JP6127761B2 - 円錐ころ軸受と円錐ころ軸受を用いた動力伝達装置 - Google Patents
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Description
また、円錐ころ軸受を用いた動力伝達装置において、例えば、特許文献1に開示されているように、円錐ころ軸受の潤滑油の流入口側の外輪の端部と、外輪を支持する支持部材との間に放熱性の良好な金属よりなる冷却部材を配設したものがある。
そして、潤滑油が流入口から円錐ころ軸受内に流入する際に、冷却部材を通過することで潤滑油が冷却される。
この際、保持器に設けられた保持器気化促進機構によって、潤滑油の一部の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧となって、潤滑油中にキャビテーションが発生する。そして、液相から気相に変化した潤滑油の気化熱によって、潤滑油が冷却される。
このようにして、部品点数や組付工数を増加させることなく、保持器に設けられた保持器気化促進機構によって、潤滑油を冷却することができる。
この結果、高速回転の転がり軸受として好適な円錐ころ軸受を提供することができる。
また、軸受回転時の回転数が1000rpm以上であると、トルク低減においても効果がある。
保持器気化促進機構は、前記後側壁面によって構成されているものである。
このため、保持器の柱部の後側壁面の後方に対するキャビテーションの発生を促進させることができる。この結果、潤滑油の冷却効率を高めることができる。
また、軸受内に浸入する潤滑油量を少なくすることで、トルク低減にも効果が大きい。
すなわち、軸受回転時の潤滑油の想定温度範囲内の最低温度よりも低い温度である場合には、潤滑油の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧になりにくくなり、潤滑油の冷却効果が期待できないことが想定される。
図1と図2に示すように、円錐ころ軸受30は、内輪31と、外輪40と、複数の円錐ころ50と、保持器60と、を備える。
内輪31は、中心孔を有して筒状に形成され、外周面には、一端部から他端部に向ってしだいに拡径されたテーパ軸状の内輪軌道面32が形成されている。
また、内輪31の一端部の外周面(内輪軌道面32の小径側)には、円錐ころ50の小端面51を案内する案内面34を有する小つば部33が形成され、他端部の外周面(内輪軌道面32の大径側)には、円錐ころ50の大端面52を案内する案内面36を有する大つば部35が形成されている。
内輪31の内輪軌道面32と、外輪軌道面41との間の環状空間には、複数の円錐ころ50が保持器60によって保持された状態で転動可能に配設されている。
そして、円錐ころ軸受30は、その内輪31と外輪40との間の環状空間を通して液状の潤滑油が流れる形式に構成されている。
また、円錐ころ軸受30の潤滑油の温度は、軸受回転時の潤滑油の想定温度範囲内の最低温度以上である。例えば、動力伝達装置等の動力伝達装置に用いられる潤滑油の想定温度は、40℃〜160℃である。そして、潤滑油の温度は、40℃以上である。
また、この実施例1において、軸受回転時の回転数が1000rpm以上になる円錐ころ軸受30である。
保持器60の一部には、軸受回転時に潤滑油の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧となるように潤滑油を低圧化する保持器気化促進機構70が設けられている。
この実施例1において、小径側環状部61、大径側環状部62及び柱部63を有する保持器60は、耐熱性及び耐摩耗性を有する樹脂材によって一体に形成されている。
また、図2と図3に示すように、保持器60の柱部63には、径方向の内方に延びる内径側延在部65と、径方向の外方に延びる外径側延在部66とがそれぞれ形成されている。
さらに、保持器60の回転方向(図3において矢印P方向)に対する内径側延在部65及び外径側延在部66を含む柱部63の後側壁面67は、回転方向に対しほぼ垂直に形成されている。そして、保持器気化促進機構70は、後側壁面67によって構成されている。すなわち、柱部63の後側壁面67は、回転方向に対し、できるだけ垂直方向に延びていることが潤滑油の圧力を低下させるために好ましい。ただし、キャビテーションを発生させることができれば、厳密な垂直方向から多少ずれていてもよい。
なお、柱部63の壁面のうち、保持器60が回転してときに回転した先に存在する潤滑油に衝突する側の壁面を前側壁面68と呼び、前側壁面68の裏面側であって回転の際に柱部63に遮られて潤滑油が当たりにくい側の壁面を後側壁面67と呼んでいる。
また、円錐ころ軸受30が正逆回転する場合等を考慮すると、柱部63の前側壁面68においても回転方向に対しほぼ垂直に形成され、横断面(軸方向に直交する方向の断面)が台形状に形成されることが望ましい(図3参照)。
すなわち、円錐ころ軸受30が逆回転する場合には、柱部63の前側壁面68が回転方向の後側壁面をなす。
また、外径側延在部66の外径面は、外輪40の外輪軌道面41に対し微小な隙間をもって接近して外径側延在部66の外径面と外輪40の外輪軌道面41との間に外径側隙間部S2を形成している。
そして、保持器気化促進機構70は、内径側延在部65及び外径側延在部66を含む柱部63の後側壁面67と、内径側隙間部S1と、外径側隙間部S2と、の協働によって構成されている。
したがって、軸受回転時には、内輪31と外輪40との間の環状空間を通して液状の潤滑油が流れる。この際、保持器60の一部に設けられた保持器気化促進機構70によって、潤滑油の一部の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧となって、潤滑油内にキャビテーションが発生する。そして、液相から気相に変化した潤滑油の気化熱によって、潤滑油が冷却される。
このようにして、部品点数や組付工数を増加させることなく、保持器60の一部に設けられた保持器気化促進機構70によって、潤滑油を冷却することができる。
このため、軸受回転時には、柱部63の後側壁面67の後方には、柱部に内径側及び外径側延在部がない構造のもの(従来の保持器の柱部)と比較して、低圧部90、91が発生する領域が増大される。
これによって、保持器60の柱部63の後側壁面67の後方の低圧部90、91で、キャビテーションの発生を促進させることができる。この結果、潤滑油の冷却効率を高めることができる。
そして、内径側隙間部S1と、外径側隙間部S2とが設けられることにより、柱部63の後側壁面67へ潤滑油が流入し難くなる。このため、保持器60の回転に伴って柱部63の後側壁面67の周辺の潤滑油が希薄化しやすくなり、潤滑油の圧力が低下しやすくなる。これによって、柱部63の後側壁面67の後方に対するキャビテーションの発生をより一層促進させて冷却効率を高めることができる。
また、軸受内に浸入する潤滑油量を少なくすることで、トルク低減にも効果が大きい。
また、円錐ころ軸受30の軸受回転時の回転数が1000rpm以上であると、トルク低減においても効果がある。
図4において、円錐ころ50に対するアキシアル荷重(軸方向に負荷される荷重)が4kNである場合で、横軸を軸受け回転時の回転数rpmとし、縦軸をトルクNmとしている。
また、図5において、円錐ころ50に対するアキシアル荷重(軸方向に負荷される荷重)が10kNである場合で、横軸を軸受け回転時の回転数rpmとし、縦軸をトルクNmとしている。
図4と図5に示すように、アキシアル荷重が4kNの場合と、10kNの場合のいずれにおいても、軸受回転時の回転数が1000rpmを越えると、この実施例1の円錐ころ軸受30は、従来の標準品の円錐ころ軸受よりもトルクが低減されることが明らかとなった。
特に、アキシアル荷重が10kNの場合では、軸受回転時の回転数が1000rpmを越えると、この実施例1の円錐ころ軸受30は、従来の標準品の円錐ころ軸受よりもトルクが顕著に低減されることが明らかとなった。
図6に示すように、デファレンシャル装置10のデファレンシャルキャリア11の内部には、軸方向に所定間隔を隔てる軸受ハウジング12、13がそれぞれ形成されている。
両軸受ハウジング12、13には、ピニオン軸21(この発明の回転軸に相当する)の前後部を回転可能に支持するための前後の両円錐ころ軸受30、80がそれぞれ組み付けられている。
これら両円錐ころ軸受30、80のうち、少なくとも一方の円錐ころ軸受30は、前記実施例1で述べた円錐ころ軸受が用いられている。
また、両円錐ころ軸受30、80の内輪31、81の間にはスペーサ部材26が介在されている。
また、デファレンシャルキャリア11内の下部には、潤滑油が所定の油面レベルまで充填されて封入されている。
なお、周知のように、デファレンシャルケース(図示しない)内には、差動歯車機構が内蔵されている。
したがって、車両走行時等において、デファレンシャルキャリア11の下部に溜められた潤滑油は、リングギヤ20の回転に伴って攪拌され、一部の潤滑油は潤滑流路14に流入して供給口15に向けて流れる。そして、潤滑油は供給口から前後の両円錐ころ軸受30、80の環状空間の小径側に供給される。
両円錐ころ軸受30、80の内輪31、81は、リングギヤ20からのトルク伝達を受けて回転するピニオン軸21と一体に回転する。これによって、円錐ころ50が転動すると共に、保持器60が回転する。
また、前後の両円錐ころ軸受30、80の環状空間の小径側に供給された潤滑油は、円錐ころ50の転動に基づくポンプ作用によって、環状空間の大径側に向けて流れて排出される。
例えば、図7と図8に示すように、保持器60の柱部63の内径側延在部65と外径側延在部66とのうち、少なくとも一方の延在部、図7では内径側延在部65の内径面に対し、軸方向へ延びる凹部173又は凸部を形成してもよい。
このように、内径側延在部65の内径面に対し、軸方向へ延びる凹部173、又は凸部を形成することで、凹部173又は凸部においても、低圧部190を発生させることができる。これによって、潤滑油中にキャビテーションを発生させて潤滑油を冷却することができる。
このように、保持器60の小径側の環状部61の内周面に対し、軸方向へ延びる凹部273又は凸部を形成することで、凹部273又は凸部においても低圧部290を発生させることがきる。これによって潤滑油中にキャビテーションを発生させて潤滑油を冷却することができる。
また、保持器60の小径側の環状部61の内周面の凹部273又は凸部は、軸受回転時に伴う保持器60の回転によって潤滑油中に気泡(マイクロバブル)を発生させて混入させることができる。そして、潤滑油中に発生された気泡によって潤滑油の粘性を低下させることができ、トルク低減に効果がある。
また、動力伝達装置としては、デファレンシャル装置以外であってもよく、例えば、トランスアクスル装置等であってもよい。
11 デファレンシャルキャリア
12、13 軸受ハウジング
21 ピニオン軸(回転軸)
30 円錐ころ軸受
31 内輪
40 外輪
50 円錐ころ
60 保持器
63 柱部
65 内径側延在部
66 外径側延在部
67 後側壁面
70 保持器気化促進機構
Claims (8)
- 内輪と、前記内輪の外周面に環状空間を隔てて同一中心線上に配設される外輪と、前記環状空間に転動可能に配設された複数の円錐ころと、前記複数の円錐ころを保持する保持器とを備え、前記環状空間を通して液状の潤滑油が流れる形式の円錐ころ軸受であって、
前記保持器には、軸受回転時に前記潤滑油の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧となるように前記潤滑油を低圧化する保持器気化促進機構が設けられていることを特徴とする円錐ころ軸受。 - 請求項1に記載の円錐ころ軸受であって、
軸受回転時の回転数は、1000rpm以上であることを特徴とする円錐ころ軸受。 - 請求項1又は2に記載の円錐ころ軸受であって、
保持器は、環状部と、前記環状部から軸方向へ延びる柱部と、前記環状部及び前記柱部とで構成されたポケットとを有し、
前記柱部には、径方向の内方に延びる内径側延在部と、径方向の外方に延びる外径側延在部とがそれぞれ形成され、
前記内径側延在部と外径側延在部とを含む前記柱部の前記保持器の回転方向に対する後側壁面は、前記回転方向に対しほぼ垂直に形成され、
保持器気化促進機構は、前記後側壁面によって構成されていることを特徴とする円錐ころ軸受。 - 請求項3に記載の円錐ころ軸受であって、
内径側延在部の内径面は、内輪外周面の内輪軌道面に接近して前記内径側延在部の内径面と前記内輪外周面との間に内径側隙間部を形成し、
外径側延在部の外径面は、外輪内周面の外輪軌道面に接近して前記外径側延在部の外径面と前記外輪内周面との間に外径側隙間部を形成し、
保持器気化促進機構は、前記内径側隙間部と、前記外径側隙間部と、柱部の前記内径側延在部及び前記外径側延在部を含む後側壁面との協働によって構成されていることを特徴とする円錐ころ軸受。 - 請求項3又は4に記載の円錐ころ軸受であって、
保持器の柱部の内径側延在部及び外径側延在部のうちの少なくとも一方の延在部の周面には、軸方向に延びる凹部又は凸部が形成されていることを特徴とする円錐ころ軸受。 - 請求項3〜5のいずれか一項に記載の円錐ころ軸受であって、
保持器の環状部には、軸方向へ延びる凹部又は凸部が形成されていることを特徴とする円錐ころ軸受。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の円錐ころ軸受であって、
潤滑油の温度は、軸受回転時の潤滑油の想定温度範囲内の最低温度以上の温度であることを特徴とする円錐ころ軸受。 - 動力伝達装置の内部に回転軸を回転可能に支持するための円錐ころ軸受として、請求項1〜7のいずれか一項に記載の円錐ころ軸受が用いられていることを特徴とする円錐ころ軸受を用いた動力伝達装置。
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