または制動力の差を用いて直接ヨーモーメントを発生させる、いわゆる直接ヨーモーメント制御(DYC)が知られている(例えば、特許文献1)。一般的なDYCでは、各車輪の駆動力を制御する場合、各車輪の接地荷重(F)に応じて、駆動力を発生する内燃機関の出力が制御される。
特開2003−159966号公報(第4−9頁)
ところで、近年、各車輪を別個独立した電気モータによって駆動する電気自動車の研究、開発が行われている。このような電気自動車に上述した従来のDYCを適用すると、次のような問題がある。すなわち、従来のDYCでは、各車輪の接地荷重(F)に応じて、駆動力を発生する内燃機関の出力が制御されるため、各車輪で捉えた場合、必ずしも最適な駆動力に制御することができない。
つまり、各車輪、具体的には、空気入りタイヤの稼動状態は、路面の状態(例えば、スプリット路面)などによってそれぞれ異なるため、各車輪の稼動状態に応じた最適な駆動力を制御することができないといった問題がある。
また、自動車における車輪の駆動と制動は、加速度の正負が異なるだけで、基本的には同質のものである。そのため、各車輪の制動を別個独立に制御する際に従来のDYCを適用すると、上述した駆動時と同様の問題が発生する。
そこで、本発明は、専ら各車輪の制動時における上述の状況に鑑みてなされたものであり、ブレーキ圧を電気制御可能な摩擦式のブレーキユニットによって各車輪を別個独立に制動する自動車において、各車輪の稼動状態に応じた最適な制動力を制御することができる自動車の車両制御装置、及び自動車の制動システムを提供することを目的とする。
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、ブレーキ圧を電気制御可能な摩擦式のブレーキユニット(ブレーキユニット40FL,40FR,40RL,40RR)によって各車輪(車輪20FL,20FR,20RL,20RR)を別個独立に制動する自動車(電気自動四輪車10)の車両制御装置(車両制御装置100)であって、前記車輪のスリップ率(各車輪のスリップ率K)、及び前記車輪に生じる前後力(各車輪の前後力Fxi)と横力(各車輪の横力Fyi)との関係を示すタイヤデータ(タイヤデータTD)に基づいて、前記各車輪に生じさせている実前後力(FXi)とその総和(F )を演算する実前後力演算部(制駆動力演算部129)と、前記タイヤデータに基づいて、前記各車輪に生じさせている実横力(FYi)及びその総和(F )を演算する実横力演算部(制駆動力演算部129)と、前記実前後力演算部及び前記実横力演算部の各演算結果から、前記自動車に生じさせている実ヨーモーメント(実ヨーモーメントM )を演算するヨーモーメント演算部(ヨーモーメント演算部125)と、前記自動車の操舵角(操舵角δ)及び車速に基づいて、前記自動車が所望のステア特性となる前記自動車の目標車両前後力(F )を演算する目標前後力演算部(制駆動力演算部129)と、前記自動車の操舵角及び車速に基づいて、前記自動車が前記所望のステア特性となる前記自動車の目標車両横力(F )を演算する目標横力演算部(制駆動力演算部129)と、前記目標前後力演算部及び前記目標横力演算部の各演算結果から、前記自動車の目標ヨーモーメント(目標ヨーモーメントM )を演算する目標ヨーモーメント演算部(目標ヨーモーメント演算部123)と、前記実前後力演算部によって演算された前記実前後力の総和と前記目標前後力演算部によって演算された前記目標車両前後力との差(FeX)、前記実横力演算部によって演算された前記実横力の総和と前記目標横力演算部によって演算された前記目標車両横力との差(FeY)、前記ヨーモーメント演算部によって演算された実ヨーモーメントと前記目標ヨーモーメント演算部によって演算された目標ヨーモーメントとの差(MeZ)、及び、前記各車輪に生じさせている実前後力(FXi)と実横力(FYi)に対する前記各車輪の接地荷重(接地荷重FZi)に基づいて定められるタイヤ稼働率(各車輪のタイヤ稼働率η)を用いて、前記各車輪に対して制御すべき制御前後力(各車輪の制御前後力FXi’)を演算する制御前後力演算部(制駆動力演算部129)と、前記制御前後力演算部によって演算された前記制御前後力に基づいて、前記ブレーキユニットのブレーキ圧を制御するブレーキユニット制御部(ブレーキユニット制御部133)とを備えることを要旨とする。
このような自動車の車両制御装置によれば、実前後力の総和と目標車両前後力との差、実横力の総和と目標者両横力との差、実ヨーモーメントと目標ヨーモーメントとの差、及び、各車輪に生じさせている実前後力と実横力に対する各車輪の接地荷重に基づいて定められるタイヤ稼働率を用いて、各車輪に対して制御すべき制御前後力が演算される。
タイヤ稼働率は、実前後力と実横力との合力によって求めることができる摩擦円に基づいて定められる。つまり、このような自動車の車両制御装置によれば、車輪(空気入りタイヤ)のグリップ力を考慮した現実的な車両制御を実現することができる。従来の車両制御装置では、タイヤ稼働率は何ら考慮されずに制御すべき制御前後力が決定されるため、実際には摩擦円の外になるような前後力が決定され、有効な車両制御が実行できないといった問題があった。
すなわち、このような自動車の車両制御装置によれば、ブレーキ圧を電気制御可能な摩擦式のブレーキユニットによって各車輪を別個独立に制動する自動車において、各車輪の稼動状態に応じた最適な制動力を制御することができる。
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記タイヤ稼働率は、前記各車輪の実前後力及び実横力の合計と、前記各車輪の接地荷重との比であることを要旨とする。
本発明の第3の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記各車輪のタイヤ稼働率ηは、前記各車輪の実前後力をFxi、前記各車輪の実横力をFyi、前記各車輪の接地荷重をFzi、及び前記各車輪が転動する路面の摩擦係数をμとした場合、
Figure 2009035211
であることを要旨とする。
本発明の第4の特徴は、自動車を制動する自動車の制動システムであって、各車輪を別個独立に制動するための、ブレーキ圧を電気制御可能な摩擦式のブレーキユニットと、前記自動車の挙動を制御する車両制御装置とを含み、前記車両制御装置は、前記車輪のスリップ率、及び前記車輪に生じる前後力と横力との関係を示すタイヤデータに基づいて、前記各車輪に生じさせている実前後力を演算する実前後力演算部と、前記タイヤデータに基づいて、前記各車輪に生じさせている実横力を演算する実横力演算部と、前記実前後力演算部及び前記実横力演算部の各演算結果から、前記自動車に生じさせている実ヨーモーメントを演算するヨーモーメント演算部と、前記自動車の操舵角及び車速に基づいて、前記自動車が所望のステア特性となる前記自動車の目標車両前後力を演算する目標前後力演算部と、前記自動車の操舵角及び車速に基づいて、前記自動車が前記所望のステア特性となる前記自動車の目標車両横力を演算する目標横力演算部と、前記目標前後力演算部及び前記目標横力演算部の各演算結果から、前記自動車の目標ヨーモーメントを演算する目標ヨーモーメント演算部と、前記実前後力演算部によって演算された前記実前後力と前記目標前後力演算部によって演算された前記目標車両前後力との差、前記ヨーモーメント演算部によって演算された実ヨーモーメントと前記目標ヨーモーメント演算部によって演算された目標ヨーモーメントとの差、及び、前記各車輪に生じさせている実前後力と実横力に対する前記各車輪の接地荷重に基づいて定められるタイヤ稼働率を用いて、前記各車輪に対して制御すべき制御前後力を演算する制御前後力演算部と、前記制御前後力演算部によって演算された前記制御前後力に基づいて、前記ブレーキユニットのブレーキ圧を制御するブレーキユニット制御部とを備えることを要旨とする。
本発明の第5の特徴は、本発明の第4の特徴に係り、前記タイヤ稼働率は、前記各車輪の実前後力及び実横力の合計と、前記各車輪の接地荷重との比であることを要旨とする。
本発明の第6の特徴は、本発明の第4の特徴に係り、前記各車輪のタイヤ稼働率ηは、前記各車輪の実前後力をFxi、前記各車輪の実横力をFyi、前記各車輪の接地荷重をFzi、及び前記各車輪が転動する路面の摩擦係数をμとした場合、
Figure 2009035211
であることを要旨とする。
なお、本発明において、各車輪を電気モータにより個別に駆動する電気自動車の場合、各車輪に生じさせている実前後力は、電気モータを流れる電流の実測値から計算により求めることができる。各車輪に生じさせている実横力は、タイヤモデルから計算により求めることができる。また、各車輪を例えば内燃機関等の電気モータ以外の動力源により個別に駆動する自動車の場合は、各車輪の回転速度と車輪並進速度との各実測値、タイヤスリップ角の推定値、及び、タイヤモデルから、各車輪に生じさせている実前後力及び実横力を求めることができる。
本発明の特徴によれば、ブレーキ圧を電気制御可能な摩擦式のブレーキユニットによって各車輪を別個独立に制動する自動車において、各車輪の稼動状態に応じた最適な制動力を制御することができる自動車の車両制御装置、及び自動車の制動システムを提供することができる。
次に、本発明に係る自動車の制動システムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
(電気自動四輪車の全体概略構成)
図1は、本実施形態に係る電気自動四輪車10の概略斜視図である。電気自動四輪車10は、車輪20FL,20FR,20RL,20RRの内側に電気モータ、いわゆるインホイールモータをそれぞれ備える。つまり、電気自動四輪車10は、各車輪(車輪20FL,20FR,20RL,20RR)を別個独立したインホイールモータ30FL,30FR,30RL,30RRによって駆動する。かつ、電気四輪自動車10は、各車輪20FL,20FR,20RL,20RRを別個独立したブレーキユニット40FL,40FR,40RL,40RRによって制動する。
また、電気自動四輪車10は、車両制御装置100を備える。車両制御装置100は、左右の車輪の駆動力または制動力(以下、駆動力と制動力とを総称して「制駆動力」又は「前後力」と呼ぶことがある。)の差を用いて直接ヨーモーメントを発生させる、いわゆる直接ヨーモーメント制御(DYC)によって、電気自動四輪車10の挙動を制御する。車両制御装置100には、電気自動四輪車10の各種状態(例えば、操舵角)を検出するセンサ部110が接続される。
本実施形態では、車両制御装置100と、各車輪の内側に備えられたインホイールモータ30FL,30FR,30RL,30RRによって、電気自動四輪車の駆動システムが構成される。
また、ブレーキユニットFL,40FR,40RL,40RRは、インホイールモータ30FL,30FR,30RL,30RRのアウターロータ(図示せず)や各車輪と一体に回転するブレーキディスクと、このブレーキディスクに圧接して制動をかけることができる、ブレーキ圧を電気制御可能な油圧装置及びそのドライバ(いずれも図示せず)とを有している。すなわち、このブレーキユニットFL,40FR,40RL,40RRは、摩擦式の油圧ブレーキ装置である。
なお、ブレーキユニットFL,40FR,40RL,40RRは、単独で、電気四輪自動車10の制動装置として運用することができる。また、ブレーキユニットFL,40FR,40RL,40RRは、非通電時にバッテリ(図示せず)を負荷とする発電機となったインホイールモータ30FL,30FR,30RL,30RRとの協調制御により、回生ブレーキ併用型の制動装置として運用することもできる。
したがって、ブレーキユニットFL,40FR,40RL,40RRは、単独で電気四輪自動車10の制動装置として運用する場合は、車両制御装置100と共に電気自動四輪車の制動システムを構成することになる。また、ブレーキユニットFL,40FR,40RL,40RRを回生ブレーキ併用型の制動装置として運用する場合は、ブレーキユニットFL,40FR,40RL,40RRが、非通電状態のインホイールモータ30FL,30FR,30RL,30RR及び車両制御装置100と共に、電気自動四輪車の制動システムを構成することになる。
(電気自動四輪車の駆動システム及び制動システムの機能ブロック構成)
図2は、本実施形態に係る電気自動四輪車の駆動システム及び制動システムの機能ブロック構成図である。上述したように、車両制御装置100と、各車輪の内側に備えられたインホイールモータ30FL,30FR,30RL,30RRとによって、電気自動四輪車の駆動システムが構成される。
また、インホイールモータ30FL,30FR,30RL,30RRの内部に収容されたブレーキユニットFL,40FR,40RL,40RRと、車両制御装置100(あるいは、非通電状態のインホイールモータ30FL,30FR,30RL,30RR及び車両制御装置100)とによって、電気自動四輪車の制動システムが構成される。
車両制御装置100は、フィードフォワードモーメント演算部121、目標ヨーモーメント演算部123、ヨーモーメント演算部125、PIDコントローラ127、制駆動力演算部129、電気モータ制御部131、及びブレーキユニット制御部133によって構成される。
本実施形態では、目標ヨーモーメント演算部123では、目標モデルに二輪モデルを用いている。また、制駆動力演算部129における駆動力の演算では、いわゆる「最適制御」が取り入れられている。
具体的には、制駆動力演算部129は、所定の評価関数を最小にするように補正量δを決定する。また、本実施形態では、車両ヨーモーメント(M)、車両横力(F)、車両前後力(F)、タイヤスリップ率(K)及びタイヤ稼働率(η)の配分誤差が用いられる。なお、車両制御装置100による駆動力の制御の詳細については、後述する。
センサ部110は、操舵角センサ111、車速センサ113、ヨーレートセンサ115及び加速度センサ117によって構成される。
操舵角センサ111は、電気自動四輪車10の前輪、具体的には、車輪20FL及び車輪20FRの操舵角を検出する。この操舵角は、ハンドル角を検知しこれをステアリングギヤ比で割って演算により検出することもできる。車速センサ113は、電気自動四輪車10の車速を検出する。
ヨーレートセンサ115は、電気自動四輪車10(図3参照)におけるヨーレートを検出する。加速度センサ117は、電気自動四輪車10に生じている前後方向(図3のx方向)の加速度(加速度a)、及び横方向(図3のy方向)の加速度(加速度a)を検出する。
次に、車両制御装置100を構成する各機能ブロックについて、図2〜図5を参照して説明する。
(1)フィードフォワードモーメント演算部121
フィードフォワードモーメント演算部121は、フィードフォワード補償ヨーモーメントMFFを演算する。具体的には、フィードフォワードモーメント演算部121は、センサ部110から出力された操舵角δ及び車速Vに基づいて、フィードフォワード補償ヨーモーメントMFFを演算する。
まず、フィードフォワードモーメント演算部121における具体的な演算方法の説明に先立って、電気自動四輪車10のヨーレートγについて説明する。電気自動四輪車10では、ヨーレートγは、(1式)のように表すことができる。
Figure 2009035211
また、図3は、電気自動四輪車10を3方向(x方向、y方向、及び回転方向)に自由度を有する四輪モデルとして模式的に示している(つまり、ローリングは考慮していない)。図3に示すように、(1式)におけるδは実操舵角である。本実施形態では、ハンドル角を検知しこれをステアリングギヤ比で割って演算により検出した実操舵角を用いている。また、l(lf+lr)はホイールベース、mは車両質量、kfは前輪のコーナリングパワー、krは後輪のコーナリングパワーである。
本実施形態では、車両制御装置100は、DYCを用い、電気自動四輪車10のステアリング特性がニュートラルステアとなるように各車輪の制駆動力(前後力)を制御する。(1式)より、ニュートラルステア時のヨーレートγNSは、(2式)のように表すことができる。
Figure 2009035211
ここで、Δγは、電気自動四輪車10のステアリング特性をニュートラルステアにするために必要なヨーレートの増減量である。次に、電気自動四輪車10のスタビリティファクターK、及び車両制御装置100(DYC)への入力に対するヨーレートγ(0)は、(3式)のように表すことができる。
Figure 2009035211
また、(2式)及び(3式)より、電気自動四輪車10のステアリング特性をニュートラルステアにするために必要なフィードフォワード補償ヨーモーメントMFFは、(4式)のように表すことができる。
Figure 2009035211
ここで、Gff(V)は、フィードフォワードゲインである。
(2)目標ヨーモーメント演算部123
目標ヨーモーメント演算部123は、目標ヨーモーメントMを演算する。具体的には、目標ヨーモーメント演算部123は、センサ部110から出力された操舵角δ及び車速Vに基づいて、目標ヨーモーメントMを演算する。目標ヨーモーメントMは、(5式)及び(5’式)のように表すことができる。
Figure 2009035211
Figure 2009035211
ここで、横力Yfは、前輪(車輪20FL及び車輪20FR)に生じる横力(コーナリングフォース)である。また、横力Yrは、後輪(車輪20RL及び車輪20RR)に生じる横力(コーナリングフォース)である。また、ヨーレートγNS、ニュートラルステア時のすべり角βNS、及び操舵角δとの関係は、(6式)のように表すことができる。
Figure 2009035211
よって、(5’式)は、(7式)のように変形することができる。
Figure 2009035211
ここで、Gd(V)は、目標ヨーモーメントゲインである。さらに、本実施形態では、kf=lr/lf・krを代入している。
(3)ヨーモーメント演算部125及びPIDコントローラ127
ヨーモーメント演算部125は、電気自動四輪車10の挙動を制御するために用いられる電気自動四輪車10のヨーモーメントを演算する。具体的には、ヨーモーメント演算部125は、センサ部110から出力された操舵角δ、車速V、ヨーレートγ、加速度a及び加速度aに基づいて、電気自動四輪車10のヨーモーメントを演算する。
また、PIDコントローラ127は、目標ヨーモーメント演算部123によって演算された目標ヨーモーメントM及びヨーモーメント演算部125によって演算されたヨーモーメントをフィードバックさせるコントローラである。
PIDコントローラ127(フィードバック補償器)は、目標ヨーモーメント演算部123において用いられる目標モデルとの誤差がなくなるようにヨーモーメントをフィードバックさせる。具体的には、PIDコントローラ127は、(8式)に基づいて動作する。
Figure 2009035211
ここで、MFBは、フィードバックヨーモーメント、Mは、制御対象である電気自動四輪車10に生じているヨーモーメントである。また、Kは比例ゲイン、Kは積分ゲイン、Kは微分ゲインである。さらに、(9式)が成立する。
Figure 2009035211
は、ヨーモーメント誤差である。本実施形態では、ヨーモーメント誤差Mを、電気自動四輪車10がニュートラルステアとなるために制御すべきヨーモーメントMDYC とする。
また、図3に示すように、電気自動四輪車10を3方向(x方向、y方向、及び回転方向)に自由度を有する四輪モデルとした場合、(10式)が成立する。
Figure 2009035211
xfl ,Fxfr ,Fxrl 及びFxrr は、各車輪の前後力(前後力Fxi)である。Fyfl ,Fyfr ,Fyrl 及びFyrr は、各車輪の横力(横力Fyi)である。Iは、電気自動四輪車10のヨー方向の慣性モーメントである。dは、電気自動四輪車10のトレッド幅である。また、u,νは、x,y方向(図3参照)の速度成分である。
次に、車輪20FL,20FR,20RL,20RRを構成する空気入りタイヤの摩擦円は、(11式)のように表すことができる。
Figure 2009035211
ここで、r(摩擦円半径)またはa,b(摩擦楕円の幅及び高さ)が分かれば、各車輪の前後力Fxi及び横力Fyiを演算することができる。さらに、垂直方向も考慮すると、接地荷重Fは、(12式)のように表すことができる。
Figure 2009035211
(11式)及び(12式)から、(1)各車輪のrまたはa,b、(2)各車輪の前後力初期値FXOi ,横力初期値FYOi 、(3)各車輪の傾き係数α(摩擦係数μ対スリップ率λ特性を示す曲線の傾きに応じて定まる係数)が分かれば、車輪20FL,20FR,20RL,20RRの前後力Fxi及び横力Fyiを演算することができる。
なお、本実施形態は、上述した各車輪の前後力Fxi及び横力Fyiを求めるため、マジックフォーミュラ(MF)に基づくデータをタイヤデータTDとして使用する。
次に、電気自動四輪車10の走行に伴う垂直荷重(Wx,Wy)の変化について考える。図4は、電気自動四輪車10の加減速に伴う車両前後方向の垂直荷重が変化する様子を説明する説明図である。図5は、電気自動四輪車10のコーナリングに伴う車幅方向の垂直荷重が変化する様子を説明する説明図である。
電気自動四輪車10の加減速時における垂直荷重の変化は、(13式)のように表すことができる。
Figure 2009035211
また、電気自動四輪車10のコーナリング時における垂直荷重の変化は、(14式)のように表すことができる。
Figure 2009035211
ここで、Hは、路面から重心点CGまでの高さである。よって、前後方向の加速度a及び横方向の加速度aを測定すれば、(14’式)によって、各車輪の垂直荷重、つまり、接地荷重Fを求めることができる。
Figure 2009035211
ここで、FZ0i は各車輪の1G(静的)状態における垂直荷重である。次に、前後力Fxiについて考えると、電気自動四輪車10は、電気モータ(インホイールモータ)を用いるため、前後力Fxiは、一般式で(15式)のように表すことができる。
Figure 2009035211
ここで、Kはトルク定数、iは電気モータの電流値である。また、動特性を考慮し、電気モータを一次遅れ系とすると、(15’式)のように表すことができる。
Figure 2009035211
ここで、τは時定数、Fx0は静トルクである。なお、電気自動車10の制動には、ブレーキ圧を電気的に制御できる油圧装置(ブレーキユニット。非通電状態の電気モータを併用する場合を含む)を用いるので、電気四輪自動車10の前後力Fxiは、この油圧装置で発生する制動力を加味して求めることができる。
なお、車輪20FL,20FR,20RL,20RR(具体的には、空気入りタイヤ)が転動する路面の摩擦係数μは、(17式)に基づいて推定される。また、摩擦係数μの前後方向成分、即ち、前後方向の摩擦係数μや、摩擦係数μの横方向成分、即ち、横方向の摩擦係数μは、(17’式)、(17’’式)、(17’’’式)によって推定される。
Figure 2009035211
ここで、Fμは路面と空気入りタイヤとの摩擦力である。(17式)に示すように、前後力F及び接地荷重Fが分かれば、前後方向の摩擦係数μが推定できる。横方向の摩擦係数μは、タイヤデータから演算される各車輪の実横力Fyiを使用して、(17’’式)から演算できる。よって、摩擦係数μは、(17’’’式)から推定できる。つまり、加速については、電気モータ(インホイールモータ)のトルクを用いて検出できる。また、減速については、電気自動四輪車10の油圧装置(ブレーキユニット)の油圧に基づいて演算した減速トルク(非通電状態の電気モータを併用する場合は、回生電流に基づいて演算した減速トルクを加味した値)を用いて検出できる。なお、本実施形態では、摩擦係数μを固定値とした。
(4)制駆動力演算部129
制駆動力演算部129は、インホイールモータ30FL,30FR,30RL,30RRやブレーキユニット40FL,40FR,40RL,40RRによる制駆動力(前後力)を演算する。具体的には、制駆動力演算部129は、所定の評価関数を最適制御することによって、制駆動力を演算する。
本実施形態では、制駆動力演算部129は、上述したように、最適制御のために評価関数Lを用いる。評価関数Lは、(18式)のように表すことができる。
Figure 2009035211
また、各車輪のタイヤ稼働率ηは、(19式)のように表すことができる。
Figure 2009035211
本実施形態では、タイヤ稼働率ηを左右の前後2輪で平均化した。そのため、制御においては、左右それぞれの前後輪のタイヤ稼働率ηfl、ηfr、ηrl、ηrrをそれぞれ演算し、前2輪及び後2輪の各タイヤ稼働率の平均値と、各車輪のタイヤ稼働率ηfl、ηfr、ηrl、ηrrとから、各車輪のタイヤ稼働率誤差ηefl 、ηefr 、ηerl 、ηerr を、(19’式)のように定義した。
Figure 2009035211
ここで、評価関数Lを最小にすることを考える。ここで、評価関数Lを表す(18式)の右辺におけるEは目標車両前後・横力、ヨーモーメント、及び、タイヤ稼働率と、配分した各車輪のタイヤから生じさせる実前後・横力、ヨーモーメント、及び、タイヤ稼働率との配分誤差であり、従来の制御と比較して、ヨーモーメント以外に実車両前後・横力を目標車両前後・横力に追従させ、さらに、タイヤ稼働率を左右の2輪で平均化するように制御することに特徴がある。この配分誤差Eは、(20式)のように表すことができる。
Figure 2009035211
ここで、(20式)におけるF は目標車両前後力、F は目標車両横力、M は目標ヨーモーメントである。また、F は各車輪に配分して生じさせている実前後力FXiの総和である車両の実前後力、F は各車輪に生じさせている実横力FYiの総和である車両の実横力、M は車両の実ヨーモーメントである。さらに、FeXは車両の前後力の配分誤差、FeYは車両の横力の配分誤差、MeZは車両のヨーモーメントの配分誤差である。なお、(18式)における補正量δはスリップ率Kの補正量である。この補正量δは、各車輪のスリップ率補正量δKfl 、δKfr 、δKrl 、δKrr の床関数によって、(21式)のように表すことができる。
Figure 2009035211
また、W、WδKは、配分誤差E及びスリップ率補正量δに対する重み関数であり、それぞれ(22式)、(23式)のように表すことができる。
Figure 2009035211
Figure 2009035211
さらに、各車輪に配分したタイヤ稼働率η(ηfl,ηfr,ηrl,ηrr)、車両の前後力F、横力F及びヨーモーメントMは、各車輪に生じさせている実前後力FXi(FXfl ,FXfr ,FXrl ,FXrr )、実横力FYi(FYfl ,FYfr ,FYrl ,FYrr )、実ヨーモーメントM 、及び、実タイヤ稼働率η (η fl ,η fr ,η rl ,η rr )と、(24式)に示すヤコビアンJとによって、(25式)のように表すことができる。
Figure 2009035211
Figure 2009035211
ここで、Mdyc は、車両制御によるヨーモーメントである。以上から、評価関数Lを最小にするためのスリップ率補正量δは、(26式)を満たすことにより与えられる。
Figure 2009035211
よって、スリップ率補正量δは、(27式)のように表すことができる。
Figure 2009035211
ここで、(27式)中のΔは、各車輪のタイヤ稼働率の配分誤差ηefl ,ηefr ,ηerl ,ηerr と、車両の前後力の配分誤差FeX、車両の横力の配分誤差FeY、車両のヨーモーメントの配分誤差MeZとの床関数によって、(28式)のように表すことができる。
Figure 2009035211
制駆動力演算部129は、(27式)及び(28式)を用いた演算結果に基づいて、車輪20FL,20FR,20RL,20RRに配分する制駆動力を決定する。具体的には、制駆動力演算部129は、(27式)及び(28式)により算出される、各車輪についての評価関数Lを最小にするためのスリップ率Kの補正量δから、各車輪のタイヤデータTDに基づいて、各車輪の制御すべき制御前後力Fxi’(駆動力)を算出し、トルク指令値として出力する。なお、F 及びFYeは、用いなくても構わない。
つまり、制駆動力演算部129は、各車輪のスリップ率K、及び各車輪に生じる前後力Fxiと横力Fyiとの関係を示すタイヤデータTDに基づいて、各車輪に生じさせている実前後力FXiの総和である車両の実前後力F と、各車輪に生じさせている実横力FYiの総和である車両の実横力F とを演算する。なお、制駆動力演算部129は、車輪の回転速度と、電気自動四輪車10の車速Vとに基づいて、各車輪のスリップ率Kを演算する。本実施形態において、制駆動力演算部129は、実前後力演算部を構成する。
さらに、制駆動力演算部129は、電気自動四輪車10の操舵角δ及び車速Vに基づいて、電気自動四輪車10がニュートラルステアとなる電気自動四輪車10の目標車両前後力F と目標車両横力F とを演算する。本実施形態において、制駆動力演算部129は、目標前後力演算部を構成する。
また、制駆動力演算部129は、演算した車両の実前後力F と目標車両前後力F との前後力誤差FeX、演算した車両の実横力F と目標車両横力F との横力誤差FeY、車両の実ヨーモーメントM と目標ヨーモーメントM との誤差MeZ、及び、各車輪に生じている実前後力F と実横力F に対する各車輪の接地荷重FZiに基づいて定められる各車輪のタイヤ稼働率ηを用いて、各車輪に対して制御すべき制御前後力FXi’(各車輪の制駆動力)を演算する。本実施形態において、制駆動力演算部129は、制御前後力演算部を構成する。
電気モータ制御部131は、制駆動力演算部129によって演算された各車輪の制御前後力FXei ’(制駆動力)に基づいて、インホイールモータ30FL,30FR,30RL,30RRに供給する電流値iを制御する。
ブレーキユニット制御部133は、制駆動力演算部129によって演算された各車輪の制御前後力FXei ’(制駆動力)に基づいて、ブレーキユニット40FL,40FR,40RL,40RRの油圧装置に供給するブレーキ油圧pを制御する。
(電気自動四輪車の駆動システム及び制動システムの動作概要)
次に、上述した車両制御装置100の動作概要について説明する。図6は、車両制御装置100による制駆動力(前後力)の制御動作フローである。
図6に示すように、ステップS10において、車両制御装置100は、各車輪(車輪20FL,20FR,20RL,20RR)に生じさせている実前後力FXiの総和である車両の実前後力F と、各車輪に生じさせている実横力FYiの総和である車両の実横力F とを演算する。具体的には、車両制御装置100は、各車輪のスリップ率Kと、各車輪に生じる前後力Fxiと横力Fyiとの関係を示すタイヤデータTDとに基づいて、各車輪に生じさせている実前後力FXi及びその総和である車両の実前後力F と、各車輪に生じさせている実横力FYi及びその総和である車両の実横力F とを演算する。
ステップS20において、車両制御装置100は、電気自動四輪車10がニュートラルステアとなる電気自動四輪車10の目標車両前後力F と目標車両横力F とを演算する。具体的には、車両制御装置100は、上述した(10式)や(27式)及び(28式)を用いて、電気自動四輪車10がニュートラルステアとなる目標車両前後力F と目標車両横力F とを演算する。
ステップS30において、車両制御装置100は、ステップS10において演算した車両の実前後力F 及び実横力F と、ステップS20において演算した目標車両前後力F 及び目標車両横力F と、各車輪のタイヤ稼働率ηとを用いて、各車輪に対して制御すべき制御前後力Fxi’(各車輪の駆動力)を演算する。
具体的には、車両制御装置100は、車両の実前後力F 、実横力F 、実ヨーモーメントM と、目標車両前後力F 、目標車両横力F 、目標ヨーモーメントM との配分誤差FeXi 、FeY、MeZ、及び、各車輪のタイヤ稼働率ηを用い、上述した(27式)及び(28式)などを用いて、各車輪についての評価関数Lを最小にするためのスリップ率Kの補正量δを求める。さらに、求めたスリップ率Kの補正量δと各車輪のタイヤデータTDとに基づいて、各車輪の制御すべき制御前後力Fxi’(駆動力)を算出する。
ステップS40において、車両制御装置100は、演算した各車輪の制御すべき制御前後力Fxi’(制駆動力)に基づいて、インホイールモータ30FL,30FR,30RL,30RRに供給する電流値iを制御する。
ステップS50において、車両制御装置100は、演算した各車輪の制御すべき制御前後力Fxi’(制駆動力)に基づいて、ブレーキユニット40FL,40FR,40RL,40RRの油圧装置に供給するブレーキ油圧pを制御する。
(比較評価)
次に、図7及び図8を参照して、本実施形態に係る車両制御装置100の比較評価の方法及び結果について説明する。
(1)評価方法
ここでは、車両制御装置を搭載しない電気自動四輪車(以下、従来例)、比較例に係る車両制御装置を搭載した電気自動四輪車(以下、比較例)、及び、本実施形態に係る車両制御装置100を搭載した電気自動四輪車(以下、実験例)について比較評価を実施した。なお、実験例と比較例とでは、車両制御に用いられる評価関数Lの基となるパラメータの内容が以下のように異なっている。
・実験例: ヨーモーメントM、前後力Fxi、横力Fyi、スリップ率K及びタイヤ稼働率η
・比較例: ヨーモーメントM、前後力Fxi、横力Fyi、スリップ率K
また、比較評価の各種条件などは、以下のとおりである。
・路面摩擦係数(μ): 0.25(低μ路)
・走行パターン: Jターン走行、車速60km/h
・タイヤデータ: マジックフォーミュラ(MF)使用
(2)比較評価の結果
図7は、従来例、比較例、及び、実験例に係る電気自動四輪車のJターン走行におけるヨーレートの状況、図8(a)〜(c)は、従来例、比較例、及び、実験例に係る電気自動四輪車のX(前後)及びY(左右)の各方向への移動距離を示している。
図8(a)〜(c)に示すように、従来例、比較例、及び、実験例に係る電気自動四輪車のいずれも、20メートルの直進方向走行を経た後、操舵角100度で操舵し図7に示すように右旋回してその途中で制動をかけた場合に、従来例では、図8(a)に示すように、旋回直後にドリフトアウトしてしまっている。その結果、図7に示すように、車両の走行状態が右旋回から直進、さらに、揺り戻しによる左旋回を一旦経て、再び直進に収れんしている(この時点で走行停止)。
また、比較例では、図8(b)に示すように、ドリフトアウトはしないものの、制動力不足によってアンダーステア状態となり、やがてスピンを起こした後、図7に示すように、揺り戻しによる左右の旋回が拡散してしまっている(この後に走行停止)。
このように、従来例及び比較例では、旋回中の電気自動四輪車の各車輪に適切な制動力を与えることができていない。
これに対して、実験例の電気自動四輪車では、図7に示すように、制動の途中で遠心力との釣り合いにより一時ヨーレートがゼロ付近に下がるものの、全体的には高いヨーレートを維持して旋回を続け、図8(c)から明らかなように、制動中にもバランスの良い右旋回走行を維持している。
したがって、実験例の電気自動四輪自動車では、各車輪に適切な制動力を与えることができていることが判る。
(作用・効果)
以上説明した本実施形態に係る車両制御装置100によれば、各車輪の実前後力FXiの総和である車両の実前後力F 、各車輪の実横力FYiの総和である車両の実横力F 、実ヨーモーメントM と、目標車両前後力F 、目標車両横力F 、目標ヨーモーメントM との配分誤差FeXi 、FeY、MeZ、及び、各車輪の実前後力FXiと実横力FYiに対する各車輪の接地荷重FZiに基づいて定められる各車輪のタイヤ稼働率ηを用いて、各車輪に対して制御すべき制御前後力FXi’(各車輪の駆動力)が演算される。
各車輪のタイヤ稼働率ηは、各車輪の実前後力FXi と各車輪の実横力FYi との合力によって求めることができる摩擦円に基づいて定められる。つまり、このような車両制御装置100によれば、車輪(空気入りタイヤ)のグリップ力を考慮した現実的な車両制御を実現することができる。従来の車両制御装置では、タイヤ稼働率ηは何ら考慮されずに制御すべき制御前後力FXi’が決定されるため、実際には摩擦円の外になるような制御前後力FXi’が決定され、有効な車両制御が実行できないといった問題があった。
すなわち、このような車両制御装置100によれば、ブレーキ油圧pを電気制御可能なブレーキユニット40FL,40FR,40RL,40RRによって各車輪を別個独立に制動する電気自動四輪車10において、各車輪の稼動状態に応じた最適な制駆動力を制御することができる。
また、車両制御装置100によれば、車輪(空気入りタイヤ)が有しているグリップ力などの性能を十分に引き出しつつ、空気入りタイヤの摩耗限界までの寿命を延ばすことができる。つまり、車両制御装置100によれば、摩擦円の外になるような制御前後力FXi’が決定されることがないため、車輪(空気入りタイヤ)のスリップ量が抑制されるのである。
(その他の実施形態)
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、上述した実施形態で用いたタイヤ稼働率ηは、各車輪の前後力Fxi及び横力Fyiの合計と、各車輪の接地荷重との比としてもよい。
また、上述した実施形態では、マジックフォーミュラによるタイヤデータTDが用いられていたが、タイヤデータTDは、タイヤモデル(例えば、ブラッシュモデル)に基づいたものでもよい。或いは、タイヤデータTDは、実験値に基づいたものでもよい。
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
例えば、本実施形態では四輪の電気自動車を例に取って説明したが、本発明は例えば六輪等、四輪以外の車輪を有する自動車にも適用可能である。また、本実施形態では、各車輪を別個独立したインホイールモータ30FL,30FR,30RL,30RRによって駆動し、ブレーキ油圧pを電気制御可能なブレーキユニット40FL,40FR,40RL,40RRによって各車輪を別個独立に制動する電気自動四輪車10を例にとって説明したが、本発明は、ブレーキ圧を電気制御可能な摩擦式のブレーキユニットによって各車輪を別個独立に制動する自動車であれば、電動モータとエンジンとを併用するハイブリッド自動車や、エンジンにより走行する一般的な自動車にも適用可能である。
本発明の実施形態に係る電気自動四輪車の概略斜視図である。 本発明の実施形態に係る電気自動四輪車の駆動システムの機能ブロック構成図である。 本発明の実施形態に係る電気自動四輪車を3方向(x方向、y方向、及び回転方向)に自由度を有する四輪モデルとして模式的に示した図である。 本発明の実施形態に係る電気自動四輪車の加減速に伴う車両前後方向の垂直荷重が変化する様子を説明する説明図である。 本発明の実施形態に係る電気自動四輪車のコーナリングに伴う車幅方向の垂直荷重が変化する様子を説明する説明図である。 本発明の実施形態に係る車両制御装置による制駆動力(前後力)の制御動作フローである。 従来例、比較例、及び、本発明の実験例に係る車両制御装置の比較評価結果(ヨーレート)を示すグラフである。 従来例、比較例、及び、本発明の実験例に係る車両制御装置の比較評価結果(車両移動距離)を示すグラフである。
符号の説明
10…電気自動四輪車、20FL,20FR,20RL,20RR…車輪、30FL,30FR,30RL,30RR…インホイールモータ、100…車両制御装置、110…センサ部、111…操舵角センサ、113…車速センサ、115…ヨーレートセンサ、117…加速度センサ、121…フィードフォワードモーメント演算部、123…目標ヨーモーメント演算部、125…ヨーモーメント演算部、127…PIDコントローラ、129…駆動力演算部、131…電気モータ制御部、133…ブレーキユニット制御部、CG…重心点、d…トレッド幅、a,a…加速度、Fxi…電気自動四輪車の前後力、Fyi…電気自動四輪車の横力、TD…タイヤデータ、β…すべり角、γ…ヨーレート、δ…操舵角

Claims (6)

  1. ブレーキ圧を電気制御可能な摩擦式のブレーキユニットによって各車輪を別個独立に制動する自動車の車両制御装置であって、
    前記車輪のスリップ率、及び前記車輪に生じる前後力と横力との関係を示すタイヤデータに基づいて、前記各車輪に生じさせている実前後力とその総和を演算する実前後力演算部と、
    前記タイヤデータに基づいて、前記各車輪に生じさせている実横力及びその総和を演算する実横力演算部と、
    前記実前後力演算部及び前記実横力演算部の各演算結果から、前記自動車に生じさせている実ヨーモーメントを演算するヨーモーメント演算部と、
    前記自動車の操舵角及び車速に基づいて、前記自動車が所望のステア特性となる前記自動車の目標車両前後力を演算する目標前後力演算部と、
    前記自動車の操舵角及び車速に基づいて、前記自動車が前記所望のステア特性となる前記自動車の目標車両横力を演算する目標横力演算部と、
    前記目標前後力演算部及び前記目標横力演算部の各演算結果から、前記自動車の目標ヨーモーメントを演算する目標ヨーモーメント演算部と、
    前記実前後力演算部によって演算された前記実前後力の総和と前記目標前後力演算部によって演算された前記目標車両前後力との差、前記実横力演算部によって演算された前記実横力の総和と前記目標横力演算部によって演算された前記目標車両横力との差、前記ヨーモーメント演算部によって演算された実ヨーモーメントと前記目標ヨーモーメント演算部によって演算された目標ヨーモーメントとの差、及び、前記各車輪に生じさせている実前後力と実横力に対する前記各車輪の接地荷重に基づいて定められるタイヤ稼働率を用いて、前記各車輪に対して制御すべき制御前後力を演算する制御前後力演算部と、
    前記制御前後力演算部によって演算された前記制御前後力に基づいて、前記ブレーキユニットのブレーキ圧を制御するブレーキユニット制御部と
    を備える自動車の車両制御装置。
  2. 前記タイヤ稼働率は、前記各車輪の実前後力及び実横力の合計と、前記各車輪の接地荷重との比である請求項1に記載の自動車の車両制御装置。
  3. 前記各車輪の実前後力をF xi 、前記各車輪の実横力をF yi 、前記各車輪の接地荷重をF zi 、及び前記各車輪が転動する路面の摩擦係数をμとした場合、前記各車輪のタイヤ稼働率ηは、
    Figure 2009035211
    である請求項1に記載の自動車の車両制御装置。
  4. 自動車を制動する自動車の制動システムであって、
    各車輪を別個独立に制動するための、ブレーキ圧を電気制御可能な摩擦式のブレーキユニットと、
    前記自動車の挙動を制御する車両制御装置と
    を含み、
    前記車両制御装置は、
    前記車輪のスリップ率、及び前記車輪に生じる前後力と横力との関係を示すタイヤデータに基づいて、前記各車輪に生じさせている実前後力を演算する実前後力演算部と、
    前記タイヤデータに基づいて、前記各車輪に生じさせている実横力を演算する実横力演算部と、
    前記実前後力演算部及び前記実横力演算部の各演算結果から、前記自動車に生じさせている実ヨーモーメントを演算するヨーモーメント演算部と、
    前記自動車の操舵角及び車速に基づいて、前記自動車が所望のステア特性となる前記自動車の目標車両前後力を演算する目標前後力演算部と、
    前記自動車の操舵角及び車速に基づいて、前記自動車が前記所望のステア特性となる前記自動車の目標車両横力を演算する目標横力演算部と、
    前記目標前後力演算部及び前記目標横力演算部の各演算結果から、前記自動車の目標ヨーモーメントを演算する目標ヨーモーメント演算部と、
    前記実前後力演算部によって演算された前記実前後力と前記目標前後力演算部によって演算された前記目標車両前後力との差、前記ヨーモーメント演算部によって演算された実ヨーモーメントと前記目標ヨーモーメント演算部によって演算された目標ヨーモーメントとの差、及び、前記各車輪に生じさせている実前後力と実横力に対する前記各車輪の接地荷重に基づいて定められるタイヤ稼働率を用いて、前記各車輪に対して制御すべき制御前後力を演算する制御前後力演算部と、
    前記制御前後力演算部によって演算された前記制御前後力に基づいて、前記ブレーキユニットのブレーキ圧を制御するブレーキユニット制御部と
    を備える自動車の制動システム。
  5. 前記タイヤ稼働率は、前記各車輪の実前後力及び実横力の合計と、前記各車輪の接地荷重との比である請求項4に記載の自動車の制動システム。
  6. 前記各車輪の実前後力をFxi、前記各車輪の実横力をFyi、前記各車輪の接地荷重をFzi、及び前記各車輪が転動する路面の摩擦係数をμとした場合、前記各車輪のタイヤ稼働率ηは、
    Figure 2009035211
    である請求項4に記載の自動車の制動システム。
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JP2014213690A (ja) * 2013-04-24 2014-11-17 日産自動車株式会社 車両

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