JP6127376B2 - 中空の構造体 - Google Patents
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Description
また、本発明は、複数の内面で囲まれた中空空間と、当該中空空間及び外部空間を繋ぐ開口部とを有する中空の構造体において、前記複数の内面の1つである第1の内面及び前記開口部を有する第1の板状部と、前記第1の板状部に設けられて当該第1の板状部の膨張を抑制する第1膨張抑制部材と、前記複数の内面の1つであって、前記第1の内面に対向する第2の内面を有する第2の板状部であって、第1の板状部とは厚さ又は素材が異なり、且つ、前記第1の板状部が吸湿して膨張した場合の前記第1の内面のサイズの変化と、自身が吸湿して膨張した場合の前記第2の内面のサイズの変化との差が小さくなる第2の板状部と、前記第1の板状部及び前記第2の板状部を連結している連結部とを備えることを特徴とする中空の構造体を提供する。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、実施形態における音響構造体1の外観図である。図1では、3軸の直交座標系の座標軸であるX軸、Y軸、Z軸を矢印で示している。各座標軸は、矢印が指す方向が正方向を示し、その反対向きが負方向を示している。音響構造体1は、第1の板部材10と、第2の板部材20と、連結部材30とを備える。音響構造体1は、直方体の形をした中空の構造体である。図1では、音響構造体1は、直方体の各辺がX、Y、Z軸方向に沿うようにして示されている。音響構造体1では、第1の板部材10に設けられている開口部101及び102を介して中空の空間(中空空間)と外部の空間(外部空間)とが繋がっている。
連結部材30(「連結部」の一例)は、第1の防湿部材12及び第2の防湿部材22の中空空間A1側の面に、接着剤等で接着されている。このようにして、連結部材30は、第1の板部材10及び第2の板部材20を連結している。
図5は、音響構造体1とは第1の防湿部材の厚さを変えた他の音響構造体の一例を示す図である。図5(a)では、第1の板部材10x、第2の板部材20及び連結部材30を備える音響構造体1xが示されている。第1の板部材10xは、厚さがL5である第1の防湿部材12x及び第1の木板11を備えている。つまり、音響構造体1xは、第1の防湿部材の厚さ以外は音響構造体1と構成が同じであり、第1の防湿部材の厚さが、L4からL5となって薄く(図4に示すとおり、L5はL4の半分の厚さ)なっている。
上述した実施形態は、本発明の実施の一例に過ぎず、以下のように変形させてもよい。また、上述した実施形態及び以下に示す各変形例は、必要に応じて組み合わせて実施してもよい。
音響構造体は、上述した実施形態では、厚さがL4の第1の吸湿部材とこの厚さがL4の半分であるL5の第2の吸湿部材とを備えていたが、これとは異なる厚さの吸湿部材を備えていてもよい。音響構造体では、例えば、第1の吸湿部材の厚さが第2の吸湿部材の1.5倍であってもよいし、2倍より大きくてもよい。要するに、音響構造体では、第1の吸湿部材の厚さが第2の吸湿部材よりも大きくなっていればよい。これにより、図5に示す音響構造体1xのように開口部との距離に関係なく膨張抑制部材を設ける場合に比べて、上述した内面サイズ差が小さくなる。従って、本変形例においても、実施形態同様に音響構造体の内部に侵入する湿気の影響で生じる変形を抑制することができる。また十分な透湿抵抗により変形を抑えられる場合、双方の厚みは同等、もしくは第1の吸湿部材の厚さが第2の吸湿部材の厚さを下回ってもよい。また第1の吸湿部材と第2の吸湿部材は同じものとしたが、透湿抵抗の異なる部材でも良い。
第1及び第2の吸湿部材は、上述した実施形態では、第1の内面112及び第2の内面212の全体にそれぞれ設けられていたが、これらの内面の一部に設けられていてもよい。
図6は、本変形例における音響構造体の一例を示す図である。図6(a)に示す音響構造体1aは、第1の吸湿部材12a及び第2の吸湿部材22aを備えている。第1の吸湿部材12aは、厚さがL5であり、第1の内面112の全体に設けられている。すなわち、第1の吸湿部材12aは、Y軸方向のサイズがL1である。第2の吸湿部材22aは、厚さが第1の吸湿部材12aと同じL5であり、Y軸方向のサイズがL1の半分のL13である。そのため、第2の内面112の一部は、中空空間A1に露出している。つまり、音響構造体1aは、第2の吸湿部材22aを除く構成が図5に示す音響構造体1xと共通している。
音響構造体は、変形例1及び2では、厚さまたは面積のいずれか一方が互いに同じで、他方が互いに異なる第1及び第2の吸湿部材を備えたが、厚さ及び面積の両方が異なる各吸湿部材を備えてもよい。例えば、実施形態の音響構造体1が備える第1の吸湿部材12の厚さをL4よりも小さくL5よりも大きくし、第2の吸湿部材22のY軸方向のサイズをL1よりも小さくL13よりも大きくする。この場合、第1の木板11及び第2の木板21の両方とも膨張の度合いが大きくなる。これらの膨張の度合いが同じ程度となるような厚さ及び面積の第1及び第2の吸湿部材を各木板に設けることで、図5に示す音響構造体1xのように開口部との距離に関係なく膨張抑制部材を設ける場合に比べて、内面サイズ差を小さくすることができる。さらに、第2の吸湿部材を設けず、第1の吸湿部材を設けるだけで、この内面サイズ差を小さくするようにしてもよい。要するに、前述した膨張抑制部材(第1及び第2の吸湿部材などの吸湿部材)は、第1及び第2の木板のうち、開口部に近いほうの木板(上述した例ではいずれも第1の木板)に少なくとも設けられて、開口部との距離に関係なく膨張抑制部材を設ける場合に比べて、内面サイズ差を小さくするようになっていればよい。
第1及び第2の木板は、上述した実施形態では、どちらも同じ厚さ(L3)に形成されていたが、これには限らない。例えば、実施形態の音響構造体1が備える第1の木板11の厚さをL3よりも小さくしてもよいし、大きくしてもよい。また第1及び第2の木板に異なる木材を用いてもよい。
図7は、本変形例における音響構造体の例を示す図である。図7(a)では、厚さがL3よりも大きい第1の木板11bを備える音響構造体1bが示されている。音響構造体1bは、図3に示す第1の吸湿部材12よりも厚さが小さい第1の吸湿部材12bを備えている。この場合、第1及び第2の木板の膨張率が互いに異なるので、第1及び第2の吸湿部材のどちらかを省いた構造として、上記の内面サイズ差が小さくなるようにしてもよい。
音響構造体は、第1及び第2の木板のような木の板に代えて、木以外のものを板状に形成した板状部を備えていてもよい。例えば、音響構造体は、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂やプラスチック、金属など(いずれも本発明の請求項3の「第2の板状部」の「素材」の一例)を材料とした板状部を備える。図7(b)では、金属を材料に形成された第2の板状部21cを備える音響構造体1cが示されている。第2の板状部21cは、第2の木板21に比べて吸湿して膨張する度合いが極めて小さい(ほとんど膨張しない)。音響構造体1cは、第2の板状部21cに吸湿部材を設けず、且つ、第1の吸湿部材12よりも厚さの大きい第1の吸湿部材12cを備えている。これにより、音響構造体1cでは、第1の木板11bのY軸方向への膨張を抑制する度合いを、音響構造体1の第1の木板11の膨張が抑制される度合いよりも大きくしている。つまり、音響構造体1cは、第1の吸湿部材12cを備えることで、第1の吸湿部材12を備える場合に比べて内面サイズ差が小さくなるようにしている。
第1及び第2の木板は、上述した実施形態では、音響構造体が表す直方体の6つの面のうち、他の面に比べて大きな面(実施形態であれば反射面111及び外面211)を有するものであったが、他の面のほうが大きくなっていてもよい。例えば、図2に示す音響構造体1において、連結部材のZ軸方向の長さをL1またはL2より長くする場合である。この場合、内面サイズ差が大きくなると、連結部材が反ったり、第1及び第2の内面と連結部材とが接着されている部分が剥がれて離れてしまったりするという変形が生じることがある。このような変形も、吸湿部材が上記のように内面サイズ差を小さくすることで、開口部との距離に関係なく膨張抑制部材を設ける場合に比べて、抑制されることになる。また、この場合、連結部材の膨張により変形が生じることもある。その場合は、連結部材に膨張抑制部材を設けて、変形を抑制するようにしてもよい。
上述した実施形態では、第1の木板11及び第2の木板21の外部空間側には何も設けられておらず、これらの木板の反射面111及び外面211が外部空間に露出していたが、これらの面に何らかの部材が設けられていてもよい。例えば、反射面111に化粧部材が設けられていてもよい。化粧部材とは、音響構造体の見栄えをよくするために設けられる部材である。例えば、化粧部材は、布や合成繊維などを材料に形成されている。この化粧部材は、透湿抵抗が木よりも大きいものを材料にして防湿部材としても機能させてもよいし、反射面111に接着して第1の木板の膨張を抑制させてもよい。また、外面211にも、第1及び第2の防湿部材のような防湿部材を設けてもよい。
音響構造体は、上述した実施形態では、第1及び第2の木板の膨張を抑制する膨張抑制部材として、第1の防湿部材12及び第2の防湿部材22を備えていたが、これら以外の部材を備えていてもよい。
図8は、本変形例の音響構造体の一例である音響構造体1dを示す図である。図8(a)では、Z軸負方向に見た音響構造体1dが示されており、図8(b)では、図8(a)の矢視VIII-VIIIにおける音響構造体1dの断面が示されている。音響構造体1dは第1の板部材10dを備え、第1の板部材10dは、第1の木板11及び複数のリブ13を有する。リブ13は、棒状(本発明の「膨張抑制部材」の「形状」の一例)に形成された金属(本発明の「膨張抑制部材」の「素材」の一例)であり、第1の内面112に設けられている。具体的には、第1の内面112には、2本のリブ13を互いに交差させたものをX軸方向に4組並べて、合計8本のリブ13が設けられている。リブ13は、金属であるため、第1の木板11、すなわち木よりも吸湿による膨張の度合いが小さい。従って、リブ13は、第1の木板11のX軸方向及びY軸方向への膨張を抑制する。このようにして、リブ13は、第1の木板11が有する第1の内面112のサイズの拡大を抑制する膨張抑制部材として機能する。
音響構造体は、上述した実施形態では、開口部を介して外部空間と繋がる中空空間を2つ有していたが、1つ有していてもよいし、3つ以上有していてもよい。また、音響構造体は、上述した実施形態では、ヘルムホルツ共鳴器として機能するものであったが、これとは異なる原理で共鳴する共鳴体として機能するものであってもよい。
図10は、本変形例の音響構造体の一例である音響構造体1fを示す図である。図10(a)では、Z軸負方向に見た音響構造体1fが示され、図10(b)では、図10(a)の矢視X-Xにおける音響構造体1fの断面が示されている。音響構造体1fは、第1の板部材10f、第2の板部材20及び連結部材30fを備える。第1の板部材10fは、X軸方向に並ぶ4つの開口部103、104、105及び106を有する。これらの開口部は、Y軸方向の位置がそれぞれ異なっている。連結部材30fは、第1の板部材10f及び第2の板部材20を連結し、これらの板部材の間の空間を、中空空間A3、A4、A5及びA6に仕切っている。中空空間A3、A4、A5及びA6は、開口部103、104、105及び106を介してそれぞれ外部空間と繋がっている。
音響構造体は、上述した実施形態では、平面のみを有する直方体の形をしていたが、曲面を有する形であってもよい。
図11は、本変形例の音響構造体の一例である音響構造体1gを示す図である。図11(a)では、音響構造体1gの外観が示され、図11(b)では、音響構造体1gの断面が示されている。音響構造体1gは、第1の曲板部材10g、第2の曲板部材20g及び連結部材30gとを備える。第1の曲板部材10g及び第2の曲板部材20gは、それぞれ円筒を半分に切った形をしており、接着剤等で互いに接続されて両端が開口する円筒を形作っている。つまり、第1の曲板部材10g及び第2の曲板部材20gは、曲面を有する板の形に形成された板状部である。連結部材30gは、円盤の形をしており、この円筒の両端の開口部分を閉じるように設けられている。第1の曲板部材10g、第2の曲板部材20g及び連結部材30gは、内部に円柱の形をした中空空間A7を形成している。第1の曲板部材10gは、開口部107を有している。中空空間A7は、開口部107を介して外部空間と繋がっている。
音響構造体は、上述した実施形態では、複数の部材(第1、第2の板部材及び連結部材)によって形成されていたが、1つの部材で形成されていてもよい。この場合、音響構造体は、中空空間を囲む複数の内面をそれぞれ備える複数の板状部を備えることになる。この音響構造体では、例えば、これらの板状部のうち開口部が設けられているものの内面に、防湿部材のような膨張抑制部材が設けられる。また、内面に膨張抑制部材を設けることが難しければ、図9に示すフレーム14のようなフレームが、開口部が設けられている板状部の外周を囲うようにして設けられればよい。
音響構造体においては、上述した実施形態では、第1の木板に開口部が設けられていたが、第1の木板ではなく第2の木板に設けられていてもよい。このように、第1及び第2の木板のいずれか一方に開口部が設けられている場合、少なくとも、開口部が設けられている方に対して、防湿部材のような膨張抑制部材が設けられていればよい。また、連結部材に開口部が設けられていてもよい。例えば、連結部材のうち、第2の木板よりも第1の木板に近い位置に開口部が設けられていて、第1及び第2の木板には開口部が設けられていないものとする。この場合、第1及び第2の木板のうち、少なくとも開口部に近い内面を有する木板の方に膨張抑制部材が設けられていればよい。これにより、開口部から侵入してくる湿気の影響で膨張する度合いが大きい方の木板、すなわち、開口部により近い第1の内面を有する第1の木板が、もう一方(第2の木板)よりも膨張が抑制され、内面サイズ差が小さくなって変形が抑制される。要するに、音響構造体においては、第1の木板、第2の木板及び連結部材の少なくともいずれか1つに、開口部が設けられていればよい。
音響構造体においては、上述した実施形態では、第1の木板にのみ開口部が設けられていたが、第2の木板にも(つまり両方の木板に)設けられていてもよい。この場合、例えば、各木板に設けられた開口部のX−Y平面における断面(以下「XY断面」という。)の形が同じであれば、そのXY断面の面積が大きいほうの開口部が設けられている木板にだけ防湿部材を設けるか、より厚さが大きい防湿部材をその木板に設けるとよい。また、XY断面が異なる形である場合は、例えば、XY断面の外周が長いほうの開口部が設けられている木板(前者)のほうが、他方の木板(後者)に比べて、開口部に近接する内面の面積が大きく、侵入する湿気の影響が大きい、すなわち大きく膨張する場合がある。この場合、前者の木板にだけ防湿部材を設けるか、より厚さが大きい防湿部材をその前者の木板に設けるとよい。
本発明は、上記の実施形態や変形例で述べた音響構造体の他に、例えば、楽器や音響機器などを構成する音響構造体にも適用することができる。これらの音響構造体には、音を吸収及び散乱させるために、音響構造体と同様に開口部を介して外部空間と繋がる中空空間を有しているものがある。これらの音響構造体において、上述した木板のように、吸湿して膨張する度合いが図5で述べたような変形が生じる程度に大きなものを材料に用いる場合に、本発明を適用することで、上記の内面サイズ差が小さくなって変形が抑制される。このように、本発明は、開口部を有する様々な中空の音響構造体に適用することができる。
本発明は、上述した音響構造体の他に、例えば、防音室や音響ルームの壁やドア、天井などを構成する中空の構造体にも適用することができる。これらの構造体には、開口部を介して外部空間と繋がる中空空間を有しているものがある。これらの中空の構造体において、上述した木板のように、吸湿して膨張する度合いが図5で述べたような変形が生じる程度に大きなものを材料に用いる場合に、本発明を適用することで、上記の内面サイズ差が小さくなって変形が抑制される。このように、本発明は、開口部を有する様々な中空の構造体に適用することができる。
Claims (3)
- 複数の内面で囲まれた中空空間と、当該中空空間及び外部空間を繋ぐ開口部とを有する中空の構造体において、
前記複数の内面の1つである第1の内面及び前記開口部を有する第1の板状部と、
前記複数の内面の1つであって、前記第1の内面に対向する第2の内面を有する第2の板状部と、
前記第1の板状部及び前記第2の板状部を連結している連結部と、
前記第1の板状部よりも透湿抵抗が大きく、前記第1の内面に設けられ、且つ、前記第2の内面には設けられていない膨張抑制部材と
を備えることを特徴とする中空の構造体。 - 複数の内面で囲まれた中空空間と、当該中空空間及び外部空間を繋ぐ開口部とを有する中空の構造体において、
前記複数の内面の1つである第1の内面及び前記開口部を有する第1の板状部と、
前記複数の内面の1つであって、前記第1の内面に対向する第2の内面を有する第2の板状部と、
前記第1の板状部及び前記第2の板状部を連結している連結部と、
前記第1の板状部に設けられて当該第1の板状部の膨張を抑制する第1膨張抑制部材と、
前記第2の板状部に設けられて当該第2の板状部の膨張を抑制する第2膨張抑制部材であって、前記第1膨張抑制部材とは厚さ、面積、形状又は素材が異なり、且つ、前記第1の板状部が吸湿して膨張した場合の前記第1の内面のサイズの変化と、前記第2の板状部が吸湿して膨張した場合の前記第2の内面のサイズの変化との差が小さくなる第2膨張抑制部材と
を備えることを特徴とする中空の構造体。 - 複数の内面で囲まれた中空空間と、当該中空空間及び外部空間を繋ぐ開口部とを有する
中空の構造体において、
前記複数の内面の1つである第1の内面及び前記開口部を有する第1の板状部と、
前記第1の板状部に設けられて当該第1の板状部の膨張を抑制する第1膨張抑制部材と、
前記複数の内面の1つであって、前記第1の内面に対向する第2の内面を有する第2の板状部であって、第1の板状部とは厚さ又は素材が異なり、且つ、前記第1の板状部が吸湿して膨張した場合の前記第1の内面のサイズの変化と、自身が吸湿して膨張した場合の前記第2の内面のサイズの変化との差が小さくなる第2の板状部と、
前記第1の板状部及び前記第2の板状部を連結している連結部と
を備えることを特徴とする中空の構造体。
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