<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1及び図2を用いて説明する。本実施形態では、基板の素材となる被加工物11にレーザ光を集光し、被加工物11の一部に加工を行うレーザ加工装置について説明する。なお、本実施形態で製造する基板は、例えば半導体材料基板、ガラス基板、圧電材料基板などである。
本実施形態のレーザ加工装置は、レーザ発振器4、光変調素子7、第1のポラライザ6、第2のポラライザ61、位置センサ81、可動ミラー91、集光レンズ31、ビームダンパ10、ステージ51、制御装置8を有する。このうちのレーザ発振器4は、YAGレーザ、CO2レーザ、エキシマレーザなどを用いる。レーザ発振器4からは、次述する光変調素子7に向けて直線偏光のレーザ光21が発振される。
光変調素子7は、レーザ発振器4により照射されたレーザ光21の偏光方向を切り替える偏光方向切替部材としての、例えば電気光学素子(EOM)である。この光変調素子7は、後述する制御装置8からの制御信号に応じて、レーザ光21の偏光方向を第2の偏光方向であるP波(P偏光)、若しくは、第1の偏光方向であるS波(S偏光)のレーザ光22に変換する。また光変調素子7はレーザ発振器4のパルス繰返し周波数より早い応答が可能であり、1パルス毎に、制御装置8からの制御信号に応じてレーザ光21の偏光の向きを変えることが出来る。
第1のポラライザ6及び第2のポラライザ61は、レーザ光の経路に関し、光変調素子7と後述する位置センサ81との間に配置される。そして、それぞれが光変調素子7により切り替えられた偏光方向に応じてレーザ光を分岐する第1の分岐部材及び第2の分岐部材である。このような第1のポラライザ6及び第2のポラライザ61は、例えばキューブ型の偏光ビームスプリッタやプレート型の偏光ビームスプリッタなどである。
また、第1のポラライザと第2のポラライザとは、入射されたレーザ光を偏光方向に応じて主として分岐する割合である偏光消光比特性が同一である。本実施形態の場合、第1のポラライザと第2のポラライザとは、それぞれ、P偏光の透過率約99%、反射率約1%、S偏光の透過率約1%、反射率約99%の光学特性でレーザ光を反射と透過させる。
第1の分岐部材である第1のポラライザ6は、レーザ光22の偏光方向に応じてレーザ光を分岐する。言い換えれば、第1のポラライザ6を透過したレーザ光23と、第1のポラライザで反射したレーザ光24を出す。
即ち、第1のポラライザ6は、全てのレーザ光を分岐することができず、一部が漏れることが避けられない。本実施形態では、光変調素子7により切り替えられた偏光方向が第1の偏光方向であるS波の場合に、主として(99%)第1の分岐光路である後述する可動ミラー91側にレーザ光を分岐(反射)する。また、一部(1%)の光は後述するビームダンパ10側に漏れる(透過する)。一方、偏光方向が第2の偏光方向であるP波の場合には、主として(99%)第2の分岐光路であるビームダンパ10側にレーザ光を分岐(透過)し、一部(1%)の光は可動ミラー91側に漏れる(反射する)。
第2の分岐部材である第2のポラライザ61は、第1の分岐光路に位置し、レーザ光24が入射する。そして、レーザ光22の偏光方向に応じてレーザ光を分岐する。言い換えれば、第2のポラライザ61を透過したレーザ光25と、第2のポラライザ61で反射したレーザ光26を出す。
即ち、第2のポラライザ61も第1のポラライザ6と同様に、全てのレーザ光を分岐することができず、一部が漏れることが避けられない。本実施形態では、光変調素子7により切り替えられた偏光方向がS波の場合に、主として(99%)被加工物側にレーザ光を分岐(反射)し、一部(1%)の光は位置センサ81側に漏れる(透過する)。一方、偏光方向がP波の場合には、主として(99%)位置センサ側にレーザ光を分岐(透過)し、一部(1%)の光は被加工物11側に漏れる(反射する)。
位置センサ81は、レーザ発振器4により照射されたレーザ光の位置を検知する位置センサであり、例えばPSDやNDフィルタ、レンズなどで構成される。そして、第2のポラライザ61を透過したレーザ光25の位置変動や角度変動を検出する。検出した出力信号は制御装置8に送られ積分等の信号処理が行われレーザ光の位置データとされる。また位置センサ81は、例えば設定したレーザ光の強度に対して±10%の強度範囲まで検出可能である。
可動ミラー91は、位置センサ81の検知結果に基づいて、被加工物11へのレーザ光の照射位置を変更する位置変更部材で、本実施形態の場合、1個設けている。可動ミラーを1個設ける場合は、可動ミラーを角度だけではなく位置も変えられるようにしてもよい。可動ミラー91は、例えば誘電体多層膜ミラーや金属蒸着ミラーで、ピエゾ素子やステッピングモータなどにより位置や角度を変え、反射する光の光路を変えてもよい。本実施形態では、可動ミラー91を1個設ける場合について述べるが、複数個配置してもよい。それぞれ角度を変えることにより、レーザ光の照射位置の変更、調整を行える。
また、位置変更部材は、可動ミラー以外に、光の屈折率を変えるものであっても良い。即ち、屈折率を変えることにより光路を変更して、レーザ光の照射位置の変更、調整を行う。このような屈折率を変えるものとしては、例えば電極と電気光学材料(誘電体材料)により構成され、加えられる電界の強度に応じて通過する光の屈折率を変化させる電気光学素子(屈折率変調素子)などを用いる。或いは、レンズを移動させる構成としても良い。即ち、レンズを移動させて光が透過する位置を変えれば、光路を変更することが可能である。
集光レンズ31は、レーザ光を微小スポットに集光する光学系や、スキャン機構をもった光学系、例えばガルバノスキャナとfθレンズを組合せた光学系などを用いる。ビームダンパ10は第1のポラライザ6によって分岐されたレーザ光の一方を吸収する。ステージ51は被加工物11をX―Y―Z方向に自在に移動させる。
制御装置8は、レーザ発振器4、ステージ51、光変調素子7、位置センサ81、可動ミラー91を制御する。また、制御装置8は、屈折率を変えることができる電界の強度に応じて通過する光の屈折率を変化させる電気光学素子(屈折率変調素子)を有する光学系の場合、電界の強度の制御も行う。さらに、制御装置8は集光レンズ31がスキャン機構をもった光学系の場合、集光レンズ31のスキャン機構の制御も行う。
次に、本実施形態のレーザ加工工程について、図2を参照しつつ説明する。レーザ発振器4からレーザ光21がある一定の繰返し周波数でパルス発振する。レーザ光21は一定の繰返し周波数でパルス発振されるため励起時間のバラツキを生じず、繰返し周波数を可変した場合よりもレーザ光出力安定性で優れる。レーザ光21は1パルス毎に、制御装置8からの制御信号に応じて光変調素子7により偏光の向きを変えることができ、P偏光もしくはS偏光の光変調素子7を透過後のレーザ光22を選択的に出す(偏光方向切替工程、S11)。
ここで、被加工物11を加工する場合は、レーザ光を被加工物11に照射し、被加工物11への加工を停止する(加工しない)場合はレーザ光をビームダンパ10に照射する。このため、被加工物11への加工を行う場合はレーザ光を被加工物11に照射するように光変調素子7を制御する。本実施形態の場合、光変調素子7でS波に変更していれば(S12のY)、第1のポラライザ6によりレーザ光が主として可動ミラー91側に分岐される(第1の分岐工程、S13)。
本実施形態の場合、光変調素子7を透過する際にエネルギーのロスが約1%生じるため、光変調素子7を透過後のレーザ光22の強度はレーザ光21の強度の約99%となる。そして、この光変調素子7を透過後のレーザ光22が、次に第1のポラライザ6に導かれる。
上述のように、第1のポラライザ6は、P偏光の透過率約99%、反射率約1%、S偏光の透過率約1%、反射率約99%の光学特性でレーザ光を反射と透過させる。このため、光変調素子7による偏光の向きの制御と第1のポラライザ6により、第1のポラライザ6を通過後のレーザ光を主に、被加工物11に照射するか、ビームダンパ10に照射するか1パルス単位で決めることが出来る。
被加工物11を加工する場合、上述のように光変調素子7を透過するレーザ光をS波になるように選択する。これにより第1のポラライザ6でレーザ光22の約1%のレーザ光が透過し、ビームダンパ10に照射される。また第1のポラライザ6でレーザ光22の約99%が反射し、可動ミラー91で反射し、第2のポラライザ61に導かれる。
第2のポラライザ61も、上述のように、第1のポラライザと同じで、P偏光の透過率約99%、反射率約1%、S偏光の透過率約1%、反射率約99%の光学特性でレーザ光を反射と透過させる(第2の分岐工程、S14)。このとき、第2のポラライザ61に導かれるレーザ光はS偏光であるため、第2のポラライザ61を透過したレーザ光25は、第2のポラライザ61に導かれるレーザ光24の強度の約1%となり、この強度のレーザ光25が位置センサ81に入射する。
これをレーザ光21基準にして言い換えると、レーザ光25の強度はレーザ光21の強度の約0.98%(=99%×99%×1%)となる。位置センサ81は、NDフィルタやレンズなどによりレーザ光21の強度の約0.98%のレーザ光の位置変動や角度変動を検出できるように予め設定されている。このような強度のレーザ光25が入射された位置センサ81は、レーザ光25の位置変動や角度変動を検知する(位置検知工程、S15)。
そして、位置センサ81におけるレーザ光25の位置が所定位置になるように、可動ミラー91を制御装置8により移動させる。即ち、位置検知工程での位置センサ81による検知結果に基づいて、被加工物11へのレーザ光の照射位置を変更する(位置変更工程、S16)。これにより、加工中のレーザ光の位置を自動調整することができ、被加工物11へのレーザ光の照射位置精度が向上する。
一方、第2のポラライザ61で反射したレーザ光26は、第2のポラライザ61に導かれるレーザ光の約99%の強度となる。これをレーザ光21基準にして言い換えると、第2のポラライザ61で反射したレーザ光26の強度はレーザ光21の強度の約97.03%(=99%×99%×99%)となる。第2のポラライザ61で反射したレーザ光26は、集光レンズ31を経て被加工物11に照射され、被加工物11の加工が行われる(S17)。
次に、被加工物11の加工形状が所望の形状になったり、次の加工点に被加工物11を移動させたりする場合などに加工停止する(非加工の)場合について述べる。加工停止する場合、光変調素子7を透過するレーザ光をP偏光になるように選択する(S11、S12のN)。
これにより第1のポラライザ6でレーザ光22の約99%のレーザ光が透過し、ビームダンパ10に照射される(第1の分岐工程、S18)。また第1のポラライザ6でレーザ光22の約1%が反射し、可動ミラー91で反射し、第2のポラライザ61に導かれる。
第2のポラライザ61に導かれるレーザ光はP偏光であるため、第2のポラライザ61を透過したレーザ光25は、第2のポラライザ61に導かれるレーザ光の強度の約99%が位置センサ81に入射する(第2の分岐工程、S19)。これをレーザ光21基準にして言い換えると、第2のポラライザ61を透過したレーザ光25の強度はレーザ光21の強度の約0.98%(=99%×1%×99%)となる。
先に述べたように位置センサ81はNDフィルタやレンズなどの光学系によりレーザ光21の強度の約0.98%のレーザ光の位置変動や角度変動を検出できるように予め設定されている。そのため加工停止中も加工中同様に位置センサ81は、レーザ光25の位置変動や角度変動を検知する(位置検知工程、S20)。
そして、位置センサ81におけるレーザ光25の位置が所定位置になるように可動ミラー91を制御装置8により移動させることができる(位置変更工程、S21)。これにより被加工物11の加工停止中も照射位置の制御を高精度に行えるので、加工停止中から加工中に切り替えた際に始めから高い位置精度で加工することが出来る。
第2のポラライザ61で反射したレーザ光26は、第2のポラライザ61に導かれるレーザ光の約1%の強度となる。これをレーザ光21基準にして言い換えると、第2のポラライザ61で反射したレーザ光26の強度はレーザ光21の強度の約0.01%(=99%×1%×1%)となる。この第2のポラライザ61で反射したレーザ光26は、集光レンズ31を経て被加工物11に照射される。
ここでレーザ発振器4の発振条件や集光レンズ31などによりレーザ光21の強度の約0.01%が被加工物11に照射されても、被加工物11の加工閾値を超えない条件を予め設定しておく。これにより、第2のポラライザで反射したレーザ光26は、集光レンズ31を経て被加工物11に照射されても、被加工物11は加工されることはない(S22)。この加工と加工停止と、ステージ51による被加工物11の移動を、被加工物11に所望の加工が完了するまで行い、加工終了となる。
本実施形態の場合、位置センサ81で検知するレーザ光は、第1のポラライザ6及び第2のポラライザ61により分岐されているため、被加工物11に照射するレーザ光の強度に拘らず、位置センサ81の定める強度範囲に収めることができる。本実施形態の場合、第1のポラライザ6と第2のポラライザ61とは、偏光消光比特性が同一である。このため、加工時に強度の高いレーザ光を被加工物11に照射する場合と、非加工時の強度の低いレーザ光を被加工物11に照射する場合とで、位置センサ81に入射するレーザ光の強度が同じとなる。このため、位置センサ81による検知精度を加工時と非加工時とに拘らず維持できる。
また、位置センサ81は、第1のポラライザ6及び第2のポラライザ61以降のレーザ光を検知するため、空気の揺らぎなどの影響を抑えられる。即ち、本実施形態の場合、位置センサ81を被加工物11に近い位置に配置でき、空気の揺らぎなどによる影響を最小限に抑えられる。
本実施形態の場合、このように、加工時と非加工時とで、位置センサ81で検知するレーザ光は、位置センサ81の定める強度範囲に収めることができ、位置センサ81による検知を被加工物11に近い位置で行える。この結果、レーザ光の照射位置の変更、調整をより正確に行える。
なお、可動ミラー91の位置は、レーザ光の経路に関し、位置センサ81よりも上流であれば、他の位置に配置することもできる。また、第1のポラライザ6と第2のポラライザ61との偏光消光比特性は、同一でなくても良い。但し、この場合、加工時と非加工時とで、位置センサ81に入射するレーザ光が位置センサ81の強度範囲に収まるような組み合わせとする。また、上述のP波とS波との関係が逆であっても良い。
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図3及び図4を用いて説明する。上述の第1の実施形態の場合、第1のポラライザ6により分岐されたP波や、S波に切り替えられたレーザ光のうちの第1のポラライザ6から漏れた光は、ビームダンパ10で吸収するようにした。これに対して本実施形態の場合、このような光をミラー9により反射して別の被加工物12に照射するようにしている。このため、第1の実施形態と重複する部分については説明を省略又は簡略にし、以下、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
本実施形態の場合、上述のように、第1のポラライザ6により第2の分岐光路に分岐されたレーザ光を反射するミラー9を有する。ミラー9は、例えば誘電体多層膜ミラーや金属蒸着ミラーであり、それを用いてレーザ光を反射させ向きを変える。また、制御装置8により制御され、ミラー9により反射されたレーザ光を、可動ミラー92、第2の分岐部材に相当する第3のポラライザ62、集光レンズ32を介して被加工物12に照射する。そして、被加工物11の加工を行わない場合に、別の被加工物12の加工を行うようにしている。
即ち、被加工物11のレーザ加工を行う場合、光変調素子7でレーザ光がS波に切り替えられ、第1のポラライザ6により主として被加工物11側にレーザ光が導かれる。また、第1のポラライザ6から漏れる光がミラー9で反射されて、別の被加工物12に導かれる。一方、被加工物11のレーザ加工を行わずに、別の被加工物12のレーザ加工を行う場合、光変調素子7でレーザ光がP波に切り替えられ、第1のポラライザ6により主としてミラー9にレーザ光が導かれる。このレーザ光は、ミラー9で反射されて別の被加工物12に導かれる。
何れの場合も、第3のポラライザ62で分岐されたレーザ光27が位置センサ82に入射し、位置センサ82の出力信号を受けた制御装置8により可動ミラー92による別の被加工物12へのレーザ光の照射位置を変更し、調整する。
ここで、別の被加工物12は、被加工物11と同様に、基板の素材となるものである。なお、被加工物11と被加工物12とが同一の部材であっても良い。即ち、同一の被加工物の異なる個所をそれぞれ加工するようにしても良い。
また、可動ミラー92は可動ミラー91と、第3のポラライザ62は第2のポラライザ61と、位置センサ82は位置センサ81と、集光レンズ32は集光レンズ31と、それぞれ同じである。また、ステージ52はステージ51と同じであるが、被加工物11と被加工物12とが同一の部材である場合には、ステージ52とステージ51も同一にする。制御装置8は、可動ミラー92及びステージ52も制御する。
また、第3のポラライザ62は、レーザ光22の偏光方向に応じて、第3のポラライザ62で反射したレーザ光27と、第3のポラライザ62を透過したレーザ光28に分岐する。また、位置センサ82は、例えばPSDやNDフィルタやレンズなどの光学系などで構成され、第3のポラライザ62で反射したレーザ光27の位置変動や角度変動を検出する。
本実施形態の場合、位置センサ81は第2のポラライザ61の透過光を用いて位置変動や角度変動を検出しているのに対して、位置センサ82は第3のポラライザ62の反射光を用いて検出する。また位置センサ81、82は例えば設定したレーザ光の強度に対して±10%の強度範囲まで検出可能である。
次に、本実施形態のレーザ加工工程について、図4を参照しつつ説明する。レーザ発振器4からレーザ光21がある一定の繰返し周波数でパルス発振する。レーザ光21は1パルス毎に、制御装置8からの制御信号に応じて光変調素子7により偏光の向きを変えることができ、P偏光もしくはS偏光の光変調素子透過後のレーザ光22を選択的に出す(偏光方向切替工程、S31)。
この光変調素子7を透過する際にエネルギーのロスが約1%生じるため、光変調素子7を透過後のレーザ光22の強度はレーザ光21の強度の約99%となる。光変調素子7を透過後のレーザ光22は次に第1のポラライザ6に導かれる。第1のポラライザ6は偏光ビームスプリッタで、P偏光の透過率約99%、反射率約1%、S偏光の透過率約1%、反射率約99%の光学特性でレーザ光を反射と透過させる。そのため光変調素子7による偏光の向きの制御と第1のポラライザ6により、第1のポラライザ6を通過後のレーザ光を主に、被加工物11に照射するか、別の被加工物12に照射するか1パルス単位で決めることが出来る。
被加工物11を加工する場合、光変調素子7を透過するレーザ光をS偏光になるように選択する(S32のY)。これにより第1のポラライザ6でレーザ光22の約99%が反射し、可動ミラー91で反射し、第2のポラライザ61に導かれる(第1の分岐工程、S33)。
第2のポラライザ61は偏光ビームスプリッタで、P偏光の透過率約99%、反射率約1%、S偏光の透過率約1%、反射率約99%の光学特性でレーザ光を反射と透過させる(第2の分岐工程、S34)。このとき第2のポラライザ61に導かれるレーザ光はS偏光であるため、第2のポラライザ61を透過したレーザ光25は、第2のポラライザ61に導かれるレーザ光の強度の約1%が位置センサ81に入射する。
これをレーザ光21基準にして言い換えると、レーザ光25の強度はレーザ光21の強度の約0.98%(=99%×99%×1%)となる。位置センサ81はNDフィルタやレンズなどの光学系によりレーザ光21の強度の約0.98%のレーザ光の位置変動や角度変動を検出できるように予め設定されている。このような強度のレーザ光25が入射された位置センサ81は、レーザ光25の位置変動や角度変動を検知する(位置検知工程、S35)。
そして、位置センサ81におけるレーザ光25の位置が所定位置になるように可動ミラー91を制御装置8により移動させる。即ち、位置検知工程での位置センサ81による検知結果に基づいて、被加工物11へのレーザ光の照射位置を変更する(位置変更工程、S36)。これにより加工中のレーザ光の位置を自動調整することができ、被加工物11へのレーザ光の照射位置精度が向上する。
一方、第2のポラライザ61で反射したレーザ光26は、第2のポラライザ61に導かれるレーザ光の約99%の強度となる。これをレーザ光21基準にして言い換えると、第2のポラライザ61で反射したレーザ光26の強度はレーザ光21の強度の約97.03%(=99%×99%×99%)となる。第2のポラライザ61で反射したレーザ光26は、集光レンズ31を経て被加工物11に照射され、被加工物11の加工が行われる(S37)。
また、第1のポラライザ6でレーザ光22の約1%のレーザ光が透過し、ミラー9、および可動ミラー92で反射され、第3のポラライザ62に導かれる。第3のポラライザ62に導かれるレーザ光はS偏光であるため、第3のポラライザで反射したレーザ光27は、第3のポラライザ62に導かれるレーザ光の強度の約99%が反射され、位置センサ82に入射する。
これをレーザ光21基準にして言い換えると、レーザ光27の強度はレーザ光21の強度の約0.98%(=99%×1%×99%)となる。位置センサ82はNDフィルタやレンズなどの光学系によりレーザ光21の強度の約0.98%のレーザ光の位置変動や角度変動を検出できるように予め設定されている。そのため位置センサ82は、レーザ光27位置変動や角度変動を検出し、位置センサ82におけるレーザ光27の位置が所定位置になるように可動ミラー92を制御装置8により移動させることができる。これにより非加工時の被加工物12へのレーザ光の照射位置精度が向上する。
第3のポラライザ62を透過したレーザ光28は、第3のポラライザ62に導かれるレーザ光の約1%の強度となる。これをレーザ光21基準にして言い換えると、第3のポラライザを透過したレーザ光28の強度はレーザ光21の強度の約0.01%(=99%×1%×1%)となる。この第3のポラライザ62を透過したレーザ光28は、集光レンズ32を経て被加工物12に照射される。ここでレーザ発振器4の発振条件や集光レンズ32などによりレーザ光21の強度の約0.01%が被加工物12に照射されても、被加工物12の加工閾値を超えない条件を予め設定しておく。これにより、第3のポラライザ63で反射したレーザ光28は、集光レンズ32を経て被加工物12に照射されても、被加工物12は加工されることはない。
次に、被加工物12を加工する場合、光変調素子7を透過するレーザ光をP偏光になるように選択する(S31、S32のN)。これにより第1のポラライザ6でレーザ光22の約99%が透過し、ミラー9と可動ミラー92で反射し、第3のポラライザ62に導かれる(第1の分岐工程、S38)。
第3のポラライザ62は偏光ビームスプリッタで、P偏光の透過率約99%、反射率約1%、S偏光の透過率約1%、反射率約99%の光学特性でレーザ光を反射と透過させる。このとき第3のポラライザ62に導かれるレーザ光はP偏光であるため、第3のポラライザ62で反射したレーザ光27は、第3のポラライザ62に導かれるレーザ光の強度の約1%が位置センサ82に入射する(第3の分岐工程、S39)。これをレーザ光21基準にして言い換えると、第3のポラライザ62で反射したレーザ光27の強度はレーザ光21の強度の約0.98%(=99%×99%×1%)となる。
位置センサ82は先に述べたようにレーザ光21の強度の約0.98%のレーザ光の位置変動や角度変動を検出できるように予め設定されている。位置センサ82は、第3のポラライザ62で反射したレーザ光27の位置変動や角度変動を検知する(別の位置検知工程、S40)。
そして、位置センサ82における第3のポラライザ62で反射したレーザ光27の位置が所定位置になるように可動ミラー92を制御装置8により移動させる(別の位置変更工程、S41)。これにより加工中のレーザ光の位置を自動調整することができ、被加工物12へのレーザ光の照射位置精度が向上する。
第3のポラライザ62を透過したレーザ光28は、第3のポラライザ62に導かれるレーザ光の約99%の強度となる。これをレーザ光21基準にして言い換えると、第3のポラライザ62を透過したレーザ光28の強度はレーザ光21の強度の約97.03%(=99%×99%×99%)となる。第3のポラライザ62を透過したレーザ光28は、集光レンズ32を経て被加工物12に照射され、被加工物12の加工が行われる(S42)。
また第1のポラライザ6でレーザ光22の約1%のレーザ光が反射し、可動ミラー91で反射し、第2のポラライザ61に導かれる。第2のポラライザ61に導かれるレーザ光はP偏光であるため、第2のポラライザ61を透過したレーザ光25は、第2のポラライザ61に導かれるレーザ光の強度の約99%が位置センサ81に入射する。これをレーザ光21基準にして言い換えると、レーザ光25の強度はレーザ光21の強度の約0.98%(=99%×1%×99%)となる。
位置センサ81は先に述べたようにレーザ光21の強度の約0.98%のレーザ光の位置変動や角度変動を検出できるように予め設定されている。そのため位置センサ81は、レーザ光25の位置変動や角度変動を検出し、位置センサ81におけるレーザ光25の位置が所定位置になるように可動ミラー91を制御装置8により移動させることができる。これにより非加工時の被加工物11へのレーザ光の照射位置精度が向上する。このように被加工物11を加工していない時も照射位置の制御を高精度に行えるので、加工する際に始めから高い位置精度で加工することが出来る。
第2のポラライザ61で反射したレーザ光26は、第2のポラライザ61に導かれるレーザ光の約1%の強度となる。これをレーザ光21基準にして言い換えると、第2のポラライザ61を透過したレーザ光26の強度はレーザ光21の強度の約0.01%(=99%×1%×1%)となる。この第2のポラライザ61を透過したレーザ光26は、集光レンズ31を経て被加工物11に照射される。
ここでレーザ発振器4の発振条件や集光レンズ31などによりレーザ光21の強度の約0.01%が被加工物11に照射されても、被加工物11の加工閾値を超えない条件を予め設定しておく。これにより、第2のポラライザ61で反射したレーザ光26は、集光レンズ31を経て被加工物11に照射されても、被加工物11は加工されることはない。
この被加工物11の加工と被加工物12の加工の切替と、ステージ51とステージ52による被加工物11と被加工物12の移動を、被加工物11と被加工物12に所望の加工が完了するまで行い、加工終了となる。
本実施形態の場合、このような切り替えを行うことより、第1の実施形態と同様に、被加工物11、12に照射するレーザ光の強度に拘らず、位置センサ81、82の定める強度範囲に収めることができる。また、位置センサ81、82による検知を被加工物11、12にそれぞれ近い位置で行える。この結果、レーザ光の照射位置の調整をより正確に行える。
なお、上述の説明では、ステージ毎に被加工物を搭載していたが、1つのステージに複数の被加工物を搭載することも可能である。また切り替えて加工する場合、照射する被加工物を切り替えるのではなく、同一被加工物上の加工点を切り替える加工も可能である。
また、レーザ発振器4と光変調素子7の間に、例えばメカシャッタや、光学変調素子、ポラライザ、ダンパなどで構成されるシャッタ機構などを構成し、被加工物11と被加工物12のどちらにもレーザ照射しない構成を取ることも可能である。その他の構成及び作用は、上述の第1の実施形態と同様である。
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について、図5及び図6を用いて説明する。本実施形態では、加工中にレーザ光の強度を変更しながら加工する例を説明する。なお、本実施形態で製造する基板は、半導体材料基板、ガラス基板、圧電材料基板、金属基板、樹脂基板などで、基板の一部が異なる材料からなる基板も含まれる。
本実施形態のレーザ加工装置は、レーザ発振器104、光変調素子107、第1のポラライザ106、第2のポラライザ161、蛍光板171、フィルタ172、位置センサ181、可動ミラー191、192、ビームダンパ110、を有する。更に、スキャン機構141、集光レンズ131、ステージ151、制御装置108を有する。このうちのレーザ発振器104は、YAGレーザ、CO2レーザ、エキシマレーザなどを用いる。レーザ発振器104からは、光変調素子107に向けて直線偏光のレーザ光121が出射される。
光変調素子107は、レーザ発振器104により出射されたレーザ光121の偏光方向を切り替える偏光方向切替部材としての、例えば電気光学素子(EOM)である。この光変調素子107は、制御装置108からの制御信号に応じて、レーザ光121の偏光方向を第1の偏光方向であるS波(S偏光)、若しくは、第2の偏光方向であるP波(P偏光)のレーザ光122に変換する。また光変調素子107はレーザ発振器104の繰返し周波数より早い応答が可能であり、1パルス毎に、制御装置108からの制御信号に応じてレーザ光121の偏光の向きを変えることが出来る。
第1のポラライザ106及び第2のポラライザ161は、レーザ光の経路に関し、光変調素子107と後述する位置センサ181との間に配置される。そして、それぞれが光変調素子107により切り替えられた偏光方向に応じてレーザ光を分岐する第1の分岐部材及び第2の分岐部材である。このような第1のポラライザ106及び第2のポラライザ161は、例えばキューブ型の偏光ビームスプリッタやプレート型の偏光ビームスプリッタなどである。
また、第1のポラライザと第2のポラライザとは、入射されたレーザ光を偏光方向に応じて主として分岐する割合である偏光消光比特性が同一である。本実施形態の場合、第1のポラライザと第2のポラライザとは、それぞれ、P偏光の透過率約99%、反射率約1%、S偏光の透過率約1%、反射率約99%の光学特性でレーザ光を反射と透過させる。
第1の分岐部材である第1のポラライザ106は、レーザ光122の偏光方向に応じてレーザ光を分岐する。言い換えれば、第1のポラライザ106を透過したレーザ光123と、第1のポラライザで反射したレーザ光124を出す。
即ち、第1のポラライザ106は、全てのレーザ光を分岐することができず、一部が漏れることが避けられない。本実施形態では、光変調素子107により切り替えられた偏光方向が第1の偏光方向であるS波の場合に、主として(99%)第1の分岐光路である後述する可動ミラー191側にレーザ光を分岐(反射)する。また、一部(1%)の光は後述するビームダンパ110側に漏れる(透過する)。一方、偏光方向が第2の偏光方向であるP波の場合には、主として(99%)第2の分岐光路であるビームダンパ110側にレーザ光を分岐(透過)し、一部(1%)の光は可動ミラー191側に漏れる(反射する)。
第2の分岐部材である第2のポラライザ161は、第1の分岐光路に位置し、レーザ光124が入射する。そして、レーザ光124の偏光方向に応じてレーザ光を分岐する。言い換えれば、第2のポラライザ161を透過したレーザ光125と、第2のポラライザ161で反射したレーザ光128を出す。
即ち、第2のポラライザ161も第1のポラライザ106と同様に、全てのレーザ光を分岐することができず、一部が漏れることが避けられない。本実施形態では、光変調素子107により切り替えられた偏光方向がS波の場合に、主として(99%)被加工物側にレーザ光を分岐(反射)し、一部(1%)の光は位置センサ181側に漏れる(透過する)。一方、偏光方向がP波の場合には、主として(99%)位置センサ側にレーザ光を分岐(透過)し、一部(1%)の光は被加工物111側に漏れる(反射する)。
蛍光板171は、レーザ光の経路に関し、位置センサ181の上流に配置される。また、蛍光板171の下流で、第2のポラライザ161と位置センサ181との間には、レーザ光が当たることで蛍光板171が発した蛍光光は透過するが、レーザ光を遮断するフィルタ172が配置されている。本実施形態では、蛍光板171は、第2のポラライザ161の下流に配置され、フィルタ172は、蛍光板171と位置センサ181との間に配置される。蛍光板171は、第2のポラライザ161を透過したレーザ光125が当たると蛍光光を発し、フィルタ172を透過した蛍光光は位置センサ181に入射する。
ここで、蛍光板171は市販の蛍光ガラスや波長変換材料の中から励起波長や発光波長を適切な物を選択し使用する。又、フィルタ172は蛍光板171で発した蛍光の波長の光は透過するが、レーザ光125の波長の光は遮断する特性を持つフィルタである。
位置センサ181は、蛍光板171から発し、フィルタ172を通過した蛍光の位置を検知する位置センサであり、例えばPSDとNDフィルタ、レンズなどの光学系で構成される。更に、この光学系で適度な強度の入射光に調整すると同時に、蛍光光を光検出素子上に結像させる。そして、結果として第2のポラライザ161を透過したレーザ光125の位置変動や角度変動を検出する。また位置センサ181は、例えば設定した入射光の強度に対して±10%の強度範囲まで検出可能である。
可動ミラー191、192は、位置センサ181の検知結果に基づいて、被加工物111へのレーザ光の照射位置を調整する調整部材である。それぞれの可動ミラー191、192は、例えば誘電体多層膜ミラーや金属蒸着ミラーで、ピエゾ素子やステッピングモータなどにより位置や角度を変え、反射する光の光路を変える。本実施形態の場合、可動ミラー191、192は互いに対向するように配置しているため、それぞれ角度を変えることにより、レーザ光の照射位置の調整を行える。
被加工物111内に加工の条件が異なる部分が存在する場合には、レーザ発振器104内の機能を用いてレーザ光強度を変更する。この場合には経路が同じで有るので第2のポラライザ161を透過するレーザ光の強度は強度を変更した割合で変化する。しかし、蛍光板171へ入射するレーザ光の強度が大きくなっても蛍光板から発する蛍光光は飽和して高い強度の蛍光光は出ない。従って、例えばレーザ光の強度が10倍大きくなっても、蛍光光の強度は或る値に留まり位置センサの入力限界を超える事は無いので、位置の検知が可能である。
なお、このようなレーザ光の照射位置の調整を行う調整部材は、可動ミラーを1個設ける構成としても良い。この場合、可動ミラーを角度だけではなく位置も変えられるようにする。また、調整部材は、可動ミラー以外に、光の屈折率を変えるものであっても良い。即ち、屈折率を変えることにより光路を変更して、レーザ光の照射位置を変更し、調整を行う。このような屈折率を変えるものとしては、例えば電極と電気光学材料(誘電体材料)により構成され、加えられる電界の強度に応じて通過する光の屈折率を変化させる電気光学素子(屈折率変調素子)などを用いる。或いは、レンズを移動させる構成としても良い。即ち、レンズを移動させて光が透過する位置を変えれば、光路を変更することが可能である。
集光レンズ131は、レーザ光を微小スポットに集光する光学系や、スキャン機構141と一緒に使われる光学系、例えばfθレンズなどである。ビームダンパ110は第1のポラライザ106によって分岐されたレーザ光の一方を吸収する。ステージ151は被加工物111をX―Y―Z方向に自在に移動させる。
制御装置108は、レーザ発振器104、ステージ151、光変調素子107、位置センサ181、可動ミラー191,192を制御する。また、制御装置108はスキャン機構141の制御も行う。
次に、本実施形態のレーザ加工工程について、図6を参照しつつ説明する。レーザ発振器104から或る一定の繰返し周波数でパルス発振する。レーザ光121は一定の繰返し周波数でパルス発振されるため励起時間のバラツキを生じず、繰返し周波数を可変した場合よりもレーザ光出力安定性で優れる。レーザ光121はレーザ発振器104内のパワー調整機能により第1の加工に適したレーザ光強度に調整される(レーザ光強度切替工程、S101)。次に、レーザ光121は1パルス毎に、制御装置108からの制御信号に応じて光変調素子107により偏光の向きを変えることができ、P偏光もしくはS偏光の光変調素子107を透過後のレーザ光122を選択的に出す(偏光方向切替工程、S102)。
ここで、被加工物111の加工し易い部分を加工する場合は、小さな強度のレーザ光を被加工物111に照射し、被加工物111の加工し難い部分の加工をする場合には、大きな強度のレーザ光を被加工物111へ照射する。加工し易い部分とは例えば樹脂であり、加工し難い部分とは例えば金属である。これらの材料を適正強度のレーザ光で加工する為には10倍以上の強度の変更が必要である。又、被加工物111の加工を停止する(加工しない)場合はレーザ光をビームダンパ110に照射する。このため、被加工物111への加工を行う場合はレーザ光を被加工物111に照射するように光変調素子107を制御する。本実施形態の場合、光変調素子107でS波に変更していれば(S103のY)、第1のポラライザ106によりレーザ光が主として可動ミラー191側に分岐される(第1の分岐工程、S104)。
本実施形態の場合、光変調素子107を透過する際にエネルギーのロスが約1%生じるため、光変調素子107を透過後のレーザ光122の強度はレーザ光121の強度の約99%となる。そして、この光変調素子107を透過後のレーザ光122が、次に第1のポラライザ106に導かれる。
上述のように、第1のポラライザ106は、P偏光の透過率約99%、反射率約1%、S偏光の透過率約1%、反射率約99%の光学特性でレーザ光を反射と透過させる。このため、光変調素子107による偏光の向きの制御と第1のポラライザ106により、第1のポラライザ106を通過後のレーザ光を主に、被加工物111に照射するか、ビームダンパ110に照射するか1パルス単位で決めることが出来る。
被加工物111を加工する場合、上述のように光変調素子107を透過するレーザ光をS波になるように選択する。これにより第1のポラライザ106でレーザ光122の約1%のレーザ光が透過し、ビームダンパ110に照射される。また第1のポラライザ106でレーザ光122の約99%が反射し、可動ミラー191、192で反射し、第2のポラライザ161に導かれる。
第2のポラライザ161も、上述のように、第1のポラライザと同じで、P偏光の透過率約99%、反射率約1%、S偏光の透過率約1%、反射率約99%の光学特性でレーザ光を反射と透過させる(第2の分岐工程、S105)。このとき、第2のポラライザ161に導かれるレーザ光はS偏光であるため、第2のポラライザ161を透過したレーザ光125は、第2のポラライザ161に導かれるレーザ光124の強度の約1%となり、この強度のレーザ光125が蛍光板171に入射する。
これをレーザ光121基準にして言い換えると、レーザ光125の強度はレーザ光121の強度の約0.98%(=99%×99%×1%)となる。蛍光板171はレーザ光125が当ったところから蛍光光126を発し、その蛍光光126はフィルタ172を通過した後、位置センサ181に入射する。この時、レーザ光125が蛍光板171を通過した場合にはフィルタ172で遮断された蛍光光127となる。位置センサ181は、NDフィルタやレンズなどにより蛍光光127の強度を適度に調節するとともに蛍光板上の発光点を位置センサ181内の光検出素子上に結像させる。このような蛍光光127が入射された位置センサ181は、結果としてレーザ光125の位置変動や角度変動を検知する(位置検知工程、S106)。
この時、レーザ光125がパルス光であっても、蛍光板の発光はゆっくりと消光するため、位置センサ181のパルス的出力が平坦化する。従って、制御装置108内で行っていたパルス的信号を平坦化する積分等の演算が不要になり、制御がより簡便になる。
そして、位置センサ181における蛍光光127の位置が所定位置になるように、可動ミラー191,192を制御装置108により移動させる。即ち、位置検知工程での位置センサ181による検知結果に基づいて、被加工物111へのレーザ光の照射位置を変更し、調整する(位置変更工程、S107)。これにより、加工中のレーザ光の位置を自動調整することができ、被加工物111へのレーザ光の照射位置精度が向上する。
一方、第2のポラライザ161で反射したレーザ光128は、第2のポラライザ161に導かれるレーザ光の約99%の強度となる。これをレーザ光121基準にして言い換えると、第2のポラライザ161で反射したレーザ光128の強度はレーザ光121の強度の約97.03%(=99%×99%×99%)となる。第2のポラライザ161で反射したレーザ光128は、スキャン機構141、集光レンズ131を経た集光光129が被加工物111に照射され、被加工物111の加工が行われる(S108)。
次に、第2の加工に適したレーザ強度にレーザ発振器の出力を変更する(レーザ光強度切替工程S101)。この時、第2のレーザ光強度は第1のレーザ光強度の約10倍である。その後の工程のS102からS105までは上記と同様である。第2のポラライザ161から洩れて位置センサ181に向かうレーザ光125は第1のレーザ光強度の10倍で有るため、蛍光板171に当たるレーザ光の強度も10倍になる。しかし、蛍光板171、フィルタ172で調整された蛍光光127は位置センサ181の許容範囲となっており、レーザ光強度が10倍となっても位置センサ181に問題が生じることはない。
次に、被加工物111の加工形状が所望の形状になったり、次の加工点に被加工物111を移動させたりする場合などに加工停止する(非加工の)場合について述べる。加工停止する場合、光変調素子107を透過するレーザ光をP偏光になるように選択する(S102、S103のN)。
これにより第1のポラライザ106でレーザ光122の約99%のレーザ光が透過し、ビームダンパ110に照射される(第1の分岐工程、S109)。また第1のポラライザ106でレーザ光122の約1%が反射し、可動ミラー191、192で反射し、第2のポラライザ161に導かれる。
第2のポラライザ161に導かれるレーザ光はP偏光であるため、第2のポラライザ161を透過したレーザ光125は、第2のポラライザ161に導かれるレーザ光の強度の約99%が位置センサ181側に入射する(第2の分岐工程、S110)。これをレーザ光121基準にして言い換えると、第2のポラライザ161を透過したレーザ光125の強度はレーザ光121の強度の約0.98%(=99%×1%×99%)となる。
先に述べたように位置センサ181の前には蛍光板171とフィルタ172が有り、レーザ光強度の変更の緩和や、パルス光の平坦化を行う。更に、NDフィルタやレンズなどの光学系によりレーザ光121の第1の強度及び第2の強度それぞれの約0.98%のレーザ光の位置変動や角度変動を検出できるように予め設定されている。そのため加工停止中も加工中同様に位置センサ181は、レーザ光125の位置変動や角度変動を検知する(位置検知工程、S111)。
そして、位置センサ181に対するレーザ光125の位置が所定位置になるように可動ミラー191,192を制御装置108により移動させることができる(位置変更工程、S122)。これにより加工停止中も照射位置の制御を高精度に行えるので、加工停止中から加工中に切り替えた際に始めから高い位置精度で加工することが出来る。
第2のポラライザ161で反射したレーザ光128は、第2のポラライザ161に導かれるレーザ光の約1%の強度となる。これをレーザ光121基準にして言い換えると、第2のポラライザ161で反射したレーザ光128の強度はレーザ光121の強度の約0.01%(=99%×1%×1%)となる。この第2のポラライザ161で反射したレーザ光128は、集光レンズ131を経て被加工物111に照射される。
ここでレーザ発振器104の発振条件や集光レンズ131などによりレーザ光121の第2の強度の約0.01%が被加工物111に照射されても、被加工物111の加工閾値を超えない条件を予め設定しておく。これにより、第2のポラライザで反射したレーザ光128は、集光レンズ131を経て被加工物111に照射されても、被加工物111は加工されることはない(S113)。この第1と第2の加工と加工停止と、ステージ151による被加工物111の移動を、被加工物111に所望の加工が完了するまで行い、加工終了となる。
本実施形態の場合、位置センサ181には、第1のポラライザ106及び第2のポラライザ161により分岐されたレーザ光が蛍光板に当たり、その発光光(蛍光光)がフィルタを通して入射する。そのため、被加工物111に照射するレーザ光の強度に拘らず、位置センサ181の定める強度範囲に収めることができる。本実施形態の場合、高いレーザ光強度や、低いレーザ光強度で被加工物111を加工する場合でも位置センサ181に入る光の強度は入力許容範囲に収まる。又、非加工時の更に低い強度のレーザ光を被加工物111に照射する場合でも、位置センサ181に入射するレーザ光の強度は位置センサの入力許容範囲内となる。このため、位置センサ181による検知精度を第1の加工時、第2の加工時と非加工時とに拘らず維持できる。
また、位置センサ181は、第1のポラライザ106及び第2のポラライザ161以降のレーザ光を検知するため、空気の揺らぎなどの影響を抑えられる。即ち、本実施形態の場合、位置センサ181を被加工物111に近い位置に配置でき、空気の揺らぎなどによる影響を最小限に抑えられる。
本実施形態の場合、このように、レーザ光強度が異なる加工を交互に行う時と非加工時とで、位置センサ181で検知するレーザ光は、位置センサ181の定める強度範囲に収めることができ、位置センサ181による検知を被加工物111に近い位置で行える。この結果、レーザ光の照射位置の調整をより正確に行える。
なお、可動ミラー191,192の位置は、レーザ光の経路に関し、位置センサ181及び蛍光板よりも上流であれば、他の位置に配置することもできる。また、第1のポラライザ106と第2のポラライザ161との偏光消光比特性は、同一でなくても良い。但し、この場合、加工時と非加工時とで、位置センサ181に入射するレーザ光が位置センサ181の許容範囲に収まるような組み合わせとする。また、上述のP波とS波との関係が逆であっても良い。
上述の各実施形態で説明したレーザ加工装置及びレーザ加工方法により製造する基板は、インクジェットヘッドの基板や、他の半導体材料基板や、ガラス基板、回路基板などが挙げられる。また、加工は先導孔のような穴あけ加工に限らず、溝形状や切断、改質、接合などの加工を行うことも可能である。また具体的な適用先としてはインクジェットヘッドの先導孔加工に限らず、例えば回路基板の穴あけ加工や太陽電池基板のスクライビング、抵抗素子のトリミング、電池ケースの封止溶接などがある。
<実施例>
次に、実施例として、各実施形態で説明したレーザ加工装置及びレーザ加工方法を用いて基板を製造する、基板の製造方法について説明する。本実施例では、製造する基板は、インクジェットヘッドの基板である。図7は、インクジェットプリンタのヘッド部分の断面を示した図面である。
図7において、40は半導体基板(インクジェットヘッドの基板)、41はインクの経路となる垂直形状の溝である。また、42はヒータ、43は液室、44はオリフィスプレート、45は吐出孔、46はインクタンク、破線で示す47はインク経路、48は微小なインク滴を示す。溝41が形成された半導体基板40の下面にはインクを吐出させるためのヒータ42、液室43、オリフィスプレート44が形成される。また、半導体基板40の上面には、インクを貯蔵するインクタンク46が取り付けられる。インクは、インクタンク46から溝41及び液室43を経て、ヒータ42に到達する。ヒータ42の瞬間的な加熱/冷却により形成された気泡がインクを押上げ、オリフィスプレート44中に形成された吐出孔45より微小なインク滴48となって吐出される。
本実施例では、このようにインク滴48を吐出する吐出孔45にインクを供給する経路となる溝41を、上述の各実施形態で説明したようなレーザ加工によって形成する。即ち、被加工物として溝41を形成する前の半導体基板をステージに載置し、上述したようなレーザ加工を施す。なお、レーザ加工後にそのまま用いてもよいが、アルカリ性エッチング液中で例えば15分程度異方性エッチングする事により、最終的な溝形状を形成しても良い。
異方性エッチングにより溝41を形成する場合、レーザ加工により先導孔を形成する。この先導孔とは、レーザ加工の後工程の異方性エッチングの際にエッチング液を進入させ、異方性エッチングの時間を短縮し、インク供給口の幅をより小さくするためのものである。
また、インクジェットヘッドの基板は、例えば、結晶面(100)シリコン製の素材(被加工物)に加工を施して製造したものである。この被加工物にはヒータや電気配線、耐エッチング性を有するエッチングストップ層、エッチング保護膜など、インクを吐出するための機構やレーザ加工後のエッチング工程のための機構などが形成されている。また、被加工物の厚みは、例えば725μm程度である。
このような被加工物に対して、上述の所望の先導孔の形状になるまでレーザ光を照射する。この先導孔は、後工程の異方性エッチングの際にエッチング液を進入させ、異方性エッチングの時間を短縮し、インク供給口の幅をより小さくするために、直径φ5〜100μmとすることが好ましい。また深さは被加工物として725μmの厚さのものを用いた場合、600〜710μmが好ましい。