以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
実施形態に係るレーザ加工方法及びレーザ加工装置では、加工対象物にレーザ光を集光することにより、切断予定ラインに沿って加工対象物に改質領域を形成する。そこで、まず、改質領域の形成について、図1〜図6を参照して説明する。
図1に示されるように、レーザ加工装置100は、レーザ光Lをパルス発振するレーザ光出射部であるレーザ光源101と、レーザ光Lの光軸(光路)の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と、レーザ光Lを集光するための集光用レンズ105と、を備えている。また、レーザ加工装置100は、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される加工対象物1を支持するための支持台107と、支持台107を移動させるためのステージ111と、レーザ光Lの出力(パルスエネルギ,光強度)やパルス幅、パルス波形等を調節するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と、ステージ111の移動を制御するステージ制御部115と、を備えている。
レーザ加工装置100においては、レーザ光源101から出射されたレーザ光Lは、ダイクロイックミラー103によってその光軸の向きを90°変えられ、支持台107上に載置された加工対象物1の内部に集光用レンズ105によって集光される。これと共に、ステージ111が移動させられ、加工対象物1がレーザ光Lに対して切断予定ライン5に沿って相対移動させられる。これにより、切断予定ライン5に沿った改質領域が加工対象物1に形成される。なお、ここでは、レーザ光Lを相対的に移動させるためにステージ111を移動させたが、集光用レンズ105を移動させてもよいし、或いはこれらの両方を移動させてもよい。
加工対象物1としては、半導体材料で形成された半導体基板や圧電材料で形成された圧電基板等を含む板状の部材(例えば、基板、ウェハ等)が用いられる。図2に示されるように、加工対象物1には、加工対象物1を切断するための切断予定ライン5が設定されている。切断予定ライン5は、直線状に延びた仮想線である。加工対象物1の内部に改質領域を形成する場合、図3に示されるように、加工対象物1の内部に集光点(集光位置)Pを合わせた状態で、レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち、図2の矢印A方向に)相対的に移動させる。これにより、図4、図5及び図6に示されるように、改質領域7が切断予定ライン5に沿って加工対象物1に形成され、切断予定ライン5に沿って形成された改質領域7が切断起点領域8となる。
集光点Pとは、レーザ光Lが集光する箇所のことである。切断予定ライン5は、直線状に限らず曲線状であってもよいし、これらが組み合わされた3次元状であってもよいし、座標指定されたものであってもよい。切断予定ライン5は、仮想線に限らず加工対象物1の表面3に実際に引かれた線であってもよい。改質領域7は、連続的に形成される場合もあるし、断続的に形成される場合もある。改質領域7は列状でも点状でもよく、要は、改質領域7は少なくとも加工対象物1の内部に形成されていればよい。また、改質領域7を起点に亀裂が形成される場合があり、亀裂及び改質領域7は、加工対象物1の外表面(表面3、裏面、若しくは外周面)に露出していてもよい。改質領域7を形成する際のレーザ光入射面は、加工対象物1の表面3に限定されるものではなく、加工対象物1の裏面であってもよい。
ちなみに、加工対象物1の内部に改質領域7を形成する場合には、レーザ光Lは、加工対象物1を透過すると共に、加工対象物1の内部に位置する集光点P近傍にて特に吸収される。これにより、加工対象物1に改質領域7が形成される(すなわち、内部吸収型レーザ加工)。この場合、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lが殆ど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。一方、加工対象物1の表面3又は裏面に改質領域7を形成する場合には、レーザ光Lは、表面3又は裏面に位置する集光点P近傍にて特に吸収され、表面3又は裏面から溶融され除去されて、穴や溝等の除去部が形成される(表面吸収型レーザ加工)。
改質領域7は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域をいう。改質領域7としては、例えば、溶融処理領域(一旦溶融後再固化した領域、溶融状態中の領域及び溶融から再固化する状態中の領域のうち少なくとも何れか一つを意味する)、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。更に、改質領域7としては、加工対象物1の材料において改質領域7の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域や、格子欠陥が形成された領域がある。加工対象物1の材料が単結晶シリコンである場合、改質領域7は、高転位密度領域ともいえる。
溶融処理領域、屈折率変化領域、改質領域7の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域、及び、格子欠陥が形成された領域は、更に、それら領域の内部や改質領域7と非改質領域との界面に亀裂(割れ、マイクロクラック)を内包している場合がある。内包される亀裂は、改質領域7の全面に渡る場合や一部分のみや複数部分に形成される場合がある。加工対象物1は、結晶構造を有する結晶材料からなる基板を含む。例えば加工対象物1は、窒化ガリウム(GaN)、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、LiTaO3、及び、サファイア(Al2O3)の少なくとも何れかで形成された基板を含む。換言すると、加工対象物1は、例えば、窒化ガリウム基板、シリコン基板、SiC基板、LiTaO3基板、又はサファイア基板を含む。結晶材料は、異方性結晶及び等方性結晶の何れであってもよい。また、加工対象物1は、非結晶構造(非晶質構造)を有する非結晶材料からなる基板を含んでいてもよく、例えばガラス基板を含んでいてもよい。
実施形態では、切断予定ライン5に沿って改質スポット(加工痕)を複数形成することにより、改質領域7を形成することができる。この場合、複数の改質スポットが集まることによって改質領域7となる。改質スポットとは、パルスレーザ光の1パルスのショット(つまり1パルスのレーザ照射:レーザショット)で形成される改質部分である。改質スポットとしては、クラックスポット、溶融処理スポット若しくは屈折率変化スポット、又はこれらの少なくとも1つが混在するもの等が挙げられる。改質スポットについては、要求される切断精度、要求される切断面の平坦性、加工対象物1の厚さ、種類、結晶方位等を考慮して、その大きさや発生する亀裂の長さを適宜制御することができる。また、実施形態では、切断予定ライン5に沿って、改質スポットを改質領域7として形成することができる。
次に、実施形態に係るレーザ加工方法及びレーザ加工装置について説明する。以下の説明では、レーザ光Lを加工対象物1に対して相対移動させる際に沿う切断予定ライン5の延在方向(加工進行方向に沿う方向)をX方向とし、加工対象物1の厚さ方向をZ方向とし、X方向及びZ方向に対して直交する方向をY方向(所定方向)とする。
図7に示されるように、レーザ加工装置300は、レーザ光源(レーザ光出射部)202、反射型空間光変調器(空間光変調器)203、4f光学系241、及び集光光学系204を筐体231内に備えている。レーザ加工装置300は、加工対象物1にレーザ光Lを集光することにより、切断予定ライン5に沿って加工対象物1に改質領域7を形成する。
レーザ光源202は、レーザ光Lを出射するものである。レーザ光源202は、20ps以下のパルス幅を有するレーザ光である超短パルスレーザ光をレーザ光Lとして出射する。レーザ光源202は、レーザ発振器として超短パルスレーザ光源を含む。レーザ発振器としては、例えば固体レーザ、ファイバレーザ又は外部変調素子等で構成できる。レーザ光源202は、レーザ光Lの出力を調整する出力調整部を含んでいる。出力調整部としては、λ/2波長板ユニット及び偏光板ユニット等で構成できる。また、レーザ光源202は、レーザ光Lの径を調整しつつ平行化するビームエキスパンダを含んでいる。
レーザ光源202から出射されるレーザ光Lの波長は、500〜550nm、1000〜1150nm又は1300〜1400nmのいずれかの波長帯に含まれる。ここでのレーザ光Lの波長は、1030nmである。このようなレーザ光源202は、水平方向にレーザ光Lを出射するように、筐体231の天板236にねじ等で固定されている。
反射型空間光変調器203は、レーザ光源202から出射されたレーザ光Lを変調するものである。反射型空間光変調器203は、例えば反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。反射型空間光変調器203は、水平方向から入射するレーザ光Lを変調すると共に、水平方向に対し斜め上方に反射する。
図8に示されるように、反射型空間光変調器203は、シリコン基板213、駆動回路層914、複数の画素電極214、誘電体多層膜ミラー等の反射膜215、配向膜999a、液晶層216、配向膜999b、透明導電膜217、及びガラス基板等の透明基板218がこの順に積層されることで構成されている。
透明基板218は、所定平面に沿った表面218aを有している。透明基板218の表面218aは、反射型空間光変調器203の表面を構成する。透明基板218は、例えばガラス等の光透過性材料からなる。透明基板218は、反射型空間光変調器203の表面218aから入射した所定波長のレーザ光Lを、反射型空間光変調器203の内部へ透過する。透明導電膜217は、透明基板218の裏面上に形成されている。透明導電膜217は、レーザ光Lを透過する導電性材料(例えばITO)からなる。
複数の画素電極214は、透明導電膜217に沿ってシリコン基板213上にマトリックス状に配列されている。複数の画素電極214は、例えばアルミニウム等の金属材料で形成されている。複数の画素電極214の表面214aは、平坦且つ滑らかに加工されている。複数の画素電極214は、駆動回路層914に設けられたアクティブ・マトリクス回路によって駆動される。
アクティブ・マトリクス回路は、複数の画素電極214とシリコン基板213との間に設けられている。アクティブ・マトリクス回路は、反射型空間光変調器203から出力しようとする光像に応じて各画素電極214への印加電圧を制御する。例えばアクティブ・マトリクス回路は、表面218aに沿う一方向に並んだ各画素列の印加電圧を制御する第1ドライバ回路と、当該一方向に直交し且つ表面218aに沿う他方向に並んだ各画素列の印加電圧を制御する第2ドライバ回路と、を有している。このようなアクティブ・マトリクス回路は、制御部250(図7参照)によって双方のドライバ回路で指定された画素の画素電極214に所定電圧が印加されるように構成されている。
配向膜999a,999bは、液晶層216の両端面に配置されており、液晶分子群を一定方向に配列させる。配向膜999a,999bは、例えばポリイミド等の高分子材料で形成されている。配向膜999a,999bにおける液晶層216との接触面には、ラビング処理等が施されている。
液晶層216は、複数の画素電極214と透明導電膜217との間に配置されている。液晶層216は、各画素電極214と透明導電膜217とにより形成される電界に応じてレーザ光Lを変調する。すなわち、駆動回路層914のアクティブ・マトリクス回路によって各画素電極214に電圧が印加されると、透明導電膜217と各画素電極214との間に電界が形成され、液晶層216に形成された電界の大きさに応じて液晶分子216aの配列方向が変化する。そして、レーザ光Lが透明基板218及び透明導電膜217を透過して液晶層216に入射すると、このレーザ光Lは、液晶層216を通過する間に液晶分子216aによって変調され、反射膜215において反射した後、再び液晶層216により変調されて出射する。
このとき、制御部250(図7参照)によって各画素電極214に印加される電圧が制御され、その電圧に応じて、液晶層216において透明導電膜217と各画素電極214とに挟まれた部分の屈折率が変化する(各画素に対応した位置の液晶層216の屈折率が変化する)。この屈折率の変化により、印加した電圧に応じて、レーザ光Lの位相を液晶層216の画素ごとに変化させることができる。つまり、ホログラムパターンに応じた位相変調を画素ごとに液晶層216によって付与することができる。換言すると、変調を付与するホログラムパターンとしての変調パターン(位相パターンとも称される)を、反射型空間光変調器410の液晶層216に表示させることができる。変調パターンに入射し透過するレーザ光Lは、その波面が調整され、レーザ光Lを構成する各光線において進行方向に直交する方向の成分の位相にずれが生じる。したがって、反射型空間光変調器203に表示させる変調パターンを適宜設定することにより、レーザ光Lが変調(例えば、レーザ光Lの強度、振幅、位相、偏光等が変調)可能となる。
図7に戻り、4f光学系241は、反射型空間光変調器203によって変調されたレーザ光Lの波面形状を調整する調整光学系である。4f光学系241は、第1レンズ241a及び第2レンズ241bを有している。第1レンズ241a及び第2レンズ241bは、反射型空間光変調器203と第1レンズ241aとの間の光路の距離が第1レンズ241aの第1焦点距離f1となり、集光光学系204と第2レンズ241bとの間の光路の距離が第2レンズ241bの第2焦点距離f2となり、第1レンズ241aと第2レンズ241bとの間の光路の距離が第1焦点距離f1と第2焦点距離f2との和(すなわち、f1+f2)となり、第1レンズ241a及び第2レンズ241bが両側テレセントリック光学系となるように、反射型空間光変調器203と集光光学系204との間の光路上に配置されている。4f光学系241によれば、反射型空間光変調器203で変調されたレーザ光Lが空間伝播により波面形状が変化し収差が増大するのを抑制することができる。
集光光学系204は、レーザ光源202により出射されて反射型空間光変調器203により変調されたレーザ光Lを、加工対象物1の内部に集光するものである。集光光学系204は、複数のレンズを含んで構成されており、圧電素子等を含んで構成された駆動ユニット232を介して筐体231の底板233に設置されている。
以上のように構成されたレーザ加工装置300では、レーザ光源202から出射されたレーザ光Lは、筐体231内にて水平方向に進行した後、ミラー205aによって下方に反射され、アッテネータ207によって光強度が調整される。その後、レーザ光Lは、ミラー205bによって水平方向に反射され、ビームホモジナイザ260によってレーザ光Lの強度分布が均一化されて反射型空間光変調器203に入射する。
反射型空間光変調器203に入射したレーザ光Lは、液晶層216に表示された変調パターンを透過することにより当該変調パターンに応じて変調される。その後、レーザ光Lは、ミラー206aによって上方に反射され、λ/2波長板228によって偏光方向が変更され、ミラー206bによって水平方向に反射されて4f光学系241に入射する。
4f光学系241に入射したレーザ光Lは、平行光で集光光学系204に入射するよう波面形状が調整される。具体的には、レーザ光Lは、第1レンズ241aを透過し収束され、ミラー219によって下方へ反射され、共焦点Oを経て発散すると共に、第2レンズ241bを透過し、平行光となるように再び収束される。そして、レーザ光Lは、ダイクロイックミラー210,238を順次透過して集光光学系204に入射し、ステージ111上に載置された加工対象物1内に集光光学系204によって集光される。
また、レーザ加工装置300は、加工対象物1のレーザ光入射面を観察するための表面観察ユニット211と、集光光学系204と加工対象物1との距離を微調整するためのAF(AutoFocus)ユニット212と、を筐体231内に備えている。
表面観察ユニット211は、可視光VL1を出射する観察用光源211aと、加工対象物1のレーザ光入射面で反射された可視光VL1の反射光VL2を受光して検出する検出器211bと、を有している。表面観察ユニット211では、観察用光源211aから出射された可視光VL1が、ミラー208及びダイクロイックミラー209,210,238で反射・透過され、集光光学系204で加工対象物1に向けて集光される。加工対象物1のレーザ光入射面で反射された反射光VL2が、集光光学系204で集光されてダイクロイックミラー238,210で透過・反射された後、ダイクロイックミラー209を透過して検出器211bにて受光される。
AFユニット212は、AF用レーザ光LB1を出射し、レーザ光入射面で反射されたAF用レーザ光LB1の反射光LB2を受光し検出することで、切断予定ライン5に沿ったレーザ光入射面の変位データを取得する。AFユニット212は、改質領域7を形成する際、取得した変位データに基づいて駆動ユニット232を駆動させ、レーザ光入射面のうねりに沿うように集光光学系204をその光軸方向に往復移動させる。
更に、レーザ加工装置300は、当該レーザ加工装置300の各部の動作を制御する制御部250を備えている。制御部250は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等によって構成されている。
制御部250は、レーザ光源202の動作を制御し、レーザ光源202からレーザ光Lを出射させる。制御部250は、レーザ光源202の動作を制御し、レーザ光源202から出射されるレーザ光Lの出力やパルス幅等を調節する。制御部250は、改質領域7を形成する際、レーザ光Lの集光点Pが加工対象物1の表面3又は裏面21から所定距離に位置し且つレーザ光Lの集光点Pが切断予定ライン5に沿って相対的に移動するように、筐体231、ステージ111の位置、及び駆動ユニット232の駆動の少なくとも1つを制御する。制御部250は、上記レーザ光源制御部102及び上記ステージ制御部115の機能を有する。
制御部250は、改質領域7を形成する際、反射型空間光変調器203における各画素電極214に所定電圧を印加し、液晶層216に所定の変調パターンを表示させる。これにより、制御部250は、レーザ光Lを反射型空間光変調器203で所望に変調させる。液晶層216に表示される変調パターンは、例えば、改質領域7を形成しようとする位置、照射するレーザ光Lの波長、加工対象物1の材料、及び集光光学系204や加工対象物1の屈折率等に基づいて予め導出され、制御部250に記憶されている。変調パターンは、レーザ加工装置300に生じる個体差(例えば、液晶層216に生じる歪)を補正するための個体差補正パターン、球面収差を補正するための球面収差補正パターン等を含んでいる。
本実施形態において、制御部250は、少なくともレーザ光源202及び反射型空間光変調器203の動作を制御し、レーザ光集光制御を実行する(詳しくは後述)。制御部250は、反射型空間光変調器203を制御し、レーザ光Lが少なくとも3つに分岐されて加工対象物1内に集光光学系204で同時集光される分岐パターンを、変調パターンとして液晶層216に表示させる。これにより、例えば図9に示されるように、反射型空間光変調器203は、レーザ光Lを3つのレーザ光L1〜L3に分岐させる。そして、加工対象物1内において、3次元方向の所望の3箇所に集光光学系204でレーザ光Lを同時に多点集光させ、当該3箇所に改質スポットとしての改質領域7を同時形成させる。具体的には、Y方向において切断予定ライン5に対応する位置に位置する1又は複数の第1改質領域7aと、Y方向において第1改質領域7aよりも一方側に位置する1又は複数の第2改質領域7bと、Y方向において第1改質領域7aよりも他方側(当該一方側の反対側)に位置する1又は複数の第3改質領域7cと、に同時形成させる。
X方向における第1〜第3改質領域7a〜7cの位置は、互いに等しい。換言すると、第1〜第3改質領域7a〜7cは、Y方向に沿って直線状に並ぶように形成されている。Z方向における第1〜第3改質領域7a〜7cの位置は、互いに等しい。換言すると、第1〜第3改質領域7a〜7cの位置は、互いに同じ深さ位置に形成されている。
Y方向における第1改質領域7aと第2改質領域7bとの間隔は、Y方向における第1改質領域7aと第3改質領域7cとの間隔に対して等しい。つまり、Y方向における第1〜第3改質領域7a〜7cの間隔は、互いに等しい。第1〜第3改質領域7aの間隔は、液晶層216に表示させる分岐パターンにより適宜調整できる。第1〜第3改質領域7aの間隔は、特に限定されないが、例えば1μm〜10μmとすることができる。
第1改質領域7aは、切断予定ライン(第1切断予定ライン)5上、すなわち、Z方向から見て切断予定ライン5と重なる位置に形成されている。第2改質領域7bは、第1改質領域7aに対応する切断予定ライン5と、該切断予定ライン5に対してY方向一方側に隣接する他の切断予定ライン5(第2切断予定ライン)と、の間に形成されている。第3改質領域7cは、第1改質領域7aに対応する切断予定ライン5と、該切断予定ライン5に対してY方向他方側に隣接する他の切断予定ライン5(第3切断予定ライン)と、の間に形成されている。
制御部250は、レーザ加工装置300の各部を制御し、第1〜第3改質領域7a〜7cの形成の際、加工対象物1の表面3に至る亀裂であるハーフカットHcを第1改質領域7aから発生させる。このとき、第2及び第3改質領域7b,7cからはハーフカットHcを発生させない。ハーフカットHcは、表面3に露出する表面亀裂である。
一例として、制御部250は、レーザ光源202を制御し、ハーフカットHcが第1改質領域7aのみから発生するようにレーザ光Lの出力を調整する。具体的には、制御部250は、ハーフカットHcを発生させ得る最小出力値であるHC閾値よりも、第1改質領域7aの形成のために集光されるレーザ光L1の出力が大きくなるように、レーザ光L1の出力を制御する。なお、第1改質領域7aからのハーフカットHcの発生は、レーザ光L1(レーザ光L)の特性、加工対象物1内におけるレーザ光Lを集光させる位置(表面3からの距離)、変調パターン、及び、その他の加工条件の少なくとも何れかを制御部250で適宜調整することで実現できる。ハーフカットHcの発生は、種々の公知手法を用いて実現できる。
制御部250は、レーザ光源202を制御し、分岐後におけるレーザ光L1〜L3の一部又は全部の出力比を、互いに同じになるように、又は、互いに異なるように調整する。例えば制御部250は、第1改質領域7aを形成する第1レーザ光であるレーザ光L1の出力を第1出力とし、第2及び第3改質領域7b,7cを形成する第2及び第3レーザ光であるレーザ光L2,L2の双方の出力を第1出力よりも小さい第2出力とする。
次に、レーザ加工装置300において実施されるレーザ加工方法について説明する。
本実施形態のレーザ加工方法は、加工対象物1をレーザ加工して複数のチップを製造するためのチップの製造方法として用いられる。加工対象物1は、板状を呈している。加工対象物1は、例えば、サファイア基板、SiC基板、ガラス基板(強化ガラス基板)、シリコン基板、半導体基板又は透明絶縁基板等である。ここでの加工対象物1は、サファイア基板である。
図10に示されるように、加工対象物1においてレーザ光入射面側である表面3側には、機能素子層15が形成されている。機能素子層15は、マトリックス状に配列された複数の機能素子15a(例えば、フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、又は回路として形成された回路素子等)を含んでいる。加工対象物1の表面3上には、隣り合う機能素子15a間を通るように延びる切断予定ライン5が複数設定されている。複数の切断予定ライン5は、格子状に延在している。なお、加工対象物1がサファイア基板の場合には、そのC面が主面(表面3及び裏面21)とされ、切断予定ライン5がサファイア基板のR面に沿った方向に延びるよう設定される。
本実施形態のレーザ加工方法では、まず、表面3がレーザ光入射面となるようにステージ111の支持台107上に加工対象物1を載置する。制御部250により、変調パターンを液晶層216(図8参照)に表示させ、この状態でレーザ光源202からレーザ光Lを出射させ、当該レーザ光Lを加工対象物1の内部に集光させる。併せて、制御部250によりステージ111の移動等を制御し、当該レーザ光Lを切断予定ライン5に沿った加工進行方向へ相対的に移動(スキャン)させ、加工対象物1の内部に改質領域7を切断予定ライン5に沿って1列形成する。
このような切断予定ライン5に沿ったレーザ光Lのスキャンを、Z方向における集光位置を変えて複数回実施する。これにより、Z方向の位置が互いに異なる複数列の改質領域7を、切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部に形成する。そして、加工対象物1に対して切断予定ライン5に沿うようにナイフエッジを押し当て、切断予定ライン5に沿って外部から加工対象物1に力を印加し、加工対象物1を複数のチップに切断する。
ここで、Z方向に複数列の改質領域7のうち、表面3に最も近い列の改質領域7を形成するスキャンの際には、次のレーザ光集光ステップ(レーザ光集光制御)を実行する。すなわち、加工対象物1の内部にレーザ光L1〜L3を同時集光する。ここでは、切断予定ライン5上の第1集光点と、切断予定ライン5に対してY方向一方側の第2集光点と、切断予定ライン5に対してY方向他方側の第3集光点と、にレーザ光Lを同時集光する。これにより、図11に示されるように、第1〜第3集光点のそれぞれに第1〜第3改質領域7a〜7cのそれぞれを同時形成すると共に、第1改質領域7aからハーフカットHcを発生させる。
具体的には、制御部250により液晶層216に分岐パターンを表示させた状態で、制御部250によりレーザ光源202からレーザ光Lを出射させ、当該レーザ光Lを液晶層216の分岐パターンで変調して3つのレーザ光L1〜L3へと分岐させる。これらレーザ光L1〜L3を集光光学系204を介して加工対象物1に照射し、第1〜第3集光点それぞれにレーザ光L1〜L3それぞれを同時集光させる。第1〜第3集光点の各位置を基準に、第1〜第3改質領域7a〜7cを同時形成する。
このとき又は事前に、例えば制御部250によりレーザ光L1の出力がHC閾値以上となるようにレーザ光源202を制御する。これにより、第1〜第3改質領域7a〜7cの形成と同時に、第1改質領域7aからハーフカットHcを発生させる。併せて、制御部250によりステージ111の移動等を制御し、当該レーザ光L1〜L3を切断予定ライン5に沿った加工進行方向へ相対的に移動させる。以上により、加工対象物1の内部に第1〜第3改質領域7a〜7cを切断予定ライン5に沿って形成すると共に、当該ハーフカットHcを切断予定ライン5に沿って進展させる。
図12及び図13は、一実施形態に係るレーザ加工方法及びレーザ加工装置300の作用を説明する図である。図12は、加工対象物1において改質領域7が形成されたZ方向の位置におけるXY面に沿う断面図である。図13(a)は、比較例に係るレーザ加工後の加工対象物1の側断面図である。図13(b)は、本実施形態に係るレーザ加工後の加工対象物1の側断面図である。比較例に係るレーザ加工では、レーザ光Lを分岐させずに(例えば反射型空間光変調器203の液晶層216に分岐パターンを表示させずに)加工対象物1に集光させ、切断予定ライン5に沿って、第2及び第3改質領域7b,7cを形成せずに改質領域7を形成する(以下の比較例において同様)。
以上に説明した本実施形態によれば、切断予定ライン5上に第1改質領域7aを形成し、第1改質領域7aからハーフカットHcを生じさせるのと同時に、当該第1改質領域7aのY方向における一方側と他方側とのそれぞれに第2及び第3改質領域7b,7cを形成する。第2及び第3改質領域7b,7cの形成により、加工対象物1の内部において第1改質領域7aのY方向における一方側と他方側とを局所的に膨張等させることができる。これにより、図12に示されるように、Y方向に第1改質領域7aを挟むような強い圧縮応力場(図中の矢印参照)を瞬間的に且つ意図的に発生させることができる。当該圧縮応力場によって、ハーフカットHcのY方向の進展を抑制でき、改質領域7から生じるハーフカットHcがY方向に傾いて切断予定ライン5上から外れてしまうこと(図13(a)参照)を抑制できる。すなわち、図13(b)に示されるように、ハーフカットHcの進展方向を安定化し、ハーフカットHcを第1改質領域7aから表面3へZ方向に真っ直ぐ進展させ易くすることができる。したがって、ハーフカットHcが切断予定ライン5に対して蛇行することを抑制することが可能となる。
本実施形態では、X方向における第1〜第3改質領域7a〜7cの位置は、互いに等しい。これにより、第2及び第3改質領域7bの形成で発生させた圧縮応力場が効果的に及ぶ範囲内にハーフカットHcを位置させ、当該圧縮応力場を効果的にハーフカットHcの進展に作用させることができる。ハーフカットHcのY方向の進展を効果的に抑制することが可能となる。
本実施形態において、レーザ光Lは、超短パルスレーザ光である。これにより、第2及び第3改質領域7bの形成による圧縮応力場を一層瞬間的に発生させることができる。また、分岐されたレーザ光L1〜L3の1パルスの照射においては、各集光点で熱の効果(影響)が現れる前に、当該レーザ光L1〜L3の照射を終了させることができる。その結果、当該圧縮応力場が効果的に発生し、当該圧縮応力場によってハーフカットHcのY方向の進展を抑制するという上記作用が顕著となる。
本実施形態では、Z方向における第1〜第3改質領域7a〜7cの位置は、互いに等しい。これにより、第2及び第3改質領域7bの形成で発生させた圧縮応力場が効果的に及ぶ範囲内にハーフカットHcを位置させ、当該圧縮応力場を効果的にハーフカットHcの進展に作用させることができる。ハーフカットHcのY方向の進展を効果的に抑制することが可能となる。
本実施形態では、切断予定ライン5に沿ってZ方向に複数列の改質領域7を形成する。表面3に至るハーフカットHcを発生させるレーザ光集光ステップ(レーザ光集光制御)を、Z方向に複数列の改質領域7のうち加工対象物1の表面3に最も近い改質領域7を形成する際に実行する。これにより、第1改質領域7aから表面3に至るハーフカットHcを効率よく発生させることができる。
本実施形態では、レーザ光Lが3つのレーザ光L1〜L3へ分岐されるように反射型空間光変調器203で変調し、これらレーザ光L1〜L3を加工対象物1内に同時集光する。このように、本実施形態では、反射型空間光変調器203を利用して第1〜第3改質領域7a〜7cを同時形成することができる。
本実施形態では、ハーフカットHcを、第2及び第3改質領域7b,7cから発生させずに第1改質領域7aのみから発生させている。これにより、第2及び第3改質領域7b,7cからのハーフカットHcの影響で圧縮応力場の応力が逃がされて低減してしまうのを回避することができる。
本実施形態では、第2及び第3改質領域7b,7cは切断予定ライン5上に位置していない。すなわち、第1改質領域7aに対応する切断予定ライン5と当該切断予定ライン5に対してY方向の一方側に隣接する切断予定ライン5との間に、第2改質領域7bが位置している。第1改質領域7aに対応する切断予定ライン5と当該切断予定ライン5に対してY方向の他方側に隣接する切断予定ライン5との間に、第3改質領域7cが位置している。この場合、切断の起点として、第2及び第3改質領域7b,7cを利用せずに第1改質領域7a及びハーフカットHcを利用して、加工対象物1を切断予定ライン5に沿って精度よく切断できる。つまり、第1改質領域7a及びハーフカットHcは、切断の起点として利用される領域である。第2及び第3改質領域7b,7cは、切断の起点として利用される領域ではない(換言すると、切断の起点として利用されない領域である)。
図14及び図15は、第2及び第3改質領域7b,7cの有無に係るレーザ加工結果を示す写真図である。図14(a)は、第2及び第3改質領域7b,7cを形成しない比較例に係るレーザ加工後の加工対象物1の表面3を示す写真図である。図14(b)は、第2及び第3改質領域7b,7cを形成した本実施形態に係るレーザ加工後の加工対象物1の表面3を示す写真図である。図15(a)は図14(a)の一部拡大図であり、図15(b)は図14(b)の一部拡大図である。
図14及び図15のレーザ加工において、加工対象物1はサファイアである。加工条件として、レーザ光Lのパルス幅を2ps、レーザ光Lの繰返し周波数を50kHz、レーザ光Lのスキャン速度(加工対象物1に対する相対速度)を500mm/sとしている。図14(b)及び図15(b)に示されるレーザ加工では、第1〜第3改質領域7a〜7cの間隔(ピッチ)を3μmとし、分岐後のレーザ光L1〜L3の出力(エネルギ)を互いに等しくしている。
図14及び図15に示されるように、本実施形態では、第2及び第3改質領域7b,7cを形成しない場合のレーザ加工に比べて、ハーフカットHcが切断予定ライン5に沿って安定して延びる。これにより、本実施形態においてハーフカットHcが切断予定ライン5に対して蛇行するのを抑制できるという上記効果を確認できる。
図16は、第2及び第3改質領域7b,7cの有無に係るレーザ加工結果を示す他の写真図である。図16は、加工対象物1において改質領域7が形成されたZ方向の位置におけるXY面に沿う断面図を示している。図16(a)は、第2及び第3改質領域7b,7cを形成しない比較例に係るレーザ加工後の断面図を示す写真図である。図16(b)は、第2及び第3改質領域7b,7cを形成した本実施形態に係るレーザ加工後の断面図を示す写真図である。
図16のレーザ加工において、加工対象物1は石英ガラスである。加工条件として、レーザ光Lのパルス幅を2ps、レーザ光Lの繰返し周波数を50kHz、レーザ光Lのスキャン速度を500mm/sとしている。レーザ光Lの出力は6μJとし、改質領域7の形成位置は表面3から10μmの位置としている。図16(b)に示されるレーザ加工では、第1〜第3改質領域7a〜7cの間隔を1μmとし、分岐後のレーザ光L1〜L3の出力を互いに等しくしている。
図16に示されるように、本実施形態によれば、第2及び第3改質領域7b,7cを形成しない場合のレーザ加工に比べて、内部亀裂の幅Wを狭くすることができる。これにより、本実施形態においてハーフカットHcが切断予定ライン5に対して蛇行するのを抑制できるという上記効果を確認できる。
図17は、分岐後のレーザ光L1〜L3の出力比を変えたレーザ加工結果を示す写真図である。図17は、加工対象物1において改質領域7が形成されたZ方向の位置におけるXY面に沿う断面図を示している。図中のレーザ加工において、加工対象物1は石英ガラスである。加工条件としては、図16のレーザ加工と同様としている。図17(a)では、レーザ光L1〜L3の出力比を3:3:3とし、図17(b)では、レーザ光L1〜L3の出力比を2:3:2とし、図17(c)では、レーザ光L1〜L3の出力比を1:3:1としている。
本実施形態では、レーザ光L1〜L3の出力比を変えてレーザ加工を行ってもよい。この場合でも、図17に示されるように、内部亀裂の幅を狭くすることができ、ハーフカットHcが切断予定ライン5に対して蛇行することを抑制できる。特に、第1改質領域7aを形成するレーザ光L1の出力を、第2及び第3改質領域7b,7cを形成するレーザ光L2,L3の出力よりも大きくした場合、X方向にハーフカットHcを進展し易くできる。
図18〜図21は、第1〜第3改質領域7a〜7cの間隔を変えた場合のレーザ加工結果を示す図である。図18及び図19における結果の欄では、加工対象物1の表面3の写真図を示している。図20及び図21は、加工対象物1において改質領域7が形成されたZ方向の位置におけるXY面に沿う断面図を示している。図中において、間隔とは、第1〜第3改質領域7a〜7cの間隔である。間隔が「なし」とは、レーザ光Lを分岐させずに1点に集光させる場合であって、第2及び第3改質領域7b,7cを形成しない比較例に係るレーザ加工を意味する。加工エネルギとは、レーザ光Lの出力である。図18〜図21のレーザ加工において、加工対象物1はサファイアである。加工条件としては、図14及び図15のレーザ加工と同様としている。改質領域7の形成位置は、表面3から20μmの位置としている。
図18〜図21に示されるように、本実施形態では、制御部250により第1〜第3改質領域7aの間隔を制御することにより、ハーフカットHcの蛇行を抑制するという効果を制御できることがわかる。また、本実施形態では、第2及び第3改質領域7b,7cを形成しない比較例に係るレーザ加工結果(間隔がなしの場合)に比べて、ハーフカットHcの発生に必要な加工エネルギが低減されることを確認できる。また、第1〜第3改質領域7a〜7cの間隔が一定値(図中では8μm)以上の場合、当該加工エネルギが高くなることがわかる。
なお、本実施形態では、制御部250によりレーザ光Lの集光スポット径及びレーザ光Lの波長等のレーザ特性の少なくとも何れかを制御してもよい。この場合においても、ハーフカットHcの蛇行を抑制するという効果を制御できることがわかる。
ここで、レーザ加工を施した加工対象物1の抗折強度を比較する抗折強度比較試験を行った。抗折強度比較試験では、第2及び第3改質領域7b,7cを形成しない比較例と第2及び第3改質領域7b,7cを形成した本実施形態とで、抗折強度を比較した。抗折強度の測定方法は、JIS1603に準拠する方法とした。抗折強度比較試験のレーザ加工では、Z方向に5列の改質領域7を形成した。比較例に係るレーザ加工では、レーザ光Lを分岐させずに改質領域7を5列形成した。本実施形態に係るレーザ加工では、最も表面3側の列の改質領域7を形成する際のみにレーザ光Lを分岐して第1〜第3改質領域7a〜7cを同時形成し、それ以外の4列の改質領域7を形成する際には、レーザ光Lを分岐させずに改質領域7を形成した。
このような抗折強度比較試験の結果によれば、比較例の結果を基準としたとき、本実施形態の場合では、加工対象物1の平均強度が118%となり、破壊確率10%の強度が128%となった。これにより、本実施形態では、高い抗折強度が得られることが確認できた。また、本実施形態では、抗折強度のばらつきが非常に小さいことが確認できた。
図22(a)は、第2及び第3改質領域7b,7cを形成しない比較例に係るレーザ加工を施して加工対象物1を切断した場合における切断面の一部を拡大して示す写真図である。図22(b)は、本実施形態に係るレーザ加工を施して加工対象物1を切断した場合における切断面の一部を拡大して示す写真図である。図22に示されるように、本実施形態では、第2及び第3改質領域7b,7cを形成しないレーザ加工に比べて、ハーフカットHcの蛇行が抑制できることから、応力集中箇所であるエッジEgが切断面に形成されるのを抑制できることがわかる。これにより、本実施形態では、抗折強度を低下でき、ひいては、ばらつきを抑制できると考察できる。
なお、形成する第1〜第3改質領域7a〜7cの数及び配置関係は、上記実施形態に限定されない。例えば図23(a)に示されるように、第2及び第3改質領域7b,7cは、第1改質領域7aに対して加工進行方向の後側に位置していてもよい。例えば図23(b)に示されるように、第2及び第3改質領域7b,7cは、第1改質領域7aに対して加工進行方向の前側に位置していてもよい。
例えば図23(c)に示されるように、第1改質領域7aは、X方向に互いに離れて2つ形成されていてもよい。この場合、X方向において、第2及び第3改質領域7b,7cは2つの第1改質領域7aの間に位置していてもよい。例えば図23(d)に示されるように、第2改質領域7bは第1改質領域7aに対して加工進行方向の前側に位置すると共に、第3改質領域7cは第1改質領域7aに対して加工進行方向の後側に位置していてもよい。この場合、第1〜第3改質領域7a〜7cのX方向における間隔は、互いに等しくてもよい。なお、図23(d)に示される例では、第2改質領域7bが第1改質領域7aに対して加工進行方向の後側に位置すると共に、第3改質領域7cが第1改質領域7aに対して加工進行方向の前側に位置していてもよい。
図24及び図25は、変形例に係るレーザ加工方法及びレーザ加工装置によるレーザ加工結果を示す写真図である。図24及び図25は、加工対象物1において改質領域7が形成されたZ方向の位置におけるXY面に沿う断面図を示している。図24及び図25のレーザ加工において、加工対象物1は石英ガラスである。加工条件としては、図16のレーザ加工と同様としている。
図24(a)は、第1〜第3改質領域7a〜7cの数及び配置関係が図23(a)に示される場合のレーザ加工結果である。図24(b)は、第1〜第3改質領域7a〜7cの数及び配置関係が図23(b)に示される場合のレーザ加工結果である。図25(a)は、第1〜第3改質領域7a〜7cの数及び配置関係が図23(c)に示される場合のレーザ加工結果である。図25(b)は、第1〜第3改質領域7a〜7cの数及び配置関係が図25(a)に示される場合に対してX方向及びY方向の間隔が狭いときのレーザ加工結果である。図25(c)は、第1〜第3改質領域7a〜7cの数及び配置関係が図23(d)に示される場合のレーザ加工結果である。
図24及び図25に示されるように、変形例に係るレーザ加工装置及びレーザ加工方法においても、内部亀裂の幅を狭くし、ハーフカットHcが切断予定ライン5に対して蛇行することを抑制することが可能となる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
上記実施形態において、第2及び第3改質領域7b,7cが形成される位置は、上記に限定されない。第2及び第3改質領域7b,7cを第1改質領域7aに対してY方向の一方側と他方側とに同時形成すればよい。第2及び第3改質領域7b,7cが形成される位置は、第2及び第3改質領域7b,7cの形成による各応力がハーフカットHcに作用する位置であればよい。第1〜第3改質領域7a〜7cの配置関係は、例えば、反射型空間光変調器203の変調パターンを適宜設定することにより制御できる。
上記実施形態において、第1〜第3改質領域7a〜7cそれぞれの数は上記に限定されない。第1改質領域7aは、切断予定ライン5に対応する位置に複数形成されていてもよい。第2改質領域7bは、第1改質領域7aのY方向の一方側に複数形成されていてもよい。第3改質領域7cは、第1改質領域7aのY方向の他方側に複数形成されていてもよい。第1〜第3改質領域7a〜7cそれぞれの数は、例えば、反射型空間光変調器203の変調パターンを適宜設定することにより制御できる。
上記実施形態は、空間光変調器として反射型空間光変調器203を備えているが、空間光変調器は反射型のものに限定されず、透過型の空間光変調器を備えていてもよい。上記実施形態では、加工対象物1の表面3をレーザ光入射面としたが、加工対象物1の裏面21をレーザ光入射面としてもよい。切断予定ライン5に対応する位置は、Y方向において、切断予定ライン5に一致する場合だけでなく、切断予定ライン5に略一致する場合、及び、切断予定ライン5に近接する場合を含む。切断予定ライン5に対応する位置は、例えば加工対象物1の切断後の品質に影響が及ばない程度に切断予定ライン5から離れた位置を含んでいる。
上記実施形態では、第1改質領域7aから表面3に至るハーフカットHcを発生させたが、第1改質領域7aから裏面21に至るハーフカットを発生させてもよい。上記実施形態では、Z方向に複数列のうち表面3に最も近い列の改質領域7を形成するスキャンの際に、表面3に至るハーフカットHcを発生させるレーザ光集光ステップ(レーザ光集光制御)を実行したが、Z方向に複数列のうち裏面21に最も近い列の改質領域7を形成するスキャンの際に、裏面21に至るハーフカットを発生させるレーザ光集光ステップ(レーザ光集光制御)を実行してもよい。
上記実施形態では、レーザ光Lを反射型空間光変調器203でレーザ光L1〜L3へ分岐して加工対象物1に集光したが、これに限定されない。例えば少なくとも3つのレーザ光源を用い、これらのそれぞれからレーザ光Lを照射することで、加工対象物1の内部に少なくとも3つのレーザ光を同時集光してもよい。上記実施形態において、Y方向における第1〜第3改質領域7a〜7cの間隔は、互いに異なっていてもよい。
上記実施形態では、加工対象物1を切断するためにナイフエッジを用いたが、加工対象物1を切断する方法は特に限定されない。例えばエキスパンドテープを加工対象物1の表面3又は裏面21に貼り付け、このエキスパンドテープを拡張して加工対象物1を切断してもよい。例えばブレーカー装置又はローラー装置を用いて加工対象物1を切断してもよい。上記実施形態では、レーザ光Lの出力を調整する出力調整部をレーザ光源202が備えているが、それとは別の出力調整部を備えていてもよい。これら何れの場合にも、制御部250によりレーザ光L(レーザ光L1〜L3)の出力を制御できる。