以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態1]
図1は、本実施形態に係る換気システムの概略図であり、図2は、本実施形態に係る換気システムのフィルタ部を示す概略図であり、図3は、本実施形態に係る換気システムの動作を示すフローチャートである。
図1に示すように、本実施形態の換気システム1は、部屋2と、放射性ガス除去手段3と、放射性ガス検出手段4Aと、放射性希ガス検出手段4Bと、二酸化炭素検出手段5と、空気ボンベからの空気供給手段6と、部屋内圧力検出手段7と、制御手段8と、を含む。
部屋2は、壁、天井および床により囲まれたものである。この部屋2は、例えば、原子力設備を制御・監視するために原子炉建屋内に設置される制御室、会議や居住するために原子炉建屋内に設置される居室、原子力設備の事故時などに原子力設備を制御・監視するために原子炉建屋外に設置される代替制御室、原子力設備の事故時などに会議や居住するために原子炉建屋外に設置される代替居室、原子力設備の事故時などに原子力設備に従事する人や原子力設備近くの住民が避難するための非常用居室、原子力設備近くにある病院や介護施設などがある。本実施形態において、部屋2は、内部の気圧低下と空気の損失を最小限にしつつ、内外に行き来を行うためのエアロック2Aが設けられている。また、部屋2は、内部の温度や湿度を適宜保つための空調設備2Bが設けられている。空調設備2Bは、室内機2Baと室外機2Bbとを有し、室内機2Baにより部屋2の内部の温度や湿度を検出して適した温度や湿度となるように制御される。また、部屋2は、部屋2の内部の圧力が部屋2の外部の圧力(大気圧)よりも高くなるように調整する圧力調整手段としての圧力調整手段2Cを有する。圧力調整手段2Cは、例えば、部屋2の内部と外部とを連通するダクト2Caと、部屋2の内部の空気を部屋2の外部に排出するようにダクト2Caを開閉または開度調整する圧力調整弁2Cbからなる。
放射性ガス除去手段3は、ガス状の放射性よう素(よう素I2,有機よう素CH3I)の他、ミスト状のセシウム(Cs)やストロンチウム(Sr)などを含む放射性物質を含む放射性ガスの通過を遮断するものである。放射性ガス除去手段3は、フィルタ部3Aと、送気管3Bと、送風機3Cと、開閉調整弁3Dと、を有する。
フィルタ部3Aは、図2に示すように、周囲が外壁で囲まれた筒状に形成されて一端側および他端側に開口部がそれぞれ形成されたケーシング3Aaを有している。そして、フィルタ部3Aは、ケーシング3Aa内に、一端側から加熱部3Ab、粗フィルタ3Ac、上流側高性能フィルタ3Ad、放射性ガスフィルタ3Ae、および下流側高性能フィルタ3Afが設けられている。
加熱部3Abは、ケーシング3Aaの内部に流通されるガスを加熱するためのものである。加熱部3Abの配置は、放射性ガスフィルタ3Aeよりもガスの流通の上流側であればよい。
粗フィルタ3Acは、例えば、対象粒子径が50μm以上の空気濾過フィルタや、対象粒子径が25μm以上の中高性能フィルタが適用される。
上流側高性能フィルタ3Adおよび下流側高性能フィルタ3Afは、例えば、対象粒子径が0.15μmで99.97%の除去効率のHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)が適用される。
放射性ガスフィルタ3Aeは、ケーシング3Aaの内部に流通されるガス中に含まれる放射性物質を吸着する。具体的に、放射性ガスフィルタ3Aeは、母体を構成する基材と、この基材に添着される添着物質とを含む。基材に用いられる材料としては、特に限定されるものではなく、表面に複数の細孔を有するものであればよく、例えば、活性炭、アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、活性白土などが挙げられる。ゼオライトとしては、天然ゼオライトまたは合成ゼオライトのどちらでもよい。また、ゼオライトとして、モルデナイト系ゼオライトなどが挙げられる。基材は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、放射性ガスフィルタ3Aeは、添着物質として、トリエチレンジアミン(TEDA:Tri−Ethylene−Di−Amine)または、よう化カリウム(KI)を含む。この放射性ガスフィルタ3Aeは、上記構成により、ガス状の放射性よう素(よう素I2,有機よう素CH3I)の他、ミスト状のセシウム(Cs)やストロンチウム(Sr)などを含む放射性物質を吸着することで、当該放射性物質を含む放射性ガスの通過を遮断する。
なお、図には明示しないが、フィルタ部3Aは、ケーシング3Aaの内部であって、放射性ガスフィルタ3Aeよりもガスの流通の上流側にガス処理フィルタを設けてもよい。ガス処理フィルタは、ケーシング3Aaの内部に流通されるガス中に含まれる有機溶剤ガス成分や酸性ガス成分を捕集する。具体的に、ガス処理フィルタは、母体を構成する基材と、この基材に添着される添着物質とを含む。基材に用いられる材料としては、特に限定されるものではなく、表面に複数の細孔を有するものであればよく、例えば、活性炭、アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、モレキュラーシーブなどが挙げられる。ゼオライトとしては、天然ゼオライトまたは合成ゼオライトのどちらでもよい。また、ゼオライトとして、モルデナイト系ゼオライトなどが挙げられる。基材は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、ガス処理フィルタは、添着物質として、酸性成分、アルカリ成分、トリエチレンジアミン(TEDA:Tri−Ethylene−Di−Amine)、よう化カリウム(KI)の少なくとも1つを含む。このガス処理フィルタは、上記構成により、ガス状の放射性よう素(よう素I2,有機よう素CH3I)の他、ミスト状のセシウム(Cs)やストロンチウム(Sr)などを含む放射性物質を吸着することで、当該放射性物質を含む放射性ガスの通過を遮断することが可能である。
送気管3Bは、フィルタ部3Aの下流側と部屋2の内部とを連通するものである。
送風機3Cは、送気管3Bに設けられてフィルタ部3Aのケーシング3Aaの内部に空気を通過させるものである。送風機3Cによりフィルタ部3Aのケーシング3Aaの内部を通過する空気は、送気管3Bを介して部屋2の内部に送られる。
開閉調整弁3Dは、送気管3Bに設けられて当該送気管3Bを開閉または開度調整するものである。
なお、図1において、送風機3Cは、送気管3Bにおいて開閉調整弁3Dの下流側に設けられているが開閉調整弁3Dの上流側に設けられていてもよい。さらに、図1において、送風機3Cは、送気管3Bに設けられているが、フィルタ部3Aにおけるケーシング3Aa内の他端側(最も下流側)に設けられていてもよい。
放射性ガス検出手段4Aは、部屋2の外部であって、例えば、フィルタ部3Aにおけるケーシング3Aaの一端側の外部に設けられ、放射性ガスを検出するものである。放射性ガス検出手段4Aは、ガスクロマトグラフやガンマ線検出器がある。放射性ガス検出手段4Aは、例えば、原子力設備の事故時において放射性ガスが発生した場合に、この放射性ガスを検出し、その後に原子炉内の燃料が溶融して放射性希ガスが発生した場合に、放射線の検出値が放射性ガスを検出した検出値を超えることで放射性希ガスを検出することができ、その後に放射線の検出値が下回ることで放射性希ガスの放射線が減衰して放射性希ガスが減少したことを検出することができる。
放射性希ガス検出手段4Bは、部屋2の外部であって、例えば、フィルタ部3Aにおけるケーシング3Aaの一端側の外部に設けられ、キセノン(Xe)やアルゴン(Ar)などの放射性希ガスを検出するものである。放射性希ガス検出手段4Bは、例えば、原子力設備の事故時において放射性ガスが発生した後、原子炉内の燃料が溶融して放射性希ガスが発生した場合に、放射性希ガスを検出する。
二酸化炭素検出手段5は、部屋2の内部の空気中の二酸化炭素濃度を検出するものである。
空気ボンベからの空気供給手段6は、部屋2の内部に空気ボンベからの空気を供給するものである。空気ボンベからの空気供給手段6は、空気ボンベからの空気貯留部6Aと、送気管6Bと、流量調整弁6Cと、を有する。
空気ボンベからの空気貯留部6Aは、圧縮した空気ボンベからの空気を貯留するボンベや、酸素を発生する酸素発生器を含む。
送気管6Bは、空気ボンベからの空気貯留部6Aと部屋2の内部とを連通するものである。
流量調整弁6Cは、送気管6Bに設けられて当該送気管6Bを通過する空気ボンベからの空気の流量を調整するものである。なお、流量調整弁6Cは、部屋2の内部の圧力が部屋2の外部の圧力(大気圧)よりも高くなるように調整する圧力調整手段を構成する。
部屋内圧力検出手段7は、部屋2の内部の圧力を検出するものである。
制御手段8は、換気システム1を統括制御する。制御手段8は、放射性ガス検出手段4Aの検出結果に基づいて、放射性ガス除去手段3の送風機3Cおよび開閉調整弁3Dを制御する。また、制御手段8は、放射性希ガス検出手段4Bの検出結果に基づいて、放射性ガス除去手段3の送風機3Cおよび開閉調整弁3Dや、空気ボンベからの空気供給手段6の流量調整弁6Cを制御する。また、制御手段8は、二酸化炭素検出手段5の検出結果に基づいて、放射性ガス除去手段3の送風機3Cおよび開閉調整弁3Dや、空気ボンベからの空気供給手段6の流量調整弁6Cを制御する。また、制御手段8は、部屋内圧力検出手段7の検出結果に基づいて、圧力調整手段(圧力調整手段2Cや流量調整弁6C)を制御する。
本実施形態の換気システム1の動作について説明する。原子力設備に事故が発生した場合、図3に示すように、制御手段8は、放射性ガス除去手段3を停止して空気ボンベからの空気供給手段6を運転し部屋2の内部を正圧とする(ステップS1)。すなわち、制御手段8は、放射性ガス除去手段3の送風機3Cを停止して開閉調整弁3Dを閉作動させ、空気ボンベからの空気供給手段6の流量調整弁6Cを開状態としつつ部屋内圧力検出手段7により検出する圧力が部屋2の外部の圧力よりも高くなるように(例えば10mmAq以上)圧力調整手段(圧力調整手段2Cまたは空気ボンベからの空気供給手段6の流量調整弁6C)を作動させる。これにより、部屋2は、放射性ガスや放射性希ガスが遮断された状態で、内部に空気が供給される。この結果、原子力設備に事故が発生した直後に、部屋2の内部の人が放射性ガスや放射性希ガスにより被曝する事態を防ぎ、かつ部屋2の内部の人の呼吸が妨げられる事態を防ぐことができる。
ステップS1の後、放射性ガス検出手段4Aにより放射性ガスが検出され(ステップS2:Yes)、かつ放射性希ガス検出手段4Bにより放射性希ガスが検出された場合(ステップS3:Yes)、制御手段8は、放射性ガス除去手段3を停止して空気ボンベからの空気供給手段6を運転し部屋2の内部を正圧とする(ステップS4)。すなわち、制御手段8は、ステップS1の動作を続ける。
なお、ステップS3において、放射性希ガスが検出されない場合(ステップS3:No)、制御手段8は、空気ボンベからの空気供給手段6を停止して放射性ガス除去手段3を運転し部屋2の内部を正圧とする(ステップS5)。すなわち、制御手段8は、空気ボンベからの空気供給手段6の流量調整弁6Cを閉状態とし放射性ガス除去手段3の送風機3Cを運転して開閉調整弁3Dを開作動させつつ部屋内圧力検出手段7により検出する圧力が部屋2の外部の圧力よりも高くなるように(例えば10mmAq以上)圧力調整手段(圧力調整手段2C)を作動させる。この結果、部屋2の内部の人が放射性ガスにより被曝する事態を防ぐことができる。
ステップS4の後、二酸化炭素濃度が閾値を超えた場合(ステップS6:Yes)、制御手段8は、空気ボンベからの空気供給手段6の空気ボンベからの空気供給量を制御する(ステップS7)。すなわち、ステップS6において、制御手段8は、二酸化炭素検出手段5による二酸化炭素濃度の検出結果を取得し、この二酸化炭素濃度が閾値を超えた場合(例えば、通常300ppm〜390ppm程度のところ、人の健康を阻害する5000ppm以上となった場合)、ステップS7において、空気ボンベからの空気供給手段6による空気ボンベからの空気供給量が増加するように、空気ボンベからの空気供給手段6の流量調整弁6Cを開作動させ、部屋2の内部の二酸化炭素濃度を閾値(例えば5000ppm)以下となるようにする。この結果、部屋2の内部の人の健康を維持することができる。なお、ステップS7において、空気ボンベからの空気供給手段6の空気ボンベからの空気供給量を制御した後は、ステップS6に戻り、二酸化炭素濃度を監視する。また、ステップS6において、二酸化炭素濃度が閾値を超えていなければ(ステップS6:No)、制御手段8は、ステップS4の動作を維持しつつステップS2に戻り、放射性ガス検出手段4Aにより放射性ガスを監視すると共に、放射性希ガス検出手段4Bにより放射性希ガスを監視する。
一方、ステップS5の後、二酸化炭素濃度が閾値を超えた場合(ステップS8:Yes)、制御手段8は、放射性ガス除去手段3の空気供給量を制御する(ステップS9)。すなわち、ステップS8において、制御手段8は、二酸化炭素検出手段5による二酸化炭素濃度の検出結果を取得し、この二酸化炭素濃度が閾値を超えた場合(例えば、通常300ppm〜390ppm程度のところ、人の健康を阻害する5000ppm以上となった場合)、ステップS9において、放射性ガス除去手段3による空気供給量が増加するように、放射性ガス除去手段3の送風機3Cの回転数を速く作動または開閉調整弁3Dを開作動させ、部屋2の内部の二酸化炭素濃度を閾値(例えば5000ppm)以下となるようにする。この結果、部屋2の内部の人の健康を維持することができる。なお、ステップS9において、放射性ガス除去手段3の空気供給量を制御した後は、ステップS8に戻り、二酸化炭素濃度を監視する。また、ステップS8において、二酸化炭素濃度が閾値を超えていなければ(ステップS8:No)、制御手段8は、ステップS5の動作を維持しつつステップS2に戻り、放射性ガス検出手段4Aにより放射性ガスを監視すると共に、放射性希ガス検出手段4Bにより放射性希ガスを監視する。
なお、ステップS2において、放射性ガス検出手段4Aにより放射性ガスが検出されない場合(ステップS2:No)、制御手段8は、部屋2を外気に開放する(ステップS10)。すなわち、制御手段8は、ステップS2において、放射性ガスが検出されず安全が確認された場合、ステップS10において、放射性ガス除去手段3および空気ボンベからの空気供給手段6および圧力調整手段2Cを停止する。また、ステップS10の後は、再びステップS2に戻り、放射性ガス検出手段4Aにより放射性ガスを監視すると共に、放射性希ガス検出手段4Bにより放射性希ガスを監視する。
ところで、ステップS1は、なくてもよいが、原子力設備に事故が発生した場合に、部屋2の内部の人が放射性ガスや放射性希ガスにより被曝する事態を防ぐ効果を顕著に得るため、放射性ガス検出手段4Aにより放射性ガスを検出する以前に、放射性ガス除去手段3を停止して空気ボンベからの空気供給手段6を運転し部屋2の内部を正圧とすることが好ましい。
このように、本実施形態の換気システム1は、壁、天井および床により囲まれた部屋2と、部屋2の外部に設けられて放射性ガスの通過を遮断するフィルタ部3Aと、フィルタ部3Aの内部に空気を通過させる送風機3Cと、フィルタ部3Aの下流側と部屋2とを連通する送気管3Bと、送気管3Bに設けられて当該送気管3Bを開閉する開閉調整弁3Dと、部屋2の内部の二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素検出手段5と、二酸化炭素検出手段5により検出する二酸化炭素濃度が予め設定した閾値以下となるように、送風機3Cまたは開閉調整弁3Dによる空気供給量を制御する制御手段8と、を備える。
原子力設備では、当該原子力設備を制御・監視するための制御室や、制御室に従事する人の居住空間が必要である。そして、万が一の事故発生時において、制御室(制御室が何らかの損傷を受けた場合は原子力設備の制御・監視を行う代替制御室)や居室(居室が何らかの損傷を受けた場合は代替居室、または住民の避難のための非常用居室、あるいは原子力設備近くにあって緊急に避難することが困難な病院や介護施設)などのような部屋2の内部の人の被曝を防止し、呼吸を維持する必要がある。
この換気システム1によれば、フィルタ部3Aを通過して部屋2の内部に空気を供給することから、部屋2の内部に放射性ガスが送られる事態を防ぐことができ、かつ部屋2の内部の二酸化炭素濃度の上昇を防ぐことができる。特に、この換気システム1によれば、部屋2の内部の二酸化炭素濃度を所定の濃度に維持するように、フィルタ部3Aを通過して部屋2に供給される空気供給量を制御するため、部屋2の内部の二酸化炭素濃度が低いときには、空気供給量を抑えることで、フィルタ部3Aを通過するおそれのある放射性ガスを低減することができ、一方、部屋2の内部の二酸化炭素濃度が高いときには、フィルタ部3Aを通過するおそれのある放射性ガスを極力抑える範囲内で空気供給量を増すことで部屋2の内部の二酸化炭素濃度を低減することができる。
ここで、部屋2における二酸化炭素の物質収支は、下記式(1)により求められる。
F×C=F×C0+M・・・(1)
式(1)において、Fは部屋2への空気供給量[m3/min]、Cは部屋2の内部の二酸化炭素濃度、C0は供給空気中の二酸化炭素濃度、Mは部屋2の内部に滞在する人員の呼吸に伴う二酸化炭素発生量[m3/min]である。
すなわち、部屋2への供給空気中の二酸化炭素量(F×C0)に、部屋2の内部に滞在する人員の呼吸に伴う二酸化炭素発生量Mを加えたものが、部屋2の内部の二酸化炭素量(F×C)となる。従って、部屋2の内部の二酸化炭素濃度を所定の濃度以下としたい場合、二酸化炭素検出手段5により検出した二酸化炭素濃度に基づき、部屋2への空気供給量を制御する。
例えば、部屋2の内部の二酸化炭素濃度Cを5000ppm(0.005m3/min)に維持する場合、部屋2の内部に滞在する人員を100人として、1人あたりの二酸化炭素発生量が0.046m3/h/人=0.00077m3/min/人のとき、部屋2の内部に滞在する人員の呼吸に伴う二酸化炭素発生量Mが0.077m3/minとなる。また、供給空気中(大気中)の二酸化炭素濃度C0を0.03%=300ppm(0.0003m3/min)とする。そうすると、部屋2への空気供給量Fは、F=M/(C−C0)=0.077/(0.005−0.0003)=16.4m3/minとなる。そして、制御手段8は、この空気供給量Fとなるように、送風機3Cの回転数または開閉調整弁3Dの開度を制御する。
また、本実施形態の換気システム1では、部屋2の外部における放射性ガスを検出する放射性ガス検出手段4Aと、部屋2の外部における放射性希ガスを検出する放射性希ガス検出手段4Bと、部屋2の内部に空気ボンベからの空気を供給する空気ボンベからの空気供給手段6と、をさらに備え、制御手段8は、放射性希ガス検出手段4Bにより放射性希ガスが検出された場合、送風機3Cを停止して開閉調整弁3Dを閉作動させ、かつ空気ボンベからの空気供給手段6を作動させ、二酸化炭素検出手段5により検出する二酸化炭素濃度が予め設定した閾値以下となるように、空気ボンベからの空気供給手段6による空気ボンベからの空気供給量を制御する一方、放射性希ガス検出手段4Bにより放射性希ガスが検出されず、放射性ガス検出手段4Aにより放射性希ガスを除き放射性ガスが検出された場合、空気ボンベからの空気供給手段6を停止し、二酸化炭素検出手段5により検出する二酸化炭素濃度が予め設定した閾値以下となるように、送風機3Cまたは開閉調整弁3Dによる空気供給量を制御する。
放射性ガス(ガス状の放射性よう素やミスト状のセシウムやストロンチウムなどの放射性物質を空気中に含むガス)は、フィルタ部3Aにより除去できるが、炉心溶融などの初期に発生する放射性希ガス(キセノン、クリプトンなどを空気中に含むガス)はフィルタ部3Aでは十分に除去しきれない。そこで、本実施形態の換気システム1によれば、放射性希ガスを検出した場合、部屋2を外気から遮断して空気ボンベからの空気を供給することで、放射性ガスを含み放射性希ガスが部屋2の内部へ送られる事態を防ぐことができ、部屋2の内部の人の呼吸を維持することができる。特に、この換気システム1によれば、部屋2の内部の二酸化炭素濃度を所定の濃度以下に維持するように、二酸化炭素検出手段5により検出する二酸化炭素濃度が予め設定した閾値以下となるように、空気ボンベからの空気供給手段6による空気ボンベからの空気供給量を制御するため、部屋2の内部の二酸化炭素濃度が低いときには、空気ボンベからの空気供給量を抑えることで、空気ボンベからの空気供給手段6の空気ボンベからの空気の保有量を確保することができ、一方、部屋2の内部の二酸化炭素濃度が高いときには、空気ボンベからの空気供給量を極力抑える範囲内で空気ボンベからの空気供給量を増すことで部屋2の内部の二酸化炭素濃度を低減することができる。
また、本実施形態の換気システム1によれば、放射性希ガスの発生時期は炉心溶融などの初期に限定されるため、放射性希ガスを除き放射性ガスを検出した場合は、フィルタ部3Aにより放射性ガスを除去することで、放射性ガスが部屋2の内部へ送られる事態を防ぐことができ、部屋2の内部の人の呼吸を維持することができる。特に、この換気システム1によれば、部屋2の内部の二酸化炭素濃度を所定の濃度に維持するように、フィルタ部3Aを通過して部屋2に供給される空気供給量を制御するため、部屋2の内部の二酸化炭素濃度が低いときには、空気供給量を抑えることで、フィルタ部3Aを通過するおそれのある放射性ガスを低減することができ、一方、部屋2の内部の二酸化炭素濃度が高いときには、フィルタ部3Aを通過するおそれのある放射性ガスを極力抑える範囲内で空気供給量を増すことで部屋2の内部の二酸化炭素濃度を低減することができる。
[実施形態2]
図4は、本実施形態に係る換気システムの概略図であり、図5は、本実施形態に係る換気システムの二酸化炭素除去部を示す概略図であり、図6は、本実施形態に係る換気システムの動作を示すフローチャートである。
本実施形態の換気システム1は、上述した実施形態1に対して二酸化炭素除去手段9を備える点が異なり、その他の構成は同様である。従って、以下に説明する実施形態2において、上述した実施形態1と同等の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
二酸化炭素除去手段9は、部屋2の内部の空気を一部取り込み、取り込んだ空気中の二酸化炭素を除去し、二酸化炭素を除去した空気を部屋2の内部に送るものである。図4に示すように、二酸化炭素除去手段9は、二酸化炭素除去部9Aと、吸気管9Bと、排気管9Cと、送風機9Dと、開閉弁9Eと、を有する。
二酸化炭素除去部9Aは、例えば、図5に示すように、周囲が外壁で囲まれた筒状に形成されて一端側および他端側に開口部がそれぞれ形成されたケーシング9Aaを有している。そして、二酸化炭素除去部9Aは、ケーシング9Aa内に、二酸化炭素除去フィルタ9Abが設けられている。二酸化炭素除去フィルタ9Abは、例えば、ゼオライトや活性炭、水酸化ナトリウム(NaOH)あるいは水酸化リチウム(LiOH)などの固体アルカリ剤や、アミン類などのように二酸化炭素を吸着しやすい成分を粒状に固形化した二酸化炭素吸着剤からなる。従って、ケーシング9Aaを空気が通過することで、当該空気中の二酸化炭素が吸着され濃度を低下させることができる。なお、図には明示しないが、二酸化炭素除去部9Aは、アミン、アルカリ性水溶液、メタノールやポリエチレングリコールなどの吸収液に高圧下で二酸化炭素を吸収させてもよい。この場合、加熱や減圧することにより吸収液中の二酸化炭素を除去して吸収液を再生することで、吸収液を連続的に用いることができる。また、図には明示しないが、二酸化炭素除去部9Aは、二酸化炭素を選択的に透過可能な分離膜を用いる膜分離法を用いたものであってもよく、連続的に二酸化炭素の除去が可能となる。
吸気管9Bは、二酸化炭素除去部9Aの上流側と部屋2とを連通させるものである。
排気管9Cは、二酸化炭素除去部9Aの下流側と部屋2とを連通させるものである。
送風機9Dは、吸気管9B(または排気管9C)に設けられて、部屋2の内部の空気の一部を吸気管9Bを介して二酸化炭素除去部9Aにおけるケーシング9Aaに供給し、ケーシング9Aaを通過した空気を排気管9Cを介して部屋2の内部に送るものである。
開閉弁9Eは、排気管9C(または吸気管9B)に設けられて、当該排気管9C(または吸気管9B)を開閉するものである。
また、制御手段8は、二酸化炭素検出手段5の検出結果に基づいて、二酸化炭素除去手段9の送風機9Dおよび開閉弁9Eを制御する。
なお、二酸化炭素除去部9Aは、図4では部屋2の内部に配置されて構成として示されているが、図には明示しないが部屋2の外部に配置されていてもよい。この場合、吸気管9Bおよび排気管9Cは、部屋2の外部に引き出されて二酸化炭素除去部9Aに接続される。送風機9Dおよび開閉弁9Eは、部屋2の内部または外部に配置される。
本実施形態の換気システム1の動作について説明する。原子力設備に事故が発生した場合、図6に示すように、制御手段8は、放射性ガス除去手段3を停止して空気ボンベからの空気供給手段6を運転し部屋2の内部を正圧とする(ステップS21)。すなわち、制御手段8は、放射性ガス除去手段3の送風機3Cを停止して開閉調整弁3Dを閉作動させ、空気ボンベからの空気供給手段6の流量調整弁6Cを開状態としつつ部屋内圧力検出手段7により検出する圧力が部屋2の外部の圧力よりも高くなるように(例えば10mmAq以上)圧力調整手段(圧力調整手段2Cまたは空気ボンベからの空気供給手段6の流量調整弁6C)を作動させる。これにより、部屋2は、放射性ガスや放射性希ガスが遮断された状態で、内部に空気ボンベからの空気が供給される。この結果、原子力設備に事故が発生した直後に、部屋2の内部の人が放射性ガスや放射性希ガスにより被曝する事態を防ぎ、かつ部屋2の内部の人の呼吸が妨げられる事態を防ぐことができる。
ステップS21の後、放射性ガス検出手段4Aにより放射性ガスが検出され(ステップS22:Yes)、かつ放射性希ガス検出手段4Bにより放射性希ガスが検出された場合(ステップS23:Yes)、制御手段8は、放射性ガス除去手段3を停止して空気ボンベからの空気供給手段6を運転し部屋2の内部を正圧とする(ステップS24)。すなわち、制御手段8は、ステップS21の動作を続ける。
なお、ステップS23において、放射性希ガスが検出されない場合(ステップS23:No)、制御手段8は、空気ボンベからの空気供給手段6を停止して放射性ガス除去手段3を運転し部屋2の内部を正圧とする(ステップS25)。すなわち、制御手段8は、空気ボンベからの空気供給手段6の流量調整弁6Cを閉状態とし放射性ガス除去手段3の送風機3Cを運転して開閉調整弁3Dを開作動させつつ部屋内圧力検出手段7により検出する圧力が部屋2の外部の圧力よりも高くなるように(例えば10mmAq以上)圧力調整手段(圧力調整手段2C)を作動させる。この結果、部屋2の内部の人が放射性ガスにより被曝する事態を防ぐことができる。
ステップS24の後、二酸化炭素濃度が閾値を超えた場合(ステップS26:Yes)、制御手段8は、空気ボンベからの空気供給手段6の空気ボンベからの空気供給量を制御する(ステップS27)。すなわち、ステップS26において、制御手段8は、二酸化炭素検出手段5による二酸化炭素濃度の検出結果を取得し、この二酸化炭素濃度が閾値を超えた場合(例えば、通常300ppm〜390ppm程度のところ、人の健康を阻害する5000ppm以上となった場合)、ステップS27において、空気ボンベからの空気供給手段6による空気ボンベからの空気供給量が増加するように、空気ボンベからの空気供給手段6の流量調整弁6Cを開作動させ、部屋2の内部の二酸化炭素濃度を閾値(例えば5000ppm)以下となるようにする。この結果、部屋2の内部の人の健康を維持することができる。なお、ステップS26において、二酸化炭素濃度が閾値を超えていなければ(ステップS26:No)、制御手段8は、ステップS24の動作を維持しつつステップS22に戻り、放射性ガス検出手段4Aにより放射性ガスを監視すると共に、放射性希ガス検出手段4Bにより放射性希ガスを監視する。
ステップS27の後、空気ボンベからの空気供給手段6による空気ボンベからの空気供給量が最大となった場合(ステップS28:Yes)、すなわち、空気ボンベからの空気供給手段6の流量調整弁6Cが全開になった場合に、制御手段8は、部屋2の内部の二酸化炭素を除去する(ステップS29)。すなわち、ステップS29において、制御手段8は、二酸化炭素除去手段9の送風機9Dを運転して開閉弁9Eを開作動させ、二酸化炭素除去部9Aに部屋2の内部の空気の一部を通過させた後に部屋2の内部に戻し、部屋2の内部の二酸化炭素濃度を閾値(例えば5000ppm)以下となるようにする。この結果、部屋2の内部の人の健康を維持することができる。なお、ステップS29において、二酸化炭素除去手段9を作動させた後は、ステップS26に戻り、二酸化炭素濃度を監視する。また、ステップS28において、空気ボンベからの空気供給手段6による空気ボンベからの空気供給量が最大とならなければ(ステップS28:No)、制御手段8は、ステップS26に戻り、二酸化炭素濃度を監視する。
一方、ステップS25の後、二酸化炭素濃度が閾値を超えた場合(ステップS30:Yes)、制御手段8は、放射性ガス除去手段3の空気供給量を制御する(ステップS31)。すなわち、すなわち、ステップS30において、制御手段8は、二酸化炭素検出手段5による二酸化炭素濃度の検出結果を取得し、この二酸化炭素濃度が閾値を超えた場合(例えば、通常300ppm〜390ppm程度のところ、人の健康を阻害する5000ppm以上となった場合)、ステップS31において、放射性ガス除去手段3による空気供給量が増加するように、放射性ガス除去手段3の送風機3Cの回転数を速く作動または開閉調整弁3Dを開作動させ、部屋2の内部の二酸化炭素濃度を閾値(例えば5000ppm)以下となるようにする。この結果、部屋2の内部の人の健康を維持することができる。なお、ステップS30において、二酸化炭素濃度が閾値を超えていなければ(ステップS30:No)、制御手段8は、ステップS25の動作を維持しつつステップS22に戻り、放射性ガス検出手段4Aにより放射性ガスを監視すると共に、放射性希ガス検出手段4Bにより放射性希ガスを監視する。
ステップS31の後、放射性ガス除去手段3の空気供給量が最大となった場合(ステップS32:Yes)、すなわち、放射性ガス除去手段3の送風機3Cの回転数が最大または開閉調整弁3Dが全開になった場合に、制御手段8は、部屋2の内部の二酸化炭素を除去する(ステップS33)。すなわち、ステップS33において、制御手段8は、二酸化炭素除去手段9の送風機9Dを運転して開閉弁9Eを開作動させ、二酸化炭素除去部9Aに部屋2の内部の空気の一部を通過させた後に部屋2の内部に戻し、部屋2の内部の二酸化炭素濃度を閾値(例えば5000ppm)以下となるようにする。この結果、部屋2の内部の人の健康を維持することができる。なお、ステップS33において、二酸化炭素除去手段9を作動させた後は、ステップS30に戻り、二酸化炭素濃度を監視する。また、ステップS32において、放射性ガス除去手段3の空気供給量が最大とならなければ(ステップS32:No)、制御手段8は、ステップS30に戻り、二酸化炭素濃度を監視する。
なお、ステップS22において、放射性ガス検出手段4Aにより放射性ガスが検出されない場合(ステップS22:No)、制御手段8は、部屋2を外気に開放する(ステップS34)。すなわち、制御手段8は、ステップS22において、放射性ガスが検出されず安全が確認された場合、ステップS34において、放射性ガス除去手段3および空気ボンベからの空気供給手段6および圧力調整手段2Cを停止する。また、ステップS34の後は、再びステップS22に戻り、放射性ガス検出手段4Aにより放射性ガスを監視すると共に、放射性希ガス検出手段4Bにより放射性希ガスを監視する。
ところで、ステップS21は、なくてもよいが、原子力設備に事故が発生した場合に、部屋2の内部の人が放射性ガスや放射性希ガスにより被曝する事態を防ぐ効果を顕著に得るため、放射性ガス検出手段4Aにより放射性ガスを検出する以前に、放射性ガス除去手段3を停止して空気ボンベからの空気供給手段6を運転し部屋2の内部を正圧とすることが好ましい。
このように、本実施形態の換気システム1は、部屋2の内部の空気を一部取り込み、取り込んだ空気中の二酸化炭素を除去し、二酸化炭素を除去した空気を部屋2の内部に送る二酸化炭素除去手段9を備える。
部屋2を外気から遮断し、この期間が長引くことで、人の呼気により部屋2の内部の二酸化炭素濃度が増加する。そこで、本実施形態の換気システム1によれば、二酸化炭素除去手段9を備えることで、部屋2の内部の人の健康を維持することができる。
特に、この換気システム1によれば、部屋2を外気から遮断し、空気ボンベからの空気供給手段6による空気ボンベからの空気供給量が最大となった場合、二酸化炭素除去手段9を作動させるため、空気ボンベからの空気供給手段6による酸素ガス供給量を低減し、空気ボンベからの空気供給手段6の空気ボンベからの空気の保有量を確保することができる。また、この換気システム1によれば、放射性ガス除去手段3の空気供給量が最大となった場合、二酸化炭素除去手段9を作動させるため、放射性ガス除去手段3の空気供給量を低減し、フィルタ部3Aを通過するおそれのある放射性ガスを低減することができる。