本発明は、光源が実装された基板等の寄生容量に依存する発光遅延時間(以下、寄生遅延時間)と対応した固定値である補助駆動電流と、光源の応答特性に依存する発光遅延時間に応じて制御されるオーバーシュート電流とを含む駆動電流を生成する。本発明では、この駆動電流を光源に供給することにより、寄生遅延時間と応答遅延時間とを短縮し、光出力の応答特性を改善する。
以下に図面を参照して本発明の概要について説明する。
図1は、光源の発光遅延時間を説明する図である。図1では、光源に供給される駆動電流の波形と、駆動電流が供給された光源の光出力波形を示している。尚図1では、光源の出力は光量で示されるものとした。
図1に示す発光遅延時間tは、光源に対する駆動電流の供給が開始されてから、光源が所定光量Poを出力するまでの時間を示す。所定光量Poは、予め設定された目標光量である。発光遅延時間tは、寄生遅延時間taと応答遅延時間tbの和である。寄生遅延時間taは光源と回路を接続する配線や光源のパッケージ内配線などに存在する光源に並列に生じる寄生容量への充電時間である。尚寄生遅延時間taの詳細は後述する。寄生遅延時間taは、寄生容量が大きくなる程充電量および充電時間が増大するため、これに応じて増大する傾向にある。
応答遅延時間tbは、光源に所定電流Iopが供給されて光源が発光を開始してから所定光量Poを出力するまでの応答時間である。所定電流Iopは、所定光量Poを得るために予め設定された電流値である。応答遅延時間tbは、光源の特性によるものであり、例えば微分抵抗による影響がある。応答遅延時間tbは、微分抵抗が大きくなるほど光源への電流が流れにくくなるため、これに応じて増大する傾向にある。
尚駆動電流が光源に供給されるまでの発光遅延時間には、実際には寄生遅延時間と応答遅延時間以外の回路基板上の配線遅延時間等含まれるが、本明細書の説明では配線遅延時間等は無視し、発光遅延時間を寄生遅延時間と応答遅延時間の和とした。また本明細書の説明では、駆動電流波形と光出力波形のそれぞれの立下がりを揃えた状態で示す。
以下に図2を参照して寄生容量について説明する。図2は、光源の寄生容量を説明する図である。
本実施形態では、光源を例えばLD(Laser Diode)とした。図2に示すLDは、所定電流Iopが供給されると所定光量Poを出力する。図2に示すCは、寄生容量である。寄生容量Cは、例えばLDがLDドライバ等の回路と共に回路基板等に実装された際に、LDとLDドライバ等の回路とを接続する配線に発生する寄生容量を含む。また寄生容量Cは、LDやLDドライバ等の回路がパッケージ化されている場合には、パッケージ等の寄生容量も含む。
LDに所定電流Iopが供給されると、所定電流Iopの一部の電流Icは、寄生容量Cに供給されて寄生容量Cの充電を行う。寄生容量Cが所定電流Iopにより充電されている間、LDには所定電流Iopの一部である電流(Iop−Ic)が供給される。そして寄生容量Cの充電が完了すると、所定電流IopがLDに対して供給される。すなわち電流Icによる寄生容量Cの充電時間は、LDには所定電流Iopの一部の電流(Iop−Ic)しか供給されないため、光出力を得られない時間となる。この光出力が得られない時間が寄生遅延時間とである。
次に図3を参照して本発明の光源駆動回路から光源に供給する駆動電流について説明する。図3は、光源駆動回路から光源に供給する駆動電流について説明する図である。図3では、光源駆動回路から光源に供給される駆動電流波形を示している。
光源に供給される駆動電流Ikは、所定電流Iopと、オーバーシュート電流Iovと、補助駆動電流Ipcとで構成される。所定電流Iopは、光源から所定光量Poを得るための電流である。所定電流Iopは、図3の例では、スイッチング電流Ihとバイアス電流Ibとで構成される。
オーバーシュート電流Iovは、所定電流Iopの立ち上がりと同期して所定電流Iopに重畳される。補助駆動電流Ipcは、所定電流Iopの立ち上がりよりも前に立ち上がり、光源に供給される。尚以下の説明では、所定電流Iopの立ち上がりよりも前に立ち上がる補助駆動電流Ipcをプリチャージ電流Ipcと呼ぶ。
プリチャージ電流Ipcは、寄生遅延時間に基づき設定される電流である。寄生遅延時間は、光源が実装される回路基板等から予め求めることができる。よってプリチャージ電流Ipcの値と印加期間(以下、プリチャージ期間Tpc)は、予め求められた寄生遅延時間に合わせて設定された固定値である。本発明では、プリチャージ電流Ipcの値は所定電流Iopの値より大きい値とした。プリチャージ期間Tpcとプリチャージ電流Ipcの値の設定方法の詳細は後述する。
オーバーシュート電流Ivoは、応答遅延時間に基づき設定される電流である。応答遅延時間は、光源の応答特性によって異なる。例えば光源が劣化してきた場合には、応答特性が変化する。また光源毎の製造時のばらつき等によっても応答特性が異なる場合がある。そこでオーバーシュート電流Iovの値は、光源の応答特性に応じて調整される変動値とした。オーバーシュート電流Ivoの印加期間(以下、オーバーシュート期間Tov)は固定値である。
本発明では、図3に示すような駆動電流Ikを生成し、光源に供給することで、プリチャージ電流Ipcにより寄生遅延時間を短縮し、オーバーシュート電流Iovで応答遅延時間を短縮できる。またプリチャージ電流Ipcを固定値とし、オーバーシュート電流Iovのみを調整する構成としたため、発光遅延時間の短縮に係る制御の容易にし、短時間で光源の応答特性を改善させる。
(第一の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第一の実施形態について説明する。図4は、第一の実施形態の画像形成装置の構成の概略を説明する図である。
本実施形態の画像形成装置10は、光走査装置20、感光体30、書込制御部40、クロック生成回路50を有する。
本実施形態の光走査装置20は、ポリゴンミラー21、走査レンズ22、光源駆動回路100、発光素子(光源)であるLD(Laser Diode;半導体レーザ)、受光素子となるPD(フォトディテクタ)を有する。尚本実施形態では光源をLDとしたが、これに限定されない。光源は、半導体レーザアレー(LDA;Laser Diode Array)、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser;垂直共振器面発光レーザ)等であっても良い。
LDから発光されたレーザ光は、回転するポリゴンミラー21によりスキャンされ、走査レンズ22を介して被走査媒体である感光体30上に照射される。照射されたレーザ光は感光体30上で光スポットとなり、これにより感光体30上に静電潜像が形成される。またポリゴンミラー21は、1ラインの走査が終わる毎にレーザ光をPDに照射する。PDはレーザ光が照射されると、これを電気信号に変換し、この電気信号を書込制御部40の有する位相同期回路41に入力する。位相同期回路41は、電気信号が入力されると次の1ライン分の画素クロックを生成する。また位相同期回路41には、クロック生成回路50から高周波クロック信号が入力されており、これにより画素クロックの位相同期が図られている。
書込制御部40は、生成された画素クロックに従って基準パルス信号を光源駆動回路100へ供給する。また書込制御部40は、目標光量設定信号を光源駆動回路100に供給し、LDを駆動する。これにより、画像データの静電潜像が感光体30上に形成される。
以下に図5を参照して本実施形態の光源駆動回路100を説明する。図5は、第一の実施形態の光源駆動回路を説明する図である。
本実施形態の光源駆動回路100は、CPU(Central Processing Unit)110、メモリ120、DAC(Digital to Analog Converter)130、LPF(Low-pass Filter)140、ADC(Analog to Digital Converter)150、LDドライバ200、抵抗R1を有する。尚抵抗R1は、光源駆動回路100に含まれなくても良い。この場合抵抗R1は、光源駆動回路100の外部に設けられる。
本実施形態の光源駆動回路100は、LDとPDとに接続されており、LDの光量に応じてPDから出力される電気信号に基づきLDの駆動を制御する。
CPU110は、光源駆動回路100の各種動作を制御する。メモリ120は、光源駆動回路100の動作に用いられる各種の値等が格納されている。CPU110の機能及びメモリ120に格納される値の詳細は後述する。
DAC130は、CPU110から出力される信号をアナログ値に変換する。LPF140は、PDから出力された電気信号のうち所定帯域の信号を通過させる。ADC150は、LPF140から出力された電気信号をデジタル値に変換する。
LDドライバ200は、基準パルス信号と目標光量設定信号とに基づきLDに供給する駆動電流を生成し、LDの発光タイミングを制御する。本実施形態のLDドライバ200は、所定電流Iopに先立ち立ち上がるプリチャージ電流Ipcと、所定電流Iopと同期して立ち上がるオーバーシュート電流Iovとを含む駆動電流Ikを出力する。
本実施形態の光源駆動回路100は、CPU110とLDドライバ200とにより、駆動電流Ikの制御を行う。具体的には光源駆動回路100は、LDの光出力に応じてオーバーシュート電流Iovの値を算出し、予め設定されたプリチャージ電流Ipcとオーバーシュート電流Iovとを含む駆動電流Ikを生成する。
以下に本実施形態のLDドライバ200について説明する。本実施形態のLDドライバ200は、スイッチング電流源210、バイアス電流源220、プリチャージ電流源230、オーバーシュート電流源240、スイッチ211、221、231、241を有する。
スイッチング電流源210、バイアス電流源220、プリチャージ電流源230、オーバーシュート電流源240は、LDの駆動電流Ikを生成する。本実施形態の駆動電流Ikは、各電流源から出力される電流値を加算した電流である。
スイッチング電流源210は、CPU110からの点灯制御信号に基づき、所定のスイッチング電流Ihを生成する。スイッチング電流源210は、スイッチ211を介してLDと接続されている。スイッチ211は、例えばトランジスタ等により構成され、CPU110から供給される基準パルス信号からプリチャージ期間Tpc分立ち上がりが遅延したパルス信号S1(図7参照)に基づきオン/オフが制御される。またスイッチング電流Ihの値は、CPU110からの指示により設定される。
バイアス電流源220は、CPU110からのバイアス生成信号に基づき所定のバイアス電流Ibを生成する。バイアス電流源220は、スイッチ221を介してLDと接続されている。スイッチ221は、例えばトランジスタ等により構成され、CPU110から供給されるバイアス生成信号に基づきオン/オフが制御される。またバイアス電流Ibの値は、CPU110からの指示により設定される。
プリチャージ電流源230は、スイッチング電流Ihに先立ちLDに印加される第一の補助駆動電流としてのプリチャージ電流Ipcを生成する。プリチャージ電流源230は、スイッチ231を介してLDと接続されている。スイッチ231は、例えばトランジスタ等により構成され、CPU110から供給されるプリチャージ生成信号に基づきオン/オフが制御される。本実施形態では、プリチャージ生成信号がオンの期間がプリチャージ期間Tpcである。具体的には本実施形態のスイッチ231は、点灯制御信号の立ち上がりからプリチャージ期間Tpcの間オンとされる。
オーバーシュート電流源240は、パルス信号S1の立ち上がりに、スイッチング電流Ihを補助する第二の補助駆動電流としてのオーバーシュート電流Ivoを生成する。オーバーシュート電流源240は、スイッチ241を介してLDと接続されている。スイッチ241は、例えばトランジスタ等により構成され、CPU110から供給されるオーバーシュート生成信号に基づきオン/オフが制御される。本実施形態では、オーバーシュート生成信号がオンの期間がオーバーシュート期間Tovである。具体的には本実施形態のスイッチ241は、スイッチング信号の立ち上がりからオーバーシュート期間Tovの間オンとされる。
以下に図6を参照して本実施形態のCPU110の機能とメモリ120に格納された値について説明する。図6は、CPUの機能構成及びメモリに格納された値を説明する図である。
本実施形態のCPU110は、電流制御部111、パルス生成部112、Iov値設定部113を有する。
メモリ120は、電流値記憶部121、遅延時間記憶部122、点灯パターン記憶部123を有する。電流値記憶部121には、光源駆動回路100の有する各種電流源における設定値が記憶されている。具体的には電流値記憶部121には、スイッチング電流Ih、バイアス電流Ib、プリチャージ電流Ipcの電流値が設定されている。
遅延時間記憶部122は、プリチャージ期間Tpcとオーバーシュート期間Tovを決めるための遅延時間が格納されている。点灯パターン記憶部123には、後述するIov値設定部113によるオーバーシュート電流Iovの算出の際に使用されるLDの点灯パターン信号が格納されている。
CPU110において、電流制御部111は、電流値記憶部122に格納された各種電流源の設定値を取得し、各種電流源に対してDAC130を介して設定値に対応する電流を出力させる。
パルス生成部112は、遅延時間記憶部122に格納された遅延時間と、基準パルス信号とに基づき、プリチャージ生成信号とオーバーシュート生成信号とを生成する信号生成部である。またパルス生成部112は、バイアス生成信号と点灯パターン信号を生成しても良い。尚本実施形態の点灯パターン信号は、Iov値設定部113によるオーバーシュート電流Iovの算出の際にのみ、スイッチ211に供給される信号である。スイッチ211は、画像形成装置10が画像形成動作を行っている場合には、書込制御部40から供給される画像データに基づいた点灯制御信号により、オン/オフが制御される。
Iov値設定部113は、PDの出力に基づきオーバーシュート電流Iovを算出し設定する。本実施形態のIov値設定部113は、電流値選択部114、積分光量算出部115、判定部116を有する。Iov値設定部113の処理の詳細は後述する。
次に図7を参照して本実施形態のパルス生成部112によるプリチャージ生成信号及びオーバーシュート生成信号の生成について説明する。図7は、プリチャージ生成信号及びオーバーシュート生成信号の生成について説明する図である。
本実施形態のパルス生成部112には、例えば遅延時間記憶部122から遅延時間t1と遅延時間t2を取得する。遅延時間t1は、プリチャージ期間Tpcと一致する時間である。遅延時間t2は、プリチャージ期間Tpcとオーバーシュート期間Tovとの合計と一致する時間である。パルス生成部112は、基準パルス信号を遅延時間t1分遅延させたパルス信号S1と、基準パルス信号を遅延時間t2分遅延させたパルス信号S2とを生成する。パルス生成部112は、例えば基準パルス信号がハイレベルであり、且つパルス信号S1がローレベルのときプリチャージ期間Tpcがオン(ハイレベル)となるプリチャージ生成信号を生成する。またパルス生成部112は、例えば基準パルス信号がハイレベル、パルス信号S1がハイレベル且つパルス信号S2がローレベルのときオーバーシュート期間Tovがオン(ハイレベル)となるオーバーシュート生成信号とを生成する。
尚本実施形態では、遅延時間t1,t2がメモリ120に格納されたものとしたが、これに限定されない。本実施形態の遅延時間t1,t2は、上記以外の方法で取得されても良い。本実施形態のパルス生成部112は、例えばインバータ列やバッファ列によりパルス信号S1,S2を生成しても良い。また本実施形態では、抵抗とコンデンサ等からなるローパスフィルタで基準パルス信号を遅延させた後、波形整形した信号をパルス信号S1,S2として用いても良い。どちらの場合も、遅延量を変更する事は段数やフィルタ定数の変更により容易に実施する事が出来る。
次に図8を参照して本実施形態のIov値設定部113によるオーバーシュート電流Iovの設定について説明する。図8は、第一の実施形態のIov値設定部の処理を説明するフローチャートである。
本実施形態のIov値設定部113は、点灯パターン信号に基づきLDを発光させた際のPDの出力波形の積分光量比が所定範囲内となったとき、電流値をオーバーシュート電流Iovとして設定する。積分光量比は、点灯パターン信号1周期分の積分光量に対するPDの出力波形の積分光量の割合を示す値である。
まず始めにCPU110は、オーバーシュート電流Iovの設定指示を受け付ける(ステップS801)。本実施形態では、例えば光源駆動回路100からLDへの駆動電流Ikの供給が途切れた後に、再度LDへの駆動電流Ikの供給を開始する際に設定指示を受け付ける。この設定指示は、例えば画像形成装置10の動作全体を制御するメインCPU(図示せず)等からCPU110へ通知されても良い。本実施形態では、具体的には例えば、画像形成装置10がスリープモードから起動するときや、画像形成装置10の筐体に設けられたドアが開かれた後に閉じられたとき等に設定指示を受け付ける。
続いてIov値設定部113は、電流値記憶部121から所定電流Iopの値を読み出す(ステップS802)。続いてIov値設定部113は、点灯パターン信号記憶部123から点灯パターン信号を読み出す(ステップS803)。本実施形態の点灯パターン信号は、1画素分LDを点灯させ、1画素分LDを消灯させるように予め生成された信号である。
続いてIov値設定部113は、遅延時間記憶部122から遅延時間t1、すなわちプリチャージ期間Tpcを読み出す(ステップS804)。次にIov値設定部113は、電流値記憶部121からプリチャージ電流Ipcの電流値を読み出す(ステップS805)。続いてIov値設定部113は、遅延時間記憶部122から遅延時間t2を読み出し、遅延時間t2と遅延時間t1との差分をオーバーシュート期間Tovとして読み出す(ステップS806)。
続いてIov値設定部113は、電流値選択部114により、電流値を選択する電流値選択信号をDAC130へ出力する(ステップS807)。電流値選択部114は、DAC130において出力可能な電流値のうち、値の小さい電流値から順に選択する。
DAC130は、CPU110から電流値選択信号を受けると、選択された電流値をアナログ値に変換してオーバーシュート電流源240へ出力する。オーバーシュート電流源240は、選択された電流値をLDへ供給する。このときパルス生成部112は、スイッチ241に対して、点灯パターン信号の立ち上がりと同期したオーバーシュート生成信号を供給する。オーバーシュート生成信号は、ステップS806で読み出されたオーバーシュート期間Tovだけ、スイッチ241をオンとする。
続いてIov値設定部113は、積分光量算出部115により、PDの出力波形の積分光量比を算出する(ステップS808)。続いてIov値設定部113は、判定部116により、算出した積分光量比が所定範囲内であるか否かを判断する(ステップS809)。
ステップS809において、積分光量比が所定範囲内であるとき、Iov値設定部113はこのとき選択した電流値をオーバーシュート電流Iovとして設定する(ステップS810)。ステップS809において、積分光量比が所定範囲内であるとき、Iov値設定部113はステップS807へ戻り、次に大きい電流値を選択する。
以下に図9を参照して、オーバーシュート電流Iovについてさらに説明する。図9は、オーバーシュート電流Iovを説明する図である。
図9では、PDの出力波形を発光遅延のない理想的な波形に近づけるために、所定範囲を例えば50%を中心値として±5%とした場合を示している。尚所定範囲は予め設定された値であり、任意に設定することができる。
図9の(1)は、電流値選択部114により電流値が選択されておらず、駆動電流Ikが点灯パターン信号に同期した所定電流Iopとなる場合のPDの出力波形を示す。この場合、PDの出力波形の立ち上がりの鈍りにより、点灯パターン信号の1周期分の期間HにおけるPDの出力波形の積分光量比は45%未満となる。
図9の(2)は、電流値選択部114により、最も小さい電流値Iv′が選択された場合のPDの出力波形を示す。このとき駆動電流Ikは、立ち上がりからオーバーシュート期間Tovの間、電流値Iv′分オーバーシュートされる。このときも、点灯パターン信号の1周期分の期間HにおけるPDの出力波形の積分光量比は45%未満である。
続いて図9の(3)は、電流値選択部114により、電流値Iv′よりも大きい電流値Ivが選択された場合のPDの出力波形を示す。このとき駆動電流Ikは、立ち上がりからオーバーシュート期間Tovの間、電流値Iv分オーバーシュートされる。この場合、点灯パターン信号の1周期分の期間HにおけるPDの出力波形の積分光量比は50〜55%の間となる。したがってIov値設定部113は、電流値Ivをオーバーシュート電流Iovの値として設定する。
以上のように本実施形態では、プリチャージ電流Ipcの値及びプリチャージ期間Tpcは、予め値をメモリ120に格納しておき、所定電流Iop及び目標とする所定光量Poが変動しても変更せずに使用する。また本実施形態ではオーバーシュート電流Iovの電流値については、光源の発光光量が変わるごとに調整して使用する。よって本実施形態では、プリチャージ電流Ipcについては一度設定すればよく、オーバーシュート電流Iovのみ値を調整すればよい。このため本実施形態によれば、調整時間も短くすることができ、且つ回路規模を小さくすることができる。
図10は、光源の光量が変化した場合の駆動電流波形と光出力波形の例を示す図である。図10(A)は、低光量(Pa)時の駆動電流波形と光出力波形を示し、図10(B)は高光量(Pb)時の駆動電流波形と光出力波形を示す。また図10(A)における所定電流Iopaの値と図10(B)の所定電流Iopbの値の大小関係は、Iopa<Iopbとなる。これは、所定電流Iopの大きさに応じて光量が変化するためである。
図10においてオーバーシュート電流Iovに着目すると、光量の変化に伴って電流量が変動していることがわかる。尚電流量とは、オーバーシュート電流Iovの値(駆動電流波形の振幅値)と、オーバーシュート期間Tovとの乗算により求められる。
図10の例では、光量の増加に伴いオーバーシュート電流Iovの値が増加し、Iov2a<Iov2bの関係となる。一方プリチャージ電流Ipcは主に光源のパッケージやボードの配線などの全体系に基づいて決定するため、所定電流Iop及び所定光量Poの大きさを変動させても電流値は変動せず、Ipca=Ipcbの関係となる。このように本実施形態では、光量の変化時はオーバーシュート電流Iovの値のみを調整する簡易な設定で、安定した光出力波形の取得できる。
尚本実施形態では、オーバーシュート期間Tovはメモリに格納された遅延時間t1,t2の差分と一致する固定値であるとしたが、遅延時間t2の値を変更することで、オーバーシュート期間Tovを変更しても良い。
次に、本実施形態のプリチャージ期間Tpcとプリチャージ電流Ipcの値の設定について説明する。本実施形態では、プリチャージ期間Tpcとプリチャージ電流Ipcの電流値は予め設定される固定値である。
以下に図11を参照して、本実施形態の効果を説明する。図11は、第一の実施形態の効果を説明する図である。図11(A)は、LDに所定電流Iopのみ印加した場合の駆動電流波形と光出力波形を示し、図11(B)はLDに所定電流Iopとオーバーシュート電流Iovを印加した場合の駆動電流波形と光出力波形を示す。図11(C)は、LDに所定電流Iopとプリチャージ電流を印加した場合の駆動電流波形と光出力波形を示し、図11(D)はLDに所定電流Iopとオーバーシュート電流Iovとプリチャージ電流Ipcを印加した場合の駆動電流波形と光出力波形を示す。
図11(A)では、駆動電流波形が矩形波であるの対し、光出力波形では発光遅延時間T1が生じて立ち上がりが鈍っており、理想的な出力状態に比べて光量が補償できていない。図11(B)では、駆動電流Ikは、所定電流Iopにオーバーシュート電流Iovが加算されている。図11(B)の光出力波形は、図11(A)と比較して、立ち上がりの鈍りが軽減し、高速に立ち上がっている。発光遅延時間T2に関しても、発光遅延時間T1より短縮されているが、理想的な出力状態に比べて十分な補償はできていない。
また図11(B)においてオーバーシュート電流Iovをさらに大きくすると、発光遅延時間T2はさらに改善していくが、所定光量Poを大幅に超えるため、LDの劣化を促進する虞がある。
図11(C)では、プリチャージ電流Ipcが、回路の配線などの寄生容量を事前に充電するため、光出力波形の発光遅延時間T3は発光遅延時間T1より短縮されている。しかし光出力波形の立ち上がりについては、図11(A)と同等の鈍りがある。
図11(D)の駆動電流Ikは、本実施形態の光源駆動回路100が出力する駆動電流である。図11(D)では、立ち上がりが改善した方形波に近い光出力波形を得ることができる。さらに発光遅延時間T4は、発光遅延時間T1〜T3より短縮されることがわかる。
次に、光源駆動回路100に接続された評価装置によるプリチャージ期間Tpcとプリチャージ電流Ipcの値の算出について説明する。
本実施形態のプリチャージ期間Tpcとプリチャージ電流Ipcの値は、例えば画像形成装置10の製造過程で光源駆動回路100に接続された評価装置等により算出され、この算出された値がメモリ120に格納されても良い。
図12は、光源駆動回路に接続される評価装置の機能構成の例を示す図である。本実施形態では、評価装置300は、例えばADC150の出力側とCPU110の入力側の間に接続されても良い。
評価装置300は、例えば演算処理部と記憶部とを有するコンピュータである。評価装置300は、指示受付部310、Tpc値設定部320、Ipc値設定部330、閾値記憶部340を有する。
指示受付部310は、プリチャージ期間Tpcとプリチャージ電流Ipcの設定指示を受け付ける。本実施形態では、例えば評価装置300が光源駆動回路100と接続されたときに設定指示を受けたものとしても良い。また評価装置300は、例えば評価装置300を用いる評価者により設定指示が入力されたときにこれを受け付けても良い。
Tpc値設定部320は、パルス選択部321、積分光量取得部322、Tpc判定部323を有し、プリチャージ期間Tpcを算出して設定する。
Ipc値設定部330は、電流値選択部331、積分光量取得部332、Ipc判定部333を有し、プリチャージ電流Ipcの値を算出して設定する。
閾値記憶部340には、Tpc値設定部320で用いられるTpc閾値341と、Ipc値設定部330で用いられるIpc閾値342とが格納されている。
Tpc閾値341は、LDの発光が検出されたか否かを判断するための閾値である。Ipc閾値342は、LDの光量が所定の光量となったか否かを判断するための閾値である。Tpc値設定部320とIpc値設定部330の処理の詳細は後述する。
以下に図13を参照して本実施形態の評価装置300によるプリチャージ期間Tpcとプリチャージ電流Ipcの値の設定を説明する。図13は、評価装置によるプリチャージ期間Tpcとプリチャージ電流Ipcの設定を説明するフローチャートである。
評価装置300は、指示受付部310により設定指示を受け付けると(ステップS131)、始めにTpc値設定部320によりプリチャージ期間Tpcを設定する(ステップS132)。続いて評価装置300は、Ipc値設定部330によりプリチャージ電流Ipcを設定する(ステップS133)。
このように本実施形態では、始めにプリチャージ期間Tpcを設定してからプリチャージ電流Ipcを設定する。
次に、図14を参照してTpc値設定部320によるプリチャージ期間Tpcの設定について説明する。図14は、評価装置におけるTpc値設定部の処理を説明するフローチャートである。
本実施形態では、LDに対し、所定電流Iopより大きい電流の供給が開始されてから、LDの発光が検出されるまでの時間を、プリチャージ期間Tpcに設定する。
本実施形態では、プリチャージ期間Tpcをより短い期間に設定することが好ましい。プリチャージ期間Tpcを短くすれば、寄生容量Cを短時間で充電でき、寄生遅延時間taを短縮することができる。
本実施形態では、プリチャージ期間Tpcを設定する際にLDに供給される所定電流Iopより大きい電流を、Tpc設定電流Isと呼ぶ。Tpc設定電流Isは、例えば評価装置300が有する記憶装置(図示せず)内に格納されている。尚Tpc設定電流Isは、例えば光源駆動回路100のメモリ120に格納されていても良い。
本実施形態の評価装置300において指示受付部310が設定指示を受け付けると、Tpc値設定部320は、Tpc設定電流Isを読み出す(ステップS141)。続いて評価装置300は、CPU110及びDAC130を介してプリチャージ電流源230にTpc設定電流Isを出力させる。このときバイアス電流Ibとスイッチング電流Ihとはオフされており、LDに供給される電流はプリチャージ電流源230から出力されるTpc設定電流Isのみとする。
続いてTpc値設定部320は、パルス選択部321により、CPU110に対してパルス信号の選択指示信号を出力する(ステップS142)。このときパルス選択部321は、LDの発光が検出されたか否かを判断するために、CPU110に対してパルス幅の狭いパルス信号から順に選択させる。
CPU110においてパルス信号が選択されると、LDドライバ200を介して選択されたパルス信号がプリチャージ生成信号としてスイッチ231へ供給される。本実施形態のスイッチ231は、プリチャージ生成信号がハイレベルの期間オンとされるものである。Tpc設定電流Isは、スイッチ231がオンとなるとLDに供給される。
続いて積分光量取得部322は、LPF140によりLDの光量に基づきPDから出力される電気信号の波形を積分して得られた積分光量を、ADC150を介してデジタル値として取得する(ステップS143)。
続いてTpc判定部323は、閾値記憶部340に格納されたTpc閾値341を参照し、積分光量がTpc閾値以上であるか否かを判断する(ステップS144)。ステップS144において、積分光量がTpc閾値以上である場合、Tpc判定部3233はLDの発光が検出されたものと判断し、ステップS142で選択されたパルス信号より一つ前に選択されたパルス信号のパルス幅をプリチャージ期間Tpcとする。ここでTpc判定部323は、CPU110を介してメモリ120にプリチャージ期間Tpcを保存する(ステップS145)。
ステップS144において積分光量がTpc閾値未満の場合、Tpc値設定部320はステップS142へ戻り、次に幅の狭いパルス信号を選択する。
以下に図15を参照して、プリチャージ期間Tpcについてさらに説明する。図15は、プリチャージ期間Tpcを説明する図である。
図15の(1)〜(4)では、パルス幅の狭いパルス信号から順に選択された際のPDの出力波形を示している。尚PDから出力される電気信号は、抵抗R1により電圧値に変換されて、LPF140へ供給される。
図15に示す(1)では、CPU110において最初に選択されるパルス信号P10がLDに供給された場合のPDの出力波形を示している。パルス信号P10は、CPU110で選択可能なパルス信号のうちパルス幅が最も狭い信号であり、パルス幅をP1とする。図15の(1)では、パルス幅P1の期間だけ、Tpc設定電流IsがLDに供給される。このときPDの出力は現れず、積分光量は0である。したがって、LDが発光していないことがわかる。
図15に示す(2)では、パルス幅P2のパルス信号P20が選択された場合のPDの出力波形を示している。このときLDには、パルス幅P2の期間だけ、Tpc設定電流IsがLDに供給され、PDの出力がわずかに現れる。このときの積分光量がS1である。
図15に示す(3)では、パルス幅P3のパルス信号P30が選択された場合のPDの出力波形を示している。このときLDには、パルス幅P3の期間だけ、Tpc設定電流IsがLDに供給され、パルス幅P2の期間Tpc設定電流Isを供給してときよりはPDの出力が大きくなる。このときの積分光量がS2である。
本実施形態では、このようにパルス信号のパルス幅を徐々に広げていき、PDの出力波形の積分光量がTpc閾値以上となったとき、LDの発光を検出したものとする。
Tpc閾値は、LDが所定光量Poを出力している際のPDの出力波形の積分光量(以下、全体積分光量)に対する、パルス信号によるLDの発光に対応したPDの出力波形の積分光量の割合である。本実施形態では、Tov閾値は、全体積分光量の数%程度に設定しても良い。本実施形態では、例えばTpc閾値を5%とした。この場合、PDの出力波形の積分光量が、全体積分光量の5%以上となったとき、LDが発光していると判断する。
図15において、例えば積分光量S1が全体積分光量の3%程度であり、積分光量S2が全体積分光量の10%程度であるとしたら、Tpc値設定部320はパルス幅P2をプリチャージ期間Tpcに設定する。
ここで図16を参照し、プリチャージ期間Tpcを設定する際にLDに供給されるTpc設定電流Isについて説明する。
図16は、LDの電流−光出力特性を示す図である。図16において領域S10は、電流−光出力特性における線形領域であり、領域S20は電流−光出力特性における非線形領域である。
本実施形態のTpc設定電流Isの値は、図16に示す線形領域S10内における所定電流Iopより大きく、非線形領域S20における光出力の最大Pmaxに対応する電流Imax以下の値であれば良い。尚図16に示す電流Ithは、LDが発光を開始する閾値となる閾値電流である。
本実施形態では、Tpc設定電流Isは上記の範囲内において大きいほど短時間でLDの発光を検知することができ、プリチャージ期間Tpcを短時間に設定できるため、好ましい。よって例えば本実施形態では、Tpc設定電流Isを電流Imaxとしても良い。具体的には例えば、本実施形態ではプリチャージ期間Tpcが1nsec程度となるようにTpc設定電流Isの値を決めても良い。
このように本実施形態では、プリチャージ期間Tpcを設定する際に、LDから目標光量として設定された所定光量Poを得るための所定電流Iopよりも大きな電流をLDへ供給し、短時間でLDの発光を検出させる。尚本実施形態では、Tpc設定電流Isの値をLDの定格電流を越えた値とした場合でも、LDにTpc設定電流Isが供給されるのはLDが破損しない程度の期間となる。
次に図17を参照して評価装置300のIpc値設定部330によるプリチャージ電流Ipcの設定について説明する。図16は、評価装置におけるIpc値設定部の処理を説明するフローチャートである。
本実施形態の評価装置300において指示受付部310が設定指示を受け付けると(ステップS1701)、Ipc値設定部330は、所定電流Iopを読み出す(ステップS1702)。Ipc値設定部330は、CPU110を介してメモリ120から点灯パターン信号を読み出す(ステップS1703)。続いてIpc値設定部330は、プリチャージ期間Tpcを読み出す(ステップS1704)。
プリチャージ期間Tpcを読み出すと、Ipc値設定部330は、電流値選択部331により、電流値を選択する電流値選択信号をCPU110を介してDAC130へ出力する(ステップS1705)。電流値選択部331は、DAC130において出力可能な電流値のうち、値の小さい電流値から順に選択する。
DAC130は、CPU110を介して電流値選択信号を受けると、選択された電流値をアナログ値に変換してプリチャージ電流源230へ出力する。プリチャージ電流源230は、選択された電流値をLDへ供給する。このときパルス生成部112は、スイッチ231に対して、点灯パターン信号の立ち上がりと同期したプリチャージ生成信号を供給する。プリチャージ生成信号は、ステップS1604で読み出されたプリチャージ期間Tpcがハイレベルとなる信号であり、プリチャージ期間Tpcの間スイッチ231をオンさせる。
続いてIpc値設定部330は、積分光量取得部332により、ADC150から出力されるPDの出力波形の積分光量を取得する(ステップS1706)。続いてIpc値設定部330は、Ipc判定部333により閾値記憶部340を参照し、取得した積分光量がIpc閾値以上であるか否かを判断する(ステップS1707)。
ステップS1607において、積分光量がIpc閾値以上であるとき、Ipc値設定部330はこのとき選択した電流値をプリチャージ電流Ipcの値とし、CPU110を介してメモリ120に保存させる(ステップS1708)。ステップS1607において、積分光量がIpc閾値以上でないとき、Ipc値設定部330はステップS1705へ戻り、次に大きい電流値を選択する。
以上のように本実施形態では、光源駆動回路100に接続した評価装置300により、固定値であるプリチャージ電流Ipcの値とプリチャージ期間Tpcを算出し、光源駆動回路100に設定する。本実施形態では、このようにプリチャージ期間Tpcとプリチャージ電流Ipcの値とを設定することで、短時間で静電容量Cを充電することができる。
図18は、Tpc設定電流Isによりプリチャージ期間を設定した場合の駆動電流波形を示す図である。
図18に示す駆動電流Ikでは、プリチャージ期間Tpcが短く設定されている。このプリチャージ期間Tpcは、LDの発光応答時間より短い時間である。本実施形態のLDの発光応答時間とは、光源駆動回路100全体の中で、駆動電流Ikを生成してからLDが発光し始めるまでの時間を示す。
具体的には例えば、LDの最大光量Pmaxを得る電流ImaxをTpc設定電流Isとしても良い。このようにしてプリチャージ期間Tpcを設定すれば、VCSEL等の寄生容量や微分抵抗が大きい光源でも高速に寄生容量Cを充電することができる。またLDを高速駆動する際にも、LDのオフ(消灯)時間内に余裕を持って駆動電流Ikを印加でき、1つ前の駆動電流Ikに対する干渉を抑制できる。
尚本実施形態では、評価装置300は光源駆動回路100の外部に接続されるものとしたが、これに限定されない。本実施形態の光源駆動回路100は、例えばCPU110が評価装置300の有する機能を有していても良い。この場合光源駆動回路100は、評価装置300を用いずにプリチャージ電流Ipcの値とプリチャージ期間Tpcをメモリ120へ保存することができる。
以上のように本実施形態では、プリチャージ電流Ipcで寄生容量Cを高速に充電して寄生遅延時間taを短縮できる。また本実施形態では、LDの光量に応じて設定されるオーバーシュート電流Iovにより応答遅延時間tbも短縮できる。よって本実施形態では、最終的な発光遅延時間tを短縮することができ、必要な光量を補償することができる。
ところで従来では、特に、パッケージの大きいLDでは、寄生容量の増大や波長帯によっては抵抗成分が増大すること等、さまざまな応答特性の変動要因を有している。例えば、波長780nm帯の赤外半導体レーザと比較して、650nm帯赤色光半導体レーザは一般的に微分抵抗が大きいため、常に高速に光出力の応答が得られるわけではなく、波形の鈍りが発生する場合がある。また赤外半導体レーザでも、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser;垂直共振器面発光レーザ)等は、構造上の違いにより微分抵抗が数百Ω程度と、端面型レーザに比較して非常に大きい微分抵抗を持っている。よってVCSEL自身の端子容量やVCSELを搭載している基板の寄生容量やドライバの端子容量等とVCSELの微分抵抗によりCRの時定数が発生する。このため、VCSEL自身は高速に変調できる素子特性やカットオフ周波数Ftを持っていても、基板に搭載すると所望の高速に光出力の応答が得られず発光遅延時間が増大してしまうという問題があった。
本実施形態では、どのような光源であっても、寄生容量や微分抵抗などに応じて光出力波形を補正するため、発光遅延時間を短縮でき、所定電流Iopの電流波形に近い光出力波形を得ることができる。つまり本実施形態によれば、VCSELのような複数の光源を有し、且つ微分抵抗が大きい光源であっても、各光源毎に最適なプリチャージ電流Ipcとオーバーシュート電流Iovを設定することができる。よって本実施形態によれば、光源間の発光ばらつきを抑制することができ、例えば画像形成装置10における画像の濃度ばらつきや色ずれを抑制することができる。また本実施形態では、オーバーシュート電流Iovは所定電流Iopの大きさ及び光量に応じて調整されるため、光源の光量が変更されても所望の光出力波形を得ることができる。
このように本実施形態によれば、光出力の発光遅延時間を短縮し、且つ応答特性を改善することができる。
(第二の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第二の実施形態について説明する。本発明の第二の実施形態は、駆動電流Ikにバイアス電流Ibを含まない点が第一の実施形態と相違する。よって以下の第二の実施形態の説明では、第一の実施形態との相違点についてのみ説明し、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、その説明を省略する。
図19は、第二の実施形態の光源駆動回路を説明する図である。本実施形態の光源駆動回路100Aは、LDドライバ200Aを有する。LDドライバ200Aは、スイッチング電流源210、プリチャージ電流源230、オーバーシュート電流源240、スイッチ211、231、241を有する。本実施形態のLDドライバ200Aは、DAC130から供給されるアナログ値に基づき3つの電流源から電流を出力し、駆動電流Ikを生成する。具体的には本実施形態のLDドライバ200Aは、スイッチング電流Ihの立ち上がりから先行して印加されるプリチャージ電流Ipcと、スイッチング電流Ihと同期して印加されるオーバーシュート電流Iovとを含む駆動電流Ikを生成し、LDへ供給する。
図20は、第二の実施形態の駆動電流波形を示す図である。
本実施形態の駆動電流Ikでは、バイアス電流Ibを用いないため、スイッチング電流Ihの電流値と所定電流Iopの電流値とが等しくなる。
(第三の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第三の実施形態について説明する。本発明の第三の実施形態は、駆動電流Ikにアンダーシュート電流を含む点が第一の実施形態と相違する。よって本発明の第三の実施形態では、第一の実施形態との相違点についてのみ説明し、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、その説明を省略する。
図21は、第三の実施形態の光源駆動回路を説明する図である。
本実施形態の光源駆動回路100Bは、LDドライバ200Bを有する。本実施形態の光源駆動回路100Bは、CPU110Aと、LDドライバ200Bとを有する。LDドライバ200Bは、スイッチング電流源210、バイアス電流源220、プリチャージ電流源230、オーバーシュート電流源240、アンダーシュート電流源250、スイッチ211、221、231、241、251を有する。アンダーシュート電流源250は、スイッチ251のオン/オフにより、LDとの接続が制御される。アンダーシュート電流源250は、スイッチ251がオンされると、スイッチング電流Ihの立ち下がりと同期してアンダーシュート電流IudをLDに供給する。
スイッチ251は、CPU110から供給されるアンダーシュート生成信号によりオン/オフが制御される。具体的にはスイッチ251は、アンダーシュート生成信号がハイレベルの期間(以下、アンダーシュート期間Tud)オンされる。
図22は、第三の実施形態のCPUの機能構成を説明する図である。本実施形態のCPU110Aは、第一の実施形態のCPU110の有する各部に加え、Iud値設定部117を有する。
本実施形態のIud値設定部117は、メモリ120を参照し、プリチャージ電流Ipcの電流量と、オーバーシュート電流Iovの電流量との和を算出する。尚電流量とは、電流値×オン時間で定義される。具体的には例えばプリチャージ電流Ipcの電流量は、プリチャージ電流Ipcの電流値と、プリチャージ期間Tpcの積である。オーバーシュート電流Iovの電流量は、オーバーシュート電流Iovの電流値と、オーバーシュート期間Tovの積である。
そしてIud値設定部117は、2つの電流量の和とアンダーシュート電流Iudの電流量とが等しくなるようにアンダーシュート電流Iudの電流値とアンダーシュート期間Tudとを設定する。
アンダーシュート電流Iudには光出力波形の立ち下がりの鈍り補正と、プリチャージ電流Ipc等により充電された寄生容量の放電の役割を果たす。このため光出力波形の改善に必要なアンダーシュート電流の電流量はオーバーシュート電流Iovの電流量とほぼ等しく、寄生容量の放電に必要なアンダーシュート電流の電流量はプリチャージ電流Ipcの電流量とほぼ等しくなる。
よって本実施形態では、アンダーシュート電流Iudの電流量を2つの電流量の和と等しくなるように設定することで光出力波形の応答特性をさらに改善できる。
また本実施形態では、プリチャージ電流Ipcとオーバーシュート電流Iovを用いてアンダーシュート電流Iudを設定するため、複雑な演算等が不要であり、高速にアンダーシュート電流Iudを設定できる。また本実施形態では、アンダーシュート期間Tudは、オーバーシュート期間Tovと等しくしても良い。この場合、光出力波形の立ち上がり時の応答と立ち下がり時の応答とをほぼ等しくさせることができる。
図23は、第三の実施形態の駆動電流波形を示す図である。
本実施形態の駆動電流Ikは、第一の実施形態に所定電流Iopの立ち下がりに同期してアンダーシュート電流Iudが印加されている。アンダーシュート電流Iudは光出力波形の立ち下がりの鈍りの低減させることができ、さらに充電された寄生容量を高速に放電させることができる。
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。