以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
この明細書において、「成型品」とは、樹脂封止工程後のリードフレーム、すなわちリードフレームと樹脂とが一体化されたものを指す。特に、生産用樹脂および生産用フレームの組み合わせからなる成型品を、本明細書では「生産品」と呼ぶ。
図1は、本発明の実施形態に係る樹脂封止装置200の装置機構部全体を表わす模式図である。図1を参照して、樹脂封止装置200の構成の概要を先に説明する。
樹脂封止装置200は、金型100と、生産フレーム供給部101と、ダミーフレーム供給部102と、生産樹脂供給部105と、クリーニング樹脂供給部106とを有する。図1に示された例では、金型100として、4つの金型100A〜100DがX方向に沿って並べられている。以下では、特に区別する必要のない場合には、金型100A〜100Dを「金型100」と総称する。
生産フレーム供給部101は、金型100に供給される生産用フレームを収納する。生産樹脂供給部105は、生産用フレームに搭載された半導体チップを樹脂封止するための生産用樹脂を金型100に供給する。
樹脂封止装置200は、金型100以外の構成要素(たとえば材料供給機構および搬送機構等)が共用される、いわゆるマルチプレスを構成する。ダミーフレーム供給部102は、金型100を清浄にする(クリーニングする)ためのダミーフレームを収納する専用マガジンを有する。
クリーニング樹脂供給部106には、金型100を清浄にするために使用されるクリーニング用樹脂が配置される。クリーニング樹脂供給部106は、生産樹脂供給部105とは異なる場所に配置される。つまりクリーニング樹脂は、生産用樹脂とは別の位置に配置されている。
樹脂封止装置200は、さらに、装置機構部を制御するための装置制御部150を備える。装置制御部150は、生産フレーム供給部101および生産樹脂供給部105を制御して、生産用フレームに搭載された半導体チップを、生産用樹脂により封止する。
図示しないセンサによって、金型100から生産品を取り外す際に要する機械的な力が検出される。装置制御部150は、その検出された力の大きさに基づき、金型100のクリーニングが必要かどうかを判断する。金型100のクリーニングが必要であると装置制御部150が判断した場合、装置制御部150は、ダミーフレーム供給部102およびクリーニング樹脂供給部106を制御して、生産用フレームをダミーフレームに切り換えるとともに、生産用樹脂をクリーニング用樹脂に切り換える。金型100にクリーニング用樹脂およびダミーフレームが供給されて、樹脂封止が行なわれる。
次に、樹脂封止装置200の各構成要素を詳細に説明する。樹脂封止装置200は、上記の構成要素に加えて、生産フレームプレヒート部103と、ダミーフレームプレヒート部104と、離型樹脂供給部107と、ローダ部108と、アンローダ部109と、ゲートブレーク部110と、カル廃却部111と、製品収納部112と、ローダX軸ガイドレール113と、アンローダX軸ガイドレール114とを備える。
生産フレーム供給部101は、金型100A〜100Dにそれぞれ対応してマガジン101A〜101Dを有する。生産用フレームは、図示しない搬送ハンドによってマガジン101A〜101Dから引出されて、生産フレームプレヒート部103に並べられる。生産フレームプレヒート部103は、生産用フレームを加熱する。生産用フレームの温度は、特定の温度まで上昇して、その後は、その温度に保持される。
ダミーフレーム供給部102は、ダミーフレーム用マガジン102A〜102Bを有する。ダミーフレームは、図示しない搬送ハンドによって、ダミーフレーム用マガジン102A〜102Bから引き出され、ダミーフレームプレヒート部104に並べられる。ダミーフレームプレヒート部104は、ダミーフレームを加熱する。ダミーフレームの温度は、特定の温度まで上昇して、その後は、その温度に保持される。
生産用樹脂、クリーニング用樹脂および離型樹脂は、それぞれ、生産樹脂供給部105、クリーニング樹脂供給部106、および離型樹脂供給部107に配置される。各々の樹脂供給部からは、タブレット状の樹脂(以下、タブレット樹脂と総称する)が供給される。生産樹脂供給部105、クリーニング樹脂供給部106、および離型樹脂供給部107は、互いに異なる位置に設置されている。したがって、生産用樹脂、クリーニング用樹脂および離型樹脂は、互いに異なる位置に配置される。装置制御部150の内部では、樹脂の種類と、各樹脂の配置場所とが対応づけられている。したがって装置制御部150は、異なる種類の樹脂を、作業の内容に応じて適切に選択することができる。
離型樹脂は、クリーニング用樹脂の使用後に用いられる。離型樹脂による樹脂封止にはダミーフレームが適用される。まず、金型100に付着する生産用樹脂をクリーニング用樹脂によって剥離して、金型100の内側の表面を清浄にする。次に、離型樹脂を金型100に供給して、ダミーフレームを樹脂封止する。これにより、金型100の表面への生産用樹脂の再付着をしにくくするワックス効果を生じさせることができる。
各樹脂供給部105〜107に収容されたタブレット樹脂、および各フレーム供給部101,102に収容されたフレームは、ローダX軸ガイドレール113上のローダ部108によって搬送される。ローダX軸ガイドレール113は、ベース上のX方向の全体に亘って敷設されている。したがってローダ部108は、金型100A〜100Dの各々にタブレット樹脂およびフレームを供給することができる。
金型100において、フレームが樹脂によって封止される。本実施の形態では、金型100は、樹脂の種類を問わず、一定の温度に保たれている。しかし、樹脂の種類に応じて硬化温度が異なる場合には、樹脂の種類に応じて金型100の温度を調整してもよい。
ローダX軸ガイドレール113と同じく、アンローダX軸ガイドレール114はベース上のX方向の全体に亘って敷設されている。アンローダ部109は、アンローダX軸ガイドレール114上でX方向に沿って移動可能である。
アンローダ部109は、成形品を金型100から取り出して、ゲートブレーク部110上に移動させる。成形品は、ゲートブレーク部110に所定の時間配置されることで冷却される。生産品の場合、冷却された成形品から、カル部と称する不要部分が切り離される(ゲートブレークされる)。
成型品(生産品)からカル部が切り離された後、図示しない収納ローダにより、製品収納部112のマガジン112A〜112Dに生産品が収納される。一方、ダミーフレームが適用された成形品(ダミー)は、カル廃却部111に廃却される。装置制御部150は、生産フレーム供給部101およびダミーフレーム供給部102を制御することにより、金型100A〜100Dの各々に供給されるフレームが生産用フレームおよびダミーフレームのいずれであるかを判別することができる。その判別結果に基づいて、装置制御部150は、上記の処理を実行する。
図2は、本発明の実施の形態に係る樹脂封止装置200の制御に関する構成を示す機能ブロック図である。図2を参照して、装置制御部150は、生産フレーム供給部101、ダミーフレーム供給部102、生産樹脂供給部105、クリーニング樹脂供給部106、および離型樹脂供給部107およびローダ部108を制御して、金型100に樹脂およびフレームを供給する。さらに、装置制御部150は、金型100を制御して樹脂封止を行なう。さらに、装置制御部150は、アンローダ部109および収納ローダ115を制御して、金型100から成型品を取り出す。その成型品が生産品である場合には、成型品からカル部が切り離されて、カル部が切り離された成形品は、製品収納部112に収納される。一方、成型品がダミーである場合(ダミーフレームと、クリーニング用樹脂または離型樹脂との組み合わせの場合)、その成型品は、カル廃却部111に廃却される。
装置制御部150には、生産用フレームおよびダミーフレームの収容位置が記憶されている。したがって、装置制御部150は、生産用フレームとダミーフレームとを区別することができる。同じく、装置制御部150には、生産用樹脂、クリーニング用樹脂および離型樹脂の収容位置が記憶されているので、異なる種類の樹脂を区別することができる。したがって、装置制御部150は、金型100A〜100Dの選択、各金型100A〜100Dにおける樹脂封止条件、および成形品の収納位置を正確に制御することができる。
センサ120は、金型100から成型品を取り出すのに要する機械的な力を検出する。センサ120の検出結果(検出値)は、装置制御部150に送られる。装置制御部150は、センサ120からの検出値に基づいて、金型100のクリーニングの要否を判断する。金型100のクリーニングが必要と判定された場合には、装置制御部150は、クリーニング作業を実行する。金型100のクリーニングが不要と判定された場合には、装置制御部150は、生産品の生産を継続する。
図3は、図1に示した金型100の構成を模式的に示した図である。図3を参照して、金型100は、トランスファーモールドのための周知の構成を備える。具体的には、金型100は、上型1と下型2とから構成されている。この実施の形態では、上型1が固定されているのに対して、下型2が可動である。ただし、このように制限されるものではなく、上型1が可動であり、下型2が固定されていてもよい。
生産用フレーム11には、半導体チップ12が搭載される。生産用フレーム11は、下型2に載せられる。下型2の上方への移動によって、生産用フレーム11は、上型1および下型2に挟まれる。これにより、被成形品を樹脂封止するための密閉空間が形成される。この密閉空間をキャビティ130と称する。金型100には、キャビティ130に加えてカル135、ランナー136およびポット137が形成されている。
なお、この実施の形態に係る樹脂封止装置200に適用可能なリードフレームの種類(言い換えると半導体パッケージの種類)は特に限定されるものではない。したがって図3では、キャビティ130の形状を模式的に示してある。
金型100には、プランジャ132と、可動ピン133,134とが設けられる。可動ピン133,134は、それぞれ、図示しない駆動機構によって、エジェクタプレート5,6が動かされることにより、上型1および下型2からの突き出し動作、および上型1および下型2への引き戻し動作が可能である。
可動ピン133,134は、成型品を金型100から取り出すためのエジェクタピンとして機能する。さらに、可動ピン133あるいは可動ピン134は、溶融した樹脂がキャビティ130に導入される時に、生産用フレーム11を押さえるピンとしても機能することができる。以下の説明では、可動ピン133が生産用フレーム11を押さえるピンの機能を果たす。
続いて、樹脂封止の概要を説明する。図4に示されるように、プレヒート工程によって予め加熱された樹脂131(タブレット樹脂)がプランジャ132の上にセットされる。なお、金型100に生産用フレーム11が供給されているので、樹脂131には生産用樹脂が選択される。また、可動ピン133が、上型1から突き出て生産用フレーム11を下型2に押さえつける。
次に、図5に示されるように、溶融状態の樹脂131がプランジャ132によって押し出される。樹脂131は、カル135およびランナー136を含む樹脂流路を介してキャビティ130に導入される。
続いて、図6に示されるように、樹脂131が硬化する前に、可動ピン133が引き戻される。キャビティ130に導入された樹脂131は、熱およびキュアによって硬化する。その後、図7に示されるように、下型2を下方に移動させることで、型開きが行なわれる。「型開き」とは成型完了後に金型が開く動作である。可動ピン133,134がそれぞれ上型1および下型2より突き出る。これにより、成形品(生産品)が金型100から取り出される。
なお、ダミーフレームを用いた樹脂封止工程は、図3〜図7に示す工程と同一である。ただし、図8に示されるように、ダミーフレーム21には半導体チップ12は搭載されていない。また、ダミーフレーム21に適用される樹脂は、クリーニング用樹脂または離型用樹脂である。
たとえば、生産用フレームおよび生産用樹脂により樹脂封止を行なう回数が、予め設定した回数に達した場合に、クリーニングを行なうことが考えられる。この場合、クリーニングの間隔はある程度固定されている。しかしながら、クリーニングの間隔を固定した場合、生産の効率とクリーニングの効果との両方を常に最適化することは難しい。
予め設定した回数が小さいほど(すなわち頻繁にクリーニングを実行するほど)、金型100の内面に生産用樹脂の付着物が蓄積する可能性は低くなる。しかしながらクリーニングが行われる間には、生産品を生産できない。したがって頻繁にクリーニングを実行すると、生産の効率が低下する。また、必要以上に金型のクリーニングを実行している可能性もある。逆に、クリーニングの間隔が長くなれば、金型100の内面に生産用樹脂の付着物が蓄積することで樹脂封止の品質が低下する可能性がある。
金型100の内面に生産用樹脂の一部が付着物として蓄積すると、金型100から成型品を取り出すのに要する機械的な力が変化する。この実施の形態では、センサ120(図2参照)によって上記の機械的な力を直接的に検出する。装置制御部150は、センサ120からの検出値により、金型100から成型品を取り出すのに要する機械的な力の変化を検出することができる。したがって、より適切なタイミングで金型100のクリーニングを実行することができる。クリーニング作業の間隔が適切になることで、生産効率の低下を防ぐことができる。さらに、樹脂封止の品質を維持することができる。
以下、各実施の形態について詳細に説明する。なお、以下では、金型100A〜100Dのうち、代表的に金型100Aについて説明する。金型100B〜100Dの各々では、以下に示す処理と同様の処理が、金型100Aでの処理とは独立して実行可能である。
<実施の形態1>
実施の形態1では、センサ120は、金型100から成型品を取り出すのに要する機械的な力として、生産品の成型の場合における、金型100Aの型開きの荷重を検出する。センサ120によって検出される荷重が予め設定した荷重以上となった場合、装置制御部150は、金型100Aのクリーニングのための条件が満たされたと判断する。この場合、装置制御部150は、生産用フレームをダミーフレームに切り換えるとともに、生産用樹脂をクリーニング用樹脂に切り換えて樹脂封止を行なう。
金型100Aが型開きする際の荷重は、金型100Aからの成型品の離れやすさ(離型性)と密接に関連する。金型100Aが型開きする際の荷重を金型100Aのクリーニング要否の判断に用いることで、金型100Aの表面への付着物が蓄積することによる、金型100の離型性の低下を顕著に察知することができる。
したがって、この実施の形態によれば、適切なタイミングで金型のクリーニングを実行することができる。適切なタイミングで金型のクリーニングを実行することで、生産品の樹脂封止を高品質に保つことができる。
図9は、実施の形態1に従う、金型のクリーニングの要否を判定するための構成を説明するための模式図である。図9を参照して、センサ120は、下型2の可動部に取り付けられて、生産品10を金型100Aから取り出すために下型2が移動する際の荷重を測定する。
センサ120は、ひずみゲージ121およびホイートストンブリッジ回路122を含む。ひずみゲージ121に力が加わると、ひずみゲージ121の抵抗値が変化する。ホイートストンブリッジ回路122は、ひずみゲージ121の抵抗値の変化を電圧の変化に変換する。
装置制御部150は、センサ120からの出力電圧を、荷重を示す値を示す信号として受ける。装置制御部150は、センサ120から出力を受けて荷重の測定値を取得する。荷重の測定値を取得するために、装置制御部150は、センサ120からのアナログ信号をデジタル信号に変換するためのAD変換回路を有していてもよい。
装置制御部150は、センサ120によって測定された荷重が、予め設定した荷重G01以上となったかどうかを判断する。センサ120にて測定された荷重が、荷重G01以上である場合、装置制御部150は、ダミーフレーム供給部102およびクリーニング樹脂供給部106を制御して、金型100Aにダミーフレームとクリーニング用樹脂を供給する。さらに、装置制御部150は、金型100Aを制御して、クリーニングのための封止条件で樹脂封止を実行する。これにより、金型100Aのクリーニング処理が実行される。
図10は、実施の形態1に従う金型のクリーニング処理を説明するためのフローチャートである。図10を参照して、まず、樹脂封止装置200が起動すると、ステップS1において、装置制御部150は、金型100の自動クリーニング機能を使用するという設定を確認する(読み込む)。以下の説明では、樹脂封止装置200の起動時に装置制御部150が自動クリーニング機能を使用するという設定を読み込むものとする。なお、オペレータは、自動クリーニング機能を使用しないという設定を選択することもできる。
ステップS1において、自動クリーニング機能が使用されることが決定される。次にステップS2において、生産用フレームと生産用樹脂とを用いて、生産品の生産を行なう。
ステップS2は、ステップS21〜S25を含む。ステップS21とステップS22とは同時に実行可能である。ステップS21において、装置制御部150は、搬送ハンドを制御して、生産フレーム供給部101のマガジンに収納されている生産用フレームを引き出す。生産フレーム供給部101から引出された生産用フレームは生産フレームプレヒート部103を介して、ローダ部108により金型100Aに搭載される。ステップS22において、装置制御部150は、ローダ部108により生産樹脂供給部105から生産用樹脂を移動させ、金型100Aに搭載させる。
ステップS23において、装置制御部150は、金型100を制御して、下型2を移動させる。次に、図3から図7を参照して説明されるように、生産用フレーム11が生産用樹脂で樹脂封止される。
ステップS24において、装置制御部150は、金型100を制御して、型開きを行なう。同時にセンサ120は、型開きの際に下型2に加わる荷重を測定する。
ステップS25において、装置制御部150は、アンローダ部109を制御して樹脂封止された成形品(すなわち生産品)を金型100から取り出すとともに、その生産品をゲートブレーク部110に移動させる。成形品は、ゲートブレーク部110においてゲートブレークされる。
ステップS26において、装置制御部150は、収納ローダ115(図2を参照)を制御して、生産品を、製品収納部112のマガジン112A〜112Dに収納する。
ステップS3において、装置制御部150は、センサ120によって測定された(検出された)荷重が、予め設定した荷重G01以上であるかどうかを判断する。測定された荷重が、荷重G01未満である場合(ステップS3においてNO)、処理はステップS2に戻る。すなわち生産品の樹脂封止が繰り返される。
測定された荷重が、荷重G01以上である場合(ステップS3においてNO)、ステップS4〜S6の処理が実行される。まずステップS4において、ダミーフレームとクリーニング用樹脂とを用いて、金型100Aのクリーニング作業が実行される。次に、ステップS5において、ダミーフレームと離型用樹脂とを用いて、離型作業が行なわれる。続いて、ステップS6において、ダミーフレームと生産用樹脂とを用いて樹脂封止(ダミーショット)が行なわれる。ステップS4〜S6の処理の詳細は後に説明する。
ステップS7において、装置制御部150は、オペレータに自動生産を再開するかの確認を求める。オペレータが自動生産を選択した場合(ステップS7においてYES)、装置制御部150は、ステップS2の処理を再開する。すなわち、装置制御部150は、生産用フレームと生産用樹脂を用いて、生産品の生産に適した封止条件で金型100Aを制御して、生産を再開する。一方、オペレータが自動生産を選択しない場合(ステップS7においてNO)、装置制御部150は、金型100Aでの生産品の生産を再開しない。この場合、一連の処理は終了する。
図11は、図10に示したステップS4の処理の詳細を説明するフローチャートである。図10および図11を参照して、ステップS4の処理の具体的な内容は、基本的には、ステップS2の処理と同様である。しかしながら、装置制御部150は、クリーニング作業の回数をカウントして、クリーニング作業の回数が予め設定した所定の回数SH1に達すると、クリーニング作業を終了する。
具体的には、ステップS41において、装置制御部150は、カウント値を0に設定する。次に、ステップS42において、装置制御部150は、搬送ハンドを制御して、ダミーフレーム供給部102からダミーフレームを引出す。ダミーフレーム供給部102から引出されたダミーフレームは、ダミーフレームプレヒート部104を介して、ローダ部108により金型100Aに搭載される。ステップS43において、装置制御部150は、ローダ部108によりクリーニング樹脂供給部106からクリーニング用樹脂を移動させ、金型100Aに搭載させる。
ステップS44において、装置制御部150は、金型100を制御して、下型2を移動させて、樹脂封止を行なう。これによりダミーフレームがクリーニング用樹脂で樹脂封止される。
ステップS45において、装置制御部150は、金型100を制御して、型開きを行なう。ステップS46において、装置制御部150は、アンローダ部109を制御して樹脂封止された成形品を金型100から取り出すとともに、その成型品をゲートブレーク部110に移動させる。ステップS47において、装置制御部150は、収納ローダ115(図2を参照)を制御して、成型品を、カル廃却部111に廃棄する。
ステップS48において、装置制御部150は、現在のカウント値に1を加えて、新しいカウント値を生成する。このカウント値は、クリーニング作業の回数(クリーニングショット回数)を表わす。
ステップS49において、装置制御部150は、カウント値が所定の回数SH1に達したかどうかを判断する。所定の回数SH1は、1以上の整数であれば特に限定されず、任意の値に設定することができる。カウント値が所定の回数SH1未満の場合(ステップS49においてNO)、ステップS42〜S48の処理が実行される。したがって、クリーニング作業が繰り返される。一方、カウント値が所定の回数SH1に達した場合(ステップS49においてYES)、クリーニング作業が終了する。
図12は、図10に示したステップS5の処理の詳細を説明するフローチャートである。図12に示す処理は、基本的に図11に示す処理と同様であり、ステップS51〜S59のそれぞれの処理は、ステップS41〜S49の処理と対応する。ただし、ステップS53において、装置制御部150は、ローダ部108により離型樹脂供給部107から離型用樹脂を移動させ、金型100Aに搭載させる。したがって、ステップS54において、ダミーフレームが離型用樹脂で樹脂封止される。その後、成型品は、金型100Aから取り出されてカル廃却部111に廃棄される(ステップS55〜S57)。
ステップS58において、装置制御部150は、現在のカウント値に1を加えて、新しいカウント値を生成する。このカウント値は、離型作業の回数(離型ショット回数)を表わす。
ステップS59において、装置制御部150は、カウント値が所定の回数SH2に達したかどうかを判断する。所定の回数SH2は、1以上の整数であれば特に限定されず、任意の値に設定することができる。カウント値が所定の回数SH2未満の場合(ステップS59においてNO)、ステップS52〜S58の処理が実行される。したがって、離型作業が繰り返される。一方、カウント値が所定の回数SH2に達した場合(ステップS59においてYES)、離型作業が終了する。
図13は、図10に示したステップS6の処理の詳細を説明するフローチャートである。図13に示す処理は、基本的に図11、図12に示す処理と同様であり、ステップS61〜S69のそれぞれの処理は、ステップS41〜S49の処理と対応する。ただし、ステップS63において、装置制御部150は、ローダ部108により生産樹脂供給部105から生産用樹脂を移動させ、金型100Aに搭載させる。したがって、ステップS64において、ダミーフレームが生産用樹脂で樹脂封止される。その後、成型品は、金型100Aから取り出されてカル廃却部111に廃棄される(ステップS65〜S67)。
ステップS68において、装置制御部150は、現在のカウント値に1を加えて、新しいカウント値を生成する。このカウント値は、ダミーショットの回数を表わす。
ステップS69において、装置制御部150は、カウント値が所定の回数SH3に達したかどうかを判断する。所定の回数SH3は、1以上の整数であれば特に限定されず、任意の値に設定することができる。カウント値が所定の回数SH3未満の場合(ステップS69においてNO)、ステップS62〜S68の処理が実行される。したがって、ダミーショットが繰り返される。一方、カウント値が所定の回数SH3に達した場合(ステップS69においてYES)、ダミーショットが終了する。
なお、樹脂封止装置の稼動は、オペレータの判断に従い、任意のステップにおいて停止することができる。
このように、実施の形態1によれば、生産品の成型の場合における金型100Aの型開きの荷重に基づいて、装置制御部150は、金型100のクリーニングの要否を判断する。これにより、生産効率の低下を防ぎつつ、樹脂封止の品質を維持することができる。また、金型100のクリーニングを自動的に実行できることで、手動でのクリーニングのための金型100の運転停止を行う必要がない。したがってこの点からも、金型のクリーニングによる生産性の低下を最小限にすることが可能である。
さらに、実施の形態1によれば、生産用樹脂、クリーニング用樹脂および離型樹脂の配置場所の違いに基づいて、装置制御部150は、ステップS4,S5,S6の各ステップの処理に適した樹脂およびフレームを選択することができる。したがって、この実施の形態によれば、樹脂に視覚的な制約を設けることなく、自動的に確実に金型100をクリーニング可能とする樹脂封止装置を提供することが可能となる。さらに、生産用フレームを無駄に使用することを防ぐことができる。あるいは、金型クリーニングにかかる費用が高額になるのを防ぐことができる。
さらに実施の形態1によれば、クリーニング用樹脂による金型クリーニングが終了した後に離型樹脂を適用するので、長期間に亘り金型100への生産用樹脂の付着を防止することができる。
さらに実施の形態1によれば、ダミーフレームが適用された成形品については、カル廃却部111に破棄される。このため、クリーニング作業、離型作業、ダミーショット時の成形品を確実に破棄することができる。したがって、生産品にダミーが混入することを防ぐことができる。
<実施の形態2>
実施の形態2では、センサ120は、金型100から成型品を取り出すのに要する機械的な力として、金型100の可動ピン133または可動ピン134を移動させるのに要するモータのトルクを検出する。金型100の可動ピン133,134は、樹脂封止時に金型100のキャビティ130内に突き出し/引き戻し動作するピンである(図3を参照)。
装置制御部150は、センサ120によって検出されたトルクから摺動抵抗を算出する。この算出された摺動抵抗が、予め設定した値以上となった場合、装置制御部150は、金型100Aのクリーニングのための条件が満たされたと判断する。この場合、装置制御部150は、生産用フレームをダミーフレームに切り換えるとともに、生産用樹脂をクリーニング用樹脂に切り換えて樹脂封止を行なう。
金型100Aからの成型品の離れやすさ(離型性)が低下すると可動ピン133,134の摺動抵抗が大きくなる。可動ピン133,134の摺動抵抗を金型100Aのクリーニング要否の判断に用いることで、金型100Aの表面への付着物が蓄積することによる、金型100の離型性の低下を顕著に察知することができる。したがって実施の形態1と同様に、実施の形態2によれば、適切なタイミングで金型のクリーニングを実行することができる。
図14は、実施の形態2に従う、金型のクリーニングの要否を判定するための構成を説明するための模式図である。図14を参照して、可動ピン133は、エジェクタプレート5がサーボモータ141によって動かされることにより、上型1の表面からの突き出し、および上型1の表面への引き戻しの動作を行なう。可動ピン134は、エジェクタプレート6がサーボモータ142によって動かされることにより、下型2の表面からの突き出し、および下型2の表面への引き戻しの動作を行なう。
なお、図3等に示すように、可動ピン133,134はキャビティ130の中で突き出し/引き戻しの動作を行なう。しかしながら図14では、模式的に金型100を示すため、キャビティ130は示されていない。
センサ120a,120bの各々はトルクセンサである。センサ120a,120bは、サーボモータ141,142のトルクをそれぞれ検出する。センサ120a,120bによって検出されたトルクの値は、装置制御部150に送られる。
装置制御部150は、センサ120aによって検出されたトルクの値に基づいて、可動ピン133の摺動抵抗を算出する。同じく、装置制御部150は、センサ120bによって検出されたトルクの値に基づいて、可動ピン134の摺動抵抗を算出する。モータのトルクから摺動抵抗を算出するための手法には、公知のさまざまな手法を適用することができるので、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
可動ピン133は、生産用フレームを生産用樹脂で樹脂封止する場合に、金型100Aの上型1から突き出て生産用フレームを下型2に押さえつける。キャビティ130への樹脂注入後に、可動ピン133は引き戻される。生産品の樹脂封止を繰り返すうちに、ワックス効果が弱くなる等の理由によって、可動ピン133と上型1との間のクリアランスに生産用樹脂が次第に付着することがあり得る。これにより可動ピン133の摺動抵抗が次第に大きくなり得る。
1つの実施の形態では、このときの可動ピン133の摺動抵抗が予め設定した摺動抵抗F01以上となったかどうかを、装置制御部150が判断する。可動ピン133の摺動抵抗が摺動抵抗F01以上となった場合には、装置制御部150は、ダミーフレーム供給部102およびクリーニング樹脂供給部106を制御して、金型100Aにダミーフレームとクリーニング用樹脂を供給する。さらに、装置制御部150は、金型100Aを制御して、クリーニングのための封止条件で樹脂封止を実行する。これにより、金型100Aのクリーニング処理が実行される。
図15は、実施の形態2に従う金型のクリーニング処理の一例を説明するためのフローチャートである。図15を参照して、実施の形態2に従う金型のクリーニング処理は、基本的には実施の形態1に従う金型のクリーニング処理(図10を参照)と同じである。図15に示されたフローチャートでは、ステップS23a,S3aの処理が、それぞれ図10に示すステップS23,S3の処理に代わり実行される。したがって以下では、ステップS23a,S3aの処理について詳細に説明する。
ステップS23aにおいて、装置制御部150は、金型100Aを制御して、生産用フレーム11を生産用樹脂で樹脂封止する。このときに、装置制御部150は、可動ピン133の摺動抵抗を算出する。
装置制御部150は、金型100Aのキャビティ130への樹脂の導入前に、サーボモータ141を制御して、可動ピン133を上型1から突き出す。キャビティ130に樹脂が導入されると、装置制御部150は、サーボモータ141を制御して、樹脂の硬化前に可動ピン133を引き戻す。
センサ120aは、可動ピン133が上型1から突き出るときのサーボモータ141のトルクを検出する。ただし、センサ120aは、突き出た可動ピン133が上型1に戻るときのサーボモータ141のトルクを検出してもよい。装置制御部150は、センサ120aによって検出されたトルクの値から、予め定められた式に従って可動ピン133の摺動抵抗を算出する。
ステップS3aにおいて、装置制御部150は、算出された摺動抵抗が、予め設定された摺動抵抗F01以上であるかどうかを判断する。算出された摺動抵抗が、摺動抵抗F01未満である場合(ステップS3aにおいてNO)、処理はステップS2に戻る。一方、算出された摺動抵抗が、摺動抵抗F01以上である場合(ステップS3aにおいてYES)、処理はステップS4に進み、クリーニング作業が実行される。
別の実施形態において、装置制御部150は、可動ピン134の摺動抵抗を算出することもできる。可動ピン134は、たとえばエジェクタピンとして機能する。したがって、可動ピン134は、金型100Aからの生産品の取り外し時に下型2から突き出る。たとえば生産品の樹脂封止を繰り返すうちに、金型100A(下型2)の表面から生産用樹脂が外れにくくなる可能性がある。あるいは、可動ピン134と下型2との間のクリアランスに生産用樹脂が次第に付着することがあり得る。したがって可動ピン134の摺動抵抗が大きくなり得る。
図16は、実施の形態2に従う金型のクリーニング処理の他の例を説明するためのフローチャートである。図16を参照して、ステップS24a,S3aの処理が、それぞれ図10に示すステップS24,S3の処理に代わり実行される。なお、ステップS3aの処理は、図15に示された処理と同じであるので以後の説明は繰り返さない。
ステップS24aにおいて、装置制御部150は、金型100Aを制御して型開きを行なう。このとき装置制御部150は、サーボモータ142を制御して、下型2から可動ピン134を突き出す。センサ120b(トルクセンサ)は、可動ピン134が下型2から突き出るときのサーボモータ142のトルクを検出する。装置制御部150は、センサ120bによって検出されたトルクの値から、予め定められた式に従って可動ピン134の摺動抵抗を算出する。
なお、ステップS24aにおいて、可動ピン133が上型1から突き出るときのサーボモータ141のトルクをセンサ120aで検出してもよい。この場合、装置制御部150は、センサ120aで検出されたトルクの値から、可動ピン134の摺動抵抗を算出してもよい。
実施の形態2によれば、実施の形態1による効果と同様の効果を得ることができる。
なお、本発明について本実施形態を挙げて説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。すなわち本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでもない。
たとえば、クリーニング作業の要否の判断について、実施の形態1と実施の形態2とを組み合わせてもよい。たとえば、金型100Aの型開きの荷重が荷重G01以上であり、かつ、可動ピン133(または可動ピン134)の摺動抵抗が摺動抵抗F01以上である場合に、装置制御部150が、クリーニング作業が必要であると判断してもよい。
あるいは、金型100Aの型開きの荷重が荷重G01未満であるものの、可動ピン133(または可動ピン134)の摺動抵抗が摺動抵抗F01以上である場合に、装置制御部150が、クリーニング作業が必要であると判断してもよい。逆に、可動ピン133(または可動ピン134)の摺動抵抗が摺動抵抗F01未満であるものの金型100Aの型開きの荷重が荷重G01以上である場合に、装置制御部150が、クリーニング作業が必要であると判断してもよい。
また、樹脂封止装置において、クリーニング用樹脂のタブレットと離型樹脂のタブレットとは、同一の樹脂供給部に高さを異ならせて配置させてもよい。クリーニング用樹脂と離型樹脂を同一箇所に配置することで、装置サイズを縮小することができる。樹脂封止装置は、たとえば、樹脂タブレットの高さを検出する機構を備えることで、クリーニング用樹脂と離型樹脂とを識別することができる。したがって、クリーニング用樹脂と離型樹脂を区別して搬送することができる。
具体的には、クリーニング樹脂供給部106にクリーニング用樹脂と離型樹脂が供給を供給する。クリーニング用樹脂と離型樹脂とでタブレットの高さを明確に異ならせる(目安としてはたとえば1mm以上)。クリーニング用樹脂と離型樹脂とはクリーニング樹脂供給部106のパーツフィーダにより整列される。整列したクリーニング用樹脂と離型樹脂とは、図示せぬ光/反射型センサによりタブレット高さが測定される。このときのタブレット高さから、クリーニング用樹脂であるか、離型樹脂であるか、を装置制御部150にて判断する。判断基準となるタブレット高さは、装置制御部150に予め設定される。なお、樹脂タブレットの高さを検出するための方法としては、光/反射型センサを用いた方法に限定されず、たとえば接触式高さ検出など他の高さ検出方法であってもよい。
たとえば本実施形態においては、金型の数は4つであったが、3つ以下であっても、5つ以上であってもよい。
また、本実施形態においては、クリーニング用樹脂と離型樹脂とを別々に用意したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、離型樹脂を用いなくてもよいし、クリーニング用樹脂として、離型樹脂のワックス効果を同時に持たせたものを用いてもよい。
本実施形態においては、生産フレーム供給部101と、ダミーフレーム供給部102とは、本発明における「フレーム供給部」を実現する。同様に、生産樹脂供給部105とクリーニング樹脂供給部106とは、本発明における「樹脂供給部」を実現する。なお、本発明における「樹脂供給部」に、生産樹脂供給部105とクリーニング樹脂供給部106とに加えて離型樹脂供給部107が含まれていてもよい。
また、図1では、クリーニング樹脂供給部106の位置と離型樹脂供給部107の位置とはX方向に沿って(平面的に)相違するが、図1の紙面垂直方向(X方向と直交する方向)に相違させてもよい。
さらに、樹脂封止はトランスファーモールドによる樹脂封止に限られず、複数の金型が用いられるその他の樹脂封止にも適用することができる。また、ローダとアンローダとは兼用されていてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。