JP2015001273A - 円錐ころ軸受と円錐ころ軸受を用いた動力伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】部品点数や組付工数を増加させることなく潤滑油を冷却することができる円錐ころ軸受と、円錐ころ軸受を用いたデファレンシャル装置を提供する。【解決手段】内輪31と、外輪40と、内輪31と外輪40との間の環状空間に転動可能に配設された複数の円錐ころ50と、複数の円錐ころ50を保持する保持器60とを備え、環状空間を通して液状の潤滑油が流れる形式の円錐ころ軸受であって、内輪31と、外輪40とのうち、軸受回転時に回転する回転側軌道輪31には、軸受回転時に潤滑油の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧となるように潤滑油の一部を低圧化する軌道輪気化促進機構70が設けられている。【選択図】図2
Description
この発明は円錐ころ軸受と円錐ころ軸受を用いた動力伝達装置に関する。
円錐ころ軸受は、負荷容量が大きく、剛性が高い秀逸な転がり軸受であるが、滑り接触による摺動部(例えば、円錐ころの大端面と、内輪の大つば部の案内面との摺動部)が存在し、その摺動部の滑り摩擦によるトルク損失や焼き付き発生等を考慮すると、高速回転の転がり軸受としては使用の制約を受けやすい。
また、円錐ころ軸受を用いた動力伝達装置において、例えば、特許文献1に開示されているように、円錐ころ軸受の潤滑油の流入口側の外輪の端部と、外輪を支持する支持部材との間に放熱性の良好な金属よりなる冷却部材を配設したものがある。
そして、潤滑油が流入口から円錐ころ軸受内に流入する際に、冷却部材を通過することで潤滑油が冷却される。
また、円錐ころ軸受を用いた動力伝達装置において、例えば、特許文献1に開示されているように、円錐ころ軸受の潤滑油の流入口側の外輪の端部と、外輪を支持する支持部材との間に放熱性の良好な金属よりなる冷却部材を配設したものがある。
そして、潤滑油が流入口から円錐ころ軸受内に流入する際に、冷却部材を通過することで潤滑油が冷却される。
特許文献1に開示された円錐ころ軸受装置においては、冷却部材によって潤滑油を冷却することができる。しかしながら、冷却部材を放熱性の良好な金属により製作し、その冷却部材を、外輪の端部と、外輪を支持する支持部材との間に組み付けなければならない。このため、部品点数や組付工数が多くなる。
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、部品点数や組付工数を増加させることなく潤滑油を冷却することができる円錐ころ軸受と、円錐ころ軸受を用いた動力伝達装置を提供することである。
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、内輪と、前記内輪の外周面に環状空間を隔てて同一中心線上に配設される外輪と、前記環状空間に転動可能に配設された複数の円錐ころと、前記複数の円錐ころを保持する保持器とを備え、前記環状空間を通して液状の潤滑油が流れる形式の円錐ころ軸受であって、前記内輪と、前記外輪との両軌道輪のうち、軸受回転時に回転する回転側軌道輪には、軸受回転時に前記潤滑油の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧となるように前記潤滑油の一部を低圧化する軌道輪気化促進機構が設けられているものである。
請求項1の発明によると、軸受回転時には、内輪と外輪との間の環状空間を通して液状の潤滑油が流れる。
この際、内輪と、外輪との両軌道輪のうち、軸受回転時に回転する回転側軌道輪に設けられた軌道輪気化促進機構によって、潤滑油の一部の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧となって、潤滑油内にキャビテーションが発生する。そして、液相から気相に変化した潤滑油の気化熱によって、潤滑油や回転部品が冷却される。
このようにして、部品点数や組付工数を増加させることなく、軸受回転時に回転する回転側軌道輪に設けられた軌道輪気化促進機構によって、潤滑油を冷却することができる。
この結果、高速回転の転がり軸受として好適な円錐ころ軸受を提供することができる。
この際、内輪と、外輪との両軌道輪のうち、軸受回転時に回転する回転側軌道輪に設けられた軌道輪気化促進機構によって、潤滑油の一部の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧となって、潤滑油内にキャビテーションが発生する。そして、液相から気相に変化した潤滑油の気化熱によって、潤滑油や回転部品が冷却される。
このようにして、部品点数や組付工数を増加させることなく、軸受回転時に回転する回転側軌道輪に設けられた軌道輪気化促進機構によって、潤滑油を冷却することができる。
この結果、高速回転の転がり軸受として好適な円錐ころ軸受を提供することができる。
請求項2の発明は、請求項1に記載の円錐ころ軸受であって、軸受回転時の回転数は、1000rpm以上であるものである。
請求項2の発明によると、軸受回転時の回転数が1000rpm以上であると、軌道輪気化促進機構によって潤滑油の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧となりやすく、潤滑油の冷却効果を高めることができる。
また、軸受回転時の回転数が1000rpm以上であると、トルク低減においても効果がある。
また、軸受回転時の回転数が1000rpm以上であると、トルク低減においても効果がある。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の円錐ころ軸受であって、軌道輪気化促進機構は、回転側軌道輪のつば部に形成された軸方向の凹部又は凸部によって構成されているものである。
請求項3の発明によると、回転側軌道輪のつば部に軸方向の凹部又は凸部を形成することで、軌道輪気化促進機構を容易に構成することができる。
また、回転側軌道輪のつば部に対し軸方向の凹部又は凸部を形成して軌道輪気化促進機構を構成することで、潤滑油内のキャビテーションの発生を促進することができるため、潤滑油の冷却効果を高めることができる。
また、回転側軌道輪のつば部に対し軸方向の凹部又は凸部を形成することで、回転側軌道輪のつば部の表面積が増大されるため、この分だけ放熱性を高めることができる。
また、回転側軌道輪のつば部に対し軸方向の凹部又は凸部を形成して軌道輪気化促進機構を構成することで、潤滑油内のキャビテーションの発生を促進することができるため、潤滑油の冷却効果を高めることができる。
また、回転側軌道輪のつば部に対し軸方向の凹部又は凸部を形成することで、回転側軌道輪のつば部の表面積が増大されるため、この分だけ放熱性を高めることができる。
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の円錐ころ軸受であって、潤滑油の温度は、軸受回転時の潤滑油の想定温度範囲内の最低温度以上の温度であるものである。
請求項4の発明によると、軸受回転時の潤滑油の想定温度範囲内の最低温度以上の温度であるから、回転側軌道輪に設けられた軌道輪気化促進機構によって、潤滑油の一部の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧になりやすく、潤滑油を良好に冷却することができる。
すなわち、軸受回転時の潤滑油の想定温度範囲内の最低温度よりも低い温度である場合には、潤滑油の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧になりにくくなり、潤滑油の冷却効果が期待できないことが想定される。
すなわち、軸受回転時の潤滑油の想定温度範囲内の最低温度よりも低い温度である場合には、潤滑油の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧になりにくくなり、潤滑油の冷却効果が期待できないことが想定される。
請求項5の発明の円錐ころ軸受を用いた動力伝達装置は、動力伝達装置の内部に回転軸を回転可能に支持するための円錐ころ軸受として、請求項1〜4のいずれか一項に記載の円錐ころ軸受が用いられているものである。
請求項5の発明の円錐ころ軸受を用いた動力伝達装置によると、請求項1〜4のいずれか一項に記載の円錐ころ軸受が用いることで、部品点数や組付工数を増加させることなく潤滑油を冷却することができる。
この発明によれば、内輪と、外輪とのうちの軸受回転時に回転する回転側軌道輪に設けられた軌道輪気化促進機構によって、潤滑油を冷却することができるため、高速回転の転がり軸受として好適な円錐ころ軸受を提供することができる。
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
この発明の実施例1を図1〜図6にしたがって説明する。
図1と図2に示すように、円錐ころ軸受30は、内輪31と、外輪40と、複数の円錐ころ50と、保持器60と、を備える。
内輪31は、中心孔を有して筒状に形成され、外周面には、一端部から他端部に向ってしだいに拡径されたテーパ軸状の内輪軌道面32が形成されている。
また、内輪31の一端部の外周面(内輪軌道面32の小径側)には、円錐ころ50の小端面51を案内する案内面34を有する小つば部33が形成され、他端部の外周面(内輪軌道面32の大径側)には、円錐ころ50の大端面52を案内する案内面36を有する大つば部35が形成されている。
図1と図2に示すように、円錐ころ軸受30は、内輪31と、外輪40と、複数の円錐ころ50と、保持器60と、を備える。
内輪31は、中心孔を有して筒状に形成され、外周面には、一端部から他端部に向ってしだいに拡径されたテーパ軸状の内輪軌道面32が形成されている。
また、内輪31の一端部の外周面(内輪軌道面32の小径側)には、円錐ころ50の小端面51を案内する案内面34を有する小つば部33が形成され、他端部の外周面(内輪軌道面32の大径側)には、円錐ころ50の大端面52を案内する案内面36を有する大つば部35が形成されている。
外輪40は、内輪31の外周面に環状空間を隔てて同一中心線上に配設されて筒状をなし、その内周面には、一端部から他端部に向ってしだいに拡径されたテーパ孔状の外輪軌道面41が形成されている。
内輪31の内輪軌道面32と、外輪軌道面41との間の環状空間には、複数の円錐ころ50が保持器60によって保持された状態で転動可能に配設されている。
内輪31の内輪軌道面32と、外輪軌道面41との間の環状空間には、複数の円錐ころ50が保持器60によって保持された状態で転動可能に配設されている。
保持器60は、軸方向に所定間隔を隔てる小径側環状部61と、大径側環状部62と、これら両環状部61、62を連結する柱部63とを有し、両環状部61、62と柱部63によって囲まれた部分に円錐ころ50を保持するポケット64が構成されている。
そして、円錐ころ軸受30は、その内輪31と外輪40との間の環状空間を通して液状の潤滑油が流れる形式に構成されている。
また、円錐ころ軸受30の潤滑油の温度は、軸受回転時の潤滑油の想定温度範囲内の最低温度以上である。例えば、動力伝達装置等の動力伝達装置に用いられる潤滑油の想定温度は、40℃〜160℃である。この場合、潤滑油の温度は、40℃以上である。
また、この実施例1において、軸受回転時の回転数が1000rpm以上になる円錐ころ軸受30である。
そして、円錐ころ軸受30は、その内輪31と外輪40との間の環状空間を通して液状の潤滑油が流れる形式に構成されている。
また、円錐ころ軸受30の潤滑油の温度は、軸受回転時の潤滑油の想定温度範囲内の最低温度以上である。例えば、動力伝達装置等の動力伝達装置に用いられる潤滑油の想定温度は、40℃〜160℃である。この場合、潤滑油の温度は、40℃以上である。
また、この実施例1において、軸受回転時の回転数が1000rpm以上になる円錐ころ軸受30である。
内輪31と、外輪40との両軌道輪のうち、軸受回転時に回転する回転側軌道輪、この実施例1では内輪31には、軸受回転時に潤滑油の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧となるように潤滑油の一部を低圧化する軌道輪気化促進機構70が設けられている。
図2と図3に示すように、軌道輪気化促進機構70は、回転側軌道輪としての内輪31の小つば部33と、大つば部35とのうち、少なくとも一方のつば部に形成され軸方向の凹部72(又は凸部)によって構成されている。
この実施例1において、内輪31の大つば部35の外周部に対し、複数の軸方向の凹部(溝形状の凹部)72が周方向に所定間隔を隔てて形成されている。
図2と図3に示すように、軌道輪気化促進機構70は、回転側軌道輪としての内輪31の小つば部33と、大つば部35とのうち、少なくとも一方のつば部に形成され軸方向の凹部72(又は凸部)によって構成されている。
この実施例1において、内輪31の大つば部35の外周部に対し、複数の軸方向の凹部(溝形状の凹部)72が周方向に所定間隔を隔てて形成されている。
この実施例1は上述したように構成される。
したがって、軸受回転時には、内輪31と外輪40との間の環状空間を通して液状の潤滑油が流れる。
この際、回転側軌道輪としての内輪31に設けられた軌道輪気化促進機構70によって、潤滑油の一部の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧となって、潤滑油内にキャビテーションが発生する。
すなわち、この実施例1において、回転側軌道輪としての内輪31の大つば部35外周面に軌道輪気化促進機構70としての複数の軸方向の凹部72が周方向に所定間隔を隔てて形成される。このため、軸受回転時には、各凹部72の両溝壁面のうち、回転方向(図3において矢印P方向)前側に位置する溝壁面72aの後方に低圧部90(図3において二点鎖線で示す部分)が発生する。また、潤滑油は、圧力が低くなるほど気相化しやすくなる。このため、低圧部90において、潤滑油内にキャビテーションが発生し、潤滑油の一部の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧となる。
これによって、液相から気相に変化した潤滑油の気化熱によって、潤滑油が冷却される。
このようにして、部品点数や組付工数を増加させることなく、回転側軌道輪としての内輪31に設けられた軌道輪気化促進機構70によって、潤滑油を冷却することができる。
この結果、高速回転の転がり軸受として好適な円錐ころ軸受30を提供することができる。
したがって、軸受回転時には、内輪31と外輪40との間の環状空間を通して液状の潤滑油が流れる。
この際、回転側軌道輪としての内輪31に設けられた軌道輪気化促進機構70によって、潤滑油の一部の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧となって、潤滑油内にキャビテーションが発生する。
すなわち、この実施例1において、回転側軌道輪としての内輪31の大つば部35外周面に軌道輪気化促進機構70としての複数の軸方向の凹部72が周方向に所定間隔を隔てて形成される。このため、軸受回転時には、各凹部72の両溝壁面のうち、回転方向(図3において矢印P方向)前側に位置する溝壁面72aの後方に低圧部90(図3において二点鎖線で示す部分)が発生する。また、潤滑油は、圧力が低くなるほど気相化しやすくなる。このため、低圧部90において、潤滑油内にキャビテーションが発生し、潤滑油の一部の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧となる。
これによって、液相から気相に変化した潤滑油の気化熱によって、潤滑油が冷却される。
このようにして、部品点数や組付工数を増加させることなく、回転側軌道輪としての内輪31に設けられた軌道輪気化促進機構70によって、潤滑油を冷却することができる。
この結果、高速回転の転がり軸受として好適な円錐ころ軸受30を提供することができる。
また、円錐ころ軸受30の軸受回転時の回転数が1000rpm以上であると、軌道輪気化促進機構70によって潤滑油の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧となりやすいく、潤滑油の冷却効果を高めることができる。
また、円錐ころ軸受30の軸受回転時の回転数が1000rpm以上であると、トルク低減においても効果がある。
また、円錐ころ軸受30の軸受回転時の回転数が1000rpm以上であると、トルク低減においても効果がある。
回転側軌道輪としての内輪31の大つば部35外周面に対し、軌道輪気化促進機構70としての複数の溝状の軸方向の凹部72が周方向に所定間隔を隔てて形成されたこの実施例1の円錐ころ軸受30と、内輪31の外周面に軌道輪気化促進機構70が設けられていない従来の標準品の円錐ころ軸受とを試験した結果、図4と図5に示すような結果が得られた。
図4において、円錐ころ50に対するアキシアル荷重(円錐ころ50の軸方向に負荷される荷重)が4kNである場合で、横軸を軸受け回転時の回転数rpmとし、縦軸をトルクNmとしている。
また、図5において、円錐ころ50に対するアキシアル荷重(円錐ころ50の軸方向に負荷される荷重)が10kNである場合で、横軸を軸受け回転時の回転数rpmとし、縦軸をトルクNmとしている。
図4と図5に示すように、アキシアル荷重が4kNの場合と、10kNの場合のいずれにおいても、軸受回転時の回転数が1000rpmを越えると、この実施例1の円錐ころ軸受30は、従来の標準品の円錐ころ軸受よりもトルクが低減されることが明らかとなった。
特に、アキシアル荷重が10kNの場合では、軸受回転時の回転数が1000rpmを越えると、この実施例1の円錐ころ軸受30は、従来の標準品の円錐ころ軸受よりもトルクが顕著に低減されることが明らかとなった。
図4において、円錐ころ50に対するアキシアル荷重(円錐ころ50の軸方向に負荷される荷重)が4kNである場合で、横軸を軸受け回転時の回転数rpmとし、縦軸をトルクNmとしている。
また、図5において、円錐ころ50に対するアキシアル荷重(円錐ころ50の軸方向に負荷される荷重)が10kNである場合で、横軸を軸受け回転時の回転数rpmとし、縦軸をトルクNmとしている。
図4と図5に示すように、アキシアル荷重が4kNの場合と、10kNの場合のいずれにおいても、軸受回転時の回転数が1000rpmを越えると、この実施例1の円錐ころ軸受30は、従来の標準品の円錐ころ軸受よりもトルクが低減されることが明らかとなった。
特に、アキシアル荷重が10kNの場合では、軸受回転時の回転数が1000rpmを越えると、この実施例1の円錐ころ軸受30は、従来の標準品の円錐ころ軸受よりもトルクが顕著に低減されることが明らかとなった。
また、この実施例1において、回転側軌道輪としての内輪31の大つば部35外周面に対し、複数の軸方向の凹部72が周方向に所定間隔を隔てて形成され、これによって軌道輪気化促進機構70が構成される。このため、内輪31の大つば部35の案内面36と、円錐ころ50の大端面52との相互間で発生する摩擦熱を冷却することができ、焼き付きの抑制に効果が大きい。
また、複数の軸方向の凹部72によって、内輪31の大つば部35外周面の表面積が増大されるため、この分だけ放熱性を高めることができる。
また、複数の軸方向の凹部72によって、内輪31の大つば部35外周面の表面積が増大されるため、この分だけ放熱性を高めることができる。
また、円錐ころ軸受30の潤滑油の温度は、軸受回転時の潤滑油の想定温度範囲内の最低温度以上である。このため、軌道輪気化促進機構70によって、潤滑油の一部の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧になりやすく、潤滑油や円錐ころ30を良好に冷却することができる。
すなわち、軸受回転時の潤滑油の想定温度範囲内の最低温度よりも低い温度である場合には、潤滑油の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧にならない場合がある。そして、潤滑油や回転部品の冷却効果が期待できないことが想定されるが、このような不具合の発生を抑制することができる。
すなわち、軸受回転時の潤滑油の想定温度範囲内の最低温度よりも低い温度である場合には、潤滑油の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧にならない場合がある。そして、潤滑油や回転部品の冷却効果が期待できないことが想定されるが、このような不具合の発生を抑制することができる。
次に、前記実施例1で述べた円錐ころ軸受30を用いた動力伝達装置としてのデファレンシャル装置10について図6にしたがって説明する。
図6に示すように、デファレンシャル装置10のデファレンシャルキャリア11の内部には、軸方向に所定間隔を隔てる軸受ハウジング12、13がそれぞれ形成されている。
両軸受ハウジング12、13には、ピニオン軸21(この発明の回転軸に相当する)の前後部を回転可能に支持するための前後の両円錐ころ軸受30、80がそれぞれ組み付けられている。
これら両円錐ころ軸受30、80のうち、少なくとも一方の円錐ころ軸受30は、前記実施例1で述べた円錐ころ軸受が用いられている。
図6に示すように、デファレンシャル装置10のデファレンシャルキャリア11の内部には、軸方向に所定間隔を隔てる軸受ハウジング12、13がそれぞれ形成されている。
両軸受ハウジング12、13には、ピニオン軸21(この発明の回転軸に相当する)の前後部を回転可能に支持するための前後の両円錐ころ軸受30、80がそれぞれ組み付けられている。
これら両円錐ころ軸受30、80のうち、少なくとも一方の円錐ころ軸受30は、前記実施例1で述べた円錐ころ軸受が用いられている。
また、ピニオン軸21の両端部のうち、一方の端部は、デファレンシャルキャリア11から突出され、当該一端部には、プロペラシャフト(図示しない)に連結されるコンパニオンフランジ23が組み付けられている。ピニオン軸21の他方の端部には、デファレンシャルキャリア11内のデファレンシャルケース(図示しない)に組み付けられたリングギヤ20に噛み合うピニオン22がトルク伝達可能に設けられている。これらリングギヤ20とピニオン22によって終減速機構が構成されている。
また、両円錐ころ軸受30、80の内輪31、81の間にはスペーサ部材26が介在されている。
また、デファレンシャルキャリア11内の下部には、潤滑油が所定の油面レベルまで充填されて封入されている。
なお、周知のように、デファレンシャルケース(図示しない)内には、差動歯車機構が内蔵されている。
また、両円錐ころ軸受30、80の内輪31、81の間にはスペーサ部材26が介在されている。
また、デファレンシャルキャリア11内の下部には、潤滑油が所定の油面レベルまで充填されて封入されている。
なお、周知のように、デファレンシャルケース(図示しない)内には、差動歯車機構が内蔵されている。
図6に示すように、デファレンシャルキャリア11内の軸受ハウジング12上部には、リングギヤ20の回転によってかき上げられた潤滑油が流入される潤滑流路14が形成され、両軸受ハウジング12、13間の上部には、潤滑流路を流れる潤滑油を両円錐ころ軸受30、80に供給するための供給口15が形成されている。
前記実施例1で述べた円錐ころ軸受30を用いた動力伝達装置としてのデファレンシャル装置10は、上述したように構成される。
したがって、車両走行時等において、デファレンシャルキャリア11の下部に溜められた潤滑油は、リングギヤ20の回転に伴って攪拌され、一部の潤滑油は潤滑流路14に流入して供給口15に向けて流れる。そして、潤滑油は供給口15から前後の両円錐ころ軸受30、80の環状空間の小径側に供給される。
両円錐ころ軸受30、80の内輪31、81は、リングギヤ20からのトルク伝達を受けて回転するピニオン軸21と一体に回転する。これによって、円錐ころ50が転動すると共に、保持器60が回転する。
また、前後の両円錐ころ軸受30、80の環状空間の小径側に供給された潤滑油は、円錐ころ50の転動に基づくポンプ作用によって、環状空間の大径側に向けて流れて排出される。
したがって、車両走行時等において、デファレンシャルキャリア11の下部に溜められた潤滑油は、リングギヤ20の回転に伴って攪拌され、一部の潤滑油は潤滑流路14に流入して供給口15に向けて流れる。そして、潤滑油は供給口15から前後の両円錐ころ軸受30、80の環状空間の小径側に供給される。
両円錐ころ軸受30、80の内輪31、81は、リングギヤ20からのトルク伝達を受けて回転するピニオン軸21と一体に回転する。これによって、円錐ころ50が転動すると共に、保持器60が回転する。
また、前後の両円錐ころ軸受30、80の環状空間の小径側に供給された潤滑油は、円錐ころ50の転動に基づくポンプ作用によって、環状空間の大径側に向けて流れて排出される。
前後の両円錐ころ軸受30、80のうち、少なくとも一方の円錐ころ軸受30は、前記実施例1で述べた円錐ころ軸受が用いられている。このため、円錐ころ軸受30の内輪31の大つば部35に設けられた軌道輪気化促進機構70によって、潤滑油を冷却することができ、潤滑油を冷却するための専用の冷却部材を製作して組み付ける手間を省くことができる。
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施例1においては、軌道輪気化促進機構70が回転側軌道輪としての内輪31の大つば部35外周に設けられた複数の軸方向の凹部72である場合を例示したが、軸方向の凹部72に替えて軸方向の凸部であってもこの発明を実施することができる。
また、図7に示すように、回転側軌道輪としての内輪31の小つば部33の外周面に対し、複数の軸方向の凹部172(又は軸方向の凸部)を形成して軌道輪気化促進機構170を構成することも可能である。
また、複数の軸方向の凹部172(又は複数の軸方向の凸部)は、軸受回転時に伴う回転側軌道輪としての内輪31の回転によって潤滑油中に気泡(マイクロバブル)を発生させて混入させることができる。そして、潤滑油中に発生された気泡によって潤滑油の粘性を低下させることができ、トルク低減に効果がある。
すなわち、円錐ころ軸受30の軸受回転時のポンプ作用によって、潤滑油は内輪31の小つば部33側から流入し、大つば部35側へ流出する。このため、小つば部33の外周面に対し、複数の軸方向の凹部172(又は軸方向の凸部)を形成し、潤滑油の流入側で潤滑油中に気泡を発生させて潤滑油の粘性を低下させることがで、大つば部に形成される場合と比べ、潤滑油の粘性低下によるトルク低減に効果が大きい。
また、動力伝達装置としては、デファレンシャル装置以外であってもよく、例えば、トランスアクスル装置等であってもよい。
例えば、前記実施例1においては、軌道輪気化促進機構70が回転側軌道輪としての内輪31の大つば部35外周に設けられた複数の軸方向の凹部72である場合を例示したが、軸方向の凹部72に替えて軸方向の凸部であってもこの発明を実施することができる。
また、図7に示すように、回転側軌道輪としての内輪31の小つば部33の外周面に対し、複数の軸方向の凹部172(又は軸方向の凸部)を形成して軌道輪気化促進機構170を構成することも可能である。
また、複数の軸方向の凹部172(又は複数の軸方向の凸部)は、軸受回転時に伴う回転側軌道輪としての内輪31の回転によって潤滑油中に気泡(マイクロバブル)を発生させて混入させることができる。そして、潤滑油中に発生された気泡によって潤滑油の粘性を低下させることができ、トルク低減に効果がある。
すなわち、円錐ころ軸受30の軸受回転時のポンプ作用によって、潤滑油は内輪31の小つば部33側から流入し、大つば部35側へ流出する。このため、小つば部33の外周面に対し、複数の軸方向の凹部172(又は軸方向の凸部)を形成し、潤滑油の流入側で潤滑油中に気泡を発生させて潤滑油の粘性を低下させることがで、大つば部に形成される場合と比べ、潤滑油の粘性低下によるトルク低減に効果が大きい。
また、動力伝達装置としては、デファレンシャル装置以外であってもよく、例えば、トランスアクスル装置等であってもよい。
10 デファレンシャル装置(動力伝達装置)
11 デファレンシャルキャリア
12、13 軸受ハウジング
21 ピニオン軸(回転軸)
30 円錐ころ軸受
31 内輪
33 小つば部
35 大つば部
40 外輪
50 円錐ころ
60 保持器
70 軌道輪気化促進機構
72 軸方向の凹部
11 デファレンシャルキャリア
12、13 軸受ハウジング
21 ピニオン軸(回転軸)
30 円錐ころ軸受
31 内輪
33 小つば部
35 大つば部
40 外輪
50 円錐ころ
60 保持器
70 軌道輪気化促進機構
72 軸方向の凹部
Claims (5)
- 内輪と、前記内輪の外周面に環状空間を隔てて同一中心線上に配設される外輪と、前記環状空間に転動可能に配設された複数の円錐ころと、前記複数の円錐ころを保持する保持器とを備え、前記環状空間を通して液状の潤滑油が流れる形式の円錐ころ軸受であって、
前記内輪と、前記外輪との両軌道輪のうち、軸受回転時に回転する回転側軌道輪には、軸受回転時に前記潤滑油の圧力が液相から気相に変化する飽和蒸気圧となるように前記潤滑油の一部を低圧化する軌道輪気化促進機構が設けられていることを特徴とする円錐ころ軸受。 - 請求項1に記載の円錐ころ軸受であって、
軸受回転時の回転数は、1000rpm以上であることを特徴とする円錐ころ軸受。 - 請求項1又は2に記載の円錐ころ軸受であって、
軌道輪気化促進機構は、回転側軌道輪のつば部に形成された軸方向の凹部又は凸部によって構成されていることを特徴とする円錐ころ軸受。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の円錐ころ軸受であって、
潤滑油の温度は、軸受回転時の潤滑油の想定温度範囲内の最低温度以上の温度であることを特徴とする円錐ころ軸受。 - 動力伝達装置の内部に回転軸を回転可能に支持するための円錐ころ軸受として、請求項1〜4のいずれか一項に記載の円錐ころ軸受が用いられていることを特徴とする円錐ころ軸受を用いた動力伝達装置。
Priority Applications (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013126401A JP2015001273A (ja) | 2013-06-17 | 2013-06-17 | 円錐ころ軸受と円錐ころ軸受を用いた動力伝達装置 |
EP14172514.3A EP2816247B1 (en) | 2013-06-17 | 2014-06-16 | Tapered roller bearing and power transmission device using tapered roller bearing |
US14/305,353 US9243667B2 (en) | 2013-06-17 | 2014-06-16 | Tapered roller bearing and power transmission device using tapered roller bearing |
CN201410270009.4A CN104235178B (zh) | 2013-06-17 | 2014-06-17 | 圆锥滚子轴承和使用圆锥滚子轴承的动力传递装置 |
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JP2013126401A JP2015001273A (ja) | 2013-06-17 | 2013-06-17 | 円錐ころ軸受と円錐ころ軸受を用いた動力伝達装置 |
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Family
ID=52295924
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JP2013126401A Pending JP2015001273A (ja) | 2013-06-17 | 2013-06-17 | 円錐ころ軸受と円錐ころ軸受を用いた動力伝達装置 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2015001273A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113392559A (zh) * | 2021-06-24 | 2021-09-14 | 南京航空航天大学 | 失油过程中双列圆锥滚子轴承温度场的计算方法及系统 |
CN115056815A (zh) * | 2022-07-14 | 2022-09-16 | 株洲时代新材料科技股份有限公司 | 胶轮列车车端铰接机构 |
-
2013
- 2013-06-17 JP JP2013126401A patent/JP2015001273A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN113392559B (zh) * | 2021-06-24 | 2024-05-28 | 南京航空航天大学 | 失油过程中双列圆锥滚子轴承温度场的计算方法及系统 |
CN115056815A (zh) * | 2022-07-14 | 2022-09-16 | 株洲时代新材料科技股份有限公司 | 胶轮列车车端铰接机构 |
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