以下、図面を参照しながら本発明の苗移植機の一実施の形態にかかる乗用田植機について説明する。
(実施の形態1)
図1及び図2は本実施の形態にかかる乗用田植機の側面図と平面図である。
同図に示す通り、本実施の形態の乗用田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して植付装置52が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にトランスミッションケース12が配置され、そのトランスミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。
また、トランスミッションケース12の背面部に車体メインフレーム15の前端部が固着されており、他方、その車体メインフレーム15の後端左右中央部に水平に設けた後輪上下動支点軸181を支点にして左右後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その左右後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸17に後輪11,11が取り付けられている。
尚、左右後輪ギヤケース18,18には、トランスミッションケース12の後壁から突出して設けた左右後輪ギヤケース18,18に連結した左右後輪伝動軸18a,18aにて動力が伝達される構成となっている。
エンジン20は車体メインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST(静油圧式無段階変速機)23を介してトランスミッションケース12に伝達される。トランスミッションケース12に伝達された回転動力は、トランスミッションケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが左右後輪ギヤケース18,18に伝達されて左右後輪11,11を駆動する。
尚、トランスミッションケース12内には、HST23からの回転動力を高速用(路上走行モード)と中立停止用と低速用(植付作業モード)の三段に切り替えるギヤシフト式の副変速装置(図示省略)が設けられており、その副変速装置は副変速レバー680を作業者が操作することにより、上記三段の何れかに切り替えられる構成である。
また、トランスミッションケース12の右側側面より取出された外部取出動力は、植付伝動軸26によって植付装置52へ伝動される。
施肥装置5の肥料繰出し機構へは、右後輪ギヤケース18から動力が駆動軸にて取出されて伝動される。
ここで、施肥装置5について、図3を用いて更に説明する。
図3は、施肥装置5の概略左側面図である。
図3に示す通り、施肥装置5は、上部に肥料を貯留する施肥ホッパ160を各条毎に着脱自在に有し、この施肥ホッパ160の下部の肥料排出口部118から流下される肥料を受けて繰り出す繰出ロール113を、繰出ケース120内に繰出軸121で軸装し、この肥料排出口部118には、施肥シャッター140を設けている。
この施肥シャッター140を設けたことにより、作業時には施肥シャッター140を開放位置にスライドさせて、肥料を繰出ロール113の周辺に肥料が移動することを防止して、上方からの加重によって押し固められた肥料が繰出ロール113の繰出溝113aに溜まることを防止して、肥料の供給を設定通り安定して行うことが出来る。
更にこの施肥シャッター140の上面にねじの先端部が突き出していることにより、施肥シャッター140を前後方向にスライドさせる際に、ねじの先端部が施肥シャッター140の上面に溜まっている肥料を撹拌するので、肥料がブリッジを生じさせる(施肥シャッター140の上面側で固まった肥料が施肥ホッパ160の肥料排出口部118の内壁に張り付き、肥料排出口部118の内径を小さくする現象をいう。)ことが防止され、肥料の供給量がより一層安定し、苗の生育が良好になる構成である。
尚、この施肥シャッター140を含む施肥シャッター機構200については、更に後述する。
また、繰出ロール113が繰り出した肥料を導く施肥ホース162と、苗植付部55による苗植付位置近くに施肥用溝を形成する施肥ガイド(図示省略)を、苗植付部55の植付作用位置よりも前側位置のフロート53a〜53cに取付けている。施肥ホース162から導かれた肥料を土壌の施肥溝に吐出して施肥する。従って、施肥ホース162は、各条毎に1本ずつ設けられている。
施肥装置5は、走行車体の横方向に、植付条数と同じ数の施肥ホッパ160を並設しており、各施肥ホッパ160の下方に設けられた繰出ケース120内に、回転周面に一定容積の繰出溝113aを形成した繰出ロール113を繰出軸121に沿って配置し、各繰出ケース120内で回転されて、上側の施肥ホッパ160から供給される粉、粒材等からなる肥料を繰出溝113aに入れて繰出す。
この繰出軸121は、右後輪ギヤケース18から動力が駆動軸(図示省略)にて取り出されてギヤ122、123等を介して連動回転され、前輪10、及び後輪11の伝動回転と一定の連動比を有して伝動回転されて、繰出施肥する構成である。
また、各繰出ケース120の前後には、横方向に沿って送風ダクト125、及び肥料回収ダクト128を配置して、これら一側端を送風機129から切替弁(図示省略)で切替えて送風ダクト125、又は回収ダクト128へ送風する。
繰出ケース120の下部には肥料出口126を施肥筒124にのぞませて、繰出ロール113によって繰り出された肥料を受けて、送風ダクト125から吹込む送風によって施肥ホース162へ搬送させる構成である。
各施肥ホース162は後下端の吐出口を施肥ガイド(図示省略)上にのぞませて、この施肥ガイドにより成形される作溝内に肥料を噴出して施用する。
一方、送風ダクト125に連結された施肥筒124の一端部124aは、送風ダクト125の内部に突き出しており、その開口部124a1には、円盤状の蓋部材310が左右方向にスライド可能に配置されている。開口部124a1は、蓋部材310のスライド移動により、開状態と閉状態を切り替えられる構成である。
尚、この蓋部材310をスライド移動させて開口部124a1の開閉切替を行う開閉切替機構300については更に後述する。
ここで、再び図1、図2に戻って説明する。
即ち、同図に示す通り、植付装置52の下部には、中央にセンターフロート53aと、その左右両側にサイドフロート53b、53cがそれぞれ設けられている。これらフロートが泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付部55により苗が植え付けられる。
また、図1に示す通り、植付装置52には、センターロータユニット56aと左右両側のサイドロータユニット56b、56cを有する整地ロータ機構56が取り付けられている。センターロータユニット56a、左右両側のサイドロータユニット56b、56cは、それぞれセンターフロート53a、左右両側のサイドフロート53b、53cの前側に配置されており、左後輪ギヤケース18から自在継ぎ手により伝達される動力で矢印Wの向きに回転するべく構成されている。
また、図1に示す通り、エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵し、座席31側の上面において各種操作ボタン(図示省略)を配置したモニターパネル(図示省略)が設けられたフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。なお35はハンドルポストである。
ハンドル34の右側には、植付装置52の昇降を設定するための植付昇降レバー33が設けられている。植付昇降レバー33を前後に移動させることで、植付装置52を「上昇」、「停止」、又は「下降」させたり、植付装置52に対して「植え付け」動作を開始させることが出来る。
また、ハンドル34の左側には、走行車体2の前進走行と後進走行の切り替え、及び走行速度などを設定する主変速レバー36が設けられている。主変速レバー36の操作に連動して、モータ電動操作によるHST23のトラニオン軸(図示省略)の角度調節が行われる。
また、上記副変速レバー680は、ハンドル34の下方において、作業者の足下から立設するべく配置されている。
エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ37になっている。
フロアステップ37の左右前部には複数の貫通孔が形成されており、座席31に着座して機体を操縦する操縦者が左右前輪10,10を見通せることができて操縦が容易な構成となっていると共に、該ステップ37を歩く作業者の靴に付着した泥が圃場に落下するようになっている。
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これら上リンク40及び左右の下リンク41,41は、その基部側が車体メインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、先端側には縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に、植付装置52に回転自在に支承された連結軸が挿入連結され、連結軸を中心として植付装置52がローリング自在に連結されている。
車体メインフレーム15に基部を回動自在に枢支した昇降油圧シリンダ46の先端を上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部に連結して設けており、該昇降油圧シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、植付装置52がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
なお、28,28は左右補助ステップであって、作業者が機体に乗り降りする時に足を載せるステップである。
また、走行車体2の前端中央部にはセンターマスコット19が配置されている。なお、該センターマスコット19は、圃場から機体を退出させるとき、作業者が握って下方に力を加え、機体前部の浮き上がりを防止する操作グリップを下部側に有している。
これにより、機体を圃場から退出させる際、走行姿勢が乱れて移動作業に不要な時間や労力が費やされることが防止されると共に、フロアステップ37に載置している苗箱や苗取板等の作業道具、及び植付装置52に積載している苗が落下することが防止される。
次に、上述した施肥シャッター機構200について、主として図4(a)、図4(b)を用いて更に説明する。
図4(a)は、施肥シャッター機構200を左側から見たときの概略断面図であり、図4(b)は、施肥シャッター機構200の概略斜視図である。
図4(a)、図4(b)に示す通り、施肥シャッター機構200は、施肥シャッター140と、施肥シャッター140をスライド可能に保持して、施肥ホッパ160の下端部161と、繰出ケース120の上端部120aとを連結する、平面視で略長方形状の枠体210とを備えている。
施肥シャッター140は、肥料を施肥ホッパ160側から繰出ケース120側へ通過させるための長孔141が片側に形成されていると共に残りの片側には肥料の通過を止めるための閉鎖部142が形成された長方形状の板状部材である。また、施肥シャッター140には、長孔141の縁であって、施肥シャッター140の短辺の幅方向のほぼ中央位置に裏面から表面に向けてねじ143が固定されている。ねじ143の先端部143aは、施肥シャッター140の表面に垂直に突き出している。
また、施肥シャッター140の前端部は、作業者が手で掴み、スライドさせ易くする為に、下方に向けて滑らかに折り曲げられている。
略長方形状の枠体210の短辺側の側壁部であって、図4(a)に示す通り、側面視で、前側と後側に対向配置された前側壁部211と後側壁部212には、施肥シャッター140を貫通させて、スライド可能に保持するスリット状の前開口部211aと後開口部212aが形成されている。このスリット状の開口部の高さは施肥シャッター140の厚みより少し大きめに設定されており、且つ、スリット状の開口部の幅は施肥シャッター140の短辺より少し大きめに設定されているが、それらの隙間から肥料が漏れ出すことが無い程度の隙間に調整されている。
以上の構成により、移動中などの非作業時には、作業者が、施肥シャッター140を、ねじ143の先端部143aが前側壁部211の内面に当たるまで、前側に引き出しておくことにより(図4(a)、図4(b)中の矢印A参照)、閉鎖部142が枠体210の開口部213を完全に閉鎖するので、施肥ホッパ160側から繰出ケース120内の繰出ロール113の周辺に肥料が移動することを防止出来る。このときの施肥シャッター140の位置を閉鎖位置と呼ぶ。
そのため、上方からの加重によって押し固められた肥料が繰出ロール113の繰出溝113aに溜まることを防止して、肥料の供給を設定通り安定して行うことが出来る。
また、作業時には、作業者が、施肥シャッター140を、ねじ143の先端部143aが後側壁部212の内面に当たるまで、後側に押し込むことにより、長孔141が枠体210の開口部213と重なるので、開口部213が完全に開放されるので、肥料を繰出ロール側に自由に落下させることが出来る。このときの施肥シャッター140の位置を開放位置と呼ぶ。
しかも、施肥シャッター140の上面にねじ143の先端部143aが突き出していることにより、施肥シャッター140を前後方向、特に後方向にスライドさせる際に、ねじ143の先端部143aが施肥シャッター140の上面に溜まっている肥料を撹拌するので、いわゆるブリッジ現象(施肥シャッター140の上面側で固まった肥料が施肥ホッパ160の肥料排出口部118の内壁に張り付き、肥料排出口部118の内径を小さくする現象)の発生が防止され、肥料の供給量がより一層安定し、苗の生育が良好になる。
また、ねじ143の先端部143aを施肥シャッター140のスライド範囲を規制するストッパーとして設けたことにより、施肥シャッター140の開放位置と閉鎖位置が作業者に明確に分かるので、肥料が十分な量供給されず、肥料不足により苗が生育不良を起こすことが防止される。
また、下部に施肥シャッター機構200が固定された施肥ホッパ160を繰出ケース120から外す際に、施肥シャッター140を閉鎖位置に確実にスライドさせることが出来るので、施肥ホッパ160の隙間から肥料が落ちることを防止出来、肥料の掃除が不要となる。
尚、本実施の形態の繰出ロール113は、本発明の繰出装置の一例にあたり、本実施の形態のねじ143の先端部143aは、本発明の突起状部材の一例にあたる。
尚、上記実施の形態では、本発明の突起状部材の一例としてねじ143の先端部143aを用いた場合について説明したが、これに限らず例えば、金属製の板部材を用いて施肥シャッター140を形成し、しぼり加工により突起部を設けた構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、本発明の突起状部材の一例としてねじ143の先端部143aを用いた場合について説明したが、これに限らず例えば、図5に示す通り、施肥シャッター140の閉鎖部142の上面側に複数のリブ144を長辺方向に沿って設けた構成であっても良い。これら各リブ144の前側の先端部144aは、傾斜面を有している。また、枠体210の後側壁部212には、後開口部212aから上方に向けて、リブ144の位置に対応して形成された切り欠き部212bが設けられている。
図5は、図4(b)に示した施肥シャッター機構200の変形例を示す斜視図である。
尚、図5において、図4(a)、図4(b)で説明した構成と同じものには同じ符号を付してその説明を省略する。
これにより、施肥シャッター140を開放位置にスライドさせることで、各リブ144が占めていた分の体積が減ることでブリッジ(施肥シャッター140の上面側で固まった肥料が施肥ホッパ160の肥料排出口部118の内壁に張り付いたもの)が崩れる。
また、各リブ144の前側の先端部144aは傾斜面を有していることにより、肥料が施肥シャッター140の上面に堆積したときに肥料から受ける圧力を部分的に異ならせることができるので、施肥シャッター140が肥料に食い込んだ状態になって摺動させにくくなることが防止され、施肥シャッター140の開閉作業が容易に行える。
即ち、施肥シャッター140を閉じると、肥料が上面側に積もる。このとき、リブ144が仮に全域に亘って同じ上下長さだとすると、積もった肥料から受ける圧力がリブ144に略均一にかかり、肥料の量が多く圧力が高くなると、リブ144が肥料側に食い込んで(肥料が重石となって)摺動しにくくなる。そこで、上述した通り、リブ144の前側の先端部144aに傾斜面を付けることで、積もった肥料の圧力が部分的に異なるので、施肥シャッター140が摺動しやすくなる。
また、図5で説明したリブ144の上面144bを鋸歯状に形成することで(図6参照)、集まってブリッジ化している肥料を切り崩し易いこと以外に、圧力差を複数個所に生じさせることが出来るので、施肥シャッター140のスライド時に、ブリッジをより一層崩れ易くすることが可能となる。
図6は、図5で説明したリブ144の上面144bを鋸歯状に形成した構成例を示す概略断面図である。
また、上記実施の形態では、ねじ143の先端部143aで施肥シャッター140の上面に溜まっている肥料を撹拌することでブリッジを崩す場合について説明したが、これに限らず例えば、図7に示す通り、枠体210の後側壁部212の一部を、回動軸220を軸心とする回動壁221とし、スリット状の後開口部212aの天井部分212cの上端縁部には、その先端側が回動壁221の下端部と連結された蛇腹状で伸縮自在のゴム製の閉塞壁222が形成されている。
尚、本実施の形態の回動軸220は、本発明の回動部材の一例にあたる。
図7は、本発明の実施の形態1における図4(a)に示した施肥シャッター機構200の変形例を示す概略断面図である。
これにより、施肥シャッター140を開放位置にスライドさせたとき、施肥シャッター140に取り付けられたストッパー145が回動壁221を後方に押して、ゴム製の閉塞壁222が少しだけ後方に回動するので、施肥シャッター140の上面の内壁面側の体積が拡張されることでブリッジを崩すことが可能となる。
また、施肥シャッター140の位置は、施肥ホッパ160の下部の左右の傾斜部161L、161R(図3参照)の終端部としても良い。これにより、施肥シャッター140の上方の空間の断面積が異なるため、走行中に施肥ホッパ160が左右に揺れることで、内部の肥料も揺られて撹拌され、ブリッジが生じ難い。
また、上記実施の形態では、施肥シャッター140は水平に配置する場合について説明したが、これに限らず例えば、図8に示す通り、前方から後方に向けて下り勾配で配置しても良いし、その逆の勾配で配置しても良い。これにより、ブリッジが生じ難い。図8は、本実施の形態1における図4(a)に示した施肥シャッター機構の変形例を示す概略断面図である。
また、上記の勾配をつけて施肥シャッター140を配置する場合であって、更に、施肥シャッター140を施肥ホッパ160の下部のストレート部(図3の肥料排出口部118参照)ではなく、それより上方の傾斜面に設ける構成でも良い。これにより、より一層ブリッジが生じ難くなる。
次に、蓋部材310をスライド移動させて開口部124a1の開閉切替を行う開閉切替機構300について、図9(a)〜図11(c)を用いて更に説明する。
図9(a)は、施肥装置5を走行車体の前側から後方を見たときの概略正面図であり、図9(b)は、開閉切替機構300の概略正面図である。
尚、図9(a)〜図11(c)では、8条植えの場合について示した。
図9(a)、図9(b)に示す通り、開閉切替機構300は、駆動用モータ320と、駆動用モータ320から駆動力を得て回動する円形の歯車であるピニオン330と、ピニオン330の回動により、ピニオン330の歯と噛み合って左右水平方向にスライド移動するラック340とを備えており、ラック340には、所定間隔で第1蓋部材310a〜第4蓋部材310dが固定されている。即ち、第1蓋部材310a〜第4蓋部材310dは、各条毎に配置された施肥筒124の一端部124aの開口部124a1を同時に一つおきに閉鎖する構成である。また、ラック340の移動量(又は位置)は、ポテンショメータ342(図10参照)で検出する構成であるので、第1蓋部材310a〜第4蓋部材310dの位置は正確に制御可能である。尚、ポテンショメータ342に代えて、回転センサやリミットスイッチを設けても良い。
また、ラック340は送風ダクト125の内部において、複数のラック軸受け341によりスライド可能に支持されている。
また、図10において、開閉切替機構300の駆動用モータ320を中心に拡大した一部拡大概略正面図を示した。
尚、図10では、第1蓋部材310aは二点鎖線で示した。
また、ハンドル34の操作を検知するハンドルポテンショメータ350(図1参照)を備えている。
尚、本実施の形態の施肥筒124と施肥ホース162は、本発明の肥料案内部材の一例にあたり、本実施の形態の送風機129は、本発明の送風装置の一例にあたる。また、本実施の形態の駆動用モータ320とピニオン330とラック340は、本発明の開閉切替部材の一例にあたり、本実施の形態のハンドル34は、本発明の操舵部材の一例にあたる。また、本実施の形態のハンドルポテンショメータ350は、本発明の操舵検知部材の一例にあたる。
以上の構成のもとで、次に、図11(a)〜図11(c)を用いて、開閉切替機構300の動作を説明する。
図11(a)〜図11(c)は、開閉切替機構300の動作を説明する概略正面図である。
尚、図11(a)に示した開口部位置P1〜P8は、各条に設けられた施肥筒124における開口部124a1の左右方向のそれぞれの位置を示す模式図である。この模式図は、図11(b)、図11(c)にも同様に適用される。
即ち、駆動用モータ320を、ハンドルポテンショメータ350が検知するハンドル34の旋回方向に基づいて駆動させることにより、奇数条の施肥筒124と偶数条の施肥筒124に対応する各開口部124a1を第1蓋部材310a〜第4蓋部材310dにより同時に交互に開閉するものである。
具体的には、圃場で前進しながら植付作業をしているときは、制御部(図示省略)は、ハンドルポテンショメータ350からのハンドル34の位置の検出結果に基づいて、図11(b)に示す通り、第1蓋部材310aの位置が、第1条の開口部位置P1と第2条の開口部位置P2との間に位置し、第2蓋部材310bの位置が、第3条の開口部位置P3と第4条の開口部位置P4との間に位置し、第3蓋部材310cの位置が、第5条の開口部位置P5と第6条の開口部位置P6との間に位置し、第4蓋部材310dの位置が、第7条の開口部位置P7と第8条の開口部位置P8との間に位置するべく、駆動用モータ320を回動させる。そのときのラック340の移動量はポテンショメータ342で検知され、上記の所定位置に位置するべく制御される。尚、ここでは、図11(b)に示す第1蓋部材310a〜第4蓋部材310dの位置を「作業位置」と呼ぶ。
また、圃場で前進しながら植付作業して圃場の端まで来て、Uターンする為に、例えば、ハンドル34を左方向に旋回させた場合は、その旋回方向をハンドルポテンショメータ350が検知し、その検知結果に基づいて、制御部(図示省略)が駆動用モータ320を駆動させることにより、図11(b)を基準として、ラック340が左方向(図11(a)の矢印L方向参照)に所定距離だけ移動する。このときのラック340の移動量はポテンショメータ342で検知され、所定距離になる様に制御される。
これにより、図11(a)に示す通り、第1蓋部材310a〜第4蓋部材310dは、図11(b)に示す「作業位置」から矢印L方向に所定距離だけ移動することで、第1蓋部材310a〜第4蓋部材310dのそれぞれが、同時に、第2条の開口部位置P2に位置し、第4条の開口部位置P4に位置し、第6条の開口部位置P6に位置し、第8条の開口部位置P8に位置して、偶数条の開口部を閉鎖する。
その後、送風機129を駆動させて送風ダクト125から奇数条の施肥筒124に向けて強力な搬送風を送り込む。
これにより、肥料の供給を行わない旋回走行中に強力な搬送風を奇数条の施肥筒124、及び施肥ホース162に向けて送り込むことが出来るので、搬送経路の内部に溜まりかけている肥料を効果的に排出し、施肥筒124や施肥ホース162の詰まりによる施肥量の減少が防止される。
また、圃場で前進しながら植付作業して圃場の端まで来て、Uターンする為に、例えば、ハンドル34を右方向に旋回させた場合は、その旋回方向をハンドルポテンショメータ350が検知し、その検知結果に基づいて、制御部(図示省略)が駆動用モータ320を駆動させることにより、図11(b)を基準として、ラック340が右方向(図11(c)の矢印R方向参照)に所定距離だけ移動する。このときのラック340の移動量はポテンショメータ342で検知され、所定距離になる様に制御される。
これにより、図11(c)に示す通り、第1蓋部材310a〜第4蓋部材310dは、図11(b)に示す「作業位置」から矢印R方向に所定距離だけ移動することで、第1蓋部材310a〜第4蓋部材310dのそれぞれが、同時に、第1条の開口部位置P1に位置し、第3条の開口部位置P3に位置し、第5条の開口部位置P5に位置し、第7条の開口部位置P7に位置して、奇数条の開口部を閉鎖する。
その後、送風機129を駆動させて送風ダクト125から偶数条の施肥筒124に向けて強力な搬送風を送り込む。
これにより、肥料の供給を行わない旋回走行中に強力な搬送風を偶数条の施肥筒124、及び施肥ホース162に向けて送り込むことが出来るので、搬送経路の内部に溜まりかけている肥料を効果的に排出し、施肥筒124や施肥ホース162の詰まりによる施肥量の減少が防止される。
尚、上記実施の形態では、本発明の開閉切替部材の一例として、駆動用モータ320とピニオン330とラック340を用いた場合について説明したが、これに限らず例えば、駆動用モータ320に代えてソレノイド(図示省略)を用い、第1蓋部材310a〜第4蓋部材310dを固定したラック340に代えて、一端部がソレノイドの駆動用シャフト(図示省略)に連結されて、第1蓋部材310a〜第4蓋部材310dを所定間隔で固定した棒状部材(図示省略)を用いた構成でも良い。
(実施の形態2)
次に、図12〜図15を参照しながら、本発明に関連する発明の一実施の形態の乗用田植機について説明する。
図12は、本実施の形態2における第2の乗用田植機に設けられた整地ロータ機構とその周辺の構成部品を示した概略平面図である。
本実施の形態2の第2の乗用田植機の構成は、後述する整地ロータ機構を除き、上記実施の形態1で説明した乗用田植機1と基本的に同じである。同じ構成には同じ符号を付してその説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
図12に示す通り、本実施の形態2の第2の乗用田植機は、植付装置52の下部には、中央にセンターフロート53aと、その左右両側にサイドフロート53b、53cがそれぞれ設けられており、これらの前方には、センターロータユニット56a、左右両側のサイドロータユニット56b、56cがそれぞれ設けられていることは、上記実施の形態1で説明した通りである。
また、図12に示す通り、左後輪ギヤケース18から自在継ぎ手54により伝達された動力は、左側のサイドロータユニット56bの第1駆動軸部156bに伝達され、そこから、第1チェーンケース57a内を経て、センターロータユニット56aの第2駆動軸部156aに伝達され、そこから更に第2チェーンケース57b内を経て、右側のサイドロータユニット56cの第3駆動軸部156cに伝達される構成となっている。
また、センターロータユニット56aの第2駆動軸部156aは左右一対のチェーンケース57a、57bを介して支持されているだけであるため、これらチェーンケース57a、57bの補強のために、左右一対のチェーンケース57a、57bを橋渡しする補強用角柱部材900が設けられている。
また、各駆動軸部156a〜156cには、圃場面に接触して凹凸を均す、複数の回転ブレード910が固定されている。
次に、図13を用いて、左側のサイドロータユニット56bと、右側のサイドロータユニット56cとに固定された回転ブレード910について更に説明する。
図13は、左側のサイドロータユニット56bの概略平面図である。尚、図13は、左側のサイドロータユニット56bのみを図示しているが、右側のサイドロータユニット56cについても、自在継ぎ手54が無い点などを除き概ね同じ構成である。
図13に示す通り、左側のサイドロータユニット56bの第1駆動軸部156bは、ロータ支持部256により回転自在に支持されている。
尚、右側のサイドロータユニット56cの第3駆動軸部156cについてもこれと同様の構成である。
本実施の形態の回転ブレード910は、図13に示す通り、ロータ支持部256の両側に近接して配置されている。
これにより、ロータ支持部256の両側も圃場面の凹凸を均すことが出来るので、整地されない範囲を従来に比べて減少させることができ、苗の植付深さの安定が図られ、整地性能の向上が図れる。
次に、上述した整地ロータ機構とは、支持フレーム機構400が異なる第2の整地ロータ機構について、図14(a)、図14(b)を用いて説明する。
図14(a)は、第2の整地ロータ機構を走行車体の前側から後方を見たときの概略正面図であり、図14(b)は、第2の整地ロータ機構の概略平面図である。
尚、図14(a)、図14(b)において、図12に示した整地ロータ機構と基本的に同じ構成については、同じ符号を付し、その説明を省略する。
また、図14(a)では、センターロータユニット56aと左右一対のチェーンケース57a、57b等の図示を省略したが、補強用角柱部材900は図示した。
図14(a)、図14(b)に示す支持フレーム機構400は、左側のサイドロータユニット56bの第1駆動軸部156bと、右側のサイドロータユニット56cの第3駆動軸部156cとを、それぞれの両端側で支持する構成である。
即ち、支持フレーム機構400は、図14(a)、図14(b)に示す通り、左側のサイドロータユニット56bの第1駆動軸部156bを支持するべく左側のサイドロータユニット56bの後方に位置する左支持フレーム410Lと、右側のサイドロータユニット56cの第3駆動軸部156cを支持するべく右側のサイドロータユニット56cの後方に位置する右支持フレーム410Rと、これら両側の支持フレーム410L、410Rを連結する中央支持フレーム410Cとにより構成されている。
尚、左支持フレーム410Lは、その左右両端側に設けられ前方水平方向に突き出したサイド支持フレーム410fにより、左側のサイドロータユニット56bの第1駆動軸部156bの両端部を回動可能に支持している。
また、これと同様に、右支持フレーム410Rは、その左右両端側に設けられ前方水平方向に突き出したサイド支持フレーム410fにより、右側のサイドロータユニット56cの第3駆動軸部156cの両端部を回動可能に支持している。
本構成例では、図14(a)に示す通り、中央支持フレーム410Cの高さは、センターロータユニット56aの後方に配置された補強用角柱部材900の高さにより高い位置にくるべく構成されている。
これにより、走行車体の前から後方を見たとき、中央支持フレーム410Cの位置が、補強用角柱部材900の位置と、高さ方向において重ならないので、中央支持フレーム410Cにおける泥抜けが良好となり、泥が詰まってセンターロータユニット56a、左右のサイドロータユニット56b,56cの回転が妨げられ、整地性が低下することが防止されると共に、負荷により耐久性が低下することが防止される。
尚、図14(a)、図14(b)で示した構成例では、左右の支持フレーム410L、4140Rのそれぞれに設けられたサイド支持フレーム410fが、左右のサイドロータユニット56b、56cの後方から前方に向けて水平に突き出した場合について説明したが、これに限らず例えば、左右の支持フレーム410L、4140Rを左右のサイドロータユニット56b、56cの上方に設けることにより、サイド支持フレーム410fを左右のサイドロータユニット56b、56cの上方から下方に向けて突き出した構成としても良い。
これにより、両側の支持フレーム410L、410Rにおける泥抜けが良好となる。
ここで、図15は、左側のサイドロータユニット56bを左側から見た概略側面図である。
次に、手動タイプの、予備苗を載せる苗レール500に設けられた取っ手510について、図16(a)、図16(b)を用いて説明する。
図16(a)は、苗レール500の概略側面図であり、図16(b)は、苗レール500を展開したときの概略側面図である。
苗レール500の上段の座席31側には、図16(a)に示す通り、展開時、及び折り畳み時に作業者が手で握る取っ手510が回動軸510aを中心に180度回動可能に取り付けられている。
これにより、座席31に座っている作業者が、苗レール500の上段を展開させるとき、図16(b)に示す通り、取っ手510を180度後方に回動させて、その取っ手510を手で握って前方へ展開させ易い。
また、苗レール500を折り畳むときも、取っ手510が後方に突き出しているので、作業者の手が届き易い。
次に、8条植え乗用田植機のHST(油圧式無段変速装置)のシリンダブロックに関して、図17(a)〜図21を用いて説明する。
従来の8条植え乗用田植機のHSTでは、シリンダブロック600の回転を制御する機構はなく、ピストン610に直接回転のバタつきが作用するため、シリンダブロック600の焼き付きを防止するためガス軟窒化処理が必要であった(図17(b)参照)。そのため、焼結素材のシリンダブロック600にガス軟窒化処理を実施して耐焼き付き性を向上させているが、処理に手間がかかり、コストアップとなっていた。
そこで、本構成例では、図17(a)に示す通り、シリンダブロック600の端面601から圧縮バネ620のバネ力でシリンダブロック600の回転を制御し、ピストン610のバタつきを防止して耐焼き付き性を向上させることで、ガス軟窒化処理を廃止することを目的としている。
図17(a)に示す通り、圧縮バネ620とワッシャ630とC型トメワ640の追加のみで実現可能であり、従来の構成(図17(b)参照)から大きな変更なく実施することが可能である。
図17(a)は、本構成例のシリンダブロック600を説明するための一部断面概略側面図である。また、図17(b)は、従来のシリンダブロック600を説明するための一部断面概略側面図である。
これにより、簡単な構成で、シリンダブロック600の端面601からバネ力でシリンダブロック600の回転を制御することが出来、ピストン610に直接回転のバタつきが伝わらなくなるので、ガス軟窒化処理を廃止することが出来て、コストダウンが実現出来る。
また、シリンダブロック600の回転を制御することでHST性能の向上(脈動の軽減、騒音低下等)も期待出来る。
次に、図17(a)で示したシリンダブロック600の改善例を、図18を用いて説明する。
図18は、図17(a)で示したシリンダブロック600の改善例を説明するための一部断面概略側面図である。
図17(a)で示したシリンダブロック600の構成では、圧縮バネ620を設置するスペースが狭く、圧縮バネ620では適正なバネ特性を確保出来ない場合がある。
そこで、図18に示す本構成例では、圧縮バネ620に代えて皿バネ621を使用することにより、限られたスペースでも適正なバネ特性が得られることを目的としている。
これにより、皿バネ621を使用することで、狭いスペースでも適正なバネ特性でシリンダブロック600の回転を制御出来る。
次に、図17(a)で示したシリンダブロック600の改善例を、図19を用いて説明する。
図19は、図17(a)で示したシリンダブロック600の改善例を説明するための一部断面概略側面図である。
図17(a)で示したシリンダブロック600の構成では、圧縮バネ620を設置するスペースが狭く、圧縮バネ620では適正なバネ特性を確保出来ない場合がある。
そこで、図19に示す本構成例では、圧縮バネ620に代えてウェーブスプリング622を使用することにより、適正なバネ特性が得られることを目的としている。ここで、ウェーブスプリング622とは、板状鋼線を螺旋状に巻きながら波形状を加えて加工されるバネであって、通常の圧縮バネと比較して最大50%高さを縮小出来るものである。
これにより、ウェーブスプリング622を使用することで、最大50%スペースを縮小出来、適正なバネ特性でシリンダブロック600の回転を制御出来る。
次に、図17(a)、図18、及び図19で示したシリンダブロック600の改善例を、図20を用いて説明する。
図20は、図17(a)、図18、及び図19で示したシリンダブロック600の改善例を説明するための一部断面概略側面図である。
図17(a)、図18、及び図19で示したシリンダブロック600の構成では、焼結シリンダブロック600の素材端面601に直接バネ(符号620、621、622参照)を設定しているが、シリンダブロック600の摺動面602(図17(a)〜図19参照)と、端面601との平行度の精度が出ていない場合、シリンダブロック600を斜めにおさえることになり、かえってシリンダブロック600の回転を不安定にする可能性がある。
そこで、図20に示す構成例では、バネを設置する面にザグリ形状部601aを加工で設けて、摺動面602との平行度の精度を確保することを目的としている。
これにより、バネを設置する面にザグリ形状部601aを加工で設けて、摺動面602との平行度の精度を確保することで、ザグリ形状部付きシリンダブロック600aの回転を確実に制御出来る。
次に、図17(a)で示したシリンダブロック600の改善例を、図21を用いて説明する。
図21は、図17(a)で示したシリンダブロック600の改善例を説明するための一部断面概略側面図である。
尚、上記構成例で説明したものと同じ構成については、図21においても同じ符号を付し、その説明を省略する。
図17(a)、図17(b)で示したシリンダブロック600の構成では、シャフト650のスプライン651は、シリンダブロック600の端面601側にしか形成されておらず、摺動面602側には、シャフト650からシリンダブロック600の回転を規制する構成は無かった。
そこで、図21に示す構成例では、改良型シャフト650aにおいて、シリンダブロック600の摺動面602側にも小さな摺動面側スプライン652を設け、シリンダブロック600の回転を、端面601側と摺動面602側の両方で規制することにより、より一層回転を安定化させ、耐焼き付き性を更に向上させることを目的としている。
これにより、端面601側のみならず、摺動面602側でもスプラインを設けて、シリンダブロック600の回転を規制することが出来、より一層回転を安定化させ、耐焼き付き性を更に向上させることが出来る。
尚、上記実施の形態では、本発明の苗移植機の一例として8条型の乗用田植機を構成した場合について説明した。しかしこれに限らず例えば、4条植え或いは6条植えの構成であっても良く、条数に限定されない。
また、移植対象の苗は、稲の苗に限らず、苗移植装置で自動植付可能であれば、野菜や果物等いかなる苗であっても良い。