JP6124945B2 - 高分子フィルム、位相差フィルム、偏光板、液晶表示装置、及び化合物 - Google Patents

高分子フィルム、位相差フィルム、偏光板、液晶表示装置、及び化合物 Download PDF

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Description

本発明は、位相差フィルム、偏光板保護フィルム等の種々の用途に利用可能な高分子フィルム、並びにそれを利用した位相差フィルム、偏光板及び液晶表示装置に関する。また、本発明は、高分子フィルムの添加剤等、種々の用途に有用な新規な化合物にも関する。
液晶表示装置の表示特性は近年ますます向上している。液晶表示装置の視野角特性に関しては、偏光板と液晶セルとの間に、位相差フィルムを配置することにより、著しく改善できることが知られている。視野角補償を達成するためには、用いられる位相差フィルムの光学特性、具体的には面内レターデーション(Re)及び/又は厚み方向レターデーション(Rth)が、表示モードに応じて、適切な範囲内に制御されていることが好ましい。
位相差フィルムのRe、Rthを制御する方法の一つとして、高分子フィルムにレターデーション上昇剤を添加する方法が開示されている(特許文献1参照)。この文献に開示されているレターデーション上昇剤は、ケト−エノール互変異性可能な構造をその構成要素として含む分子錯合体を形成しうる化合物であり、その一例としてグアナミン骨格等の1,3,5−トリアジン環を含む化合物が開示されている。また、その他のレターデーション上昇剤として、円盤状化合物や、1,3,5−トリアジン環を含む他の構造を有する化合物が開示されている(特許文献2及び3参照)。
特開2004−109410号公報 特開2001−166144号公報 特開2003−344655号公報
一方、本発明者らが、この様な従来のレターデーション上昇剤を添加した高分子フィルムについて検討したところ、使用環境の湿度変化に伴うRe及びRthの変動(Re及びRthの湿度依存性と称することがある)が大きいことが判明した。
本発明は使用環境の湿度変化に伴うRe及びRthの変動が軽減された高分子フィルムを提供すること、並びにそれを用いた位相差フィルム、偏光板及び液晶表示装置を提供することを課題とする。
また、本発明は、溶液安定性が良好であり、高分子フィルムの添加剤等、種々の用途に有用な新規な化合物を提供することを課題とする。
本発明者らは、Re及びRth発現効果を高めることを目的に、様々な化合物について、添加剤としての有用性を種々検討した。その結果、ピリミジン環又はピリジン環を含み、環上の所定の位置に所定の置換基を有する化合物群は、高分子フィルムのレターデーション(Re及び/又はRth)を上昇させる作用があることを見出し、さらに、予期せぬことに、当該化合物を添加することによってRe及び/又はRthが制御された高分子フィルムは、使用環境の湿度変化に伴うRe及びRthの変動が、従来のレターデーション上昇剤を添加することによってRe及び/又はRthが制御された高分子フィルムと比較して、顕著に軽減されていることを見出した。これらの知見に基づきさらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
なお、本発明に用いられる、所定の位置に所定の置換基を有するピリミジン環又はピリジン環を有する化合物群のレターデーション上昇の作用は、トリアジン環を有する分子錯合体の形成を必要としない点で特許文献1に開示のレターデーション上昇剤の作用と異なり、また円盤状であることを必要としない点で引用文献2に開示のレターデーション上昇剤の作用と異なる。また1,3,5−トリアジン環を含まない点で引用文献3に開示のレターデーション上昇剤と異なる。
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 下記一般式(I)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩の少なくとも1種を含有する高分子フィルム:
一般式(I)中、Yは−N−又は−C(−Qd−Rd)−を表し;Qa、Qb、Qc及びQdはそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し;Ra、Rb、Rc及びRdはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン基又は複素環基を表し、RaとRb及びRaとRdはそれぞれ連結して環を形成してもよく;X2は、単結合又は2価の連結基を表し、X1は、単結合又は下記2価の連結基群G1
(各式中、*側が前記各式で表される化合物中のピリミジン環又はピリジン環に置換しているN原子との連結部位であり;Rgは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を表す。)から選択される2価の基を表し;R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、互いに連結して環を形成してもよい;ただし、Qc−Rc及びN(X11)X22のうち一つは−NH2であるが、同時に−NH2になることはなく、Yが窒素原子で且つN(X11)X22が−NH2の場合、−Qa−Raは−NH2でない。
[2] 前記一般式(I)が、下記一般式(II)である[1]の高分子フィルム:
一般式(II)中の各記号の定義は、一般式(I)中のそれぞれと同義であり、Yは−N−あるいは−C(−Qd−Rd)−を表し、Zは−N−あるいは−C(−Qb−Rb)−を表し、Y及びZが同時に−N−になることはない;X1は、単結合又は下記2価の連結基群G2で表される二価の連結基からなる群から選択される連結基を表す;X2は、単結合又は二価の連結基を表す;R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環を表し、−X1−R1と−X2−R2の少なくとも一方は水素原子以外の置換基である;Qa、Qb及びQdはそれぞれ独立に、単結合、−O−、−S−、又は−NR’−を表し、R’は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環を表し、QaとRa、QdとRd、QbとRb又は−Qa−Ra−Rd−Qd−、−Qa−Ra−Rb−Qb−は連結して環を形成してもよい;Raは、水素原子、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環を表す;ただし、Zが−N−の場合は−Qa−Raはアミノ基以外の前記置換基を表す;Rb及びRdはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環を表す;
2価の連結基群G2中の各記号の定義は、2価の連結基群G1中のそれぞれと同義である。
[3] 前記一般式(II)が、一般式(III)、一般式(IV)又は一般式(V)である[2]の高分子フィルム:
一般式(III)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義である;
一般式(IV)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義である。
一般式(V)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義である。
[4] 前記一般式(II)が、下記一般式(IIIa)、(IVa)又は(Va)である[2]の高分子フィルム:
一般式(IIIa)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義である;
一般式(IVa)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義である。
一般式(Va)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義である。
[5] 前記一般式(II)が、一般式(IIIb)、(IVb)又は(Vb)である[2]の高分子フィルム:
一般式(IIIb)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義である;
一般式(IVb)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義である。
一般式(Vb)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義である。
[6] 前記一般式(II)が、一般式(IIIc)、(IVc)、又は(Vc)である[2]の高分子フィルム:
一般式(IIIc)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり;R9は−O−Ar、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し;Arはアリール基を表す;
一般式(IVc)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり;R9は−O−Ar、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し;Arはアリール基を表す;
一般式(Vc)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり;R9は−O−Ar、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し;Arはアリール基を表す。
[7] 前記一般式(II)が、一般式(IIId)、(IVd)又は(Vd)である[2]の高分子フィルム:
一般式(IIId)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義である;
一般式(IVd)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義である;
一般式(Vd)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義である。
[8] 前記一般式(II)が、一般式(IIIe)、(IVe)又は(Ve)である[2]の高分子フィルム:
一般式(IIIe)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、Arはアリール基を表す;
一般式(IVe)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、Arはアリール基を表す;
一般式(Ve)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、Arはアリール基を表す。
[9] Qaが、単結合、又は−O−、−NH−もしくは−N(R)−(但し、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基)を表し、Raが、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数1〜8のアルキル基を表す[1]〜[8]のいずれかの高分子フィルム。
[10] 前記一般式(II)が、一般式(IIIf)、(IIIg)、(IIIh)、(IVf)、(IVg)、(IVh)、又は(Vf)である[2]の高分子フィルム:
一般式(IIIf)中、Ra7は、炭素原子数1〜8のアルキル基を表す;R6、R7及びR8はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、カルバモイル基、炭素原子数1〜8のN−アルキルカルバモイル基、炭素原子数1〜16のN,N−ジアルキルカルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のN−アルキルスルファモイル基、炭素原子数1〜16のN,N−ジアルキルスルファモイル基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数1〜16のアルキルアミノ基、炭素原子数1〜16のジアルキルアミノ基、又は炭素原子数1〜16のアルコキシアルキルオキシ基を表す;
一般式(IIIg)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義である;
一般式(IIIh)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義である;
一般式(IVf)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義である;
一般式(IVg)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義である;
一般式(IVh)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義である。
一般式(Vf)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義である。
[11] 前記化合物の水和物、溶媒和物もしくは塩の少なくとも1種を含む[1]〜[10]のいずれかの高分子フィルム。
[12] [1]〜[11]のいずれかの高分子が水酸基を含有する高分子を含むことを特徴とする高分子フィルム。
[13] 前記の水酸基を含有する高分子がセルロースアシレート樹脂であることを特徴とする[12]の高分子フィルム。
[14] 前記セルロースアシレート樹脂がセルロースアセテート樹脂であることを特徴とする[13]の高分子フィルム。
[15] 溶液製膜法により製膜されてなる[1]〜[14]のいずれかの高分子フィルム。
[16] 前記化合物の水和物又は溶媒和物を用いることを特徴とする[15]の高分子フィルム。
[17] [1]〜[16]のいずれかの高分子フィルムを含むことを特徴とする位相差フィルム。
[18] [1]〜[16]のいずれかの高分子フィルム又は[17]の位相差フィルムを含むことを特徴とする偏光板。
[19] [1]〜[16]のいずれかの高分子フィルム、又は[18]の偏光板を含むことを特徴とする液晶表示装置。
[20] 下記一般式(IIIc)、一般式(IVc)、又は一般式(Vf’)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩:
一般式(IIIc)中、Qaは、単結合又は2価の連結基を表し;Raは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン基又は複素環基を表し、R9は−O−Ar、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し;Arはアリール基を表す;
一般式(IVc)中の各記号の定義は、一般式(IIIc)中のそれぞれと同義である;
一般式(Ve’)中、R11、R12、R13はそれぞれ独立に、水素原子、ニトロ基、カルバモイル基、炭素原子数1〜8のN−アルキルカルバモイル基、炭素原子数1〜16のN,N−ジアルキルカルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のN−アルキルスルファモイル基、炭素原子数1〜16のN,N−ジアルキルスルファモイル基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数1〜16のアルキルアミノ基、炭素原子数1〜16のジアルキルアミノ基、又は炭素原子数1〜16のアルコキシアルキルオキシ基を表し;但し、R11、R12及びR13の少なくとも一つは、水素原子以外の置換基を表す。
[21] Qaが、単結合、又は−O−、−NH−もしくは−N(R)−(但し、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基)を表し、Raが、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数1〜8のアルキル基を表す[20]の化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩。
[22] 下記一般式一般式(IIIf)、一般式(IIIg)、一般式(IIIh)、一般式(IVf)、一般式(IVg)、又は一般式(IVh)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩:
一般式(IIIf)中、Ra7は炭素原子数1〜8のアルキル基を表し;R6、R7及びR8はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、カルバモイル基、炭素原子数1〜8のN−アルキルカルバモイル基、炭素原子数1〜16のN,N−ジアルキルカルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のN−アルキルスルファモイル基、炭素原子数1〜16のN,N−ジアルキルスルファモイル基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数1〜16のアルキルアミノ基、炭素原子数1〜16のジアルキルアミノ基、又は炭素原子数1〜16のアルコキシアルキルオキシ基を表す;
一般式(IIIg)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義である;
一般式(IIIh)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義である;
一般式(IVf)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義である;
一般式(IVg)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義である;
一般式(IVh)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義である。
[23] [20]〜[22]中に記載のいずれかの化合物の水和物又は溶媒和物。
[24] [20]〜[22]中に記載のいずれかの化合物の水和物。
本発明によれば、使用環境の湿度変化に伴うRe及びRthの変動が軽減された高分子フィルムを提供すること、並びにそれを用いた位相差フィルム、偏光板及び液晶表示装置を提供することができる。
また、本発明によれば、溶液安定性が良好であり、高分子フィルムの添加剤等、種々の用途に有用な、新規な化合物を提供することができる。
本発明の液晶表示装置の一例の構成を示す模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
まず、本明細書で用いられる用語について、説明する。
(レターデーション(Re及びRth))
本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション(nm)及び厚さ方向のレターデーション(nm)を表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(X)及び式(XI)よりRthを算出することもできる。
式(XI)
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
注記:
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
本発明において、位相差膜等の「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。また、「可視光領域」とは、380nm〜780nmのことをいう。さらに屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=589nmでの値である。
また、本明細書において、位相差膜及び液晶層等の各部材の光学特性を示す数値、数値範囲、及び定性的な表現(例えば、「同等」、「等しい」等の表現)については、液晶表示装置やそれに用いられる部材について一般的に許容される誤差を含む数値、数値範囲及び性質を示していると解釈されるものとする。
1. 高分子フィルム
本発明の高分子フィルムは、下記一般式(I)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩の少なくとも1種を含有することを特徴とする。下記一般式(I)の化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩は、レターデーション上昇剤として作用し、これを含有する高分子フィルムは、該化合物を含まない以外は原料及び製法が同一の高分子フィルムと比較して、そのRe及び/又はRthが上昇しているという特徴がある。また、下記一般式(I)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩を添加することによってRe及び/又はRthが制御された高分子フィルムは、他のレターデーション上昇剤(例えば、トリアジン環を中心母核とする円盤状化合物)によりRe及び/又はRthが制御された高分子フィルムと比較して、使用環境の湿度変化に伴うReの変動及びRthの変動の少なくとも一方が、軽減されている。
さらに、溶液製膜法にて製造される態様、即ち、主成分である高分子材料(樹脂及び重合体のいずれも含む意味で用いるものとする)と、下記一般式(I)で表される化合物とを有機溶媒に溶解して調製されたドープを用いて、製膜されて製造される態様では、製造されるフィルムの品質安定化の観点では、下記一般式(I)の化合物は、塩、水和物もしくは溶媒和物の形態で用いることがより好ましく、水和物もしくは溶媒和物の形態で用いることがさらに好ましい。
以下、本発明の高分子フィルムの作製に利用可能な、種々の材料及び方法について詳細に説明する。
(1−1) 一般式(I)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩
本発明の高分子フィルムは、下記一般式(I)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩(以下、「本発明の化合物」という場合がある)の少なくとも1種を含有することを特徴とする。下記一般式(I)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩は、高分子フィルムのRe及び/又はRthを上昇させる作用があり、即ち、レターデーション上昇剤として作用する。また、親水性高分子、特に水酸基を有する高分子、を主成分として含有する高分子フィルムでは、使用環境の湿度変化に伴うReの変動及びRthの変動が顕著になる傾向があるが、下記一般式(I)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩は、使用環境の湿度変化に伴うReの変動及びRthの変動の少なくとも一方を、軽減させる作用があり、即ち、高分子フィルム用湿度依存性改良剤としても作用する。
なお、本発明において、「高分子フィルム用湿度依存性改良剤」とは、高分子フィルムに添加すると、該高分子フィルムの湿度に依存したRe及び/又はRthの変動を軽減できる剤をいうものとする。具体的には、無添加の高分子フィルムと、試料を添加した高分子フィルムを準備し、それぞれ25℃・相対湿度10%にて12時間調湿したときのRe及びRth(それぞれRe[25℃、RH10%]、Rth[25℃、RH10%]とも言う)、並びに25℃・相対湿度80%にて12時間調湿したときのRe及びRth(それぞれRe[25℃、RH80%]、Rth[25℃、RH80%]とも言う)をそれぞれ測定し、且つ比較する。試料を添加した高分子フィルムのほうが、無添加の高分子フィルムと比較して、Re及び/又はRthの変動が小さい場合、該試料を、湿度依存性改良剤というものとする。
さらに、下記一般式(I)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩は、有機溶媒に溶解した状態での安定性に優れ、これらの化合物を使用することは、高分子フィルムの製造、特に溶液製膜法による製造の安定性改善にも寄与する。
以下、一般式(I)及びその好ましい例である一般式(II)について詳細に説明する。なお、本明細書では、「アルキル基」、「アルケニル基」及び「アルキニル基」については、直鎖状及び分岐鎖状のいずれも含む意味で用いるものとする。
一般式(I)中、Yは−N−又は−C(−Qd−Rd)−を表し;Qa、Qb、Qc及びQdはそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し;Ra、Rb、Rc及びRdはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン基又は複素環基を表し、RaとRb及びRaとRdはそれぞれ連結して環を形成してもよく;X2は、単結合又は2価の連結基を表し、X1は、単結合又は下記2価の連結基群G1から選択される2価の基を表わし;R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、互いに連結して環を形成してもよい。ただし、Qc−Rc及びN(X11)X22のうち一つは−NH2であるが、同時に−NH2になることはなく、Yが窒素原子で且つN(X11)X22が−NH2の場合、−Qa−Raは−NH2でない。即ち、前記一般式(I)からは、アミンを有しない化合物、及び下記部分構造をそれぞれ有するジアミン化合物は除かれる。
式中、*にはそれぞれ、−Qa−Ra、−Qb−Rb、−Qc−Rc、及び−Qd−Rdのいずれかが結合する。
一般式(II)中の各記号は、一般式(I)中のそれぞれと同義であり、Yは−N−あるいは−C(−Qd−Rd)−を表し、Zは−N−あるいは−C(−Qb−Rb)−を表し、Y及びZが同時に−N−になることはない;X1は、単結合又は下記2価の連結基群G2で表される二価の連結基からなる群から選択される連結基を表す;X2は、単結合又は二価の連結基を表す;R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環を表し、−X1−R1と−X2−R2の少なくとも一方は水素原子以外の置換基である;Qa、Qb、及びQdは、それぞれ独立に単結合、−O−、−S−、−NR'−を表し、R'は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環を表し、QaとRa、QdとRd、QbとRb又は−Qa−Ra−Rd−Qd−、−Qa−Ra−Rb−Qb−は連結して環を形成してもよい;Raは、水素原子、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環を表す;ただし、Zが−N−の場合は−Qa−Raはアミノ基以外の前記置換基を表す;Rb、Rdは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環を表す。
一般式(I)中、Yがメチン基、即ち−C(−Qd−Rd)−、である場合は、式中の6員環はピリジン環であり、Yが−N−である場合は、式中の6員環はピリミジン環である。なお、式(I)中、Yが−N−であり、且つ−N(X11)X22が−NH2である場合、−Qa−Raは−NH2ではない。
一般式(II)中、Y及びZが同時に−N−になることはないので、Y及びZが置換されていてもよいメチン基、即ち−C(−Qd−Rd)−又は−C(−Qb−Rb)−、である場合は、式中の6員環はピリジン環であり、Y又はZが−N−である場合は、式中の6員環はピリミジン環である。なお、式(II)中、Zが−N−の場合は、−Qa−Raは−NH2でない。
また、前記一般式(I)又は(II)で表される化合物の例としては、以下の式(a)又は(b)で表される部分構造を含まない化合物が挙げられる。なお、式中、*はそれぞれ、原子又は残基が置換可能な位置を示す。
また、前記一般式(I)及び(II)で表される化合物は、上記一般式(I)及び(II)に明示された構造に限定されるものではなく、当然に一般式(I)及び(II)におけるヘテロ環骨格部分の共鳴構造も含まれる。また、一般式(I)及び(II)におけるヘテロ環骨格部分が、該環を構成している原子に結合した置換基と共鳴している構造も前記一般式(I)及び(II)で表される化合物に含まれる。なお、後述する一般式で表されるいずれの化合物についても同様である。
一般式(I)及び(II)中、Qa、Qb、Qc及びQdがそれぞれ表す2価の連結基の例には、−O−、−S−、−N(Xa−Rh)−、−N(Xa−Rh)−Xb−で表される2価の連結基が含まれる。ここで、Xa及びXbはそれぞれ、単結合又は2価の連結基を表す。Xa及びXbでそれぞれ表される2価の連結基の例には、−CO−、−COO−、−CONH−が含まれる。Rhは水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基、炭素原子数6〜10のアリール基、又は炭素原子数2〜10の複素環基を表す。Qa、Qb、Qc及びQdがそれぞれ表す2価の連結基の好ましい例としては、単結合、−O−、−N(Xa−Rh)−、−N(Xa−Rh)−Xb−を挙げることができ、単結合、−O−、−NH−、及び−NH−Xb−が特に好ましい。−NH−Xb−の好ましい例には、−NH−CO−、−NH−COO−、−NH−CONH−、−NH−SO2−などが含まれ、−NH−CO−、−NH−COO−であることがさらに好ましい。
一般式(I)及び(II)中、Ra、Rb、Rc及びRdはそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン基又は複素環基を表し、RaとRb及びRaとRdはそれぞれ連結して環を形成してもよい。
a、Rb、Rc及びRdがそれぞれアルキル基である場合、炭素原子数1〜20であることが好ましく、炭素原子数1〜8であることがより好ましく、炭素原子数1〜4であることが特に好ましい。なお、Ra、Rb、Rc及びRdがそれぞれアルキル基である場合、1つ又は隣接しない2以上の炭素原子は、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子(−NH−又は−N(R)−(Rはアルキル基)を含む)から選択されるヘテロ原子に置き換えられていてもよい。例えば、Ra及びRbはそれぞれ、アルキレン(例えば、エチレン、プロピレン)オキシ基であってもよい。
a、Rb、Rc及びRdがそれぞれアルケニル基である場合、炭素原子数2〜20であることが好ましく、炭素原子数2〜8であることがより好ましく、炭素原子数2〜4であることが特に好ましい。
a、Rb、Rc及びRdがそれぞれアルキニル基である場合、炭素原子数2〜20であることが好ましく、炭素原子数2〜8であることがより好ましく、炭素原子数2〜4であることが特に好ましい。
a、Rb、Rc及びRdがそれぞれアリール基である場合、炭素原子数6〜24であることが好ましく、炭素原子数6〜18であることがより好ましく、炭素原子数6〜10であることが湿度依存性改良の観点から特に好ましい。具体的にはベンゼン環、ナフタレン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
a、Rb、Rc及びRdがそれぞれハロゲン基である場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子いずれも用いることができるが、塩素原子が特に好ましい。
a、Rb、Rc及びRdがそれぞれ複素環基である場合、炭素原子数4〜20であることが好ましく、炭素原子数4〜10であることがより好ましく、炭素原子数4〜6であることが湿度依存性改良の観点から特に好ましい。具体的には、ピロリル基、ピロリジノ基、ピラゾリル基、ピラゾリジノ基、イミダゾリル基、ピペラジノ基、モルホリノ基を挙げることができる。
aとRb及びRaとRdはそれぞれ連結して環を形成してもよい。形成される環は、炭化水素環であっても、複素環であってもよい。5員環又は6員環であるのが好ましい。
a、Rb、Rc及びRdはそれぞれ、可能であれば、さらに1以上の置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。Ra、Rb、Rc及びRdがそれぞれ有していてもよい置換基の例には、以下の置換基群Tが含まれる。
置換基群T:
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜16、特に好ましくは0〜12であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる。)、及びシリル基(好ましくは、炭素原子数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が2つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(I)中、Ra、Rb、Rc及びRdはそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、又は置換もしくは無置換のアルキル基であるのが好ましい。一般式(II)中、Rcは、水素原子である。本発明の一実施態様では、Rdが水素原子であり、且つQdが単結合であるのが好ましく、即ちYが−C(−Qd−Rd)−である場合は、無置換メチンである。また、本発明の一実施態様では、Rbが水素原子であり、且つQbが単結合であるのが好ましく、即ちYが−C(−Qb−Rb)−である場合は、無置換メチンである。
但し、一般式(I)及び(II)で表される化合物の例には、Yが窒素原子であって、且つ、−Qa−Ra及び−Qc−Rcがそれぞれ、−OH及び−SH以外の基である化合物が含まれる。
一般式(I)及び(II)中、−Qa−Raは、好ましくは、−Qaa−Raaである。Qaaは、単結合、又は−O−、−NH−もしくは−N(R)−(但し、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基)を表す。Raaは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。
一般式(I)及び(II)中、R1及びR2はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、互いに連結して環を形成してもよい。
1及びR2がそれぞれアルキル基である場合、炭素原子数1〜20であることが好ましく、炭素原子数1〜8であることがより好ましく、炭素原子数1〜4であることが特に好ましい。なお、R1及びR2がそれぞれアルキル基である場合、1つ又は隣接しない2以上の炭素原子は、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子(−NH−又は−N(R)−(Rはアルキル基)を含む)から選択されるヘテロ原子に置き換えられていてもよい。例えば、R1及びR2は、アルキレン(例えば、エチレン、プロピレン)オキシ基であってもよい。
1及びR2がそれぞれアルケニル基である場合、炭素原子数2〜20であることが好ましく、炭素原子数2〜8であることがより好ましく、炭素原子数2〜4であることが特に好ましい。
1及びR2がそれぞれアルキニル基である場合、炭素原子数2〜20であることが好ましく、炭素原子数2〜8であることがより好ましく、炭素原子数2〜4であることが特に好ましい。
1及びR2がそれぞれアリール基である場合、炭素原子数6〜24であることが好ましく、炭素原子数6〜18であることがより好ましく、炭素原子数6〜10であることが湿度依存性軽減の観点から特に好ましい。具体的にはベンゼン環、ナフタレン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
1及びR2がそれぞれ複素環基である場合、炭素原子数4〜20であることが好ましく、炭素原子数4〜10であることがより好ましく、炭素原子数4〜6であることが湿度依存性改良の観点から特に好ましい。具体的には、ピロリル基、ピロリジノ基、ピラゾリル基、ピラゾリジノ基、イミダゾリル基、ピペラジノ基、モルホリノ基を挙げることができる。
一般式(I)及び(II)中、R1及びR2はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基又は複素環基であるのが好ましい。ただし、Qc−Rcが−NH2であり、−X1と−X2が単結合を表す場合、R1又はR2の少なくとも一方は水素原子以外である。
1及びR2はそれぞれ、可能であれば、さらに1以上の置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。R1及びR2がそれぞれ有していてもよい置換基の例には、前述の置換基群Tが含まれる。
一般式(I)及び(II)中、R1及びR2はそれぞれ、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換の複素環基が好ましい。
1及びR2のいずれか一方は、それぞれ、水素原子、又は置換もしくは無置換のアルキル基であるのが好ましく、水素原子であるのが特に好ましい。湿度依存性軽減の観点では、他方は、置換もしくは無置換のアリール基であるのが好ましい。
一般式(I)及び(II)中、X2は、単結合又は2価の連結基を表し;X1は、単結合又は下記2価の連結基群G1から選択される基を表す。
2が表す2価の連結基の例には、アルキレン基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは炭素原子数1〜3、特に好ましくは炭素原子数2)、アリーレン基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは、炭素原子数6〜10)、X1は下記2価の連結基群G1が含まれ、下記2価の連結基群G2が含まれることが好ましい。
各式中、*側が前記各式で表される化合物中のピリミジン環又はピリジン環に置換しているN原子との連結部位であり;Rgは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を表す。それぞれの基中の炭素原子数の好ましい範囲は、Xa及びXbがそれぞれ表す基中の炭素原子数の好ましい範囲と同様である。
1がそれぞれ、単結合又は2価の連結基群G1から選ばれるいずれかの基を表すのが好ましく、X2が単結合で且つX1が2価の連結基群G1から選ばれるいずれかの基を表すのが好ましい。
その場合、X1はそれぞれ、−CO−、−COO−、−CO(NRg)−のいずれかであることがより好ましく、−CO−であることが特に好ましい。
例えば、X1が所定の2価の連結基(特に好ましくは−CO−)で、且つX2が単結合である場合は、R1は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換の複素環基であり(湿度依存性軽減の観点では、好ましくは置換もしくは無置換のアリール基であり)、且つR2は水素原子であるのが好ましい。
さらに、一般式(I)中、X1が所定の2価の連結基である場合、R1は、アリール基であるのが好ましく、中でもフェニル基であるのが好ましい。アリール基は、上記置換基群Tから選ばれる1以上の置換基を有していてもよい。該置換基の置換位置についても特に制限はない、X1に対して、オルト、メタ及びパラ位のいずれの位置が置換されていてもよい。好ましい置換基の例には、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルコキシ基)、アルキルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルキルアミノ基)、又はジアルキルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜8のジアルキルアミノ基)が含まれ、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルコキシ基)がより好ましく、炭素原子数が1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であることがさらに好ましい。
前記一般式(II)で表される化合物の例には、下記一般式(III)で表される化合物が含まれる。
一般式(III)中の各記号は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲及び具体例も同様である。ただし、−N(X11)X22が−NH2である場合を除く。
前記一般式(III)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(IIIa)で表される化合物が含まれる。
一般式(IIIa)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。ただし、−N(X11)X22が−NH2である場合を除く。
前記一般式(III)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(IIIb)で表される化合物が含まれる。
一般式(IIIb)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。ただし、−X11が水素原子である場合を除く。
前記一般式(III)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(IIIc)で表される化合物が含まれる。
一般式(IIIc)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。R9は−O−Ar、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し;Arはアリール基を表す。該アリール基は1以上の置換基を有してもよい。
Arが表すアリール基は、置換もしくは無置換のフェニル基又はナフチル基であるのが好ましく、フェニル基であるのがより好ましい。Arが表すアリール基は、1以上の置換基を有していてもよく、該置換基の例には、上記置換基群Tが含まれる。好ましい置換基の例は、前記一般式(II)中のR1及びR3がそれぞれ有する置換基の好ましい例と同様である。
前記一般式(III)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(IIId)で表される化合物が含まれる。
一般式(IIId)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記一般式(III)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(IIId−2)で表される化合物が含まれる。
一般式(IIId−2)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。Qaaは、単結合、又は−O−、−NH−もしくは−N(R)−(但し、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基)を表す。Raaは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基をあらわす。
前記一般式(III)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(IIIe)で表される化合物が含まれる。
一般式(IIIe)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。Arはアリール基を表す。該アリール基は1以上の置換基を有してもよい。
Arが表すアリール基は、置換もしくは無置換のフェニル基又はナフチル基であるのが好ましく、フェニル基であるのがより好ましい。Arが表すアリール基は、1以上の置換基を有していてもよく、該置換基の例には、上記置換基群Tが含まれる。好ましい置換基の例は、前記一般式(II)中のR1及びR3がそれぞれ有する置換基の好ましい例と同様である。
前記一般式(III)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(IIIe−2)で表される化合物が含まれる。
一般式(IIIe−2)中の各記号の定義は、一般式(II)及び(IIId−2)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。Qaaは、単結合、又は−O−、−NH−もしくは−N(R)−(但し、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基)を表す。Raaは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。
上記式(III)〜(IIIe)中、Qaは、単結合、又は−O−、−S−、−N(Xa−Rh)−、もしくは−N(Xa−Rh)−Xb−で表される2価の連結基であるのが好ましい。中でも、単結合、又は−O−、−S−、−NH−又は−N(R)−(但しRは炭素原子数1〜8、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基)であるのがより好ましく、単結合又は−O−であることが更に好ましい。Raは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基、炭素原子数6〜18のアリール基(例えば、ベンゼン環及びナフタレン環の基)、炭素原子数4〜10の複素環の基(例えば、ピロリル基、ピロリジノ基、ピラゾリル基、ピラゾリジノ基、イミダゾリル基、ピペラジノ基、モルホリノ基)が好ましく;及び、水素原子、又は炭素原子数1〜8のアルキル基であるのが好ましく、炭素原子数1〜4のアルキル基であることがより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよいが、無置換であることが好ましい。置換基の例には、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基等が含まれる。またRaは、Qaが−N(R)−である場合には、Rと結合して環(例えば5又は6員の環)を形成していてもよい。
−Qa−Raとして、好ましい例としては、−Cl、−CH3、−(t)C49、−OH、−OCH3、−OC25、−NHCH3、NHC25、−NHC37、−NHC49、−N(CH32、−N(C252が挙げられ、その中でも特に好ましい例としては、−Cl、−CH3、−OH、−OCH3、−NHCH3、NHC25が挙げられる。
前記一般式(III)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(IIIf)〜(IIIh)で表される化合物が含まれる。
一般式(IIIf)中、Ra7は、炭素原子数1〜8のアルキル基を表す;R6、R7、R8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、カルバモイル基、炭素原子数1〜8のN−アルキルカルバモイル基、炭素原子数1〜16のN,N−ジアルキルカルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のN−アルキルスルファモイル基、炭素原子数1〜16のN,N−ジアルキルスルファモイル基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数1〜16のアルキルアミノ基、炭素原子数1〜16のジアルキルアミノ基、炭素原子数1〜16のアルコキシアルキルオキシ基を表す。
一般式(IIIg)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(IIIh)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
また、前記一般式(II)で表される化合物の例には、下記一般式(IV)で表される化合物が含まれる。
一般式(IV)中の各記号の定義は、一般式(I)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲及び具体例も同様である。ただし、−N(X11)X22及び−Qa−Raが−NH2である場合を除く。
前記一般式(IV)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(IVa)で表される化合物が含まれる。
一般式(IVa)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。ただし、−N(X11)X22及び−Qa−Raが−NH2である場合を除く。
前記一般式(IV)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(IVb)で表される化合物が含まれる。
一般式(IVb)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。ただし、−X11が水素原子及び−Qa−Raが−NH2である場合を除く。
前記一般式(IV)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(IVc)で表される化合物が含まれる。
一般式(IVc)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。R9は−O−Ar、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し;Arはアリール基を表す。該アリール基については、前記一般式(IIIc)中のArが表すアリール基と同様であり、該アリール基が置換基を有する場合の置換基の例も同様である。
前記一般式(IV)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(IVd)で表される化合物が含まれる。
一般式(IVd)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。ただし、−Qa−Raが−NH2である場合を除く。
前記一般式(IV)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(IVd-2)で表される化合物が含まれる。
一般式(IVd-2)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。Qaaは、単結合、又は−O−、−NH−もしくは−N(R)−(但しRは炭素原子数1〜8のアルキル基)を表す。Raaは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。
前記一般式(IV)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(IVe)で表される化合物が含まれる。
一般式(IVe)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。Arはアリール基を表す。該アリール基については、前記一般式(IIIe)中のArが表すアリール基と同様であり、該アリール基が置換基を有する場合の置換基の例も同様である。ただし、−Qa−Raが−NH2である場合を除く。
前記一般式(IV)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(IVe-2)で表される化合物が含まれる。
一般式(IVe-2)中の各記号の定義は、一般式(II)および(IVd-2)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。Qaaは、単結合、又は−O−、−NH−もしくは−N(R)−(但しRは炭素原子数1〜8のアルキル基)を表す。Raaは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。
上記式(IV)〜(IVe)中のQa、Ra、及び−Qa−Raの好ましい例としては、上記式(III)〜(IIIe)中のそれぞれの好ましい例と同様である。
前記一般式(IV)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(IVf)〜(IVh)で表される化合物が含まれる。
一般式(IVf)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。Ra7は、炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。
一般式(IVg)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。Ra7は、炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。
一般式(IVh)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。Ra7は、炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。
前記一般式(II)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(V)で表される化合物が含まれる。
一般式(V)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲及び具体例も同様である。
前記一般式(V)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(Va)で表される化合物が含まれる。
一般式(Va)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記一般式(V)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(Vb)で表される化合物が含まれる。
一般式(Vb)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記一般式(V)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(Vc)で表される化合物が含まれる。
一般式(Vc)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。R9は−O−Ar、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し;Arはアリール基を表す。該アリール基については、前記一般式(IIIc)中のArが表すアリール基と同様であり、該アリール基が置換基を有する場合の置換基の例も同様である。
前記一般式(V)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(Vd)で表される化合物が含まれる。
一般式(Vd)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記一般式(V)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(Ve)で表される化合物が含まれる。
一般式(Ve)中の各記号の定義は、一般式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。Arはアリール基を表す。該アリール基については、前記一般式(IIIe)中のArが表すアリール基と同様であり、該アリール基が置換基を有する場合の置換基の例も同様である。ただし、−Qa−Raが−NH2である場合を除く。
上記式(V)〜(Ve)中のQa、Ra、及び−Qa−Raの好ましい例としては、上記式(III)〜(IIIe)中のそれぞれの好ましい例と同様である。
前記一般式(V)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(Vf)で表される化合物が含まれる。
一般式(Vf)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記一般式(V)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(Vf’)で表される化合物が含まれる。
一般式(Vf’)中、R11、R12、R13はそれぞれ独立に水素原子、ニトロ基、カルバモイル基、炭素原子数1〜8のN−アルキルカルバモイル基、炭素原子数1〜16のN,N−ジアルキルカルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のN−アルキルスルファモイル基、炭素原子数1〜16のN,N−ジアルキルスルファモイル基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数1〜16のアルキルアミノ基、炭素原子数1〜16のジアルキルアミノ基、炭素原子数1〜16のアルコキシアルキルオキシ基を表す。ただし、R11、R12、R13の少なくともひとつは水素原子以外の置換基を表す。
前述の一般式(I)、(II)、(III)〜(IIIh)、(IV)〜(IVh)、並びに(V)〜(Vf’)の化合物は、比較的低いRe及びRthを必要とする用途等において、好ましく用いられる。また、これらの化合物を添加することによってRe及び/又はRthが制御された高分子フィルムは、湿度に依存してRe及び/又はRthが変動するのがより軽減されているという特徴がある。
また、一般式一般式(I)、(II)、(III)〜(IIIh)、(IV)〜(IVh)、並びに(V)〜(Vf’)で表される化合物と、下記式(6)(好ましくは下記一般式(7))で表される化合物とを混合させて混合物とし、本発明では、当該混合物をそのまま高分子フィルムの添加剤として用いてもよい。一般式(I)、(II)、(III)〜(IIIh)、(IV)〜(IVh)、並びに(V)〜(Vf’)で表される化合物と、下記式(6)で表される化合物との混合物を用いることで、レターデーション発現効果、及び湿度依存性軽減効果が相乗的に高められるので好ましい。
前記一般式(6)中のAr1及びAr2はそれぞれ独立に置換もしくは無置換のアリール基を表わし、前記式(IIIe)〜(Ve)中のArと同義であり、好ましい例についても同様である。式(7)中のR11〜R14はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、カルバモイル基、炭素原子数1〜8のN−アルキルカルバモイル基、炭素原子数1〜16のN,N−ジアルキルカルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のN−アルキルスルファモイル基、炭素原子数1〜16のN,N−ジアルキルスルファモイル基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数1〜16のアルキルアミノ基、炭素原子数1〜16のジアルキルアミノ基、又は炭素原子数1〜16のアルコキシアルキルオキシ基を表し、前記式(IIIe)〜(Ve)中のR6〜R8と同義であり、好ましい例も同様である。
上記式中のその他の記号については、上記一般式(I)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲及び好ましい例も同様である。
また、一般式(I)、(II)、(III)〜(IIIh)、(IV)〜(IVh)、並びに(V)〜(Vf’)で表される化合物は、1種単独で使用してもよく、複数を混合させて混合物と使用してもよい。例えば、合成法によっては、生成物として、下記の部分構造(x)を有する化合物、及び下記部分構造(y)を有する化合物の混合物が得られる場合もあるので、当該混合物をそのまま、高分子フィルムの添加剤等の種々の用途に用いることができる。さらに、上記部分構造(a)の化合物も同時に得られる場合もあるので、生成物として得られた部分構造(a)を含む混合物をそのまま、高分子フィルムの添加剤等、種々の用途に用いることができる。なお、下記式中、*は他の原子又は残基に置換可能な位置を示す。
以下に、前記一般式(I)及び(II)で表される化合物の具体例を示すが、本発明に使用可能な化合物は、以下の具体例に限定されるものではない。

本発明の範囲には、前記一般式(I)で表される化合物を水和物、溶媒和物もしくは塩の形態で添加してなる高分子フィルムも含まれる。なお、本発明において、水和物は有機溶媒を含んでいてもよく、また溶媒和物は水を含んでいてもよい。即ち、「水和物」及び「溶媒和物」には、水と有機溶媒のいずれも含む混合溶媒和物が含まれる。上記した通り、前記化合物の水和物、溶媒和物もしくは塩のほうが、溶液製膜法により製造する態様では好ましい。塩としては、無機又は有機酸で形成された酸付加塩が含まれる。無機酸の例として、ハロゲン化水素酸(塩酸、臭化水素酸など)、硫酸、リン酸などが含まれ、またこれらに限定されない。また、有機酸の例には、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、クエン酸、安息香酸、アルキルスルホン酸(メタンスルホン酸など)、アリルスルホン酸(ベンゼンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸など)などがあげられ、またこれらに限定されない。これらのうち好ましくは、塩酸塩、酢酸塩である。
なお、前記一般式(I)で表される化合物を、水和物、溶媒和物もしくは塩の形態で添加してなるフィルムでは、該化合物はフィルム中においては、もはや水和物、溶媒和物もしくは塩の形態ではない場合もある。その場合であっても、水和物等の形態の化合物を用いた場合に得られる製膜安定性は、結果物としてのフィルム中の前記一般式(I)で表される化合物の含率の安定化、フィルムの光学特性のバラツキ低減、及び光学特性の環境湿度依存性の低減に寄与する。
塩の例としては、親化合物に存在する酸性部分が、金属イオン(たとえばアルカリ金属塩、たとえばナトリウム又はカリウム塩、アルカリ土類金属塩、たとえばカルシウム又はマグネシウム塩、アンモニウム塩アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアルミニウムイオンなど)により置換されるか、あるいは有機塩基(エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペリジン、など)と調整されたときに形成される塩があげられ、またこれらに限定されない。これらのうち好ましくはナトリウム塩、カリウム塩である。
溶媒和物が含む溶媒の例には、一般的な有機溶剤のいずれも含まれる。具体的には、アルコール(例、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t−ブタノール)、エステル(例、酢酸エチル)、炭化水素(例、トルエン、ヘキサン、ヘプタン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン)、ニトリル(例、アセトニトリル)、ケトン(アセトン)などがあげられる。好ましくは、アルコール(例、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t−ブタノール)の溶媒和物である。これらの溶媒は、前記化合物の合成時に用いられる反応溶媒であっても、合成後の晶析精製の際に用いられる溶媒であってもよく、又はこれらの混合であってもよい。
また、二種類以上の溶媒を同時に含んでもよいし、水と溶媒を含む形(例えば、水とアルコール(たとえば、メタノール、エタノール、t-ブタノールなど)など)であってもよい。
本発明に係わる化合物は、該化合物と水や溶媒とがある範囲の比率で存在し、一定の温度、湿度、圧力の範囲では含水率/溶媒の比率は変化しない水和物/溶媒和物を形成してもよい。このような水和物及び溶媒和物は、ある特定の結晶構造を有し、粉末X線回折(XRD)にて特定の回折パターンを示す。一方、含水率/溶媒の比率一定となる範囲を超えて、高温や減圧の環境下におくと、水分や溶媒が失われ、非晶質(アモルファス)へと変化することがある。ここで非晶質(アモルファス)とは、規則的な分子の配列である結晶構造をもたないものであり、例えば、融点以上に加熱して融解させて水、溶媒を留去し、急冷することで得られる。こうして得られた非晶質は、環境湿度に応じて含水することがあり、含水率は環境湿度によって変化する。しかし、含水アモルファスにおいても、粉末X線回折の回折パターンは現れないことから、本発明に係わる化合物と水とがある範囲の比率で存在し、一定の温度、湿度、圧力の範囲では含水率が変化しない水和物とは区別される。
本発明においては、非晶質(アモルファス)の形態では、含水率が環境湿度によって変化するため、結晶の形態(無水物、水和物、及び/又は溶媒和物)で用いることがより好ましい。
ここで、結晶とは、三次元的に構成原子が規則正しく配列した結晶構造を有する固体のことをいい、無水物、水和物、及び/又は溶媒和物が含まれ、一般に、粉末X線回折である特定の結晶構造、結晶面に応じた回折角にピークを持つ。本明細書中では、これを、結晶粉末X線回折で回折パターンを示す、と記載している。また、非晶質(アモルファス)であれば、一般に、粉末X線回折でブロードな単一ピーク(ハロー)を持つが、これを、本明細書中では、粉末X線回折の回折パターンを示さない、と記載している。また、非晶質と結晶は、粉末X線回折の他、熱分析などの分析方法によって区別することができる。
水和物、溶媒和物及びこれらの混合溶媒和物の形態における、前記一般式(I)で表される化合物と、水、溶媒及びこれらの混合溶媒との比率については特に制限はない。一般に水和物や溶媒和物は、化合物1分子あたり整数倍の水及び/又は溶媒分子が取り込まれるが、結晶の間隙にも取り込まれることがあるため整数倍とならない場合もある。
水和物や溶媒和物における、化合物1分子あたりの、水及び/又は溶媒分子の比率がいずれのものも本発明の範疇であるが、化合物1分子あたりの及び/又は溶媒分子は、0.25モル〜4モルであることが好ましい。
これを重量に換算すると、化合物の分子量に依存するが、例えば、水和物の場合、含水率は、0.8〜25%が好ましい。
含水率が1%以上の水和物であると、特にフィルムの光学特性のバラツキが軽減されるので好ましく、含水率が2%以上であるのがより好ましい。含水率の上限値は、(有機溶剤への)溶解性や製造工程への負荷の観点から、15%以下であるのが好ましく、10%以下であるのがより好ましい。溶媒和物の含溶媒率についても同様に考えることができる。
水和物は、前記化合物を水により晶析することで、製造することができる。又は有機溶媒の多くは微量の水を含んでいるので、有機溶媒により晶析しても、含水率が前記範囲である水和物が得られる。また、必要に応じて、有機溶媒に必要量の水を添加して、晶析することで、含水率が前記範囲である水和物を得ることもできる。
もちろん、製造方法によっては、水や溶媒を含まない形態で前記一般式(I)で表される化合物を得ることも容易であり、このような化合物を用いることも好ましい形態である。
本発明に用いられる前記一般式(I)で表される化合物は、分子量が200〜2000であることが好ましく、200〜1000であることがより好ましく、200〜600であることが特に好ましい。
一般式(I)で表される化合物の製造方法は、特に限定はなく、種々の方法により製造することができる。以下に、一般式(I)で表される化合物の製造方法の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
一般式(I)の化合物は、例えば、下記スキーム1−1の方法で合成することができる。即ち、一般式(1a)の化合物と一般式(1b)の化合物とを、無溶媒又は有機溶剤中にて反応させることにより合成することができる。一般式(1a)及び一般式(1b)中の各基の定義は、一般式(I)中のそれぞれと同義である。また、Zは脱離基を表し、ハロゲン原子(例えば、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基(好ましくはC1〜C4のアルコキシ基、より好ましくは、C1〜C2のアルコキシ基、最も好ましくはC1のアルコキシ基)、アリールオキシ基、ヘテロ環基、アシルオキシ基(好ましくはC2〜C8のアシルオキシ基)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくはC1〜C4のアルキルスルホニルオキシ基)、アリールスルホニルオキシ基などを好ましく用いることができる。これらのうち特に好ましくは、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基である。
一般式(1a)及び一般式(1b)の化合物は市販品、あるいは既知の合成法により製造した合成品を用いることができる。有機溶媒としては、アルコール(例、メタノール、エタノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t−ブタノール)、エステル(例、酢酸エチル)、炭化水素(例、トルエン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン)、ハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン)、ニトリル(例、アセトニトリル)あるいはこれらの混合溶媒を用いることができる。これらのうち、炭化水素、アルコール及びアミドが好ましく、トルエン、メタノール、エタノール、N−メチルピロリドン及びN−エチルピロリドンが特に好ましい。また、トルエン、メタノール、エタノール、N−メチルピロリドン及びN−エチルピロリドンの混合溶媒も特に好適な例である。また、有機溶剤と併用して水を使用することも好ましい。
一般式(1a)の化合物と一般式(1b)の化合物の反応においては、塩基存在下で反応させることも好ましい。塩基としては、無機塩基(例、炭酸カリウム)と有機塩基(例、トリエチルアミン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、t−ブトキシカリウム、t−ブトキシナトリウム)のいずれも使用でき、Zの種類に応じて適宜選択することができる。Zがアルコキシ基である場合には無機塩基が好ましく、ナトリウムメトキシドが特に好ましい。用いる塩基の使用量は、一般式(1b)で表される化合物に対して0.5〜10当量の範囲であることが好ましく、0.5〜6当量の範囲であることが特に好ましい。Zがハロゲン原子である場合には、無機塩基、有機塩基ともに好ましく用いることができ、例えば、ピリジン、炭酸水素ナトリウムなどがより好ましい。
反応温度は、通常、−20℃〜用いる溶媒の沸点の範囲とするのが好ましく、室温〜溶媒の沸点の範囲にするが好ましい。
反応時間は、通常10分〜3日間であり、好ましくは1時間〜1日間である。反応を窒素雰囲気下、あるいは減圧下で行ってもよい。特に脱離基Zがアルコキシ基、アリールオキシ基の場合は減圧下で行うことも好ましい。
なお、式(1a)の出発原料とし、2,4−ジアミノピリジンを用いて、式(1b)の試薬としてエステル試薬を反応させると、生成物として、前記一般式(IIId)及び(IVd)で表される化合物の混合物が得られる。これらの混合物はシリカゲルクロマトグラフィー等の精製方法を利用することで分離することができる。また、混合物としてそのまま使用してもよい。
一般式(I)で表される化合物の製造方法の他の例は、下記スキーム1−2で示される方法である。即ち、一般式(1c)の化合物と一般式(1d)の化合物とを無溶媒又は有機溶剤中にて塩基の非存在下で、あるいは塩基存在下で反応させることにより合成することができる。
一般式(1c)及び一般式(1d)の化合物は市販品、あるいは既知の合成法により製造した合成品を用いることができる。有機溶媒としては、アルコール(例、メタノール、エタノール)、エステル(例、酢酸エチル)、炭化水素(例、トルエン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン)、ハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン)、ニトリル(例、アセトニトリル)あるいはこれらの混合溶媒を用いることができる。アルコール及びアミドが好ましく、メタノール、エタノール、N−メチルピロリドン及びN−エチルピロリドンが特に好ましい。また、メタノール、エタノール、N−メチルピロリドン及びN−エチルピロリドンの混合溶媒も特に好適な例である。
塩基を用いる場合、塩基としては、無機塩基(例、炭酸カリウム)と有機塩基(例、トリエチルアミン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド)のいずれも使用できる。無機塩基が好ましく、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが特に好ましい。用いる塩基の使用量は、一般式(1c)で表される化合物に対して0.5〜10当量の範囲であることが好ましく、1〜5当量の範囲であることが特に好ましい。
反応温度は、通常、−20℃〜用いる溶媒の沸点の範囲であるのが好ましく、室温〜溶媒の沸点の範囲であるのがより好ましい。
反応時間は、通常、10分〜3日間であり、好ましくは1時間〜1日間である。反応を窒素雰囲気下、あるいは減圧下で行ってもよい。
一般式(1c)及び一般式(1d)中、各基の定義はそれぞれ、一般式(I)中のそれぞれと同義である。Z1は脱離基を表し、ハロゲン原子などを好ましく用いることができる。
一般式(1c)及び一般式(1d)中、各基の定義はそれぞれ、一般式(I)中のそれぞれと同義である。Zは脱離基を表す。
また、一般式(IIIe)及び(IVe)の化合物は、例えば、下記スキームIIの方法で合成することができる。即ち、一般式(IIIe−a)の化合物及び(IVe−a)の化合物それぞれと、一般式(IIIe−b)の化合物及び(IVe−b)の化合物のそれぞれとを、無溶媒又は有機溶剤中にて、反応させることにより合成することができる。一般式(IIIe−a)、(IVe−a)、(IIIe−b)及び(IVe−b)の化合物はそれぞれ、市販品又は既知の合成法により製造した合成品を用いることができる。使用可能な有機溶媒及び塩基の例は、前記スキーム1−1及び1−2の反応と同様であり、反応温度及び反応時間についても、上記スキームの反応と同様である。
一般式(IIIe−a)、(IVe−a)、IIIe−b)及び(IVe−b)中、各基の定義はそれぞれ、一般式(IIIe)及び(IVe)中のそれぞれと同義である。また、Zの定義は、一般式(1b)中のそれと同義である。Zとして好ましくは、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基であり、より好ましくは、アルコキシ基である。
また、一般式(IIIe)及び(IVe)の化合物は、例えば、下記スキームIIIの方法で合成することもできる。即ち、一般式(IIIe−c)の化合物を、無溶媒又は有機溶剤中にて、酸存在下で、あるいは塩基存在下で、加水分解または加溶媒分解反応を行うことで合成することができる。
(1−2)高分子
本発明の高分子フィルムは、主成分として、種々の高分子材料から選択される1種又は2種以上の高分子を含有する。用いる高分子については特に制限はない。使用可能な高分子の例には、水酸基を有する高分子が含まれる。水酸基を含有する高分子としては、ポリビニルアルコールとその変性体やセルロースアシレート樹脂が挙げられる。なお、前記の水酸基を含有する高分子にはその水酸基が他の置換基によって置換された誘導体も前記水酸基を有する高分子の例に含まれ、水酸基の全てがアシル基で置換されたセルロースアシレート樹脂も、前記水酸基を有する高分子の例に含まれる。
本発明のフィルムの一態様は、前記水酸基を有する高分子として、セルロースアシレート樹脂を含む。セルロースには、β−1,4結合しているグルコース単位当り、2位、3位及び6位に遊離の水酸基がある。本態様のフィルムは、セルロースアシレート樹脂を主成分として含有することが好ましい。ここで「主成分として含有する」とは、セルロースアシレートフィルムの材料として用いられているセルロースアシレート樹脂が1種である場合は、当該セルロースアシレート樹脂をいい、複数種である場合は、最も高い割合で含有されるセルロースアシレート樹脂をいう。
セルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレート樹脂でも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
セルロースアシレート樹脂のアシル基の種類については、特に制限はないが、アセチル基、プロピオニル基又はブチリル基であることが好ましく、アセチル基であることがより好ましい。
具体的には、下記式(i)〜(iii)を同時に満たすセルロースアシレートを含有することが好ましい。
式(i) 2.0≦A+B≦3
式(ii) 1.0≦A≦3
式(iii) 0≦B≦1.0
上記式(i)〜式(iii)中、Aはアセチル基の置換度、Bはプロピオニル基の置換度とブチリル基の置換度の合計を表す。
前記セルロースアシレート樹脂のアシル置換度は、下記式(iv)〜(vi)を同時に満たすことがより好ましい。
式(iv) 2.0≦A+B≦3
式(v) 1.5≦A≦3
式(vi) B=0
上記式(iv)〜式(vi)中、Aはアセチル基の置換度、Bはプロピオニル基の置換度とブチリル基の置換度の合計を表す。
セルロースアシレート樹脂中のアセチル置換度、プロピオニル置換度及びブチリル置換度はそれぞれ、セルロースの構成単位((β)1,4−グリコシド結合しているグルコース)に存在している、3つの水酸基がアセチル化ならびにプロピオニル化及び/又はブチリル化されている割合をそれぞれ意味する。なお、本明細書では、セルロースアシレート樹脂のアセチル基、プロピオニル基、及びブチリル基の置換度は、セルロースの構成単位質量当りの結合脂肪酸量を測定して算出することができる。測定方法は、「ASTM D817−91」に準じて実施する。
前記セルロースアシレート樹脂は、350〜800の重合度を有することが好ましく、370〜600の重合度を有することがさらに好ましい。また本発明に用いるセルロースアシレート樹脂は、70000〜230000の数平均分子量を有することが好ましく、75000〜230000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、78000〜120000の数平均分子量を有することがよりさらに好ましい。
前記セルロースアシレート樹脂は、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。工業的に最も一般的な合成方法としては、以下の通りである。綿花リンタや木材パルプなどから得たセルロースをアセチル基並びにプロピオニル基及び/又はブチリル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)又はそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化し、目的のセルロースアシレート樹脂を合成することができる。
(1−3) 一般式(I)で表される化合物の添加量
本発明のフィルム中、主成分である高分子(例えば、水酸基を有する高分子)100質量部に対する、前記一般式(I)で表される化合物の添加量は、30質量部以下とすることが好ましく、0.01〜30質量部とすることがより好ましく、0.01〜20質量部とすることが特に好ましく、0.01〜15質量部とすることがさらに好ましい。また、前記一般式(6)の化合物の併用であって、より高いRe及びRthの発現を得るためには、後述するように、前記一般式(6)の化合物に比べて、本発明に係わる化合物を低い割合で添加するのが好ましく、その態様では、主成分である高分子100質量部に対する、前記一般式(I)で表される化合物の添加量は、0.001〜5質量%であるのが好ましく、0.001〜 2質量%であるのがより好ましく、0.001〜1質量%であるのがより好ましい。
また、本発明のフィルムは、主成分である高分子100質量部に対する、添加剤(前記一般式(I)で表される化合物とともに、所望により他の添加剤を含む)の合計含有量が55質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることが、より好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。
前記一般式(I)で表される化合物は1種類のみを用いても2種以上用いてもよい。また、前記スキーム2−1又は3−1にしたがって製造する場合に、一般式(1b)又は一般式(7b)で表される化合物を2種以上用いて得られる反応混合物も好ましく用いることができる。
このように一般式(I)で表される化合物を2種以上用いる場合には、一般式(I)で表される化合物の合計の添加量が、前述の好ましい添加量の範囲となることが好ましい。
また、前記一般式(I)で表される化合物は、水和物や溶媒和物として得られることがあるが、水和物や溶媒和物としてそのまま用いてもよいし、水や溶媒を除いてからもちいてもよい。一旦、水和物や溶媒和物として得られた結晶から水や溶媒を除くと、吸湿などにより、含率が変化する場合があるので、水和物や溶媒和物として得られた結晶をそのまま用いる方がより好ましい。
また、前述したように、一般式(I)、(II)、(III)〜(IIIh)、(IV)〜(IVh)、並びに(V)〜(Vf’)で表される化合物と、前記一般式(6)(好ましくは前記一般式(7))で表される化合物とを混合させて混合物とし、本発明では、当該混合物をそのまま高分子フィルムの添加剤として用いてもよい。本態様において、前記一般式(I)、(II)、(III)〜(IIIh)、(IV)〜(IVh)、並びに(V)〜(Vf’)で表される化合物と、前記一般式(6)(好ましくは前記一般式(7))で表される化合物との比率(それぞれ2種以上用いる場合には、前記一般式(I)、(II)、(III)〜(IIIh)、(IV)〜(IVh)、並びに(V)〜(Vf’)で表される化合物の合計の添加量と、前記一般式(6)(好ましくは前記一般式(7))で表される化合物の合計の添加量との比率)について制限はなく、いずれの比率の混合物も好ましく用いられる。前記一般式(6)で表される化合物(好ましくは前記一般式(7))の比率が高いほうがRe及びRthの発現性が高くなり、Re及びRthが高いほうが好ましい用途においてより有用であり、一方、本発明に係わる一般式(I)等で表される化合物の比率が高いほうが、Re及びRthが比較的小さいほうが好ましい用途においてより有用である。前記の用途では、前記一般式(6)(好ましくは前記一般式(7))で表される化合物に対する、本発明に係わる一般式(I)等で表される化合物の比率は、0.01〜5質量%とすることが好ましく、0.01〜3質量%とすることがより好ましく、0.01〜2質量%とすることが特に好ましい。後者の態様では、本発明の係わる一般式(I)等で表される化合物に対する、前記一般式(6)(好ましくは前記一般式(7))で表される化合物の比率は、50質量%以下とすることが好ましく、20質量%以下とすることがより好ましく、10質量%以下とすることがさらに好ましい。
(1−4) 他の添加剤
本発明の高分子フィルムは、種々の目的により、前記一般式(I)で表される化合物以外の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は、当該高分子フィルムを溶液製膜法で製造する場合は、高分子樹脂ドープ、例えばセルロースアシレートドープ中に添加することができる。添加のタイミングについては特に制限はない。添加剤は、高分子(例えば、セルロースアシレート)と相溶(溶液製膜法ではセルロースアシレートドープ中に可溶)な剤から選択する。添加剤は、高分子フィルムの光学特性の調整及びその他の特性の調整等を目的として添加される。
(可塑剤)
本発明の高分子フィルムは、可塑剤を含有しているのが、製膜性などが改善されるので好ましい。可塑剤として、糖類及びその誘導体からなる化合物群から選択される糖類系可塑剤、又はジカルボン酸類とジオール類との重縮合エステル及びその誘導体からなるオリゴマー類から選択されるオリゴマー系可塑剤を使用すると、高分子フィルムの環境湿度耐性が改善されるので好ましい。具体的には、湿度に依存したRthの変動を軽減することができる。糖類系可塑剤及びオリゴマー系可塑剤の双方を併用すると、湿度に依存したRthの変動の軽減効果が高くなる。
(糖類系可塑剤)
上記した通り、本発明の高分子フィルムは、糖類及びその誘導体からなる化合物群から選択される少なくとも1種の化合物を、含有しているのが好ましい。中でも、1〜10量体の糖類及びその誘導体からなる化合物群から選択される化合物は、可塑剤として好ましい。その例には、国際公開を2007/125764号パンフレットの[0042]〜[0065]に記載のグルコース等の糖のOHの一部又は全部の水素原子がアシル基に置換された糖誘導体が含まれる。糖類系可塑剤の添加量は、主成分である高分子(例えばセルロースアシレート)に対して、0.1質量%以上20質量%未満であるのが好ましく、0.1質量%以上10質量%未満であるのがより好ましく、0.1質量%以上7質量%未満であるのがさらに好ましい。
(オリゴマー系可塑剤)
上記した通り、本発明の高分子フィルムは、オリゴマー類から選択されるオリゴマー系可塑剤を含有しているのが好ましい。オリゴマー系可塑剤の好ましい例には、ジオール成分とジカルボン酸成分との重縮合エステル及びその誘導体(以下、「重縮合エステル系可塑剤」という場合がある)、並びにメチルアクリレート(MA)のオリゴマー及びその誘導体(以下、「MAオリゴマー系可塑剤」という場合がある)が含まれる。
前記重縮合エステルは、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合エステルである。ジカルボン酸成分は、1種のジカルボン酸のみからなっていても、又は2種以上のジカルボン酸の混合物であってもよい。中でも、ジカルボン酸成分として、少なくとも1種の芳香族性ジカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分を用いるのが好ましい。一方、ジオール成分についても1種のジオール成分のみからなっていても、又は2種以上のジオールの混合物であってもよい。中でも、ジオール成分として、エチレングリコール及び/又は平均炭素原子数が2.0より大きく3.0以下の脂肪族ジオールを用いるのが好ましい。
前記ジカルボン酸成分中の前記芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との比率は、芳香族ジカルボン酸が5〜70モル%であることが好ましい。上記範囲であると、フィルムの光学特性の環境湿度依存性を低減できるとともに、製膜過程でブリードアウトの発生を抑制できる。前記ジカルボン酸成分中の芳香族ジカルボン酸は、より好ましくは10〜60モル%であり、20〜50モル%であることがさらに好ましい。
芳香族ジカルボン酸の例には、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等が含まれ、フタル酸、及びテレフタル酸が好ましい。脂肪族ジカルボン酸の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が含まれ、中でも、コハク酸、及びアジピン酸が好ましい。
前記ジオール成分は、エチレングリコール及び/又は平均炭素原子数が2.0より大きく3.0以下のジオールである。前記ジオール成分中、エチレングリコールが50モル%であることが好ましく、75モル%であることがより好ましい。脂肪族ジオールとしては、アルキルジオール又は脂環式ジオール類を挙げることができ、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、ジエチレングリコール等があり、これらはエチレングリコールとともに1種又は2種以上の混合物として使用されることが好ましい。
前記ジオール成分は、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及び1,3−プロパンジオールであるのが好ましく、特に好ましくはエチレングリコール、及び1,2−プロパンジオールである。
また、前記重縮合エステル系可塑剤としては、前記重縮合エステルの末端のOHがモノカルボン酸とエステルを形成している当該重縮合エステルの誘導体であるのが好ましい。両末端OH基の封止に用いるモノカルボン酸類としては、脂肪族モノカルボン酸が好ましく、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸及びその誘導体等が好ましく、酢酸又はプロピオン酸がより好ましく、酢酸が最も好ましい。重縮合エステルの両末端に使用するモノカルボン酸類の炭素原子数が3以下であると、化合物の加熱減量が大きくならず、面状故障の発生を低減することが可能である。また、封止に用いるモノカルボン酸は2種以上を混合してもよい。前記重縮合エステルの両末端は酢酸又はプロピオン酸による封止されているのが好ましく、酢酸封止により両末端がアセチルエステル残基となっている重縮合エステルの誘導体が特に好ましい。
前記重縮合エステル及びその誘導体は、数平均分子量は700〜2000程度のオリゴマーであることが好ましく、800〜1500程度がより好ましく、900〜1200程度がさらに好ましい。なお、重縮合エステルの数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定、評価することができる。
以下の表1に、重縮合エステル系可塑剤の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。

前記重縮合エステルは、常法により、ジカルボン酸成分とジオール成分とのポリエステル化反応もしくはエステル交換反応による熱溶融縮合法、又はジカルボン酸成分の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。また、本発明に係る重縮合エステルについては、村井孝一編者「可塑剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号の各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
前記重縮合エステル系可塑剤の添加量は、主成分であるセルロースアシレートの量に対し0.1〜70質量%であることが好ましく、1〜65質量%であることがさらに好ましく、3〜60質量%であることがよりさらに好ましい。
なお、重縮合エステル系可塑剤が含有する原料及び副生成物、具体的には、脂肪族ジオール、ジカルボン酸エステル、及びジオールエステル等、のフィルム中の含有量は、1%未満が好ましく、0.5%未満がより好ましい。ジカルボン酸エステルとしては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジ(ヒドロキシエチル)、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジ(ヒドロキシエチル)、アジピン酸ジ(ヒドロキシエチル)、コハク酸ジ(ヒドロキシエチル)等が挙げられる。ジオールエステルとしては、エチレンジアセテート、プロピレンジアセテート等が挙げられる。
本発明の高分子フィルムに用いられる可塑剤としては、メチルメタクリレート(MA)オリゴマー系可塑剤も好ましい。MAオリゴマー系可塑剤と前記糖類系可塑剤との併用も好ましい。併用の態様では、MAオリゴマー系可塑剤と糖類型可塑剤とを質量比で1:2〜1:5の割合で使用するのが好ましく、1:3〜1:4の割合で使用するのがより好ましい。MAオリゴマー系可塑剤の一例は、下記繰り返し単位を含むオリゴマーである。
重量平均分子量は、500〜2000程度が好ましく、700〜1500程度がより好ましく、800〜1200程度であるのがさらに好ましい。
また、MAオリゴマー系可塑剤は、MA単独のオリゴマーの他、MAから誘導体される上記繰り返し単位とともに、他のモノマーから誘導される繰り返し単位の少なくとも1種を有するオリゴマーであってもよい。前記他のモノマーの例には、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、ならびに上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルにかえたモノマーが含まれる。また、スチレン、メチルスチレン、ヒドロキシスチレンなどの芳香環を有するモノマーを利用することもできる。前記他のモノマーとしては、芳香環を持たない、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーが好ましい。
また、MAオリゴマー系可塑剤が、2種以上の繰り返し単位を有するオリゴマーである場合は、X(親水基を有するモノマー成分)及びY(親水基を持たないモノマー成分)からなり、X:Y(モル比)が1:1〜1:99のオリゴマーが好ましい。
これらのMA系オリゴマーは、特開2003−12859号公報に記載されている方法を参考にして合成することができる。
(高分子可塑剤)
本発明の高分子フィルムは、前述した糖類系可塑剤、重縮合エステル系可塑剤、及びMMAオリゴマー系可塑剤とともに、又はそれに代えて、他の高分子系可塑剤を含有していてもよい。他の高分子系可塑剤としては、ポリエステルポリウレタン系可塑剤、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、フェノール−ホルムアルデヒド縮合物、尿素−ホルムアルデヒド縮合物、酢酸ビニル、等が挙げられる。
(少なくとも2つの芳香環を有する化合物)
本発明の高分子フィルムは、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、少なくとも2つの芳香環を有する化合物を含有していてもよい。当該化合物は、高分子フィルムの光学特性を調整する作用がある。例えば、本発明の高分子フィルムを光学補償フィルムとして用いる場合、光学特性、特にReを好ましい値に制御するには、延伸が有効である。Reの上昇はフィルム面内の屈折率異方性を大きくすることが必要であり、一つの方法が延伸による主鎖配向の向上である。また、屈折率異方性の大きな化合物を添加剤として用いることで、さらにフィルムの屈折率異方性を上昇することが可能である。例えば上記の2つ以上の芳香環を有する化合物は、延伸によりポリマー主鎖が並び、それに伴い該化合物の配向性も向上し、所望の光学特性に制御することが容易となる。
少なくとも2つの芳香族環を有する化合物としては、例えば特開2003−344655号公報に記載のトリアジン化合物、特開2002−363343号公報に記載の棒状化合物、特開2005−134884及び特開2007−119737号公報に記載の液晶性化合物等が挙げられる。より好ましくは、上記トリアジン化合物又は棒状化合物である。少なくとも2つの芳香族環を有する化合物は2種以上を併用して用いることもできる。なお、少なくとも2つの芳香環を有する化合物の分子量は、300〜1200程度であることが好ましく、400〜1000であることがより好ましい。
少なくとも2つの芳香族環を有する化合物の添加量は、セルロースアシレート樹脂に対して質量比で0.05%〜10%が好ましく、0.5%〜8%がより好ましく、1%〜5%がさらに好ましい。また、前記2つの芳香族環を有する化合物は、本発明に用いられる前記一般式(I)又は(II)で表される化合物を兼ねていてもよい。一方、前記2つの芳香族環を有する化合物が、1,3,5−トリアジン環構造を有するものの前記一般式(I)又は(II)を満たさない場合は、湿度依存性改良の観点から、該2つの芳香族環を有する化合物の添加量は、セルロースアシレート樹脂に対して質量比で0.05%〜10%が好ましく、0.5%〜8%がより好ましく、1%〜5%が特に好ましい。
(光学異方性調整剤)
また、本発明の高分子フィルムは、光学異方性調整剤を含有していてもよい。例えば、特開2006−30937号公報の23〜72頁に記載の「Rthを低減させる化合物」が例に挙げられる。
(マット剤微粒子)
前記高分子フィルムには、マット剤を添加してもよい。マット剤として使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
2次平均粒子径の小さな粒子を有する高分子フィルムの製造方法には、微粒子の分散液を用いることができる。例えば、セルロースアシレートフィルムを例に挙げると、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ調製し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集し難い点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースアシレートを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行い、これを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。いずれの方法を利用してもよいし、またこれらの方法に限定されるものでもない。
上記調製方法に使用される溶剤は、低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースアシレートの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
(低分子可塑剤、劣化防止剤、剥離剤)
前記高分子フィルムには、各調製工程において用途に応じた、上述した以外の種々の添加剤(例えば、低分子可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開2001−151901号公報などに記載されている。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期は、ドープ調製工程においていずれのタイミングで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後のタイミングで添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、高分子フィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
(1−5) 高分子フィルムの製造方法
本発明の高分子フィルムは、溶液製膜法(ソルベントキャスト法)によって製膜されたフィルムであるのが好ましい。ソルベントキャスト法では、ポリマーを有機溶媒に溶解して調製されたドープを、金属等からなる支持体の表面にキャストして、乾燥して製膜する。その後、膜を支持体面から剥ぎ取り、延伸処理することで製造される。
ソルベントキャスト法を利用したセルロースアシレートフィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同2,367,603号、同2,492,078号、同2,492,977号、同2,492,978号、同2,607,704号、同2,739,069号及び同2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号及び同736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号及び同62−115035号等の記載を参考にすることができる。また、前記セルロースアシレートフィルムは、延伸処理を施されていてもよい。延伸処理の方法及び条件については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号等に記載の例を参考にすることができる。
(1−6) 高分子フィルムの諸特性
(Re及びRth)
本発明の高分子フィルムの光学特性の好ましい範囲は、用途に応じて変動するであろう。VAモード液晶表示装置に利用される態様では、Re(589)が30nm〜200nmであり、及びRth(589)が70nm〜400nmであるのが好ましく;Re(589)が30nm〜150nmであり、及びRth(589)が100nm〜300nmであるのがより好ましい。さらには、Re(589)が40nm〜100nmであり、及びRth(589)が100nm〜250nmであることがさらに好ましい。
なお、特に断らない限り、フィルムのRe及びRthは、フィルムを温度25℃・相対湿度60%の環境下に十分な時間(2時間以上であって、例えば12時間、24時間)放置した後に、当該温度及び相対湿度で測定される値をいうものとする。
(Reの湿度依存性及びRthの湿度依存性)
本発明の高分子フィルムは、湿度に依存したRe及び/又はRthの変動が小さいという特徴がある。具体的には、フィルムを25℃・相対湿度10%にて2時間調湿したときのRe、Rth(それぞれRe[25℃、RH10%]、Rth[25℃、RH10%]とも言う)と、25℃・相対湿度80%にて2時間調湿したときのRe、Rth(それぞれRe[25℃、RH80%]、Rth[25℃、RH80%]とも言う)の変動が小さい。本発明のフィルムは、光学特性の湿度依存性が軽減されているので、湿度が変化する環境下においてもRe及びRthの変動が抑制され、前記好ましい範囲のレターデーションを発揮することができる。
本発明の高分子フィルムは、Reの湿度依存性(ΔRe=|Re[25℃、RH10%]−Re[25℃、RH80%]|)が、10nm以下であることが好ましく、9nm以下であることがさらに好ましく、8nm以下であることが特に好ましい。
本発明の高分子フィルムはRthの湿度依存性(ΔRth=|Rth[25℃、RH10%]−Rth[25℃、RH80%]|)が、21nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがよりさらに好ましく、19nm以下であることが特に好ましい。
(膜厚)
本発明の高分子フィルムを液晶表示装置の部材等、薄型化が望まれる装置の部材として利用する態様では、膜厚は薄いほうが好ましいが、一方、膜厚が薄すぎるとその用途に要求される光学特性を達成できない。液晶表示装置の光学補償フィルムや偏光板保護フィルムとして利用する態様では、膜厚は20〜80μm程度であるのが好ましい。より好ましくは、25〜70μm程度であり、さらに好ましくは30〜60μm程度である。
3. 高分子フィルムの用途
本発明の高分子フィルムは、種々の用途に用いることができる。例えば、液晶表示装置の位相差フィルム(以下、光学補償フィルムとも言う)、偏光板の保護フィルム等に利用することができる。
(位相差フィルム)
本発明の高分子フィルムは、位相差フィルムとして用いることができる。なお、「位相差フィルム、又は光学補償フィルム」とは、一般に液晶表示装置等の表示装置に用いられ、光学異方性を有する光学材料のことを意味し、光学補償シートなどと同義である。液晶表示装置において、光学補償フィルムは表示画面のコントラストを向上させたり、視野角特性や色味を改善したりする目的で用いられる。
また、所望のRe及びRthに調整するために、本発明の高分子フィルムを複数枚積層して、又は本発明の高分子フィルムと他のフィルムとを積層して用いることもできる。フィルムの積層は、粘着剤や接着剤を用いて実施することができる。
(偏光板)
本発明の高分子フィルムは、偏光板(本発明の偏光板)の保護フィルムとして用いることができる。本発明の偏光板の一例は、偏光膜とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルム(透明フィルム)を有し、本発明の高分子フィルムを少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして有する。本発明の高分子フィルムが支持体として利用され、その表面に液晶組成物からなる光学異方性層を有する態様について、偏光板の保護フィルムとして利用する場合は、支持体である本発明の高分子フィルムの裏面(光学異方性層が形成されていない側の面)を偏光膜の表面に貼り合せるのが好ましい。
本発明の高分子フィルムを前記偏光板保護フィルムとして用いる場合、本発明の高分子フィルムには前記表面処理(特開平6−94915号公報、同6−118232号公報にも記載)を施して親水化しておくことが好ましく、例えば、グロー放電処理、コロナ放電処理、又は、アルカリ鹸化処理などを施すことが好ましい。特に、本発明の高分子フィルムがセルロースアシレートフィルムの場合には、前記表面処理としてはアルカリ鹸化処理が最も好ましく用いられる。
また、前記偏光膜としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸した偏光膜を用いる場合、接着剤を用いて偏光膜の両面に本発明の高分子フィルムの表面処理面を直接貼り合わせることができる。本発明の製造方法においては、このように前記高分子フィルムが偏光膜と直接貼合されていることが好ましい。前記接着剤としては、ポリビニルアルコール又はポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラール)の水溶液や、ビニル系ポリマー(例えば、ポリブチルアクリレート)のラテックスを用いることができる。特に好ましい接着剤は、完全鹸化ポリビニルアルコールの水溶液である。
一般に液晶表示装置は二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられるため、4枚の偏光板保護フィルムを有する。本発明の高分子フィルムは、4枚の偏光板保護フィルムのいずれに用いてもよいが、本発明の高分子フィルムは、液晶表示装置における偏光膜と液晶層(液晶セル)の間に配置される保護フィルムとして、特に有用である。また、前記偏光膜を挟んで本発明の高分子フィルムの反対側に配置される保護フィルムには、透明ハードコート層、防眩層、反射防止層などを設けることができ、特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムとして好ましく用いられる。
(液晶表示装置)
本発明の高分子フィルム、ならびそれを利用した光学補償フィルム及び偏光板は、様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができる。以下にこれらのフィルムが用いられる各液晶モードについて説明する。これらのモードのうち、本発明の高分子フィルム、並びにそれを利用した光学補償フィルム及び偏光板は、特にVAモードの液晶表示装置に好ましく用いられる。これらの液晶表示装置は、透過型、反射型及び半透過型のいずれでもよい。
図1に、本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図を示す。なお、図1中、上を観察者(表示面)側、下をバックライト側とする。
図1のVAモード液晶表示装置は、液晶セルLC(上側基板1、下側基板3、及び液晶層5、からなる)と、液晶セルLCを挟持して配置される一対の上側偏光板P1及び下側偏光板P2とを有する。なお、偏光膜は、双方の表面に保護フィルムを有する偏光板として液晶表示装置に組み込まれるのが一般的であるが、図1では、偏光膜の外側保護フィルムは省略した。偏光板P1及びP2は、それぞれ偏光膜8a及び8bを有し、その吸収軸9a及び9bを互いに直交方向にして配置されている。液晶セルLCはVAモードの液晶セルであり、黒表示時には、図1に示す通り、液晶層5はホメオトロピック配向になる。上側基板1と下側基板3は、それぞれ内面に、配向膜(図示せず)と電極層(図示せず)を有し、さらに観察者側の基板1の内面には、カラーフィルタ層(図示せず)を有する。
上側基板1と上側偏光膜8aとの間、及び下側基板3と下側偏光膜8bとの間には、位相差膜10a及び10bがそれぞれ配置されている。位相差膜10a及び10bは、本発明の高分子フィルムである。位相差膜10a及び10bは、その面内遅相軸11a及び11bを、上側偏光膜8a及び下側偏光膜8bのそれぞれの吸収軸9a及び9bと直交にして配置される。即ち、位相差膜10a及び10bは、それぞれの遅相軸を直交にして配置される。本発明の高分子フィルムからなる位相差膜10a及び10bは、黒表示時の斜め方向に生じる光漏れ及びカラーシフトの軽減に寄与する。
(ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム)
本発明の高分子フィルムは、所望により、ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへ適用してもよい。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明の高分子フィルムの片面又は両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れか或いは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明の高分子フィルムにおいても好ましく用いることができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(一般式(I)で表される化合物の合成)
[合成例1:化合物(Ib−3)の合成]
2,4−ジアミノピリミジン10g(71mmol)のN−エチルピロリドン70mL溶液にm−メチル安息香酸メチル10.7g(71mmol)、ナトリウムメトキシド7.7g(143mmol)を加え、40℃で1時間加熱攪拌した。反応系の温度を室温に戻し、反応溶液を希塩酸水に注いで中和した後、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥剤を除去後、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル)で精製し、化合物(Ib−3)を得た。得られた化合物(Ib−3)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド、基準:テトラメチルシラン)
10.02(1H,s)
8.00(1H,d)
7.75−7.68(2H,m)
7.40−7.33(2H,m)
6.84(2H,br)
6.20(1H,d)
2.35(3H,s)
[合成例2:化合物(Ib−9)の合成]
合成例1において、出発原料を2,4−ジアミノピリミジンから6−メチル−2,4−ジアミノピリミジンに、m−メチル安息香酸メチルから安息香酸メチルに変更した他は合成例1と同様に合成を行った。得られた化合物(Ib−9)のNMRスペクトルは以下の通りである。(含水率 2.45%)
1H−NMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド、基準:テトラメチルシラン)
10.27(1H,br)
7.97−7.88(2H,m)
7.60−7.44(3H,m)
6.70(2H,br)
6.07(1H,s)
2.18(3H,s)
[合成例3:化合物(Ib−11)の合成]
合成例1において、出発原料を2,4−ジアミノピリミジンから6−メチル−2,4−ジアミノピリミジンに変更した他は合成例1と同様に合成を行った。得られた化合物(Ib−11)のNMRスペクトルは以下の通りである。(含水率2.8%)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム、基準:テトラメチルシラン)
7.90(1H,s)
7.75−7.64(2H,m)
7.34−7.27(2H,m)
6.07(1H,s)
5.80(2H,br)
2.37(3H,s)
2.21(3H,s)
[合成例4:化合物(Ib−25)の合成]
合成例1において、出発原料を2,4−ジアミノピリミジンから6−メトキシ−2,4−ジアミノピリミジンに、m−メチル安息香酸メチルから安息香酸メチルに変更した他は合成例1と同様に合成を行った。得られた化合物(Ib−25)のNMRスペクトルは以下の通りである。(含水率0.8%)
1H−NMR(溶媒:重クジメチルスルホキシド、基準:テトラメチルシラン)
10.29(1H,s)
7.91−7.86(2H,m)
7.60−7.25(3H,m)
6.60(2H,br)
5.51(1H,s)
3.73(3H,s)
[合成例5:化合物(Ib−78)の合成]
合成例1と同様に合成を行い、化合物(Ib−78)を得た。得られた化合物(Ib−78)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:ジメチルスルホキシド、基準:テトラメチルシラン)
10.39(1H,s)
8.18(1H,d)
7.83−7.75(2H,m)
7.42−7.35(3H,m)
6.39(2H,br)
2.38(3H,s)
[合成例6:化合物(Ib−84)の合成]
合成例2と同様に合成を行い、化合物(Ib−84)を得た。得られた化合物(Ib−84)のNMRスペクトルは以下の通りである。(含水率0.3%)
1H−NMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド、基準:テトラメチルシラン)
10.46(1H,s)
7.98(2H,d)
7.64−7.48(3H,m)
7.30(1H,s)
6.29(2H,br)
2.25(3H,s)
[合成例7:化合物(Ib−86)の合成]
合成例3と同様に合成を行い、化合物(Ib−86)を得た。得られた化合物(Ib−86)のNMRスペクトルは以下の通りである。(含水率0.3%)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム、基準:テトラメチルシラン)
8.29(1H,br)
7.70−7.63(2H,m)
7.58(1H,s)
7.40−7.35(2H,m)
4,93(2H,br)
2.43(3H,s)
2.39(3H,s)
[合成例8:化合物(Ib−100)の合成]
合成例4と同様に合成を行い、化合物(Ib−100)を得た。得られた化合物(Ib−100)のNMRスペクトルは以下の通りである。(含水率2.0%)
1H−NMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド、基準:テトラメチルシラン)
10.42(1H,s)
7.96(2H,d)
7.65−7.45(3H,m)
6.85(1H,s)
6.40(2H,br)
3.82(3H,s)
[合成例9:化合物(Ib−159)の合成]
合成例4において、出発原料を6−メトキシ−2,4−ジアミノピリミジンから6−クロロ−2,4−ジアミノピリミジンに変更した他は合成例4と同様に合成を行った。得られた化合物(Ib−159)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド、基準:テトラメチルシラン)
10.60(1H,s)
7.92(2H,d)
7.60−7.45(3H,m)
7.20(2H,br)
6.21(1H,s)
[合成例10:化合物(Ib−161)の合成]
合成例4において、出発原料を6−メトキシ−2,4−ジアミノピリミジンから6−クロロ−2,4−ジアミノピリミジンに変更した他は合成例4と同様に合成を行った。得られた化合物(Ib−161)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド、基準:テトラメチルシラン)
10.88(1H,s)
7.96(2H,d)
7.63−7.48(3H,m)
7.42(1H,s)
6.90(2H,br)
[合成例11:化合物(IIb−6)の合成]
文献Organic and Biomolecular Chemistry, 2007, vol. 5, #10, 1577 − 1585を参考に化合物(IIb−6)を合成した。
[合成例12:化合物(IIb−9)の合成]
文献Yakugaku Zasshi, 1951, vol. 71, 315 − 317を参考に化合物(IIb−9)を合成した。
[合成例13:化合物(IIb−14)の合成]
文献Merck and Co., Inc., US4144338 A1, 1979を参考に化合物(IIb−14)を合成した。
[合成例14:化合物(IIb−16)の合成]
文献Journal of the American Chemical Society, 1947, vol. 69, 1147 − 1148を参考に化合物(IIb−16)を合成した。
[合成例15:化合物(IIIb−1)の合成]
文献Bioorganic and Medicinal Chemistry, 1998, vol. 9, #6, 643 − 660を参考に化合物(IIIb−1)を合成した。
[合成例16:化合物(IIIb−6)の合成]
文献Chemical & Pharmaceutical Bulletin, 1981, vol. 29, #4, 948 − 954を参考にジアミノピリミジンを合成後、化合物(Ib−3)と同様に合成を行い化合物(IIIb−6)を得た。
[合成例17:混合物Aの合成]
t−ブタノール 51mL、メタノール 9mL中に窒素気流下、2,4−ジアミノ−6−クロロピリミジン5.8g(40mmol)、ナトリウムメトキシド22.7gを順に添加した。その後、80℃にて0.5時間加熱攪拌したのち、70℃まで温度を下げ、安息香酸メチル19.6g(96mol)を滴下し、70℃で6時間加熱攪拌を続けた。この反応液を、40℃まで放冷した後に、1−メトキシ−2−プロパノールを45mL添加した。この溶液を、氷冷した水68mL、及び酢酸25.22gの混合液中に添加した後に、さらに、水200mLを添加し、氷冷下1時間攪拌することで生成物を析出させた。析出した生成物をろ取し、水でかけ洗いした。生成物8.3g(収率60%)を得た。HPLCを測定した結果、化合物(Ib−25)/化合物(Ib−100)/後述する参考化合物(3)の6.5/5.5/88の混合物であった。
実施例1.製膜用セルロースアシレート溶液の調製
(製膜用セルロースアシレート溶液の調製)
下記表に示す各例示化合物を、下記表に記載のアセチル置換度のセルロースアシレート樹脂 100質量部に対して下記表に示す割合で混合し、溶媒であるメチレンクロライド 396質量部、メタノール 59質量部中に溶解して、セルロースアシレート(具体的には、セルロースアセテート)溶液を調製した。
(流延)
上述のセルロースアシレート溶液をガラス板流延装置を用いて流延した。給気温度70℃の温風で6分間乾燥し、ガラス板から剥ぎ取ったフィルムを枠に固定し、給気温度100℃の温風で10分間、給気温度140℃の温風で20分間乾燥し、膜厚65μmのセルロースアシレートフィルムを作製した。
次に、得られたフィルムを200℃の条件で30%の延伸倍率まで、30%/分の延伸速度で横延伸し、膜厚50μmのセルロースアシレートフィルムを作製した。
比較例用フィルムとして、添加剤を無添加のフィルムを製造した。また、以下に示す構造の比較化合物1を添加剤として用いた比較例用フィルムもそれぞれ作製した。
下記表に示す各例示化合物と以下に示す構造の参考化合物1又は参考化合物2、あるいは参考化合物3のいずれか一種の参考化合物を添加剤として用いたフィルムもそれぞれ作製した。なお、参考化合物は、前記一般式(6)及び(7)で表すことができる。
(光学特性の評価)
サンプルフィルムを25℃・相対湿度60%にて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃・相対湿度60%において、フィルム表面に対し垂直方向及び遅相軸を回転軸としてフィルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける位相差を測定することから、面内レターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出する。
その結果を下記表に示す。
また、レターデーション値の湿度に伴う変化については、フィルムを25℃・相対湿度10%にて2時間調湿した以外は、上記の方法と同様にして測定して算出したRe及びRth(それぞれRe[25℃,RH10%]、Rth[25℃,RH10%])、及び25℃・相対湿度80%にて12時間調湿した以外は上記の方法と同様にして測定して算出したRe、Rth(それぞれRe[25℃,RH80%]、Rth[25℃,RH80%])から、Reの湿度依存性(ΔRe)とRthの湿度依存性(ΔRth)とを算出した。
その結果を下記表に、それぞれΔRe、ΔRthとして示す。
上記表に示す結果から、本発明の実施例の高分子フィルムはいずれも、式(I)の化合物が添加されていることによりレターデーションが上昇しているとともに、比較化合物1を添加したフィルムと比較して、レターデーションの湿度依存性が軽減されていることが理解できる。その効果は、式(I)の化合物を2種以上添加することで、又は式(I)の化合物とともに、式(6)及び(7)で表される参考化合物の添加により、相乗的に高められることが理解できる。
実施例2−1.製膜用セルロースアシレート溶液の調製
(製膜用セルロースアシレート溶液の調製)
下記表に示す各例示化合物を、下記表に記載のアセチル置換度のセルロースアシレート樹脂 100質量部に対して下記表に示す割合で混合し、溶媒であるメチレンクロライド 396質量部、メタノール 59質量部中に溶解して、セルロースアシレート(具体的には、セルロースアセテート)溶液を調製した。
(流延)
上述のセルロースアシレート溶液をガラス板流延装置を用いて流延した。給気温度70℃の温風で6分間乾燥し、ガラス板から剥ぎ取ったフィルムを枠に固定し、給気温度100℃の温風で10分間、給気温度140℃の温風で20分間乾燥し、膜厚55μmのセルロースアシレートフィルムを作製した。
比較例用フィルムとして、添加剤を無添加のフィルムを製造した。また、比較化合物1を添加剤として用いた比較例用フィルムもそれぞれ作製した。
光学特性の評価はレターデーション値の湿度に伴う変化について、25℃・相対湿度30%、及び25℃・相対湿度80%にて12時間調湿した以外は実施例1と同様にして行った。
上記表に示す結果から、本発明の実施例の高分子フィルムは、式(I)の化合物が添加されていることによりレターデーションが上昇しているとともに、比較化合物1を添加したフィルムと比較して、レターデーションの湿度依存性が軽減されていることが理解できる。
実施例2−2. 製膜用セルロースアシレート溶液の調製
実施例2−1において、セルロースアシレートの置換度、各添加剤の種類と量、延伸温度延伸倍率、フィルムの厚みを下表のとおりに変更した以外は実施例2−1と同様にして、セルロースアシレートフィルムを作成した。
光学特性の評価は実施例1と同様にして行った。
実施例3. セルロースアシレートフィルムの作製
(製膜用セルロースアシレート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液401を調製した。
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セルロースアシレート溶液401の組成
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アセチル置換度2.43、重合度340のセルロースアセテート 100.0質量部
前記化合物(I−100) 4.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
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(流延、延伸)
セルロースアシレート溶液401を、バンド流延機を用いて流延し、残留溶媒含量40%まで乾燥した後、得られたウェブをバンドから剥離し、その後140℃の条件下、残留溶媒含量20%になった時点でテンターを用いて延伸倍率30%で横延伸したのち、さらに130℃で3分間保持した。その後フィルムを保持していたクリップをはずして該フィルムを130℃30分間乾燥させて、セルロースアシレートフィルム401aを作製した。膜厚は60μmであった。
比較例用フィルムとして、添加剤を無添加のフィルム(セルロースアシレートフィルム402a)を製造した。また、比較化合物1を添加剤として用いた比較例用フィルム(セルロースアシレートフィルム403a)もそれぞれ作製した。
(光学特性の評価)
光学特性の評価は実施例1と同様にして行った。
本発明の化合物を用いたセルロースアシレートフィルム401aでは、セルロースアシレートフィルム402a及び403aと比較して、レターデーションの湿度依存性が軽減されていた。
実施例4.溶液安定性の評価
下記表に示す各化合物(1質量部)をメチレンクロライド 87質量部、メタノール 13質量部中に溶解して、耐圧容器中にて80℃、66時間静置し、液体クロマトグラフィーを用いた定量によりその残存率を算出した。結果を表に示す。
上記表に示す結果から、本発明の化合物は、溶液安定性に優れていることが理解できる。
1 液晶セル上側基板
3 液晶セル下側基板
5 液晶層(液晶分子)
8a、8b 偏光板の保護フィルム
9a、9b 偏光板の保護フィルム吸収軸
10a、10b 位相差膜(本発明の高分子フィルム)
11a、11b 位相差膜(本発明の高分子フィルム)吸収軸
P1、P2 偏光板
LC 液晶セル

Claims (15)

  1. 分子量が200〜2000である下記一般式(I)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩の少なくとも1種を含有するセルロースアシレート樹脂フィルム:
    一般式(I)中、Yは−N−又は−CH−を表し;Qa、Qb、Qcはそれぞれ独立に、単結合又は−O−、−S−、−CH2−、−CH(CH3)−、−N(Xa−Rh)−、−N(Xa−Rh)−Xb−(ここで、Xa及びXbはそれぞれ独立に、単結合、−CO−、−COO−、−CONH−、又は−SO2−を示す。Rhは水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基、炭素原子数6〜10のアリール基を表す。)で表される2価の連結基を表し;
    aは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、モルホリノ基、ピペラジニル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ハロゲン原子を表し、
    bは水素原子、アルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表し、
    cは水素原子、アルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表し、
    aとRbはそれぞれ連結して環を形成してもよく;X2は、単結合を表し、X1は、単結合又は下記2価の連結基群G1
    (各式中、*側が前記各式で表される化合物中のピリミジン環又はピリジン環に置換しているN原子との連結部位であり;Rgは水素原子、アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。)から選択される2価の基を表し;
    1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はチオフェン基を表し、互いに連結して環を形成してもよく;ただし、Qc−Rc及びN(X11)X22のうち一つは−NH2であるが、同時に−NH2になることはなく、Yが窒素原子で且つN(X11)X22が−NH2の場合、−Qa−Raは−NH2でなく、
    但し、以下のセルロースアシレートフィルム1とセルロースアシレートフィルム2とを除く;
    アシル置換度が下記式(i)〜(iii)を同時に満たすセルロースアシレート樹脂と、下記(A)〜(C)の要件を満たす水素結合性化合物を含むことを特徴とするセルロースアシレートフィルム1:
    (A)1分子内に水素結合ドナー部と水素結合アクセプター部の双方を有する。
    (B)分子量を水素結合ドナー数と水素結合アクセプター数の合計数で除した値が30以上65以下。
    (C)芳香環構造の総数が1以上3以下。
    式(i) 0.5≦A+B≦2.7
    式(ii) 0.0≦A≦2.5
    式(iii) 0.1≦B≦2.0
    (式(i)〜式(iii)中、Aはセルロースアシレート樹脂のアセチル基の置換度、Bはセルロースアシレート樹脂のプロピオニル基の置換度とブチリル基の置換度の合計を表す。
    下記(A)〜(C)の要件およびClogP値が0〜5.5を満たす水素結合性化合物と、多価アルコールエステル系疎水化剤、重縮合エステル系疎水化剤および炭水化物誘導体系疎水化剤の中から選ばれる少なくとも一つの疎水化剤と、セルロースアシレート樹脂を含み、
    前記水素結合性化合物の添加量が、前記セルロースアシレート樹脂に対して1〜30質量%であり、
    前記疎水化剤の添加量が、前記セルロースアシレート樹脂に対して1〜20質量%であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム2
    (A)1分子内に水素結合ドナー部と水素結合アクセプター部の双方を有する。
    (B)分子量を水素結合ドナー数と水素結合アクセプター数の合計数で除した値が30以上65以下。
    (C)芳香環構造の総数が1以上3以下。
  2. 前記一般式(I)が、一般式(III)、一般式(IV)又は一般式(V)である請求項1に記載のセルロースアシレート樹脂フィルム:
    一般式(III)〜(V)において、
    1は、単結合又は下記2価の連結基群G2から選択される2価の基を表し;
    2は、単結合を表し、
    1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はチオフェン基を表し、−X1−R1と−X2−R2の少なくとも一方は水素原子以外の置換基である;
    a及びQbはそれぞれ独立に、単結合、−O−、−S−、−NR’−、−CH2−、又は−CH(CH3)−を表し、R’は水素原子、又はアルキル基を表し、QaとRa、QbとRb、−Qa−Ra−Rb−Qb−は連結して環を形成してもよい;
    aは水素原子、ハロゲン、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、モルホリノ基、ピペラジニル基、置換基を有していてもよいフェニル基を表し、Rbは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す;
    a、Xb、Rhは、Rcは、請求項1における定義と同義である。
    (各式中、*側が前記各式で表される化合物中のピリミジン環又はピリジン環に置換しているN原子との連結部位であり;Rgは水素原子、アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。)
  3. 前記一般式(III)、一般式(IV)又は一般式(V)がそれぞれ、下記一般式(IIIa)、(IVa)又は(Va)である請求項2に記載のセルロースアシレート樹脂フィルム:
    一般式(IIIa)中の各記号の定義は、一般式(III)中のそれぞれと同義である;
    一般式(IVa)中の各記号の定義は、一般式(IV)中のそれぞれと同義である;
    一般式(Va)中の各記号の定義は、一般式(V)中のそれぞれと同義である;
  4. 前記一般式(III)、(IV)又は(V)がそれぞれ、一般式(IIIb)、(IVb)又は(Vb)である請求項2に記載のセルロースアシレート樹脂フィルム:
    一般式(IIIb)中の各記号の定義は、一般式(III)中のそれぞれと同義である;
    一般式(IVb)中の各記号の定義は、一般式(IV)中のそれぞれと同義である。
    一般式(Vb)中の各記号の定義は、一般式(V)中のそれぞれと同義である。
  5. 前記一般式(III)、(IV)又は(V)がそれぞれ、一般式(IIIc)、(IVc)、又は(Vc)である請求項2に記載のセルロースアシレート樹脂フィルム:
    一般式(IIIc)中の各記号の定義は、一般式(III)中のそれぞれと同義であり;R9は−O−Ar、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はチオフェン基を表し;Arは置換基を有してもよいフェニル基を表す;
    一般式(IVc)中の各記号の定義は、一般式(IV)中のそれぞれと同義である;
    一般式(Vc)中の各記号の定義は、一般式(V)中のそれぞれと同義であり;R9は−O−Ar、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はチオフェン基を表し;Arは置換基を有してもよいフェニル基を表す。
  6. 前記一般式(III)、(IV)又は(V)がそれぞれ、一般式(IIId)、(IVd)又は(Vd)である請求項2に記載のセルロースアシレート樹脂フィルム:
    一般式(IIId)中の各記号の定義は、一般式(III)中のそれぞれと同義である;
    一般式(IVd)中の各記号の定義は、一般式(IV)中のそれぞれと同義である;
    一般式(Vd)中の各記号の定義は、一般式(V)中のそれぞれと同義である。
  7. 前記一般式(III)、(IV)又は(V)がそれぞれ、一般式(IIIe)、(IVe)又は(Ve)である請求項2に記載のセルロースアシレート樹脂フィルム:
    一般式(IIIe)中の各記号の定義は、一般式(III)中のそれぞれと同義であり、Arは置換基を有してもよいフェニル基を表す;
    一般式(IVe)中の各記号の定義は、一般式(IV)中のそれぞれと同義であり、Arは置換基を有してもよいフェニル基を表す;
    一般式(Ve)中の各記号の定義は、一般式(V)中のそれぞれと同義であり、Arは置換基を有してもよいフェニル基を表す。
  8. aが、単結合、又は−O−、−NH−もしくは−N(R)−(但し、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基)を表し、Raが、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数1〜8のアルキル基を表す請求項1〜7のいずれか1項に記載のセルロースアシレート樹脂フィルム。
  9. 前記一般式(I)が、一般式(IIIf)、(IIIg)、(IIIh)、(IVf)、(IVg)、(IVh)、又は(Vf)である請求項1に記載のセルロースアシレート樹脂フィルム:
    一般式(IIIf)中、Ra7は、炭素原子数1〜8のアルキル基を表す;R6、R7及びR8はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、カルバモイル基、炭素原子数1〜8のN−アルキルカルバモイル基、炭素原子数1〜16のN,N−ジアルキルカルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のN−アルキルスルファモイル基、炭素原子数1〜16のN,N−ジアルキルスルファモイル基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数1〜16のアルキルアミノ基、炭素原子数1〜16のジアルキルアミノ基、又は炭素原子数1〜16のアルコキシアルキルオキシ基を表す;
    一般式(IIIg)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義である;
    一般式(IIIh)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義である;
    一般式(IVf)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義である;
    一般式(IVg)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義である;
    一般式(IVh)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義である。
    一般式(Vf)中の各記号の定義は、一般式(IIIf)中のそれぞれと同義である。
  10. 前記化合物の水和物、溶媒和物もしくは塩の少なくとも1種を含む請求項1〜9のいずれか1項に記載のセルロースアシレート樹脂フィルム。
  11. 前記セルロースアシレート樹脂がセルロースアセテート樹脂であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のセルロースアシレート樹脂フィルム。
  12. 一般式(1)で表される化合物の分子量が200〜1000である、請求項1〜11の何れか一項に記載のセルロースアシレート樹脂フィルム。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載のセルロースアシレート樹脂フィルムを含むことを特徴とする位相差フィルム。
  14. 請求項1〜12のいずれか1項に記載のセルロースアシレート樹脂フィルム又は請求項13に記載の位相差フィルムを含むことを特徴とする偏光板。
  15. 請求項1〜12のいずれか1項に記載のセルロースアシレート樹脂フィルム、又は請求項14に記載の偏光板を含むことを特徴とする液晶表示装置。
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