しかしながら、前述した浮き桟橋は、伸縮したり波や小型船舶から衝撃等を受けたりすることによって浮き桟橋の長手方向に力が加わった場合には、膨張吸収機構が有効に機能して破損することを防止できるが、浮き桟橋の長手方向に直交する方向への力に対しては弱く、この方向に力が加わった場合には、膨張吸収機構が曲がってしまうことがある。そして、このような場合には、膨張吸収機構は元の状態に復元できなくなるため、その機能を発揮できなくなる。
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、浮き桟橋の長手方向だけでなく長手方向に直交する方向に力が加わっても、浮き桟橋を構成する桟橋ユニットの温度変化による伸縮を吸収できる浮き桟橋における桟橋ユニットの連結構造を提供することである。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
前述した目的を達成するため、本発明に係る浮き桟橋における桟橋ユニットの連結構造の構成上の特徴は、複数の桟橋ユニット(21,51)を直線状に連結して構成される浮き桟橋(10A,10B)における所定の隣り合った2つの桟橋ユニットの対向する両縁部(22,57)をジョイント部材(31,52)で連結する浮き桟橋における桟橋ユニットの連結構造(20,50)であって、ジョイント部材が一方から他方に直線状に延びその長手方向の両端部が、浮き桟橋が延びる方向に直交する方向の位置をずらして2つの桟橋ユニットの対向する両縁部に係合しているとともに、ジョイント部材が2つの桟橋ユニットに対して変位可能になって、所定の隣り合った2つの桟橋ユニット間の間隔が変更可能になるようにしたことにある。
本発明によると、ジョイント部材は、長手方向を、浮き桟橋の長手方向に対して傾斜させた状態になる。このため、各桟橋ユニットが温度変化に応じて伸縮するときに、ジョイント部材は浮き桟橋の長手方向の伸縮だけでなく、浮き桟橋の長手方向に直交する方向のずれも吸収できるようになる。このため、浮き桟橋は、長手方向への力が加わったときだけでなく、長手方向に直交する方向への力が加わったときにも安定した状態を維持できるようになる。また、ジョイント部材を直線状に延びる部材で構成したため、構造が単純になるとともに安価になる。なお、この場合のジョイント部材の浮き桟橋の長手方向に対する傾斜角は、45度程度にすることが好ましい。
また、本発明において、ジョイント部材が2つの桟橋ユニットに対して変位可能になっているとは、ジョイント部材の端部と桟橋ユニットの縁部との間に遊び(隙間)が設けられていたり、ジョイント部材の端部と桟橋ユニットの縁部とが互いに回転可能に係合していたり、ジョイント部材が変形可能な材料で構成されていたりすることである。すなわち、2つの桟橋ユニットの伸縮に対して、ジョイント部材が適度に変形したり、位置を変更したりできることである。これによって、各桟橋ユニットが温度に応じて伸縮するときに、2つの桟橋ユニット間の間隔が変更可能になり、これによって桟橋ユニットが破損することを防止できる。また、浮き桟橋の連結構造は、浮き桟橋を構成するすべての隣り合った桟橋ユニット間に設けてもよいし、浮き桟橋を位置決めするガイド用杭の配置等に応じて、所定間隔で設けたり、所定の位置に設けたりしてもよい。
本発明に係る浮き桟橋における桟橋ユニットの連結構造の他の構成上の特徴は、ジョイント部材が弾性部材で構成されていることにある。この場合の弾性部材としては、ゴム部材やばね部材を用いることができる。ばね部材としては板ばねやコイルばねを用いることができる。本発明によると、ジョイント部材自体が変形できるため、2つの桟橋ユニット間に生じる長手方向および長手方向に直交する方向の位置の変化をより確実に吸収することができる。また、ジョイント部材は、浮き桟橋の長手方向に変形したときだけでなく、長手方向に直交する方向に変形したときにも良好な復元力を発揮できる。
本発明に係る浮き桟橋における桟橋ユニットの連結構造のさらに他の構成上の特徴は、隣り合った2つの桟橋ユニットの対向する両縁部にそれぞれ支持部(32,53)が設けられ、ジョイント部材の両端部に支持部に回転可能に係合する回転係合部(31b)が設けられていることにある。
本発明では、隣り合った2つの桟橋ユニットの対向する縁部に、浮き桟橋が延びる方向に直交する方向の位置をずらしてそれぞれ支持部が設けられている。そして、両支持部に掛け渡した状態でジョイント部材の両回転係合部を両支持部に対してそれぞれ回転可能に係合させている。このため、ジョイント部材は、長手方向を、浮き桟橋の長手方向に対して傾斜させた状態で、かつ、両支持部に対して回転可能になり、2つの桟橋ユニット間に生じる長手方向および長手方向に直交する方向の位置の変化を確実に吸収することができる。なお、この場合、支持部を垂直方向に延びる軸部材で構成し、回転係合部を支持部を構成する軸部材が挿通できる穴部で構成したり、支持部を球面状の内面の一部に開口を形成した凹状部材で構成し、回転係合部を先端が凹状部材の内部に摺動可能に設置できる球状に形成された突部で構成したりすることができる。
本発明に係る浮き桟橋における桟橋ユニットの連結構造のさらに他の構成上の特徴は、ジョイント部材は、隣り合った2つの桟橋ユニット間に複数個設けられていることにある。本発明によると、ジョイント部材による隣り合った2つの桟橋ユニットの連結がより安定するようになる。すなわち、ジョイント部材を1個だけ設けた場合には、浮き桟橋の伸縮が大きくてもその伸縮を吸収できるが、ジョイント部材の剛性が低くなり桟橋ユニットの連結状態が不安定になる。このため、ジョイント部材を複数個設けて剛性を大きくすることにより桟橋ユニットの連結状態を安定させることができる。また、ジョイント部材の数は、桟橋ユニットの伸縮の程度によって増減することができる。
本発明に係る浮き桟橋における桟橋ユニットの連結構造のさらに他の構成上の特徴は、複数個のジョイント部材における隣り合った2個のジョイント部材の一方の桟橋ユニットに係合する端部の間隔と、他方の桟橋ユニットに係合する端部の間隔とが異なるようにしたことにある。本発明によると、ジョイント部材による隣り合った2つの桟橋ユニットの連結部分がどの方向からの力に対してもより安定するようになる。この場合、隣合った一対のジョイント部材の配置が、平面視でハの字状になるようにすることが好ましい。これによると、ジョイント部材は、2つの桟橋ユニットに長手方向へのずれだけでなく、長手方向に直交する方向へのずれが生じても安定した状態を維持できる。
本発明に係る浮き桟橋における桟橋ユニットの連結構造のさらに他の構成上の特徴は、隣り合った2つの桟橋ユニット間における上部にジョイント部材を覆うデッキ部材(33,41,44,54)を設けたことにある。本発明によると、温度の変化に伴う伸縮時の隙間の変化による影響が少なくなる。すなわち、デッキ部材を設けることによって桟橋ユニット間に隙間が無くなるか、または隙間が少なくなるため、人が浮き桟橋上を歩行しやすくなるとともに、浮き桟橋上で台車等を走行させる際に、桟橋ユニット間の隙間に車輪が引っ掛かることを防止できる。
本発明に係る浮き桟橋における桟橋ユニットの連結構造のさらに他の構成上の特徴は、デッキ部材を、平面視による先端縁部の形状が三角形の凹部と三角形の凸部とが交互に配置された形状になった凹凸部材(34,35,42,43,55,56)で構成し、凹凸部材を、隣り合った2つの桟橋ユニットにおける対向する部分に、互いの凸部と凹部とが対向するようにして設置したことにある。
本発明によると、対向する2つの凹凸部材が桟橋ユニットの伸縮にしたがって互いに進退するようになるため、デッキ部材が、桟橋ユニットの伸縮を妨げることがない。また、2つの凹凸部材間の隙間はジグザグ状になり、各桟橋ユニットが伸縮した場合には、その伸縮にしたがってジグザグ状の幅が細く(または隙間が無く)なったり、太くなったりする。このため、この隙間に人や台車等の進行方向や進行方向に直交する方向(浮き桟橋が延びる方向やその方向に直交する方向)に直線状になって長く延びる部分がなくなり、人の足や台車の車輪等が引っ掛かることをより確実に防止できる。
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1は、船舶係留施設を示しており、この船舶係留施設には、本実施形態に係る桟橋ユニットの連結構造20を備えた浮き桟橋10A,10Bが設置されている。この浮き桟橋10A,10Bは、陸地11から陸地11の縁部11aに直交して水面WL上に延びており、間隔を保った状態で平行して配置されている。浮き桟橋10A,10Bは、複数の桟橋ユニット21を細長く直線状に連結して本体部分が構成されており、その本体部分の両側の縁部に、それぞれ浮き桟橋10A,10Bが延びる方向に間隔を保って複数の船舶係留装置12a,12bが取り付けられている。
各船舶係留装置12a,12bは、浮き桟橋10A,10Bの縁部に直交するように配置されている。また、浮き桟橋10Aの一方の側部に設けられた船舶係留装置12aと、他方の側部に設けられた船舶係留装置12aとは、それぞれ浮き桟橋10Aの本体が延びる方向の位置をずらして交互に配置され、浮き桟橋10Bの一方の側部に設けられた船舶係留装置12bと、他方の側部に設けられた船舶係留装置12bとは、それぞれ浮き桟橋10Aの本体が延びる方向の位置を一致させて配置されている。また、浮き桟橋10A,10Bの本体部分は、所定間隔で設けられた鋼管からなる複数のガイド用杭13によって水面WLの所定の位置に直線状に位置決めされ、下面に固定された8個の桟橋用フロート14(図2ないし図4参照)によって水面WLに浮いている。
ガイド用杭13は、海底から水面WLの上方に向かって延びており、所定の直線上に位置するようにして一定間隔で配置されている。このガイド用杭13によって、浮き桟橋10A,10Bは水面WL上における設定された位置に留められている。なお、浮き桟橋10A,10Bの本体と、船舶係留装置12a,12bとの連結部分のうちのガイド用杭13が位置する部分には、それぞれ環状のパイルガイド15が設けられており、このパイルガイド15は、ガイド用杭13の外周を囲んでいる。
また、パイルガイド15の内周面には、ガイド用杭13の外周面を保護するためのゴム製の3つのローラ(図示せず)が周方向に間隔を保って設置されている。このローラのうちの少なくとも1つは常時ガイド用杭13の外周面から離れるようにして3つのローラとガイド用杭13との間に隙間が設けられている。この隙間によって、浮き桟橋10A,10Bは、ガイド用杭13に対して移動可能になっている。また、パイルガイド15は、浮き桟橋10A,10Bの本体の長手方向に位置を変更して着脱可能になっている。桟橋用フロート14は、ポリエチレン製の矩形の外殻内に発泡材を充填したもので構成されておりその浮力により浮き桟橋10A,10Bを水面WL上に浮かせている。
桟橋ユニットの連結構造20は、図2および図3に示したように、浮き桟橋10A,10Bを構成する複数の桟橋ユニット21のうちの所定の隣あった2つの桟橋ユニット21を2つの伸縮ジョイント部材31と4組の支持部材32(図2および図3(a)にはそれぞれ2つの支持部材32を図示している。)とで連結して構成されている。各桟橋ユニット21は、図3および図4に示したように形成されている。なお、図3および図4に示した桟橋ユニット21は、図2において右側に配置された桟橋ユニット21に相当し、浮き桟橋10A,10Bの先端に配置されるものであるが、後述する先端部以外の構造は、他の桟橋ユニット21と同一である。
この桟橋ユニット21は、長手方向(図3(a),(b)の左右方向)に間隔を保って平行に配置された一対のジョイントレール22(右端のジョイントレール22は隠れて見えない。)の両端部をそれぞれ一対のフレーム23で連結して矩形に組み付けた枠体を備えている。そして、ジョイントレール22とフレーム23とからなる枠体の上方に、アルミアングル材25a(図5および図9参照)を備えた枠状のデッキ支持台25が設けられている。
なお、一対のフレーム23と、デッキ支持台25における長手方向に沿った両側部分とは一体に組み付けられている。また、一対のフレーム23に、平面視による傾斜方向が交互に逆になるようにして図3の状態での左右方向に間隔を保って複数の補強フレーム23aが掛け渡されるとともに、一対のジョイントレール22の上面に図3(a)での前後方向に間隔を保って複数の補強フレーム23bが掛け渡されており、これらの各部材によって桟橋ユニット21の本体が構成されている。
また、フレーム23とデッキ支持台25との長手方向の両外側面にはそれぞれラバーフェンダー24が取り付けられ、桟橋ユニット21の本体の右端面にはラバーフェンダー24aが取り付けられている。このラバーフェンダー24,24aは、浮き桟橋10A,10Bに船舶を係留させる際に、船舶が桟橋ユニット21に衝突して、船舶や桟橋ユニット21が傷つくことを防止する。また、ラバーフェンダー24とラバーフェンダー24aとの角部にはそれぞれ樹脂製のコーナーフェンダー24bが取り付けられており、これによって、ラバーフェンダー24とラバーフェンダー24aとの角部は保護される。
そして、デッキ支持台25の上面に、複数の板材からなるデッキ26を取り付けて各桟橋ユニット21が構成されている。なお、図3に示した桟橋ユニット21以外の桟橋ユニット21には、ラバーフェンダー24aおよびコーナーフェンダー24bが備わっていない。各桟橋ユニット21は、それぞれ長さが10mで、幅が2mで、高さが648mm(桟橋用フロート14を除いた高さは198mm)程度を標準として設定されている。なお、図3(a)は、アルミアングル材25aおよびデッキ26の一部を除いた桟橋ユニット21を上方から見た状態を示しており、図3(b)は桟橋ユニット21を側方から見た状態を示している。また、図4は、図3(a)の4−4断面を示している。
図5は、一方の桟橋ユニット21のジョイントレール22(図2で右側に配置された桟橋ユニット21のジョイントレール22)に、2組の支持部材32を用いて2個の伸縮ジョイント部材31を取り付けた状態を示しており、ジョイントレール22の外側部における上下には、外側(図5の手前)に向かって平行して突出した突出片22a,22bが形成されている。突出片22aには、上下に貫通する一対の軸挿通穴22c(図9に一方の軸挿通穴22cを図示)が桟橋ユニット21の幅方向に間隔を保って形成されており、突出片22bには、上下に貫通する一対の軸挿通穴22d(図9参照)が桟橋ユニット21の幅方向に一対の軸挿通穴22cと同じ間隔を保って形成されている。
そして、それぞれの上下に位置する軸挿通穴22cと軸挿通穴22dとに支持部材32が取り付けられ、支持部材32を介して伸縮ジョイント部材31が取り付けられている。なお、2つの伸縮ジョイント部材31は、図3(a)に示したように離れた位置に配置されているが、図5においては、拡大図の中に2つの伸縮ジョイント部材31を位置させるために、接近した位置にあるように示している。
伸縮ジョイント部材31は、図6に示したように、平面視が長円形で、側面視が長方形で、正面視が正方形になった幅と高さとが同じで前後(図6の左右)に長い部材で構成されている。また、伸縮ジョイント部材31の長手方向の両端側には、それぞれ上下に貫通する縦穴31aが形成され、その縦穴31a内に、円筒状の回転係合部31bが固定されている。伸縮ジョイント部材31の本体部分は、EPDM(耐候性剛性ゴム)で構成され、回転係合部31bはMCナイロン(商品名)やポリアセタール等からなるプラスチック材料で構成されている。
また、伸縮ジョイント部材31は、図面6に示した状態での左右方向の長さが200mmで、幅と高さとが70mmで、平面視による両端が半径35mmの半円形に形成され、回転係合部31bは、M16用カラーで構成されている。支持部材32は、本発明に係る支持部を構成するもので、図7に示したように、ボルト32a、ナット32bおよび一対のワッシャ32cからなっている。ボルト32aは、頭部と胴部とを備えたM16ボルトで構成されており、胴部が回転係合部31b内を挿通可能になっている。
そして、桟橋ユニット21に伸縮ジョイント部材31を取り付ける際には、まず、突出片22a,22bの一方の軸挿通穴22cと軸挿通穴22dとに回転係合部31bを合わせて、伸縮ジョイント部材31の一方の端部側部分を突出片22a,22b間に配置する。そして、ボルト32aを一方のワッシャ32cに通し、そのボルト32aの胴部を突出片22bの下方から軸挿通穴22d、伸縮ジョイント部材31の回転係合部31bおよび突出片22aの軸挿通穴22cに通したのちに、他方のワッシャ32cに通してボルト32aの先端部にナット32bを螺合させる。これによって、一方の伸縮ジョイント部材31が桟橋ユニット21に取り付けられる。同様にして、突出片22a,22bの他方の軸挿通穴22cと軸挿通穴22dとに支持部材32を介して他方の伸縮ジョイント部材31の一方の端部側部分を取り付ける。
このようにして、一方の桟橋ユニット21のジョイントレール22に取り付けられた一対の伸縮ジョイント部材31の他端側部分は、他方の桟橋ユニット21のジョイントレール22(図2で左側に配置された桟橋ユニット21の右側のジョイントレール22)に連結される。この他方の桟橋ユニット21にも突出片22a,22bが備わっており、突出片22aに、それぞれ上下に貫通する一対の軸挿通穴22e(図9に一方の軸挿通穴22eを図示)が、桟橋ユニット21の幅方向に間隔を保って形成され、突出片22bに、それぞれ上下に貫通する一対の軸挿通穴22f(図9参照)が、桟橋ユニット21の幅方向に間隔を保って形成されている。
この他方の桟橋ユニット21に形成された一対の軸挿通穴22eの間隔および一対の軸挿通穴22fの間隔は、前述した一方の桟橋ユニット21の一対の軸挿通穴22cの間隔および一対の軸挿通穴22dの間隔よりも広くなっている。このため、前述した方法と同じ方法で、他方の桟橋ユニット21に一対の伸縮ジョイント部材31を組み付けたときに、一対の伸縮ジョイント部材31は、上方から見たときの形状が「ハ」の字状になるように設置される。なお、伸縮ジョイント部材31に、回転係合部31bを設けずに、伸縮ジョイント部材31の本体に直接ボルト32aを通した場合には、高温時に伸縮ジョイント部材31の本体とボルト32aとが溶着して、伸縮ジョイント部材31が変形する虞があるが、回転係合部31bを設けることによってこのようなことを防止できる。
また、両桟橋ユニット21のジョイントレール22の上方には、それぞれ前述したアルミアングル材25aが設けられ、この両アルミアングル材25aの上面におけるデッキ26間に、伸縮デッキ33が設置されている。この伸縮デッキ33は、図8に示したように、平面視が三角形の板状の4個のゴム材34aと、平面視が略台形の板状の1個のゴム材34bとを並列させて形成された凹凸部材34と、平面視が三角形の板状の4個のゴム材35aと、平面視が略台形の板状の1個のゴム材35bとを並列させて形成された凹凸部材35とで構成されている。
凹凸部材34を形成するゴム材34a,34bおよび凹凸部材35を形成するゴム材35a,35bは、それぞれ互いに僅かな間隔を保ち、三角形や台形の底辺部分をデッキ26の端面に沿わせた状態でねじ33aによってアルミアングル材25aに固定されている。各ゴム材34a,34bおよび各ゴム材35a,35bの先端部は、それぞれ固定されたアルミアングル材25aから外部側に突出して対向するアルミアングル材25aの上面に延びており、凹凸部材34,35の先端縁部はそれぞれジグザグ状に形成されている。
なお、ゴム材34a,35aの底辺部の長さは112mmに設定され、底辺部と頂部との間の長さは120mmに設定され、厚みは20mmに設定されている。ゴム材34b,35bの底辺部の長さは99mmに設定され、底辺部と頂部との間の長さは125mmに設定され、厚みは20mmに設定されている。また、各ゴム材34a,34b間および各ゴム材35a,35b間の間隔はそれぞれ8mmに設定されている。
そして、図8に示したように、凹凸部材34と凹凸部材35とは、凹凸部材34の凹部に凹凸部材35の凸部が対向し、凹凸部材34の凸部に凹凸部材35の凹部が対向するように配置されている。また、図9に示したように、両桟橋ユニット21のジョイントレール22間には40mm程度の隙間が設けられ、アルミアングル材25a間には30mm程度の隙間が設けられ、凹凸部材34,35の先端とそれに対向するデッキ26の端面との間には20mm程度の隙間が設けられている。なお、前述した隙間は、気温が、20℃程度を基準にしており、夏季の気温の高い時期には、浮き桟橋10A,10Bが膨張することにより、隙間は、前述した長さよりも短くなる。また、気温が20℃以下になる場合には、浮き桟橋10A,10Bが多少収縮することにより、隙間は、前述した長さよりも長くなる。
このように構成したため、例えば、気温が20℃程度になる時期に、伸縮ジョイント部材31が伸長も収縮もしない自然な状態になる様にして、各桟橋ユニット21を離した状態で桟橋ユニットの連結構造20を組み付けると、夏季に、浮き桟橋10A,10Bが膨張しても、伸縮ジョイント部材31に負荷がかかるため伸縮ジョイント部材31が収縮したりや変形したりする。これによって、桟橋ユニット21どうしが互いに押圧しあって破損するといったことが生じなくなる。また、桟橋ユニットの連結構造20を組み付ける際に、各桟橋ユニット21が収縮するときにガイド用杭13に接近するパイルガイド15の内周部分をガイド用杭13に接近させておくと、夏季に各桟橋ユニット21が膨張したときにパイルガイド15の内周部の他方側がガイド用杭13に接近していく。このため、パイルガイド15がガイド用杭13に押し付けられて破損することが生じなくなる。
さらに、冬季の際に、例え、浮き桟橋10A,10Bが収縮しても、伸縮ジョイント部材31が伸長して、桟橋ユニット21どうしの連結状態を維持する。また、伸縮ジョイント部材31が伸長することによって、パイルガイド15がガイド用杭13に押し付けられて破損することも生じなくなる。このため、季節に応じて、パイルガイド15の取り付け位置を変更するといった面倒な作業を行う必要がなくなる。この場合、浮き桟橋10A,10Bをガイド用杭13に設置する際に、春季や秋季の半ばに、パイルガイド15の中央部分にガイド用杭13が位置するようにしておけば、その後、パイルガイド15の位置調整は不要になる。
以上のように、本実施形態に係る桟橋ユニットの連結構造20では、隣り合った2つの桟橋ユニット21の対向するジョイントレール22をゴムからなる伸縮ジョイント部材31で連結している。また、この伸縮ジョイント部材31は、長手方向を、浮き桟橋10A,10Bの長手方向に対して傾斜させて両桟橋ユニット21を連結している。このため、各桟橋ユニット21が温度に応じて伸縮するときに、伸縮ジョイント部材31は伸縮したり変形したりすることにより浮き桟橋10A,10Bの長手方向の伸縮だけでなく、浮き桟橋10A,10Bの長手方向に直交する方向の伸縮も吸収できるようになる。このため、浮き桟橋10A,10Bは、膨張、収縮により、長手方向への力が加わったときだけでなく、長手方向に直交する方向への力が加わったときにも安定した状態を維持することができるようになる。
また、伸縮ジョイント部材31は、2つの桟橋ユニット21の対向するジョイントレール22にそれぞれ設けられた支持部材32のボルト32aを回転係合部31bに挿通させることにより両桟橋ユニット21を連結している。このため、伸縮ジョイント部材31は、伸縮したり変形したりするだけでなく、両桟橋ユニット21に対して回転可能になり、2つの桟橋ユニット21間に生じる長手方向および長手方向に直交する方向の位置の変化を確実に吸収することができる。
さらに、伸縮ジョイント部材31は、2つの桟橋ユニット21間に2個設けられ、その配置が平面視で「ハ」の字状になっているため、伸縮ジョイント部材31による2つの桟橋ユニット21の連結がより安定するとともに、2つの桟橋ユニット21の連結部分がどの方向からの力に対してもより安定するようになる。また、伸縮ジョイント部材31は、一方から他方に直線状に延びる構造が単純な部材で構成されているため、製造が容易になるとともに安価になる。さらに、伸縮ジョイント部材31が直線状に延びていることに加えて、伸縮ジョイント部材31は支持部材32を用いてジョイントレール22に取り付けられるためその取り付け操作も容易になる。
また、隣り合った2つの桟橋ユニット21間における上部に伸縮デッキ33を設けたため、桟橋ユニット21間に隙間が大きくなった際にもその隙間が塞がれて歩行者が浮き桟橋10A,10Bの上を歩行しやすくなるとともに、浮き桟橋10A,10Bの上で台車等を走行させる際に、桟橋ユニット21間の隙間に車輪が引っ掛かることを防止できる。さらに、伸縮デッキ33を、凹凸部材34と凹凸部材35とのそれぞれの三角形の凹部と三角形の凸部とを対向させて配置されているため、伸縮デッキ33が、桟橋ユニット21の伸縮を妨げることがない。また、伸縮デッキ33に生じる隙間はジグザグ状になるため、この隙間に歩行者や台車等の進行方向や進行方向に直交する方向に直線状になって長く延びる部分がなくなり、人の足や台車の車輪等が引っ掛かることをより確実に防止できる。
つぎに、前述した桟橋ユニットの連結構造20と、伸縮ジョイント部材31に代えて、図10に示した伸縮ジョイント部材36を用いた比較例1に係る桟橋ユニットの連結構造と、図11に示した伸縮ジョイント部材37を用いた比較例2に係る桟橋ユニットの連結構造とに対して特性実験を行った。その結果を、以下に説明する。この特性実験は、荷重試験機を用いて伸縮ジョイント部材31等を圧縮し、そのときの圧縮載荷に対する変位量を測定することで行った。また、伸縮ジョイント部材31等に対する要求性能としては、浮き桟橋10A,10Bが熱膨張により延伸したときに、ガイド用杭13の表面に施されている防食塗装に影響を与えない程度のばね定数である100kg/cmを目安とした。
比較例1で用いる伸縮ジョイント部材36は、平面視が前後(図10の左右方向)の長さが幅よりも僅かに長い長方形で、正面視および側面視が長方形の部材で構成されており、平面視による四隅の近傍には、それぞれ上下に貫通する縦穴36aが形成されている。そして、縦穴36a内に、円筒状の回転係合部36bが固定されている。この伸縮ジョイント部材36は、前後の長さが160mmで、幅が150mmで、高さが70mmで、平面視による四隅には半径が小さな曲面が形成されている。
また、回転係合部36bは、M20用カラーで構成されている。各回転係合部36bは、前後方向において互いの中心の間隔を92mmにして、それぞれの中心と伸縮ジョイント部材36の前端面または後端面との間隔を34mmにして配置され、幅方向において互いの中心の間隔を67mmにして、それぞれの中心と伸縮ジョイント部材36の左端面または右端面との間隔を41.5mmにして配置されている。また、伸縮ジョイント部材36は伸縮ジョイント部材31と同様、本体がEPDMで構成され、回転係合部36bがMCナイロン(商品名)やポリアセタール等からなるプラスチック材料で構成されている。
比較例2で用いる伸縮ジョイント部材37は、平面視が前後(図11の左右方向)の長さが幅よりも僅かに長い長方形で、正面視および側面視が長方形の部材で構成されており、平面視による四隅の近傍には、それぞれ上下に貫通する一対の縦穴37aと、一対の縦穴38aとが形成されている。一対の縦穴37aは、左右(図11では上下)に配置された円形の穴で構成され、一対の縦穴38aは、左右に配置され前後に長い長円形の穴で構成されている。そして、縦穴37a内に、円筒状の回転係合部37bが固定され、縦穴38a内に、長孔を備えた長円筒状の回転係合部38bが固定されている。この伸縮ジョイント部材37は、前後の長さが175mmで、幅が150mmで、高さが70mmで、平面視による四隅には半径が小さな曲面が形成されている。
また、回転係合部37bは、M20用カラーで構成され、回転係合部38bは、長手方向の外径が70mmになったM20用カラーで構成されている。一対の回転係合部37bは、それぞれの中心と伸縮ジョイント部材37の前端面(図11の左側の端面とする)との間隔を34mmにし、幅方向においてそれぞれの中心と伸縮ジョイント部材37の左端面または右端面との間隔を41.5mm(互いの中心の間隔は67mmなる)にして配置されている。
また、一対の回転係合部38bは、それぞれの中心と伸縮ジョイント部材37の後端面(図11の右側の端面とする)との間隔を54mmにし、幅方向においてそれぞれの中心と伸縮ジョイント部材37の左端面または右端面との間隔を41.5mm(互いの中心の間隔は67mmになる)にして配置されている。すなわち、伸縮ジョイント部材37は、回転係合部38bが回転係合部36bよりも前後に長くなったため、伸縮ジョイント部材36よりも前後に長くなっており、それ以外の構成は、伸縮ジョイント部材36と同じものである。
特性実験においては、前述した桟橋ユニットの連結構造20を実施例とし、実施例における2個の伸縮ジョイント部材31に代えて、2個の伸縮ジョイント部材36を用いたものを比較例1とし、2個の伸縮ジョイント部材37を用いたものを比較例2とした。また、比較例1においては、伸縮ジョイント部材36の長手方向の両端を2つの桟橋ユニット21に掛け渡し、比較例2においては、一方の桟橋ユニット21に一対の回転係合部37bを係合させ、他方の桟橋ユニット21に一対の回転係合部38bを係合させた。
そして、圧縮の最大変位を30mmとして載荷することにより計測を行った。なお、伸縮ジョイント部材37は長孔を有する回転係合部38b備えて載荷時のゴム反力は発生しない構成になっているため、比較例2においては、変位を±20mmとし、周期を2.0秒とした繰り返し変位時の状況(伸縮ジョイント部材37の変形の有無、機械的ながたつき、異音の発生)を観測した。
この結果、実施例では、変位が0〜10mmでばね定数は150kgf/cm、変位が10〜20mmでばね定数は80kgf/cm、変位が20〜30mmでばね定数は70kgf/cmとなり、変位が0〜30mmの平均でのばね定数は100kgf/cmであった。また、幅方向の変位は最大0.046mmであった。比較例1では、変位が0〜20mmの平均でばね定数は650kgf/cmであった。また、比較例2では、変位が0〜20mmの平均でばね定数は55kgf/cmであった。この場合、伸縮ジョイント部材37の反力でなく、ボルト32aやジョイントレール22等の取付部との摩擦によって反力が発生した。また、変位発生時に異音は生じなかった。なお、前述したばね定数は、それぞれ1個の伸縮ジョイント部材31等の値に換算したものである。
以上のように、実施例では、伸縮ジョイント部材31の特性として、変形初期の変位が小さいときにはばね定数は大きく、変位が大きくなるとばね定数は小さくなる傾向を示したが、1個の伸縮ジョイント部材31のばね定数は平均で100kgf/cmとなった。この値は、当所目安として設定したばね定数と同じであり実施例では良好な結果を得ることができた。また、幅方向の変位は最大で0.046mmと小さく、目視では確認できない大きさであった。このことから、伸縮ジョイント部材31は、適正なばね定数を備えているとともに、桟橋ユニットの連結構造20の長手方向に対して傾斜して配置されていても、桟橋ユニットの連結構造20に幅方向の大きな変位を生じさせないことが分かる。
また、比較例1では、平均ばね定数は実施例と比較して、6.5倍となり、伸縮ジョイント部材36には大きな力が加わっても僅かな変位しか生じない。このため、伸縮ジョイント部材36を用いて、桟橋ユニットの連結構造を構成した場合には、熱膨張時に、ガイド用杭13の表面の防食塗装が破損する虞が生じ、気温に応じてパイルガイド15の位置調整が必要になる。このことから、伸縮ジョイント部材36は、桟橋ユニットの連結構造に用いる連結部材としては適していないことが分かる。
また、比較例2では、比較例1の伸縮ジョイント部材36よりもさらに伸縮ジョイント部材37に変位が生じ難いが、その分、回転係合部38bがボルト32aに対して移動する。このため、その接触移動の繰り返しが長期にわたると回転係合部38bが破損する虞がある。また、伸縮ジョイント部材37の本体における回転係合部38bの周囲部分の伸縮時の変形が大きいため、長期の使用に際しては疲労破損することも考えられる。さらに、伸縮ジョイント部材37を用いて、桟橋ユニットの連結構造を構成する場合には、設置時に風や波などがあると回転係合部38bがボルト32aに対して移動するため、位置調節が難しくなる。このようなことから、伸縮ジョイント部材37は、桟橋ユニットの連結構造に用いる連結部材としては適していないことが分かる。
つぎに、前述した桟橋ユニットの連結構造20と、伸縮デッキ33に代えて、図12に示した伸縮デッキ41を用いた変形例1に係る桟橋ユニットの連結構造と、図13に示した伸縮デッキ44を用いた変形例2に係る桟橋ユニットの連結構造とに対して特性実験を行った。その結果を、以下に説明する。この特性実験は、桟橋ユニットの連結構造20等の上面での人の歩行や台車の走行に支障がでる隙間や段差が生じるか否かを観察することで行った。また、伸縮デッキ33等に対する要求性能としては、人の歩行時や台車の走行時に支障をおよぼす隙間や段差を発生させないこと、および、異音を発生するような機械的ながたつきがないこととした。
変形例1で用いる伸縮デッキ41は、平面視が幅よりも前後の長さがやや長い長方形の板状の3個のゴム材42aを間隔を保って並列させて形成された凹凸部材42と、ゴム材42aと同一の3個のゴム材43aを間隔を保って並列させて形成された凹凸部材43とで構成されている。凹凸部材42を形成するゴム材42aおよび凹凸部材43を形成するゴム材43aは、それぞれゴム材42a,43aの幅と同じ長さの間隔を保ち、長手方向に直交する縁部をデッキ26の端面に沿わせた状態でねじ41aによってアルミアングル材25aに固定されている。
各ゴム材42a,43aの先端部は、それぞれ固定された対応するアルミアングル材25aから外部側に突出して対向するアルミアングル材25aの上面に延びており、凹凸部材42,43の先端縁部はそれぞれ凹凸状に形成されている。なお、ゴム材42a,43aの前後の長さは120mmに設定され、幅は100mmに設定され、厚みは20mmに設定されている。そして、図12に示したように、凹凸部材42と凹凸部材43とは、凹凸部材42の凹部に凹凸部材43の凸部が対向し、凹凸部材42の凸部に凹凸部材43の凹部が対向するように配置されている。
変形例2で使用される伸縮デッキ44は、幅方向に延びる長方形の1枚のアルミニウム縞板で構成されており、一方のアルミアングル材25a(図13では隠れて見えない方のアルミアングル材25a)だけに設けられている。この伸縮デッキ44は、前後の長さが120mmに設定され、幅は600mmに設定され、厚みは5mmに設定されている。そして、幅方向の縁部をデッキ26の端面に沿わせた状態でねじ44aによって一方のアルミアングル材25aに固定され、その先端部は、アルミアングル材25aから外部側に突出して、対応するアルミアングル材25aの上面に延びている。
この特性実験においては、前述した桟橋ユニットの連結構造20を実施例とし、実施例における伸縮デッキ33に代えて、伸縮デッキ41を用いたものを変形例1とし、伸縮デッキ44を用いたものを変形例2とした。そして、桟橋ユニットの連結構造20等の上面を人が歩行したり台車を走行させたりして、そのときの桟橋ユニットの連結構造20等の状態を目視により観察した。
この結果、実施例では、伸縮デッキ33の隙間によって歩行者の歩行に支障が生じることはなく、走行する台車の車輪が隙間に落ち込むことはなかった。また、桟橋ユニット21間で上下に10mm程度の段差が発生したが歩行者が気づかない程度のものであった。変形例1では、伸縮デッキ41の隙間の影響がかなり生じ、歩行時に歩行者の足が引っかかる場合があった。さらに、台車の走行においては、台車の走行方向によっては車輪が隙間に落ち込むこともあった。また、この変形例1では桟橋ユニット21間で上下に5mm程度の段差が発生したがこれは歩行者が気づかない程度のものであった。
変形例2では、伸縮デッキ44によって生じる隙間に加えて、伸縮デッキ44とそれに対向するデッキ26との間に5mm程度の段差が生じ、この段差と隙間に歩行者の足が引っかかる場合があった。また、台車の車輪がこの隙間に落ち込むことはないが、段差によるがたつきが多少発生した。さらに、歩行時や台車の走行時に、伸縮デッキ33が対向するアルミアングル材25aに当接することによる接触音が発生した。
以上のように、実施例では、人の歩行時、台車の走行時ともに支障は生じなかった。このことから、伸縮デッキ33は、桟橋ユニットの連結構造20に適したものであることが分かる。また、変形例1では、人の歩行時に段差で引っかかりが感じられ、台車の走行時に車輪の落ち込みが生じることがあるが、伸縮デッキ41が桟橋ユニットの連結構造に使用できないほどのものではない。さらに、変形例2でも、歩行時に段差で引っかかりが多少あり、台車走行時に車輪ががたつくことはあるが、伸縮デッキ44が桟橋ユニットの連結構造に使用できないほどのものではない。ただし、伸縮デッキ44を用いた場合には、桟橋ユニットの連結構造にねじれが生じると、伸縮デッキ44が浮き上がる虞がある。
つぎに、前述した両特性実験において最も良好な結果が得られた実施例に対して、前述した荷重試験機を用いて、伸縮ジョイント部材31のせん断試験を行った。このせん断試験は、一対の伸縮ジョイント部材31によって連結された2つの桟橋ユニット21の一方を固定して他方に上方から下方に向けて荷重を掛けて縦変位を計測することにより行った。その結果、最大荷重290kgf(2.9kN)載荷時の縦変位は38mmであった。このため、伸縮ジョイント部材31の縦方向のばね定数は、290kgf/3.8cmで、76.3kgf/cmとなる。
この値は、浮き桟橋を人が歩行したり台車を走行させたりするためには十分なものである。今回の試験では、一方の桟橋ユニット21を固定しているが、実際の浮き桟橋10A,10Bは、桟橋用フロート14によって浮遊しており、これによって、荷重は双方の桟橋ユニット21に分散されるため、伸縮ジョイント部材31の縦変位は前述した試験結果の値よりも小さくなる。このため、実際の浮き桟橋10A,10Bではより安全性が高まる。
また、図14は、前述した実施形態の第3変形例に係る桟橋ユニットの連結構造50の要部を示している。この桟橋ユニットの連結構造50では、隣あった2つの桟橋ユニット51を4つの伸縮ジョイント部材52と8組の支持部材53とで連結して構成されている。そして、図14(a)(桟橋ユニットの連結構造50を下方から見た図)に示した左側2つの伸縮ジョイント部材52と、右側2つの伸縮ジョイント部材52とは、それぞれ下方から見たときの形状が「ハ」の字状になるように設置されている。また、伸縮デッキ54は、図14(b)に示したように、平面視が三角形の板状の22個のゴム材55aを並列させてその両側に、ゴム材55aを二等分して形成されたゴム材55b,55cを配置して形成された凹凸部材55と、平面視が三角形の板状の23個のゴム材56aを並列させて形成された凹凸部材56とで構成されている。
また、ジョイントレール57、フレーム58、補強フレーム58aおよび枠状のデッキ支持台59はそれぞれ前述した桟橋ユニットの連結構造20の対応する部分よりも長くなっており、補強フレーム58aは、前述した桟橋ユニットの連結構造20よりも多く設けられている。この桟橋ユニットの連結構造50のそれ以外の部分の構成は、前述した桟橋ユニットの連結構造20と同じである。本変形例によると、伸縮ジョイント部材52による2つの桟橋ユニット51の連結がより安定するようになる。この桟橋ユニットの連結構造50のそれ以外の作用効果は、前述した桟橋ユニットの連結構造20の作用効果と同様である。なお、本変形例においては、使用する伸縮ジョイント部材52の個数は、桟橋ユニット51の幅に応じて適宜変更することができる。
また、本発明に係る桟橋ユニットの連結構造は、前述した実施形態に限定するものでなく、適宜変更して実施することが可能である。例えば、前述した桟橋ユニットの連結構造20では、伸縮ジョイント部材31を2個設け、桟橋ユニットの連結構造50では、伸縮ジョイント部材52を4個設けているが、この伸縮ジョイント部材31等は、1個であってもよいし、3個,5個,6個等の複数個であってもよい。また、桟橋ユニットの連結構造50では、伸縮ジョイント部材52を左右の2個づつをそれぞれ「ハ」の字状に配置しているが、左側の一対を平行させて傾斜させ、右側の一対を左側の一対と逆方向に傾斜させて平行させてもよい。
さらに、伸縮ジョイント部材31,52を構成する材料としては、EPDMに限らず、耐候性および伸縮性を備えた材料であれば他のゴム材料や、ばね部材等を用いることもできる。また、回転係合部31bを構成する材料としてもMCナイロンやポリアセタール以外のプラスチック材料やプラスチック材料以外の材料を用いることもできる。さらに、前述した実施形態では、伸縮ジョイント部材31,52を、それぞれ支持部材32,53を介してジョイントレール22,57に連結しているが、伸縮ジョイント部材31,52を直接ジョイントレール22,57に連結してもよい。また、桟橋ユニットの連結構造を構成するそれ以外の部分の構成についても本発明の技術的範囲内で適宜変更することができる。