JP5045557B2 - 走行車両 - Google Patents

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Description

本発明は、作業車両に苗植え付け装置などの作業装置を連結した乗用型作業機などの走行車両に関するものである。
作業車両の進行方向左右に配置される車輪を操向ハンドルの操作で、該ハンドルの操作に対応した車輪のサイドクラッチやサイドブレーキなどを入切して旋回させる。
特許文献1(特開2004−196000号公報)には、左右の後輪への伝動を各別に断続するサイドクラッチと、前輪が直進姿勢から設定角度以上に操向されると旋回内側のサイドクラッチを切り操作する機械式の自動操向機構を備えており、前輪が直進姿勢から設定角度以上に操向されている状態が検出されると、旋回内側の後輪に対するサイドクラッチをアクチュエータによって自動的かつ間欠的に入り切り制御する構成が開示されている。
特開2004−196000号公報
前記特許文献1に開示された乗用型作業機では、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、旋回内側の後輪による圃場の荒らしを軽減できるようになる。しかし、特許文献1に開示された6条植え用の乗用型田植機に代えて8条植え用の乗用型田植機を用いると、機体の横幅が大きいので田植機の旋回半径が大きくなり、旋回の程度を強めたり緩めたりする必要があるが、前記特許文献1に開示された旋回連動制御装置を適用しても十分旋回できずに前回の植付条に一部重なった状態で苗の植え付けをするおそれがあった。
そこで本発明の課題は、多条植えの乗用型作業機が、たとえ湿田走行中であっても、前進の場合は所望の走行経路で旋回が可能となるとともに、後進の場合については、安定して後進旋回することができる走行車両を提供することである。
本発明の上記課題は次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、走行車体と、該走行車体の操縦席に設けた操向方向を決める操向手段と、該操向手段の操作に連動して進行方向に向かって左右に設けられた走行推進体の向きを変更できるステアリング機構と、該ステアリング機構に連動して旋回内側の走行推進体の駆動を断続的に入/切する旋回制御を実行する旋回連動機構と、走行推進体の旋回外側の伝動軸回転数検出手段と、走行推進体の旋回内側の伝動軸回転数検出手段と、走行車体の旋回時において、旋回内側の走行推進体の駆動を旋回連動機構により断続的に入/切する周期を、旋回外側の走行推進体の伝動軸回転数検出手段により検出される回転数に応じて変更する制御装置を備えた走行車両において、上記走行車体には、その前後進の方向を検出する前後進検出手段を設け、この前後進検出手段の後進検出信号を条件として上記制御装置により、走行車体の旋回時において、旋回内側の走行推進体の駆動を断続的に入/切する旋回制御を実行しない構成としたことを特徴とする。
請求項1記載の発明によれば、8条植付機等の多条植えの乗用型作業機が、たとえ湿田走行中であっても、前進の場合は所望の走行経路で旋回が可能となるとともに、後進旋回の場合については、連続する一定の駆動力により安定して後進旋回することができる。
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び図2は本発明を用いた一実施例である粉粒体繰出し装置として施肥装置を装着した乗用型田植機の側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧式無段変速装置23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
苗植付部4は8条植の構成で、フレームを兼ねる苗植付伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給すると苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a、…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ(図示せず)等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にミドルフロート57とサイドフロート56がそれぞれ設けられている。これらフロート55〜57を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55〜57が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植付けられる。各フロート55〜57は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…でフロート55〜57の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)、…まで導き、施肥ガイド、…の前側に設けた作溝体(図示せず)、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62、…に吹き込まれ、施肥ホース62、…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
苗植付部4には整地装置の一例であるロータ27(27a,27b)が取り付けられている。また、苗載台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
ロータ27は、次のような支持構造に支持されている。すなわち苗載台51の前記支持枠体65の両側辺部材65bに上端を回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した支持アーム67と該支持アーム67に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム68が設けられ、該ロータ支持フレーム68の下端にはロータ27(サイドロータ27aとセンタロータ27b)の駆動軸70(70a,70b)が取り付けられている。また該ロータ支持フレーム68の下端部近くは苗植付伝動ケース50に回動自在に取り付けられた連結部材71に連結している。
フロート55〜57との配置位置の関係でセンタフロート55の前方にあるロータ27bはサイドフロート56とミドルフロート57の前方にある各ロータ27aより前方に配置されている。そのためロータ27aの駆動軸70aへの動力は後輪11のギアケース18内のギアから伝達され、ロータ27bの駆動軸70bへは両方のロータ27a,27aの駆動軸70a,70aの車体内側の端部からそれぞれ動力が伝達される。
また、ロータ27bは梁部材66に上端部が支持された一対のリンク部材76,77によりスプリング78を介して吊り下げられている。
また、ロータ上下位置調節レバー81の下端部には折曲片82が固着されており、該折曲片82は支持枠体65に回動自在に支持されている。そして前記レバー81が車両の左右方向に回動操作されると、支持枠体65の両側辺部材65bに回動自在に支持された梁部材66に固着支持された突出部66aの近くを折曲片82が上下に回動する。折曲片82は前記突出部66aの下方を係止しているので、該突出部66aがレバー81の機体右方向の回動で、上向きに梁部材66を中心として回動する。該突出部66aの前記回動により第一リンク部材76の梁部材66との連結部と反対側の端部も梁部材66を中心として上向きに回動する。この第一リンク部材76の上方への回動により第二リンク部材77とスプリング78を介してロータ27bを上方に上げることができる。ロータ27bを上方に移動させると、駆動軸70bと駆動軸70aを介してロータ27aも同時に上方に移動する。
なお、ロータ上下位置調節レバー81は車体2のほぼ中央部に設けているので、ロータ27a,27bの上下動を行う場合に左右のバランスを取りやすい。
また、苗植付部4を圃場に下げたときに、苗植付部4を水平位置に戻すケーブル45をセンタロータ27bのリンク部材76,77とスプリング78等からなる引上げスプリング部と油圧ピストン46と連動させた。
このように、センタロータ27bのスプリング78等によるスイング機構の他にケーブル45を設けることで苗植付部4を上昇位置から下降させるごとにセンタロータ27bを水平位置に戻すことができ、センタロータ27bの保持位置を安定化させることができる。
エンジン20の回転動力は、ベルト伝動装置21などを介して油圧式変速装置23に伝えられ、油圧式変速装置23からの出力はベルト(図示せず)を介してミッションケース12の図示しない入力軸に伝えられる。
苗植付部4は、走行車体2のメインフレーム15に昇降リンク装置3で昇降自在に装着されているが、その昇降させる構成と苗植付部4の構成について説明する。先ず、走行車体2に基部が回動自在に設けられた一般的な油圧シリンダー46(図1)のピストン上端部を昇降リンク装置3に連結し、走行車体2に設けた油圧ポンプ(図示せず)により油圧シリンダー46に圧油を供給・排出して、油圧シリンダー46のピストンを伸進・縮退させて昇降リンク装置3に連結した苗植付部4が上下動されるように構成されている。
(サイドクラッチ作動機構)
図3の平面図には、図1の乗用型田植機の操向操作に連動する後輪11のサイドクラッチ作動機構図を示す。
ハンドル34で旋回動作させる際に、ハンドル34の操作により作動するピットマンアーム175に出力軸174を介して作動ローラ177を連動させ、該作動ローラ177に従動体179を連動させて左右の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ操作アーム86Iを作動させるクラッチ連動用の左右ロッド180が設けられているが、該クラッチ連動用左右ロッド180とサイドクラッチ操作アーム86Iとの間は左右のプルシリンダ217で連結した構成となっている。
また、プルシリンダ217を作動させるためのクラッチ制御用の電磁バルブ221を備えた油圧回路を図12に示す。左右のサイドクラッチ操作アーム86Iは、前記左右のプルシリンダ217(図3)(旋回時にシリンダ217を引き、旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチを切る)作動制御用のサイドクラッチ制御用電磁バルブ221を備えている上記構成を用いて、ハンドル34を一定角度回転させた後に、一つは継続して前記サイドクラッチを切る制御(A)ともう一つは一定周期で前記サイドクラッチを接続/切断する制御(B)に切替え選択可能にした。制御(A)は標準用であり、制御(B)は湿田用である。
図3に示す部材174,175,177,179,180、217,86Iなどを旋回連繋機構Aと言うことにする。
上記した実施例では、ステアリングハンドル34の所定角以上の操作により、旋回内側の後輪11のサイドクラッチ(図示せず)を切る例を示したが、サイドクラッチスイッチを作業モニタ装置に備えた操作盤33に設けておき、手動でサイドクラッチの「切」が可能な構成にしても良い。または、サイドクラッチペダルにより、手動でサイドクラッチの「切」が可能な構成にしても良い。
(苗植付部制御)
次に、後進時に苗植付部4を自動的に上昇させる制御構成について説明する。先ず、チェンジレバー90(前後進レバー)を後進速に操作すると、チェンジレバー90の基部に設けた接当片が接当してONになるバックリフトスイッチ191が設けられており、制御装置163(図4)の苗植付装置上昇手段により電磁油圧バルブ(昇降バルブ)161を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成されている。
このように、チェンジレバー90を後進速に操作すると、自動的に苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成しておくと、圃場の畦際で機体を旋回させるため等に機体を畦に向かって後進させる時に、自動的に苗植付部4は最大位置まで上昇しているので、苗植付部4が畦に衝突して破損することが未然に防止でき作業性が良い。
また、前記ステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転させた時に図4に示すオートリフトスイッチ183がONになると、制御装置163の苗植付部上昇手段により電磁油圧バルブ161を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成されている。
このように、畦際で機体を旋回させるためにステアリングハンドル34を左右何れかに最大限まで回転させると、オートリフトスイッチ183がONになり、自動的に苗植付部4は最大位置まで上昇するので、機体旋回時に苗植付部4を上昇させる操作が不要となり、能率良く機体旋回が行えて作業性が良い。
一方、操作盤33には、苗植付部4の自動上昇を行わせる状態と行わせない状態とに切替える自動リフト切替スイッチ192(図4)が設けられており、自動リフト切替スイッチ192を自動にしていると、上記のようにバックリフトスイッチ191がONになるかオートリフトスイッチ183がONになると自動的に苗植付部4は制御装置163の苗植付装置上昇手段により自動上昇される。そして、自動リフト切替スイッチ192をOFFにしていると、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付部4は自動上昇されない。
このように、一つの自動リフト切替スイッチ192で、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付部4は自動上昇されない状態にすることができるので、バックリフトとオートリフトの各々を入り切りするスイッチを別々に設けた構成よりも簡潔な構成となり、一つのスイッチで両者の状態切替えが行えるので、操作ミスが少なくなり作業性が良い。
なお、自動リフト切替スイッチ192をOFFにして、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付部4が自動上昇しない状態にしておくと、機体を後進で納屋等にしまう時にチェンジレバー90を後進速に操作しても苗植付部4が自動上昇しないので、苗植付部4を下げたまま後進することができ、納屋の入口上部や納屋内の他の部材に苗植付部4をぶつけてしまうような事態が回避できる。また、扇型やひょうたん型等の変形圃場で畦際に沿って周り植えをする場合に、曲がった畦に沿ってステアリングハンドル34を回しながら植付け作業を行うが、この時に、自動リフト切替スイッチ192を自動位置にしていると、ステアリングハンドル34を左右何れかに200度以上回転すると自動的に苗植付部4が上昇してしまい植付け作業が行えないが、自動リフト切替スイッチ192をOFFにしていると、ステアリングハンドル34を左右何れかに200度以上回転しても苗植付部4は上昇しないので植付け作業が行え、変形圃場でも適切に苗植付け作業が行える。
また、上記構成からなる田植機1では、本実施例の制御装置163は旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)(図示せず)の回転数の検出に基づいて、旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行わせる旋回連動制御ができる。この制御モードを自動植付開始モードということがあるが、特に、旋回内側の後輪11が所定角度以上操舵されているときに、前記旋回連動制御ができる。
旋回後の苗の植始め位置の設定を後輪の回転数に基づいて自動的に行う制御モード(自動植付開始モード)の設定ができ、この制御モード設定は旋回開始タイミングをハンドル34の旋回角度(切れ角)センサ193で検知し、該旋回角度センサ193で検知した旋回開始時からの走行距離を車輪(旋回内側の後輪11の伝動軸)の回転数センサ205の検出値に基づき測定し、前記走行距離が所定値に達すると苗植付レバー19(図2)の操作をしなくても、自動的に苗の植え付けを開始する自動植付開始モードである。
(制御動作)
この制御の考え方を図5と図6に示す。
すなわち、ステアリングハンドル34を切り、旋回内側の後輪11のサイドクラッチが切れた状態で、左右ドライブシャフトの回転数を検出し、旋回時の内側の後輪11の伝動軸回転数が設定値N1を超えると苗植付部4を下降させる。その後、後輪11の伝動軸回転数が設定値N2と苗植付け具126の作動が「切り」状態に入って(=苗植付装置52が上げ状態に移って)からステアリングハンドル34の切り操作開始までの後輪11の伝動軸の回転数nの合計値以上になると植付「入り」にする機構である。
(旋回連動制御)
上記旋回連動制御のフローを図7に示す。
まず、左右の後輪11,11の伝動軸の回転数を伝動軸回転数センサ205で検出し、また設定値N1(旋回開始から機体90°旋回までの旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)回転信号設定値)、N2(機体90°旋回から植付クラッチ「入り」までの前記ドライブシャフト回転信号設定値)、θ1((直進操作時のハンドル切り設定角度の)下限値)、θ2((直進操作時のハンドル切り設定角度の)上限値)をセットする。
次いで、圃場の硬軟や水深、耕盤深さ等の圃場条件の相違に対応するために、前記回転数N1、N2及びハンドル切り角度θ1、θ2の各設定値を調節する設定ダイヤル206a〜208b(図4)により、補正値n0を設定する。
苗植付部4の苗植付け具126が苗の植え付け状態にあるか無いかをフィンガーレバー166の操作に伴う制御装置163の状態で検出して、植付「入」から植付「切」になったとき、苗植付け具126の作動が「入り」状態に入ってから苗植付け具126の作動が「切り」状態になるまでの後輪11の伝動軸の回転数nを伝動軸回転数センサ205で検出して、その値(n)を記憶しておく。次いで、ステアリングハンドル34の切り角度(操舵角度)θをステアリングハンドル34のシャフトに設けたハンドル切れ角センサ(ポテンショメータ)193(図4)で検出して直進時(θ1<θ<θ2)以外の時には左右のいずれの方向に旋回中であるかどうかを検出する。
左旋回中であると左後輪11の伝動軸の回転数を検出して、回転数n1がn1≧N1+n0になると、旋回開始から機体が90度以上旋回したことになるので苗植付部4を下げる。この苗植付部4の下降で枕地が均平化される。また、機体を90度旋回させた後には、ハンドル34の旋回度合いを緩めながら前進させ、左後輪11の左右ドライブシャフトの回転数n2がn2≧N2+n+n0になると、苗植付け具126を作動させて苗の植え付けを開始させる。
本実施例の田植機では、自動植付開始モードが設定された時にのみ自動的に旋回外側の後輪11の回転数に応じて、旋回内側の後輪11の駆動を断続的にサイドクラッチを伝動することからなるポンピングブレーキ旋回(ポンピングクラッチ旋回ともいう)を行うことができる。このようにポンピングブレーキ旋回を行うことにより、ブレーキングによる衝撃も少なく、エンジン回転や車速の影響を受けずに後輪11の旋回角度に応じたブレーキングの周期を得ることができる。前記旋回内側の後輪11のクラッチをオン/オフするポンピングブレーキ旋回において、車速が遅ければ遅い程ポンピングの周期を短く、速ければ速いほどポンピングの周期を長くすることで、オペレータに旋回時の違和感がないブレーキングを行うことができる。
例えば、車速0m/sで旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ(図示せず:クラッチ操作アーム86Iなどにより行う)の作動周期(オン/オフを含む)が0.5秒、車速0.5m/sで前記サイドクラッチ作動周期(オン/オフを含む)が1.0秒、車速1.0m/sで前記サイドクラッチ作動周期(オン/オフを含む)が1.5秒となるように一次関数的に車速に応じて旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ作動周期を変更する。
高速走行時は特に後輪11の伝動軸のクラッチをオンするときでも、オフするときでも衝撃が大きい。そこで上記のように、ポンピングブレーキによる衝撃を少なくするために、高速走行時ほどポンピングブレーキ(クラッチ操作アーム86Iなどにより行う)のオン/オフの周期を長めにする。
本実施例の8条植の田植機のように、大型の走行車両は旋回時には比較的大回りをする必要がある。しかし、旋回中に旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチを切ったままでおくと、小回りになり過ぎる。しかし、本実施例のように そこで旋回内側の後輪11の伝動軸をポンピングブレーキ制御すると、オペレータに旋回時の違和感がないブレーキングを行うことができ、オペレータの希望する適切な旋回半径で8条植の田植機に相応しい比較的大回りの旋回が可能となる。
前記旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチの接続は、図10に示すように操作盤33に設けているポンピングクラッチ調節ダイヤル210で設定された回転数(回転角度)に旋回内側の後輪11の回転数が達するまでなされる。
ポンピングクラッチ調節ダイヤル210は、後輪回転角度(=後輪11の伝動軸の回転角度)で11度〜27度の間で調整を行う。なお、前記ポンピングクラッチ調節ダイヤル210を後輪11(後輪11の伝動軸)の回転角度でなく、後輪11の伝動軸作動用のクラッチ(図示せず)の作動時間、例えば210msから510msまでの時間で設定できる構成にして、このポンピングクラッチ調節ダイヤル210で設定された時間の間、旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ(図示せず)が接続される構成としても良い。
また、路上走行などで高速走行しているときには、ポンピングクラッチ旋回を選択すると、大回り旋回になり易く、そのためむしろハンドリングに違和感があるので、路上走行などの高速走行中には、前記ポンピングクラッチ旋回は不要である。そこで、走行車両が一定車速、例えば1.0m/s以上で高速走行しているときには、クラッチのポンピングが行われないようにしている。
本実施例の田植機において、ステアリングハンドル34を回して旋回する場合に、旋回外側の後輪11の回転数(a1)に応じて旋回内側の後輪11の回転数(b1;b1<a1)を決めるように前記ポンピングクラッチ制御を行う構成としても良い。
(旋回制御)
この制御フローの具体実施例を図8に示すが、ステアリングハンドル34を回して旋回する場合に、「後進」(S1)に該当せず、かつ、ドライブシャフト回転信号カウント中(S2)であることを条件に、すなわち、前後進のチェンジレバー90等の前後進検出手段の信号により前進動作中であることを条件に、旋回を始めてから旋回外側の後輪11の回転数が所定値(a0)に達すると(この間は旋回「内」側後輪11のサイドクラッチは「切」)、前記旋回「内」側の後輪11のサイドクラッチは「入」にして、それから旋回「外」側の後輪11が所定の回転数(a1)になるまで旋回「内」側の後輪11のサイドクラッチを「入」にしておく。
一方、「後進」(S1)の場合については、常にサイドクラッチを「入」(S3)として後輪駆動力を一定に保つように制御処理を構成する。このようにポンピングクラッチ制御の適用を使い分けすることにより、前進旋回の際の違和感の少ない旋回走行を確保できるとともに、後進旋回の際に安定した旋回走行が可能となる。
また、前記旋回内側の後輪のサイドクラッチの「入」と「切」のタイミングは制御装置163が自動設定するが、図9に示すタイムチャートのように旋回内側後輪11のサイドクラッチの「切」に対応する旋回外側の後輪11の回転数(a0)と旋回内側のサイドクラッチの「入」に対応する旋回外側の後輪11の回転数(a1)をポンピングクラッチ調節ダイヤル210により手動で設定することもできる。
この様な図8のフローに示す制御を行うと湿田での作業性が従来より向上する。
また、図7に示す制御フローの設定値N1(旋回開始から機体90°旋回までの旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)回転信号設定値)、N2(機体90°旋回から植付クラッチ「入り」までの前記ドライブシャフト回転信号設定値)を小さくするほど、旋回内側の後輪11が深い圃場などにおいて深く沈み込んでいる場合など、苗の植え付け時の苗植付装置52の下降を速く行いたい場合に有効である。
後輪11が深く圃場に沈み込んでいる場合には苗植付部4を走行機体に昇降自在に連結した上リンク40と下リンク41の昇降の程度を検出する昇降リンクセンサ48で検出する。
(モード設定)
前記自動植付開始モードの設定は植始め調節ダイヤル212(図11)で行い、また前記旋回開始時からの苗の植付け始めまでの走行距離は、図11に示す植始め調節ダイヤル212を回して設定する。
前記植始め調節ダイヤル212の回転角度に応じて前記走行距離を適宜選択できる構成であるが、該ダイヤル212の前記走行距離の調節範囲より外れたダイヤル旋回角度領域(しかも自動植付開始モードに入る前のダイヤル旋回角度領域)に、車両の旋回開始時に自動的に苗植付装置4を上昇させる制御モードを選択できるオ−トリフト機能及び車両の後進時に自動的に苗植付装置4を上昇させる制御モードを選択できるバックリフト機能を兼用させている。
そして、植始め調節ダイヤル212のダイヤル回転操作でオ−トリフト機能に対応した位置に植始め調節ダイヤル212の指示部が「オートリフト」と指示された位置に至ると、当該オートリフト機能がオンになり、オートリフト制御モードが開始すると同時に前記ポンピングクラッチ制御を開始する制御モードを採用することもできる。
これは湿田での旋回走行中では、車輪10,11がスリップし易く、自動植付開始モードで苗の植え付け開始位置が予定した位置になり難いため、前記ポンピングクラッチ旋回を選定するが、このときのみ連動してポンピングクラッチ制御をすることができる。
こうしてスリップし易い条件下での車両の旋回走行を容易に行うことができるようになる。
また、自動植付開始モードが設定されていない時、例えば路上走行時には前記ポンピングクラッチ旋回をしないで、通常の旋回内側の車輪(後輪11)の伝動軸のサイドクラッチを切りながら旋回する通常の旋回モードとすることもできる。
昇降バルブ161の下げPWM(Pulse Wide Modulation)制御時の騒音の対応策として次のような構成を採用することができる。すなわち、図12に示す油圧回路図において昇降バルブ161より昇降シリンダ46側にあるチェックバルブ162のスプールの後方から出る作動油を利用して、スプールがストロークしすぎるとスプールのポートを閉める構成でダンパー効果を得るようにして昇降バルブ161の下げPWM制御時の騒音を小さくする。
現行の前記チェックバルブ162では、昇降バルブ161の下げのPWM制御時にスプールが高速にプラグ等に当たることにより騒音が発生する。個々の部品の精度などの違いにより大きな音が発生するものがあり問題となっているが、騒音が発生する箇所としてチェックバルブ162のスプールがそのストッパになっているプラグに当たる時に大きい音となることが分かったのでチェックバルブ162のスプールがプラグに当たる前にポートを閉めてダンパー効果によりプラグに当たらないようにして騒音の発生を防ぐことができた。
(畦クラッチ制御)
畦クラッチの制御系は、制御カム構成図を図13に示すように、カム231の回動によって2つのポジション間を揺動する上部配置の左右のレバー232,232と下部配置の左右のレバー233,233を設け、引き動作する側に延びる2本の上部ケーブル234,234と2本の下部ケーブル235,235を8条植付部に4機を配置した2条伝動用の電動畦クラッチにそれぞれ連結する。また、上記4系統の操作ケーブル234,235は、カム231の中心からの距離を略同等にとり、かつ、左右対称に構成する。
このように、4系統の操作ケーブル234,235をカム231の上下に振り分けて構成することにより配索を容易化することができる。
(レーキ制御)
レーキ制御については、レーキを跳ね上げ位置まで揺動可能に軸支持し、回動駆動用の電動機を設けるとともに、その昇降制御のためにレーキの前側に堆積した夾雑物を検出するセンサーを設けて自動上昇可能に構成する。植付け走行中に夾雑物が溜まったときにセンサー信号によりレーキを跳ね上げる方向に回動制御することにより、レーキを一旦上昇させて夾雑物を後方に流すことができる。
(ローター制御)
ローター制御については、水深センサーの信号に応じてローターの高さ位置を制御するように構成する。
具体的には、水深センサーが高く検出したときに、ローターは、逆に高くするように制御する。このようにローターの高さを水深に応じて自動調節して水を逃がすことにより、水の抵抗を減らすことができる。
(施肥制御)
施肥制御については、薬剤送出管の側面図および要部拡大図をそれぞれ図14、図15に示すように、各施肥ホース62を受けるエア抜部62aの出口側にシャッター63を設け、また、薬剤送出管の要部平面図を図16に示すように、これら左右に横並びに配置されたシャッター63…同士を車幅方向に延びるロッド63aで接続するとともに、植付部4の上下でシャッター63が開閉動作するように、ケーブル63bをリンクベースフレーム42に連結して構成する。
このように、植付部4の上下動作と連動してシャッター63の開閉を行うことにより、施肥ホース62の長さによる時間遅れが小さく抑えられ、無肥料区を少なくすることができる。また、ケーブル63bをクラッチケース25のクラッチと連動させることにより、シャッター63…の開閉を確実に行うことができる。
本発明の実施例の乗用型田植機の側面図である。 図1の乗用型田植機の平面図である。 図1の乗用型田植機の操向操作に連動する後輪のクラッチ作動機構図である。 図1の乗用型田植機の制御ブロック図である。 図1の乗用型田植機の旋回連動制御の考え方を示す図である。 制御処理の図表である。 図5の旋回連動制御のフローチャートである。 図1の乗用型田植機の旋回連動制御のフローチャートである。 図8の旋回連動制御時の旋回外側の車輪のサイドクラッチの入切り周期のタイムチャートである。 図1の乗用型田植機の操作盤のポンピングクラッチ調節ダイヤル部分の平面図である。 図1の乗用型田植機の操作盤の植始め調節ダイヤル部分の平面図である。 図1の乗用型田植機の操向操作に連動する後輪のクラッチ作動用の油圧回路図である。 畦クラッチの制御カム構成図である。 薬剤送出管の側面図である。 図14の薬剤送出管の要部拡大図である。 図14の薬剤送出管の要部平面図である。
符号の説明
2 走行車体
10 前輪(走行推進体)
11 後輪(走行推進体)
31 座席(操縦席)
34 ステアリングハンドル(操向手段)
90 チェンジレバー(前後進検出手段)
163 制御装置
175 ピットマンアーム(ステアリング機構)
180 該クラッチ連動用左右ロッド(ステアリング機構)
205a 伝動軸回転数センサ(伝動軸回転数検出手段)
205b 伝動軸回転数センサ(伝動軸回転数検出手段)
217 プルシリンダ
A 旋回連繋機構

Claims (5)

  1. 走行車体(2)と、該走行車体(2)の操縦席(31)に設けた操向方向を決める操向手段(34)と、該操向手段(34)の操作に連動して進行方向に向かって左右に設けられた走行推進体(10,11)の向きを変更できるステアリング機構(175,180など)と、該ステアリング機構(175,180など)に連動して旋回内側の走行推進体(11)の駆動を断続的に入/切する旋回制御を実行する旋回連動機構(A)と、走行推進体(11)の旋回外側の伝動軸回転数検出手段(205a)と、走行推進体(11)の旋回内側の伝動軸回転数検出手段(205b)と、走行車体(2)の旋回時において、旋回内側の走行推進体(11)の駆動を旋回制御により断続的に入/切する周期を、旋回外側の走行推進体(11)の伝動軸回転数検出手段(205a)により検出される回転数(a1)に応じて変更する制御装置(163)を備えた走行車両において、
    上記走行車体(2)には、その前後進の方向を検出する前後進検出手段(90)を設け、この前後進検出手段(90)の後進検出信号を条件として上記制御装置(163)により、走行車体(2)の旋回時において、旋回内側の走行推進体(11)の駆動を断続的に入/切する旋回制御を実行しない構成としたことを特徴とする走行車両。
  2. 苗植付装置(4)を昇降可能に装着し、旋回開始時に自動的に苗植付装置(4)を上昇させるオートリフト機能を選択したとき、旋回内側の走行推進体(11)の駆動を断続的に入/切する旋回制御を実行する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の走行車両。
  3. 前後進検出手段(90)の後進検出信号を条件として、旋回内側の走行推進体(11)の駆動を連続的に入とする構成としたことを特徴とする請求項1に記載の走行車両。
  4. 苗植付装置(4)を昇降可能に装着し、苗植付装置(4)を自動的に作動させて植付を開始する制御を実行する自動植付開始モードを選択していないとき、旋回内側の走行推進体(11)の駆動を連続的に切とする構成としたことを特徴とする請求項1に記載の走行車両。
  5. 苗植付装置(4)を昇降可能に装着し、カム(231)の回動により揺動する左右のレバー(232、233)を、カム(231)の上下に各々設け、上下左右のレバー(232、233)に各々操作ケーブル(234,235)を連結して4系統の操作ケーブルにより4機の畦クラッチを制御する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の走行車両。
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